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群分離・核変換技術評価について (中間的なとりまとめ)
資料2-1 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 原子力科学技術委員会(第10回) H26.1.21 群分離・核変換技術評価について (中間的なとりまとめ) 2014年1月21日 原子力科学技術委員会(第10回) 1.作業部会の設置 原子力委員会「分離変換技術検討会」(2009年)において、分離変換技術に 関する研究開発の現状と今後の進め方について、概ね5年ごとに評価すること が適当と指摘されている。 文部科学省はこれを踏まえ、科学技術・学術審議会の下に、本年7月9日付 けで作業部会(主査:山口大阪大学院教授)を設置し、専門家による群分離・核 変換技術の開発の必要性と方向性について議論を行った。 (委員構成) 主査 山口 彰(大阪大学大学院) 澤田 周作(日立GEニュークリア・エナジー(株)) 田中 知(東京大学大学院) 中島 健(京都大学原子炉実験所) 長谷川 晃(東北大学大学院) 藤田 玲子(日本原子力学会) 矢野 安重(仁科記念財団) 和気 洋子(慶應義塾大学) 2 2.作業部会での議題 ○第1回(H25.8.7) (1)群分離・核変換技術に関するこれまでの経緯 (2)群分離・核変換技術に関する国内外の状況 (3)今後の進め方 ○第2回(H25.9.9) (1)群分離・核変換技術に関する検討の経緯 (2)群分離・核変換技術に関する開発状況 ○第3回(H25.9.13) (1)群分離・核変換技術に関する施設の検討状況 (2)群分離・核変換技術に関する人材育成について (3)群分離・核変換技術に関する国際協力の状況 ○第4回(H25.10.23) (1)群分離・核変換技術に関する加速器駆動システムの開発ロードマップ (2)群分離・核変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ素案 ○第5回(H25.10.30) (1)核分裂生成物の核変換について (2)群分離・核変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ案について 3 3.群分離・核変換技術とは 群分離・核変換技術(分離変換技術) 高レベル放射性廃棄物に含まれる放射 性核種を、その半減期や利用目的に応 じて分離する(分離技術)とともに、 長寿命核種を短寿命核種あるいは非放 射性核種に変換する(変換技術)ため の技術 使用済燃料 再処理 目標 ・長期リスクの低減: 廃棄物の潜在的有害度の総量を大幅に低減 ・処分場の実効処分容量の増大: 発熱の大きい核種を除去してコンパクトに処分 ・放射性廃棄物の一部資源化: 希少元素の利用(白金族など) U、Pu エネルギー資源として有効利用 高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)として地層処分 従来技術 分離変換技術の適用例 MA(Np、Am、Cm) 核変換による短寿命化 FP、MA 群分離 白金族(Ru、Rh、Pd等) 発熱性元素(Sr、Cs) MA:マイナーアクチノイド FP:核分裂生成物 その他の元素 利用 焼成体として冷却(又は利用)後に地層処分 高含有ガラス固化体として地層処分 4 4.ADSを用いた核変換システム ADSの仕組み: ・超伝導加速器で大強度の陽子を高効率で加 速。 ・陽子は鉛・ビスマス(Pb-Bi)に入射し、核破砕 反応で大量の中性子を発生。 ・燃料の主成分はマイナーアクチノイド(MA)。 ・中性子によりMAを核分裂反応で核変換。 →核分裂の連鎖反応で、1個の中性子を 20個に増倍しながら核変換。 加速器へ給電 170MW 発電 270MW ・通常の原子炉(臨界炉)でMA燃料を用い ると安全上の問題が生じるためMA割合を 低くしなければならないが、未臨界で運転 するADSでは影響が小さいためMA割合 を高くできる → 効率的なMA核変換。 ADSによる核変換の原理 超伝導陽子加速器 電力網へ売電 ADSの特徴: ・加速器を止めれば核分裂の連鎖反応は 停止 → 安全性が高い。 100MW 陽子ビーム Max.30MW 未臨界状態での核分裂の連 鎖反応を利用 核分裂中性子 核分裂 エネルギー 陽子 核破砕ターゲット 高速中性子 800MW MA燃料未臨界炉心 短寿命の核種 長寿命の核種 核破砕ターゲット 5 5.群分離・核変換システムの導入 主な核変換システム 発電用高速炉利用型:発電用高速炉(FBR・FR)における均質または非均質燃料によ るリサイクルを目的として、発電用高速炉と一体的に研究開発を実施 階層型:発電用サイクルから独立した、加速器駆動システム(ADS)を中心とした核変換 専用サイクルを構成する階層型概念に基づく研究開発を実施 発電用高速炉利用型 階層型 6 6.導入効果 長期リスクの低減 高レベル放射性廃棄物の潜在的有害度の低減 地層処分場実効的な容量増大 MA核変換及び発熱性核種であるSr-Csの分離貯蔵の組み合わせにより集積処分が可能 (ただし、現存するガラス固化体や現行技術からのガラス固化体は従来通りの処分が必要) 高レベル放射性廃棄物の地層処分の負担軽減 1.E+09 潜在的有害度: 各放射性核種の人体への 影響(線量換算係数)で重みづけした指標 使用済燃料 高レベル廃棄物 分離変換導入 天然ウラン9トン 1.E+08 潜在的有害度(Sv) 1.E+07 1.E+06 1.E+05 1.E+04 1.E+03 1.E+02 1.E+01 1.E+02 1.E+03 1.E+04 1.E+05 1.E+06 1.E+07 処理後経過時間(年) 燃焼度43GWD/t、5年冷却後の再処理でUとPuを99.5%除去。 分離変換ではさらにMAを99.5%除去 7 7.国内外での開発状況 現在 2020 常陽 日本 • 高速炉・ADSそれぞれの研究開発を 実施 75万kWe 28万kWe 日本 2030 もんじゅ 実証炉 核拡散抵抗性、廃棄物管理に関して優 れたリサイクル技術の開発を実施 アメリカ 25万kWe Phenix フランス FR 60万kWe ロシア BN600 88万kWe BN800 2万kWe CEFR 中国 1.3万kWe インド FBTR 欧州 • フランスを中心として高速炉型(非均 質装荷:後述)を検討中 • ベルギーを中心としてADS実験炉 MYRRHAの建設を計画している 60万kWe 第4世代炉 プロトタイプ 120万kWe BN1200 CDFR 80万kWe ×2基 CFR 100万kWe CCFR/CCFBR 100~150万kWe 50万kWe PFBR CFBR 50万kWe ×6基 100万kWe MYRRHA 熱出力:10万kW ADS 米国 • 1990年代よりAFCI計画、GNEP計 画などで高速炉・ADSともに検討して きた 中国 • 昨年度から大規模な予算措置を受 け、高速炉・ADSそれぞれによる核 変換の研究開発を進めている ベルギー 10万kWth 中国 実験炉 80万kWth 原型炉 8 8.実用化に向けたロードマップ 出力規模 MA燃料の無いADSの技術 (Pb-Bi炉心、加速器、運転経験) 実用ADSプラント 30MW-beam, 800MWth ・LWR10基分のMA核変換 実験炉級ADS⇒MYRRHA ~2.4MW-beam, 50~100MWth ・ADS技術の実証と燃料照射 MA燃料の炉物理とターゲット材料開発 ビーム窓材料の高度化 J-PARC核変換実験施設 ベルギーMYRRHA 目的 要素技術開発 (ターゲット技術、物理) 照射試験、 未臨界炉運転経験蓄積 出力 陽子ビーム250kW 未臨界炉熱出力:500W 陽子ビーム2.4MW 未臨界炉熱出力50~100MW MA 大量に用いて 核変換システムを模擬 少量の照射試験のみ J-PARC核変換実験施設 250kW-beam ・Pb-Biターゲット技術 ・核変換の炉物理 ループ実験、KUCA実験などの基礎試験 2010 2020 • J-PARCとMYRRHAが連携し、世界における核変換技術 の開発・実証・高度化を先導 • 2030年代に実用規模へ展開できる知見・経験を得る 2030 2050 年 9 9.核変換実験施設の概要 核変換実験施設 (TEF: Transmutation Experimental Facility) 目的: 低出力で未臨界炉心の物理的特性の探 索とADSの運転制御経験を蓄積 施設区分 : 原子炉(臨界実験施設) 陽子ビーム: 400MeV-10W 熱出力 : 500W以下 臨界集合体 レーザー光源 目的: 大強度陽子ビームでの核破砕ターゲットの 技術開発及び材料の研究開発 施設区分 : 放射線発生装置 陽子ビーム: 400MeV-250kW ターゲット: 鉛・ビスマス合金 多目的照射エリア 10W 核破砕ターゲット 陽子ビーム 10 2015 10.今後の研究開発計画(ADS) 炉物理 MA核データ ・コード開発 ・未臨界炉物理 ・核破砕基礎実 験 ・核データ測定 ・共分散評価 ・JENDL4整備 ・MAサンプル照 射 プラント 炉心要素模擬、 ・少量MAによ 未臨界度測定 る検証(KUCA) 手法(MASURCA, VENUS-F, KUCA, ・核データ測定 LBE熱流動・ターゲット プラント概念の 提示 ・制御技術概 念 ・安全性概念 ・物性等 ・小規模流動試験 ・ターゲット概念提示 ・ビーム窓モックアッ プ(MEGAPIE) 要素技術概念 検討 ・安全機器概 念検討 ・加速器制御 手法検討 ・基礎データ取得(腐 食・照射効果) ・腐食試験 ・陽子照射 (SINQ,MEGAPIE) ・概念検討 ・要素技術の実 験室規模試験 J-PARC加速器 実用規模展開 照射後試験 (MEGAPIE) 信頼性向上 ADSターゲット試験施設(TEF-T)を 用いた核破砕ターゲット工学試験 ビーム窓モックアップ 陽子照射 照射試験用ADS(MYRRHA) を用いたADSシステム実証試験 (実炉条件) MYRRHA用 データ取得 初号機用材料 データ整備 常 陽 ・ M Y R R H A 等 高 速 中 性 子 照 射 ) 機器開発・製 高出力運転制 作・運転(ポンプ、 御・安全性試 SG) 験 (実炉条件) ( 部分MA燃 料装荷試 験 ◎MA調達 2025 加速器 (J-PARC/MLF) 核変換物理実験施設(TEF-P)を 用いたADS・MA炉心特性試験 陽子ビーム導 入による低出 力試験 LBE用材料 ・各種測定技術開発 ・機器流動試験 2020 FCA等) 安全・制御 超伝導加速器 開発 初号機用超伝 導加速器開発 (MYRRHAの知 見を活用) 初号機プラント設計・機器開発 2050頃 ◎ADS初号機建設(800MWt, MOX燃料, 一部MA) 注:表記の都合により、 時間軸は必ずしも開 発期間を表さない。 MA燃料製造・再処理の技 術開発 MA燃料装荷 技術の流れ MAの流れ ほぼ終了している部分 評価を踏まえて進めていく部分 現在実施中(赤字)、 及び今後の中心部分(黒字) 更に将来の部分。施設の新設 が必要な部分を◎で示した。 11 11.まとめ ○群分離・核変換技術の現状等を評価し、当面の研究開発の進め 方や今後検討すべき課題等について、論点のとりまとめとして整理 した。 ○中間的な論点のとりまとめでは、群分離・核変換技術について、実 験室レベルの段階から、工学規模の段階に移行することが可能な 研究開発段階にあり、このため、J-PARCに核変換実験施設(工 学規模の試験施設)を整備することが期待されると評価した。 ○今後、施設整備計画の策定等に当たっては、前提となる成果の達 成状況、運用・保守も含めた技術的実現性、規制等への対応に係る 検討等、段階に応じて進捗状況をチェックすることが必要である。 12