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資料編 - 東京都生活文化局
資料編 <資料1> 多文化共生推進に関するこれまでの取組 <資料2> 海外の自治体における多文化共生の取組状況 <資料3> 多文化共生の推進事業に関するアンケート <資料4> 多文化共生推進検討委員会 39 <資料1> 多文化共生推進に関するこれまでの取組 ① 東京都の外国人施策について 東京都は、2001 年度から、日本人と外国人双方の委員で構成する「地域国際 化推進検討委員会」を設置し、東京を外国人も住みやすく、活躍できるまちにするた めの課題について検討してきた。 また、都の地域国際化協会である東京都国際交流員会を通じて、生活情報の多 言語提供や国際交流協会・支援団体とのネットワークづくりを推進するとともに、各局 において、それぞれの所管の中で在住外国人を支援する事業を実施している。 <東京都が実施している主な事業> ● 外国人向けに日常生活に必要な行政手続や生活情報をまとめた生活ガイ ド・リビングインフォメーション(日本語、英語、中国語、韓国・朝鮮語、やさしい 日本語)をホームページに掲載 (東京都国際交流委員会) ● 東京都公式ホームページに外国語ページを設け、最新の都政情報を提供 (英語、中国語、韓国・朝鮮語)(生活文化局) ● 外国語放送専門のFMラジオ局InterFMを利用して、医療、イベン ト防災等の都政情報、健康に関する情報等を外国語で案内 番組名:TOKYO City information 使用言語:英語(生活文化局) 40 ● 外国語専門の相談員を配置し、電話、来訪による都政や日常生活に関する 相談に対応(英語、中国語、韓国・朝鮮語)(生活文化局) ● 区市国際交流協会の外国人相談窓口と専門家団体、在住外国人支援団 体等との協働による外国人のためのリレー専門家相談会を開催(東京都国際 交流委員会) ● ビジネスコンシェルジュ東京事業 外国企業の従事員やその家族に対するビジネス及び生活一般に係る相談 (政策企画局) ● 都立国際高校、都立飛鳥高校、都立田柄高校、都立竹台高校、都立南 葛飾高校、都立立川国際中等教育学校における在京外国人生徒募集枠の 設定(教育庁) ● 都立高校入試案内パンフレット「東京都立高等学校に入学を希望する皆さ んへ」の英語版・中国語版・韓国語版の作成及び配布(教育庁) ● 都立学校における外国人児童・生徒に対する日本語指導外部人材の派遣 (教育庁) ● 外国人児童・生徒相談(中国語、英語、韓国・朝鮮語)の実施(教育相 談、進路相談会等)(教育庁) ● 日本語指導が必要な外国人児童・生徒の実態の把握(教育庁) ● 日本語指導に関する教員研修の実施(教育庁) ● 区市町村教育委員会による小・中学校の日本語学級設置の認証(教育 庁) ● 「たのしいがっこう(22言語対応)」、「日本語指導ハンドブック(その1) (その2)」など、日本語指導に活用できる教材等の作成・配布(教育庁) ● 外国語による労働相談(産業労働局) ● 外国人労働者雇用マニュアル(外国語翻訳版)の作成 (青少年・治安対 策本部) 41 ● 東京都防災(語学)ボランティア(生活文化局) ● 緊急時ポケットマニュアル(ヘルプカード)の発行(生活文化局) ● 外国人支援のための防災訓練(生活文化局) ● 防災ブック「東京防災」英語版、中国語版、韓国語版の作成(総務局) ● 外国語対応が可能な医療機関等の医療情報サービス(英語・中国語・ハン グル・タイ語・スペイン語)(福祉保健局) ● 医療機関向け救急時の電話による通訳サービス(英語・中国語・ハングル・ タイ語・スペイン語)(福祉保健局) ● 介護保険に関する英語版、中国語版、韓国語版パンフレットを発行(福祉 保健局) ● 都立病院内における英語による院内表示や通訳(ボランティアを含む)によ る、診療時の対応や病院案内(病院経営本部) ● 国際化市民フォーラム in TOKYO の開催(東京都国際交流委員会) ● リーフレット「外国人の人権」の配布(総務局) ● スポーツ団体と連携した啓発(試合会場での啓発映像上映、啓発冊子の配 布等)(総務局) ● 映像「外国人の人権」(YouTube 人権部チャンネル)による啓発(総務 局) ● 人権啓発イベント「ヒューマンライツ・フェスタ東京」による啓発(総務局) ● 国際交流・協力 TOKYO 連絡会の開催(東京都国際交流委員会) ● 東京国際交流団体連絡会議の開催(東京都国際交流委員会) ● 都、区市町村、国際交流協会、外国人支援団体等による合同連絡会議の 開催(生活文化局) 42 参 考 東京都長期ビジョン 2014 年 12 月に策定した「東京都長期ビジョン」では、「世界一の都市・東京」を将 来像として掲げ、史上最高のオリンピック・パラリンピックの実現と、将来にわたる東京の持 続的な発展の実現を基本目標として打ち出している。 本ビジョンでは、世界をリードするグローバル都市の実現のため、日本経済の機関車で ある東京が、世界で一番ビジネスのしやすい都市として、激化する国際的な都市間競 争を勝ち抜き、日本経済の持続的成長を牽引することが必要としている。 また、アジア地域の業務統括拠点・研究開発拠点 50 社を含む外国企業 500 社以 上を特区内に誘致することを政策目標としている。 今後の課題として、外国企業と国内企業の交流の場など、日本経済の活性化へと 結びつける仕組みづくりや、外国人が暮らしやすい生活環境の整備を挙げている。 こうした観点からも外国人が活躍でき、かつ安心して暮らせる都市を創造するための 多文化共生の推進は必要不可欠である。 東京都総合戦略 都は、2015 年 10 月に「『東京と地方が共に栄える、真の地方創生』の実現を目指し て~東京都総合戦略~」を策定した。 本総合戦略の中で、「首都・国際都市として更に発展し、日本経済を活性化」という 視点を掲げている。 激化する国際的な都市間競争に打ち勝ち、今後とも世界をリードする国際都市とし て、また東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に更に発展していくため、特 区制度を活用した外国企業の誘致や人材の受入れの促進、国際金融センター構想の 実現といった成長戦略の推進、起業・創業の創出などに取り組んでいる。 これらの取組により、新たに東京に進出する外国企業の増加に伴い、より多くの外国 人ビジネスパーソンとその家族が東京で暮らすことになる。 43 オリンピック憲章 「オリンピック憲章」は、国際オリンピック委員会(IOC)によって採択されたオリンピズムの 根本原則、規則、附属細則を成文化したもので、オリンピック・ムーブメントの組織、活動、 運用の基準であり、かつオリンピック競技大会の開催の条件を定めるものである。 オリンピック憲章 オリンピズムの根本原則(抜粋) 4 スポーツをすることは人権の1つである。すべての個人はいかなる種類の差別も受けるこ となく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。オリンピック 精神においては友情、連帯、フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる。 6 このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言 語、宗教、政治的またはその他意見、国あるいは社会のルーツ、財産、出身やその他の身 分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならな い。 2020 年に向けた東京都の取組 ―大会後のレガシーを見据えてー オリンピック憲章ではオリンピック・レガシーに関して、国際オリンピック委員会(IOC)の使 命と役割として「オリンピック競技大会のよい遺産を、開催国と開催都市に残すことを推進す ること」と明記している。 IOC がレガシー(遺産)を憲章に加えたのは、2002 年 11 月メキシコシティーでの総会に おける決定を受け、翌 2003 年 7 月 4 日に発行された憲章からであり、以降開催立候補 都市は、オリンピック・レガシーを考慮した提案が求められるようになった。 平成 27(2015)年 12 月、都は東京 2020 大会後のレガシーを見据えた、東京都の 取組を公表。大会を起爆剤として、成熟都市・東京を更に発展させ、ゆとりある真に豊かな 都民生活を実現するための取組みとして、「オリンピック・パラリンピック教育を通じた人材育成 と、多様性を尊重する共生社会づくりを進める」こととしている。 44 ② 区市町村の外国人施策について 各区市町村は外国人人口、割合、国籍、在留資格等の特性に応じた施策を積 極的に展開してきた。主に区市町村が担っている多文化共生関連施策は、以下の通 りである。(注)区市町村によって対応言語・実施状況は異なる。 行政サービス等に関する多言語情報の提供 区市町村のホームページを多言語に翻訳し、行政情報や地域の情報等を提供 するとともに、区市町村に提出する各種申請書・届出書の多言語版や多言語によ る記入ガイダンスの作成などを実施。 生活に関する案内等の多言語提供 国民健康保険の案内、小中学校への入学案内、ごみの分け方・出し方に関する ガイドの配布等外国人が住民として生活する上で必要な情報を多言語で提供。 外国人のための相談窓口の設置 外国人からの生活に関する相談に応じる窓口を設置し、通訳を配置して多言語 で対応するとともに、弁護士・税理士等様々な分野の専門家による相談を実施。 日本語教室の開催 日本語が話せずに困っている外国人に対し、地域で安定的な生活が送れるよう 日本語学習の機会を提供。また、日本語学習を支援するボランティアの養成講座 なども開催。 ボランティアの登録・派遣 日本語教室運営ボランティア、区市町村の窓口における通訳・翻訳ボランティア、 国際交流事業の運営ボランティア等、外国人支援に関わる様々なボランティアの登 録・派遣 外国人と日本人の交流事業 気軽に外国人と日本人がコミュニケーションをとり、お互いの文化への理解促進に つながる交流の場として、多文化共生に関するイベントや国際交流サロン等を開 催。 45 ③ 国の外国人施策について 外国人に関する政策については、「出入国管理に関する政策」と「入国した外国人 の社会への定着に関する政策(社会統合政策)」に大別される。 現在、日本においては出入国管理政策上、受け入れた外国人の生活環境の整備 は、地方公共団体が中心となって担うものという位置付けである。 ここ 10 年の国の外国人に関する施策については以下の通りである。 2005 年 第 3 次出入国管理基本計画【法務省】 専門的・技術的分野の外国人労働者は一層受け入れる一方で、人口減少時 代への対応としては、単に量的に外国人労働者の受け入れで補おうとすることは適 切でないとしている。また、外国人が住みやすい環境づくりを進めていくためには、生 活環境の問題等に適切に対処する必要があることから、労働、教育、福祉に係る 支援施策等の連携が不可欠であり、そのために地方公共団体の取組等も参考に、 国全体としての方策を検討していく必要があるとしている。 2006 年 地域における多文化共生推進プラン【総務省】 「多文化共生の推進に関する研究会報告書」(2006 年)では、多文化共生 を「国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的ちがいを認め合い、対等な関係 を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと」と定義づけをした。 報告書では外国人を地域で生活する住民と捉え、「コミュニケーション支援」と「生 活支援」、そして地域社会の構成員として共に生きていくという観点から、「多文化 共生の地域づくり」を提言し、これらの取組を実施するための「推進体制の整備」が 必要であるとしている。 これを受け総務省は「地域における多文化共生推進プランについて」を都道府県 及び政令指定都市に対し示した。 プランでは地域における多文化共生の意義として、「外国人住民の受入主体とし ての地域」、「外国人住民の人権保障」、「地域の活性化」、「住民の異文化理解 力の向上」、「ユニバーサルデザインのまちづくり」を挙げている。 さらに総務省は都道府県及び政令指定都市に対し、多文化共生の推進に係る 指針・計画の策定及びその実施を求め、さらに区市町村に対しても周知するよう求 めた。 2006 年 「生活者としての外国人」に関する総合的対応策 46 【外国人労働者問題関係省庁連絡会議】 我が国に滞在する外国人は、定住する傾向が強まるとともに、その家族も増加し ている。日本で働き、また生活する外国人について、我が国として、その処遇、生 活環境等について一定の責任を負うべきものであり、社会の一員として日本人と 同様の公共サービスを享受し生活できるような環境を整備しなければならないとし ている。今後この総合的対応策に基づき、各省庁において、緊密な連携・協力の もと、効果的な実施を図るとしている。 2008 年 留学生 30 万人計画【文部科学省・外務省他】 国はグローバル戦略展開の一環として、2020 年を目途に留学生受入れ 30 万 人を目指す計画を発表した。大学等の教育研究の国際競争力を高め、優れた留 学生を戦略的に獲得することが目的である。 そのために関係省庁・機関等が総合的・有機的に連携し、情報発信の強化、国 際化拠点大学の重点的育成、留学生の生活支援の他、卒業・修了後の社会の 受入れの推進のための就職支援や起業支援を実施するとしている。 2010 年 第4次出入国管理基本計画【法務省】 我が国の社会が活力を維持しつつ、持続的に発展するとともに、アジア地域の活 力を取り込んでいくとの観点から、積極的な外国人の受け入れ施策を推進していくと している。また、テロリストや犯罪者の入国を確実に水際で阻止し、また、依然として 相当数存在する不法滞在者や今後増加が懸念される偽装滞在者対策等を強力 に推進するとともに、法違反者の状況に配慮した適正な取り扱いを行っていく。さらに、 国際社会の一員として、難民の適正かつ迅速な庇護を推進していくとしている。 2010 年 「日系定住外国人施策に関する基本指針【内閣府】 日本に在留するブラジル人、ペルー人を中心とした日系人及びその家族(以下 日系定住外国人という)は、1988 年以降入国が急増し、一定の地域において多 数居住するようになった。2008 年秋以降の経済危機以降も、日本での暮らしが長 期に及んだ者は定住を希望する傾向があり、国として日系定住外国人施策の基本 的な考え方を示した指針を策定した。指針では「日本語能力が不十分である者が 多い日系定住外国人を日本社会の一員としてしっかりと受け入れ、社会から排除さ れないようにする」ことを掲げ、5つの分野について今後取り組むまたは検討する事項 が盛り込まれている。 47 2011 年 日系定住外国人施策に関する行動計画【内閣府】 2010 年に策定された基本指針を踏まえ、具体的な施策を取りまとめたものとして 行動計画を策定。3 年間の計画期間として、日本語で生活できるための施策や子 供を大切に育てていくための施策、安定して働くための施策、社会の中で困ったとき のための施策、その他地方自治体における自主的な多文化共生の取組の促進や、 在日ブラジル大使館、ベル―大使館等との連携強化等について盛り込んでいる。 2012 年 新在留管理・住民基本台帳制度の開始【法務省】 在留管理制度が改正され、在留期間がこれまでの最長である 3 年から 5 年となっ た。また、氏名等の基本的身分事項や在留資格、在留期間が記載され、顔写真 が貼付された在留カードが交付されることとなった。新しい在留管理制度の導入に伴 って外国人登録制度は廃止され、新たに外国人住民に係る住民基本台帳制度が スタートした。さらに、高度人材の受入れを促進するため、「高度人材に対するポイン ト制による出入国管理上の優遇制度」を開始した。 2012 年 「外国人との共生社会」実現検討会議【内閣府】 外国人との共生社会の実現に向けた環境整備に関する諸問題について検討す るため、2012 年 5 月に関係府省庁の副大臣級による検討会議を設け、目指す べき外国人との共生社会のあり方や外国人との共生社会の実現に向けた環境整 備について検討を実施した。 中間的整理を 8 月に発表し、その中で当面の「外国人との共生社会に関する政 策」の推進については、外国人との共生社会に関する政策を、出入国及び在留管 理政策と調和させながら積極的に推進するとしている。 2014 年 「日系定住外国人施策の推進について」【内閣府】 策定から3年が経過した「日系定住外国人施策に関する行動計画」を見直すに 当たり、基本指針に記載されている内容も、日系定住外国人に関する状況の変化 や課題を踏まえる必要があることから、基本指針、行動計画の双方を一本化した 「日系定住外国人施策の推進について」を策定した。このとりまとめは、2014 年4 月から開始し、必要に応じ、開始後3年を目途に見直すこととしている。 2015 年 「第5次出入国管理基本計画【法務省】 基本方針として、我が国経済社会の活力をもたらす外国人を積極的に受け入れ ていくこと、少子高齢化の進展を踏まえた外国人の受入れについて、幅広い観点か 48 ら政府全体で検討をしていくこと、新たな技能実習制度を構築すること、受け入れた 外国人との共生社会の実現に貢献していくこと、安心・安全な社会の実現のため、 厳格かつ適切な入国審査と不法滞在者等への対策を強化していくこと等を示して いる。 <資料2> 海外の自治体における多文化共生の取組状況 ① インターカルチュラル・シティ 移住者や少数者によってもたらされる文化的多様性を、脅威ではなくむしろ好機ととら え、都市の活力や革新、創造、成長の源泉とする都市政策を進めるのが「インターカルチ ュラル・シティ」であり、2008 年から欧州評議会が欧州委員会とともに進めているプログラ ムである。 現在インターカルチュラル・シティ・プログラムに参加しているのは、オスロ(ノルウェー)、 コペンハーゲン(デンマーク)、ベルリン市ノイケルン区(ドイツ)、ロンドン・ルイシャム区 (イギリス)、レッジョ・エミリア(イタリア)、ヌーシャテル(スイス)などである。具体的活 動としては、専門家による会員都市の政策評価、会員都市相互の施策、関連テーマに 関するセミナーの開催などがある。 ② ロンドン ロンドンの人口は約 800 万人で、そのうち 37%が外国生まれである。2012 年オリン ピック・パラリンピック大会のロンドン開催が決まったのは 2005 年であったが、ロンドン市長 は、開催地選考において、ロンドンには世界が詰まっている("the world in one city") とダイバーシティ(多様性)をアピールした。 そして、開催地に選ばれると、ロンドン大会を誰もが楽しめる、歴史上最もアクセスしや すい大会にすることを約束した。ロンドン・オリンピック・パラリンピック組織委員会 (LOCOG)は 2008 年にダイバーシティ及びインクルージョン戦略を策定し、誰もが歓迎 され、尊重されていると感じられる文化を創造することを目標に掲げ、そして、ダイバーシテ ィ及びインクルージョン・ビジネス憲章を定め、LOCOG の雇用や調達において、マイノリティ が不利にならないようにすることを目指した。 また、2010 年に、ロンドンで移民統合を進める欧州都市が参加する統合都市会議 が開かれ、都市の多様性と平等の推進のために、政策形成、サービス提供、雇用、調達 49 の4分野での都市の責務を謳った「統合都市憲章」が策定され、ロンドン・ベルリン・ロー マなど 17 都市が署名した。その後、署名都市は35都市に拡大した。 ③ ロンドン(ルイシャム地区) 市内のルイシャム地区で実施された「コミュニティビジネスサポートプログラム」は、マイノリ ティ住民へのビジネス支援サービスである。 まずコミュニティ組織から、継続してコミュニティのために働くことができると思われる人を推 薦してもらう。その人にビジネス支援に特化した研修を受けてもらい、ビジネスアドバイザー を目指してもらう。研修を修了し資格を取得したビジネスアドバイザーは、マイノリティに対 して必要な支援や助言を提供し、起業支援を通して社会への関わりを促した。 また、同地区では選挙で選出された若者代表が、年間3万ポンド(約 450 万円) の予算執行権を持つヤングメイヤーとなる事業がある。この事業は区長の提案により、若 い世代の声を政策に反映させ、施策を効率的に実現することを目的に 2004 年から実 施されている。 ④ オスロ オスロでは、国籍の有無にかかわらず、合法的に滞在している全ての移民の子供と、母 国で初等教育を受けていない成人が義務教育の対象となる。これらの初等教育はノルウ ェー語で行われる。児童はティーチングアシスタントやバイリンガルの教員によるサポートを受 けながら授業に参加し、10 歳以上の児童はノルウェー語集中クラスを受講し、その後通 常のクラスに編入するシステムとなっている。 また、オスロでは様々な事業を通して、語学研修事業を行っており、多くの事業は語学 研修と就業支援とを結び付けたものである。例えばノルウェー語を学びながら、仕事に必 要な単語を学んだり、実際に会社を起業したりすることを体験するプログラムがある。 さらに、企業とのネットワークミーティング、高等教育機関との協定書締結、リクルート企 業との協働などにより、高等技能を持った移民と市内の企業とのマッチングを支援する「ジ ョブマッチオスロ」という施策を実施している。 ⑤ ベルリン ベルリン市のノイケルン区は、移民の背景を持つ住民の割合は約4割となっている。こ の地区において、行政や市民社会と分断されて生活し、貧困や失業などの問題を抱えて いる住民を対象に、「移民の女性による家庭訪問制度」という事業が実施された。 移民の背景を持つ家庭に生まれた子供の将来のチャンスを高め教育における成功を 高めることが主な目標となっている。 50 この事業は移民に対する言語習得支援のほかに、親の教育能力の向上も事業の目 標としていることと、家庭を直接訪問して支援を行うことが特徴となっている。この事業はベ ルリン市の他の地区にも波及し、更に外国の都市にまで拡大している。 ⑥ ソウル 韓国では、在住外国人のための総合支援機関「ソウル・グローバルセンター」を設立・ 運営している。センターでは韓国人と同等の生活が送れるよう、10 か国語(英語・日本 語・中国語・ベトナム語等)で、住居・交通・教育・医療・金融などの生活相談に応じて いる。また、相談の他に自動車運転免許証の発給といった生活便利サービス、外国人 投資家向けのビジネス支援、韓国語講座をはじめとする各種教育プログラムの実施まで の業務を行っている。 また、「ソウル・グローバルセンター」はソウル市内にあるさまざまな外国人支援センターの 司令塔も務めていて、それぞれの機関と連携しながらソウルに住む外国人を多角的に支 援している。中でも特定国家・民族の人々が集住するエリアには、「グローバルビレッジセン ター」を設置していて、銀行、病院、薬局の利用などの生活支援情報提供、外国人のた めの文化講座など、よりきめ細かいサービスを提供している。 ⑦ ニューヨーク ニューヨーク市は非緊急の電話通報サービス「NYC311」を 2003 年から提供してい る。このサービスは、180 言語でアクセス可能なシステムで、NYC311 オンラインや携帯 用アプリケーション、フェイスブック、ツイッターなどによって、市民自らが市の情報やサービス にアクセスできる。 現在は非緊急通報電話に加え、オンラインで政府情報の提供や相談内容のデータベ ース化と公表を行っている。このシステムは市民が迅速かつ容易にニューヨーク市の情報や サービスにアクセスできるよう設定されており、2012 年には国連公共サービス賞を受賞し ている。 参考文献:JIAM メールマガジン「多文化共生社会に向けて」 第 82 回 国際人流 2013.12 移民統合をめぐる欧州都市のネットワーク CLAIR メールマガジン 2013 年6月配信 自治体国際化フォーラム Jul.2008 CLAIR REPORT No.404 51 <資料3> 多文化共生の推進事業に関するアンケート 概要 (1)調査方法 Eメールにて調査票を送付・返信(希望する対象には郵送にて調査票を送付・返信) (2)調査期間 平成 27 年 7 月 6 日~7 月 24 日 (3)調査対象及び回答数 区市町村 59 件 国際交流協会 20 件 外国人支援団体 37 件 (4)アンケート調査結果の見方 ①回答は全て百分率(%)で表し、小数点以下第2位を四捨五入している。したがって、数値 の合計が 100.0%ちょうどにならない場合がある。 ②基数となる実数n(number of cases の略)は設問に対する回答団体数である。 ③回答の比率(%)は、その質問の回答者数を基数として算出した。したがって、複数回答の設 問は、全ての比率を合計すると 100.0%を超えることがある。 ④統計数値を考察するに当たり、いくつかの選択肢をまとめて表現する場合など、“○割”という表 現を用いていることがある。その際の目安は概ね以下のとおりとしている。 例:40%台 表記 範囲 約4割(4割) 4割強 4割台半ば 5割弱 約5割(5割) 40.1~40.9% 41.0~ 42.5~ 47.6~ 49.0~49.9% (40.0%) 42.4% 47.5% 49.0% (50.0%) アンケート結果(概要) (1) 多文化共生推進の取組状況(※区市町村のみ) (2) 多文化共生推進への課題等 (3) 国や都(行政)に期待すること、取り組んでほしいこと (4) 東京都国際交流委員会に期待すること、取り組んでほしいこと(※国際交流協会のみ) (5) 自由意見 52 (1) 多文化共生推進の取組状況(区市町村) Q.貴区市町村における多文化共生推進の取組の重要性についてお答えください。 非 常 に 重 要 重 要 で は な い 比 較 的 重 要 ど ち ら と も 言 え な い (%) 全体(n=59) 23.7 54.2 1.7 20.3 (2) 多文化共生推進への課題等 【区市町村】 Q.貴区市町村として、現在課題だと感じていることをお答えください。(〇はいくつでも) (%) 60 50.8 50 n=59 44.1 39.0 40 32.2 30.5 30 25.4 22.0 20 13.6 10.2 8.5 特 に な し そ の 他 10 0 外 国 人 の 実 態 の 把 握 が 困 難 人 員 不 足 外 国 人 へ の 情 報 提 供 方 法 予 算 不 足 相 談 体 制 の 不 足 場 の 不 足 53 日 本 人 と 外 国 人 と の 交 流 の 地 域 の 担 い 手 不 足 理 解 不 足 日 本 人 の 外 国 人 に 対 す る 【国際交流協会】 Q.貴協会として、現在課題だと感じていることをお答えください。(〇はいくつでも) (%) 80 70.0 70 65.0 n=20 60.0 55.0 60 45.0 50 40.0 35.0 40 25.0 30 15.0 20 10 0.0 0 人 員 不 足 外 国 人 の 実 態 の 把 握 が 困 難 外 国 人 へ の 情 報 提 供 方 法 地 域 の 担 い 手 不 足 場 の 不 足 予 算 不 足 相 談 体 制 の 不 足 日 本 人 と 外 国 人 と の 交 流 の 理 解 不 足 日 本 人 の 外 国 人 に 対 す る 特 に な し そ の 他 【外国人支援団体】 Q.貴団体として、現在課題だと感じていることをお答えください。(〇はいくつでも) (%) 40 37.8 n=37 35 29.7 30 29.7 29.7 24.3 25 21.6 20 16.2 16.2 16.2 13.5 15 10 2.7 5 0 資 金 不 足 団 体 ス タ ッ フ の 不 足 外 国 人 の 実 態 の 把 握 が 困 難 理 解 不 足 日 本 人 の 外 国 人 に 対 す る 相 談 体 制 の 不 足 外 国 人 へ の 情 報 提 供 方 法 54 地 域 の 担 い 手 不 足 場 の 不 足 日 本 人 と 外 国 人 と の 交 流 の 特 に な し そ の 他 無 回 答 (3) 国や都(行政)に期待すること、取り組んでほしいこと 【区市町村】 Q.国や都に期待すること、取り組んでほしいことはありますか。(自由記述) 内 容 ◇財政支援 ・各自治体が取り組む外国人支援に関する施策への補助金創設 ・国際姉妹都市提携への補助金交付や 外国人受入れ体制への支援(文化財、駅、おもてなしブース などの多言語化、WIFI 整備)などへの補助 ・多文化共生施策への財政的な支援 ・国や都が、率先して取り組んで欲しい事業を示し、それに対する申請しやすい補助をお願いしたい。 ・国や都には、行政に対しての多文化共生事業に対する補助金を交付していただきたい。 ・市における外国人支援には予算・人員等の制限による限界があり、国や都に、地域に密着した在住外 国人支援を更に充実させて欲しい。 ・事業費の補助 ・補助金の充実 ・国際交流協会に対する財政的支援 ◇情報提供 ・在住外国人が広く情報を入手できるように、対象を市内在住者に限定してないような各市の事業につい て、国や都の HP に掲載するなど情報提供に努めていただきたい。 ・多文化共生のプラン策定の先進事例である自治体の取組状況について、都主導で都下自治体に紹介 していただけるような機会を設けて欲しい。 ・多文化共生の取組に対する情報提供 ・情報の共有 ・多言語での情報提供推進 ◇役割、方向性等の明示 ・定住化・永住化する外国人に対する包括的な方針を国に示してもらいたい。日本語習得や社会適合を どう支援すべきか、国・都道府県・区市町村の役割分担、行政と民間の役割分担はどうすべきか、法によ る明文化が必要 ・都と区市町村との役割の明確化 ・国:施策を打ち出して 10 年近くが経つが、その後の施策の動きは大きく見えない。他国の事例や環境 変化を踏まえて、国の施策の今後の方向性を示されてもよい頃かと思う。 都:都における課題と推進の目的を明らかにし、区市町村との関係を重視して作成していただきたい。 ◇医療・専門的通訳 ・広域の医療通訳ボランティア制度の仕組み作り ・通訳ボランティア組織のブロック毎への配置。医療をはじめ通訳に関する問い合わせがあるが、自治体単 位で専門通訳ボランティア組織を設立するのは難しく、広域で活用できる制度を望む。 ・広域通訳者、専門的な通訳派遣等、単独の区市町村では対応が難しい広域課題への対応 ◇その他 ・定住外国人が増える中で、日本語ボランティア教室の重要性が高まっているため、国や都でも「日本語を 教えるボランティアの養成講座」や「低所得者に向けた日本語教育」などの外国人の日本語教育支援を 55 多文化共生施策として力を入れて取り組んで欲しい。 ・どの区市町村でも使用できる汎用性の高い情報提供ツールの作成(多言語(またはやさしい日本語) による) ・地域で開催する語学講座や国際交流イベントへの講師派遣や経費助成を検討していただけると、地域 住民の語学力の向上及び交流事業にも広がりが出ると考える。 ・国際交流関連の団体・ボランティアへの人的・金銭的補助や支援 ・担当職員だけでなく一般職員に向けた多文化共生の講演会開催 ・合同連絡会議を、情報交換だけでなく、具体的な施策展開につなげる会議として欲しい。 ・各地域の国際交流協会の連携の支援 ・専門職員派遣や島への案内(多言語標記のもの)を制作、配布してもらいたい。独自のみでは限界が あるため。 ・外国語表示基準の作成。それをホームページで公開していただきたい。現状、印刷兼翻訳が一緒になっ て頼んでいる部署が多く、同じ課内でも異なる業者を使っているため、その業者の翻訳によって翻訳が異な り、翻訳された用語等はバラバラになっているからである。それと外国語のページの情報の充実もお願いした い。現状、知りたい情報にたどり着けない外国語のホームページもあるからである。国や都がきちんとした外 国語対応のページがあるならば、外国人にとって的確な情報収集がしやすくなるし、また、翻訳や通訳にと っても参考になる。 【国際交流協会】 Q.国や都に期待すること、取り組んで欲しいことはありますか。(自由記述) 内 容 ◇役割、方向性等の明示 ・在住外国人に関する総合的な政策を立て取り組んで欲しい。 ・東京都は、多文化共生や国際化について、行政計画を策定し、計画的に施策の充実を進めて欲しい。 計画の中には、各区市町村単位では中々取り組めない、広域的施策や情報交換の場を充実して 欲し い。 ・外国人の受け入れについて明確なビジョンを示してもらいたい。外国人を受け入れる以上は、制度を整備 し、親子の日本語学習支援や、児童生徒の学習支援など、サポート体制を整える必要がある。 ・オリンピック、パラリンピックにおける各市国際交流団体への期待の明確化。必要であれば、そのための議 論の場を設けること。 ◇ボランティア支援 ・語学ボランティア活動に対する公的支援 ・通訳・翻訳ボランティアに対する専門的研修機会の充実 ◇その他 ・東京2020年オリンピック、パラリンピックを開催するに当たって外国人の訪問が増えることが予想され る。都内区市町村及び東京都、国が連携してその対応に取り組んでいくことが求められる。 ・地域で開催する語学講座や国際交流イベントへの講師派遣や経費助成を検討していただけると、地域 住民の語学力の向上及び交流事業にも広がりが出ると考えます。 ・外国人も住民であるという視点から、あらゆる分野と協力できる仕組みづくりについて検討して欲しい。 ・子供の英語教育を今の学年よりも下げて、できれば小学校 1 年からきちんとすべきではないかと思いま 56 す。 ・来日外国人への一定期間の日本語学習、外国籍児童・生徒に対する学習支援の義務化 ・外国人対象の防災訓練の参加案内をいただくが、訓練開始時刻が早朝になっており、多摩地域から外 国人に参加してもらうには時間的に早すぎる。また、当協会でも外国人を対象とした防災訓練を行ってい るが、炊き出し大会や都内ツアーと抱き合わせで実施しないと、外国人はなかなか参加してくれない。防災 は地域活動の入口でもあるので、外国人が参加しやすいモデルを検討してほしい。 ・医療通訳の資格 【外国人支援団体】 Q.東京都など行政に期待すること、取り組んでほしいことはありますか。(自由記述) 内 容 ◇財政支援 ・小さな日本語教室でも応募できるような助成金を提供していただきたい。 ・活動資金が足りない。渡し切りの助成金等を考えて欲しい。 ・個別の団体の活動に対して補助金制度はあるが、手続が面倒で、とても利用する気になれない。 ◇情報提供、実態把握 ・近隣等の他の国際交流団体との交流をしたい。他の団体の情報提供をして欲しい。 ・学習者及び家族から進学について相談されることがあるが、どう対応してよいか正直わからない。 どこへ問い合わせるべきかなど細かにアナウンスして欲しい。他には不就学児童が来た場合、どこへ相談すれ ばよいかわからない。就学についての問合せ先を知りたい。 ・外国にルーツを持つ子供たちの実態を把握し、公表して欲しい。特に、外国にルーツを持つ子供たちの高 校進学者数、進学率などの調査を実施し、東京都における外国にルーツを持つ子供たちの入試制度見 直しに反映して欲しい。 ・来日して、情報提供の体制が整っていないため、長期に渡って学ぶ場が見つけられない子供たちがいる。 情報提供体制、学ぶ場の確保などを進めて欲しい。 ・都は都として、区は区として、それぞれのお立場で何ができるかを考え、取り組んでいただきたいと思うが、そ の前にまず、「現場」の見学や在住外国人との懇談等に力を入れていただきたい。 ・日本語ボランティア活動の状況を肌で触れてください。多文化共生に向けた草の根活動が把握できま す。 ◇役割、方向性等の明示 ・東京都に対しては、ぜひとも都としての多文化共生推進プランを策定し、基礎的自治体に対しても同様 のプラン策定の支援を行っていただきたい。特に、外国人児童生徒に対する総合的な支援をお願いした い。 ◇医療・専門的通訳 ・総合的、総括的な相談場所はあっても、個々の問題(たとえば、医療通訳、付添いなど)には対応し ていない。 ・専門的な医療通訳を利用することのメリットを地域の医療機関と外国人住民に伝える仕組みづくり。 ◇場所の確保など ・地域日本語教室に対して、場所の確保と会場費の軽減をぜひ実現させて欲しい。 ・区内の日本語教室は 200 名以上の学習者を支援しているが、いずれの団体も会場の確保が困難であ 57 り高い会場費を学習者に負担してもらっているところもある。生活の基本である日本語習得に関する支援 活動に理解と協力をお願いしたいです。先ず、会場の優先的確保と安価な貸出をお願いします。 ・日本語教室の会場確保が困難・煩雑。優先的な貸出を 20 年以上希望しているが実現しない。 ・日本語教室の場所の確保は、区にお願いしている。行政が場所を自動的に、無料で準備してくれるよう になれば本当に助かるのだが、区のボランティア教室は全てが自主活動なので、区は積極的に関与しようと しない。財政的にも、学習者からは安い月会費を集めて運営しているが、ギリギリである。ボランティアは 全 て自前で交通費も出ない。これでいいのかと疑問に思う。ただ、教室のボランティアの補充については、数年 前から区が養成講座を開講してくれたので、とても助かっている。 ・教室場所の確保・無料化を、区などの自治体任せにせず、都から各自治体に補助金を出して、実現し て欲しい。 ・ボランティアの日本語教室への対応について、区によってずいぶん差がある。同じ東京都の中で同じ活動 をしながら、教室確保さえままならない教室があるかと思えば、区(やその支援)で研修が行われていたり する例もあることは疑問である。それぞれの教室の個性も活かしながら、教室確保の上で便宜を図る、学 習者への広報のサポートをするといった最低限のバックアップはどの区(市)でも行われるようであって欲しい。 ・教室開催に当たって、会場を確保する際に支援して欲しい。ボランティア団体に優先的に地元のコミュニ ティーセンターの会場を使用できるようにして欲しい。 ◇教育・就労支援 ・学齢超過(15 歳以上)の母国で 9 年間の基礎教育を終えて来日した子供たちは、中学校に受け入 れてもらえず、学びの場や居場所がない。当団体は、10 年にわたりこうした子供達を高校につなげてきた。 2012 年から学齢超過生も文部科学省の拠出を受けた国際移住機関(IOM)「定住外国人の子供 の就学支援事業」の対象となり、当団体も同事業を受託してきた。しかし 2015 年 2 月に同事業が終了 し、本年度から開始した後継事業の受託については自治体との連携が必要である。一方、学齢超過の子 供たちは中学校にも高校にも属していないため、そもそも東京都に担当部署がなく、東京都との連携は非 常に難しい状況である。当団体の子供たちは日本に定住していく子供たちがほとんどである。日本の高校 進学率が 98%を超える中、高校に進学できなければ、将来の選択肢は非常に限られてしまう。ぜひ東京 都には、こうした子供たちの学ぶ権利が保障されていない状況を鑑みて、早急に支援体制を整備していた だきたい。 ・来日後、日本で学校教育を受けた子供たちは、多言語、多文化な多様性あふれる人材として育ちつつ ある。こうした若者が社会で活躍できるように就労等の施策や援助を考えて欲しい。 ・特に子供の教育や子育てに関する事項や医療について十分な予算措置を行い、ボランティア人材に任 せることなく専門家による支援拠点を複数設置すべきです。問題は人材の不足ではなく、人材を配置する ための予算の不足だと感じています。 ・日本の英語教育が、高校、大学試験のためでない、人と話していく力を育む教育に変わるべきと考えま す。また、自分の考えを人に小さい頃から話せて行ける環境創りが大切です。どんな人材を日本は育ててい きたいかという原点から、今の学校教育の在り方を考え直すことも重要だと思います。 ◇ボランティアの活躍支援 ・現在、地域の日本語教育の52%は、ボランティアが担っているという。そのボランティアも、都内にはプロ 同様の知識を持ち、長い経験を積んだ人が多数活動している。各ボランティア団体が地域で活動しやすい ように、もう少し組織化できないだろうか。外国人に共通語としての日本語を学んでもらうことは、まさに日本 文化を理解してもらうことに他ならない。都には、「オリンピックに向けて」などでなく、もっと長期的な目で、長 寿社会の多文化共生を考えていただきたい、と切に願っている。 58 ・日本語ボランティアは、少なくとも週に 1 回、近隣の外国籍住民とかかわり、お互いの状況もある程度わか り、信頼関係を結んでいる。この関係を、防災問題などにぜひ役立てて欲しい。また、オリンピックに向けて 謳っている「おもてなし」は日本語ボランティアが日頃実戦していることなので、地域の日本語ボランティアの 力を活用して欲しい。 ◇その他 ・多文化共生についての研修会を実施して欲しい。出来れば三多摩地区で。 ・各駅に外国人対応のインフォメーションセンターの設置 ・外国人は高校進学がとても大変です。外国人児童生徒に対する日本語支援と教科支援を強化して、 外国人でも都立高校に入れるように(現状は定時制入学が多い)教育行政の改善をお願いします。 ・東京都は他の地域と異なり在住外国人はいろいろな面で多様化し、特にアジア圏の人が増加していま す。それだけに多文化共生社会に突入した東京都は多くの課題を抱えています。 ① 多文化共生に対する都民の意識もまだまだです。地域住民が納得し多文化共生社会を推進でき ることが基本と考えます。 ② “日本語を母語としない子供たち”にとって、言葉の問題は特に教育現場では切実です。彼らへの 支援は待ったなしです。彼らは東京都の宝です。 ③ 日常生活の場は情報の多言語化には限界があり、日本語でのコミュニケーションが不可欠です。地 域社会が安心・安全な環境を推進していく上でも“日本語を母語としない人”に日本語学習の機会を 一層広める必要があります。 ④ “日本語を母語としない人たち”を意識し、多言語化の限界を越えて、分かり易くやさしい日本語で 情報収集と情報発信を行う事も重要と考えます。 これらの課題解決に向けた取組を行う機関・組織・システムを設けて、実効性のある行動を期待します。 ・多くの人の意識が高まるように、課題や問題についての告知を積極的に行ってください。 ・日本語教室で学んだ各国の人々がオリンピック、パラリンピックが開催される時に、母国の選手あるいは来 日する観客のためにボランティア通訳として積極的に活躍できるようなシステム作りや登録制度、活動内容 の講座などを充実させて欲しい。 ・文化庁研修の「地域日本語教育コーディネーター」を、東京都が各区に準公務員として配置し、地域の 日本語教育の便宜・活性化を図って欲しい。 ・各自治体により外国人への対応が異なる場合が多く、行政機関への多文化共生意識の周知徹底が必 要です。 ・個々のグループでは難しいような、外国人が参加できるような行事の企画。ただし、善良な外国人の参加 を望む。(例えば防災訓練) ・連絡会という集まりがしばしば案内が来ます。参加している団体のその地域での問題の紹介に終始し、東 京都の情報収集の場でしかないので、出席する意味がありません。 59 (4) 東京都国際交流委員会に期待すること、取り組んでほしいこと(国際交流協会) Q.東京都国際交流委員会に期待すること、取り組んでほしいことはありますか。(自由記述) 内 容 ◇情報共有・連携支援 ・周辺地区の自治体の国際交流機関との連携を図りたいので、その調整や仕切りをお願いしたい。 ・他の国際交流協会とスムーズに連携できるように、お互いが知り合う機会を作って欲しい。 ・(現在もすでに開催していただいていますが、)他自治体、国際交流協会等との情報共有の場を御提 供いただくことは、当協会の事業を検討する上で参考になります。 ◇体制の強化 ・事務局体制の拡大強化・法人化。 ・委員会の事務局体制を充実していただき、多文化共生についての研修会や講座を拡充していただけれ ばありがたい。 ◇サイトでの情報提供の充実 ・都内の国際交流団体のイベントなど一目でわかるサイトなどがあるといい。 ・ポータルサイトの充実。 ◇その他 ・啓発や人財育成のための講座の開催など地域活動へのきっかけづくり ・医療通訳ボランティアシステムの確立 ・各区市の交流協会及び活動団体への多面的な支援策の充実 ・国際交流の活動母体は市町村に依って大きく異なります。団体組織の大小、運営組織形態(財団法 人か否か等)、補助金の多寡・・・。当市のような人不足、予算不足という制約の中で活動している実態 に対して、都の委員会として援助できることがあれば提案や指導をいただきたい。実のところ、従前の活動を 行うのも精一杯であるのが実態です。 ・外国人の子供の教育に関する支援。予算面、広報面。例えば多言語高校進学ガイダンスの予算や広 報の支援。(都立高校入試制度が大きく変わったが、ガイドブックの改訂(8言語への翻訳を含む)は 予算がなく、できそうにありません。) ・多文化共生社会むけて、都民の国際理解促進のプログラムの必要性を感じている。誤った歴史認識や 知識が差別やいじめを生む。そういうことのないように相互理解のための学習が必要である。 外国人相談会は、東京外国人支援ネットワークが機能し成果を上げている実感している。このことに加 え、喫緊の課題は児童・生徒への日本語・学習支援である。児童・生徒への教育の機会は早ければ早い ほど効果的である。行政と学校が連携して対応する必要がある。特に中学 2 年~3 年で連れて来られた 場合、高校受験は困難をきわめる。 ・多文化共生推進を所管する担当部署を庁内に設置し指導・支援を期待したい。 60 (5) 自由意見 【区市町村】 Q.ご意見等ございましたらご自由にお書きください。(自由記述) 内 容 ・2020 年のオリンピック・パラリンピックを契機として、多文化共生を推進していきたい。 ・現在、本区において、多文化共生に関する施策の担当は交流促進課となっており、組織の人員は7名 であるが、主となる業務は都市交流の分野であるため、多文化共生を推進するための体制が構築されて いるとはいえない。今後は、多文化共生を主務とする組織や人員の整備が必要と考えている。 ・国際交流協会などへの補助金はあるように思いますが、当市のような形態をとっている行政に対する補助 金がありません。生活ガイドブック作成などに対する補助金の申請ができるようにしていただくか、補助金の 新設を希望します。 ・人員体制、他業務との兼ね合いから、取組が自治体裁量に任されると優先度が低くなりがちであるため、 具体的な事業展開等の目標・方針を示していただいた方が、取り組みやすいと思われる。 ・都において、多文化共生社会が必要である理由が、どの行政課題の解決のためなのかを明らかにする必 要があると感じます。また指針の作成によって都道府県と区市町村との関係も議論されるものと思います が、スケジュールを見ると、全 4 回で作成されるというのは、やや一方的な感じもあります。 ・東京都からみた多摩エリア自治体の望ましい姿(自治体の国際交流や海外ビジネス)があれば示して 欲しい。 【国際交流協会】 Q.ご意見等ございましたらご自由にお書きください。(自由記述) 内 容 ・2020 年の東京オリンピックを控え、日本が外国人を迎え入れることに、注目が集まっている。多文化共 生推進にとっては大きなチャンスであり、国際協会の果たす役割は大きくなるに違いない。東京都や国の大 きな枠組みでの支援を期待している。 ・当協会にとっては、多文化共生事業の推進に当たり、外国人への実態把握等、今後の施策展開のた めには、行政の関わりが何よりも重要なことだと考えています。 ・「多文化共生」は、言語面などの支援対象者としての外国人と、言葉も含めて不自由なく暮らしている外 国人とは分けて考えるべきではないかと思う。不自由なく生活している外国人は、コミュニティの中で「外国 人」として位置付けられることが、不本意なのではないかと思う。オリンピックで来日する外国人は「お客さま」 として「おもてなし」の対象であるが、今後日本で不自由なく生活している外国人が増えていくと、「移民社 会」としての対応を考えなくてはならないと思う。 ・現状は、市町村に依って活動には格差があります。オリンピック、パラリンピック開催も競技地か否かで差が あります。こういったアンケートで期待するものは何でしょうか?・・・それを知りたいと考えます。多文化共生 推進指針(仮称)というものを策定されても、我々の運営環境下では重荷となることしか想像できませ ん。 ・本件の各設問について、その趣旨を記載し、何を聞き出したいのか明確にして欲しい。質問も回答しやす い表現にしていただくと有り難い。 61 【外国人支援団体】 Q.ご意見等ございましたらご自由にお書きください。(自由記述) 内 容 ・東京都が中心になって、在住外国人も日本人も生き生きと暮らす、「国際都市」をつくっていただきたい。 ・東京都が庁内体制を整備し、この課題に取り組み始めたことを心強く思います。都内にはこの課題に対 しそれなりに活動している団体があるものの、そうした団体のハブになる組織が見当たらなかったので、ぜひ他 県の地域国際化協会を超える役割を、これから整備していただきたいと願っています。 ・一つのボランティアグループの出来る事は、あくまで草の根での人的つながりの強化。行政は、もう少し大き なくくりで、外国人と日本人がお互いに理解しあい、相手を尊重しあえるような場を考えて 欲しい。親の都 合で連れてこられた子供達が「日本語ができない」為に、落伍者とならないような仕組みを考えて欲しい。 ・外国人支援に関わる業界では、西日本(愛知など)の先進地域に比べ、東側、特に東京都の対応の 遅れが指摘されています。外国人や外国につながる子供・若者、その家族の日本への定住・永住志向は 高まり続けており、また、これまで日系中南米人に人口が偏っていた西側の地域でも、フィリピンや中国など から人が流入し、国籍・言語などは全国的に多様化しています。この点に置いて、以前より世界各国から 外国人が集まる多文化都市東京が、全国に先駆けて発信できるモデルを作ることができると確信していま す。 ・介護や看護、その他の労働力を海外からの人材に求めるのではなく、すでに日本に住む外国人に対して 多くを期待し、仕事の機会を積極的に提供していただきたい。 ・日本語ボランティアの活動、実態をよく知って、その活動に協力、支援し、そして日本語ボランティアと連 携、そして活用してもらいたい。 ・外国人定住者で経済的困難者に対するバス旅行等の行事設定ボランティア団体に対する助成活動を 拡大して欲しい。 ・ボランティア日本語教室にご理解とご協力をお願いします。24 年間、活動を続けています。コミュニティ財 団は良くしてくださっていますが、会場に関する状況が改善されません。よろしくお願いいたします。 ・在日外国人へ情報提供するためのメディアがないのが悩みです。インターネットで検索しない限り、外国人 が自由に地元の情報を入手する手段がない。逆に言えば、ボランティア団体が広く情報提供など、知らせる ことができない。 ・このアンケートを制作された方たちが想定されている問題は、全てあります。しかし、問題は個々人でちがう し、日本人と変わらないことが多いです。私たちと出会えない人に、問題があると思います。このようなアンケ ートは、交流協会などに登録している日本語支援以外の団体にも実施したほうが良いと思います。 ・アンケートに答えるのが外国人の生活活動の実態を捉えていないと難しいと感じた。 ・本アンケートを正確に実施記入するには質問内容に沿った情報収集が必要です。当クラスではそのような 情報収集は実施しておりません。 ・本教室は、日本語授業を通して言語の習得と地域との交流を目指しています。学習者のプライベートに 関わることは授業の中の会話で出てくるかもしれませんが、重要事項以外はスタッフと職員で情報を共有す ることはありません。プライベートに関わる質問は回答不可能でした。 62 <資料4> 多文化共生推進検討委員会 多文化共生推進検討委員会設置要綱 平成13年6月15日 13生文振国第147号 生活文化局長決定 改正 平成18年3月31日 17生文振事第603号 改正 平成19年3月30日 18生都管法第1714号 改正 平成22年7月9日 22生文総総第825号 改正 平成27年7月1日 27生都地第682号 (設置目的) 第1 外国人もより住みやすく、活躍できるまちにするための重要な課題について具体的に検討するため、 多文化共生推進検討委員会(以下「委員会」という。)を設置する。 (検討事項) 第2 委員会は、生活文化局長の諮問に応じて、外国人に係る東京都の施策の推進に関する事項に ついて検討し、同局長に助言する。 (構成) 第3 委員会は、外国人及び日本人の学識経験者、NGO等から、生活文化局長が依頼する20人 以内の委員で構成する。 (委員任期) 第4 委員の任期は1年とし、補欠の委員の任期は前任者の残任期間とする。ただし、委員の再任は 妨げない。 (委員長及び副委員長) 第5 委員会に委員長及び副委員長を置き、委員の互選により定める。 2 委員長は、委員会の会務を総理する。 3 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故あるときは、その職務を代理する。 (会議等) 第6 委員会は、委員長が招集する。 2 委員会は、委員の半数以上が出席しなければ、開くことができない。 3 委員会の議事は、出席した委員の過半数をもって決し、可否同数のときは、委員長の決するところに よる。 4 委員会を招集するときは、各委員に対して、委員会の日時、場所、議題及びその他必要な事項をあ らかじめ通知する。ただし、緊急の場合その他やむを得ない事由の場合は、この限りではない。 5 委員長は、必要に応じて委員以外の者の出席を求めて、意見を聴くことができる。 (公開等) 63 第7 委員会は公開で行うものとする。ただし、委員会の決定により非公開とすることができる。 2 委員会の会議録は、原則として公開する。 (庶務) 第8 委員会の庶務は、生活文化局都民生活部において処理する。 (補則) 第9 この要綱に定めるもののほか、委員会の運営に必要な事項は、生活文化局長が定める。 附則 この要綱は、平成13年6月15日から施行する。 附則 この要綱は、平成18年4月1日から施行する。 附則 この要綱は、平成19年4月1日から施行する。 附則 この要綱は、平成22年7月16日から施行する。 附則 この要綱は、平成27年7月1日から施行する。 64 2015(平成 27)年度 多文化共生推進検討委員会委員名簿 (五十音順、敬称 略) 氏 名 あさおか ひでお 浅岡 秀夫 いしわた あきら 石綿 晃 きしもと まさとし 岸本 正寿 きむ そんじょん 金 瑄 廷 すずき あきひこ 鈴木 昭彦 すずき やすし 鈴木 靖 公益財団法人目黒区国際交流協会事務局長 国際交流のおみこしを担ぐ会 一般社団法人 OCNet ま う ら に み か ひろせ ひろみ 広瀬 公巳 みよし かつのり 三好 勝則 もりた まさ と 森田 昌仁 やすだ きょうこ 安田 恭子 やまざき まさよ 山崎 雅代 やまわき けいぞう 山脇 啓造 通訳・翻訳業 東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター特任講師 NHK解説委員 アーツカウンシル東京 株式会社ローソン ご ち え 慧槿 ボランティア コミュニケーション本部 社長室 明治大学国際日本学部教授 ゴチエ ふいぢん 人事部アソシエイト 中央区文化・国際交流振興協会 る っ く ま ん 王 機構長 JPモルガン証券株式会社 ルックマン わん 代表理事 新宿区地域文化部多文化共生推進課長 マウラニ 美佳 広報担当 留学生 丹 は せ べ 職 八王子市市民活動推進部多文化共生推進課長 たん 長谷部 現 電通ダイバーシティ・ラボ 認定NPO法人多文化共生センター東京 65 理事・顧問 多文化共生推進検討委員会開催実績 【第 1 回】 開催日:2015(平成 27)年 7 月 9 日 議 事:「多文化共生社会推進のための指針について」 【第 2 回】 開催日:2015(平成 27)年 9 月 8 日 議 事:「東京都の多文化共生推進における課題及び施策目標(案)について」 【第 3 回】 開催日:2015(平成 27)年 11 月 5 日 議 事:「多文化共生推進指針(仮称)の素案策定に向けた検討について」 【第 4 回】 開催日:2015(平成 27)年 12 月 21 日 議 事:「多文化共生推進指針(仮称)の素案について」 66