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山岸俊男プロファイル - 東京大学 進化認知科学研究センター

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山岸俊男プロファイル - 東京大学 進化認知科学研究センター
山岸俊男プロファイル
経歴
1948年名古屋市に生まれる。東海学園高等学校、一橋大学社会学部卒、同大学
社会学研究科修士課程・博士課程修了
1981年 ワシントン大学社会学博士
1981年 北海道大学文学部助教授
1985~88年 ワシントン大学社会学部助教授
1988~2011年 北海道大学文学部助教授・教授を経て大学院文学研究科教。
2007~10年 北海道大学実験社会科学研究センター、センター長
2012年 玉川大学脳科学研究所教授
2013年 東京大学進化認知科学研究センター特任教授
1990年 Zentrum fur Umfragen, Methoden und Analysen (ドイツ)客員研究員
1999年 La Trobe 大学(オーストラリア)リオティント著名客員フェロー
2000年 フルブライト研究員(スタンフォード大学)
2001年 La Trobe 大学(オーストラリア)高等研究所著名名誉フェロー
2002~3年行動科学高等研究センター(アメリカ)フェロ
2005~11年 日本学術会議会。
2002~7年 21 世紀COE「心の文化・生態学的基盤に関する研究教育拠点」拠点リーダー
2007年~9年 グローバルCOE「心の社会性に関する教育研究拠点」拠点リーダー
1998年日経経済図書文化賞、日本社会心理学会島田賞受賞。2004年紫綬褒賞受賞。その他、学会賞等8
回受賞。
研究業績
著書・編書数(含共著) 20
審査のある研究誌に掲載した論文数(含共著) 123 (内海外研究誌英文論文数 62)
論文集への寄稿論文数((含共著) 59 (内英文論文数 31)
紀要論文数 77
総被引用数(Google Scholar による) 7703, h-index 37, g-index 85
主要著書編著
『社会的ジレンマのしくみ』(サイエンス社, 1990 年)
『信頼の構造』(東京大学出版会, 1998 年) (英語版: Trust: Evolutionary game of mind and society, English
Edition. (Springer, 2011) (他、韓国語訳あり)
『安心社会から信頼社会へ』(中央公論新社, 1999 年)
『社会的ジレンマ』(PHP 出版, 2000 年)
Cultural and ecological foundations of the mind (Hokkaido University Press, 2007 年)
Evolution, culture, and human mind (Psychology Press, 2009 年)
『文化心理学(上・下)』(倍風館, 2010 年)
主要研究論文
Motivational bases of the public goods problem. (Journal of Personality and Social Psychology 50, 1986)
The provision of a sanctioning system as a public good. (Journal of Personality and Social Psychology 51, 1986)
Trust and commitment in the United States and Japan. (Motivation and Emotion 18, 1994)
Uncertainty, trust and commitment formation in the United States and Japan. American Journal of Sociology 104,
1998)
Preference vs. strategies as explanations for culture-specific behavior. (Psychological Science 19, 2008)
The private rejection of unfair offers and emotional commitment. (Proceedings of the National Academy of
Science USA 106, 2009)
Micro-macro dynamics of the cultural construction of reality. Advances in Culture and Psychology 1, 2010.
Is behavioral pro-sociality game-specific? Pro-social preference and expectations of pro-sociality.
(Organizational Behavior and Human Decision Processes, 印刷中)
Rejection of unfair offers in the ultimatum game is no evidence of strong reciprocity. (Proceedings
of the National Academy of Science USA, 印刷中)
研究内容:社会心理学に社会を取り込む作業としての「マイクロ・マクロ社会心理学」の展開
1.人間社会における利他性についての心理・社会的基盤に関するニッチ構築アプローチ
山岸の研究の中心には、人とヒトの利他性・協力性の解明を心理基盤と社会制度的基盤が互いに支え合う社会
的ニッチ構築(秩序形成)のあり方に求め、そうした社会的ニッチ構築のモデルから導き出される人の行動傾向を行
動実験を用いて検証することでモデルの精緻化を図る、社会的ニッチ構築アプローチがある。このアプローチは、人
の行動は集合的にインセンティブ構造を作り出していると同時に、そのインセンティブ構造への適応行動を促進する心
理メカニズムを生み出し、それが特定の行動を促進することで人々の間に予測可能な行動パターンであるインセンティ
ブ構造を再生産するとするものである。このアプローチの独創性と意義は、2009 年にノーベル経済学賞を受賞した政
治学者エリノア・オストロムへのノーベル賞授与公式理由書の中で、「オストロムの研究に先立つ山岸の研究を顕著
な例外とする」と述べられているように、またこのアプローチを提案した下記の論文が近年経済学者等からの注目を
集め730を越える引用を受けていることにも示されているように、経済学や政治学をはじめとする社会科学で広く認めら
れている。
Toshio Yamagishi. The provision of a sanctioning system as a public good (Journal of Personality and Social
Psychology, 1986).
2.信頼研究
利他性・協力性についての研究を進める中で明らかとなった一つの事実は、人々の協力行動が他者の協力性に
対する信頼に大きく依存しているという事実である。山岸はこの事実を他者一般に対する信頼と協力行動の日米文
化差と結びつけ、日米社会における秩構築原理(社会的ニッチ構築のあり方)の違いが他者一般に対する信頼が
もつ適応性に社会差を生み出しているとする理論モデルを構築した。このモデルによれば、機会費用の低減を促進す
る一般的信頼に基づく行動が適応性を持つのは、取引費用に比べ機会費用が大きなアメリカ的社会においてであ
る。山岸はこの予測を一連の実験研究および調査研究によって検証している。この山岸による信頼研究は、信頼に
ついての心理学的アプローチと社会科学的アプローチを統合したものであり、マイクロ・マクロ社会心理学のひとつの
方向を示すものである。本研究の成果は『信頼の構造:こころと社会の進化ゲーム』(東京大学出版会, 1998;その
後 2001 年に韓国語版が、2011 年に英語版 Trust: Evolutionary game of mind and society, English Edition (Springer)が出版
されている)としてまとめられている。また研究成果を発表した下記の代表的論文はこれまでに、心理学のみではなく社
会化がうの広範な分野で 1000 に迫る引用を受けている。
Toshio Yamagishi & Midori Yamagishi. Trust and commitment in the United States and Japan. ( Motivation and
Emotion 18, 1994)
3.社会的ニッチ構築の視点からの“心の文化差”の研究
上述の信頼研究で明らかにされた秩序形成(ニッチ構築)原理の社会差は、人々の行動が生み出すインセンティブ
構造の社会差としての側面と、そうしたインセンティブ構造のもとでの適応行動を生み出す心理メカニズムの社会差と
しての側面をともに備えている。これまで“心の文化差”として扱われてきた現象は、こうしたニッチ構築の観点からは、
人々が自ら生み出す社会的ニッチへの適応行動を促進する心の道具として理解される。山岸は一連の実験研究を
通して、こうした適応行動としての“心の文化差”の多くが実験室に作り出された社会的真空状態(社会的ニッチが存
在しない状態)で消滅することを示すことで、社会的ニッチ構築アプローチの有効性を明らかにしている。これらのニッ
チ操作実験のひとつである下記の論文は、一般科学誌 Science において Editor’s Choice として選ばれている。
Toshio Yamagishi, Hirofumi Hashimoto and Joanna Schug. Preference vs. strategies as explanations for
culture-specific behavior (Psychological Science, 2008).
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