Comments
Description
Transcript
日本国内における小型電気・電子機器用途の金の 消費
日本金属学会誌 第 78 巻 第 8 号(2014)303309 日本国内における小型電気・電子機器用途の金の 消費量・ストック量および使用済み機器中の 含有量の推計 吉 村 彰 大 松野泰也 東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻 J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 78, No. 8 (2014), pp. 303 309 2014 The Japan Institute of Metals and Materials Estimation of the Annual Consumption and In Use Stock of Gold for Small Electrical and Electronic Equipments (EEEs), and the Amount of Gold Contained in Discarded EEEs in Japan Akihiro Yoshimuraand Yasunari Matsuno Department of Materials Engineering, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo, Tokyo 1138656 The recovery of gold from secondary sources like electronic wastes has received much attention because of the many industrial applications and high market prices of precious metal. Electrical and electronic equipments (EEEs) account for approximately 10 of annual demand for gold in Japan as well as in the world. Therefore, waste of EEEs (WEEEs) contains much amount of gold, whose grade can be much higher than that of natural ore. Substance flow analysis (SFA) is a useful tool for determining the flow and inuse stock of substances in specific geographic regions. In this work, we estimated the annual consumption and inuse stock of gold for small EEEs, and the amount of gold contained in discarded EEEs during 19842012. As a result, the maximum amount of consumption for EEEs production, inuse stock in EEEs and discard in WEEEs were 8.87 t in 2006, 44.5 t in 2005 and 6.90 t in 2008, respectively. Mobile phone accounted for the largest share of the recent consumption and discard of gold, whereas, audio system has accounted for the largest share of the inuse stock for many years. This difference was caused by the average lifetimes and parameters of Weibull distributions for EEEs. [doi:10.2320/jinstmet.J2014014] (Received March 4, 2014; Accepted May 13, 2014; Published August 1, 2014) Keywords: gold, substance flow analysis, electrical and electronic equipment (EEE), inuse stock 費が大きい等の問題があり,後者はエネルギー消費や設備の 1. 緒 言 規模が小さくて済むという利点があるが,廃液の発生,処理 に伴う環境負荷が大きいという問題がある45). 金( Au )には,宝飾品や投資対象として需要のみならず, 工業用途としての電気・電子機器(Electric 一方で,先述した電気・電子機器は多くの金を含有してお electronic り,電気・電子機器の廃棄物(Waste of EEE: WEEE)を鉱石 EEE)向け需要も存在する.2012 年では,日本 としてみた場合の品位は天然鉱石を上回り,数百 ppm に達 国内における 332 t の需要全体に対して電気・電子機器向け する場合もある68) .そのため,このような廃棄物を都市鉱 は 38.4 t1) ,世界全体では 3890 t に対し 407 t と,いずれも 山として規定し,これらをリサイクルすることによる資源の equipment: 全体の and 10程度を占める2).今後は電気・電子機器の需要増 加に伴い,需要全体に占める割合の増加が予想される. 有効利用が提案されている9,10). 廃棄された電気・電子機器を都市鉱山として有効利用する 金は,その採掘・製錬に際して大きな環境負荷を伴う.一 ためには,金の採掘,製錬から製品への消費,製品の廃棄に 般的な鉱石中の金の品位は数 ppm である3)ため,1 g の金の 至るまでのフローを明らかにする必要がある.このような社 生産のために 1 t 程度の鉱石を採掘する必要がある.また, 会における素材のフローの解析はマテリアルフロー分析 金の製錬には大きく分けて乾式法と湿式法が存在する.乾式 (Material flow analysis: MFA)と呼ばれ,素材中の特定の元 法は,銅の製錬過程に鉱石または金を含有するスクラップを 素のみに着目した場合は物質フロー分析( Substance 投入し,粗銅の電解精錬時に得られるアノードスライム中の analysis: 金を回収する手法であり,湿式法はシアン化合物や王水など 銅13) など,後者の例としては亜鉛14) ,インジウム15) などに で金を溶解させ,溶解した金を電解精錬で回収する手法であ 対して行われている.金に関しては,日本国内の消費・スト る.前者には大型の設備を必要とすることや,エネルギー消 ックに関して,原田らの既往研究がある16) .しかしながら flow SFA )と呼ばれる.前者の例としては鋼材11,12) や この研究では,産業連関表などを用いた概数の把握を主目的 東京大学大学院生(Graduate Student, The University of Tokyo) とした推計であり,製品毎の金の消費量の原単位や製品使用 304 第 日 本 金 属 学 会 誌(2014) 年数を考慮していないなど,より精密な推計が必要と示唆さ れている. Details of EEEs 子機器リサイクル法の適用対象とされる電気・電子機器につ る量を推計した.この結果から,使用済み小型電気・電子機 器に由来する金のリサイクルポテンシャルを評価した. 手 2. 法 本研究では,小型電気・電子機器リサイクル法のガイドラ イン17) において特定対象品目とされる製品の内,製品 1 台 当たりの金の使用原単位が相対的に大きく,また使用済み機 器の廃棄に起因する金の排出量が大きいものを対象とし た18).Table 1 に示す.そして,該当製品に関する金の消費 量,ストック量および使用済み機器に含有される質量を解析 した. 巻 Table 1 Average lifetime, gold content, shape parameter and scale parameter of the small EEEs analyzed in this work. そこで本研究では,日本国内を対象に,特に小型電気・電 いて,金の消費量,ストックおよび使用済み機器に含有され 78 Desktop PC Laptop PC Mobile phone, PHS Smart phone Digital still camera Digital video camera Equipment for car Stereo audio system Portable CD player Portable MD player Mobile audio (flash memory) Mobile audio (HDD memory) Portable game device Electronic dictionary Telephone set Fax machine Video home system DVD player Average lifetime (year) 6.721) 7.421) 2.2922) 2.2922) 4.323) 6.523) 9.8527) 1428) 8.323) 9.423) 10.223) Gold content (mg) 1436) 1506) Depend on the year30) Depend on the year30) 45.92426) 96.62426) 53.2(Navigation)2426), 6.12(Others)19) 34419) 7.62426) 12.82426) 5.92426) Shape param. Scale param. 4.821) 2.221) 3.122) 3.122) 3.123) 3.123) 4.027) 8.421) 7.421) 2.5622) 2.5622) 4.823) 7.2723) 10.927) 3.328) 3.123) 3.123) 3.123) 15.628) 9.2823) 10.523) 11.423) 9.7323) 8.723) 11.62426) 3.123) 10.223) 10.223) 10.228) 10.228) 10.128) 10.128) 8.02426) 16.92426) 13.519) 32.319) 3.2619) 78.919) 3.123) 3.123) 1.5428) 1.5428) 1.8628) 1.8628) 11.423) 11.423) 11.328) 11.328) 11.428) 11.428) SFA には,大きく分けてトップダウン手法とボトムアッ プ手法がある19) .トップダウン手法は,対象とする物質の 各製品への投入量を経年的に把握することで,各年における 社会中のストック量,廃棄量を推計する手法である.一方, ボトムアップ手法は,対象となる物質を含有する製品につい て,製品の含有量(原単位)に生産数を乗じて消費量を推計 し,また原単位に社会中に存在する製品総数を乗じてストッ ク量を推計する手法である. 各製品への金の消費量は,統計により明らかとなっていな いため,本研究では,ボトムアップ手法により対象製品にお ける 1984~2012 年の金の消費量を推計した.具体的には, 各製品に含有される金の原単位を,機械統計20) より引用し た各品目の生産数に乗じて推計した.原単位については各種 文献より得た. Table 1 に出典と共に示す.なお本研究で は,小型電子機器の中でも 1 台あたりの金の含有量が大き Table 2 Number of dismantled samples of feature phone and smart phone analyzed in this work. Feature Smart phone phone Year 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2 ― 2 5 9 14 22 25 26 26 11 4 4 3 2 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 1 4 2011 2 3 2012 2 1 く,かつ生産台数が他の機器に比べて大きいとされる携帯電 話・スマートフォンについては,原単位の経年変化が分析結 果に及ぼす影響が他の機器より大きいと考えた29) .そのた め,これらについては原単位の経年変化を含めた解析を行 Note Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) Obtained from Ref. 30) 2 obtained from Ref. 30), 2 investigated in this work Investigated in this work Investigated in this work (Feature phone) 2 obtained from Ref. 30), 2 investigated in this work (Smart phone) Investigated in this work (Feature phone) 1 obtained from Ref. 30), 2 investigated in this work (Smart phone) Investigated in this work い,金の消費量,ストック量および使用済み機器に含有され る量の精緻化をはかった.まず既存研究30)を元に, 1996 年 から 2007 年までの各年おける携帯電話中に含有される金の およびパラメータは各種文献より得た.Table 1 に示す. 質量の平均値を得た.また,2007~2012 年に生産された携 上記の方法により, 1984 年から 2012 年の各年における 帯電話およびスマートフォンに関しては,使用済みの機器を 金の消費量,ストックおよび使用済み機器に含有される量を 入手・解体し,基板・フレキシブル基板を採取後,酸溶解し 推計した. た上で,金の含有量を ICPAES で分析した.この結果を元 に, 1996 年から 2012 年までの金の含有量の経年変化を得 た.なお, 1995 年以前,および 1997 年については, 1996 年の値を適用した.本論文での,金の含有量の推計対象とし た各年の携帯電話・スマートフォンの個体数を Table 2 に示 す. 金のストック量および使用済み機器に含有される量に関し 結果および考察 3. 3.1 3.1.1 消 費 小型電気・電子機器向けの金消費量の推移 小型電気・電子機器向けの金消費量の推移を解析した結果 を Fig. 1 に示す.主な消費用途は年代によって異なるが, ては,各製品に含有される金の原単位を,各年における各製 1990 年代前半はオーディオ,後半はパソコン,2000 年代以 品の残存数および廃棄数に乗じて計算した.製品の残存率は 降は携帯電話が主な消費用途であることが推計された.消費 ワイブル分布に従うとし,分布の計算に必要な平均使用年数 量は 2006 年まで増大し 8.87 t となり,以降減少するという 第 8 号 日本国内における小型電気・電子機器用途の金の消費量・ストック量および使用済み機器中の含有量の推計 Fig. 1 Fig. 2 305 Annual consumption of gold for small EEEs. Average gold content in mobile phone and smart phone in 19962012. 結果が示された.特に,2007 年から 2008 年にかけて,8.48 板の写真を示す.含有される金はそれぞれ 41 mg と 20.7 t から 5.87 t へと大幅な減少が見られた.この減少量は,各 mg である.2007 年と 2012 年に発売された携帯電話を比較 用途における消費量の減少に起因するが,特に携帯電話の消 すると, 2007 年の機種では金の塗布面積が 2012 年の機種 費量が 2.75 t から 1.09 t へと減少したことが大きな要因に に比べて大きいことが目視にても確認できる.一方,Fig. 4 なったと考えられる.この点は次節において詳述する. に示すように,スマートフォンに使用される基板質量は,同 3.1.2 携帯電話向け金の消費量の推移 年に発売される携帯電話に比べ小さい傾向が見られた.折り Fig. 2 に,携帯電話の金の含有量の経年変化を示す.携帯 畳み式の従来の携帯電話では,表示部(液晶)とボタンによる 電話中の金質量は 2006 年をピークとし, 2007 年以降は減 操作部双方に基板が必要となるのに対し,スマートフォンで 少し,特に 2007 年から 2008 年にかけての減少幅が大きい はタッチパネルの導入により一体化しているため基板面積が ことが示された.スマートフォンに関しても,結果の得られ 減少したと考えられる.しかしながら,基板の金含有量は, た 2009 年以降,減少していることが分かった.Fig. 3 に, スマートフォンの方が携帯電話よりも若干多い傾向がみられ 2007 年に発売された携帯電話,および 2012 年に発売され た.これは,基板の単位質量中に含有される金の質量がス た携帯電話とスマートフォンを解体した際に得られた内部基 マートフォンの方が大きいためと推察されるが,さらなるサ 306 日 本 金 属 学 会 誌(2014) Fig. 3 Fig. 4 78 巻 Printed circuit board of mobile phone and smart phone produced in 2007 and 2012. Average weight of printed circuit board of mobile phone and smart phone in 19982012. ンプルの分析により結果の検証が望まれる. 3.2 第 ストック量 Fig. 5 に,小型電気・電子機器に由来する金のストック量 の推移を示す.最大値は 2005 年の 44.5 t であり,以降は減 少傾向に転じている結果が得られた.品目別では,当該年に は,2007 年に最大の 7.65 t となったが,2008 年には 6.03 t, 2010 年には 2.71 t となり, 2012 年には 1.08 t まで減少し た.これは,オーディオとは逆に平均使用年数が短く, 2007 年から 2008 年にかけての需要量の急減が早い段階で 影響を及ぼしたためと考えられる. また,近年ではノートパソコンに由来するストック量が増 おける消費量に占める割合によらず,どの年代においても家 加傾向にある.機械統計での統計が開始された 2002 年以 庭用オーディオが最大の割合を占めている.これは先述のと 降,この用途向けの金の消費量が比較的一定の値で推移して おり,オーディオの平均使用年数が 14 年と他の電気・電子 いること,および平均使用年数が 7.4 年と比較的長いことが 機器に比べ長く,出荷された製品が長く社会中に留まること 要因と考えられる.逆に,ノートパソコンの需要増大により に起因すると考えられる.一方,携帯電話によるストック量 需要量の減少したデスクトップパソコンについては,最大と 8 第 号 日本国内における小型電気・電子機器用途の金の消費量・ストック量および使用済み機器中の含有量の推計 Fig. 5 Fig. 6 Inuse stock of gold in small EEEs. Amount of gold contained in discarded small EEEs. なった 2001 年以降,ストック量の減少が続いている. 3.3 307 使用済み機器に含有される量 大の割合を占めている.使用済み携帯電話に含有される金の 質量は,2008 年に最大値の 2.71 t となった後,2010 年には 2.12 t,2012 年には 0.83 t まで減少し,同年の対象とした使 Fig. 6 に,使用済み小型電気・電子機器に含有される金の 用済み小型電気・電子機器に含有される金の質量合計も 質量の推移を示す.最大値は 2008 年の 6.90 t であり,以降 4.84 t まで減少している.また,ノートパソコンの統計開始 は減少傾向に転じているという結果が得られた.品目別に分 以降は,使用済みノートパソコンに含有される金の質量は増 析したところ, 90 年代はオーディオやデスクトップパソコ 加を続けている.それに対し,デスクトップパソコンは, ンが多くを占めていたが,携帯電話が本格的に普及してきた 2007 年以降減少傾向が続いている. 1990 年代末期以降から 2009 年にかけては,携帯電話が最 308 3.4 第 日 本 金 属 学 会 誌(2014) 考 察 78 巻 れに対して本研究での結果では, 2012 年度の消費量の推計 値が 3.68 t となった.統計値と本研究での推計値が大きく ストックおよび使用済み機器に含有される量の結果から, 異なるのは,本研究における推計対象が小型電気・電子機器 平均使用年数の長い製品は主にストックに影響し,短い製品 の製品中に最終的に使用された質量のみであり,製品製造時 はストックおよび使用済み機器に含有され排出される量に影 の歩留まりが検討できていないこと,また大型家電や産業用 響していることが定量的に示された.Fig. 7 に,本研究で推 途機械向け等のその他の需要が存在することに起因する. 計の対象としたオーディオ,ノートパソコン,および携帯電 また,本研究での使用済み機器に含有される量が,小型電 話に関して,製造後の残存率をグラフ化したものを示す.こ 気・電子機器に由来する消費量の推計値とほぼ同じ値となっ の図から分かるとおり,携帯電話は製造直後から廃棄が発生 た.それゆえ,使用済み機器から金を効率的に回収すれば, し始め,残存率は急激に減少して 5 年後にはほぼ 0 となる 消費量の多くを賄えることが示唆された.しかしながら,現 のに対し,オーディオ,ノートパソコンは 90 を維持して 状では電気・電子機器由来のリサイクル率は 40程度と見 いる.またオーディオとノートパソコンについては,5 年後 積もられており3),今後,使用済み機器からより効率よくリ まではほとんど差が見られないが,ノートパソコンはその後 サイクルすることが重要である. 急激に残存率が下がり, 10 年経過後にはほぼ 0 となる一 方,オーディオではなだらかな曲線を描き, 10 年経過時で 結 4. 言 も 80 程度の残存率となる.これは,両者の形状パラメー タ,および尺度パラメータの差に起因する. そのため,オーディオのように全期間にわたって緩やかに 廃棄が続く製品では,生産量の減少に伴い消費量が減少して 本研究では,小型電気・電子機器向けの金について,日本 国内における消費,ストック,および廃棄量の推計値が得ら れた.その結果から,以下の結論が導かれた. いる時期でもストックは増加を続け,消費量がほぼ 0 とな 2000 年代以降は,携帯電話向けの消費が消費全体の っても急激な減少は発生しない.一方で,携帯電話のような 最大の割合を占めた.ただし, 2008 年に原単位が半減して 平均使用年数の短い製品は,消費量の減少が短期間でストッ 以降は,コンピューターが占める割合が最大となった. クの減少という形で影響する.実際に, 2008 年以降の携帯 オーディオによるストックが,ストック全体の多くの 電話向けの消費量が減少したことにより, 2010 年の携帯電 割合を占める.一方で,携帯電話が占める割合は小さい.ま 話によるストックは 2007 年に比べ 1/3 程度まで減少してい た,使用済み機器に含有される量に占める割合は携帯電話が る. 最大であった.これは,両者の使用年数の差,および廃棄の 小型電気・電子機器向けの金の消費量については, 2006 され方に起因する.平均使用年数が長く,使用開始から完全 年に 8.87 t が最大値という結果が得られた.同様に,スト 廃棄に至る全期間にわたって緩やかに廃棄が続くオーディオ ック量については 2005 年の 44.5 t,使用済み機器に含有さ のような製品は,生産後も長く社会中に滞留するのに対し, れる量については 2008 年の 6.90 t が最大値という結果が得 平均使用年数が短く使用開始直後から廃棄の進む携帯電話の られた.これらの結果を比較すると,小型電気・電子機器向 ような製品の滞留時間は短くなるため,前者は主にストック けの消費量および使用済み機器に含有される量が比較的近い に影響を及ぼし,後者は使用済み機器に含有される量に影響 値となった一方,社会中のストック量が消費量,廃棄量の数 を及ぼす. 倍あるという結果が得られた.今後は,消費,ストックおよ 最大のストック量は 2005 年における 44.5 t であり, び使用済み機器に含有される量のいずれも減少の傾向をたど 消費量の最大値 8.87 t ( 2006 年),使用済み機器に含有され ると考えられるため,金以外の貴金属やレアメタルの回収も る量の最大値 6.90 t(2008 年)を大きく上回った. 併せて行う必要があると考えられる. 本研究では携帯電話を除いて金含有量の原単位が経年で変 なお貴金属流通統計では, 2012 年に日本国内で電気通信 化しないと仮定したが,今後は関係者へのヒアリングや,実 機・機械部品用に消費された金は 38.4 t となっている.そ 際に電気・電子機器を解体するなどして,金使用原単位の経 年変化を考慮した分析も必要である.また,本研究で分析の 対象とした小型電気・電子機器向けの需要は,金の工業用途 全体の 6~12を占めるのみであるため,今後は製造工程で の歩留まりや,他の産業用途の電気・電子機器についても, 分析を進める必要がある. 本研究を遂行するにあたり, JSPS 科研費 26 ・ 9845 の助 成を受けた.また株式会社 NTT ドコモおよび日本環境設計 株式会社から使用済携帯電話の提供を受けた.謝意を表する. 文 Fig. 7 Remaining rates of audio, laptop PC and mobile phone. 献 1) Thomson Reuters GFMS, Tanaka Kikinzoku: Gold survey 2013 第 2) 3) 4) 5) 6) 7) 8) 9) 10) 11) 12) 13) 14) 8 号 日本国内における小型電気・電子機器用途の金の消費量・ストック量および使用済み機器中の含有量の推計 digest, http: // gold.tanaka.co.jp / market _ data / gold _ 2013 _ digest. pdf, (2013/9/26). Ministry of Economy, Trade and Industry, Natural Resources and Fuel Department: Survey of Precious Metals Distribution, Au (2013), http: // www.enecho.meti.go.jp / info / statistics / kikinzoku / xls / h24Au.xls, (2013/9/26). Homepage of Japan Oil, Gas and Metals National Corporation: Kobutsu shigen material flow 2011, JOGMEC Virtual Mineral Resource Information Center, http: // mric.jogmec.go.jp / public / report / 2012 05 / 4.Au _ 20120619.pdf, (2013/9/26). Y. Iguchi, T. Azakami, S. Banya, A. Kikuchi, K. Sugimoto and T. Yamamura: Extractive Metallurgy, (The Japan Inst. Metals, 1999) p. 166. National Institute for Materials Science: Information of Strategic Natural Resources, Estimation of CO2 Emission and Energy Consumption in Extraction of Metals, http: / / www.nims.go.jp / genso / 0ej00700000039eq att / 0ej00700000039j5.pdf, (2014/2/24). T. Shiragase and A. Takata: Journal of Japan Society of Material Cycles and Waste Management 20(2009) 217230. Y. Chehade, A. Siddique, H. Alayan, N. Sadasivam, S. Nusri and T. Ibrahim: International Conference on Chemical, Civil and Environment Engineering (ICCEE'2013), (2013) pp. 226234. T. Kinoshita, S. Akita, N. Kobayashi, S. Nii, F. Kawaizumi and K. Takahashi: Hydrometallurgy 69(2003) 7379. Homepage of National Institute for Materials Science: NIMS Rare metal and rare earth tokushu, http: // www.nims.go.jp/ research / elements / rare metal / urban mine/, (2013/9/26). M. Nanjo: Bulletin of the Research Institute of Mineral Dressing and Metallurgy, Tohoku University 43(1988) 239251. T. Wang, D. B. Muller and T. E. Graedel: Environ. Sci. Technol. 41(2007) 51205129. H. Hatayama, I. Daigo, Y. Matsuno and Y. Adachi: Environ. Sci. Technol. 44(2010) 64576463. T. E. Graedel, D. van Beers, M. Bertram, K. Fuse, R. B. Gordon, A. Gritsinin, A. Kapur, R. J. Klee, R. J. Lifset, L. Memon, H. Rechberger, S. Spatari and D. Vexler: Environ. Sci. Technol. 38(2004) 12531261. I. Daigo, S. Osako, Y. Adachi and Y. Matsuno: Resources, Conservation and Recycling 82 (2016) 3540. 309 15) A. Yoshimura, I. Daigo and Y. Matsuno: Mater. Trans. 54 (2015) 102109. 16) K. Halada, K. Ijima, M. Shimada and N. Katagiri: J. Japan Inst. Metals 73(2009) 151160. 17) Ministry of the Environment: http: // www.env.go.jp / recycle / recycling / raremetals / attach / gl _ collect130306.pdf, (2014/2/20). 18) Ministry of the Environment: http://www.env.go.jp/council/03haiki/y032405/mat022.pdf, (2013/9/26). 19) T. Hirado, I. Daigo, Y. Matsuno and Y. Adachi: Tetsu to Hagane 95(2009) 96101. 20) Ministry of Economy, Trade and Industry, Economic and Industrial Policy Bureau, Research and Statistics Department: Yearbook of Machinery Statistics, (19842013). 21) M. Oguchi, T. Kameya, T. Tasaki, N. Tamai and N. Tanigawa: Journal of the Japan Society of Waste Management Experts 17 (2006) 5060. 22) S. Murakami, J. Osugi, R. Murakami, A. Mukaida and H. Tsujimura: Journal of Life Cycle Assessment Japan 5(2009) 138144. 23) M. Oguchi, T. Kameya, T. Tasaki, N. Tanigawa and K .Urano: Journal of the Japan Society of Waste Management Experts 18 (2007) 182193. 24) Tohoku Bureau of Economy, Trade and Industry, Mitsubishi Material: Research of possibility of 3R system, http: // www.meti.go.jp / policy / recycle / main / data / research / h18fy/18040387 _ cjc/18040387 _ k.pdf, (2013/9/26). 25) Ministry of the Environment: http: // www.env.go.jp / recycle / recycling / raremetals / H20 _ main.pdf, (2013/9/26). 26) Ministry of the Environment: http: // www.env.go.jp / recycle / recycling / raremetals / conf _ ruca/05/ref03.pdf, (2013/9/26). 27) T. Tasaki, M. Oguchi, T. Kameya and K .Urano, Journal of the Japan Society of Waste Management Experts 12(2001) 4958. 28) Homepage of National Institute of Environmental Studies: Lifespan database for Vehicles, Equipment, and Structures, http://www.nies.go.jp/lifespan/isic _ search.php, (2013/9/26). 29) K. Takahashi, J. Nakamura and Y. Matsuno: Journal of Life Cycle Assessment, Japan 8(2013) 7377. 30) K. Takahashi, J. Nakamura, K. Otabe, M. Tsuruoka, Y. Matsuno and Y. Adachi: J. Japan Inst. Metals 73(2009) 747 751.