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平成21年度版 - 新エネルギー・産業技術総合開発機構
P05005 平成21年度実施方針 新エネルギー技術開発部 1.件名:プログラム名 エネルギーイノベーションプログラム ナノテク・部材イノベーションプログラム (大項目) 発電プラント用超高純度金属材料の開発 2.根拠法: 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法 第15条第1項第2号 3.背景および目的・目標 近年、省資源・省エネルギー、レアメタルの枯渇への対応、地球環境問題への対応あるいは安心・安全な社 会の構築等を実現する観点から、高温強度、疲労強度等の機械的性質や耐食性、耐応力腐食割れ性等の耐環境 性に優れた新しい金属材料の開発が切望されている。具体的には、発電プラント等では、高温腐食や摩耗ある いは応力腐食割れに起因する事故が発生しており、材料自体の耐環境特性の向上が望まれている。さらに、よ り高温、過酷環境で利用できる構造部材が開発されることによる発電プラントの効率向上に伴う省エネルギー (燃料消費量の低減)、地球環境問題への対応(CO2 削減)や、部材交換頻度の減少等に伴う安全で耐久性の高 い発電プラントの実現、発電コスト軽減等が期待される。 しかし、元素添加と熱処理による現行の金属材料開発手法等では金属材料の新たな特性を引き出し、飛躍的 に向上させることは限界に近づいている。また、レアメタルの枯渇に対応するために希少金属の代替技術の開 発が重要視されている。そこで、金属の超高純度化により、従来の材料より遙かに優れた特性(耐環境性、靱 性、加工性等)を有することを確認したナノメタル技術プロジェクトでの成果を踏まえ、超高純度金属材料(超 高純度 Fe-Cr 合金等)を産業化することは、我が国の発電、素材産業の発展に大きく貢献すると考えられる。 本事業では、現状、材料コストが高い「超高純度金属材料」をその優れた特性を維持しながら、量産化・低 コスト化するための各種製造技術を開発するとともに、開発材の産業(発電プラント等)への適用性を明らか にすることを目的とし、以下を研究開発目標とする。 [委託事業] 研究開発項目①「超高純度金属材料の低コスト・量産化製造技術の開発」 [最終目標](平成21年度) ①現状の市販 CaO ルツボに比較して溶湯の純度を下げず、3 倍以上の耐久性(溶解回数 10 回以上)の新規高 耐久ルツボを開発する。 (想定コストは 100kg 用1個当たり 40 万円) ②低コスト原料からC,Si,Mn,P,S,N,O の不純物総量が50ppm レベル以下の超高純度金属材料を得るために必要 な溶解量 100kg 級の高真空誘導溶解炉及び精錬技術を開発する。 1 研究開発項目②「開発材による部品製造技術の開発及び実用性評価」 [最終目標](平成21年度) ①不純物濃度と各種特性の関係を明らかにする。 ②新材料による部材の開発と評価 (a)実用化検討部材(プロジェクト期間終了時に実機に適用できる目処をたてるもの) 開発材料を火力発電プラントの煙突ライナー・煙道に適用することを前提とし、これに必要な以下の目標 値を達成すること。 ○候補材料系:Fe-20Cr 系超高純度合金 ○目標値:・現用材である SUS316 の 10 倍以上の硫酸露点腐食に対する耐食性 (溶接部を含む) ・室温耐力 200MPa 以上 ・現用材である SUS316 と同程度の薄板加工性及び溶接性の確認 ・想定コストは1万円/kg 以下(量産時) ・C,Si,Mn,P,S,N,O の不純物総量が 50ppm レベル以下 (b)中期的開発部材(2015 年頃に実用化が期待できるもの) 開発材料を廃棄物発電プラントの過熱器管に適用することを前提とし、これに必要な以下の目標値を達成 すること。 ○候補材料系:Fe-20~30Cr 系超高純度合金又は Fe-Cr-Ni 系高耐食超高純度合金 ○目標値:・現用材である SUS310 の 5 倍以上の廃棄物発電環境での耐食性 (溶接部を含む) ・室温耐力 200MPa 以上、伸び 30%程度 ・現用材である SUS310 と同程度のチューブ加工性及び溶接性の確認 ・想定コストは1万円/kg 以下(量産時) ・C,Si,Mn,P,S,N,O の不純物総量が 50ppm レベル以下 ③超高純度金属材料の特性評価結果、コスト試算結果等から、対象とするシステムのメリットが現用材を用 いたシステムより優れることを確認する。 4.実施内容及び進捗(達成)状況 プロジェクトリーダー:超高純度金属材料技術研究組合 技術部長 山本 博一氏・菅原 彰氏及びサブ プロジェクトリーダー:三菱重工業株式会社 技術本部 長崎研究所 技監・技師長 納富 啓氏、株式会 社日立製作所 日立研究所 主管研究員 児島 慶享氏、株式会社東芝 電力・社会システム技術開発セン ター 金属材料開発部 技術主幹 山田 政之氏の下、以下の研究開発を実施した。 2 4.1 平成20年度(委託)事業内容 研究開発項目①「超高純度金属材料の量産化・低コスト化製造技術の開発」 超高純度金属材料の量産化・低コスト化製造技術を開発するために、平成18年度に開発した URC(Ultra Refined Ceramics)技術を用いた高純度ルツボ・耐火材の開発成果を踏まえ、新型耐火材の開発を実施した。 また、新たに開発・設置した溶解量 100kg 級の真空誘導溶解炉を用いた溶解試験を行った。その結果、炉内 構造物からのガス放出挙動等の把握等操業技術に関する知見の蓄積も進み、量産段階においても「優れた特 性を維持した Fe-Cr 系合金等超高純度金属材料の低コスト・量産化技術を開発する」との目標実現に一定の 目処が得られた。 高純度ルツボ・耐火材については、平成18年度に開発した URC 技術を用いて、従来の CaO 耐火材の課題 である耐久性の向上の研究開発を実施し、平成19年度までに表面改質型の耐火材で優れた耐久性を実証し た。平成20年度においてはさらに耐久性を高めるため、URC 技術を用いて表面改質ではなく基材自体を改 良することにより更なる耐久性の向上が期待できることを確認した。 高真空誘導溶解炉を用いて、純 Fe、Fe-20Cr 合金、Fe-20Cr 系合金の溶解試験を実施し、脱酸材(Al)を 添加しない条件で、純 Fe の C,N,S のガス成分濃度が 6ppm 程度、脱酸材を添加した Fe-20Cr 合金の C,N,O,S 濃度は 33ppm 程度という結果を平成19年度までに達成した。 平成20年度においてはさらに、 Fe-30Cr-30Ni 系合金の溶解、真空溶解その他の溶解試験を実施し、低コスト・量産化のための精錬技術の知見蓄積を進め た。 (実施体制:超高純度金属材料技術研究組合、共同研究先 東北大学、再委託 JFEテクノリサーチ㈱) 研究開発項目②「開発材による部品製造技術の開発及び実用性評価」 超高純度金属材料の部品製造技術の開発及び実用性評価として、実用化検討部材、ならびに中期的開発部 材に関しては、性能が十分でないと判断された材料系について、予備評価研究を実施した上で再度合金系を 変更して、研究開発項目①で開発した真空誘導溶解炉で溶解した材料を用い、製造技術に係る試験及び実用 特性評価試験を実施した。その結果、「各種部品製造技術ごとに対象とする製品の試作及び加工性が現用材 と同等以上であることを確認する」「現用部品と比較した実用性向上の確認」との目標に関して、昨年度の 材料に比し腐食性等の改善がなされる見込みを得た。 実用化に長期間を要する高温高強度材に関しては、大学共研による基礎研究の結果、現在の高温過熱器管 用材料である SUS347 を遙かに凌駕するクリープ強度を有し、かつ低温靱性、耐応力腐食割れ性等に優れた 新規高強度超高純度合金開発の目処が付いた。 また、超高純度材を実用化する際に必須となる、「実用上許容できる不純物量の最大値を明かにする」ため の検討を進め、18Cr-Fe 合金を対象に、母材ならびに溶接部の特性に及ぼす不純物元素の定量的な効果を検 討した。 (実施体制:超高純度金属材料技術研究組合、共同研究先 東北大学) 3 4.2 実績推移 実績額推移(百万円): 平成17年度 エネルギー特別会計(電原勘定) 平成18年度 平成19年度 平成20年度 199 922 400 364 特許出願件数(件): 0件 0件 1件 4件 論文発表数(報): 0件 0件 0件 0件 フォーラム等(件): 1件 1件 2件 1件 5.事業内容 超高純度金属材料研究組合 技術部長 菅原 彰氏をプロジェクトリーダーとし、さらに三菱重工業株式 会社 技術本部 長崎研究所 技監・技師長 納富 啓氏、株式会社日立製作所 日立研究所 主管研究員 児島 慶享氏、株式会社東芝 電力・社会システム技術開発センター 金属材料開発部 技術主幹 山田 政之氏をサブプロジェクトリーダーとして超高純度金属材料技術研究組合の集中研を中心に以下の研究開 発を実施する。なお、実施体制については、別紙を参照のこと。 5.1 平成21年度(委託)事業内容 研究開発項目①「超高純度金属材料の量産化・低コスト化製造技術の開発」 最終目標を達成すべく、平成20年度に引き続いて下記の各研究を実施する。 1)高耐久ルツボ・耐火材の開発 ・平成19年度に耐久性が従来 CaO ルツボに比較して優れることを実証した URC コーティング CaO ルツボ と平成20年度に行ったルツボ基材自身の見直しによる抜本的な開発成果を踏まえ、大きさに限界があ るこれまでのルツボ方式に加え、耐火煉瓦方式の目地を有する構造を念頭に一層の高耐久化・大型化に 向けた成型・評価試験を継続実施する。 ・開発したルツボについて、耐久性、コストを評価し、最終目標達成に向けた改良を行う。 2)新規精錬技術開発 ・引き続き開発した 100kg 級の高真空誘導溶解炉を用いて、不純物濃度の高い低コスト原料を用いて精錬 効果を確認する等により、従来の超高純度金属材の製造法に比較した低コスト化の研究及びアルミ・水 素精錬技術等の高度化を進めることにより高純度溶解技術開発を進める。 ・適用対象部材によって要求純度が異なることを踏まえ、部材・組成・要求純度等を考慮し、実用化に際 しての最適な製造方法の検討を実施する。 3)高真空誘導溶解炉の開発 ・溶湯サンプリング装置及び分析装置を用いて組成の精密制御を行い、研究の効率化を図る。 ・安全が確保できることを前提に工期短縮その他、量産時の操業技術に関する知見を得ることに配慮して 各種溶解試験を実施し、最終目標達成に向けた改良を行う。 (実施体制:超高純度金属材料技術研究組合、共同研究先 東北大学、再委託先 JFE テクノリサーチ㈱) 4 研究開発項目②「開発材による部品製造技術の開発及び実用性評価」 最終目標を達成すべく、平成20年度に引き続いて下記の各研究を実施する。 1)超高純度金属材料の開発 ・超高純度 Fe-Cr 系合金又は超高純度 Fe-Cr-Ni 系合金(主として耐環境性が要求される部材が対象)並び に超高純度 Fe-Cr-Ni 系合金(主として強度が要求される部材が対象)について、研究開発項目①で開発 した高真空誘導溶解炉を用いて、超高純度金属材料の溶解試験を行う。 ・鍛造、圧延、熱処理後の開発合金が適用候補部材毎に設定した開発目標を達成しているかどうかを評価 し、最終目標達成に向けて最適な組成、製造技術の絞込みを行う。 ・評価項目等については、21年度においても引き続き委託先に設置している産業化委員会において、電 力各社・重電各社を含めて、評価項目や評価を依頼する機関等を議論し、通常の溶製法による材料との 特性比較を含めた純度の影響が評価可能な計画を検討し必要な見直しをおこなう。 ・並行して、汎用溶解炉を用いた溶解試験等で不純物濃度および組成(各対象部材に適当な組成)をパラ メータとして不純物濃度および組成と各種特性の関係を明らかにするための試験を実施する。これによ り精錬において重視すべき有害元素の見極めとその低減目標に関する知見を確立し、産業化段階での必 要十分な精錬技術の確立に資する評価項目等については、上記と同様な議論を行って、純度の影響が評 価可能な計画を立案した上で設定する。) ・上記研究開発項目①2)新規精錬技術開発の過程で得られた材料の特性を評価することにより開発合金 の低コスト化の可能性を評価する。 ・評価結果の検討に当たっては、研究組合内の加工・評価技術委員会と密接な連携を行い、必要に応じて ユーザ-となる組合参加各社等での評価も行う。 ・本技術を将来の発電プラントにおける他の部材への適用可能性についても検証を行う。 2)部材製造技術開発 ・電力各社・重電各社との情報交換を密接に行い、部材製造に必要な鍛造・圧延、溶接、成形加工等によ る板材、チューブ等の部材製造技術を絞り込み、それらの製造試験を実施し、発電プラントの煙突ライ ナー・煙道、廃棄物発電プラントの過熱器管の製造可能性を確認する。 3)実プラントによる実用性評価試験 ・上記2)で得られた部材を用いて実機プラントでの評価試験を行う。 4)システムメリットの試算 ・開発部材について、特性評価結果、期待するシェア等を考慮して生産規模を推定し、上記研究開発項目 ①2)新規精錬技術開発において実用化に際しての最適な製造方法を検討した結果を踏まえてより具体 的なコスト試算を実施する。また、その開発部材を適用したシステムのメリットについて、現用材と比 較した試算を随時実施する。ここで、プロジェクト終了時に民間企業からの投資が得られるように商業 ベースで成立する見通しを立てる。 (実施体制:超高純度金属材料技術研究組合、共同研究先 東北大学) 5.2 平成21年度事業規模 エネルギー特別会計(電源勘定) 253百万円 (継続) 5 事業規模については、変動があり得る。 6.その他重要事項 6.1 評価 NEDO技術開発機構は、技術的及び政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、成果の技術的意義 並びに将来の産業への波及効果等について、研究開発の事後評価を平成21年度事業終了後速やかに実施す る。 6.2 情報発信・広報活動 特許出願と学会・プレス発表等の外部広報活動に関して、年間計画を立案する。NEDO技術開発機構は、 随時、活動状況の報告を受け、その実行を確認する。 6.3 運営管理 本プロジェクトの推進方針等については、必要に応じて、NEDO技術開発機構に設置する委員会及び技 術検討会等、外部有識者の意見を運営管理に反映させる他、四半期に一回程度プロジェクトリーダー等を通 じてプロジェクトの進捗について報告を受けること等を行う。 6.4 複数年度契約の実施 平成17年度~平成21年度の複数年度契約を締結して実施する。 7.スケジュール 平成21年 3月上旬 ・・・ 部長会 8.実施方針の改訂履歴 (1)平成21年3月5日、制定 6 別 紙 発電プラント用超高純度金属材料の開発 実施体制 プロジェクトリーダー NEDO技術開発機構 指示・協議 超高純度金属材料技術研究組合 技術部長 菅原 彰 サブプロジェクトリーダー 委託 三菱重工業株式会社技術本部長崎研究所 技監・技師長 納富 啓 株式会社日立製作所日立研究所 主管研究員 児島 慶享 [委託先] 超高純度金属材料技術研究組合 超高純度金属材料技術研究組合技術部 (研究計画全体の立案・分室等への指 示、高真空誘導溶解炉及び汎用誘導 溶解炉を用いた溶解試験、実用化に 向けたデータ収集と整理(分室分を 含む)) 株式会社東芝電力・社会システム技術開発センター金属材料開発部 技術主幹 山田 政之 共同研究 [共同実施先] 東北大学金属材料研究所 (将来発電プラントの過熱器管用材料等 (低コスト・量産化に係る基礎 研究について共同実施) 長期的な材料開発ついて共同実施) [集中研究所] 東北大学金属材料研究所 (低コスト・量産化製造技術に 係る研究) [再委託先] 再委託 JFEテクノリサーチ株式会社 [集中研分室] (溶解品質管理技術の研究開発を再 ①株式会社日本製鋼所 分室 (精錬技術等の新規高純度化技術 の基礎研究) ②三菱重工業株式会社 分室 (高純度ルツボ・耐火材の開発) ③株式会社日立製作所 分室 (TIG 溶接等の製造技術の開発と 評価) ④株式会社東芝 分室 (TIG 溶接等の製造技術の開発と 評価) 委託) 7