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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ

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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
足浴湯温に対する感覚の季節間差の検討
Author(s)
宮下, 弘子; 勝野, 久美子; 浦田, 秀子; 宮原, 春美; 坂口, 明子; 江藤, 宏
美; 福山, 由美子; 大塚, 健作
Citation
長崎大学医療技術短期大学部紀要 = Bulletin of the School of Allied
Medical Sciences, Nagasaki University. 1993, 6, p.117-121
Issue Date
1993-03-31
URL
http://hdl.handle.net/10069/18203
Right
This document is downloaded at: 2017-03-30T08:34:37Z
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
足浴湯温に対する感覚の季節間差の検討
宮下 弘子 勝野久美子
浦田 秀子 宮原 春美
坂口 明子 江藤 宏美
福山由美子 大塚 健作
要旨足浴の温熱刺激がもたらす快適感の季節間差をみるために夏冬2回の足浴
の実験を行い,足浴時の湯温や被験者の身体温度と感覚との関連,快適感覚と温度感
覚との関連にっいて検討した.足浴に用いた湯温は39,40,41,42,43℃の1℃間隔
の5温である.
今回の実験においては40℃が夏冬ともに快適と感じた人が最も多い湯温であった.
被験者の身体温度と快適感覚および温度感覚との間には有意な関連はみられなかった
が,1℃間隔の湯温の違いに対する感じ方は夏に比べ冬の方が鈍い傾向にあった.特
に冬において足背皮膚温の低い群にその傾向が著明であった.
長崎大医療技短大紀61117−121,1992
Key words:足浴,快適感覚,温度感覚,季節間差
1.はじめに
2.対象および方法
日常の看護行為として行われる足浴は,清
対象は19∼22歳の健康な女子学生20名であ
潔保持という目的のほかに血液循環の促進,
る.実験方法としては,まず足浴開始20分前
快適感をもたらすなどの効果が期待されてい
から被験者を仰臥位安静に保ち,足浴直前に
る.これまでの足浴に関する研究では主にバ
胸部深部温,下腿深部温足背皮膚温を測定
イタルサインや皮膚温などを指標としたもの
した.その後32の湯をいれたベイスンに足
の報告はあるが’)2)3)4),足浴のもたらす快適
を浸漬させ,直後の快適感覚と温度感覚を尋
感に焦点をあてた研究は少ないようである.
ねた.足浴に用いた湯温は39∼43℃までの1
そこで今回我々は,足浴の温熱刺激がもたら
℃間隔の5温である.同じ被験者に対して同
す快適感に焦点をおき,足浴時の湯温や被験
様の方法で夏期と冬期の2回実験を行った.
者の身体温度と感覚との関連,快適感覚と温
なお快適感覚尺度としては,1.非常に不快一
度感覚との関連にっいて特に季節による違い
2.不快一3.どちらでもない一4.快適一5.
をふまえて検討した.
非常に快適,の5段階,温度感覚尺度として
は,1.ぬるい一2,あたたかい一3.やや熱
長崎大学医療技術短期大学部看護学科
一117一
宮下 弘子他
い一4.熱い一5.非常に熱い,の5段階を設
%,42℃では35%,65%,43℃では25%,35
定した5).また身体温度の測定にはテルモ社
%であった.快適と答えた人が半数以上を占
製コアテンプを用いた.実験室の温度は夏冬
めていたのは夏では39℃と40℃の2温であっ
ともに24±2℃で維持した.
たが冬では39℃,40℃,41℃,42℃の4温で
あった.
3,結 果
(2)各被験者の感覚の夏と冬の違い
1)湯温に対する快適感覚
同じ湯温に対する各被験者の感じ方が夏と
(1)夏と冬の比較
冬でどのように変化したかをみると図1の如
湯温毎に快適と答えた人の割合を夏と冬で
くであった.夏冬ともに快適の人は40℃が最
比較すると,39℃では夏60%,冬80%,40℃
も多く,39℃,41℃では夏は不快だが冬は快
ではそれぞれ75%,70%,41℃では55%,85
適の人が比較的多かった.42℃になると夏冬
39℃
快適
40℃
41℃
5
5
4
4
4
3
3
3
3
2
2
2
2
1
1
一 甲 一
\\
1
43℃
5
4
2
42℃
5
畠 』 臼 一 ■
1
不快
冬 夏 冬 夏 冬 夏 冬
夏
夏
冬
図1 各被験者の同一湯温に対する快適感覚の夏と冬の違い
5
5
△
覚
2
4
ムム4
ムム
覚
2
△
適
感
ムム
●●
●●
4
快
●△
●●●●●
●●●
適
●
●
1 2 3 4 5
温度感覚
=夏
=冬
●●
●●
△ムムム
ムム(
●
●●●●●
感
∠』△4ム
覚
●●
(ムムゐ
●
●
1
1
1 2 3 4 5
温度感覚
●●●●●
(
温度感覚
2
△((ムム
●
●
●△6△
●
●●
1 2 3 4 5
3
(
ムムム
1
5
ム
Aムムムムゆ
43’C
lj)
5
(ムムムム ム凸△△△
●●
覚
42℃
●●●
凸
●●●●● ●●●
∠』△
2
温度感覚
4凸
●
3
●
1 2 3 4 5
快
適
3
感
覚
2
快
1
1
4
凸
●△△ムム心△
△△
△△△△
ムム
●△
●●●o●●●
感
5
●ム
凸
●△ムム
ムム凸ム
●●o
4
快
適
3
感
△ムムβb △△△b
快
適
3
41℃
●●●●● ●●●●●
●●●●● ●●
●●●●
4
40℃
●ム
●凸
39℃
1 2 3 4
温度感覚
一118一
図2 足浴の湯温に対する快適感覚
と温度感覚との関係
●●●●●
ム
5 一夏と冬の比較一
足浴湯温に対する感覚の季節間差の検討
ともに不快の人が増え,43℃になるとさらに
3)身体温度と湯温に対する感覚との関連
その傾向が強くなっていた.
(1)足浴前の身体温度と感覚との関連
2)快適感覚と温度感覚との関係
足浴前の被験者の身体各部位の平均温度は,
図2は各被験者の快適感覚と温度感覚の関
胸部深部温が夏36.1±0.8℃,冬353±0,9℃,
連を湯温毎に示したものである.夏では39。C
下腿深部温が夏35.4±0.9℃,冬3L9±2。1℃,
で温度感覚尺度の2と3,快適感覚尺度の3
足背皮膚温が夏33.0±1.7℃,冬26.5±3.3℃
と4にほぼ集中していたものが,湯温が高く
であった.いずれの身体温度も冬よりも夏の
なると温度感覚は4と5に,快適感覚は3か
方が有意に高く(P<0.01),特に足背皮膚
ら2,1に変わった人が多くみられた.一方
温では6.5℃の開きがみられた.これらの身
冬では39℃で温度感覚の2と3,快適感覚の
体温度と湯温に対する感覚との関連をみるた
4にほぼ集中していたが,41℃までは湯温が
めに,快適感覚尺度の1,2,3を不快群,
高くなっても温度感覚,快適感覚ともにほと
4,5を快適群,温度感覚尺度の1,2をぬ
んど変化がみられず,42℃になってようやく
るい群,3,4,5を熱い群としてそれぞれ
温度感覚は4が多くなり,快適感覚にも変化
2群間の身体温度の差をみたが,いずれも有
がみられた.このことから本対象者の場合,
意差はなかった.
湯温の違いに対する感じ方は,夏に比べ冬の
(2)足背皮膚温と感覚との関連
今回の実験では冬において湯温の変化に対
方がいくらか鈍い傾向にあったといえる,
皮膚温の低い群
皮膚温の高い群
潟度感覚
温度歴覚
5
4
5
‘・恥常r鐸
♪マ’””ヌ
4
.一田一 皿一…一一甲一
・義8
3
2
甲,づ..−
・・』・雨
2
39 40 41 42 43 驕(℃1
39 40 41 42 43 湯温(℃1
図3−a 湯温と温度感覚
皮膚温の低い群
皮膚温の高い群
快逼感覚
快逼悪覚
5
5
4
4
=畿:f
2
一 ち9’
セ.
∼
響・業驚
3
3
’㌔
一’一田
39 40 41 42 43 渦温(℃}
39 40 41 42 43 湯温(℃》
図3−b 湯温と快適感覚
図3 湯温と感覚(夏)
一119一
宮下弘子他
する感じ方が鈍く,また夏と冬との足背皮膚
違いに対する感じ方が鈍い傾向にあったとい
温の差が大きかった.そこで次に足背皮膚温
える.
の高低が湯温に対する感じ方に関連している
4.考 察
かどうかを検討した.被験者を夏冬それぞれ
に足背皮膚温の平均より高い群と低い群とに
看護学の成書では足浴の適温は40℃前後と
分け,各被験者の5つの湯温に対する感覚の
示されている6)7).氏家らは7月∼9月に行っ
違いをみた.夏においては温度感覚,快適感
た実験で40∼42℃が最も快適であったと述べ
覚いずれも皮膚温の高い群と低い群で似たよ
ており8),竹谷らは7月に行った実験で開始
うな傾向がみられた(図3−a,b〉.しか
時40℃の足浴湯温では60%のものが温熱的快
し冬の場合,温度感覚は皮膚温の高い群では
感をもち,20%のものが不快であったと述べ
湯温が高くなるほど熱い方へ傾くが,皮膚温
ている艦我々の実験では,夏と冬いずれに
の低い群では高い群ほどはっきりとした傾向
おいても快適と感じた人が多かったのは40℃
はみられなかった(図4−a).また快適感
であったが,冬では快適と感じる湯温が夏よ
覚においても皮膚温の低い群は高い群ほど1
り幅広い傾向にあった.さらに特に冬におい
℃毎の湯温の違いに応じた感覚の変化が認め
て皮膚温が低い群では,湯温の違いに対する
られなかった(図4−b).本対象者におい
感じ方が鈍い傾向にあった.
ては特に冬の足背皮膚温が低い群で,湯温の
今回の実験は対象が健康な女子学生少人数
皮膚温の高い群
皮膚温の低い騨
温度感覚
温度感覚
5
4
5
田
o‘・一・・轟
.β ーし
3
一〇◎
4
3
2
1
39 40 41 42 43 浬温CCl
39 40 41 42 43 雅(。Cl
図4−a 湯温と温度感覚
皮膚温の高い群
快適感覚
皮膚温の低い群
快適感覚
5
o… …{乳
5
ン:
4
聾謡匙_.
2
一﹃田
3
.田.
4
・ 遍
3
2
(
﹃o
39 40 41 4∼ 43 湯温ぐCl
39 40 41 42 43 湯君(9C,
図4−b 湯温と快適感覚
図4 湯温と感覚(冬)
一120一
足浴湯温に対する感覚の季節間差の検討
に限ったものであり,今後さらに患者や高齢
都市立看護短期大学紀要,1978,3=1−
者などに対象を広げて検討を重ねていく必要
5.
があると考える.
4)竹谷英子,田中道子,鈴村初子,鳥山み
本稿の要旨は,第12回日本看護科学学会学
どり,山田朋子:足浴によるVital signs
術集会において発表した.
と主観的感覚の変化.名古屋市立大学看
護短期大学部紀要,1991,3:35−45.
文 献
5)中山昭雄編:温熱生理学,理工学社,東
1)伊藤千代子:四肢末端皮膚温に対する足
京,1987,pp58−69.
浴の影響に関する研究.三重県立看護短期
6)氏家幸子:基礎看護技術 第2版,医学
大学紀要,1989,10:1−7.
書院東京,1986,pp268.
2)稲見すま子,市川順子,内海滉:足浴の
7)川島みどり:生活行動援助の技術 第1
研究 刺激部位順序からみた皮膚血流の変
集,看護の科学社,東京,1981,pp403。
化.看護研究学会雑誌,1989,12:128.
8)氏家幸子1看護技術の科学的実証,メヂ
3)和泉春美,川本昌子,村上愛子,畠山伊
佐男:体温・皮膚温と環境との関係.京
カルフレンド社,東京,1982,pp174−
198.
(1992年12月28日受理)
一121一
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