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最近の下水道研究の動向

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最近の下水道研究の動向
Vol.49
No.598
2012/08
下 水 道 協 会 誌
文献レビュー
文献委員会
最近の下水道研究の動向
−米国 WEF の文献レビューから−
担当文献委員
橋
辻
宮
本
内
幸
千
翼※
志※※
里※※※
本レビューは Water Environment Research(米国 WEF)の Literature Review(2011 年 月)
の中から Activated Sludge and Other Aerobic Suspended Culture Processes の一部を取上げて
抄訳を行ったものである。
目
次
MONITORING AND MEASUREMENTS
Detection and Occurrence of Indicator Organisms and
Pathogens
900
G. Seyrig, A. B. Herzog, F. Ahmad, S. Srinivasan, M.
Disinfection and Antimicrobial Processes
J. Kuo, T. Hicks
Biosolids and Sludge Management
K. F. Brisolara, Y. Qi
R. Kronlein, P. Bhaduri, S. A. Hashsham
Molecular Biological Methods in Environmental
Engineering
927
R. Goel, S. M. Kotay, C. S. Butler, C. I. Torres, S.
Mahendra
Gaseous Emissions from Wastewater Facilities 1376
A. R. Shaw, S.-H. Koh
Water Reclamation and Reuse
1383
B. Bickerton, E. Camara, B. McIlwain, M. E. Walsh,
G. A. Gagnon
Analytical Methods for Pesticides and Herbicides 956
H. C. Liang, M. T. Hay
Modeling, Instrumentation, Automation, and
Optimization of Wastewater Treatment Facilities 1397
TREATMENT SYSTEMS
Wastewater Collection Systems
983
S. Vallabhaneni
Physico-Chemical Processes
994
A. Afzal, P. Pourrezaei, N. Ding, A. Moustafa, G.
Hwang, P. Drzewicz, E.-S. Kim, L. A. Perez-Estrada,
P. Chelme-Ayala, Y. Liu, M. G. El-Din
Activated Sludge and Other Suspended Culture
Processes
1092
K. Jahan, S. Hoque, T. Ahmed, İ. Türkdoğan, E.
Arslankaya, V. Patarkine
Biological Fixed Film
1150
M. J. Wesley, R. N. Lerner, E. S. Kim, MD S. Islam,Y.
Liu
Membrane Processes
1187
M. -L. Pellegrin, A. D. Greiner, J. Diamond, J.
Aguinaldo, L. Padhye, S. Arabi, K. Min, M. S.
Burbano, R. McCandless, R. Shoaf
Anaerobic Processes
1285
E. A. Evans, K. M. Evans, A. Ulrich, S. Ellsworth
M. W. Sweeney, J. C. Kabouris
Sustainability
1414
J. Zhou, P. T. McCreanor, F. Montalto, Z. K. Erdal
INDUSTRIAL WASTES
Agricultural Wastes
1439
J. Liang, Q. Lu, R. Lerner, X. Sun, H. Zeng, Y. Liu
Automotive Wastes
1467
Md. A. Bari, W. B. Kindzierski, M. J. Lashaki, Z.
Hashisho
Food-Processing Wastes
1488
V. S. Frenkel, G. Cummings, D. E. Scannell, W. Z.
Tang, K. Y. Maillacheruvu, P. Treanor
Petrochemicals
1506
M. Al-Jabri, M. Baawain
Pulp and Paper Mill Effluents Management
1525
( 40 )
1333
1351
※ 国土交通省国土技術政策総合研究所
下水道研究部下水道研究室 研究官
※※ 日本下水道事業団国際室
※※※ 日本下水道事業団技術戦略部資源技術開発課
Vol.49
No.598
2012/08
文献レビュー
G. B. Menezes, T. Golkar, H. H. Moo-Young
Textiles
A. Chiavola
S. M. Harmon, F. E. Wiley
1532
Effects of Pollution on Marine Organisms
1789
A. J. Mearns, D. J. Reish, P. S. Oshida, T. Ginn, M. A.
Pesticides and Herbicides
1549
I. Buchanan, H. C. Liang, Z. Liu, V. Razaviarani
Rempel-Hester
Health Effects Associated with Wastewater
HAZARDOUS WASTES
Hazardous Waste Treatment Technologies
Treatment, Reuse, and Disposal
1853
J. D. Peterson, R. R. Murphy, Y. Jin, L. Wang, M. B.
1598
M. Li, R. Mahmudov, C. P. Huang
High-Level Radioactive Waste Management
J. Olanrewaju
FATE AND EFFECTS OF POLLUTANTS
Contaminated Aquatic Sediments
K. Jaglal
Groundwater Quality
Nessl, K. Ikehata
1633
1637
Ecological and Human Health Risk Assessment 1876
T. M. Biksey, A. C. Schultz, A. M. Bernhardt, B.
Marion, C. Peterson, P. Smith
Emerging Pollutants
K. Y. Bell, M. J. M. Wells, K. A. Traexler, M. -L.
Pellegrin, A. Morse, J. Bandy
1665
B. Hua, J. Yang, B. Deng
1906
ADMINISTRATION
Nonpoint Source Pollution
Y. Tong, Z. Q. Deng, D. D. Gang
1683
Economics
P. D. Palley, M. E. Parcero
Substratum-Associated Microbiota
A. Liess, S. N. Francoeur
Effects of Pollution on Freshwater Organisms
1704
Environmental Law
1995
D. A. Sanders
(ゴチックで表示のものをレビュー)
1733
1985
い条件下で SMP と EPS 生成が増加する実験結果と
良い整合性が得られ、DO が高い場合、SMP と溶解性
.活性汚泥および浮遊微生物による
好気処理
−
モデル化と動力学
①モデル
実規模の活性汚泥プラント運転をシミュレートする
ために、活性汚泥モデル(ASM3)にニューラルネッ
の EPS が若干増加することも確認された。
Sarker ら ) は、ASM1 に Takacs モジュールを組
み合わせたモデルを用いて、インドのコルカタにある
Titagarh 下水処理場をシミュレートした。その結果、
修正 Bardenpho 法が有機物や全浮遊物質(TSS)の除
トワーク(NN)と遺伝的アルゴリズムを組み入れた
統合動的モデルが Fang ら )によって開発された。こ
去と、許容流入水質の決定に有効であった。Gehring
ら )は、ブラジルの廃水安定池をシミュレートするた
のモデルを用いて流入変動の大きい実規模下水処理場
の ヶ月間の運転をシミュレートしたところ、活性汚
泥モデルや NN 単独のシミュレーション結果と比べ
て、
処理実績をよりよくモデル化することに成功した。
Cho ら )は、回分式活性汚泥法(SBR)における窒
め ASM3 を修正した。藻類バイオマスや酸素、二酸
化炭素、アンモニアガスの輸送プロセスの取り込みを
行っている。本モデルはパイロットスケールのプラン
ト に 適 用 さ れ、藻 類 の 集 結 を よ く モ デ ル 化 し た。
Hoque ら ) は、活性汚泥中の有機物の好気性分解を
素および有機物除去の最適化について研究するのに
IAWQ の ASM1 修正版を採用した。その結果、汚水
投入方法が窒素および有機物除去に大きく影響をする
ことが分かった。断続的に投入することによって硝化
が促進された一方で、連続投入では硝化は芳しくな
かった。短時間曝気は窒素除去には最適であり、曝気
時間を長くすると COD 除去を助長する結果となっ
た。
Janus と Ulanicki )は、ASM3 修正版に溶解性微生
解析するために貯蔵・増殖モデルを用いた。本モデル
は酢酸をテスト基質に使った呼吸活性測定により修正
を加えた。 種類の酢酸濃度に対し、滴定法、呼吸活
性測定と両者の組み合わせにより、モデルの修正が行
われた。パラメーターの推定結果はモデルの妥当性を
示すものであった。Lu ら ) は、下水の COD 分画成
物代謝産物(SMP)と細胞外高分子物質(EPS)の生
成理論を結合させた活性汚泥の動的数値モデルを開発
した。これは SMP と EPS の生成、分解の速度予測の
ために開発され、パイロットスケールによる回分式お
よび連続式流れの実験データにより修正を加えたもの
である。解析結果は、高 MLSS、低温度かつ SRT が短
分のガイドラインを作成した。実験により つの物理
化学的方法を比較し、溶解性の不活性な COD を測定
するのに、呼吸活性測定と凝集沈殿法の組み合わせを
選択した。原水中の呼吸活性測定による易分解性およ
び難分解性の COD の同時測定が実行可能であること
が証明された。加えて従属栄養細菌の測定のために
つの方法が評価された。これらの研究結果を考慮し
て、ASM1 での COD を特徴づけるための統合システ
ムが提案され、処理場流入水の COD を特徴づけるの
( 41 )
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下 水 道 協 会 誌
に適用された。
見られた。本法は簡易な BOD 分析に使えることが明
②動力学
Munz ら
は、膜分離活性汚泥法(MBR)と標準活
らかとなった。
Yu ら17)は、マイクロ波を照射した活性汚泥の物理
性汚泥法(CAS)中のアンモニア酸化細菌(AOB)と
亜硝酸酸化細菌(NOB)を研究した。AOB の最大比
的、化学的性質を調査した。マイクロ波のエネルギー
と照射時間は活性汚泥の性状に影響を及ぼした。照射
増殖速度(μ)は SRT に影響され、自己分解速度とμ
は両者とも似通った値であった。Yang ら )は、SBR
は細胞を破壊し、汚泥の沈降性、分解性を改善した。
好気性下での混合培養による PHA(ポリヒドロキ
技術の制御手法の進歩について、特に固定時間、実時
間での制御手法について徹底的に再調査した。
シアルカノエート)の生成については、Bengtsson
③パラメーターの評価
Ramdani ら10)は、自己分解の残渣を好気性下、嫌気
酵糖蜜及び単一の揮発性脂肪酸(VFA)がこの研究に
供された。これらが同時に消費され、グリコーゲンが
性下の条件に交互にさらすことにより残渣の生物学的
分解性についての評価を行った。どちらの系において
蓄積された。グリコーゲンの産生と好気下の PHA の
蓄積の消長は消費された有機酸の種類により異なるこ
も自己分解の残渣は部分的に生物分解されていた。モ
デルにおいては好気性条件下および好気性嫌気性交互
とが確認された。
Tsutsui ら19) は、異なる SRT の汚泥中の大腸菌と
の条件下での分解速度はそれぞれ 0.005 /日と 0.012
/日を示した。
から生成するプラスミド JP4 を
調査した。これは主に
属により伝播さ
Xie ら11) は、嫌気性条件下の活性汚泥による SMP
れていた。長い SRT の活性汚泥はドナー株と等価な
高い水銀耐性を示した。適切なドナー株および活性汚
泥運用条件の選択を通じてプラスミドの挙動をコント
ロール可能であることを示した。
Raud ら20)は、アガロース・ゲルに固定した大腸菌
)
の形成について研究を行った。基質がある場合には
SMP のうち基質の分解に伴って生成する分(UAP)
が主たる画分である一方、基質が完全に利用されたあ
とには自己分解に伴って生成する分(BAP)が主たる
画分となる。ASM3 に基づいた脱窒モデルを用いて
SMP の生成と基質の消費との関係をうまくシミュ
レートすることができた。
吉野 文雄(横浜市環境創造局 下水道施設部 下水
道施設整備課担当係長)
④方法
Wu ら12)は活性汚泥の膜ろ過性について研究を行っ
た。微生物活動は pH6.0-9.0 の範囲では影響を受けな
かった。より低 pH 域ではコロイド粒子のゼータ電位
を下げ、高 pH 域では余剰の EPS を放出し再凝集し
た。Yu ら13) は SMP と EPS の分画のため、孔径 0.
45μm のろ紙を使用した。蛍光ラベルされた株と共焦
点レーザー走査顕微鏡を用いて、ファウリング相を構
成するタンパク質の配列、多糖、脂質、細胞を視覚的
に捉える事を可能にした。Goyal ら14)は、SWNTs(単
層カーボンナノチューブ)の活性汚泥の構造に与える
影響を評価した。自動遺伝子分析は、各バイオリアク
ターの活性汚泥のバクテリア群構造を明らかにし、
SWNTs は様々な形でバイオリアクターの生物相に影
響を与えていることが明らかとなった。
Park ら15)は汚泥処理プロセスにおける活性汚泥の
減容化について報じた。返送汚泥管に接続した高温好
気性プロセスで汚泥が可溶化し、
固形物量が減少した。
廃水の生物分解性を評価するためにフェリシアン酸
と活性汚泥を用いたバイオアッセイが Jordan ら16)に
よって開発された。活性汚泥を利用したバイオセン
サーには、好気槽等から得られた活性汚泥が適してい
る。好気槽汚泥、返送汚泥共に内生呼吸活性の低下が
ら18)によって研究された。グリコーゲン蓄積細菌、発
R17.1.3 および R Terrigena の生菌を使用する半特定
BOD バイオセンサーを開発した。大腸菌によるバイ
オセンサーは、耐用年数、安定性、感度および再現性
の点から最良の結果を示した。
Sano ら21)廃水中のノロウイルス粒子用天然リガン
ドとして、活性汚泥微生物由来のノロウイルス結合タ
ンパク質(NoVLP)を特定した。NoVLPs は、活性汚
泥中の norovirus genogroup Ⅱのカプシドペプチドか
らアフィニティー・クロマトグラフィー法によって分
離された。
廃水中の生物分解性の有機物分画を評価する方法を
比較するために、呼吸活性測定および物理化学的手法
に関する包括的な研究は、Gatti ら22)によって行なわ
れた。
Majewsky ら23)は、ルクセンブルグの様々な活性汚
泥システムにおける、阻害物の生物分解性の微生物活
動への影響を調査した。その結果、生体異物の分解速
度と生物活性に関連があることが判明した。
Matsuda ら24) は、大阪の下水処理場の活性汚泥につ
いて微生物群落構造および炭素源利用を、末端標識制
限酵素断片多型分析法(T-RFLP)で比較し条件によ
り生物相が著しく変化することが判明した。
Pan ら25)は、蛍光スペクトロ分析を用いた EPS の
有機物汚染の結合モデルを研究した。好気性活性汚泥
から得られた EPS へのフェナントレンの結合は疎水
的相互作用によることが判った。
Xiangli ら26)は、紫外線を用いたポリエチレングリ
コール・ゲル中への活性汚泥の固定を行った。生物担
( 42 )
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文献レビュー
体は 10-15 日の馴養により高い硝化能を現した。pH
徴よりこの 2 つの細菌はバチルス株であることがわか
の影響は pH5 で硝化速度が 30%減少した。電子顕微
鏡写真により担体は多孔質で、硝化菌が担体の表面と
内部に繁殖していることが確認された。
Bai ら27)は、キノリンを唯一の炭素、窒素、エネル
り、バ イ オ ポ リ マ ー の 特 性 が 調 べ ら れ た。Parsly
ら37,38) は活性汚泥の微生物集団内のウイルスをメタ
ゲノム解析し、70 の細菌と 24 のバクテリオファージ
の分離株、829 の 16SrRNA、1161 のウイルスメタゲ
ギー源とした汚泥から
属を分離した。
この研究では C/N 比率のコントロールによりキノリ
ノムクローンの系統発生解析が行われた。
Liaw ら39)は、養豚排水処理施設の活性汚泥から脂
ンを除去できることが判った。また、分離した株は従
属栄養硝化と好気下での脱窒も同時に行えることが
肪分解酵素を単離した。分子生物学的解析の結果、脂
肪を分解すると推定される酵素のほとんどのタンパク
判った。
−
微生物学
質配列を特定することができた。この研究で、活性汚
泥が脂肪分解酵素を単離するための理想的な資源であ
①微生物相
ることが判明した。
は、フローサイトメトリー(FC)の産業
Han ら40)は、酵母が優勢な活性汚泥システムで、微
の微生物バイオプロセスへの応用を見直した。商用
FC 装置は、生物分解オンラインモニタリング法とし
生物群の構造と機能への、流入 COD 負荷と HRT の
影響を評価した。同一 HRT で高い COD 負荷ではよ
て示された。Foladori ら29) 廃水中のバイオマス量を
り多くの微生物種が保持され、好気条件でさまざまな
炭素源を処理させることができた。
Diaz ら
28)
予測するために、活性のある細胞を定量化する FC を
提案した。廃水中のバイオマスを計算する細菌群をカ
ウントするために蛍光染色が利用された。増殖可能な
細胞の割合は、生下水、処理水、活性汚泥、流出水で
それぞれ、4.8 ± 2.4%、10.7 ± 3.1%、11.1 ± 2.1%、3.2
± 2.2% であった。
Harbi ら30)は、廃水活性汚泥から電子受容体として
硝酸塩を利用する 3 つのブドウ球菌株(
、
、
)を分離した。
遺伝子の PCR
増幅の結果、
および
が
K
ポジティブで、
が
S ポジティブだっ
たことが明らかとなった。Nielsen ら31)は、殺虫剤工
場の廃液処理プラントから p-ニトロフェノールを用
いて PNP1T と呼ばれる放線菌を単離し、同定した。
Chen ら32)は、活性汚泥から単離した ZS-S-01 菌株に
よるフェンバレレート(合成ピレスロイド系殺虫剤)
の分解とその加水分解生成物である 3-PBA(3-フェノ
キシ安息香酸)の分泌量について評価した。
Juang ら33)は、MBR の中空糸膜内の生物膜、表面
のファウリング層、活性汚泥混合液中の菌株の生物学
的特性を解析した。
Cho ら34) は活性汚泥処理から獲得した CAU 59T
(グラム陽性細菌で芽胞形成しない細菌)を調査し、
CAU59T を新しい
株とした。
Oshiki ら35)は PHA の存在下、非存在下での生物の
酢酸塩の取り込み速度について評価した。PHA 蓄積
細菌に利用される酢酸塩は PHA に変換する酢酸塩
と、PHA 蓄積細菌と非 PHA 蓄積細菌が利用する酢酸
塩はそれぞれの特異的な酢酸塩取り込み速度から獲得
される存在量によって分けられる。Thirumala ら36)
は土壌と活性汚泥から単離された PHB 生成可能な
種のバクテリアの評価をした。表現型および遺伝的特
Wan ら41)は、石油精製廃水汚泥から、ナフタレンを
生物学的に分解できる Bacillus fusiformis(BFN)株を
分離した。ナフタレンの生物分解の最適条件は、温度
30℃、pH 7.0、細胞量 0.2% で C/N 比率 1.0 であった。
髙須
豊(横浜市環境創造局 下水道水質課 課長
補佐)
②大腸菌と病原体
Locas ら42)は、エアレーティッドラグーンにおける
生活排水中のヒト腸管系ウイルスと指標微生物の除去
について調べている。サンプル中の糞便性{たいねつ
せい}大腸菌、腸球菌、ウェルシュ菌、体表面吸着大
腸菌ファージ、雄特異的大腸菌ファージ、培養可能な
ヒト腸管系ウイルスについて分析した結果、これらの
微生物について、温暖な環境下において除去されるこ
とが確認されている。また、糞便性{たいねつ せい}
大腸菌と腸球菌は、ウェルシュ菌やヒト腸管系ウイル
スよりも除去性能が高かったことが報告されている。
一方、ヒト腸管系ウイルスは温暖な環境下であれば除
去されていたが、大腸菌ファージは除去特性が異なる
ことが明らかとなった。ヒト腸管系ウイルスの除去を
調べるために、代替として大腸菌ファージを用いるこ
とが提案されているが、上記の結果から、これは不適
切である可能性が示された。
Sorger と Quinn43) は、下水中における大腸菌の抗
生物質耐性について調べており、流入水と放流水中に
含まれる大腸菌の抗生物質の耐性のパターンおよび分
子生物学的な観点において、多様性があったことを報
告している。また、Novo と Manaia44)は、三箇所の都
市下水処理場において、抗生物質のアモキシシリンと
テトラサイクリン、シプロフロキサシンに耐性を示す
従属栄養細菌と腸内細菌、腸球菌に対する流入負荷を
比較することで、抗生物質耐性菌に影響を及ぼす要因
を評価している。流入負荷には、流入水量、処理方法、
( 43 )
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下 水 道 協 会 誌
HRT と比較して処理水質の影響がより低かったこと
素断片多型法(T-RFLP)などを用いて調べている。
を確認している。
③特徴と同定
全細菌に対する AOB と NOB のそれぞれの割合をモ
45)
Zhang ら
は、複数の分析方法を用いて微生物の分
類学上の位置づけを評価しており、合成ピレスロイド
生産工業の排水処理場における活性汚泥から、無胞子
デル解析により見積もったところ、モデルの解析結果
と DGGE や T-RFLP の結果と同程度であったことを
グラム陰性黄色色素産生性細菌(LQY-7T)を単離し
ている。LQY-7T 株は、表現的・遺伝的・系統発生的
報告している。
Ebrahimi ら51)は、好気性グラニュールの微生物群
集の構造解析を行っており、水温が 20℃のときには、
Rhodocyclaceae 科に属する OTU214 が存在するとき
なデータに基づいて、
表株に分類され、
の新たな属の代
sp. nov.と名
には、生物学的リン除去が起こっていたことを確認し
ている。また、Kim ら52)は、生物学的リン除去を目的
づけられた。Moreno ら46)は、硝化反応プロセスの活
に処理を行っている回分式リアクター(炭素源として
は酢酸のみ)におけるポリリン酸蓄積細菌(PAO)の
性汚泥から、真核生物の rRNA のクローンライブラ
リーを用いて、独立栄養細菌を捕食する繊毛虫類を同
定している。これらの多くは、活性汚泥の表面に存在
する原生動物として優占していることが確認されてい
るアメーバや
たと報告されている。
Xie ら
に属する繊毛虫に属してい
分子生物学的な多様性について、複数の
の FISH プローブを用いて調べてい
る。その結果、
は、生理学
的・生態学的に多様性を有する可能性があったことを
報告している。
47)
は、標準活性汚泥法の活性汚泥において、
イオンとリン酸塩のアルカリフォスファターゼ(リン
酸化合物を分解する酵素)に対する影響を検討してい
る。その結果、陰イオンについては、 から 5.0mM 程
度の濃度であれば比較的無害であったこと、さらには
活性汚泥中でオルトリン酸塩がアルカリフォスファ
ターゼの触媒活性を阻害することを報告している。
④糸状性バルキングの原因と抑制
Van den Akker ら48) は、結 合 生 物 膜 活 性 汚 泥 法
(IFAS)と標準活性汚泥法施設のバルキングについて
検討している。定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)
を用いて、汚泥の沈降性と処理状況がアンモニア酸化
細菌(AOB)に及ぼす影響を検討している。結果とし
て、汚泥容量指標(SVI)は、混合液中の全炭水化物の
量と正の相関が確認され、汚泥の沈降性には、混合液
中の糖類の濃度が大きな影響を及ぼすと報告してい
る。また、qPCR で分析した AOB と全細菌の細胞数
との比率と SVI には負の相関が確認されたことを報
告している。
Wang ら49)は、Ni2+を高い濃度で添加し続けること
が、バルキングを引き起こす活性汚泥の特性に影響を
及ぼすのかどうかを検討している。40 日間に渡って
60mg/L の濃度になるように Ni2+ を添加し続けた結
果、有機性汚濁物質の除去能力は回復したが、アンモ
ニア除去能については回復しなかったことを確認して
いる。また、Ni2+を添加し続けたことで、バルキング
を引き起こす活性汚泥の細胞外高分子有機物(EPS)
の量や構成が大きく変わったと報告している。
⑤ポピュレーションダイナミクス
Ye と Zhang50)は、16S rRNA 遺伝子を用いて、部分
亜硝酸化リアクターの微生物群集の構造解析を行って
おり、AOB と亜硝酸酸化細菌(NOB)の割合を、変性
剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)
、末端標識制限酵
−
辻
幸志(日本下水道事業団 国際室)
窒素・りん除去
①硝化
Park ら53)は硝化生物膜モデルを使ったシミュレー
ションを報告した。そして、流入水の全アンモニア窒
素と溶存酸素そして緩衝剤が亜硝酸酸化細菌の抑制と
亜硝酸脱窒の可能性を示した。
Zieliński と Zielińska54)は硝化の効果と生物膜中の
アンモニア酸化細菌(AOB)へのマイクロ波照射の影
響を研究し、マイクロ波の熱は硝化及び脱窒への効果
と生物膜中の AOB の割合が増加することを示した。
Xia ら55)は
つの異なる CN 比率で、懸濁担体生物膜
反応器(SCBR)を操作した。研究の目的は下水処理
場での微生物の高速自動分析法を確立することであっ
た。この分析により、
の AOB の
つのグループと生物膜中の
属が検出
された。研究では、FISH-FCM 法により、特定の微生
物の検出と定量ができる可能性が示された。
Huang ら56) により、部分硝化施設の性能を最適化
するため、qPCR 法を用いて
と
の動態が調べられた。基質濃度が不十分であるとき、
低 DO と高い温度は Nitrospira に優位に働くとした。
Rongsayamanot ら57)は呼吸活性試験により、包括
固定化された硝化菌の動力学や包括固定化担体を用い
た部分硝化の制御方法を検討した。FISH 法での結果
から、AOB では、
が優占であ
り、亜硝酸酸化細菌(NOB)では
が優占し
ていた。担体中の基質と酸素の分布は、AOB と NOB
および従属栄養細菌の分布と硝化速度に影響を及ぼす
ことが確認された。
②脱窒
Ahn ら58)は、USEPA で開発された方法で、米国の
12 箇所の下水処理場で N2O の排出量を測定した。そ
( 44 )
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文献レビュー
の結果、活性汚泥法において、好気条件下でアンモニ
アや亜硝酸の濃度を低く抑制することで、N2O 排出量
酸(酢酸)を使用することにより生物学的りん除去が
できたと報告した。研究では、グリセリンが生物学的
を低減できると結論づけている。
Roy ら59)が、SBR を 日間操作し、糖蜜を加えて、
りん除去の外部炭素源として使用される場合、余剰活
性汚泥とグリセリンを発酵させることが効果的なアプ
エビ養殖排水中のアンモニアを 99%除去した。
Gao ら60)はフロック状の活性汚泥[R1]と好気性グ
ローチであると結論を下した。
ラニュール汚泥[R2]の つの SBR において、リアル
タイム制御の導入効果を比較した。その結果、COD
除去、硝化、脱窒において、R1 より R2 が高い効率を
示した。
61)
Biradar ら
は、余剰汚泥の物理的破壊から放出さ
れた溶解性 COD が生物脱窒での炭素源として、利用
可能であることを示した。100%の窒素除去を達成す
④窒素・りん同時除去
Ma ら68)は、公共下水処理場のステップフィードの
活性汚泥法で COD/P と COD/TN の比率がそれぞれ
61.9 および 5.2 以下で流入する場合、りん除去率は 95.
8%、窒素除去率は 89.3% となったと報告した。また、
さらに温度が低い 13∼16℃でもりん除去には影響せ
ず、その一方で不完全な硝化作用により脱窒が著しく
と
減少したことがわかった。実験では、温度が上昇する
とともに TN 除去率が徐々に増加し、システム内の亜
なることを見出した。
Dey62) は IAWAQ ASM1 モデルを使い、連続流入
硝酸蓄積率が 90% 以上で効率的に脱窒することがわ
かった。
攪拌反応槽での同時硝化・脱窒プロセスを調べた。効
果的な窒素除去のためには、DO 濃度と SRT 制御の
Akpor と Momba69)は、サプリメントとして 3 つの
るためには、溶解性 COD / NO3-N の重量比率が
組合せは重要であることを示した。流入水の易分解性
COD とケルダール窒素の比率は窒素除去に重要であ
り、シミュレーションの予測は実験結果に一致してい
たことが分かった。
高田
誠(川崎市上下水道局 下水道部担当係長)
③生物学的りん除去
生物学的りん除去活性汚泥法は高度排水処理として
一般に用いられている方法である。生物学的りん除去
プロセスでは、汚泥のバルキングと発泡という つの
運用上の問題にしばしば遭遇する。
Lo ら63) はマイクロ波支援促進酸化法を使用して、
泡からのりんの回収の実現可能性および有効性を評価
する研究を行った。高濃度のりん酸塩が可溶性になっ
たことから、泡の除去とりんの効率的な回収に効果的
であることがわかった。
Yu ら64)は細胞外高分子化合物である抽出された活
性汚泥細胞のりんの放出および細胞破壊用のマイクロ
波支援促進酸化法の有効性を調査した。その結果、細
胞分解が可溶性アンモニア、オルトりん酸、炭水化物
および揮発性脂肪酸を放出する効率的な方法であるこ
とを示した。
Barr ら65)は活性汚泥中の細菌集団の構造と機能の
異なる炭素源を使用した混合液中の原生動物のバイオ
マス濃度とりん酸塩・硝酸塩の除去との関係を調査し
た。研究では、細胞濃度の増加はりん酸塩と硝酸塩の
除去の増加と一致することを明らかにした。
−
生体異物の影響と消長
①金属
Suzuki ら70)は、豚舎廃水の活性汚泥処理における
りん、銅および亜鉛の分布を調査した。活性汚泥処理
の前に懸濁物質を徹底的に除去することは、これらの
流出を防ぐ最も重要な要因であることを示した。
Ganesh ら71)は、公共下水道中の銅ナノ粒子の除去
と毒性について調査を行った。その結果、銅ナノ粒子
は廃水から銅イオン(30∼70%)より有効に(∼95%)
取り除かれたことを示した。さらに、活性汚泥の微生
物への銅の毒性は溶液や懸濁液中に残存する銅の濃度
と物性に関与することが示された。
②塩素化脂肪族化合物と塩素化芳香族化合物
Bolzonella ら72)は、標準活性汚泥法と MBR におけ
決定におけるバクテリオファージの役割を調査した。
のバクテリオファージ感染が低効率
な生物学的りん除去の原因となりうることが推定され
た。
Zhou ら66)は、遊離亜硝酸による無酸素(電子受容
るポリ塩化ジベンゾダイオキシン、ジベンゾフラン
(PCDD/Fs)および Co-PCB の除去を検討した。従来
の活性汚泥法では比較的低い SRT で PCDD/Fs およ
び Co-PCB を効率よく除去できたことがわかった。
MBR では、廃水中の PCDD/Fs および Co-PCB を検
出 限 界 以 下 ま で 完 全 に 除 去 す る こ と が で き た。
PCDD/Fs および Co-PCB 除去の数学モデルが開発さ
れた。
③ニトロ化合物とエネルギー論
Wastgate と Park73)は、 箇所の活性汚泥の廃水処
体としての亜硝酸塩)代謝上のポリりん酸蓄積細菌の
脱窒阻害を調査した。その結果、りんの取り込みおよ
びグリコーゲン補給がかなり阻害されることがわかっ
た。
Yuan ら67)は、発酵液上澄みに含まれる揮発性脂肪
理施設からの流出水中のタンパク質およびタンパク質
分解酵素を特徴づけるために つのタンパク質分画技
術を使用した。これにより、環境中に流出するタンパ
ク質や有機性窒素を把握することができるとしてい
る。
( 45 )
Vol.49
No.598
2012/08
下 水 道 協 会 誌
④フェノールとクロロフェノール
Karahan ら
74)
は馴致及び非馴致微生物培養中のノ
ニルフェノールエトキシレートの生分解について調査
を行った。提案された活性汚泥モデルの動力学係数お
よび化学量論係数は、オンライン呼吸測定を用いるこ
とにより得られた。その結果、5000mg/L まで濃度が
増加すると非拮抗型の阻害が生じた。
石井
健(東京都下水道局 施設管理部 環境管理
Wang ら81)は、好気条件と脱窒条件で、活性汚泥に
よる 2-メチルキノリンの生物分解を調査するバッチ
実験を行った。2-メチルキノリンはどちらの条件でも
分解されたが、その速度は、脱窒条件よりも好気条件
の状態で著しく速かった。しかしながら、1,2,3,4-テト
ラヒドロ-2-メチルキノリンは双方の条件下で処理で
きず、環境への残留性が高いと考えられた。
⑩毒性
Katritzky ら82)は、活性汚泥中の 104 種の有機化学
課 環境保全係長)
⑤農薬、ダイオキシン、フラン、その他ヘテロ環
Al Momani ら75)は、好気処理・嫌気処理のそれぞれ
物について、その毒性を予測した。モデリングを使っ
た研究により、ハロゲン原子を含むかどうか、水素結
と促進酸化法とを組合せて、農薬の除去率の比較を
行った。嫌気処理との組合せは農薬除去率 92% で、
合の可能性、およびオクタノール / 水分配係数の寄与
する分枝度が、毒性を示すものとして重要であること
好気処理との組合せは 200 日以上の馴致期間の後、農
薬除去率 80% だった。
が発見された。
⑪環境ホルモン
Sei ら76)は、自然環境中の 1,4-ジオキサンの生物分
Estrada-Arriaga と Mijaylova83)は、MBR から採取
解可能性を研究した。河川水、活性汚泥、化学工場の
排水域の底泥および庭土を含む合計 20 の環境試料で、
された硝化作用のある活性汚泥を用いたバッチ試験
で、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)とエチ
1,4-ジオキサンの低下が見られた。 つのサンプルを
除いて 1,4-ジオキサンを下げる能力は、培養を繰り返
した後に増加した。
⑥染料
Lin ら77) は、リアクティブブルー 13 を脱色し無機
ニル・エストラジオール(EE2)の生物分解について
研究した。生物分解速度は、吸着係数 Kd を仮定した
疑 次式と Monod 式で示すことができたと報告して
いる。
Park ら84)は、ベンチスケールの実験装置を用いて
化するために連続的な嫌気好気の流動床を使用した。
pH7 で HRT を 70 時間にすることで、83.2% の色度除
去および 90.7% の COD 除去ができた。
活性汚泥のフロックアルミニウムが 17-α-EE2 除去
に与える影響について研究した。アルミニウムを多く
含む活性汚泥ほど沈殿性脱水性が良く、流出水におい
⑦界面活性剤
Karahan78)は、人工下水と直鎖アルキルベンゼン・
て、EE2 をより多く除去できていた。
Mohapatra ら85)は、様々な前処理法(アルカリ加水
スルホン酸塩(LAS)との混合液を用いた際のシステ
ムの生物分解反応を、酸素消費速度の測定によりモニ
分解、熱加水分解、熱アルカリ加水分解、熱酸化、熱
アルカリ酸化など)による下水汚泥中のビスフェノー
ターした。LAS は、抑制のメカニズムを決定づける
モデル基質として選択されたと報告している。
Gori ら79)は、SRT を長くした標準活性汚泥プラン
ルA(環境ホルモン)の可溶化と分解への影響を検証
した。粘性と粒子サイズの減少、ゼータ電位の増加が
起こる程、フェノールAの分解が活発になった。未処
理汚泥と処理汚泥中のアルファルファ根粒菌が作る
ラッカーゼによって、ビスフェノールAが分解された。
宮内 千里(日本下水道事業団 技術戦略部 資源技
術開発課)
−
産業排水
①食品加工排水
Azzam ら86)は、前処理を行ったオリーブ工場排水
トと 基の MBR を同時に作動させ、LAS、ノニルフェ
ノールエトキシレート(NPnEO、n = 1-15)、ノニル
フェノキシカルボン酸塩(NPnEC、n = 1 -2)および
ノニルフェノール(NP)の除去を行った。ノニルフェ
ノール化合物の除去において、MBR はより優れた処
理特性を示した。
⑧その他の芳香族化合物と多環芳香族炭化水素
Sponza と Gok80)は、ラムノリピッド界面活性剤の
添加効果と石油化学工業処理施設の排水から採取され
た 15 種の多環芳香族炭化水素と COD 化合物の除去
率とを、完全混合反応タンクを用いて測定した。これ
によると、ラムノリピッド界面活性剤を添加すると、
環および 環の芳香族炭化水素化合物の除去率が向
上した。さらに、多環芳香族炭化水素の除去率は 72%
から 80% に、可溶性 COD では 90% から 99% に、そ
れぞれ向上した。
⑨その他の化学薬品
(OMW)について、異なる濃度の活性炭を用いて処理
した。その結果、24g/ の活性炭使用時に、COD 濃度
を 60, 000mg/ か ら 22, 300mg/ 、フ ェ ノ ー ル 類 を
450mg/ から 15mg/ まで低減可能であることを示し
た。Damayanti ら87) は、パーム油工場排水に対する
活性汚泥モデル(ASM)のパラメーターの適合性を評
価するために酸素消費速度を分析し、適合性は良好で
あるとの結果を得た。
Daverey と Pakshirajan88) は、
を使用したラボスケールでのバイオリアクターによる
( 46 )
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文献レビュー
して半回分式の条件下で、より酵母が迅速且つ効率的
に活動することを示した。Bosco と Chiampo89)は、ミ
いる。Park ら99) は、繊維染色排水処理を行うパイ
ロットスケールの移動床生物膜反応槽(MBBRs)につ
いて評価を行い、同プロセスは比較的低 MLSS 濃度及
ルクホエーと活性汚泥を用いたポリヒドロキシアルカ
ン酸(PHAs)の生産について研究し、pH 調整や無菌
び短い HRT において COD86%、色素 50% の除去率
を達成しており、大きなポテンシャルを有すると述べ
化の必要無しに、C/N 比 50 において PHAs が良好に
生産できたとしている。Saev ら90)は、野菜くずと活
ている。
Zheng ら100)は、医薬品排水処理の向上及び処理コ
性汚泥の混合嫌気性消化における有機物負荷率の効果
について研究を行い、バイオガス生産量と有機物負荷
ストの削減を目指し、活性汚泥法と石炭灰濾過を組み
合わせたシステムを開発した。同システムは、COD99.
率は比例的な関係にはならなかったと述べている。
Steinke と Barjenbruch91)は、魚処理設備における
7 ± 3%、BOD598.2 ± 4%、SS98.5 ± 3%、色素 96.3 ±
合成乳業排水の前処理について研究し、回分式と比較
排水処理、特に生物学的栄養塩除去(BNR)に焦点を
当てて調査し、0.8mm の口径のふるい処理及び 段階
の浮遊選別により、固形物の窒素負荷を軽減したと述
べている。El-Kamah ら92)は、嫌気・好気処理を統合
したシステム(回分式活性汚泥法、上向流式嫌気性ス
ポンジリアクター(UASR)法等)による果汁工業か
らの高強度排水処理について調査した。同システム
は、COD 除去率 97.5%、BOD5除去率 99.2%、TSS 除去
率 94.5%、油分除去率 98.9% を達成している。
②製造工場排水
Ahmad ら93)は、活性汚泥による金属イオンの生物
吸着について調査し、吸着能力は、Cd(Ⅱ)、Pb(Ⅱ)、
Zn(Ⅱ)それぞれ 59.3%、68.5%、86.5% であることを
明らかにした。Wang ら94)は、中国の活性汚泥プラン
トから分離した
による水溶液
からの 6 価クロムの吸着について研究し、最大吸着容
量は 20℃で 27.36mg/g であり、吸着反応は pH2 が最
適条件で、温度に加え NaCl 濃度にも強く影響される
ことを示した。
Bai ら95)は、回分式活性汚泥法(SBR)によるコー
クス炉排水処理を促進させるための分解細菌として、
種類のピリジン分解細菌と 種類のキノリン分解細
菌を提示した。活性汚泥と上記 種類の細菌を組み合
わせた処理システムは、活性汚泥単独あるいは細菌単
独の場合と比較してかなり高い処理効率を示したと述
べている。Felfoldi ら96)は、コークス炉排水処理を行
う活性汚泥処理システムに存在する微生物群について
ラボスケールで調査し、
がシステ
ムの中で鍵となる種であり、同種のフェノール分解能
力は 1,500mg/ に達することを明らかにした。
Gupta ら97)は、製紙・パルプ工業由来の余剰汚泥に
対するオゾン処理の効果について評価を行い、オゾン
投入量 55mg-O3/g-DS の場合、汚泥量は約 18% 削減
できることを示した。
Nasir ら98)は、電子ビーム照射と活性汚泥法を組み
合わせた処理法について、繊維工業排水の分解及び生
分解性の向上に及ぼす影響を調査し、電子ビームの照
射により COD 分解率は 70-79% から 94% へ上昇し、
生分解率は 34-61% から 87-96% へ上昇したと述べて
2% の除去率を達成し、コスト効率的な解決策を提示
できたとしている。Laurent ら101) は、オゾン処理に
より組成や表面性状が変化した活性汚泥によるカドミ
ウム摂取について調査し、オゾン注入量が 10mgO3/gTS 以下の場合カドミウム摂取量は増加するが、それ
以上の場合、オゾンによる酸化に伴い生物吸着サイト
が減少し、カドミウム摂取量は減少することを示した。
Sipma ら102)は、MBR と活性汚泥法による医薬品除去
について調査し、MBR は一般的に SRT が比較的長
く、微生物群の生長を促すため、活性汚泥法と比較し
て除去量は大きくなると言われている。しかし、生物
分解率に影響する因子が多いため、MBR だから分解
率が上昇するとは言えないと報告している。
Jin ら103)は、高濃度の殺虫剤を含む排水処理を目的
とした加圧活性汚泥法について評価を行い、COD 除
去量は圧力、曝気時間、汚泥濃度の上昇に伴い増加す
るとした。
堀尾
重人(土木研究所材料資源研究グループリサ
イクルチーム研究員)
③その他
Li ら104)は、高濃度の排水に順応する汚泥由来の微
生物群の多様性およびその構造の変化を研究した。
RAPD-PCR 法、PCR-DGGE 法を用いた。異なった排
水濃度への適応プロセスで、微生物群の群類似度指数
は異なっていた。Shannon-Weiner および Simpson の
多様性指数は、10%排水濃度曝露時に急激に減少した。
それは、10%排水濃度が、バクテリア増殖が大きく抑
制されうる重要なポイントあることを、また遺伝子型
の種類が変化しうるポイントであることを指し示して
いる。このように、微生物群の構成と種類における変
化は、有機物質の毒性の抑制効果を持つかもしれない。
Stamatis ら105)は、広く用いられる殺菌防かび剤を
含む合流式都市下水処理施設における、その消長につ
いて調査した。トリアゾールおよびアニリノピリミジ
ンに属する化合物を対象検体とした。テブコナゾール
およびサイポロコナゾールが流出入水中に最もしばし
ば検出された。濃度にしてそれぞれ最高 1893 ng/l 、
1735 ng/l であった。流出水におけるテブコナゾール
濃度は 691.1 ng/l を下回った。二次処理後の殺菌防か
び剤の平均除去率は、ピリメタニルの 31%が最低で、
( 47 )
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下 水 道 協 会 誌
トリアジメフォンの 65% が最高値となった。三次処
理後の除去効率の全体平均は、ピリメタニルの 46%
とトリアメジメフォンの 93% の間の値となった。こ
−
酸素移動効率
①酸素移動速度の決定
Gracia-Ochao ら112)は、微生物処理の酸素利用速度
れらの結果は、有意な水準の殺菌防かび剤が河川水路
に流入していることを示している。また都市下水の排
(OUR)を評価した。そして、実験技法およびその技
法の微生物処理への適用可能性を試験した。細胞増
水処理プロセスで除去できる化合物が数種類しかない
ことを示している。
殖、基質消費、分泌物生成、および酸素消費といった
多くの速度式を考案し、モデルに取り込んだ。また異
Tejocote-Perez ら106) は、産業用廃水のための電解
なった微生物処理のシミュレーション結果を提示し
凝集法活性汚泥システムを設計した。このシステムは
アルミニウム電極を使った電解凝集槽、沈澱池、生物
反応槽から成っている。電解凝集槽は異なった流入水
量で試験された。生物反応槽中では、異なった活性汚
泥群(大腸菌、繊毛虫、鞭虫といった原生動物、水生
菌類)の能力が評価された。色度、濁度、COD 除去率
た。
②曝気装置
Cecil ら113)は、活性汚泥中、酸素利用時の亜硝酸塩
の効果について調査した。活性汚泥中の酸化還元電位
のモデルを完成させるには、酸素利用の亜硝酸阻害を
といった全般的処理効率は、繊、鞭虫類を用いた 50m
考慮しなければならないことを、この調査は示唆した。
酸化還元電極の反応時間は酸素センサーの反応時間の
l /min の流入率という条件下で、それぞれ 94%、92%、
80% であった。
倍遅いことがわかった。
Thornton ら114)は 2010 年、オンラインセンサーを
−
設計と運転管理
①設計と改良
用いたリアルタイム制御(RTC)の活用および活性汚
泥処理の運転を最適化するためのアルゴリズム調整に
Qiao ら107)は、紫外線技術により固形化した活性汚
泥ビーズの最適条件を調査した。 % MBA かつ 0.
1% DEAP 時の 12%のプレポリマービーズが最適で
あることが分かった。著者らはアンモニアの分解は
C/N 比とともに増加すること、また固形化ビーズは多
孔構造であり主に硝化菌で満たされていることを報告
した。
Kaindl ら108)は、移動床生物膜反応槽(MBBR)を前
処理として加え COD 除去を向上するために、オゾン
処理を取り入れた製紙工場排水の活性汚泥処理プラン
トを改良した。この MBBR による処理は、とても簡
便であることが分かった。オゾン処理段階での COD
除去率の十分なコントロールは、経済的な使用を可能
にし、それゆえ維持費を満足できるレベルに低減でき
た。
②運転管理
Chen ら109)は、活性汚泥の PHA 貯蔵能力に対する、
静磁場の効果を評価した。その結果、回分式活性汚泥
槽で磁力を 42、21、7、0 mT としとして比べたところ、
静磁場への曝露が活性汚泥中の PHA 蓄積に顕著な影
響を与えることがわかった。また、維持管理および工
業用スラッジ乾燥で汚泥の粘性が問題となる。そのた
め活性汚泥の粘性を簡単に測定できる Jenike せん断
試験法が、Peeters ら110)により提唱されている。
③分析・測定技術
Neu ら111)は、微生物学における近年の画像処理手
法を見直した。その最近の新しい技術とは、レーザー
走査顕微鏡(LSM)
、磁場共鳴映像装置(MRI)
、走査
型透過 X 線顕微鏡(STXM)である。こういった手法
は、複雑な生物膜の組成を調べるのに使われる技術と
いうことになる。
ついて調査した。実プラントでの試験で得られた結果
から、必要なばっ気は 20%減少し、メタノール消費は
50%超減少することがわかった。
古屋 泰徳(東京都下水道局 施設管理部 管路管理
課 施設情報管理係)
−
固液分離
①沈殿池のモデル化・設計・運転管理・性能
Cho ら115)は、活性汚泥法の最終沈殿池における電
解浮上分離の沈殿効率について研究を行い、15g/ ι
以上の返送汚泥濃度を得た。Saffarian ら116)は、修正
Casson モデルを用いた活性汚泥の沈降モデルを作成
してシミュレーションを行った。最終沈殿池における
活性汚泥の分布状況は、モデル計算値と実測値が合致
していた。
②沈降性と脱水性
Kim ら117)が研究した、SBR における DO 分布を考
慮した動的モデルを提案した。
Jonesa と Schuler ら118)は、 ヵ所の処理場にて沈
殿性の季節変動を調べた。バイオマスの密度は、温暖
時に高くなり、低温時に低くなった。
Guglielmi ら119)は、パイロットスケールの MBR 施
設の余剰汚泥の物理特性を調査し、標準活性汚泥法施
設の余剰汚泥を好気性消化した汚泥と違いがないこと
を示した。
Song ら120)は、余剰汚泥の前処理に酸化ルテニウム
とチタニウム網状プレート電極を用いた結果、汚泥は
電解時間、電力、電流密度が高いほど減少することを
示した。
Ruiz-Hernando ら121)は、余剰汚泥を超音波処理す
ることで、遠心脱水汚泥の汚泥濃度が約 21%増えたこ
とが報告されている。
( 48 )
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文献レビュー
Tan ら122)は、汚泥減容化を目的とした熱アルカリ
and Carbon Removal. Korean J. Chem. Eng., 27 (3),
処理(HAT)の特性について調べ、60℃以下では p H
11 が最適条件であることがわかった。
925-929.
) Janus, T.; Ulanicki, B. (2010) Modelling SMP and
③フロックの特性
Badireddy ら123)は、比色分析、X 線光電子分光法
EPS Formation and Degradation Kinetics with an
Extended ASM3 Model. Desalin., 261 (1-2),
(XPS)やフーリエ変換赤外線(FTIR)分光法を用い
て、グルコースが含まれていた活性汚泥中の微生物か
117-125.
) Sarkar, U.; Dasgupta, D.; Bhattacharya, T.; Pal, S.;
ら分泌された EPS の特性を明らかにしている。
Seviour ら124)は、下水処理場で採取した好気性グラ
Chakroborty, T. (2010) Dynamic Simulation of
Activated Sludge Based Wastewater Treatment
Processes: Case Studies with Titagarh Sewage
ニュールについて、グラニュール化した EPS を特定
の多糖類成分と関連づけて研究した。グラニュール化
Treatment Plant, India. Desalin., 252 (1-3),
120-126.
した EPS は、高分子量の多糖類、中分子量のタンパク
質と低分子のタンパク質で構成されていた。これらの
) Gehring, T.; Silva, J. D.; Kehl, O.; Castilhos, A. B.;
Costa, R. H. R.; Uhlenhut, F.; Alex, J.; Horn, H.;
なかで、高分子量の多糖類のみが、通常の下水処理場
の pH(6.0∼8.5)において、ゲルで存在している。
125)
Oikonomidiss ら
3+
Wichern, M. (2010) Modelling Waste Stabilisation
2+
は、Fe と Fe が加えられた活
Ponds with an Extended Version of ASM3. Water
Sci. Technol., 61 (3), 713-720.
性汚泥のフロックは、Fe3+ よりも Fe2+ を含むフロッ
クの方がコンパクトになることがわかった。
Nadarajah ら126)は、活性汚泥の微生物群集と汚泥
) Hoque, M. A.; Aravinthan, V.; Pradhan, N. M.
(2010) Calibration of Biokinetic Model for Acetate
沈降性との関係を調べた。沈降する汚泥と沈降しない
汚泥は、微生物群集の違いがみられた。
Subramanian ら127)は、汚泥の沈降性や脱水性が向
Biodegradation Using Combined Respirometric and
Titrimetric Measurements. Bioresour. Technol., 101
(5), 1426-1434.
上 し、汚 泥 の 減 容 効 果 の 特 性 を 有 す る 糸 状 細 菌
(
BS30)を調べ、最適な培養温
) Lu, H.; Chandran, K. (2010) Factors Promoting
Emissions of Nitrous Oxide and Nitric Oxide from
度は 25℃であり、この条件下において、浮遊物質(SS)
と VSS はそれぞれ 50%未満、53%未満に低下した。
−
膜分離活性汚泥法
Nguyen ら128)は、精密ろ過(MF)や限外ろ過(UF)
にて、活性汚泥より分離される物質は、多糖類、たん
ぱく質、有機物であることを示した。
129)
Song ら は、MBR において、高濃度の 2,4-ジク
ロロフェノールの添加によって、
汚泥減容を確認した。
COD 除去率はやや悪くなったが、24 時間後には 2,4ジクロロフェノールは無視できるレベルまで減少し
た。
Wang と Waite ら130) は、MBR の活性汚泥中で、
Fe3+は Fe2+(乾燥汚泥重量あたり 0.036%以上)に還
元されて存在していた。
齊藤 春香(東京都下水道局 建設部 土木設計課
設計第四係)
〈参 考 文 献〉
) Fang, F.; Ni, B.; Xie, W.; Sheng, G.; Liu, S.; Tong, Z.;
Yu, H. (2010) An Integrated Dynamic Model for
Simulating a Full-Scale Municipal Wastewater
Treatment Plant Under Fluctuating Conditions.
Chem. Eng. J., 160 (2), 522-529.
) Cho, M. H.; Lee, J.; Kim, J. H.; Lim, H. C. (2010)
Optimal Strategies of Fill and Aeration in a
Sequencing Batch Reactor for Biological Nitrogen
Denitrifying Sequencing Batch Reactors Operated
with Methanol and Ethanol as Electron Donors.
Biotechnol. Bioeng., 106 (3), 390-398.
) Munz, G.; Mori, G.; Vannini, C.; Lubello, C. (2010)
Kinetic Parameters and Inhibition Response of
Ammonia- and Nitrite-Oxidizing Bacteria in
Membrane Bioreactors and Conventional Activated
Sludge Processes. Environ. Technol., 31 (14),
1557-1564.
) Yang, Q.; Gu, S.; Peng, Y.; Wang, S.; Liu, X. (2010)
Progress in the Development of Control Strategies
for the SBR Process. Acta Hydroch. Hydrob., 38
(8), 732-749.
10) Ramadani, A.; Dold, P.; Déléris, S.; Lamarre, D.;
Gadbois, A.; Comeau, Y. (2010) Biodegradation of
the Endogenous Residue of Activated Sludge.
Water Res., 44 (7), 2179-2188.
11) Xie, W.; Ni, B.; Zeng, R. J.; Sheng, G.; Yu, H.; Song,
J.; Le, D.; Bi, X.; Liu, C.; Yung, M. (2010) Formation
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