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僧帽弁腱索断裂後20年目の重症僧帽弁逆流症に

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僧帽弁腱索断裂後20年目の重症僧帽弁逆流症に
.
.
(
.
): ∼ 一般講演
6
僧帽弁腱索断裂後2
0年目の重症僧帽弁逆流症に
合併した心房細動が5カ月間のアミオダロン投与で
停止した1例
坂部 茂俊
高村 武志
笠井 篤信
大村 崇
森脇 啓至
河村 晃弘
渡邉 清孝
世古 哲哉*
はじめに
われわれはかつて,低心機能を合併した慢性心房細
動に対するアミオダロンと電気的除細動(cardioversion)の併用治療効果を報告した1).
本稿では,超高齢者の重症僧帽弁逆流症に合併した
慢性心房細動にアミオダロンが除細動効果を示した1
例を報告する.
症例提示
0歳,女性.
症 例:9
既往歴および家族歴:特記すべき事項なし.
図1 胸部X線所見(20
09年6月)
9歳時に発熱あり,他院を受診した.感染性
現病歴:6
心内膜炎,僧帽弁腱索断裂症と診断され,2カ月間入
院した.重症僧帽弁逆流があったが抗生物質投与のみ
心房細動のままで経過観察としたが,1カ月後に再度
で手術せず,退院した.近くの医院で外来フォローさ
心不全で入院した.このときにも利尿薬投与で症状は
れていたが,200
4年の閉院に伴い当院に紹介された.
軽快したが,アミオダロン1
0
0 mgを追加した.その後
その時点で心電図のリズムは洞調律であった.心エ
再入院なく経過し,8カ月後には洞調律に復帰した
コー検査では左室収縮能はLVDd/LVDs=5
6/26 mm
(図4)
.心エコー検査ではLVEF,MRに変化はなかっ
と保たれていたが,僧帽弁腱索断裂のため後尖が後交
たが,血液検査でBNPは徐々に低下した
(図5)
.8カ
連で逸脱しMR4度であった.その後も心不全なく,非
月間洞調律を維持し,最近では農作業ができるまでに
常に元気であったが,2
00
9年6月に上気道炎後にうっ
ADLが改善している.
血性心不全を来して入院した(図1)
.このときに心電
考
図は心房細動
(図2)
を示したが,心エコー測定値に大
察
.利尿薬を投与して症状が
きな変化はなかった(図3)
本症例は僧帽弁腱索断裂によるMR4度があるにも
軽快したためワルファリンによる抗凝固療法を追加し,
かかわらず,2
0年間心不全なくQOLを維持していた.
しかし,心房細動を発症してから心不全による入退院
*
S, Sakabe, A. Kasai, K. Moriwaki, K. Watanabe,T. Takamura,
T. Omura, A. Kawamura, T. Seko:山田赤十字病院循環器科
を繰り返した.アミオダロンは心房細動の洞調律化を
意図して投与したが,当初は洞調律化しなかった.
―
(
667)―
. ¿
À
V1
V2
V3
Á
VR
V4
a
VL
a
V5
VF
a
V6
図2 心電図所見(2
009年6月)
IVST 10 mm
PWT 10 mm
LAD 55 mm
LVDd 56 mm
LVDs 26 mm
LVEF 0.84
AR À
MR 4 度
PR À
TR Á
逆流率78%
図3 心エコー図
¿
V1
À
V2
Á
V3
VR
V4
a
VL
a
V5
VF
a
V6
図4 心電図所見(2
010年1月)
―
(
668)―
第15回アミオダロン研究会講演集
ロサルタン 25 mç
スピロノラクトン 15 mç,ワルファリン 1 mç
アミオダロン 100 mç
300
心不全
入院
心不全
入院
BNP
(pç/mL)
250
200
150
2010年9月胸部X線写真
100
50
0
心房細動
2009.6 2009.7
洞調律
2009.12 2010.1 2010.2 2010.3 2010.4 2010.5 2010.6
2010.8
図5 臨床経過
心拍数は十分コントロールされており,また当時,
変化がみられなかったため心不全の改善を介して除細
心房細動への保険適応がなかったこともあり,除細動
動したのか,直接除細動効果を示したのかを判断する
効果を強く期待できる状態ではないと判断してアミオ
ことは困難である.
ダロンの増量は行わなかった.しかし予想外に,5カ
月後に突然洞調律に復帰し,その後はこれを維持して
おわりに
いる.心エコー図から左室収縮能や僧帽弁逆流の程度
1例の経験であるが,重症弁膜症に合併した心房細
に改善はみられないが,洞調律化してからADLは改善
動治療にアミオダロンが有効であることが示唆された.
し,心不全入院はない.BNPも低下している.
本症例ではアミオダロンは洞調律化せずとも,β遮
断作用で心拍数コントロールおよび心不全治療に効果
を示すものと期待された.洞調律化に至った機序は興
味深いが,上述のとおり心不全の最中も左室収縮能に
文 献
1)坂部茂俊,笠井篤信,佐藤雄一ほか:低左心機能を合
併した慢性心房細動に対するアミオダロン+電気的除
細動治療の試み.Prog Med 2
00
9;2
9
(Suppl.1)
:68
9―
69
2.
―
(
669)―
. 質疑応答
(弘前大学医学部循環器・呼吸器・腎臓内科教授)
座長/奥村 謙
(財団法人心臓血管研究所研究本部長) 山下 武志
(山田赤十字病院循環器科) 演者/坂部 茂俊
奥村(座長) この症例では,初めから洞調律化を目
ないと考えています.
的としてアミオダロンを投与されたのですか.
田村
(聖園病院)
左室径が大きくありませんね.心
坂部(演者) もし洞調律にならなくても,β遮断作
不全の機序として拡張不全のファクターが非常に大き
用を期待して投与しました.
いことが考えられますが,そうした拡張不全の場合に
青沼(筑波大) こうした心不全の契機が心房細動で
は心拍数コントロールが非常に重要です.この症例は,
あった症例では,アミオダロン投与により心房細動を
心拍数コントロールが有効となる洞調律にあえて戻し
洞調律化することが心不全の悪化に対して効果がある
た方がよい場合に当てはまると思いますが,いかがで
と理解してよろしいでしょうか.
しょうか.
坂部 アミオダロンが心不全に対して直接作用して
坂部 以前低心機能を合併した慢性心房細動症例に
いるような可能性もあると思います.ただし,心エ
ついて報告させていただきましたが,最近は拡張障害
コー所見からは僧帽弁逆流の改善が認められず,こう
の患者さんを対象にしています.そうした患者さんで
した症例では洞調律の方がよいと思います.
は発作性心房細動へ進展すると即座に心不全などを発
青沼 そうしますと,高齢者の場合,心房細動を契
症してしまいますので,予防という観点からも拡張不
機に発症した心不全症例,あるいは増悪した慢性心不
全をターゲットとすることは非常に重要だと思われま
全症例では洞調律維持が非常に有効であると考えられ
す.
ますね.
山下(座長)
よろしいでしょうか.坂部先生,あり
坂部 心房細動に対する除細動までは行っていませ
がとうございました.
んが,洞調律になるのであれば,それに越したことは
―
(
670)―
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