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各事例の受賞のポイント

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各事例の受賞のポイント
各事例の受賞のポイント
○最優秀賞:アグリネット21(東北町)
若手・中堅農家で野菜生産組織を結成し、市況に左右されない契約栽
培への転換と地元農協との連携により独自ブランドを確立して有利販売
を実現するとともに、若手農家の育成に努めるなど地域農業の牽引役と
して尽力していることが評価されました。
○優 秀 賞:石黒 司(黒石市)
だいこんやにんじんなど高品質な野菜生産を基本とする安定した高所
得の実現に加え、省力・低コスト化技術であるコーティング種子の作業
体系を確立し、地域に定着させるとともに、地域農業団体のリーダーと
して担い手育成に尽力していることが評価されました。
○優 秀 賞:風間浦村きあんこう資源管理協議会(風間浦村)
3漁協が連携したキアンコウの資源管理によって平均単価の向上と販
売額の増加を実現するとともに、村内の商工・観光関係者と連携した6
次産業化や観光イベントでの活用など地域産業全体の活性化に貢献して
いることが評価されました。
○奨 励 賞:農事組合法人嘉瀬生産組合(五所川原市)
転作大豆の団地化によるコスト低減を実現し、法人化で生産体制を強
化するとともに、他組織と連携した大豆焼酎の商品化や空き店舗を活用
した直売所運営など多角的な経営の実践により地域の活性化に貢献して
いることが評価されました。
○奨 励 賞:農事組合法人羽白開発(青森市)
藍栽培の機械化による低コスト化を実現するとともに、あおもり藍産
業協同組合と連携した藍製品のブランド化の推進、大学や地元銀行など
多様な分野との連携・協働により地域の活性化に貢献していることが評
価されました。
- 1 -
意欲溢れる攻めの農林水産業賞「最優秀賞」
アグリネット21
1
所
在
地
上北郡東北町長久保
2
代表者名
3
経営の概要(平成25年)
代表
ながくぼ
こうじ
長久保
耕治
(1)労 働 力
会員数
10戸
(2)経営規模
だいこん(16.4ha)、キャベツ(4.7ha)、ばれいしょ(1.7ha)、
にんにく(1.1ha)、たまねぎ(0.8ha)
(3)機械施設
ブームスプレーヤー(2台)、キャベツ定植機(2台)、
たまねぎ定植機(1台)
4
○
産業力強化や地域力強化のポイント
「作ってから売る」農業では市況に左右されるため、仲間5戸と「販売先を決めて
から作る」農業へ転換
○
厳しい規格基準による高品質、会員間での綿密な出荷調整による安定出荷により、
販売先のきめ細かなニーズに対応
○
独自ブランドの販売ルートを確立しながら、既存農協の施設や共販体制を利用する
ことで、経費削減と省力化を実現
○
新技術や情報は地域全体で共有し、若手農業者育成にも積極的に取り組むなど、地
域や家族とのつながりを重視した活動を展開
【栽培面積】平成15年度:11ha
→
平成25年度:24.7ha
【販売額】
→
平成25年度:9,897万円
平成15年度:2,800万円
出荷時の荷姿
アグリネット21取扱高の推移
- 2 -
5
産業力強化や地域力強化の経緯・工夫等
(1)産業力強化や地域力強化のきっかけ、経過
ア
通常は、農家は農産物生産にあたり販売先を決めずに作付し、
「作ってから売る」
が普通だが、市況の変動を受けやすくリスクが大きいため、「販売先を決めてから
作る」ことがこれからの農業には必要であると考え、「21世紀の農業を見据えた集
団」として、平成15年に東北町の生産農家5戸でアグリネット21を設立し、野菜
の契約栽培と共同出荷を開始した。
イ
農業者が独自ブランドを設立し販売する場合、農協から独立することが多いが、
多額の設備投資が必要であり、また、販売のノウハウが少ないため有利販売上ハー
ドルが高い。そこで、販売先は自分で確保するが、生産物はメンバーが組合員とし
て所属する、ゆうき青森農業協同組合を通じて共同販売するという形態を提案し、
同農協もこれを承認した。
ウ
現在はメンバーが10戸に増え、契約栽培の品目も5品目に拡大した。販売額は結
成年次の2,800万円から平成21年度には1億2,000万円を達成、平成25年度も約9,900
万円の売上額を保っている。
(2)産業力強化や地域力強化への努力と工夫
ア
厳しい選果と収穫から店頭までの迅速な流通改善に力を入れ、新鮮かつ高品質さ
を積極的にアピールすることで、首都圏の販売先を獲得している。例えば、だいこ
んは収穫を早朝から開始し、店頭に並べやすいレンタルコンテナを利用することで、
出荷翌日の販売を可能としている。
イ
地元農協を通じて販売することで冷蔵施設や運搬の経費を削減し、農協が得意と
する経理や生産情報などのサポートも受けることが可能。また、農協も安定した高
品質ブランドを取り扱うことが強みとなり、両者にwin-winの関係が構築されてい
る。
ウ
会員間の情報交換を重要視しており、農繁期でも週1回の話し合いを設け、栽培
技術や販売情報の共有化を徹底している。綿密な生産・販売の調整を行い、技術や
意識の向上を常に図ることで、安定した出荷リレーの維持や高品質な野菜の生産等
につなげている。
エ
若い意欲ある生産者の加入と育成に力を注いでおり、30代の若手も在籍している
ことが、販売先から評価され、長期的な活動が期待されている。
オ
一方、各会員の経営を会から独立させて、経営強化に取り組むことで会員相互に
バックアップを図れる体制を作っている。
- 3 -
定期的な会合・現地巡回の様子
(3)地域生産者への指導や、地域との連携など関わり具合
ア
東北町はにんにく・ながいも・だいこんなどの野菜産地として発展してきたが、
団塊世代の高齢化、生産者間での技術交流の薄さが懸念材料となっている。このた
め、会では野菜産地の維持発展へ向けた取組を行っている。
イ
また、情報・技術の共有化を会員内に限定せず、
「滝沢平野菜生産出荷協議会」
「ま
いるどダイコン出荷組合」など他の生産団体とも情報交換を目的とした交流会及び
合同勉強会を行い、地域全体の技術レベルの底上げを図っている。
ウ
会員は30代から50代の働き盛りであり、会での活動を通じて経営が向上している
ことから、高い技術集団として一目おかれている。うち5名は農業経営士や青年農
業士に認定されており、組織としてだけでなく、メンバーそれぞれが地域農業の牽
引役・先導役として積極的に活躍している。
エ
会では、家族ぐるみの会員旅行を毎年開催しており、家族を含めたイベントを行
うことで、家族間での交流を深めるとともに、地域の世代間交流にもなっている。
(4)今後の経営発展の考え方
ア
契約栽培を前提とした経営方針は、収入を安定的に確保できるメリットがあり、
加えて消費者ニーズへの対応が必須となる中で、今後更にシェアが伸びていくもの
と期待されることから、販売先との密接な連携によって販路の拡大とその維持に努
めている。
- 4 -
イ
規模拡大に関しては品質の維持を第一としているため、早期拡大にはこだわって
いないが、だいこんの早朝収穫など生産者の負担が大きい作業もあることから、段
階的に会員を増やすことで、将来も契約数量を維持していくこととしている。
ウ
持続的な野菜経営に向けて、地力保全のための緑肥や新規作物による輪作体系の
確立、農業機械のメンテナンス技術の向上によるコスト低減と耐用年数の延長、会
員の健康管理にも配慮した経営の組み立て等を行っている。
エ
何より自分たちは家族経営であり、家族の理解あってこそ、経営の基盤が成り立
つと考えている。旅行など家族ぐるみのイベントを行うことは、単に交流を深める
だけでなく、家族らが農業について話し合う機会を増やし、会員の経営=自分たち
の経営であるという意識を高め、家族全体での意識統一を図ることに繋がっている。
これからも家族を中心とし、また家族ぐるみの交流を基本とした活動を継続して
いく意向である。
アグリネット21の組織イメージ
- 5 -
意欲溢れる攻めの農林水産業賞「優秀賞」
い
し
ぐ
ろ
つ か さ
石 黒
1
所
在
地
2
代表者名
司 氏
黒石市松葉町
いしぐろ
つかさ
石黒
司
3 経営の概要(平成25年)
(1)労 働 力
25人〔家族 5人、雇用20人(延べ 2,500人)〕
(2)経営規模
だいこん13ha(うち平場2ha)、にんじん(2ha)、
アスパラガス2ha(うち平場2ha)、土づくり用緑肥(約11ha)
(3)機械施設
トラクター(5台)、だいこん洗浄機(1台)、
にんじん堀取機(1台)、にんじん洗浄機(1台)、
にんじん選果機(1台)、肥料散布機(1台)、
ブームスプレーヤー(1台)、サブソイラ(1台)等
ビニールハウス(100坪×5棟)、作業場(厚目内150坪、黒石60坪)
4
産業力強化や地域力強化のポイント
○
○
確かな栽培技術で成り立つ経営こそが農業の基本だという理念
だいこんとにんじんを経営の柱に絞り込み、大型機械化一貫体系に向けたほ場の大
区画化を実施
○ 長男の就農を契機に、労働力を加味し、かつ高い品質を確保できる規模まで計画的
に拡大
○ 地域の模範となる緑肥作物(ヘイオーツ)の鋤込みによる土づ
くり及び土壌線虫対策技術を確立し、地域へも波及
○ にんじんコート種子の1粒は種作業体系の確立による間引き作
業の省力化と播種作業効率の向上
○ 関係機関・各種メーカーとの連携による、作業機械の改良や地
域に適応した優良品種の独自試験の実施と地域に適応した品種の
絞り込み
○ 労働条件等の整備による雇用の確保
経営面積の推移
(ha)
20
17
15
12
(万円)
8,000
販売額の推移
■ 長男
就農時
7,000
6,000
10
10
7
4,000
3,000
5
5
1.5
0
2,000
0
S48~ S55~ S58~ H14~ H16~ H22~
H14年~
- 7 -
H22年~
5
産業力強化や地域力強化の経緯・工夫等
(1)産業力強化や地域力強化のきっかけ、経過
ア
昭和48年高校卒業後、黒石市内の会社に勤務したが、就農した友人と話すうちに
サラリーマンより農業の方が経済的に魅力があると感じ、就職後3ヶ月で退職。7
月から就農し、冬期間は農地を取得するため出稼ぎにより資金を確保した。
イ
昭和49年には、父から受け継いだ1haの農地と出稼ぎで得た資金で転作畑50aを
購入し、レタス(1ha)とアスパラガス(50a)の栽培に取り組み、その後、徐々
に面積を拡大した。
ウ
昭和53年からは、生活の拠点を農場から25km離れた黒石市内に変えることで、一
般企業と同様、職場に通うように畑に通い、1日の労働時間に制限を設けることで、
無駄のない計画的な農業経営を実践した。
エ
昭和58年からは、機械の作業効率向上のため、自費で区画整理(1区画50~100a)
を実施し、経営の柱をレタスからにんじんにシフトし、平成7年からは、現在の経
営の基盤となるだいこんとにんじんを柱とした大型機械化一貫体系を確立した。
オ
平成14年からは、長男の就農を機に順調に規模を拡大している。
(2)産業力強化や地域力強化への努力と工夫
ア
だいこん洗浄機などメーカーが作った機械を使いやすいように独自で改良し作業
効率を向上させているほか、メーカーへは農家ならではの視点(使いやすさ、改良
点等)を伝え、効率的な農業機械の開発に向けた連携を実践している。
イ
地域に先駆けコーティング種子を使った機械播種を行うことで、播種作業効率の
向上を実現している。
ウ
にんじんコート種子の1粒は種作業体系を確立したことにより、間引き作業の省
力化と経費の削減が図られ、今では地域における一般的な技術として普及している。
エ
市場情報や種子情報を収集したり、地域の指導機関と連携した現地試験等により、
高冷地に適した作目・品種の導入とその栽培技術を確立し、地域への普及に努めて
いる。
また、常に優れた品種(品質・収量性・耐病性等)を探り、消費者ニーズにも迅
速に対応できるよう、様々なメーカーの新品種についても独自に地域適応性試験を
継続して実施している。
オ
緑肥作物(ヘイオーツ)の鋤込みによる輪作体系を地域に先駆けて実践すること
で、土づくりや土壌線虫対策技術としての効果を実証している。
- 8 -
カ
販売先については、以前は自ら県内のスーパー等へ直接出荷していたが、取引先
(希望者)の増加に伴い、生産以外の部門に時間を割くことで農産物の品質低下が
懸念されたため、出荷量全体の9割近くを近隣の青果会社へ出荷し、その青果会社
から地元スーパーなどへ安定的に供給している。
また、残り1割の農産物については、要望の強い都市近郊県のスーパーや通信販
売を行っている。
キ 安定的に雇用を確保するため、ハローワークに求人募集するとともに、早い作型
のアスパラガスを経営に取り入れることで5月から11月までの6か月以上の雇用期
間を確保し、雇用保険や通勤手当の支給などの労働条件を整備している。
(3)地域生産者への指導や、地域との連携など関わり具合
ア
平成元年に厚目内高冷地野菜生産組合(昭和55年設立)の副会長に就任し、平成
11年には組合長として、高冷地野菜の生産者の声を行政に直接届け、地域農業を活
性化させるため「黒石市長と語る会」を企画し、現在も恒例行事として継続されて
いる。
イ 高冷地野菜の認知度と価値を高めるため、厚目内高冷地野菜生産組合員には技術
的指導も実施している。
ウ 平成7年には優れた経営と地域への貢献が認められ青森県農業経営士に認定さ
れ、平成26年度からは黒石地区農業経営士・青年農業士会の会長として地域の農業
後継者の育成にも積極的に取り組んでいる。
エ 平成14年には認定農業者となり、平成26年からJA津軽みらいの認定農業者協議
会長に就任。また、平成15年~23年までJA津軽みらい(黒石地区)の青色申告会
の会長として、青色申告の普及に努めるとともに、組合員に対する指導に尽力して
いる。
オ 農業研修生については県内外から広く受け入れており、県内からは青森県営農大
学校の学生や県職員の新採用者、県外の社会人も受け入れている。また、平成19年
からは、中国からの研修生も受け入れており、研修生の受け入れ体制が整えられて
いる。
カ 集落内の連携としては、平成11年から営農活動の維持(農道の草刈りや泥上げ)
や農村景観の保持(花壇)に向け、農事振興組合の会長として集落をまとめている。
(4)今後の経営発展の考え方
ア
就農して40年、農業経営士になって20年、県内外の農業者との交流の機会も多く、
様々な農業者と意見を交わしてきた結果、確かな技術で成り立つ経営こそが農業の
基本であるとの信念を貫いている。
イ いかにコストを削減し、品質の良い物を作るかが究極の技術であり、これができ
れば規格外品はなくなり、必然的に経営の無駄が省かれ、所得向上にもつながると
考え、日々技術の研鑽に尽力している。
ウ 導入品種については、地域適応性を第一に、市場等との連携を図りながら、消費
者ニーズ等を踏まえた品種導入に努める。
エ 経営規模については、雇用の確保状況等にもよるが、現状の面積が品質を維持し、
更に向上させていくうえで最適の面積と考えており、これからも「技術で成り立つ
経営」を基本とした営農活動を展開する。
- 9 -
意欲溢れる攻めの農林水産業賞「優秀賞」
風間浦村きあんこう資源管理協議会
1
所
在
地
2
代表者名
3
経営の概要(平成25年)
(1)労 働 力
下北郡風間浦村大字蛇浦
会長
なかつか
よしみつ
中塚
義光
協議会構成団体等:
蛇浦・易国間・下風呂漁業協同組合、
風間浦村商工会、風間浦村
漁協組合員数
(2)経営規模
4
○
:
等
3漁協計411名
キアンコウ漁獲量87トン、販売金額7,800万円(風間浦村3漁協合計)
産業力強化や地域力強化のポイント
村内3漁協が連携して小型個体の再放流や禁漁期間を設定することで、大・中型の
キアンコウの水揚量が増加、漁獲量が安定
○
観光協会や旅館組合等と連携して「ゆかい村鮟鱇ブランド化戦略会議」を設立し、
「風間浦鮟鱇」ブランド基準策定による差別化
○
漁業と観光を融合させた村民参加型の地域振興イベントとして「ゆかい村鮟鱇まつ
り」を開催
1,067
5
産業力強化や地域力強化の経緯・工夫等
(1)産業力強化や地域力強化のきっかけ、経過
ア
青森県産キアンコウの水揚量は全国トップクラスを誇っているものの、その知名
度は低く、産地価格も伸び悩んでいた。中でも下北地域は県全体の水揚量の約4割
を占め、とりわけ風間浦村が最も多い状況であった。
- 11 -
イ
風間浦村産キアンコウは、そのほとんどが生きたまま漁獲され、鮮度の面では優
れた特長を有していた。
しかし、小型魚が多かったためその優位性が十分に生かされず、また、産卵のた
め浅い海域に移動してくる春~夏季が漁獲しやすいという理由から、需要が少ない
時期の水揚量が多く、価格が県平均単価を下回っていた。
ウ
このような中にあって、風間浦村内の3漁協では、適正な資源管理による持続的
な有効利用と収益の向上を図るためには、キアンコウの基本的な生態を把握する必
要があると考え、平成17年から、県むつ水産事務所の指導のもと、連携して標識放
流調査に取り組んでいる。
(2)産業力強化や地域力強化への努力と工夫
ア
村内3漁協が連携した資源管理型漁業の推進
キアンコウの標識放流調査を行った結果、大部分が大きく移動せず放流場所周辺
海域で再捕され、また、1年で約2㎏成長することが確認された。
調査結果を受け、キアンコウ資源の持続的有効利用を図ることを目的に、3漁協
のほか商工・観光関係者、村、県等を構成員とする「風間浦村きあんこう資源管理
協議会」が平成21年10月に設立され、
①
単価が安い2kg未満の小型個体の再放流
②
産卵親魚の保護を目的とした産卵期(5~6月)における禁漁期間の設定
などの資源管理指針を策定し、全漁業者が一丸となって資源管理型漁業に取り組む
こととなった。これらの取組により、
①
単価が高い大~中型魚の水揚量が増加し、まとまったロットで流通可能
②
産卵親魚の保護により、漁獲量が安定
③
主漁期が、鍋料理向けの需要が増え、販売価格の高い冬季へ移行
という良好な状況が生まれた。
イ
地域内連携による「風間浦鮟鱇」ブランド化の推進
さらに協議会では、資源管理の取組を地域経済活性化の呼び水にしたいと考え、
キアンコウのブランド化に取り組むこととした。
協議会のほか、風間浦村観光協会、下風呂温泉旅館組合等を構成員とする「ゆか
い村鮟鱇ブランド化戦略会議」が平成22年6月に設立され、キアンコウのブランド
名を「風間浦鮟鱇」に決定し、その認定基準やロゴマークの策定、地域団体商標取
得、「風間浦鮟鱇」フルコース料理(鍋、刺身等7品)の企画、「ゆかい村鮟鱇まつ
り」などが開催されてきた。
- 12 -
■「風間浦鮟鱇」ブランド基準
①全重量5kg以上のもの
③生きたまま水揚げされたもの
②12~3月に漁獲されたもの
④胃内容物を取り除いたもの
ブランドタグを装着して出荷
【メリット①】他産地との差別化によるブランド力向上
【
〃 ②】流通実態が把握でき、販売戦略に活用
【
〃 ③】ブランドイメージの低下防止
また、ブランド化推進のポイントの一つに「鮮
度」があるが、これには(地独)青森県産業技術
センター下北ブランド研究所が開発したキアン
コウの高鮮度保持技術(獲れたての鮮度を24時
間以上延長する技術)や冷凍保存技術が活用さ
れている。
これにより、全国の飲食店や有名デパートへ
生食用高鮮度の「風間浦鮟鱇」が安定供給され、
また、漁協、地元加工業者とのタイアップによ
高鮮度処理として安静蓄養後、活締め
る冷凍キアンコウ鍋セットなどの商品化が行われてきた。現在、「風間浦鮟鱇」は
東京都神田の有名料亭をはじめ、北海道~九州の小売店約70店舗への流通を実現す
るなど、「大間マグロ」に次ぐ下北地域のブランド産品として注目を集めている。
これらの取組により、kg当たりの単価は、標識放流を開始した平成17年は424円
であったが、平成25年は891円と約2.1倍に上昇した。25年の単価は県平均612円と
比較しても、約1.5倍と高価格を実現している。
また、「ゆかい村鮟鱇まつり」開催期間(12~3月)におけるキアンコウ目当て
の宿泊観光客数も増加し、開催当初(平成21年12月~22年3月)は730人程度であ
ったが、現在は1,000人を超える水準にまでに至っており、下北地域における冬季
観光の目玉となっている。
- 13 -
(3)地域生産者への指導や、地域との連携など関わり具合
ア
資源管理は当初、「手間がかかる」「漁期が短縮される」「禁漁区設定により漁場
が制限される」など漁業者に不安を与えるものであったが、標識放流調査のデータ
に基づく指導を継続した結果、漁獲量の安定と漁家収益の向上につながった。
現在は、多くの漁業者が、持続可能な漁業を進めていくためには、資源管理の取
組が必要不可欠であることを十分認識しており、協議会の活動に対して積極的に協
力している。
イ
キアンコウの魚価向上を目指す漁業関係者だけの活動にとどまらず、商工・観光
業者や試験研究機関、行政など広範囲な人々を結集してブランド化に向けた取組も
進め、販路開拓と冬季の観光振興により、貴重な「外貨」を獲得している。
特に「ゆかい村鮟鱇まつり」は、キアンコウを起爆剤に、漁業と観光を融合させ
て地域振興につなげたいという協議会の願いを実現させたものであり、村民参加型
の村おこし活動として定着するイベントに成長している。
(4)今後の経営発展の考え方
キアンコウ資源の持続的な有効利用と、
地域ブランドの維持・発展のため、
ア
キアンコウの生態に応じた資源管理
型漁業の継続と、流通業者及び消費者
への情報発信
イ
地域が連携したブランド管理の継続
と、全国的なPR活動の展開
ウ
既存商品の改良と、新規商品の開発
・販売促進・新メニューの提供
エ
協議会の取組検証とフィードバック
の実施
オ
協議会の取組を担う人材の育成
に重点を置き、
「津軽海峡の宝=キアンコウ」
を守り、村民の生業づくりに役立てていき
たいと考えている。
- 14 -
意欲溢れる攻めの農林水産業賞「奨励賞」
農事組合法人 嘉瀬生産組合
1
所
在
地
五所川原市金木町嘉瀬
2
代表者名
3
経営の概要(平成25年)
代表理事
すざき
ゆうえつ
須崎
悠悦
(1)労 働 力
構成員7人
(2)経営規模
大豆
(3)機械施設
トラクター(3台)、レーザーレベラー(1台)、は種機(1台)、
114.1ha、牧草9.4ha
ブームスプレーヤー(2台)、コンバイン(2台)
4
○
産業力強化や地域力強化のポイント
県内で最も早くブロックローテーションを導入し、旧町村単位で3年に1回大豆を
作付けする体系を確立。
○
平成19年には(農)嘉瀬生産組合を設立し、生産体制の強化を図る一方、大豆焼酎の
商品化や直売店の開設等により多角的な経営を展開し、地元の雇用創出に貢献。
○
当組合と一体的に活動しているJA女性部では、豆腐、味噌等の大豆加工品を商品
化し、直売所や各種イベントで販売するほか学校給食にも商品を提供するなど、地産
地消や食育にも寄与。
5
産業力強化や地域力強化の経緯・工夫等
(1)産業力強化や地域力強化のきっかけ、経過
ア
昭和56年にスタートした水田利用再編第2
期対策と旧金木町全域で実施されていたほ場
整備事業を契機として、転作大豆の栽培に取
り組むこととなった。
当初は、バインダーと脱穀機による収穫・
調製作業であり、収穫ロスを避けるため夜間
に2時間交替で刈取作業を行うなど苦労が絶
えなかったが、旧金木町役場を始め農協や農
- 16 -
コンバインによる大豆の収穫作業
業改良普及所(当時)の指導等もあり、旧町村単位で3年に1回大豆を作付けする
ブロックローテーションを確立した。
また、水稲と大豆を基幹とした画期的な地域営農システムとして注目され、県内
はもとより全国から視察が訪れた。
イ
平成19年5月には品目横断的経営安定対策に対応するため、7人の構成員で農事
組合法人嘉瀬生産組合を設立した。当時は、オペレーターの高齢化等により大豆の
基幹作業を担う大豆営農組合の存続が危ぶまれていたことから、嘉瀬地区にあった
2つの営農組合を合併し、法人化することとなった。
現在、地権者の集まりである嘉瀬地区転作実行組合連合会が策定した作付計画に
基づき、114haの大豆基幹作業を受託しており、ブロックローテーションと大型機
械体系により、作業の効率化とコスト低減を図っており、売上高は約6,400万円と
なっている。
(2)産業力強化や地域力強化への努力と工夫
ア
大豆の平均収量は 210kg/10aと県平均
(150kg/10a)を大きく上回っているもの
の、大豆の収益性が低いことが課題となっ
ていたことから、隣接する(農)喜良市営農
組合や関係者等と話し合いを重ね、全国的
に珍しい大豆焼酎づくりにチャレンジする
こととなった。
五所川原市役所や地元商工会の協力の下、
秋田県発酵工業に試作品づくりを委託し、
平成21年に原料となる大豆と米の品種が異
なる「斜陽の詩」と「仁太坊三味線」を商
品化した。
販売開始時は、地域の方々を約 100名招
大豆焼酎「斜陽の詩」
待し、大豆焼酎のお披露目会を開催した。
イ
平成22年に「斜陽館」に近い空き店舗を改装し、直売店「斜陽の詩」をオープン
した。自社製品と共に地域の農家や企業が生産している特産品を取り扱っているほ
か、地元から2名を雇用している。
また、アグリフードEXPOに参加し、大豆焼酎や代表理事が飼育している青森
シャモロックの加工品等をPR・販売するなど、多角的な経営を展開している。
- 17 -
(3)地域生産者への指導や、地域との連携など関わり具合
ア
昭和56年に転作組織を設立して以来34年
の長きにわたり、地域農業者との信頼関係
を構築し、地域の水田農業を担い、生産性
の向上や農業所得の向上に寄与してきた。
イ
当組合と一体的に活動している農協女性
部嘉瀬支部では、規格外の大豆を利用し、
豆腐や味噌の定番商品のほか、おからドー
ナツや豆乳プリン等を商品化し、地元の商
店や直売所、各種イベントで販売している。
おからドーナツの実演販売
また、学校給食にも商品を提供し、地産地消や食育にも寄与しているほか、農作
やつこ
業や加工体験、「 奴 踊り」等の伝承等に取り組んでいる。
(4)今後の経営発展の考え方
ア
構成員が高齢化し80歳を超えている者も
いることから、代表理事の子息を始め、2
名の若手農業者を構成員に迎え、組織の強
化を図る。
イ
大豆焼酎については、口コミ等により地
域に浸透しつつあるが、販売している店舗
が限られることから、商工会等と協力し、
取扱店舗の拡大やシャモロック加工品との
セット商品化、市内の冠婚葬祭での使用な
アグリフードEXPOでのPR活動
ど、販路の拡大に努める。
ウ
加工部門も生産部門と同様に高齢化が進んでいることから、販売額の向上等によ
り若手女性が魅力を感じ、活動に参加できるよう条件整備を行う。
- 18 -
5
産業力強化や地域力強化の経緯・工夫等
(1)産業力強化や地域力強化のきっかけ、経過
ア
羽白開発では昭和55年の設立以来、本県農業の先駆けとして作業受託による大規
模稲作経営を実践してきた。
イ これに加えて、平成19年に「あおもり藍産業協同組合」から藍(タデアイ)栽培
を依頼されたのを契機に、水稲以外の作物を栽培することとなった。
ウ 同時に、りんごの自然栽培をしている弘前市の木村秋則氏の話を聞く機会があり
その栽培方法に興味を持ち、羽白開発の1部門として「自然栽培すこやか農場」を
平成19年に設置し、野菜等の無農薬無化学肥料栽培を始めた。
エ 平成22年に「あおもり藍産業協同組合」による「あおもり藍」製品のポロシャツ
が、スペースシャトル乗組員の衣服に採用されるなど話題を呼び、当初20aから始
めた藍栽培は、平成22年には70a、平成24年には2haまで拡大してもなお、需要の
伸びが著しく、生産が追いつかない状況となっている。
オ 平成25年の栽培面積は藍1ha(育苗の関係で前年より半減)、アピオス・ヤーコ
ン・大根など50aとなっており、ほかに羽白開発としても水稲を無農薬無化学肥料
で3ha作付けしている。
カ 藍葉の成分で、抗菌・防臭作用のある「トリプタンスリン」の活用方法について
は、弘前大学及びサンスターが共同で研究を進めており、すこやか農場では平成23
年からその原料を提供するとともに、成分含有量を増やす栽培方法の検討を行って
いる。
(2)産業力強化や地域力強化への努力と工夫
ア
藍の栽培は当初手作業よる定植のため非効率であったことと、普通型コンバイン
で藍を地際部から茎ごと刈り取るため調製作業に多大な労力を要したことが規模拡
大を妨げていた。
イ 平成25年から機械化による省力化を目指し、定植にプラグ苗定植機を導入した。
これにより労力を10a当たり8割近く削減した。
ウ 収穫も茶摘み機を独自に改良した収穫機の導入で品質の優れた茎葉をより多く収
穫できるようになり、労力を6割以上削減できた。
エ 収穫した藍葉の乾燥を火力乾燥からハウス内での自然乾燥(仕上げは火力乾燥)
に切り替えることで、燃料費を10a当たり41,760円から1,260円へと大幅に削減で
きた。
オ この結果、藍の10a当たり生産費は303,245円から126,246円へと6割近くダウン
し、大幅赤字経営から黒字に転換することに成功した。
カ さらに今後,乾燥作業での天候の影響を避け品質向上とコスト低減のためヒート
ポンプを導入する予定である。
キ また、「トリプタンスリン」を効率的に抽出するため、弘前大学とサンスターの
指導のもと、成分含有量を増やす施肥方法や収穫適期、乾燥方法を検討している。
- 21 -
(3)地域生産者への指導や、地域との連携など関わり具合
ア
藍の栽培は水稲の育苗作業と田植え作業に競合し、機械化も進んでいないことが、
栽培農家が増えない要因であった。
羽白開発のある青森市後潟地域は水田地帯であり、土壌条件が藍の栽培に向いて
いることから、耕作放棄地対策及び農家所得向上対策として、定植機と収穫機を地
域でフル活用することにより栽培農家を増やし、失敗と試行錯誤を繰り返して数年
かけて確立した無農薬無化学肥料栽培を拡げたいと考えている。
イ
また、藍には、高い抗菌性、防臭性、静電気防止効果があり、藍製品へのニーズ
が高まっていることから、羽白開発では平成26年に自ら採種し、希望する農家3戸
と2法人に種子と栽培技術をセットで提供して、産地の育成を図っている。
ウ
さらに藍染めに興味をもってもらい消費拡大を図る観点から、青森銀行と連携し
て、一般消費者を対象とした藍の定植から収穫までの栽培体験会の開催も実施して
いる。
(4)今後の経営発展の考え方
ア
藍は栽培から加工(藍染め)まで、全て青森市内で完結していることから、羽白
開発では「あおもり藍」ブランドとして、
①トリプタンスリン(藍抽出物)を最大限に抽出するための刈取適期の見極めと乾
燥方法の検討
②藍栽培の導入可能な作型の検討(他作物との作業競合の回避)
を行うこととしている。
イ
また、あおもり藍産業協同組合では、染色技術を応用して、衣類以外の鞄や革靴、
文房具などへ有効成分を配合した製品を開発しており、藍の活用方法の拡大を図っ
ていく。
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