...

全国展開支援事業取り組み事例集 2/3

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

全国展開支援事業取り組み事例集 2/3
取組事例の紹介
飛騨牛に追いつけ追い越せ!山国育ちの「養殖とらふぐ」で町おこし!
岐阜県 古川町商工会
岐阜県飛騨市古川町若宮2丁目1-66 TEL.0577-73-2624
◎調査研究事業・山国育ち 歯切りの無い「飛騨とらふぐ」
目指せ大海!
(平成25年度)
1
事業に取り組んだ経緯・背景
飛騨市は、平成15年の合併により人口3万人となった
で育つ「とらふぐ」
を地域資源のひとつに育てたい。
が、現在は2万6千人で、今後20年後には25.8%減の1万
この「とらふぐ」は、水は古川の美しい地下水とナトリウ
9千人となると予想されており、定住人口を増やすことは
ムイオン、
ヨウ素、
カリウム、貝殻等をブレンドし、海水のおよ
勿論、交流人口を増加させることが地域活性化の重要
そ30%に塩分濃度を押さえ、水温は16度~20度に設定。
な課題である。
プラント水槽は密閉型循環無菌システムを考案した環境
こうしたなか、観光産業が多様化している反面、観光
で養殖が行われている。
に絶対的に欠かすことのできない「食」については、飛騨
仲間の魚卸業の方から、
「水道水を掛けたらふぐがお
地域のどこへ行っても
「飛騨牛」料理がダントツの人気で
となしくなった」
という会話からヒントを得て、
「もしや!」
と思
ある。しかしながら、観光客から他の料理やお土産を求
い通常の海水より塩分濃度を下げてみたところ、成長が
める声も聞かれる。地元の観光関連事業者からも、
マン
著しくよくなったことをきっかけに、さらに研究開発を進め
ネリ化を打開するためにも、飛騨牛に代わるインパクトのあ
現在に至った。
る他のおもてなし料理やお土産品が求められていた。
ふぐは元来、河口近くで塩分濃度が薄い環境が適し
「飛騨とらふぐ」は平成22年に飛騨海洋科学研究所
ているが、ふぐは海水温度が25度になると死んでしまう
(旧:飛騨とらふぐ研究所)の深田所長が海水の研究を
為、温度が上がると仕方なく沖にいっている。その為、ふ
開始し、平成23年3月に養殖場が完成させ、その後とら
ぐには濃すぎる塩分濃度の環境にならざるを得ず、
ストレ
ふぐの養殖を開始し試行錯誤の末、平成25年の1月に出
スで白身が赤くなっているのだと現時点では理論づけて
荷できるようになった。
いる。
「ふぐは繊細な生き物。人間と同じでストレスによっ
飛騨にはふぐを食べるという文化が無いため、調理人
て皮膚に影響が出ているんだよ」
と深田所長はそう語る。
も消費者もふぐ料理の知識が殆ど無いが、飛騨で「とら
さらに、通常、養殖のとらふぐは共食いを防ぐために成
ふぐ」の養殖が成功したことについては、非常に珍しく驚
魚になるまで2~3回、
歯切り作業を行うが、
飛騨とらふぐは、
きであると同時に、観光資源としての期待も高く、新たな
ストレスが少ないため歯切りをしなくても共食いをしない。
地域産品に育てるべく、古川町商工会を中心として「飛
また、水温が一定しており、年中食欲旺盛で通常のお
騨とらふぐ実行委員会」が組織された。
よそ半分の期間で出荷できる大きさに育つという。
こうして、
ストレスが少ない環境で育った飛騨とらふぐは、
●「飛騨とらふぐ」
とは?
「飛騨」
という知名度の高さと、海の無い飛騨の山奥
2
「通常のとらふぐと比較すると絶品の甘味がある」
と料理
人からの評価は高い。
成果につながった取り組み内容
(1)
補助期間中の取組
●ふぐ処理免許者が一人もいない!
? 先ずはとらふぐに
ついて一から学ぶ!
れ、
コラーゲンと地元食材および山国独特の食文化を組
合せた新メニューや商品開発により、地域住民の利用促
進とブランド意識を向上させる。この地を訪れる観光客
全国展開事業では、ふぐ文化が無い飛騨において、と
に対しては「飛騨牛」のようなインパクトのある、おもてなし
らふぐの調査研究を徹底的に行い、ふぐの身、表皮、ひ
料理や商品の提供を目指す。また、地域ブランドとして、
20
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
次年度以降の全国展開のための戦略立案を行った。 大当たり
!逆に料理人のプライドに火がつき、お互いに切
具体的には、ふぐについての勉強会、飛騨とらふぐの
磋琢磨しながら、腕を振るって競いあった。
「調理人はそ
身の成分分析、先進地の視察、購買決定要因調査、
れぞれポリシーと自信を持っているため、その点非常にデ
マーケティング調査等を実施し、とらふぐの基本知識、付
リケートな部分であったが、皆、遊び心で理解して創作
加情報を学んだ。
料理を研究して提供してくれた。」
と飛騨とらふぐ研究会
また、
プロジェクト委員会メニュー開発部会による、とら
事務局 古川町商工会 上野局長は語る。
ふぐと地元食材、地元食文化とのコラボや組合せによる
「飛騨とらふぐ道場」は予約で直ぐに埋まってしまい、
メニューおよび商品開発や、東京にある、地方部と都市
キャンセル待ちが出るほどの大盛況ぶりであった。
メディア
部の橋渡しの様々なプロジェクトを実践する農業実験レス
等にも多数取材され、地域内外へ「飛騨とらふぐ」の知
トラン
「六本木農園」にて、とらふぐ料理を調理し提供し
名度向上に繋がり、ふぐ料理を食べることを目的にした観
ていただくと同時に、
「農家ライブ」
という生産者よりプレゼ
光客が増えたという。
ンを実施することで、都市部における想定顧客層のテス
また、お客様の意見が直接聞ける仕組みも、料理人に
トマーケティングを実施した。
とっても今後の自店での活動を広げていく上で貴重な経
これら取組により、飛騨とらふぐ実行委員会メンバーの
験となった。
とらふぐについての理解度を深め、また、次年度以降に
「飛騨とらふぐを使ったメニュー開発をただするのでは
「飛騨とらふぐ」を全国に展開し、交流人口の増加と地
なく、研究の場とするとともに、地元消費者への飛騨とら
域経済の活力となる企画立案の検討を行った。
ふぐの浸透や、観光客を呼び込むといった地域活性化に
つなげた仕組みにしたかった」
と、深田所長はオープンに
(2)
補助事業後の取組
● 料 理 人 の 遊 び 心とプライドをくすぐる仕 組 みでメ
至った経緯を話す。この「飛騨とらふぐ道場」
もその役目
を終え、今春にその幕を閉じる。
ニュー開発が活性化!
全国展開事業を終えた翌年、平成26年度4月、飛騨と
らふぐ海洋研究所 深田所長は、飛騨とらふぐ研究会メ
ンバーと連携して「飛騨とらふぐ道場」
をオープンさせた。
まわりの飲食店にも配慮し、あくまでもショールーム、宣伝
施設といった位置づけの店である。
飛騨とらふぐ道場は、研究会メンバーで地元の旅館、
居酒屋、洋食店などの料理人が交代で調理し、3000円
でとらふぐたっぷりの創作料理コースを提供する。道場
は1日5人までの予約のみとし、研究会メンバーの料理人
は、それぞれが自分の店舗を持っている関係で、自分の
休暇の日にスケジュール調整して運営した。
普段のお店ではお客様の顔を見ることのない料理人達
も、この場では、自ら商品提供とサービスも行い、お客様
の評価を直接感じられる場を作った。
また、堀田所長のアイデアで、お客様からのアンケート
調査を行い、その結果に基づき相撲に見立てて、横綱
〜前頭と番付を行い店内の壁面に掲示した。当初はプ
ライドの高い料理人が人前で評価されるなんて嫌がるの
ではないかとの懸念があった。しかしながら、この企画は
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
21
取組事例の紹介
3
取り組みの成果
事業取り組み前は、町内にふぐ処理免許者が1名で1
して育てていくことにした。
店舗しかなかったが、平成25年度に12人がふぐ処理免
「鮭の時不知(ときしらず)」を参考に創作したこの料
許を取得し合計13名となり、取扱店も11店舗となった。ま
理。時不知(ときしらず)
とは、時期・季節を選ばないとう
た、
テレビ放映が10回以上もあり、他地域からの予約が
意味から、飛騨とらふぐは養殖だからこそ美味しふぐを季
殺到し、町内の飛騨とらふぐ取扱店の客数を合計すると
節を問わず提供できることと掛けて、地元消費者や観光
1年間で2,000人以上の利用があった。
客に通年に渡って飛騨とらふぐを楽しん欲しいという想い
また、前出の「飛騨とらふぐ道場」の効果もあり、ますま
が込められている。
す他地域からの問い合わせや利用が続いた。
また、このような飛騨とらふぐ実行委員会の地道な普及
平成25年秋に富山県から70名の予約が入ったが、1
活動によって、
「飛騨とらふぐ料理は、当初は観光客が主
店舗で対応できる店が無いため、若手の3店舗が30人・
体であったが、最近は地元消費者が食べるケースが確
25人・15人の受入で、
しかも同じメニューを提供するといっ
実に増えている」
と古川商工会 上野局長は、地元消
た連携を図った。こんなことは町史始まって以来の出来
費者への浸透と定着化に手応えを感じており、地域に愛
事であり、地域に一体感が生まれている賜物であるとい
され地域外へも自慢できる名物に育つことに大きな期待
う。
を寄せている。
現在は、平成26年7月に町内の温泉施設のレストラン
を
「飛騨とらふぐ道場すぱーふる店(飛騨海洋科学研究
所が運営)」が開店し、大人数の収容ができるようになり
「温泉付き飛騨とらふぐツアー」が可能となり、ますます地
元客をはじめ利用客が増加している。
さらに。
「飛騨とらふぐ道場」の企画により、飛騨とらふぐ
実行員メンバー料理人が腕を振るって創作した飛騨とら
ふぐ料理は約200種ものレパートリーにも上る。その中か
ら飛騨とらふぐ研究会メンバーで検討した結果、料亭旅
館「八ッ三館」の秋田直樹氏が考案した、
「ふぐの時不知
(ときしらず)」
を、この地域の共通化したふぐ名物料理と
(メディア掲載)
【テレビ】
2014年12月16日
(火)
日本テレビ Zip!
「わくわくキャラバン」
2013年4月18日
(木)
名古屋テレビ UP
! 18:15〜 月金
2013年12月 NHK岐阜 「みの飛騨」
2013年12月 NHK全国 「ニュースウィーク」
2013年12月 名古屋テレビ 「どですか」
2013年10月 CBCテレビ 「イッポウ」
2013年7月 中京テレビ 「PS三世 高田純次」
2013年6月 名古屋テレビ 「アップニュース」
2013年4月 岐阜テレビ
2013年2月 東海テレビ 「西川きよしのご縁です」
2013年1月 東海テレビ 「スーパーニュース」
2013年1月 CBCテレビ 「イッポウ」
2012年11月 中京テレビ 「ストレートニュース」
2012年2月 CBCテレビ 「イッポウ」
22
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
【新聞掲載】
2013年12月 中京新聞
2013年12月 古川ニュース
2013年12月 中日新聞
2013年10月 中日新聞 中部版
2013年9月 中日新聞
2013年8月 中日新聞
2013年5月 中日新聞
2013年2月 中日新聞 岐阜版
2013年2月 中日新聞 飛騨版
2012年10月 中日新聞
2011年7月 神岡ニュース
4
今後の展望
◎事業者の本格始動を商工会と連携支援
てる」
と、あっけらかんな笑顔で語っていた。深田社長の
全国展開事業を活用して本格的に開始した「飛騨とら
果てしない野望はまだまだ続く。
ふぐ」による地域活性化の取組みは、当地域において、
新たな食文化と市場を創り出し、地域内外への話題提
供とそれによる観光客の入込数増加といった多くの成果
を残している。これからは、
「飛騨と言えば飛騨とらふぐ」
となるように次のステージへ昇るべく、新たなスタート台に
上がったところである。
一方、飛騨とらふぐ研究所の深田所長は、飛騨とらふ
ぐの消費量が増えることで養殖プラントの増産により地域
での雇用が生まれることに期待を寄せている。また、自身
の開発した飛騨とらふぐの養殖技術ノウハウを日本はもと
より世界に広めるべく研究開発を進めている。
「最終的に
は、
「飛騨とらふぐ」
と
「飛騨」
を世界に通じるブランドに育
参画事業者・事業実施者の声
「飛騨とらふぐ」
は深田さんの夢の実現が発端ですが、全国展開事業をきっかけに地域事業者との様々な繋がりと連
鎖が広がりました。関係する方々もこのような展開になるとは誰も考えていなかったと思います。地域が活性化する取組
に繋がって本当に良かったです。
(古川町商工会 局長 上野歳貴)
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
23
取組事例の紹介
未利用資源を使った産品開発に取り組み地域活性!
三重県 松阪西部商工会
三重県松阪市飯南町横野593-1 TEL.0598-32-2321
◎奥松阪
(香肌峡)
の自然と農林資源特産品の全国発信事業
(平成21年度)
1
事業に取り組んだ経緯・背景
三重県は、静岡・鹿児島に次ぐお茶の生産量全国三
てはさらに低く、加工を委託している生産者は加工賃の
位のお茶どころであり、その中でも当地は、周囲を山に囲
方が高い場合もあり、二番茶については「刈り捨て」
とい
まれ昼夜の寒暖差が甘味のあるお茶を育む。また、当
う刈り取りを行うがそのまま廃棄をしているため収入に繋
地の伊勢茶は、平成18年度第45回農林水産祭におい
がっていないのが現状である。このような中、二番茶を有
て天皇杯を受賞した実績を持つ。
効利用しようと、平成18年に松阪西部商工会が中心とな
国内のお茶の消費量はペットボトル等の緑茶飲料の消
り茶生産者、製茶事業者をメンバーに「伊勢の和紅茶生
費が増えた一方で、茶葉を用いる緑茶については減少し
産協議会」
を発足させ、当時はまだ、市場にあまり流通し
ている。
ていなかった日本茶で作った紅茶「和紅茶」
を製造する
また、お茶取引価格についても、一番茶の取引価格は
検討がはじまった。
需要の減少に伴い低迷している。二番茶の価格につい
2
成果につながった取り組み内容
(1)
補助期間中の取組
未利用資源で伊勢ブランドを全国へ
和紅茶は、松阪市飯南地域、飯高地域で栽培された
伊勢茶の二番茶を使用して、緑茶用の設備を活用しな
がら、県の農業指導員OBの指導を受けながら研究開発
した。最終的に生産者5名の加工場で味や品質を統一
した独自製法で加工している。伊勢の和紅茶の製造工
程は、一般的な紅茶製法はとらずに、日本茶の製造工程
を活かし発酵時間の短縮を図った独自の発酵工程を行
う。従来の紅茶製造は、時間をかけて発酵させるが、日
本茶製造方法と同様の温度管理方法を行い、短時間で
熱を加えることにより強制発酵させることで、大量生産を
300個とコンスタントに売れ、また各物産展での試飲での
可能にし、
コスト競争力を持つことが出来る。
評判も良く、試験販売では一定の成果を収めたといえ、
この商品開発に真っ先に手を挙げて緑茶製造ラインを
本格的にパッケージデザイン等を考案し、全国展開を目
提供したのが廣地製茶の廣地正行社長だった。後に「伊
論み、全国展開事業へエントリーを行った。
勢の和紅茶」の製造販売を担っていくことなる。
また、伊勢茶はブランド化において遅れを取っており、
平成18年に組織化した「伊勢の和紅茶生産協議会」
静岡、鹿児島、京都のブランド力に劣るのが現状である。
を中心に三重県の制度等を活用しながら商品の研究と
卸値も品質の割に低く、京都の宇治茶をはじめ、抹茶や
開発を重ねた。
緑茶味の原料等にも使用されており、伊勢茶の名は県内
平成20年10月に試作品を完成し、地元の道の駅二
では知られていても全国的には知られていない。伊勢茶
箇所にてテスト販売を実施した。各道の駅ともに月200〜
ブランドを全国に広く周知することも一つの大きな目標で
24
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
株式会社松阪マルシェを設立後は、商工会と一体とな
り、さらなる商品開発を進めた。
「伊勢の和紅茶」ブランド
知名度向上と商品力の向上を目指し、地域産業資源活
用事業計画にチャレンジし、
「伊勢茶の活性化を目指し開
発、商品化した
『伊勢の和紅茶』
シリーズの拡販事業」
と
して平成23年に認定を取得した。そして。国の中小企
業地域資源活用プログラムを活用しながら、さらなる伊勢
茶の新商品開発に取り組んだ。これらの取組によって、
地域農産物である大台町の柚子、紀宝町のマイヤーレ
モン、鈴鹿市の生姜をそれぞれにコラボレーションさせた
「伊勢の和紅茶フレーバーティー」
を開発、商品化した。
さらに、利便性、使いやすさといった付加価値を高めて
あった。
ポーションパックにした「一煎パック」
を商品化している。
平成21年の全国展開事業では、これまで行ってきた
その後も和紅茶シリーズの商品開発を継続的に続け
「伊勢の和紅茶」の商品開発のブラッシュアップと本格
ている。和紅茶を配合したロールケーキを販売し、お茶
的なパッケージ開発、伊勢の和紅茶のペットボトル化など
とのギフトセットなどといったバラエティある商品展開を進
の商品開発を実施。販促プロモーションとして、Webサイ
めている。
ト構築や展示会出展を計画した。
具体的な商品化は、廣地製茶が主体となり、
デザイン
会社と連携しながら商品のブラッシュアップと、パッケージ
デザインや販促ツール作成を推進した。全国への展開
を見据えて「伊勢の和紅茶」の同年10月に商標登録認
可を取得し、正式商品化をした。
展示会は積極的に展開し、
グルメ&ダイニングショーを
はじめ、全国ふれあい観光物産展、特産品食コンテスト、
また、県内では、みえリーディング産業展やみえの食品
マッチング交流会など多数の商談会にも参加し、知名度
向上と販路開拓を促進した。こうした積極的な活動によ
り流通関係者やバイヤー等に広く伊勢茶、伊勢の和紅
茶を知って頂くことが出来、また、好評を得ることが出来
た。
(2)
補助事業後の取組
販路拡大を目指し法人化
全国展開事業終了後は、本格的な商談を展開。某
百貨店との商談がまとまり取引開始にあたり口座開設を
きっかけに法人化し株式会社を設立した。会社名は伊
勢の和紅茶をはじめとして、松阪地域の特産品を全国
へ広めていく願いを込めて「市場」
を模して「株式会社松
阪マルシェ」
と名付けた。
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
25
取組事例の紹介
3
取り組みの成果
雇用創出と生産者の売上拡大を実現
現在は、従業員2名を雇い入れており、地域にあらた
継続的な新商品開発と、地道な営業活動により、現在
な雇用を生み出している。また、株式会社松阪マルシェ
では取引先が約300社にまでなっている。当初の伊勢の
の販売量と売上の拡大により、生産者から高い価格での
和紅茶生産協議会で和紅茶の仕様を検討している段階
茶葉の買取りを実現し、地域のお茶生産者の売上の拡
から、大量生産供給を見越して検討していたことが、現
大にも繋がり、地域一体の活性化に貢献している。
在、功を奏している。廣地社長が、食品商社等の大手
さらに今年、平成26年9月には、地元に地域特産品ア
企業と商談を積極的に推し進めたことも取引先が拡大し
ンテナショップ「あざふると」の運営に参加した。自社の
た要因のひとつである。
製造販売する
「伊勢の和紅茶」
をはじめとして、その他に
現在の販売ルートは、卸売りが大半を占め、その半分
三重県内、松阪地域内の特産品販売の協力を行ってい
以上は首都圏をはじめとした東日本へ流通しており、伊
く。
勢茶、伊勢の和紅茶のブランドは全国に広がりを続けて
いる。
こうした取り組みにより、株式会社松阪マルシェ設立初
年度は、5トンの和紅茶を生産し、売上金額は約900万円
となった。
その後は、地域資源活用事業を活用して継続的な商品
開発による和紅茶シリーズの充実化を図り、
ニッポン全国
むらおこし物産展、
アグリフードEXPO、
グルメ&ダイニング
ショー、FOODEX JAPAN、
ビジネスサミットなど展示会や
商談会に積極的に参加し、来場者の意見を聞くことによ
り、新商品開発や、
パッケージの開発など課題の発見と、
販路開拓を継続した結果、昨年度の和紅茶シリーズの
売上金額は約1,
200万円となり、順調に売り上げを伸ばし
ている。
4
今後の展望
和紅茶の商品開発にはじまり、伊勢茶と伊勢の和紅茶
を全国へ展開。法人設立と雇用を創出し、そして地域
生産者へ未利用資源の有効活用による売上増加と、こ
こまでステップバイステップで成長を遂げてきた。今後は、
伊勢の和紅茶で築き上げた商品化ノウハウ、営業ノウハ
ウ、販路等の経営資源を生かして、松阪地域の地域産
品を世に広めるという、次の大きな目標と役割を担ってい
る。ここまで大きく成長した株式会社松阪マルシェは、さ
らなる地域活性化に向けて、これからが第一歩であり、
周りからの寄せられる期待も大きい。
「伊勢の和紅茶の知名度と販売量のさらなる向上を目
26
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
【メディア掲載】
平成25年12月18日
CBCラジオ多田しげおの気分爽快!!朝からP・O・N出演
平成26年6月26日
クロワッサン7月10日特大号に掲載
指していくことは勿論のこと、社名の由来のとおり、松阪
地社長は意気込んでいる。
地域の特産品を全国区に向けて発信していきたい」
と廣
参画事業者・事業実施者の声
平成18年から取り組みはじめた本プロジェクトは、全国展開事業に取り組んだことによって大きな躍進を遂げることが
出来きました。伊勢茶と伊勢の和紅茶の知名度向上と、地域への貢献に繋がったことが大きな成果です。
(松阪西部商工会 事務局長 大和修)
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
27
取組事例の紹介
若手や女性、NPO等も地域協働し、埋もれた地域資源もブランド化
鳥取県 湯梨浜町商工会
鳥取県東伯郡湯梨浜町龍島501-1 TEL.0858-32-0854
●東郷湖周“げんきウォーキング”プロジェクト http://genkiwalking.net/ ●㈲レストラン吉華 http://www.e-kikka.com/
●ゆの宿 彩香 http://www.yunoyadosaika.jp/ ●山本みやげ店 http://www.e-hawai.jp/
●湯梨浜町 http://www.yurihama.jp/ ●有限会社まつもと http://onishijimi.com/index.html
●湯梨浜町観光協会 http://www.yurihama.jp/kankou/
◎東郷湖周“げんきウォーキング”プロジェクト
(平成24・25年度)
1
事業に取り組んだ経緯・背景
湯梨浜町は、鳥取県のほぼ中央に位置し、平成16年
の目指す方向は、天女も惚れたリゾート地 女性が主人
に羽合町、泊村、東郷町の3町村の合併により誕生した。
公となるリゾート地」
というプロジェクトコンセプトを打ち出し
町の中央部にある
「東郷湖」は、山陰八景の一つにも数
た。若手中心の42名の委員会で、SWOT分析やワーク
えられる風光明媚な湖で、湖底からは二つの温泉が湧
ショップ研修会を重ねた結果であり、PDCAサイクルを廻
出している。日本のハワイとして携帯電話会社のCMでも
すために審議は今も継続中である。
知名度が向上した北岸の「はわい温泉」
と並び、南岸の
またこれを活かした10のプロジェクトが策定され、そのう
「東郷温泉」
も古くから観光客等に親しまれてきた。CM
ちのウォーキングリゾートプロジェクト、ゆりはまものづくりプ
効果で一時的な伸びはあったものの観光客数は減少傾
ロジェクトを商工会が実行部隊として主導して展開するこ
向にある。
ととなった。
そこで湯梨浜町は平成23年「東郷湖・未来創造会議」
そのため本事業の実行委員会には、湯梨浜町の3つ
を立ち上げ、地域資源を活用しながら、町民との協働に
の部署(企画課、産業推進課、健康推進課)
が参画して
よる魅力あるまちづくりを推進していく事とした。
おり、運営においても商工会と円滑に協働が推進されて
湯梨浜町が四大羽衣伝説の伝承地のひとつであるこ
いる。
と等にちなみ「東郷湖のシンボルは、天女」
「湯梨浜町
2
成果につながった取り組み内容
①補助事業期間中の取組
疲労回復に役立ち、人々に元気や活力を与えてくれ
◎昭和15年頃発見の新種の梅で新製品開発
る梅を活用し、
「人のげんきは町のげんき」
をコンセプトに、
同地で発見された「野花豊後(のきょうぶんご)」は、新
参加事業者が完成させた「げんき梅酢」はじめドリンクや
種であるにも拘らず長年にわたり、ただ大玉の梅としか扱
スイーツ、弁当は最終的には全8アイテムがブラッシュアッ
われていなかった。
プされ完成した。
果肉も厚く
・安定した実りのある品種であることから、こ
とりわけ商工会女性部においては、
「野花豊後」以外
の埋もれた地域資源を掘り起し、新たなブランドとして各
の地元特産品もふんだんに使った弁当を部内全員で検
参加事業者と新製品開発をしていくこととした。
討し開発した。
「天女からのおくりもの」
とネーミングして、
まずフードコーディネーターからは梅の効用やその活か
参加事業者の共通レシピとして活用している。
し方、加工に対する助言を受けた。そして、商品化に向
けてのネーミングやラベル、パッケージ等については、
デザ
◎県・町・NPO法人等市民との協働
イナーによる提案を受け、参加事業者が委員会で試行
鳥取県はかつて日本一歩かない県であったことから、
錯誤を重ねて、
ブランド名は「げんき梅」
と決定した。
健康増進のためにウォーキング立県を目指した数々の取
28
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
組を行っていた。また隣接する倉吉市を拠
点とするNPO法人未来が、平成13年より
ウォーキングや健康でのまちおこしを推進し、
湯梨浜町でも度々イベントも開催していたこと
から、本事業においても協働し大きな牽引力
となった。
観光開発事業として、7つのウォーキング
コースを設定し、
ルート上に健康づくりと観光
巡りの情報やサービスを兼ね備えた7カ所の
「ウォーキングステーション」と51店 の「協 賛
店」を配置し、おもてなしの体制を整えた。
東郷湖周辺の起伏のある変化に富んだ各
コースは、健康、いやし、
グルメ、温泉を楽し
める設計で、
ガイドのシステムなども整えた。
NPO法人未来が運営する、東郷湖のほ
とりに建つ日本初のウォーキングカフェ
「Cafe
ippo -Walking Resort-」も
「ウォーキングス
テーション」の一つで、
インストラクター等が常
駐しておりモデル的な店舗となっている。
町やNPOとも連携し官民協働により、平
成24年度は、同事業も含めて4月から11月ま
でのほぼ毎月、数十名から数百名まで様々
◎観光客招致の情報発信を継続
な規模の県内外からの参加者による、
ウォーキングイベン
ウォーキングイベントの活動はもちろん、本事業で開設
トが町内で実施された。とりわけ6月のSUN-IN未来ウオー
したホームページやフェイスブックの更新も継続し、幅広く
クでは、
2日間で延べ約2,800人の参加者を数えた。
情報発信を行っている。
アジア各地からの参加者も目立つようになってきた。
ウォーキング協賛店での、飲物の用意、
トイレ、雨具販
売、
コース案内等、お客様へのおもてなしやサービスを調
◎補助事業後の取組
査し表にまとめて掲載したり、
ウォーキングステーションで押
◎「げんき梅」の本格店頭展開
したスタンプを、冊子協賛店見せると各種の割引等の受
統一ブランドとして「げんき梅」シリーズを扱う
「ウォーキ
けられるサービスや、
リピータ客には抽選でスペシャルプレ
ングステーション」等の販売店では、チラシやPOPなどの
ゼントが当たる等の企画なども継続している。
販促物もセットしてコーナー展開を始めており、今後も増や
していく予定である。
◎商工会・旅館組合と観光協会の連携体制
弁当「天女からのおくりもの」は、地元の諸団体の集ま
町を上げて組織的な運営を始めたことから、商工会・
りにも頻繁に活用されるようになり、複数の事業者で注文
旅館組合と観光協会が、今までにない繋がりを構築する
を割り振って製造販売している。また鳥取市内の有名レ
ことができた。
ストランで梅酢等の利用を打診するなど、外部へのBtoB
平成26年6月には町制施行10周年企画として「日本の
の営業活動等も始めて販路の拡大を模索している。
ハワイアロハカーニバ2014」を3団体合同企画で初めて催
すことがでたことは、大きな波及効果だったと湯梨浜町観
光協会事務局長の若山訓さんも評価している。
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
29
取組事例の紹介
3
取り組みの成果
◎埋もれていた地域資源をブランド化
浜町で行われ、大学教授、医師、整体師等関係者が全
「げんき梅」で活用している
「野花豊後」は各事業者の
国から集結し、現在も活動を続けている。県道の案内看
利用数を商工会が取りまとめて、今も発注をしている。
(支
板も含めた整備も段階的に進んでいる。
払は各事業者)
地元JAも、
今回の商品開発や市場の反応
(試食アンケートの結果等)が好評であった
ことから付加価値を認め、新たなブランドとし
て取組をしていく方針に転換した。
◎ノルディックウォーキング認定第一号
本事業により町全体でウォーキングに取り
組んでいることを、地元町民はじめ県内外に
ウォキングステーショ
ン・協賛店
周知することができた。
「ウォーキングの町 湯梨浜町」のブランド
構築のため、
ウォーキングを活用した地域活
性化戦略に詳しい専門家からの助言等も得
東郷湖周“げんきウォーキング”プロジェクト パンフレットより
て、2年目からはノルディック
・ウォークに特化した。
(北欧フィンランドにおいてスタートした2本のポールを使っ
たウォーキングで、その健康効果から近年日本でも愛好
者が増えている。)
東郷湖周を歩く、げんきウォーキングコースは、平成25
年に一般社団法人全日本ノルディック
・ウォーク連盟から、
全国第1号のコースと認定された。その前年の平成24
年には、日本ノルディック
・ウォーク学会の設立総会が湯梨
4
【受賞メディア掲載】
・第15回鳥取県商工会経営支援発表大会
(産業振興事例の部)
最優秀賞 ・平成26年度中国・四国ブロック商工会女性部主張発表大会 最優秀賞
・第16回商工会女性部全国大会主張発表大会 優秀賞 以
上本文参照
・BSS山陰放送
(ラジオ)
「食のみやこ鳥取探検隊が行く
!」
・山陰放送、山陰中央テレビ、日本海テレビ ・週刊大阪日日新聞
今後の展望
「げんき梅」は、さらにアイテムも増やしブラッシュアップ
して、当地のブランドとして確立を目指している。また、ふ
るさと納税のお礼の品としてもカタログにも掲載された。
平成27年10月17日~18日に当地で「第2回アジアウォー
キングフェスティバル・2Days」の開催が決定した。主催と
して「WTC鳥取大会実行委員会」が結成され、
インバウ
ンドも視野に入れ鳥取県を上げての事業となった。
1日目、
湯梨浜の3ウォーキングコース
(参加予定:1,000人)2日目、
倉吉・三朝のトレイルコース
(参加予定:500人)。平成28
年には世界大会も予定されている。
また入込客が若干の伸びた地域もあったものの、当地
での消費動向がまだ弱い。協賛店はじめ住民協働でお
30
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
進木事務長と青木女性部部長
もてなしして、まちの魅力を伝えるシステムの構築や、販
ことから始めたが、今では本事業担当者として主事の小
売促進活動を行っていく。
林祥樹さんとともにコーディネーター的な役割を果たしてい
観光と商品が連動したブランドストーリーの掘り下げや、
る。また鳥取県商工会連合会が平成27年2月に行なっ
魅力的な商品に向けた磨き上げを継続していく。
た第15回鳥取県商工会経営支援発表大会で、同事業
事務長進木幸恵さんは着任したその年に本事業がス
について発表し最優秀賞を受賞した。
タートしたため、参加事業者や地域の諸事情を理解する
参画事業者・事業実施者の声
「各分野のプロの指導を適時に受けて事業を進められたことで革新的な前進があった。新たな発見もあり、今後の自
社事業の柱となりえると考え
『げんき梅本舗』
も立ち上げた。飲料や梅寿司への活用など、独自のメニューの提案で反応
も上々なので、他のアイテムも検討中。周知にはまだ時間も資金もかかりそうだが、商品寿命が短くなっている昨今、
ス
ピーディーな展開も必要だ。」
(㈲レストラン吉華 代表取締役社長 吉岡学)
平成26年度第16回全国商工会女性部全国大会で、本事業について主張発表し優秀賞を得た。
「地元に伝わる天女伝説にちなんで、女性部員が天女となってまちを元気にしようと、同事業に取り組んだ。
ウォーキン
グコースの開発に取り組み、
ノルディック・ウォークのインストラクターの資格も率先して取得して、
ボランティアガイドにも挑
戦している。お弁当作りに取り組んだが、当初はなぜ一部の事業者のために女性部がそこまでするのか・
・との声も上がっ
た。しかし
『お弁当屋さんが元気になれば、周りの商売もきっと元気になる』
と励ましてくれた方もあり、結果的に女性部
が一丸となり進めることができた。注文を頂けるようになり手ごたえを感じている。」
(女性部部長 青木由紀子
(ゆの宿 彩香 女将)
)
「地元特産品を使っており、自信をもってお客様に勧めできる。お客様の反応は良いが、試食・試飲品がもっとあれば
アピールしやすい。
ビジネスホテルを併設してい
るので、今後はウォーキングの宿泊客増加を
期待している。」
(山本みやげ店 代表 山本孝志)
「東郷湖周辺でウォーキングやランニングを
する人が確実に増えおり、認知が進んで町が
元気になりつつあることを感じている。地元産
梅でストーリー性のある商品が出来た。自社で
も
『げんき梅』新商品開発を計画中なので、今
後も事業者が自立できるよう支援を行って欲し
い。」
(㈲まつもと 代表 松本淳)
実行委員で観光開発部・特産品開発委員の㈲レストラン吉華 吉岡社長
特産品開発委員の ㈲まつもと 松本代表 (右側)
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
31
取組事例の紹介
商品づくりから商談会後のフォローまでの一貫した支援により販路開拓を実現
鳥取県 琴浦町商工会
鳥取県東伯郡琴浦町徳万282-4 TEL 0858-52-2178
◎ピンチをチャンスに!
『琴浦まるごと
「速弁」』開発プロジェクト
(平成23、24年度)
1
事業に取り組んだ経緯・背景
琴浦町は農業産出額が県全体の13%を占め、水
が実情である。これは、製品のPR不足に加え、大
産業では赤碕漁港を有し、白いか・あじ・
トビウオなど
都市商圏で売れる製品としての完成度が低いこと
豊富な種類の魚介類が水揚げされる。農畜産・水
と、作る側にマーケティングの意識が薄いことが原
産関連の加工業・販売業など第2次、3次産業も活
因と考えられる。
発で、製造品出荷額、卸・小売販売額ともに鳥取県
一方で、平成22年度当時、地域内において高速
で5位と、県内でも有数の地域資源を有している。
道路(山陰道)
の整備が進められており、翌年2月末
地域商工業者は、農・水産資源を利用した練り
には町内区間が開通する予定になっていたことか
製品・加工食品、菓子類など多くの製品づくりを手が
ら、国道から高速道路に主要ルートが移行し、国道
け、個々に販売活動を行っているが、小規模零細
沿いに立地する事業者に悪影響が出ることが懸念
の事業者が多く、従来型の営業のやり方しかできて
されていた。
いないことから顧客開拓につながっていない。
そこで、琴浦町商工会では、販路拡大による経
最近では、県商工会連合会や県などを通じた物
営の発展とともに集団で取り組むことによる琴浦ブラ
産展・商談会等にも地域内の意欲ある一部事業者
ンドの形成、さらには地域PRによる観光客流入を図
が出展し、単独で消費者等に製品PR・販路開拓を
るために、平成23年度、全国展開支援事業に取り
目指しているが、充分な成果を上げられていないの
組むこととした。
2
成果につながった取り組み内容
参画事業者を審査で絞り込み
ン、商談会・展示会等への対応について講義が行
平成23年度の全国展開支援事業では、
「入口
われた。
(商品)から出口
(販路開拓)
まで一貫した支援」
「や
そして8月、
セミナー参加者の中から特にやる気の
る気のある事 業 者の選 別」
「商 工 会(参 加 事 業
ある事業者に、自社の戦略と新製品・試作品等を専
者)
として目標をグルメ&ダイニングショー出展におく」
門家、関係者の前でプレゼンテーションしてもらい、
「支援終了後は事業者自身の力で歩けるようにす
支援する事業者を審査により絞り込んだ。この審査
る」
という4点を基本方針として事業に取り組むことと
会には15社がエントリーし、審査の結果12社が支援
した。
事業者に決定した。
7月に商品開発・販路開拓セミナーを開催し、食
ただし、今回審査により外れることとなった事業者
品関係の事業者30社近くが参加した。
セミナーは3
についても、個々に専門家派遣などを活用して別途
回シリーズで、受講者にマーケット
・イン発想の重要
支援を実施した。
性や販売チャネルの選択、価格設定、
プロモーショ
32
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
商品をブラッシュアップして商談会へ
選定された12社については、流通
やマーケティングに精通した専門家に
よる個別支援を、8月から11月にかけて
合計8回実施した。商品コンセプトや
ターゲットの設定から、使用する食材、
原価計算、
ラベルやパッケージデザイン
まで、デザイナーを含めた専門家が1
社につき3人ずつ担当して支援した。
こうして12事業者は、商品のブラッ
シュアップを行い、翌 年1月には「ニッ
ポンいいもの再発見!」鳥取エリア商談
会、2月にはグルメ&ダイニングスタイル
ショーに出展した。
ただし、これまで商談会などで直接
バイヤーと面談交渉の経験がある事
業者が少なかったため、12月に事前
準備の研修会も開催し、商談会に参
加するにあたっての留意点などにつ
いて、
ロールプレイングなども交えなが
ら指導した。例えば、商談会で名刺
をいただいた方には終わってからすぐ
メールをすること、
メールの文章はこの
ように作成すること、といったところまで
きめ細かく指導した。
工会で業態、希望メーカー、希望商品、要望内容
(見 積、サンプル、商 談など)を一 覧 表にしてセー
セールスレップを活用して販路開拓
ルスレップに提供。
セールスレップはその一覧表を基
こうして商談会に臨んだものの、
ロットや賞味期限
に、取引の有望度や信頼性により4つにランク付け
の問題がネックとなり、取り扱ってもらうのが難しい
し、その理由も記載してもらった。そしてランクの高
ケースも多かった。そこでギフト商品を主なターゲット
い先を中心にセールスレップにフォローしてもらい、取
としていくこととした。
引につなげていった。
また、12事業者は小規模事業者が多く、展示会
平成24年度も全国展開支援事業で同様の取り
終了後も継続的にバイヤーにアプローチする時間も
組みを行い、新たに4社が加わった。こうして、2年
ノウハウもない。そこで、
セールスレップを活用して、
間で16事業所18品目のブラッシュアップを実施する
継続的にフォローしてもらうこととなった。
ことができた。
商談会でいただいたバイヤーの名刺を基に、商
平成25年度は、鳥取県の「『打って出る』
とっと
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
33
取組事例の紹介
り応援事業」により、事業者の力で商談できるよう
街で、消費者に琴浦町の特選品を直接PRするとと
になることを目標として、
「地方銀行フードセレクショ
もにテストマーケティングを行った。これにより後日、
ン2 0 1 3」と
「グルメ&ダイニングスタイルショ ー
(春)
消費者からおいしかったと直接事業者に注文が入
2014」に出展した。
るケースもあった。
さらに平成26年度は、東京都板橋区の大山商店
3
取り組みの成果
スも多いことから、販売先は主にギフト
商品や通販の関係であるが、大手百
貨店に納入できたケースもある。
例えば、参画事業者の1社である
洋菓子製造販売の「ケーキセラー・ボ
ルドー」は、
シャディや高島屋、伊勢丹
などとの取引につながっている。同じ
く洋 菓 子 製 造 販 売の「リンツ」は、千
趣会やスリーエフ、
イクスピアリなどとの
取引につながっている。
ケーキセラー・ボルドーが 考 案した
「ワインプリン&ワインゼリー」は、平 成
26年2月に開 催されたグルメ&ダイニ
ングスタイルショーの新製品コンテスト
・
フード部門で大賞を受賞している。
「ワ
インプリン&ワインゼリー」はもともと全
国展開を意識した商品であったが、賞
を受賞したことでテレビなどに取り上げ
られ、地元住民で購入する人も増え
ている。製造キャパシティの関係で引
き合いの多さに対応できていないのが
悩みであるが、閑散期などには今後も
全国展開の取り組みは続けていきたい
と考えている。
きめ細かな個別支援を行い、商品をブラッシュアッ
リンツは、
「天使のケーゼ」が千葉県浦安市の東
プしたことで、平成23年度は12社12品目のうち5品
京ディズニーリゾート内にあるイクスピアリの店舗コン
目が、平成24年度は16社18品目のうち4品目が取引
セプト
(夢を売る)
にマッチした商品として出店機会
につながった。
ロットの問題などで対応できないケー
を与えられ、1ヵ月間出店した。出店終了後の引き合
34
● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック
いの増加を見越し、販売サイトを整備して自らネット
えたのは、参画事業者が展示会や商談会に慣れた
販売を開始している。
ことによると考えられる。例えば1年目は、通りかかる
参画事業者が展示会や商談会で名刺をいただ
人すべてに試食をしてもらおうと勧めたが、2年目は
いて一覧表にまとめた件数は、平成23年度は241
脈のありそうな人だけに試食を勧めるというように、効
件、平成24年度は345件となった。
2年目が大幅に増
果的な販売促進ができるようになった。
4
今後の展望
全国規模の展示会に出展したことにより、催事等
ていく。
への出展を多数打診されるようになったが、期間が
また、製造キャパシティの関係で商談に対応でき
長期にわたるものが多く、事業者の負担にならない
ない事業者もあり、今後はこうした事業者の支援策
案件を絞り込みながら、琴浦ブランドの確立と町内
も検討していく必要があると考えている。
事業者繁栄のため、今後も販路開拓支援を継続し
参画事業者・事業実施者の声
最初はバイヤーと話すのが苦手でしたが、全国展開支援事業で商談会の経験を積むうちに、どういうことを
求めているのか理解できるようになりました。職人的な発想しかできなかったのが市場を意識した発想ができる
ようになり、良い機会を与えてくれて感謝しています。
(ケーキセラー・ボルドー 谷下和則)
(有限会社リンツ 宿院広美)
地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ●
35
Fly UP