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取組成果事例集 取組成果事例集
地域資源∞全国展開プロジェクト 取組成果事例集 全国の商工会の新しい特産品開発・観光開発へのチャレンジ」 目次 調査員による総括・提言… …………………………………………………………… 01 小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業(全国展開支援事業) とは…… 02 取組事例の紹介……………………………………………………………………… 04 1. 北海道美瑛町商工会… ………………………………………………………… 04 2. 岩手県遠野商工会… …………………………………………………………… 08 3. 山形県川西町商工会… ………………………………………………………… 12 4. 山梨県商工会連合会… ………………………………………………………… 16 5. 岐阜県古川町商工会… ………………………………………………………… 20 6. 三重県松阪西部商工会… ……………………………………………………… 24 7. 鳥取県湯梨浜町商工会… ……………………………………………………… 28 8. 鳥取県琴浦町商工会… ………………………………………………………… 32 9. 香川県高松市牟礼庵治商工会… ……………………………………………… 36 10. 佐賀県大町町商工会… ……………………………………………………… 40 11. 熊本県山鹿市商工会… ……………………………………………………… 44 12. 熊本県山江村商工会… ……………………………………………………… 48 調査員による総括・提言 塩野 富佐男 株式会社フォーライフコンサルティング 代表取締役 今回の調査を通じて、成果を上げている事例に共通しているのは、参画事業者に販路開拓の重要性が十分認 識されていた、もしくは事業に取り組む中でその重要性が認識されるようになっていったという点である。さらにはそ の販路開拓に取り組む中で、商工会の支援を通じてノウハウを蓄積し、 レベルアップしていった。その結果、全国 展開事業終了後も、事業者はバイヤーとの商談などにおいて自らの力で商品の魅力をしっかり伝えるなど、販路開拓 を続けることができるようになっている。 これは全国展開事業を実施するにあたって、意欲のある事業者や、自主的に参加した事業者に絞り込んだことが大 きい要因といえる。これにより、全国展開事業における長期にわたる研修や商品開発、 レシピ開発、さらに商談会、展示 会出展まで、 プロジェクトとして一体感を持って遂行することができたのであると考えられる。 そしてプロジェクトを支援する商工会は、あくまでも参画事業者が主体と位置付けつつ、その成長や自立を目指して企画、運営したことも 大きい。これにより、参画事業者の意識改革につながり、全国展開終了後もマーケティング的発想により自立した取り組みを継続できるよ うになったといえる。 さらに、参画事業者が成果を上げたことが他の事業者や行政などにも刺激となり、波及効果により地域の活性化に寄与していることが、 とても重要なポイントであろう。 今後、全国展開事業に取り組む場合にも、単に商品をどう売っていくかということだけでなく、参画事業者の成長と自立、そして地域へ の波及効果を意識して取り組むことが重要であり、それによって長期的に成果を上げ続けることにもつながっていくといえよう。 木村 裕美 中小企業診断士/早稲田大学研究員 今回のどの事例も、はじめから上手く進んだわけではなく、あきらめずに課題解決し続けていくことで成果が生まれ ていた。地域資源を活かした独自のあるべき姿 (ビジョン) が明確で参画事業者と共有し、共に強い意志をもった職 員さん達がコーディネータやプロデューサーとして事業の牽引をしていた。地場産業の新たな領域の創造。各種組 合、行政や観光協会、NPO等市民との協働による地域一丸となった事業展開。適時適材適所の専門家起用によ る障害突破。地域資源の発掘や首都圏との交流・連携、各種メディアの積極的な活用による啓発・育成・広報等、参 画事業者と生みの苦しみを共有しながら、進捗度は様々だが着実に活性化に向かっていた。 費用対効果については、売上実績等に直結する定量的な側面だけでなく、各事業者間や諸団体との連携や協働促進などの定性的な 側面も評価に値する。さらに、波及効果として新規顧客開拓や後継者育成、地域のイメージアップ等につながっているケースもあり、様々 な機会創出に結びつける努力を感じた。本事業を終了後にも、各事業者がいかに自立し活性化していける様に仕掛けていくかも重要だ。 継続的な変化への適応、多様な施策の組み合わせ等のためには、商工会自身もネットワークづくりや情報の受発信は欠かせない。地域 資源を活かしながら独自の物語を戦略的に紡いでいけるように、PDCAをスパイラルアップさせながら廻していくこと、各事業者が主体的に 活動し続けること、それができる環境作りが地域力向上には必要だと考える。 小野寺 正博 オノデラコンサルティング 代表 成功事例の共通点は、商工会が中心となり行政等も連携し、運営組織が機能しており、事業者に事業の目的 と意義が、浸透・共有化されていた。また事業化推進主体を事業者側に持たせることで、やる気、向上心、責任 感を生み出している。共通の目的と目標を明確にすることが大切であることが見える。 その上で全国展開事業を有効的に活用している。機能性の深堀、 パッケージデザイン、展示会出展や市場調査 等の商品開発に欠かせないマーケティングとクリエイティブの部分を上手に取り込み、商品化の速度と完成度を上げ ている。商品開発において、 マーケティングとクリエイティブ要素は重要な点であるが、ものづくり視点に傾倒しがちな中 小企業にとっては貴重な経験となり、 ノウハウとして蓄積され経営資源となり、その後の改良や新商品開発へと繋がってい る。取材先の事業者は、いずれも改善改良やラインアップの拡充が図られていた。このようなブラッシュアップは市場の変化が早い近年 においては必要不可欠である。 事業終了後については、商工会が国や県の施策を織り交ぜながら、商品開発、販路開拓等の継続を積極的に支援している。事業化 のペースは様々であるが、単年度の取り組みで経営の柱となる事業に育成するのは難しく、このようなフォローアップが事業の成長を陰で 支えている。 成功事例を通してみると、取り組みを始めることによって地域に一体感が生まれ、事業者には商品開発ノウハウや営業スキル等の経営 資源が育成される。そして知名度や売上が向上することで事業者自体は勿論のこと、地域にも波及し潤いと活気が生まれている。全国 展開事業を通じて地域全体に螺旋階段を昇るような好循環が生まれている様に感じた。 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 01 小規模事業者地域力活用新事業全国 ●小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援とは、 「商工会が地域の小規模事業者と協働 して地域に新しい事業を創出する」ことを目的とした事業です。 事業の内容は、事業種別 として特産品開発や観光事業開発、特産品開発と観光事業開発の両方、コミュニティビジ ネスの創出に関わるものです。 ●各地で生み出された事業のはじめの一歩から事業化に至るまで、事業分類として調査研究 事業、本体事業1年目、本体事業2年目といった、成長の段階に合わせて取り組むものです。 また、全国商工会連合会では、各地の取り組みを側面的に支援するため、専門家派遣事業 や展示会開催、広報などを実施しています。 ●事業が開始された平成18年度以降、全国で約1,300のプロジェクトが取り組まれ、様々な 成果が生み出されています。 事業分類と事業スキーム(平成26年度) 本体事業(1年目) 調査研究事業 事業費上限:500万円 補助金上限:500万円 (自己負担額なし) 総事業費上限:1200万円 補助金上限:600万円 ※共同案件の場合の上限は1500万円 ※共同案件の場合の上限は1500万円 ・新商品の開発 ・イベント開催・出典 ・広報 等 ・試作品改良 ・販路開拓 (自己負担額1/3) (自己負担額1/2) 新たな特産品の開発 新たな観光サービスの開発 地域力の結集 02 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 新たなコミュニティビジネスの開発 地域課題の解決 地域資源の活用 ・組織作り ・調査・分析 ・簡単な試作 等 本体事業(2年目) 総事業費上限:1200万円 補助金上限:800万円 展開支援事業(全国展開支援事業) とは 事業種別と全国商工会連合会の支援メニュー 小規模事業者地域力活用新事業全国展開支援事業の事業スキーム 特産品開発プロジェクト 商工会 ○小規模事業者 ○農業者等 ○地域住民 ○地域の団体 ○NPO ○専門家 等 全国連の支援 ⇒各プロジェクトのPR・支援 継続かつ大口取引を目指し、中間業者を狙う 広報 ・プロジェクトの内容に応じたPR ・販売づくりのための実験的事業 ■ 連携して新たな特産品の開発 観光開発プロジェクト 商工会 ○小規模事業者 ○農業者等 ○地域住民 ○地域の団体 ○行政 ○NPO ○専門家 等 連携して新たな観光サービスの開発 コミュニティービジネスプロジェクト 中間業者 ■バイヤー ■流通業者 ■飲食店 ■小売店 ■旅行代理店 ■その他 ■商談会・展示会 ・バイヤーや流通関係者への露出 ・直接商品を手に取れる場 消費者 消費者 ターゲットを絞り、直接、消費者を狙う ■専門家派遣 ・商品開発・改良支援 ・売り込み支援 消費者 ※様々な嗜好の消費者群 (市場) 地域住民 商工会 ○小規模事業者 ○農業者等 ○地域住民 ○地域の団体 ○NPO ○専門家 等 連携して新たな特産品の開発 地域住民の課題を細やかに解決する 地域住民 ■その他商工会サポート ・運営等に関する相談窓口 ・事務手続きなど 地域住民 ※地域特性によって異なる課題 (市場) 年度別事業分類別のプロジェクト採択件数 年 度 調査研究事業 本体事業1年目 本体事業2年目 おもてなし事業 合 計 平成18年度 123件 123件 平成19年度 136件 136件 平成20年度 37件 137件 174件 平成21年度 19件 125件 144件 平成22年度 17件 127件 平成23年度 71件 41件 平成24年度 65件 平成25年度 平成26年度 26件 170件 8件 21件 141件 55件 22件 18件 160件 68件 53件 21件 142件 47件 51件 28件 126件 ※平成18年度∼平成19年度は本体事業のみ。 ※平成20年度より調査研究事業を創設。 ※平成22年度よりおもてなし事業創設 (年限3年) 。 ※平成23年度より本体事業2年目創出及び補助率の導入。 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 03 取組事例の紹介 地元産小麦を使ったカレーうどんにより滞在型観光地化を遂げる 北海道 美瑛町商工会 北海道上川郡美瑛町本町1-2-4 TEL.0166-92-1175 ◎美瑛産小麦「香麦」の販路拡大・商品開発プロジェクト (平成18年度) 1 事業に取り組んだ経緯・背景 美瑛町は、十勝岳連峰をバックに広がる農村景 ず、 「食」 目的では70位という状況であった。 観が「丘のまち」 として脚光を浴び、年間110万人の そこで、畑作全体生産量の60%を占める小麦を 観光客が訪れている。しかし近年、厳しい農業環 ブランド化することができれば、観光客は景観だけ 境から離農者が増加しており、基幹産業である農 見に来るのではなく、地元小麦を使ったおいしい食 業は衰退傾向にあった。観光産業については、観 事が美瑛町での楽しみとして認識してもらえるように 光客数は多いものの、景観スポットを見て回るだけ なる。これにより日帰り客が滞在型へと変わり、観光 の通過型観光地であることから、町の経済活性化 に携わる事業者の収益拡大につながる。また、農 につながっていなかった。美瑛町は旅行雑誌の道 業経営も安定して景観が維持され、地域全体が活 内観光地の目的別人気度調査では、平成16年当 性化されるとの考えから、本事業に取り組むことと 時、 「自然観賞」 目的では2位であるにもかかわらず、 なった。 小麦をはじめ様々な農畜産物が取れるにもかかわら 2 成果につながった取り組み内容 カレーうどん研究会を発足 平成17年当時の商工会青年部副部長であった 西森和弘現商工会長をはじめ、青年部メンバーは、 美瑛町を滞在型観光地にするためには食の魅力を 認識してもらうことが不可欠であると考えていた。 しかし何を特産品とすればよいか、考えがまとまら ないでいたところ、美瑛町で開催された食のシンポ ジウムの講師から、 カレーうどんによる町おこしを提案 された。 そこで17年3月に、その提案に賛同した西森氏を 中心に、青年部の様々な業種の有志15名で「美瑛 カレーうどん研究会」 を発足させた。 なぜカレーうどんかといえば、何といっても美瑛町 の代表的農作物である小麦を活用できること。また 美瑛町の北東に位置する下川町がうどん、南に位 置する富良野市がカレーライスでそれぞれ町おこしを しており、美瑛町はその中間に位置しているからで ある。 04 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 新商品を地元に定着させることにこだわる 平成18年には全国展開支援事業に採択され、 土産物として「美瑛カレーうどんレトルトパック」 を開発 した。麺は、生麺の食感を大切にしつつ日持ちさせ るため、半生麺にすることにこだわって幌加内町の 製麺会社に製造委託した。美瑛の小麦はやや色 がくすんでいるが、これこそが特徴であるということを 知ってもらうために、あえて麺の色がそのまま目につく つけ麺にした。 麺は美瑛産小麦である 「春よ恋」 と 「ホクシン」の 町内での基調講演などで地元への普及を図る みを使用し、具は豚肉、たまねぎなど原則美瑛産 一方、東京ビッグサイトや池袋で開催された商談会 を使用することといった「美瑛カレーうどん」 としての にも参加し、 バイヤーから高い評価を得ることができ 6か条の条件を定め、試食会を重ねた。そして7月 た。結果的にはバイヤーから求められるロット数が に「美瑛カレーうどん」の発表会を道の駅で開催し 大きすぎて、取引には至らなかったものの、全国のそ た。町民向けに500したが40分で売り切れるほど好 れぞれの地域ががんばっていることに刺激を受け、 評であった。 レシピを公開し、町内の飲食店5店が美 大いに励みとなった。 瑛カレーうどんを取り扱ってくれることとなった。 また同じ平成18年、研究会メンバーを中心に350 万円を出資し、 「合同会社香麦」 を設立。駅前でア ンテナショップの運営も開始した。 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 05 取組事例の紹介 全国的に販売することは当初から考えておらず、 にも出展した。 いかに地元に定着させ、観光客に美瑛町に来ても このように新製品開発やイベントの開催などに継 らうかということにこだわり続けたことが、 ロングセラー 続的に取り組んできることもロングセラーにつながる につながった要因の一つであるといえる。 重要なポイントであろう。 合同会社香麦や美瑛カレーうどん研究会が活動 こうした取り組みの根底にあるのは、全国的に認 を発展させ、平成24年には「美瑛カレーうどんのカ 知されていた「丘のまち」 という美瑛町のイメージに、 レールウ」 「美瑛カレーかりんとう」 も販売を開始した。 いずれも好評で、順調に売上を上げている。 「食」という要素を付け加えたいという研究会メン バー共通の想いやビジョンである。この想いがメン バーで共有されているからこそ、 スタンスがぶれず、 新製品開発とイベント開催を継続的に実施 互いに極力しあいながら長く続けられている要因で また、美瑛カレーうどん研究会では、 「新・ご当地グ あるといえる。 ルメグランプリ北海道in丘のまち美瑛」 をはじめ、 グル 商工会が事務局となり、美瑛カレーうどん研究会 メイベントを積極的に誘致したり参加している。札幌 と連携していることで、飲食店でのカレーうどんの提 大通り会場で開催される 「サッポロオータムフェスト」 供食数が増加すると同時に小売店で販売しているカ に毎年参加するほか、平成26年には、初めての道 レーうどんレトルトパックやカレールウ、 カレーかりんとうな 外のイベント 「全国年明けうどん大会2014inさぬき」 どの商品も並行して販売数が増加している。 3 取り組みの成果 美瑛カレーうどんなどを発売して以来10年が経 ち、美瑛町は、かつては「丘のまち」 というイメージし かなかったが、現在では「美しい丘と美食のまち」 と してのイメージが浸透し、滞在型観光地に変化を遂 げつつある。 旅行雑誌の道内観光地の目的別人気度調査の 食部門のランキングで、平成16年は70位であったの が、平成25年には9位と、大幅に順位を上げている。 町内観光入込数も149万人と、10年前から30万人も 増えている。 事業開始当初は、 「なぜ美瑛町でカレーうどんな のか?」 と疑問の声が上がったりもしたが、今では美 瑛町の代表的な食としてすっかり定着したといえよ う。平成23年には、 「中小企業による地域産業資源 を活用した事業活動の促進に関する法律」に基づ く地域資源として美瑛カレーうどんが認定されてい る。 美瑛カレーうどんの食材として使用している美瑛 産農畜産物の年間使用量は、小麦31.1トン、美瑛 06 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 牛乳56.3トン、美瑛豚26.5トンとなっており、これ以外 にも米やアスパラ、 トマトなど、旬の時期に合わせて ト商品となった。 あらゆる食材を使用している。美瑛カレーうどんによ こうした成果を出してきたことにより、行政や農協 り、地産地消に大きく貢献できているといえる。店舗 からも協力を得られるようになり、今では緊密な連携 販売やイベントにおける販売などにより、間接消費も 体制を構築できるようになった。行政は、商工会の 合わせた年間の経済効果は1億4,700万円と試算さ 要請によく理解を示してくれ、予算化していただける れている。 ことが多い。 美瑛町の特色である田園風景を見て味わい、そ 合同会社香麦では、駅前のアンテナショップは老 の風景から生産される小麦から作られたカレーうどん 朽化のために閉鎖したが、白金地区の「青い池」 を を味わえるというストーリー性が支持されているので 観光の目玉にしようと、平成24年にアンテナショップ2 あろう。 号店「小麦畑と青い池」をオープンした。現在では 後に販売を開始した美瑛カレーかりんとうも、目立 池が雪で閉ざされる冬場を除く7か月間で35万人が つパッケージと食べきりサイズの小袋入りにしたこと 訪れる新名所となっている。 が受け入れられ、 年間2万袋以上を売り上げる大ヒッ 4 今後の展望 今後、美瑛町の中心部である街中を観光客があ なども行政に働きかけていきたい。 ちこち歩いてくれるようにするために、町の魅力をより また、美瑛町には素晴らしい食資源がたくさんあ 高めていかなければならないと考えている。商工会 ることから、 カレーうどん以外にも美瑛町を代表する から行政に要請して電柱の地中化工事が進行中で 特産品を生み出していきたいと考えている。 あり、 メインストリートの歩道拡幅やミニパークの設置 参画事業者・事業実施者の声 以前は東京でプロモーションをすることなど考えもしませんでしたが、全国展開支援事業がきっかけで東京の 展示会に出展し、全国各地で素晴らしい取り組みを目の当たりにし、大いに参考になりました。これがきっか けでさまざまな新たな取り組みにつなげることができました。 (美瑛町商工会 会長 西森和弘) 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 07 取組事例の紹介 新法の機会を逃さず、地域一丸となった連携や研究で業界での地位を確立 岩手県 遠野商工会 岩手県遠野市新穀町6-1 TEL.0198-62-2456 ●個性を育む木の学校づくりパンフレット http://www.shokokai.com/tohno/webgakou.pdf ● (協) 森林のくに・遠野協同機構 http://www.morinokuni.com/ ●㈱リンデンバウム遠野 http://lindenbaum-tono.jp/ ● (協) 遠野グルーラム http://www.tohno-glulam.jp/ ●遠野市 http://www.city.tono.iwate.jp/ ◎木のぬくもりが子供を育む 遠野型エコスクール事業 (平成23年度) ◎個性を育む木の学校づくり (のびのび教室) 遠野型エコスクール事業 (平成24年度) 1 事業に取り組んだ経緯・背景 在も稼働している。 平成17年には (協)森林のくに遠野・協 同機構を立ち上げ、木工団地は「森林の くに遠野」 という愛称を得て、林業と木材 加工業者の一体化を推進する遠野地域 木材総合供給モデル基地として位置づけ られた。中には森林総合センターも設置 され、遠野式・循環型林産業についての 情報の集約と発信、森林の活用を図るた めの学習、林業や木材加工産業の活動 拠点となっており、視察や子供に対する環 境学習やものづくり体験等の教育の場とも なっている。 また木造公共建築物普及研究会報告 書を取りまとめ、木造化の優れた費用対 効果を検証し発表。建設に係る費用は 非木造と大差はなく、断熱性に優れてお り、二酸化炭素の排出を抑えるだけでな く、子供たちの情操教育にも有効であるこ とを検証したが、まだ訴求・啓発は不十分 遠野市は岩手県の東南部の内陸に位置し、その83% であった。 が山林原野である。昭和60年に策定した遠野市HOPE 平成22年には公共建築物等木材利用促進法が施行 計画により、地場産材を活用した街づくりを実践し木材利 され、国の低層公共建築物は原則としてすべて木造化 用推進体制等も整えた。しかし森林や里山整備など継 を図り、地方公共団体や民間事業者に対しても同法に 続的な保全のために伐採される間伐材は大量で、その 即した主体的な取組を図る方針を打ち出した。遠野市 50%は未だ未利用であった。 では既に公共施設の木造化を進めており、木の学校づく 「生産加工都市」をめざし第三セクターとして㈱リンデ りへの評価は高く先進事例として文部科学省の報告書 ンバウム遠野が平成2年に設立され、地場産材を活用し にも記載されている。 (公立中小学校木造化率全国平均 た首都圏への産直住宅の販売及び外構施設の全国営 10%遠野市41%)遠野ブランドとも言える 「遠野紅唐松」 も 業を開始した。併せて平成5年~15年にかけて遠野木 建築資材として評価が高く、これらの強みを生かして全 工団地を整備し、製材から住宅部材加工まで7工場が現 国展開をさらに進めることとした。 08 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 2 成果につながった取り組み内容 ①補助事業期間中の取組 業界内の人脈づくりの支援等もお願いした。 ◎新たな加工技術で市場拡大 平成23年12月に都内東洋大学で開催された、木と建 建設資材としては東京大学弥生講堂をはじめ、多くの 築で創造する共生社会研究センターによる 「木の学校づ 公共施設の建設実績があったが、建具・家具(特に学校 くりシンポジウム」に参加して、 「木がつなぐ共生社会」の 用家具) は未着手で、平成23年度に新たな加工技術によ 事例として本事業の取組を遠野市長が発表し、約200名 り開発試作を行なった。 の木造建築に関わる企業・行政・研究者や関連諸団体と 細い木材を張り合わせて1枚の板にする 「幅剥ぎ」 とい のネットワークづくりも進めることができた。 う技法で、材質の強化も可能となった。 オープン教室用 パーテーション6種、移動用パーテーション2種、机・いす2 ◎補助事業後の取組 種類・扉付棚4種類、作業用テーブル・いす等を試作開発 ◎開発品展示と人脈を生かしたPR活動の継続 した。 木製学校家具・建具の製造元である帝国器材㈱から 展示会毎に指摘された問題点の改善を重ね、更なる は引き続き市場動向の情報等を得たり、各専門家との情 改良や強度試験については翌年にも実施した。 報交換や、各事業者の支援を専門家派遣事業なども活 用し継続している。 ◎専門家の助言と首長のトップセールス また、商工会の入り口に、学校用家具の試作品を展示 学校用家具のニーズについては、 アンケートの予定を し、本事業で製作したパンフレットやDVDを活用しPR活 変更し、教育現場に詳しい後述の専門家3名に対しヒア 動を続けている。 リングを実施した。小学校のニーズ把握や先進事例を 見学、今後の商圏拡大のため、林野庁や板橋区教育委 ◎経営革新計画の承認で新たな取り組みへ 員会などへの聞き取りを実施して、現場ならではのきめ細 平成24年度㈱リンデンバウム遠野、平成25年度(協) かな助言も得てターゲットやコンセプト等目指す方向性が 遠野グル―ラムが、経営革新計画の承認を得て、新た 明確となった。 な取り組みに踏み出した。また参加事業者北上山地家 東洋大学理工学部教授で木と建築で創造する共生 具(協) の傘下である㈲千葉木工所は、平成25年度にい 社会研究センター (WASS)長の長澤悟氏には企画プロ わて希望ファンド地域活性化支援事業に採択されて補 デュースを、東京コミュニケーションアート専門学校自動車 助金を得て、岩手産材を活用した幼児用室内遊具・家具 デザイン科顧問の藤村敬直氏にはデザインを、WASS客 の開発事業に乗り出した。 員研究員で森の贈り物研究会主宰の花岡崇一氏には 3 取り組みの成果 ◎モデルとなる中学校の受注~完成 これにより最新の建設資材や加工技術、教育家具の 平成25年4月に開校した遠野市立遠野中学校が木造 活用事例として、紹介できるようになり、実際の施工や活 学校建設の集大成として多数の関連事業者が参画する 用における問題点やその克服についても検証することが 一大プロジェクトとなった。総工費は最終確定には至って できた。 いないが、1億円は下らないとのことだ。設計から施工ま また遠野市では学校建設と併せて行なっている子供た で、全てを遠野市内の事業者で受注できることが、大き ちへの森林学習会(木の大切さや郷土の木の歴史など な強みとなっている。遠野市では公共建築物木材利用 学ぶ) を通して、学校を綺麗に大事に使う気持ちが育まれ 促進基本方針を平成25年から適用しており、今後も需要 ことも強みとなっている。この森林学習会や建設の過程 が期待される。 を、本事業でパンフレットやDVDに収めて営業活動に利 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 09 取組事例の紹介 用している。 結果的に平成23年度は、6,739万円の売り上げにつな がった。小学校用学習机・椅子・棚等以外に (協)遠野グ ◎東日本大震災の復興支援 ルーラムの構造材等も含めた学校関係への納品額であ 平成23年3月11日発生した東日本大震災で、岩手県 る。なおオーダーメイドによる受注生産のため、本事業の 沿岸は甚大な被害を受け、遠野市は後方支援基地とし 試作品は参考見本として活用されている。平成25年の て様々な活動を行った。本事業参画事業者は、被災地 実績は3,870万円であった。 復興の最前線として仮設住宅等への資材供給や建設 特注家具メーカーの帝国器材㈱等が平成24年から岩 等多様なニーズに対応した。一時は需要に対し供給が 手県に営業拠点を設置したことから、今後の販路拡大 追いつかない状況があったが、その後は大手企業の進 が期待されている。 出が著しく、地元事業者はさらなる作業効率のアップ等 商工会担当者である、河内夕希枝さん (指導グループ 経営改善対策が望まれている。 主任 主任経営指導員) は参加事業事業者や関係す る諸団体、各専門家等との難しい調整を一手に引き受け ◎開発試作品の評価と市場拡大 ている。また経営革新計画や持続化補助金など、各事 平成23年度に試作開発した商品は、児童の成長に合 業者のさらなる発展につながる施策も活用し支援。文科 わせた高さ調節可能な家具作りや、自由な発想を伸ばす 省や農水省、国交省等の施策にも通じ、事務局長の齊 ための家具など新しい提案を行い、市内外の展示会やシ 藤茂さんの理解のもとで、市役所とも連携し多面的な事 ンポジウムでの事例発表の結果、文部科学省をはじめ大 業展開をしている。 手企業等にも注目された。 木造学校建築の集大成として平成25年4月に開校した遠野中学校 4 本事業で作製した学校用家具 今後の展望 首都圏の学校等での耐震補強工事のスピードアップ 者などを中心にした周知や、各企業のPR活動を、構築し や、東日本大震災による沿岸被災地の需要拡大を見込 たネットワークを活かして継続的に訴求していく。 んでいたが、労働力不足での入札不調や、大手ゼネコ また販路拡大のためには、重量の軽減やコスト削減 ン参入により県内業者が落札できない状況が相次いでい 等、量産体制をとる場合の作業工程の見直し等の課題 るため、平成26年度の売上は厳しい見通しである。 も併せて、遠野市や (協)森林のくに・遠野協同機構と連 しかし公共建築物等木材利用促進法により木造化の 携し各事業者と連絡調整しながら、解決していく。 需要も高まっており、遠野の強みを活かす大きな機会と なっている。大型公共施設建設の受注を遠野市の複数 の企業が一貫して請け負えるよう、学校建築の学識経験 10 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 【メディア掲載】 岩手日報 (知事懇談会新聞記事など) 、遠野テレビ、日刊木材新 聞、季刊文教施設2013夏号 (一般社団法人文教施設協会発 行) 、林政ニュース (日本林業調査会発行) 等。 ◀木工団地の立ち上げから関わる立花功さん (左) 主任経営指導員の河内夕希枝さん (右) 参画事業者・事業実施者の声 HOPE計画の策定委員であったことから、地域住宅政策、景観・まちづくりなどの課題解決のため、木工団地等の立 ち上げに関わり現在も活動している。 (㈱リンデンバウム遠野代表取締役、 (協) ノッチ・アート遠野理事長 立花功) 「各分野の専門家との出会いから、本事業は広がっていき、後ろ盾ともなっている。研修会には30名程度の参加者 がいて濃い内容に、終了後にも意見交換や交流会でも活発な討議が交わされた。今後は数年後の需要に対して活か せる技術も必要だ。木工団地内では、公共建築物木材利用促進法や震災復興事業をチャンスととらえ、一丸となって 本事業に取り組んできた。が、震災復興事業は大手の進出などもあり沿岸部の事業者ですら厳しくなっている現状もあ る。」 集成材工場である (協) 遠野グル―ラムは地元に加工施設がなかったため高コストに悩まされたことから平成6年に設 立され、高い技術が本事業の拡大にも寄与している。藤沼豊頼さんは、県職員時代には木工団地に関わりがなかった が、退職後平成22年に中小企 業診断士の資格を活かし参事 兼総務部長に就任。 「経営を見直し、昨年度は生 産設備を一新した。 本来は組 合員から受注した加工をやりた いが、大きな物件を受けられる 企業が少ないため、組合として 受注しているのが現状だ。その ため本事業の波及効果として、 投資に見合った利益の出る事 業の受注を期待している。」 林業・木材加工産業の拠点、木工団地「森林のくに遠野」の全景 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 11 取組事例の紹介 危機感をバネに地域一丸となって地域活性化! 山形県 川西町商工会 山形県東置賜郡川西町大字上小松1736-2 TEL.0238-46-2020 ◎米沢牛と紅大豆の里づくり事業 (平成19年度) 1 事業に取り組んだ経緯・背景 山形県川西町は、県南部に位置する人口1万9千人 このようななか、国の動きも踏まえて、商工会として地域 弱の町であるが、米については米どころ山形でも4位の生 資源の活用に着目し、行政やJAなどの地域の関係者と 産量を誇る農業の町である。しかしながら、平成6年当 連携し、町民の所得向上プロジェクトとして、平成18年度 時2万円だった米価(銘柄:はえぬき) は、平成18年には1 に町内の地域資源の実態調査を実施した。 (「川西町地 万2千円台まで下落。これが農家の所得を直撃し、当町 域活性化F/S事業」 (独) 中小企業基盤整備機構) の一人当たり町民所得は189万円と近隣の置賜地域平 この調査結果により、活用する地域資源について「米 均233万円を大きく下回り、地域内で最低となっていた。 沢牛」 「紅大豆」 「ダリア」の3品の提言があり、平成19年 また、冬期の積雪や道路事情が脆弱な川西町では工 事業として米沢牛と紅大豆を活用した新商品開発に着 場の誘致等も期待できない状況にあった。 手することに至った。 2 成果につながった取り組み内容 (1) 補助期間中の取組 に8事業者12品目を選定して開発が進められることとなっ 事業を通じて若手経営者に商品開発ノウハウを徹底的 た。 に指導 事業者に主体性を持ってもらうため、公募内容につい 全国展開事業の取組み内容は、委員会の開催、商 ては、①米沢牛と紅大豆の関連商品の開発。②開発 品開発、見本市の出展、販促ツールの作成、HPを兼ね 費の75%は事業者が負担する。といった条件にし、補助 たポータルサイトの作成を行った。 事業の終了後の継続性も視野にいれ、事業者がつくりた 川西町商工会を中心に、町役場、JAが連携し事務局 いと思う商品・売りたいと思う商品を商品化するという形式 を設立。委員会メンバーは、町内若手経営者や後継者、 にした。 紅大豆生産者などで構成した。 実際の商品開発にあたっては、若手の育成も視野に ここでのポイントは、今後の川西町を背負ってもらうこと、 いれて、 ビジネスプラニングの基礎を教えることから行っ また新しい発想を取り入れたいという思惑から、いずれも た。 30代を中心とした若手経営者や後継者で組織化した。 ビジネスプラニングと商品開発マーケティングついて山 さらに、山形大学工学部、米沢女子短期大学にも加わっ 形大学教授を、加工品開発については米沢女子短期大 て頂き、産・学・官連携の実施体制を構築した。 学栄養士をそれぞれ招き、 セミナー・研修会を開催した。 また、過去に商工会が開発商品アイテムまで決めて 特に事業計画については、作り手目線ではなく常に消 行った事業では事業者の責任感が育たずに、継続的な 費者目線で考えなければならないこと叩き込まれた。研 展開が出来なかった事例があった。この経験を踏まえて、 修会の最終では、 実際に事業計画を策定する演習も行っ 今回の事業については、主体は事業者にし、やる気と主 た。どんなに小さい事業でも具体的な数字にして目標設 体性を持ってもらうようにし、事務局は事業者が継続して 定しなければならないことを学んだ。これまでは俗にいう 続けられる為の後方支援に徹する方針にした。 「どんぶり勘定」でしか考えてなかった若手達にとっては 商品開発については、町全体で盛り上がることが必要 初めてのことで、 演習には初めて経験する事業計画策定・ と考え、町内業者へ広く一般公募をおこなった。最終的 目標数値設定に四苦八苦であったが、 ビジネスプランの 12 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 基本をあらためて学ぶよい機会になったという。 げ、現在では、地域を代表するお土産のひとつとなって 有限会社肉の斎藤がつくった「肉賜」 (ぎゅうたま) は、 いる。 地元産もち米を使ったおこわを米沢牛で包み、甘辛く煮 このような問題や課題を超えて無事に各社、試作開発 込んだボール状の商品である。 を終えることができ、パンフレット等の販促ツールを携え、 商品開発には開発担当が行っていたが、使用する肉 見本市「第2回グルメ&ダイニングショー秋2007」に出展。 の部位の選定や調味料など試行錯誤の連続であった。 全国120商工会のブースで一番賑わいをみせるとともに、 どうしても丸状を保持することが出来ずに、一時は、この 消費者アンケートでも、同事業で開発した「米沢コロッケ」 事業、商品開発を辞めさせてほしいとの相談まで受けた。 (株式会社本田食品) が第一位を受賞。展示会終了後 事務局としてどうにか助けたいと考え、肉加工品商品に も、バイヤーから参加事業者に対して多くの商談や問い 詳しい専門家をなんとか探し出すことができ、無事問題を 合わせがあり、事業者の意識も大いに向上することがで クリアすることができ商品化にたどり着くことができた。こ きた。 の商品は後に農林水産大臣賞を受賞するに至った。 株式会社銘菓の綿屋がつくった「ダラス先生の米沢牛 (2) 補助事業後の取組 パイ」は、当初はよくある子供やファミリー向けのお土産商 金の切れ目が縁の切れ目とならないように 品として開発していたが、事務局で開催した試作開発 本事業を始めるにあたり、商工会を中心として事務局 品の試食評価会では評価委員に「こんなものでは売れな では、継続して続けることに意味があると考えていた。一 い」等の厳しい評価を受けた。この事業においては、地 般公募をするにあたり開発費の75%は自己負担すること 元の老舗和菓子屋のプライドも横に置き、この評価を真 について、実は多くの事業者経営者からの反発もあった。 摯に受け止め改善改良を図り最終的には、これまでにな しかしながら、地域内外への販促支援を5年間行うことを い新しい「大人向けのおつまみ用パイ」 として大変貌を遂 約束して経営者に納得して頂いた経緯があった。そして、 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 13 取組事例の紹介 約束通り5年間の継続支援を守った。域内PRは町役場 とJAが主体となり、域外PRとパンフレット等販促ツール支 援は商工会が主体となり、継続的な支援を行った。 翌年から各社開発商品の正式販売を開始するととも に、地元の試食販売会等イベント催事開催や首都圏展 示会を毎年切れ目なく続けたことにより、地域内外へ川西 町ブランドの知名度向上が図れ、多くの顧客獲得、商談 成立に繋げることが実現できた。さらに事業者にとっても 継続的に販促活動を実施したことにより、販促・商談ノウ ハウが蓄積されて、ひとつの経営資源になったことが大き な収穫である。 3 取り組みの成果 これらの取組みにより、各事業者とも営業活動、取引 が活性化し、 メディア等の取材も多く取り上げられている。 「牛賜」 (有限会社肉の斎藤) は、事務局の広報営業 活動も功を奏し、 「優良ふるさと食品中央コンクール」農林 水産大臣賞、 「やまがたふるさと食品コンクール」最優秀 賞、山形県知事賞を受賞し、 テレビ番組で紹介され、注 文の電話が鳴りやまず一時は店を閉めて対応した時も あったという。昨年はテレビ番組をはじめとしたメディア掲 載は全く無いにも関わらず注文数は増えている。西日本 在住の方からの注文も多く、売上は発売以来、毎年前 年比を上回り今では主力商品のひとつになっている。地 域が生んで育てた「牛賜」は、 ロングセラー商品へと今も 成長している。 14 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 【メディア掲載】 企業名:肉の斎藤 商品名:肉賜 (受 賞) 平成20年度優良ふるさと食品中央コンクール 農林水産大臣賞 平成20年やまがたふるさと食品コンクール 山形県知事賞 (メディア掲載) 直近の放映 朝日放送 「朝だ!生です旅サラダ」 2013年8月31日 放映 その他 山形放送 「ピヨ卵430」 ミヤギテレビ 「OH!バンデス」 西日本放送 「さわやかラジオ」 TBS 「ひるおび!」 中部日本放送 「多田しげおの気分爽快!」 山形テレビ 「ゴジダス」 山口朝日放送 「Jチャンやまぐち」 岩手朝日テレビ 「Jステーション」 広島ホームテレビ 「Jステーション」 日本テレビ系 「oha4NEWSL I VE」 日本テレビ 「オススメッ !」 テレビ朝日 「ナニコレ珍百景」 仙台放送 「あらあらかしこ」 東日本放送 「週刊ことばマガジン」 4 今後の展望 当初目標であった5年間の支援期間を終えた今、事業 者に商品開発、販促プロモーション、営業活動のノウハウ とスキルが予想以上に備わり成長したことを実感する。 現在は各事業者とも、おのおの積極的な事業活動を 行っており、地域の農畜産物の出荷量や取引価格もこの 5年で向上させることができ、地域の所得向上という本来 の目的にも貢献することが出来た。今後は、各事業者が それぞれに自立しながら、商工会を中心に相互連携し川 西町ブランドを引き続き育成していくことを目指す。 参画事業者・事業実施者の声 全国展開事業をきっかけに、地域がひとつに纏まって目標に取り組み、そして成果を上げることができました。勿論、 大変なことも沢山ありましたが、終わってみるととても充実した楽しい時間を過ごすことができました。全国展開事業をやっ てよかったです。 ・川西町商工会 経営指導員 係長 梅津健一 ・東置賜商工会広域連携協議会 南陽市商工会 (広域経営指導員 (前川西町商工会 次長) 金子浩樹) 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 15 取組事例の紹介 大手企業のCSR活動との連携で、地域資源の訴求・発掘・育成 山梨県 商工会連合会 山梨県甲府市飯田2-2-1 TEL.055-235-2115 ●美味しい山梨を創るプロジェクト http://www.shokokai-yamanashi.or.jp/chef/ ●さくら茶屋La passion http://www.sakurachaya-lapassion.com/ ●レストラン スコット http://www.scotts-kofu.com/ ●おかめ鮨 http://okamezusi.net/ ●山梨県 http://www.pref.yamanashi.jp/ ●丸の内シェフズクラブ http://shokumaru.jp/chefsclub/index.html ◎丸の内シェフズクラブと県内シェフによる食材発掘と活用等の調査 (平成23年度) ◎丸の内シェフズクラブと県内シェフによる県内食材を活用したメニュー開発 (平成24年度) ◎丸の内シェフズクラブと県内シェフによる山梨メニューの商品化と人材育成 (平成25年度) 平成22、 23, 24、 25年度採択 1 事業に取り組んだ経緯・背景 観光立県を目指す山梨県には豊富な地域資源がある たさまざまな体験ツアーを実施し、地域資源と三菱地所グ が、特に食材については地元の飲食店でもなかなか有 ループの事業を連携させたCSR活動を進めていた。 意義には活かされていなかった。 その後同活動の事業展開について、県を経由し、山 一方、平成20年に北杜市では三菱地所㈱が地元 梨県商工会連合会に相談が持ち込まれたことから、三菱 NPO法人えがおつなげてと 「空と土プロジェクト」 を開始し 地所㈱の拠点である東京駅周辺丸の内の様々な飲食店 ていた。当時山梨県は耕作放棄地面積が全国2位とも との連携事業が企画検討され、全国展開支援事業へと 言われていたことから有効利用すべく、同社はグループ 進展していった。 社員やその家族、丸の内エリアのお客さまなどを対象とし 2 成果につながった取り組み内容 ①補助事業期間中の取組 なって山梨」 を開催。山梨の食材活用の全32品のオリジ ◎丸の内で山梨県産食材の情報を発信 ナルメニュー、1,614食や県産ワイン292本の提供し、各種 地元の食材を再発見し、県内外の飲食店のシェフに セミナー、 ミネラルウォーターの展示・試飲会などを開催し 活用してもらう。また東京都内の飲食店との連携により、 た。情報発信事業としては好評だったが、その後の取 首都圏に山梨食材や観光のPRを実施。著名なシェフと 引につながる事業者は皆無で、期間限定の提供となり販 の交流を通じ、山梨のシェフにも腕を磨いてもらう場を設 路開拓には至らなかった。 ける。それにより、技術やサービスを学び、消費者ニーズ を踏まえた共同のレシピ開発などを行う。結果、地産地 消も進み、飲食店自体が観光資源にもなると考えた。 しかしそれに至るまでには、PDCAサイクルを実践しな がら醸成され、段階的に成果や波及効果が拡がるまで の試行錯誤があった。 平成22年度は「山梨の企業と農林漁業の連携を県内 組織が力を合わせ支援」する事業を実施。青果や食肉 以外にレトルト食品や麺類等も対象にマーケット調査も実 施。また新規農業参画者ツアーなどもNPO法人えがお つなげてと連携して実施した。 東 京 新 丸ビルのレストランフロアにおいては「おあん 16 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 丸の内シェフズクラブのメンバーと県内シェフのジャンル別メニュー検討会 ◎丸の内と県内のシェフによる食材発掘 拡大に向け) 、学校給食や小売関係者(地産地消拡大 そこで平成23年度からは 「丸の内シェフズクラブと県内 に向けた取り組み支援) などに呼びかけ「イートアカデミー」 シェフによる食材発掘と活用等の調査事業」 とテーマを絞り (試食調査会) を開催して、約200名が参加した。 込んだ。三菱地所㈱が事務局を務め食育活動を手掛け 食材探しツアーの実施では、山梨の金融機関が都内 る、丸の内シェフズクラブのシェフに、県内食材探索ツアー で実施した「食のマッチング」にも参加。NPO法人えが への参加協力を依頼し、 5名の著名なシェフの参加を得た。 おつなげてや、県下24商工会、 JA、関係団体にも呼び 山梨県内のシェフと共に現地調査に参加してもらい、 かけ候補地を選定し諸団体との連携も促進した。 食材の持つ背景や生産者の思いなども伝えることができ た。また、その場の会話等からのメニューを開発する展 ◎参加シェフ同士や生産者との連携も進む 開過程や、厨房での作業などを通して、県内シェフは一 平成25年度は「山梨メニューの商品化と人材育成事 流シェフたちと交流し大きな刺激を受ける。 業」 を実施。丸の内シェフズクラブからの参加シェフの店 「美味しい山梨をつくるプロジェクト」がスタートした。 舗視察では、料理はもちろん接客や店舗オペレーション等 も学んだ。この年の参加シェフは18名。継続参画者も ◎継続的な一流シェフからの直接指導 おり、県産食材の生産者との連携や、県内参画シェフ同 平成24年度には、県内食材を活用した山梨ならでは 士や、丸の内シェフとの個々人の交流等により、緩やかな の新メニューを協同開発して丸の内シェフズクラブの店 ネットワークが形成されていった。 舗だけでなく、県内シェフの店での提供も実現した。各 事業の推進も、前年までの丸の内シェフから県内シェ 商工会を通し参画事業者(シェフ) を公募した結果、前年 フが主導型となっていき、各ジャンル (フレンチ・イタリアン・ の11名を上回る23名が県内全域から参加した。 中華・和食・寿司)5チームに分かれて、 メニュー検討会や また、開発されたメニューを旅館・ホテル関係者(観光 交流会を実施し、厨房以外でも具体的な助言を受け続 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック ● 17 取組事例の紹介 けることができるようになりモチベーションも向上した。 までに参加した中の13名が設立メンバーとなり活動を始 めている。 ②補助事業後の取組 平成27年1月都内松屋銀座で実施された「~山の幸 ◎「山梨シェフズクラブ」の設立 海の幸~山梨・静岡物産展」で、 5組の山梨と丸の内の 地元でも設立したいとの声は補助金事業中から既に高 シェフが、共同開発した特製メニューを日替わりで提供し、 まっていた。 「丸の内シェフズクラブ」の3つのテーマを学 好評を得た。 び少しずつ実践していくことで、地元の食材の優位性を 活かした食の提供に繋がり、生産者の応援、山梨の魅 力を伝えることにつながると考えた。 ベンチマークとした3つのテーマとは、 ①まずは大人の食育から ②食を通じて心身共に健康になれる社会を目指す ③国産自給率向上への情報発信 平成26年度に「地域内循環等事業」 を活用して、 「県 内シェフによる山梨シェフズクラブの組織づくりと新事業 開発」 を実施し、 立ち上げに至る。任意の組織ながら、 中・ 長期の目標、会則の整備、事業計画などを策定し、これ 3 「山梨シェフズクラブ」初代会長となった 「さくら茶屋La passion」 オーナーの小林 一郎さんと息子の祐一さん 取り組みの成果 ◎多数の新メニュー開発とレシピ公開 3年間の取り組みで、丸の内と山梨シェフが共同で生 み出した山梨県産食材を活用した新メニュー開発は、45 品に及んだ。 食の関連事業者を対象にしたイートアカデミーでの発 表、さらにHPなどでも新メニューのレシピを公開して、参 画事業者のいない地域での活用促進や「食の人材育 成」 を図っている。 素材の時期や原価の問題等から、すべてが実際の店 舗で提供されているわけではないが、関連事業者も含め、 開発されたメニューのカスタマイズ等による活用等も進ん でいる。 「平成27年1月に、地域産業資源活用事業計画の認定を受けた 「おかめ鮨」 が 開発した 「姫棒寿司」 られ反響があった。 さらに県内シェフの店舗やメニューのPR、 プロジェクト ◎広報によりメディアへの高い露出度 の紹介のチラシ等も作成。店頭看板等の販促物も作成 「丸の内シェフズクラブ」事務局である三菱地所㈱の して、各店舗への誘導も図ったことから、各店舗の売り 広報やプレス活動は、多様な媒体を活用し、関連企業 上げは上昇傾向にある。 内の広報誌などでも本事業についてもきめ細かく発信され ている。 ◎地域産業資源活用事業計画の認定 また著名なシェフの行動は、常に話題性があり、県内 参加シェフ 「おかめ鮨」オーナーの佐久間利和さんが、 シェフの活動も新聞・雑誌、 テレビ等に共に多数取り上げ その経験を活かして開発した「姫棒寿司」が平成27年1 18 ● 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 月に、経済産業省から地域産業資源活用事業計画の 平成25年には㈲横内製麺が、本事業で開発したレシ 認定を受け、補助金対象となった。 ピの商品化で地域産業資源活用事業計画の認定を受 地元のユズや甲斐サーモン、古代米を使ったワインと相 けている。地元産小麦を使った「夏場でも食べられるほう 性の良い創作寿司で、 ユズこしょうを添えオリーブオイルで とう麺」及び「付随するスープ」 を開発し、 「ほうとう冷麺」 と いただく。同店以外に地元の道の駅や、業務用としてレス して販売に向けた取り組みをしている。 トランや宿泊施設への販売も予定している。 また平成26年10月にはイタリアのトリノで開催されたス ローフード協会主催の世界最大規模の食品展示会に参 加し、山梨食材、日本酒、お茶、梅干しなどもアピール。 FacebookなどWEBでも積極的な情報発信を続けている。 4 【メディア掲載】 日経MJ、産経新聞、山梨日日新聞、 テレビ山梨、月刊ザやまなし 「新 甲州に食あり」 三菱地所発行の小冊子「食育丸の内」やその季刊誌の「丸のな か」 (丸の内エリアのビル30か所以上、横浜、大坂の商業施設や 丸の内シェフズクラブのレストラン、関連施設や関係者等に配布。 今後の展望 ◎事業者の本格始動を商工会と連携支援 工会と連携した持続可能な後方支援が必要だと考えて 「山梨シェフズクラブ」は様々な事業から3年間学んだこ いる。 とを活かし、山梨の食材をブランド化し、全国に発信して いくことを、組織の目標とした。平成26年には既に第1回 の新メニュー発表会を開催し、今後も機会があれば三ツ 星シェフの招聘なども実施したいと考えている。独自の広 報活動等も始め、自律的な組織活動ができるよう支援し ていく。 「事業の経緯や成果はHPで公開しているので、各商 工会においても指導に活用して欲しい」 と担当の梶原崇 照さん (副主査 中小企業診断士) は語っている。前任 の望月憲之さん (課長)の企画力や機動力により、諸団 体や各シェフとの信頼関係も築かれたが、これからが各 地元で参加事業者の真価を問われるようになるため、商 経営指導員 梶原崇照さん (中小企業診断士) 参画事業者・事業実施者の声 「郷土の安心の産物に育てられ、本物のおいしさを知る私たちは、県内食材の情報を積極的に収集し、また生産者と の関係を大切にし、食育、食文化に貢献すると共に食への熱意を尊重し、個々の才能を発揮し地産地消に繋がる活動 を続けていきます。」 と宣言し、指導してくれたドミニク・コルビさん (現在ル・コルドン・ブルー) とも交流を続け、自家農園で の栽培や加工等にも力を注いでいる。 (山梨シェフズクラブ初代会長 さくら茶屋La passionオーナー 小林一郎) さんは、専門学校や海外で学んだ経験もあるが、 「地元の食材を知ることができて良かった。」 と言い、 フレンチを基本に しながらも慶事や法事も外せない、地方ならではの多様な顧客ニーズに応えしていくことにやりがいを感じている。 (さくら茶屋La passionシェフ 小林祐一) 「県内の食材を学べたことや、 シェフ同士の交流ができた事が良かった。」 と語っている。固定客も多い老舗ながら、 ユ ネスコの世界文化遺産登録にちなみ開発した富士山オムライスが、地元新聞等でも取り上げられ話題になっている。 (レストラン スコット二代目オーナー 早川洋一) 地域資源∞全国展開プロジェクト ガイドブック 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