母子健康手帳を活用した健康管理

母子健康手帳を活用した健康管理
埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科 准教授 関美雪
１．はじめに
母子健康手帳は、妊娠、出産、育児に関する母子の健康状態を一貫して記録することが
できる内容になっています。そして子育ての相談窓口など育児に関する情報も盛り込まれ
た健康管理にとって、とても便利な手帳です。
２．母子健康手帳の歴史
母子健康手帳のルーツをたどると、昭和 17 年の妊産婦手帳にはじまります。時代背景も
あるかと思いますが、妊娠期の女性の健康管理が重要との考えが根底にありました。そし
て、妊産婦手帳を提示すると、配給を優遇して受けられるという特典がありました。
その後、妊産婦手帳は昭和 23 年に母子手帳となります。当時は 20 ページほどで、残念
ながら米や砂糖の配給クーポンはなくなってしまいましたが、お母さんだけでなく、子ど
もも対象とした健康管理に必要な内容が盛り込まれました。さらに、昭和 41 年に母子健康
手帳と改称され、現在の様式にかなり近いものになりました。その後は、予防接種や社会
制度の変化に対応して、幾度も内容の改正がありました。
３．健康を管理するための手帳としての活用を
現在の母子健康手帳にはどのような内容となっているのでしょうか。主な内容は、妊娠
中の経過、乳幼児期の健康診査の記録など子どもの成長記録、予防接種の記録、乳幼児身
体発育曲線などがあります。妊娠中の記録では、ご自身の体調や医療機関に受診した際に
質問したいこと等を書き留められるページがあります。ここに記録しておけば、受診した
時に、医師や看護師にしっかり確認することができます。お子さんの成長記録では、健康
診査の記録ができ、首がすわったかどうか、歩行を始めたかどうかなど、月齢に応じた成
長ができているか確認できる項目があります。これらは、お子さんの成長の確認にもなり
ます。また、６～７か月の項目では、ひとみが白く見えたり黄緑色に光って見えたりする
ことがありませんか、テレビやラジオの音がしはじめると、すぐそちらを見ますかなど、
目や耳の病気の早期発見につながる項目もあります。
また、育児情報では、離乳食の進め方や事故の予防や、医療費の援護など様々な情報が
盛り込まれています。インターネットで情報を調べるという手段もありますが、母子健康
手帳には専門家による育児に関する正確な情報が記載されています。
時に風疹やはしかが大流行していますが、お子さんがあるいはお母さんが、いつ頃どの
予防接種を受けたのかは、予防接種記録欄をみればすぐに分かります。このように、お母
さんの妊娠中の記録は、安全な出産のためにも必要ですが、ご自身の健康管理につながり
ます。子どもの成長記録は、順調な成長発達の確認だけでなく、お子さんの病気の早期発
見につながります。妊娠、出産、育児の各時期のお母さんと子どもの健康管理にとって優
れた手帳です。ご自身とお子さんの健康管理に母子健康手帳を是非活用してみてください。
＜参考文献＞
1)平成 11 年度厚生科学研究（子ども家庭総合研究事業）分担研究報告書「母子健康手帳の
変遷に対する歴史的レビュー」分担研究報告者 巷野悟郎、福島正美
2)「 母子健康 手帳の交付・ 活用の手 引き」平成 24 年３ 月
研究 代表者
横山徹 爾
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金（成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業）
「乳幼
児身体発育調査の統計学的解析とその手法及び利活用に関する研究」