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2003年11月 第338号のPDFをダウンロード(1.2MB)
News
JIKEN CENTER
自研センターニュース
11
NOVEMBER 2003
平成15年11月15日発行 毎月1回15日発行(通巻338号)
昭和51年5月27日 第三種郵便物認可
C
O
N
T
E
N
T
S
テクノセミナー:トヨタ・インテリジェント・パーキング・アシスト・・2
リペアリポート:ボルボV70(SB5244W)のフロントバンパカバーおよび
リヤバンパカバーの脱着作業とその特徴について ・・5
リペアインフォメーションS:トヨタクラウン
(JZS171 平成13年)
/工具の中のすぐれもの ・・8
リサーチング ザ スケルトンズ:トヨタプリウス
(NHW20系) ・・12
海外情報の紹介:新しい材料・結合技術および車体
構造が修理法に及ぼす影響〈その2〉 ・・14
お客様相談室レポート:ホンダストリームRN1・2・3・4系
(2000年10月発売車)ルーフライニングAssy脱着作業について ・・16
「構造調査シリーズ」新刊のご案内 ・・・・・・・・17
特別寄稿:海外リポートドイツにおける自動車リサイクル
―ドイツ視察報告〈前編〉
一橋大学大学院経済学研究科 貫 真英 ・・18
輸入車インフォメーション:フォルクスワーゲン パサート
(3BAZX)の合成樹脂部品の
補給形態 ・・・・・・・・20
指数テーブルマニュアル作業項目の解説 _ 46 _ ・・21
2003年RCARシドニー会議の報告 ・・・・・・・・22
2003年度自動車機械工具懇談会開催 ・・・・・・23
自研センター来訪者一覧 ・・・・・・・・・・・24
編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
別冊 新型車情報:qトヨタ プリウス
1 ∼□
12
(HNW20型系)・・・□
w日産キューブ キュービック
1 ∼□
8
(GZ2型)・・・・・□
eホンダライフ
1 ∼□
8
(JB5,6,7,8型)・・・・□
TECHNO SEMINAR
テクノセミナー
トヨタ・インテリジェント・
パーキング・アシスト
1. はじめに
る車両状態信号を基に、演算・予想して作成した各ガイド
トヨタ自動車は、電動パワーステアリングとバックガイド
線の映像を合成し、マルチメディアへ出力するとともに、各
モニター技術を応用し、車側が縦列駐車や車庫入れ後退
コンピューターに制御信号を出力することで、インテリジェ
時のステアリング操作を支援することにより駐車を補助す
ント・パーキング・アシストの各制御を行っています。
る世界初の後退駐車支援システム「インテリジェント・パー
マルチディスプレイは、インテリジェント・パーキング・アシ
キング・アシスト
(Intelligent Parking Assist)」を9月1日発売
ストコンピューターからの信号を入力し、内蔵のメインコン
の「新型プリウス」に搭載しました。
ピューターにより制御することで、マルチディスプレイにイン
テリジェント・パーキング・アシスト画面を表示させます。
*DVDボイスナビゲーションシステム、TVチューナー、
暗視機能付カラーバックガイドモニターとセットでメーカ
ーオプション。
2. 概要
インテリジェント・パーキング・アシストコンピューターは、
車両後部に取り付けられたバックモニターカメラの映像と、
ステアリングアングルセンサー・電動パワーステアリングコン
ピューター・スキッドコントロールコンピューター・HVコント
ロールコンピューターなどの各コンピューターから入力され
AVC-LAN
ナビゲーション
コンピューター
バックモニター
カメラ
AVC-LAN
イ
ン
テ
リ
ジ
ェ
ン
ト
パ
ー
キ
ン
グ
RGB映像記号
NTSC映像記号
インテリジェントパーキング
アシストスイッチ
ア
シ
ス
ト
コ
ン
ピ
ュ
タ
ー
RGB映像記号
マルチディスプレイ
右フロント
スピーカー
ハイトセンサー
インテリジェントパーキング
アシストインジケーターランプ
CAN通信線
操
舵
角
信
号
ステアリング
アングルセンサー
状
態
信
号
目
標
操
舵
角
信
号
状
態
信
号
電動パワーステアリング
コンピューター
状
態
信
号
車
輪
速
信
号
状
態
信
号
スキッドコントロール
コンピューター
EPS
アクチュエータ
2
自研センターニュース 2003年11月号
HVコントロール
コンピューター
シフト情報
ブザー
トルクセンサー
状
態
信
号
車輪速センサー
モーター回転角
センサー
TECHNO SEMINAR
yHVコントロールコンピューター
3. システム構成
qバックモニターカメラ
(松下電器産業製)
アクセル開度・シフトポジション・ハイブリッドシステムに
車両後方映像信号をインテリジェント・パーキング・アシ
ストコンピューターへ出力する。超広角レンズを用いた画
関する状態信号を出力する。
uスキッドコントロールコンピューター
像入力部と小型(1/4インチ)
カラーCCDカメラからなる画像
ストップスイッチ・パーキングスイッチ・車速・走行距離な
信号出力部で構成され、赤外光透過カラーモニターカメラ
どの状態信号を出力するとともに、インテリジェント・パー
を採用することにより優れた夜間の視認性を確保した。
キング・アシストフェール信号・ブザー吹鳴信号を入力し、
wインテリジェント・パーキング・アシストコンピューター(ア
ブザーの吹鳴を行う。
イシン精機製)
i電動パワーステアリングコンピューター
バックモニターカメラ・各コンピューターからの状態信号
EPSフェール・介入操舵などステアリング関連の状態信
号を出力するとともにステアリング関連の各信号を入力す
により、バックモニターカメラのON/OFFを行う。
各コンピューターからの状態信号を基に、各ガイド線を
演算した映像を、バックモニターカメラからの後方映像に
合成し、マルチディスプレイに出力するとともに、各コンピュ
ーターに制御信号を出力することで、インテリジェント・パ
ることにより、ステアリングの制御を行う。
oインテリジェント・パーキング・アシストメインスイッチ
(インジケーターランプ内蔵)
インテリジェント・パーキング・アシストのON・OFFを切り
ーキング・アシストの各制御を行う。
替える。また、インジケーターランプの点灯状態により、シ
eマルチディスプレイ
(富士通テン製)
ステムの作動状態を運転者に知らせる。
インテリジェント・パーキング・アシストコンピューターからの映像
信号により、後方画像および各ガイド線を画面上に表示する。
rナビゲーションコンピューター(アイシン・エイ・ダブリュ製)
!0ハイトセンサー
車高の変化を出力する。
!1右フロントスピーカー
音声信号により、各モード時に応じた音声案内を出力する。
RGB映像信号および車両各速度データを出力する。
tステアリングアングルセンサー
ステアリング舵角信号を出力する。
インテリジェントパーキング
アシストスイッチ(インジケーターランプ内蔵)
電動パワーステアリング
コンピューター
ステアリングアングルセンサー
マルチディスプレイ
スキッドコントロール
コンピューター
HVコントロール
コンピューター
ナビゲーション
コンピューター
4. 作動
(1)進路表示モード
右フロントスピーカー
ハイブリッドシステム起動時に、インテリジェント・パーキ
バックモニターカメラ
ハイトセンサー
ング・アシストメインスイッチONの状態で、シフトポジション
を「R」
(後退)にするとマルチディスプレイの画面上に、車
両後方の映像を表示するとともに、ガイドに必要な各線を
合成して表示します。なお、インテリジェント・パーキング・
アシストメインスイッチOFF時には、車両後方の映像のみ
を表示し、各ガイド線の表示は行いません。
自研センターニュース 2003年11月号
3
TECHNO SEMINAR
(2)車庫入れアシストモード
画面上の「車庫入れ」をタッチすることにより、車庫入れア
シストモードに移行します。車両後方の映像および表示され
る各ガイド線を参考に、画面上の矢印スイッチを操作し、駐
車位置の設定を行います。
目標駐車位置を確定後、表示される注意事項画面で、
「了
解」をタッチすることにより、システム作動画面に移行し、イン
テリジェント・パーキング・アシストによる駐車アシストが行わ
れます。
クリープ現象を利用して、ブレーキペダルに乗せた足をゆ
っくりと緩めながら後退します。アシスト機能により自動操舵
を行いますので、ステアリング操作は必要ありませんが、ブレ
ーキ操作は必要です。
*自動的にブレーキはかかりません
車両が目的駐車位置に入ったら、音声案内が出力され、操舵ア
シストは終了します。
音声案内は安全のため、目標駐車位置より手前で出力されま
す。それに伴い、
システムの作動も終了するので、ブレーキペダル
を踏んで速度調整をしながら後退し、希望の位置に駐車します。
* 自動操舵は、
「手動でステアリングを切る」
「画面内の中止ボ
タンを押す」
「シフト操作・アクセル操作をする」のいずれかに
より途中で解除されます。
(3)縦列駐車アシストモード
画面上の「縦列駐車」をタッチすることにより、縦列駐車ア
シストモードに移行します。車両後方の映像および表示され
る各ガイド線を参考に、画面上の矢印スイッチを操作し、駐
車位置の設定を行います。
なお、目標駐車位置設定後の基本的動作は、車庫入れア
シストモードと同様です。
5. 終わりに
従来の駐車アシストシステムは、ナビゲーションのナビゲ
ーションのモニター画面に車両後部に搭載したカメラの画
より、ステアリング操作をすることなく、駐車目標位置に車
両を導く事が出来ます。
像に、ドライバーのハンドルの動きに連動した予想進路図
また、駐車目標位置の設定は車両後部に搭載したカメラ
など後退操作の参考になるガイド線を色別に重ねて表示さ
の映像をもとに、タッチスイッチによる簡単な操作で行うこ
せ、ドライバーが自らガイド表示や音声ガイドに従ってステ
とが出来ます。
アリング操作をすることにより駐車を行うシステムでした。
「インテリジェント・パーキング・アシスト」は、ドライバーが周
4
囲の安全確認とブレーキ操作による速度調整を行うことに
自研センターニュース 2003年11月号
初心者ドライバーの方、車庫入れや縦列駐車を苦手とす
る方にとって有用性の高い機能です。
REPAIR REPORT
リペア リポート
ボルボV70(SB5244W)の
フロントバンパカバーおよびリヤバンパカバーの
脱着作業とその特徴について
ボルボV70(SB5244W)のフロントおよびリヤバンパカバーの脱着作業を行いましたので特徴的な部分を主に紹介します。
1.フロントバンパカバーの脱着について
作業を行うにあたりヘッドランプを取り外す必要はありません。
写真1
フロントバンパカバーを取り外すには左右ワイパアームと左
右ストリップを取り外す必要があります。
(写真2)
写真2
フロントバンパカバー
ワイパアーム
ストリップ
ストリップはバンパカバーにはめ込み式で取り付けられて
写真3
おり容易に取り外すことが出来ます。
ストリップの裏側にバンパカバーと車体を固定しているボ
固定用ボルト
ルトが見えますので取り外す必要があります。
(写真3)
ホイールアーチ部にあるスクリュ
(写真4)
を緩めることで
バンパカバーの内側にあるブラケットに付いているプレー
ト
(写真5)が前方にスライドし、バンパカバーのホイールア
ーチ部との固定が解除されます。その他の作業としては目
視で確認できる部位のクリップとフォグランプ用配線のコネ
クタを外すことでフロントバンパカバーは容易に取り外すこ
とが出来ます。
写真4
写真5
スクリュ
前方へスライド
自研センターニュース 2003年11月号
5
2.ブラケット
(フロントバンパカバー)の脱着について
バンパカバーの内側にあるブラケットは車両にスクリュとボルトで付いています。
(写真6)また、ホイールアーチライナにリベ
ットで取り付けられています。
(写真7)作業スペースが狭いのでそのままではリベットの脱着作業を行うための工具を使用す
ることが出来ませんが、タイヤを操舵することで可能となります。
写真6
写真7
スクリュ
リベット
ボルト
3.リヤバンパカバーの脱着について
リヤバンパカバーを取外すには室内側から固定されている長ナット(写真1
0)を取外すために写真9に記載された部品を
取外す必要があります。
リヤバンパカバーにはFM・RTIアンテナが内蔵されているので室内のリヤセクション(リヤフェンダ)下部にあるコネクタを外
す必要があります。
(写真1
1) *RTIアンテナ:道路交通情報取得用アンテナ
写真8
写真9
カバープレート
コンテナ
カバー
ジャッキ、工具
ブラケット
バッテリ
バッテリクランプ
シール
写真10
写真11
長ナット
FM・RTIアンテナ配線
6
自研センターニュース 2003年11月号
スペアホイール
リヤバンパカバー
REPAIR REPORT
フロントバンパカバーと同様にホイールアーチ部にあるスクリュ
(写真12)
を緩めることでバンパカバーの内側にあるブラケ
ットに付いているプレート
(写真13A)が後方にスライドしバンパカバーのホイールアーチ部との固定が解除されます。これでリ
ヤバンパカバーは容易に取外すことが出来ます。
写真12
写真13A
スクリュ
後方へスライド
4.ブラケット
(リヤバンパカバー)の脱着について
フロントバンパカバーと同様にバンパカバーの内側にあるブラケットは車両にスクリュで付いています。
(写真1
3B)
また、ホイールアーチライナにもリベットで取り付けられています 。
(写真1
4)
作業スペースも狭いのでそのままではリベットの脱着作業を行うための工具を使用することが出来ませんが、フロントバン
パカバー部と異なりタイヤを操舵することができませんのでタイヤを取り外す必要があります。
写真13B
写真14
リベット
備考
今回紹介しましたボルボV70のバンパカバーの素材はフロント&リヤ共にPPです。
また、塗装済みの補給部品が設定されています。リヤバンパカバーの脱着作業は、フロントバンパカバーとは異なりストリッ
プの脱着は必要ありませんが、車上でのストリップの脱着作業は可能です。
自研センターニュース 2003年11月号
7
REPAIR Information S
リペア インフォメーション S
トヨタ クラウン(JZS171 平成13年)
トヨタクラウンについて、修理関連情報を2例ご紹介します。
1.エアバックセンサAssyセンタ取替について
ラベルが貼ってあることを確認してください。
この車両は左フロントサイドメンバ付近に12時方向より入
このラベルはSRSエアバック一括作動ツールコネクタの接
力があり、助手席のエアバックが展開した衝撃でフロントガ
続と位置を示すラベルで「 」内のアルファベットで車両側
ラスが割れる結果となりました。
(写真1,2)
のどの位置に取り付いているかが分かります。またアルフ
センサやエアバック自体は目視で確認できますが、SRS
ァベットが大文字の場合はECUとコネクタが一体で、小文
システム全体を修理するには更にエアバッグセンサAssyセ
字の場合はECUとコネクタが別の場所にあることを示して
ンタの取り付け位置を確認する必要があります。今回のク
います(詳細は本誌2001年4月号「SRSエアバッグ一括作動
ラウンの場合、まず助手席側のセンタピラーに「SRS-B」と
処理システムについて」をお読みください。
写真1
写真2
qクラウンは「SRS-B」と表示されていますので、エアバ
ッグセンサAssyセンタはヒーターユニット後ろに一体で
取り付いていることが分かります。
(写真3)
写真3
wコンソールパネルアッパーを取り外すとエアバック
センサAssyセンタを確認することができます。
(写真4)
写真4
エアバッグセンサーAssy
8
自研センターニュース 2003年11月号
REPAIR Information S
e更にインストルメントクラスタフィニッシュパネルセンタと
写真5
ラジオレシーバAssyを取り外します。
(写真5)
rエアバックセンサAssyセンタ本体に取り付いているワ
イヤハーネス類を切り離し、ボルト3本(手前2本、奥側
1本)
を外せば取り外し完了となります。
取り付けは取り外しと逆の手順になり、取替作業時間
は約15分を要しました。
2.ドア配線の縁切り方法について
(1)フロントドア
qフロントドアを開くとフロントドアからフロントピラーへ
エアバッグセンサーAssy
繋がる配線が確認できます。この配線のフロントピラ
ー側を表に引き抜きます。
(写真1、写真ではドアトリム
コネクタを外しフロントドアチェック及びドアヒン
が外れていますが、実際の作業では外す必要はあり
ジの取り付けボルトを外せばフロントドアを外すこ
ません)
とが出来ます。(写真2)
w配線を引き抜くとコネクタが出てきますので、この
写真1
写真2
Frドアチェック
配線
コネクター
w配線を引き抜くとコネクタが確認できます。このコネクタ
(2)リヤドア
qフロントドアを開けるとセンターピラー中央付近にリヤド
アからセンターピラーへ繋がる配線が確認できます。こ
を外しドアチェッカー及びドアヒンジの取り付けボルト
を外せばリヤドアを取り外すことが出来ます。
(写真4)
の配線をセンターピラー側を表に引き出します(
。写真3)
写真4
写真3
コネクター
配線
自研センターニュース 2003年11月号
9
・
・
・
・
・
工具の中でのすぐれもの
修理作業には無くてはならない修理設備や修理工具も開発が進み、安全で大きく作業効率を高めるような新製品が世に出
ることも少なくなりました。しかしながら手工具においては様々な工夫とアイデアで新しい手工具も幾つか発売されているよう
です。今回ご紹介します手工具は必ずしも新製品ではありませんし、既に使用しているという工場もあろうかと思いますが、
・ ・ ・ ・
当自研センターで使用している工具の中で優れものと思われる工具を2例ご紹介致します。
1.ラックアンドレンチ(EW-302T)
D、アームB
q製品構成(写真1)
上6点で構成されています。
E、センタボルト F、ヘキサゴンジョイント以
A、マウント B、ロックボルト C、アームA
A
F
E
B
D
C
wこのラックアンドレンチはコンパクトで軽量なので、ステ
e使用方法はステアリングラックブーツを取り外し、ステア
アリングラックエンドの車上での取り外し作業を容易に
リングラックエンドのクローワッシャー(ゆるみ止め)
を解
することが出来ます。従来はモンキーレンチ等を使用し
除します。その後ラックアンドレンチをステアリングラック
取り外し作業を行うことが多かったようですが、車種に
エンドにセットしてセンタボルトで固定します。
(写真3)
よっては作業スペースが狭く工具が入らない、工具が入
ってもスペースが足りないため力がかかり難い等、作業
が円滑に進まないことがありました。
(写真2)
写真2
写真3
センターボルト
ステアリングラック
10
自研センターニュース 2003年11月号
REPAIR Information S
rラックアンドレンチを固定したら、ヘキサゴンジョンイント
写真4
に工具をかけて回すとラックアンドレンチも一体で回転
します。ステアリングラックエンドを緩めステアリングラッ
クから取り外します。今回の作業はメガネレンチを使用
していますが、ヘキサゴンジョイントの二面幅が14mmで
あり作業スペースに適応した工具を選択することが可能
ヘキサゴンジョイント
です。
(写真4)当然のことですが、ラックアンドレンチを回
す際には周辺部へ干渉しないスペースの確保は最低限
必要となります。
2.ホースバンドプライヤ(HAC-6241)
がら事故などでスペースが無くなった場合、ホースバン
q製品構成(写真1)
ハンドル、ロック部分、ワイヤ部分、スライド部分で構成
ドを取り外すのに意外と時間がかかることがあります。
されています。ハンドルを握ることでスライド部分が収縮
このホースバンドプライヤは遠隔操作で、縮めて緩める
するようになっています。
ことが出来るため事故車のようにスペースが無くなった
w一般的なプライヤでホースバンドを縮めて緩めようとす
る場合、ある程度のスペースを必要とします。しかしな
場合でもスムーズにホースバンドを取り外すことが出来
ます。
(写真2)
写真3
写真2
ロック部分
スライド部分
*ラックアンドレンチ並びにホースバンプライヤに関する問い合わせ先
HASCO(林精鋼株式会社)
東京営業所 TEL 048-461-0101
FAX 048-461-1177
自研センターニュース 2003年11月号
11
Researching The Skeletons
リサーチング ザ スケルトンズ
トヨタ プリウス(NHW20系)
この「Researching The Skeletons」は外部から確認する
ことができないフロントサイドメンバおよびリヤサイドメンバ
先端部の六角断面形状は衝突の際の衝撃力を効果的に
吸収するための形状です。
内側のリインホースメント等の位置や板厚を分かりやすく
フロントサイドメンバには1.4mm&2.0mmの差厚鋼鈑が
紹介していくもので、データは実際に自研センターで調査し
採用されており、サスペンションクロスメンバ取付部付近に
たものを記事にしたものです。
は1.0mmから2.4mmまで4種類の厚さの異なるリインホー
今回はトヨタ プリウス
(NHW20系)
を取り上げます。
スを配置し、前述の断面形状と合わせて、衝突安全性を
フロントサイドメンバの基本構造はカローラ
(120系)から
高めています。
派生したものです。しかし、ラジエータコアサポートはカロ
ーラとも旧型プリウスとも異なり新形状のものが採用されて
先端部のカット位置はトヨタのボデー修理書に記載され
ているカット位置です。
います。
フロントサイドメンバ
右外側
左外側
1.0mm
2.0mm
1.6mm
2.4mm
2.0mm
1.0mm
右内側
1.6mm
1.0mm
2.0mm
左内側
板厚変化部位
カット位置
1.4mm
板厚変化部位
カット位置
2.0mm
六角断面形状
12
自研センターニュース 2003年11月号
2.0mm
1.4mm
六角断面形状
Researching The Skeletons
リヤ
正面(ボデーロワーバックパネル取付状態)
正面(ボデーロワーバックパネル取外し状態)
リヤフロアサイドメンバ位置
リヤフロアサイドメンバ位置
上側(リヤフロアパン取付状態)
上側(リヤフロアパン取外し状態)
1.2mm
1.4mm
カット位置
2.3mm
下側
自研センターニュース 2003年11月号
13
海外情報の紹介
新しい材料・結合技術および車体構造が修理法に及ぼす影響
(Effects of New Materials, Joining Technologies and
Car Body Concept on Crash Repair Methods)
〈その2〉
RCARニュースレター2003年6月号に掲載された、アリアンツ技術センター
(ドイツ)のミヒャエル・
ウァイランド氏の題記論文を本誌10∼12月の3号に渡ってお伝えします。今回は第2回目です。
4.結合方法
これらの結合方法は基本的に熱を利用するものとそ
適切な結合方法によって隣接する構造にその特性を
うでないものに分けられます。近年は熱を使わない結
伝えられなければ、先進的な材料の特性は全体の役に
合法および組合せ結合法の重要性が増しています。特
は立ちません。自動車メーカーが現在使っている結合
にコーティングの損傷が許されない金属や有機コートを
方法は3つの範疇に分けられます。
した材料および熱が加わると特性が変化する材料に対
熱による結合
して重要です。またこのような結合方法は複合構造の
―レーザービーム溶接
材料に対しても重要です。
―抵抗溶接
5.修理の例
―イナートガス溶接
―ブレージング/ガスメタルアークはんだ付/レーザ
ービームはんだ付
次の項では車の修理中に起こる可能性のある問題の
例を紹介します。ここで最も強調しておきたい重要な点
は、最新の車に対してはメーカー共通および個別車種の
熱を使わない結合
修理指示書に従うべきだと言うことです。
―穴あけリベット
5.1 サイドメンバー交換の例
―クリンチ
パネルを分離切断する個所は損傷の範囲に応じて自
―ロック・シーム
由に選ぶ事ができます。
(図1)溶融溶接されている部分
―接着
だけは切断してはいけません。サイドメンバーから切り
―ボルト結合
取った部分を正しく位置決めし、イナートガス溶接で突
組合せ結合法
合せ結合します。カバープレート
(図2)
をきちんと溶接し
―スポット溶接+接着
たら、指定された間隔(例えば45mm)を厳密に守って
―機械的結合+接着
互いに平行な位置にスポット溶接を行います。
―ボルト+接着
図1
図2
スポット溶接
14
自研センターニュース 2003年11月号
5.2 高抗張力鋼板のスポット溶接
基本的には中庸な(moderately)高抗張力鋼板は十
を使って旧部品による適切なテスト溶接を行った上で自
動車メーカーの修理指示書を厳密に守らなければなり
分良好なスポット溶接性を持っていますが、厚い鋼
ません。
板や3枚結合の場合は修理工場で重大な問題となる可
5.3 生産時とは異なる結合方法
能性があります。図3に示す例は、ヒンジコラム・イ
次にサイドルーフレールに連続レーザービーム溶接さ
ンナー(板厚1.0mm)、Aピラー補強材(板厚1.5mm)
れたルーフパネルの交換を説明します。修理の際には
およびAピラー・アウター(板厚2.0mm)の溶接接合
この結合法は使えないため、溶接に沿って約20mmのフ
です。自動車メーカーが実際に行った修理テストで
ランジを残して損傷したルーフパネルを切り取ります。こ
は、最新式の強力なスポット溶接ガンを使ったにも
の部分で新しいルーフパネルを残ったフランジに重ね合
かかわらず、十分な溶接強度が得られませんでした。
わせて、スポット溶接と2条のイナートガス溶接で結合し
接合する鋼板の枚数に応じて溶接電流を設定する必
ます。
(写真では見えません)更に、正確に決めた4つの
要があったことおよび装置の出力や電極加圧力が能
個所(矢印で示す)に4本のスチールリベット
(4×8mm)
力不足であったことが分かりました。
を使います。
(図4)
上記の例から分かるように、先ず引き剥がしテスト法
図3
5.4 テーラードチューブ
テーラードチューブ使用の1例として、最新式のコンバ
図4
(図5)
この構造は5つの高抗張力鋼テーラードチューブ
の部材から構成されています。
(図6)
ーチブル車のAピラーとクロスメンバー構造があります。
図5
断面形状が最適化でき、また溶接を使わないため、
図6
も重量の増加は全くなく、構成部品の数は44%減ってい
非常に良好な部品の動的挙動が得られます。コンバー
ます。このようなテーラードチューブ部品に対する実用
チブルの安全性のために必要なルーフ強度は、従来の
的な修理方法の開発が進んでいます。
パネル結合構造に対して70%以上増加しています。しか
自研センターニュース 2003年11月号
15
Customer Relations Department REPORT
お客様相談室レポート
ホンダ ストリーム RN1・2・3・4系(2000年10月発売車)
ルーフライニングAssy脱着作業について
相談内容
作業項目No.B430
B430
ルーフライニングAssy脱着について説明して下さい。
ルーフライニングAssy脱着
1.70
ルーフライニングAssyのみ
0.70
サンルーフ付
1.70
1台
(含)作業および部品の脱着または取替
・必要範囲の付属品
[除]作業および部品の脱着または取替
・ガラス
※「ルーフライニンク゛
As
syのみ」は両側フロントピラーガーニッシュAs
sy、両側センタピラー
ルーフライニングAssyのみ
アッパガーニッシュAssy、両側センタピラーロアーガーニッシュAssy、両側リヤピラー
0.70
ガーニッシュAs
sy、両側リヤサイドライニングCOMP、リヤパネルライニングAs
sy、を外した
後ルーフライニングAs
syの脱着を行う作業。
お答え
指数は標準(ノーマル)ルーフ車とサンルーフ付車の2つ
のタイプについて表示しています。さらにルーフライニング
¡ クラブレールAs
sy
(一台分)
を脱着するため必要な部品をすべて含んだ指数とルーフ
¡ルーフライニングAs
sy
ライニングAs
syのみの指数に分けて表示しています。
¡サンバイザAs
sy
(両側)
すべて含んだ指数値1.70の作業範囲はq(サイドトリ
¡リヤビューミラーホルダ
ム関係)
.プラスw(ルーフライニングAs
sy)
.になります。
¡クラブレールキャップ(一台分)
ルーフライニングAs
syのみ指数値0.70の作業範囲はw
¡ルームランプ(1台分)
(ルーフライニングAs
sy)になります。
(図1参照)
指数値はルーフライニングの作業を最大と最小で表示し
qサイドトリム関係は以下の部品が該当します。
ています。これは事故車の損傷状態により室内のトリム類
¡フロントピラーガーニッシュAs
sy
(両側)
の脱着が、事故車ごとに異なるため全ての事故車に応用
¡リヤサイドガーニッシュAs
sy
(両側)
できるようにしているためです。
¡センタピラーアッパガーニッシュAs
sy
(両側)
この車両の場合、サイドトリム
(両側)関係では(1.70−
¡トランクリッド(両側)
0.70)
=1.00が考えられます。さらにリヤパネルライニン
¡リヤピラーアッパガーニッシュAs
sy
(両側)
グAs
syが完全に脱着できませんが片側のサイドトリム関係
¡フロントサイドガーニッシュAs
sy
(両側)
では(1.00÷2)
=0.50と推測はできます。
¡センタピラーロアーガーニッシュAs
sy
(両側)
¡リヤパネルライニングAs
sy
¡リヤサイドライニングCOMP(両側)
wルーフライニングAs
syの脱着関係では以下の部品が該
16
¡リヤビューミラー&ステーCOMP
車両により左右のトリム構造が異なった場合この考えは
成立しませんがご参考として下さい。
またB230センターピラー取替やB270リヤアウトサイドパ
ネルセット取替(クォータパネル取替)作業とB430ルーフラ
当します。
イニング(ヘッドライニング)脱着作業が重複した場合、サイ
¡サンバイザキャップ(両側)
ドトリム関係も重複をすることになります。その点を十分考
¡サンバイザホルダ(両側)
慮して指数をご使用下さい。
自研センターニュース 2003年11月号
Customer Relations Department REPORT
図1
ルーフライニングAssy
イラストはノーマルルーフ
グラブレールAssy
リヤビューミラー
&ステーCOMP
グラブレールキャップ
リヤビューミラー
ホルダ
サンバイザAssy
ベースCOMP
バルブ
ルーフライニング
キャップ
レンズ
サンバイザキャップ(両側)
サンバイザ
ホンダ(両側)
ルーフライニングAssyのみ
リヤピラーガーニッシュ
Assy(両側)
センターピラーアッパガーニッシュ
Assy(両側)
フロントピラーガーニッシュ
Assy(両側)
トランクリッド(両側)
リヤパネル
ライニングAssy
リヤサイドライニング
COMP(両側)
センターピラーロアー
ガーニッシュAssy(両側)
リヤサイドガーニッシュ
Assy(両側)
フロントサイドガーニッシュ
Assy(両側)
「構造調査シリーズ」新刊のご案内
自研センターでは新型車について、損傷した場合の復元修
No.
J-345
理の立場から見た車両構造、部品の補修形態、指数項目
車 名
型 式
フォルクスワーゲン
3BAZX
パサート ワゴン
とその作業範囲、ボデー寸法図など諸データを掲載した
「構造調査シリーズ」を発刊しておりますが、今月は右記新
刊をご案内しますので、ぜひご利用ください。定価は2,160
お申し込みは自研センター総務企画部までお願いします。
円です(税込み、送料別)。
TEL
047-328-9111
FAX
047-327-6737
自研センターニュース 2003年11月号
17
特別寄稿:海外リポート
*
ドイツにおける自動車リサイクル―ドイツ視察報告―
(前編)
一橋大学大学院経済学研究科 貫
■はじめに
各国に先駆け自動車リサイクルに関する法令を制定し、
真英
力解体業者』の3種類に分けることができる。具体的な例
としては、フォルクスワーゲン社は一社(Callparts Sysytem
世界のリサイクル法の動向をリードしてきたドイツ。その自
GmbH)
と契約し、そこからフランチャイズで展開してもらう
動車リサイクルに関する現状を、日本の自動車メーカー、中
ことを考えており、オペル社は独自の解体業者認定システ
古部品業界(解体業界)、シュレッダー業界等の関係者とと
ムを構築して対応しているとのことであった。
もに視察する機会を得た。期間は2003年7月7日から10日
までの4日間。このレポートは、その視察報告である。
このように、現実にはメーカーが廃車処理を解体業者に
委託することによって、不適正処理の責任は生産者が取る
必要はなく、解体業者が今までどおり責任を負うことにな
■ドイツ自動車リサイクルの現状
18
るようである。この点は、遡及責任がメーカーに及ばない
視察初日に、現地でコンサルタント会社M.I.K.GmbHを
のか、また日本のように資本力のない解体業者等が捨て逃
営み、ドイツ自動車リサイクル事情に精通する林信一氏に
げするのではないかという疑問が残った。しかし、後者の
レクチャーをして頂いた。ここでは、まず、その林氏のレク
疑問に対しては、ドイツは、事業者に対する保険や中立監
チャーから得た情報を中心に、ドイツ自動車リサイクルの現
察機関が発達しているためその心配は少ないとの話であ
状を概説しよう。
った。ドイツでは地下水の利用が盛んなため、昔から土壌
ドイツでは1990年代に廃車処理の制度化が進み、2000
汚染は重要な問題であり、解体業者が引き起こした土壌汚
年のEUによるELV(End of lifeVehicles)指令を経て、2002年
染問題も今までに沢山あったが、その結果、制度的な蓄積
7月に廃車法が施行された。その一連の制度化の中で最
が既にあるということであった。
も注目すべきは、拡大生産者責任と言われる新しいコンセ
規制強化によって、もっとも激しい影響を受けたのは解
プトの導入である。これは、生産者の責任をこれまでの製
体業界である。解体業は、ヨーロッパ・ドイツにおいても昔
造や消費の段階から廃棄に関する段階まで拡大する考え
から存在し難しい業界だと言われるが、その古い業界が、
で、その後の世界の廃棄物・リサイクル政策に大きな影響
1996年のメーカー自主規制、97年の廃車政令など規制強
を与えた。拡大生産者責任の考えは、日本のリサイクル法
化に追われ、新しく変わって行かなければならなくなった。
でも導入されたが、日本では、フロン、エアーバック、シュ
その過程で激しい淘汰が起こり、5000社あったといわれる
レッダーダストの限定三品目に対してメーカーが一定の責
会社は現在1300社(林氏によればその内400社程しか利益
任を負うのに対し、ドイツでは、メーカーによる廃車の無償
を出していないだろうとのこと)になり、さらに現在の趨勢
引取りという制度設計が行われた。
では100社ほどしか残らないことも予測されている。また、
このように、ドイツのメーカーは、廃車の無償引取り義務
国内の規制強化にともない、以前から多かった東欧に流れ
と、それにともなうリサイクル率の達成義務を負うことにな
る中古車の数も増え、国内で解体される車はさらに減少し
った。しかし、現実にはメーカー自らが廃車処理を行うこ
た。そのような中では、外部からビジネスチャンスとみて参
とはまずない。メーカーは一つの解体業者と契約し、その
入した事業者は事業ノウハウを蓄積する間もなく全滅状態
業者に全ての廃車処理を委託することもできる。現在、メ
であり、古くからある業者で新しく変わっていったものだけ
ーカーが委託しようとしているのは、
『qフランチャイズシス
が生き残っているという。
テムを形成している解体業者グループ』
、
『w全ドイツをカバ
日本と同じくドイツの解体業者の主な収入源である中古
ーする廃車取引システムを展開しようとしている総合廃棄
部品販売も、厳しい状況にある。自動車部品の電子化と
物コンツェルン』
、
『e既に独自の力で廃車市場を抑えた有
コピー製品の台頭、さらに、後述する品質保証の問題で、
自研センターニュース 2003年11月号
中古部品販売は伸びていない。一方、明るい材料として、
写真1 VDI外観
自動車保険業界は、どの部品は中古部品で修理した方が
良いかを示すリストを作成し、中古部品の利用を促進する
姿勢を示した。これに対応し、解体業界(とメーカー)
は中
古部品品質規格を、後述するドイツ技術者協会(VDI)
に委
託し作成することで、中古部品の信頼を高める努力をおこ
なっている。
■ ドイツ技術者協会(VDI)
(写真1:VDI外観)
写真2 VDIでの会合の様子
我々は、林氏のレクチャーの後、デュッセルドルフにある
ドイツ技術者協会(VDI)
を訪れた。
(写真2:VDIでの会合
の様子)
VDIは12万6千人もの会員を擁し、技術者と自然科学者
からなる経済的に独立した政治色のないNPOである。1856
年に設立された。VDIには環境技術と環境保護を専門と
する下部組織があり、現在中古部品の品質基準を中心と
する
‘recycling of cars’
というガイドラインを作成する形で、
自動車リサイクルに関わっている。これは、
『q中古部品規
必ず聞かれたのは、処理コストはいくらかという質問であ
格(VDI4080)』、
『w中古部品のインターネット表示規格
る。彼らのその質問から、経済的に成り立つ技術およびシ
(VDI4081)
』
、
『e解体技術に関する規格(VDI4082)
』
、
『r
ステムでなければ意味がないという意識が強く感じられた。
液抜きに関する規格』
、
『t解体後の処理に関する規格』の
5つの規格からなり、q∼eまではすでに作成されている。
■ 解体業者とメーカー
(写真3:ドイツの解体業者の敷地)
これらの規格には強制力がなく、どこまでこれらの規格
林氏のレクチャーとVDIの会合の中で様々なことが見えて
が浸透するかは不明だが、ISO規格のような影響力を持っ
きたが、特に感じられたのは、メーカーの限定的な責任と解
ていく可能性は考えられる。日本においては中古部品の
体業の厳しい現状である。メーカーは、廃車の無償引取り
品質基準は、各ネットワークグループごとに決められている
という一見厳しい責任を負ったが、実際には廃車処理を既
のが現状であるが、このような強い影響力をもつ業界外部
存の解体業者等に委託することでその役割は非常に限定
の機関に委託し業界基準を作っていくことは、一つの方法
されていると感じられた。一方、解体業者は、制度や市場
として日本でも考慮されて良いように思われた。
の変化にともないい急激にその数を減らしている。次回は、
VDIでの会合では、環境技術と環境保護に関する組織
を統轄する立場にあるヴォルフェルツ氏をはじめ、メーカ
ドイツの解体業者とメーカーを訪ねたレポートを報告する。
写真3 ドイツの解体業者の敷地
ー担当者、郡の行政担当者、シュレッダー業者、解体業者
のフランチャイズ化を進めるサービス会社、学者、コンサル
タントなど多彩な人々が集まって意見の交換が行われた。
その中で最も話題になったことは、品質保証の問題であ
る。ドイツでは、中古部品の品質保証として、最低一年間
の品質保証が近年法律によって求められるようになった。
これは、1999年に出されたEUの製品保証指令を国内法
化して2002年1月に施行されたことによる。このことは元々
ジャンク市場で発達してきた中古部品業界にとって、大きな
*この現地視察調査にあたっては、日本学術振興会による平成
影響を与える死活問題であるとの話であった。また、日本
15年度科学研究費助成金(
「アジアにおける環境保全型経済
への転換可能性に関する政策研究」/研究代表・寺西俊一)
か
のシュレッダー業者や解体業者のプレゼンが終わった後、
ら一部補助を受けた。
自研センターニュース 2003年11月号
19
輸入車インフォメーション
フォルクスワーゲン パサート
(3BAZX)
の合成樹脂部品の補給形態
今回はフォルクスワーゲン パサート
(3BAZX)のプラスチック部品の材料と補給形態情報をお知らせします。
なお、来月2003年12月発行予定の「No.J-346構造調査シリーズ」フォルクスワーゲンパサートにも他の情報と共に掲載されて
いますので是非ご利用ください。
4.ドアミラーカバー
5.ドアハンドルアウタ
合成樹脂部品の使用個所
6.ドアプロテクトストリップ
7. サイドメンバ
エクステンション
3.ライセンスプレート
ブラケット
2. プロテクトストリップ
1. フロントバンパカバー
10. リヤバンパカバー
8. ドアロワモール
9. プロテクトストリップ
番号
20
部品名
材料記号
材料
補給形態
1
フロントバンパカバー
PP-EPDM
ポリプロピレン-EPDMゴム
未塗装
2
プロテクトストリップ
PP-EPDM
ポリプロピレン-EPDMゴム
未塗装
3
ライセンスプレートブラケット
PP
ポリプロピレン
未塗装
4
ドアミラーカバー
ABS
ABS樹脂
未塗装
5
ドアハンドルアウタ
PA6-GF
ポリアミド-ガラス繊維
未塗装
6
ドアプロテクトストリップ
PP-EPDM
ポリプロピレン-EPDMゴム
未塗装
7
サイドメンバエクステンション
PP-EPDM
ポリプロピレン-EPDMゴム
未塗装
8
ドアロワモール
PP-EPDM
ポリプロピレン-EPDMゴム
未塗装
9
プロテクトストリップ
PP-EPDM
ポリプロピレン-EPDMゴム
未塗装
10
リヤバンパカバー
PP-EPDM
ポリプロピレン-EPDMゴム
未塗装
自研センターニュース 2003年11月号
指数テーブル マニュアル作業項目の解説
−46−
今回は指数テーブルマニュアル(2003年10月発行)
を基本
*フェンダライナの脱着については、フロントバンパ脱着時
に、ボデー系の作業項目『B100フロントフェンダ脱着』につい
に一部のクリップ、スクリュを取外しているのでその状態
て解説する。
(図1)
からの作業になる。
*接着剤の取付いているサイドマッドガード
(サイドスポイ
1.基本的な前提条件作業および作業内容
*フロントバンパ、ラジエータグリルおよびヘッドランプAssy
ラ)については、サイドマッドガード
(サイドスポイラ)
を脱
を取外した状態から行う作業
着し再使用するケースと取り替えるケースがあり、脱着
2.指数に含まれる主な作業
については接着剤の除去と清掃作業を含んでいる。
*フロントフェンダの脱着に伴う付属品の脱着
そのため脱着と取替の指数値では脱着の指数が大きく
主な付属品
なるケースがある。
¡マッドガード
(必要な車種)
*フロントフェンダの先端にシーラを塗布する必要がある
¡ロッカパネルモール(必要な車種)
車種の場合
*フェンダライナの脱着
塗装工程でプラサフ塗布後のシーラ塗布になるので脱
補足
着・取替指数に含まれない。
*フロントフェンダの脱着に際して、カウルトップベンチレー
*一部の車種でフロントフェンダがボデーにシーリング剤に
タルーバおよびワイパアームの脱着が必要となる場合、
よって取り付いている車種では、フェンダ脱着作業のと
別作業項目としてB085を使用する。
きシーリング剤の除去と清掃、付ける時の塗布は含まれ
*サイドマッドガード
(サイドスポイラ)の脱着が必要となる
る。
(三菱パジェロ)
場合、車種別の指数テーブルに表示している。
図1
B100
フロントフェンダ脱着
片側
●印の部品は当該作業範囲
前提条件および作業内容
*フロントバンパ、ラジエータグリルおよびヘッドランプAssyを取外した状態から行う作
業
指数に含まれる主な作業
*フロントフェンダの脱着に伴う付属品の脱着
主な付属品
・マッドガード(必要な車種)
・ロッカパネルモール(必要な車種)
*フェンダライナの脱着
補 足
*フロントフェンダの脱着に際して、カウルトップベンチレータルーバーおよびワイパアー
ムの脱着が必要となる場合、B085にて作成している
*サイドマッドガード(サイドスポイラ)の脱着が必要となる場合、指数テーブルに表示し
ている
自研センターニュース 2003年11月号
21
2003年
RCARシドニー会議の報告
今年のRCAR会議は9月21∼26日の間シドニー市内のウ
ェスチンホテルで開催されました。世界17ヵ国22センター
から43人が集まり、自研センターからは加田、八束、山岡
の3名が参加しました。
初日の21日午後にはステアリング・コミッティーが開かれ
22
を建設中であり、完成後は今まで行っていなかった安全性
の研究にも業務を拡大する計画との報告がありました。
2004年予算案、事務総長の改選、RCARメンバーの拡大計
盗難防止に関しては豪・加・アルゼンチン・英・韓から報
画その他RCAR全体の運営に係わる案件が議論され、7人
告があり、なかなか決定打がない中でそれぞれの国情に
のRCAR運営委員の1人として加田が参加しました。またそ
応じて地道な取組みが図られていることがうかがえました。
の夜にはウェルカム・ディナーが催されRCAR会議参加者お
自研センターは「ディスチャージ・ヘッドランプ・コントロー
よび同伴者(夫人)全員が参加し、旧交を温めたり新たな
ル・ユニットの損傷確認方法についての自動車メーカーへ
面識を得たりし合う和やかで華やいだ集まりとなりました。
の働きかけ」
(八束)および「ノーズ・ダイブ再現技術の開発」
翌22日からは連日ホテルの会議場で各センターからの技
(山岡)
という2つのテーマについて発表を行いました。近
術発表とそれに関連する議論が行われ、26日の夜に現代
年採用が急拡大しているディスチャージ・ヘッドランプに関
美術館内で開かれたフェアウェル・ディナーで閉幕しました。
する発表は時機を得た内容で反響を呼び、今後RCARと
海外センターからの技術発表には興味を引く内容のもの
して修理費抑制の観点からヘッドランプ設計のガイドライン
も多く、各センターが色々な課題に意欲的に取り組んでい
を作り、各国で自動車メーカーに対して統一した内容の設
ることが強く印象付けられました。
計改善要望を可能にしようとの決議につながりました。
テーマは車の安全性に関するもの、盗難防止に関する
今回の会議における最大のトピックスは損傷性評価の
もの、損傷性評価に関するものなどが多く、世界的に見て
RCAR基準の見直しに関する議論でした。2001年のソウル
それらに対する関心が高いことがうかがわれました。
会議以降6カ国のセンターで構成するワーキンググループが
安全性に関する発表では、米・英・独・スウェーデンのセ
作られ、約2年にわたってRCAR基準の衝突テスト方法の改
ンターが協力して開発を進めている鞭打ち症防止性能の
善について検討が行われてきました。ちなみにワーキング
動的評価テストが着実に完成に近づいており、来年には評
グループの構成メンバーはアリアンツ
(独)
、サッチャム
(英)
、
価結果を米欧で公表する計画であることが報告されまし
セスビマップ(スペイン)、セスビフランス
(仏)、IIHS(米)
た。また韓国のセンターのKARTからは0度∼90度の範囲
および自研センター(日)で、現在までに5回の検討会議が
で時速70キロまでのテストが可能な車対車衝突テスト施設
行われてきました。ワーキンググループから提出された衝突
自研センターニュース 2003年11月号
テスト法の改善案に基づき、以下のことが決議されました。
q現行RCARテストの前面衝突および後面衝突では車を
いるが、そのムービングバリアの質量を現行の1,000kg
から1,400kgに変更する。
バリア(車が衝突する相手の壁)に対して直角に衝突
e新たに前後バンパーによる車両損傷防止性能を評価
させているが、バリアを傾けて車の斜め前方向からの
するバンパーテストを導入する。テスト方法の詳細に
衝突を想定したテストに変更する。前面衝突について
ついては今後更に検討する。
はバリアを角度10度傾ける。後面衝突バリアの変更角
度については今後更に検討する。
w後面衝突テストはムービングバリア
(車を模擬した可動
最後に今後のRCAR会議の開催場所について、来年は
ベルリン、2005年はイタリア、2006年は日本とすることが確
認されました。
の台車)
を止まっている車に衝突させる方法で行って
2003年度 自動車機械工具懇談会 開催
2003年9月4日自研センターにおいて、自動車機械工具懇談
車機械工具メーカー各社と様々な情報を交換し、よりよい修理
会を開催いたしました。当懇談会は、隔年で各社への訪問と、
技術・工具の開発のお手伝いができればと考えております。
自研センターでの開催を交互におこなう方式へ変更しており、
昨年の各社への訪問による開催に続き、今回は自研センターで
の開催として実施いたしました。
当日は各自動車機械工具メーカー代表
(4社)の皆様のご出席
をいただき、各種テーマにわたり意見交換がおこなわれました。
特に、自動車機械工具の開発と改良に関しては、高々張力鋼
[懇談会の内容]
1. 開催日時:2003年9月4日(木)15:00∼17:00
2. 参加会社
(株)
アルティア、安全自動車
(株)
(
、株)
イヤサカ(
、株)バンザイ
3. 懇談プログラム:
板に対応する修理機器と水性補修塗装に対応する修理機器の
(1) 自研センター、02年度活動報告と03年度事業計画
開発要望を発表させていただき、ご出席いただいた皆様より、
(2) 自動車機械工具の開発と改良について
今後の製品開発要望を先取りした貴重な提案であると、高い評
q超高張力鋼板に対応する修理機器について
価を得ることができました。
w水性補修塗装に対応する修理機器について
また、自動車機械工具業界の現状については、業界のデー
タをもとにご説明いただき、意見交換をおこないました。
当社といたしましては、今後ともこのような懇談会を通じ自動
(3) 自動車機械工具業界の現状について
(4) 自動車機械工具に関する新製品・新技術情報
(5) オートサービスショーを踏まえた意見交換
自研センターニュース 2003年11月号
23
http://jikencenter.co.jp/
自研センター来訪者一覧
9月 16日(火)
大韓損害保険協会(KNIA)
乃南正常務理事 他10名
25日(木) (株)ヤシマ 10月 1日(水)
6日(月)
武井社長 他3名
マツダ(株)カスタマーサービス本部商品サービスプログラム部
小川主任
トヨタ自動車(株)サービス部 遠山課長
7日(火)
トヨタ自動車(株)アフターマーケット本部サービス部 8日(水)
あいおい保険自動車研究所 野村氏 他4名
9日(木)
トヨタ自動車(株)サービス部 山下課長 他6名
トヨタ自動車(株)サービス部 坂口課長
福島常務
10日(金) (株)栄和製作所 高野氏 他1名
●編集後記●
実りの秋です。今年も海の幸、山の幸を堪能されているのでは。海では秋刀魚が豊漁だったそうで、脂の乗
ったおおぶりの秋刀魚が食卓を賑わしたのではないでしょうか。ある日には居酒屋で秋刀魚を肴に一杯飲ん
で帰宅したら秋刀魚が食卓に、といった事もあったかもしれません。値段も、あるスーパーでは1匹85円と100
円硬貨の価値が薄れている昨今、正に庶民には堪らない季節の食材となりました。
山ではきのこがどっさり収穫されたでしょう。きのこの王様といえば松茸でしょう、特に国内産の松茸はびっ
くりするような高値、結局今年も庶民には口に入ることなく終わってしまうのでしょうか。
秋刀魚や松茸と蕎麦はなんの脈絡もありませんが、先日、兎も角、秋を満喫するにはと思い立ったのが「新
蕎麦を食いに行こう」でした。目的地は山形。東京から約400km、新蕎麦食いたさに車を走らせました。店は
江戸時代の中期からその場所で蕎麦屋を開いている、山形県きっての老舗です。この地方では「板蕎麦」とい
って底の浅い長方形の板の箱に蕎麦を入れて出してくれます。ざるそばの替わりと思って貰えばいいのですが、
これが何とも美味い、蕎麦を口に頬張ると蕎麦の香りが顔一杯に湧き立ちます。好みによりますが、色の少し
濃い田舎蕎麦、色の白い更科蕎麦と2種類ありますが、私は田舎蕎麦を選び蕎麦をそして実りの秋を堪能しま
した。やはり日本に生まれてよかった。
自研センターニュース 2003.11(通巻338号)平成15年11月15日発行 昭和51年5月27日 第三種郵便物認可 定価336円(消費税込み、送料別途)
C 発行所/株式会社自研センター 〒272-0001 千葉県市川市二俣678-28 Tel(047)328-9111(代表) Fax(047)327-6737
発行人/加田康明 編集人/八束重宣 ⃝
※乱丁、落丁の場合はお取り替えいたします。
本誌の一部あるいは全部を無断で複写、複製、あるいは転載することは、法律で認められた場合を除き、著作者の権利の侵害となりますので、その場合に
は予め、発行人あて、書面で許諾を求めてください。
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