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飛行の技術:(推理)鳥の祖先

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飛行の技術:(推理)鳥の祖先
飛行の技術:(推理)鳥の祖先
Reasoning
:
The ancestor of birds
The ancestor of birds is dinosaurs according to the theory.
First , wings are required in order to fly according to
aerodynamics.
Wings must generate a lift.
And the strength supporting self-weight are required for wings.
(Birds cannot fly by the feather for heat insulation.)
It is reasoned that the flight of the birds with wings
started from gliding.
This report is a nonfiction document including a few reasoning
as to the ancestor of birds.
Yasuo Kondou in December, 2005 Japan
2005年12月 近藤康男
はじめに
鳥類の祖先が恐竜、獣脚類であるのは、1986年エール大学のゴーティエ教授による、
分岐学にもとずく学説によるが特に1990年代、中国で発見された幾つかの白亜紀の
恐竜化石からも裏付けられた、最新の定説である。
このレポートはこれに異論を唱えたり、または新たな理論を提唱するようなものではない。
そうは言え鳥の祖先のミステリーについて、少しばかりの推理を試みたサイエンス・ノン
フィクションである。
とは言え出典、引用を選定し、また論拠や論理には注意や神経を極力払った積もりである。
内容は広く、そして遠くしたので、読者にとり参考になるものとなり、かつ面白く読んで
いただければ望外の幸せである。
1
飛翔から飛行へ
P 2
2
飛行の技術:航空工学
P 3
2.1 航空機:飛行力学
2.2 揚力と翼
2.3 推力と離陸
3
飛ぶ鳥と飛ばない鳥:現代の鳥
P 7
3.1 アルプスを越え大陸を渡る鳥
3.2
4
飛ばない鳥
太古:飛行の歴史
P10
4.1
植物の上陸と発達
4.2
植物と昆虫(最初の推理Ⅳ1∼2)
4.3
恐竜の飛行
4.4
翼竜と哺乳類:こうもり
5
推理:それは滑空から始まった!
5.1
P21
思索
5.2 地上から飛び上がる走力と翼の強さ
5.3
木からの滑空と翼の発達
5.4
推理:鳥の祖先
参考文献
P22
著者プロフィール
P24
1
1
飛翔から飛行へ
(1)ダ・ビンチのノートと飛翔、そして飛行
レオナルド・ダ・ビンチはそのノートにグライダー、ヘリコプター、パラシュート
などを残した。
最初に飛翔したのは気球であった。1783年11月21日、フランスのモンゴルフ
ィエ兄弟の熱気球である。この10日後、シャルルが水素気球を飛ばした。
1797年、フランス人ガルヌランが気球に吊られたパラシュートを用い降下した。
1802年には気球から直接降下した。最初のスカイダイブである。
グライダーはドイツのリリエンタールが元祖ハング・グライダーを1891年、開発
し斜面から滑空したが、5年後の1896年事故死した。
この事件を契機としてライト兄弟が飛行機の開発に着手し、1903年12月17日
キティーホークの砂浜で最初の飛行に成功し、飛行の時代の幕を開けた。
(2)ハング・グライダーとパラグライダー
成功したハング・グライダーを発明したのは1948年NASA前身でのロガロ博
士による。後、1971年スポーツ用として実現した。
スポーツの一方としてスカイダイビングが流行っていたが、四角形(長方形)のパラ
シュートが米国で開発され、目的地点に向け滑空、着地できるようになった。
これが登山家によるアルプスからのダイブに用いられ、これを契機にヨーロッパを中
心として1980年代、パラグライダーに発展し今日に至っている(最近もモモンガ
のような飛行服を着た登山家?がアルプスからダイブしている)
。
パラグライダーは左右に曲がれるだけで、原則は降下のみである。これが上昇し飛
行できるのは上昇気流を捉えることによる。
最近のパラグライダーは楕円形のものが多いが操縦法(曲がり方)は、右に曲がりた
ければ右端についている紐を引き、左に曲がりたければ翼の左端についている紐を引
けばよい。
今、翼と言ったがパラグライダーは翼に相当し、そこに人間がぶら下がっているもの
である。右紐を引くことにより右側に抵抗が生まれ右側に向く(左はその逆)と言う
訳である。飛行の技術:航空工学に進む。
[コラム]ニ宮忠八の飛行機開発
周囲が無視するなか極東で単独、飛行機の開発を目指したニ宮忠八はライト
兄弟の成功の報に接するやいなや開発をいさぎよくやめてしまう。明治36
年(1903年)
、日露戦争の前年であった。
2
2
飛行の技術:航空工学
2.1 航空機:飛行力学
(1)飛行、4つのベクトル
航空機の飛行を語る場合、まず4つのベクトルを語らねばならない。そのベクトル
とは、推力、揚力、重力、抗力の4つの力である。
揚力
前方
←
推力
抗力
重力
推力とは、ジェットエンジンなどによる推進力である。揚力とは機体を浮き上がらせ
る力である。重力は機体を落下させる力、抗力とは空気(気体・流体)の抵抗力など
である。
揚力と抗力を補足する。
揚力は翼の断面上部を流れる気体の圧力が、翼の断面下部を流れる気体の圧力より低
くなることにより、翼を上方向に引き揚げる力である。
前方
←
翼の断面
翼は前方に対しやや上向きの角度を持たせるが、これを迎角と言う。
次に抗力とは流体、この場合は気体であるが、この粘性による抵抗力と、主に翼に生
じる渦による邪魔な抵抗力からなる。
粘性による抵抗力を形状抗力とも言い、このため機体は流線型の形状をとり、また機
体部分を繋ぐ鋲を埋め込む(表面に対し突き出ていると抵抗力が大きくなるため)。
渦による抵抗力を誘導抗力と言うが、翼に生じる渦とは、翼先端の渦で、図のように
機体(前方からの断面)
下から上に廻りこみ
吹き降ろす渦が生じる
翼(左翼は略記)
3
翼の先端部を下に押さえ付けようと働く力である(風洞実険などでしか見えない力で
ある)
。この力を抑える対策として先端部に垂直の小翼を付け、渦を(吹き降ろしを)
より上方にもってゆく方法がある。ワシなどの鳥では先端部を数枚の羽根にして対策
している。
抗力は他にもあるが、ここでは以上の概要に止める。尚ジャンボ機クラスで形状抗力
が抗力全体の51%、誘導抗力が37%、その他12%である。
以上、航空機はジェットエンジンによる推力と、翼が生む揚力により、重力に逆らい
飛行しているのである。
(2)上昇、下降
航空機(旅客機)の構造・構成は、機体、主翼、垂直尾翼、水平尾翼、エンジンか
ら成っている。
飛行の向きを変えるものとして幾つかの舵(かじ)がある。
主翼の先の半分を占める補助翼、水平尾翼に付いている昇降舵、垂直尾翼に付いてい
る方向舵である。これらは上下(昇降舵、補助翼)
、左右(方向舵)に動く。
上昇する場合、昇降舵を下げ水平尾翼全体が上向くようにし、また両翼の補助翼も下
げ主翼全体が上向きになるようにする。機首が上がる。
下降する場合、昇降舵を上げ水平尾翼が下向きとするようし、また補助翼も上げ主翼
が下向きとなるようにする。機首は下がる。
水平を保ちながら左右する場合、方向舵を左右すればよい。
(3)旋回
水平を保たない左右への動き、旋回の方法を述べる。まず補助翼の働きを記す。
補助翼は両方同時に上下できるが(上記の上昇・下降で説明)他方、片側を上、反対
側を下にすることが出来る。
今、操縦席にいるとして、右の補助翼を上げ、左の補助翼を下げると、機体は右側に
傾く。左翼が揚力を受け、右翼が揚力を低下させるからである。
逆にすると左側に傾く。
旋回はこの動きに方向舵の動きを同時に行うことによる。旋回上昇の場合さらに昇降
舵による上昇の動き、また推力も同時に上げることになる(旋回下降はこの逆)
。
離陸し上昇中の旅客機はほどなく航路に向け旋回する。このとき補助翼等を上記のよ
うに使っているのである。
離陸、着陸の時に用いるフラップ(主翼の機体側半分に付いている、もっぱら下げる
動きだけを行う補助翼)については離陸の項で述べる。
4
2.2 揚力と翼
以下、ここでは飛行の公式を用い説明を行う(公式の内容は参考文献参照)
。説明内
容は簡単に行うよう心がける。
揚力は推進することにより翼が受ける浮上する力である。揚力Lは次式で与えられる。
揚力L=mgCOSγ
m;体重
g;重力加速度
γ;上昇角度(COSは、コサイン)
上昇角度γが90度の場合、COSγ=1 であり、揚力Lは重力mgに等しくなる
(mg=Wが重力。mは体重、例えばトン。g重力加速度は地上で 9.8 である)
。
つまりロケットのように真上に飛ぶには大変な揚力がいることになる。
逆にγがゼロに近いと(γ=0で、COSγ=0)
、少ない揚力で済むことになる。
少ない角度で上昇するほうが、より容易いことになる。
ここで重要なことは、揚力を生む、上昇するためには、まず翼が必要である、という
ことである。
次いで体重を支え揚力を生めるに足る(強い)翼が必要である。
そして推進力が必要になるのである。
注)公式:定常飛行においては参考文献の公式 6.1(また 6.13)においてαt、ド
ットV並びにドットγをゼロとみなしてよいことにより導出。以下同。
2.3 推力と離陸
推力の公式は次式である。
推力F=mgSINγ+D
D;抗力
γ90度で SINγ=1 、γ0度で SINγ=0 、γがマイナスだとSIN
γは0∼−1のマイナス値となる。
(上昇して)水平飛行の場合の推力は、抗力分あればよい、となる(SIN0=0)
。
上昇する場合は(γがある角度の場合は)、以下。
推力F=αmg+D (α=0∼1の定数)
5
これを離陸速度Vの近似する公式で示すと以下となる(参考文献の公式 4.9 からの
近似値の公式)
。
離陸速度V=3.6*平方根(m/S) m/s
m;体重(kg)
S;翼面積(平方m)
(離陸速度Vの単位、m/sは幾つかの単位を有する定数を掛けた
結果である。
近似の条件は、揚力が最大化できること(フラップの使用)
)
たとえばボーイング777の場合、m=体重=2.5*100000kg、S=翼面積=430
平方mであるので、離陸速度Vは
V=3.6*平方根(2.5*100000/430)
=約87m/s
=時速313km
と近似できる(あくまでも目安値である)。
フラップ使用が前提であるので、主翼の機体寄り半分の補助翼(フラップ)を一杯に
降ろして揚力を得る離陸姿勢での滑走となる。
さて話を進めてγがマイナスの場合(下降の場合)
、推力はさほど要らなくなる(F
=D−αmg α=0∼1)。
その分、揚力Lが要る。L=βmg=9.8βm (β=COSγ=0∼1の0に近い値、
すなわち浅い角度での着陸を行う必要がある)
)。
250トン近いボーイング777が着陸する場合、フラップを一杯に降ろし浅い角
度、遅い速度で空港に進入してくるのは、このためである(フラップは速度を遅くす
る働きも有する)
。
そして滑走路近くで機首を上げ(離陸の時に似る体勢とし)
、胴体部にある主車輪から
着地するのである。その後前車輪が着地し逆噴射で制動する。
航空機(旅客機)は離陸距離よりも短い着陸距離で済むよう設計されている。
これは着陸の特性(速度を抑える飛行)
、並びに着陸ポイントがばらつくための工夫で
ある。離陸時は滑走路を一杯に使うことは可能であるが、着陸時の場合着陸点は一定
しないのが常である(以上この2章につき大阪府立大学大学院小木曾望助教授からア
ドバイスを得た http://www.eng.osakafu-u.ac.jp/Japanese/02senko/space.htm)。
6
3
飛ぶ鳥と飛ばない鳥:現代の鳥
3.1 アルプスを越え大陸を渡る鳥
現代の鳥類の種類は哺乳類の約倍、9千∼1万種ほどである。
その特長を古代の化石の鳥、始祖鳥と比べて見よう(始祖鳥はジュラ紀の1億480
0万年前とされる(プラム、ブラッシュによる推定値))
。
始祖鳥
:歯を持つ顎、爪のある1・2・3指の前足、鳥と同じような羽根、
弱々しい胸骨、トカゲのような尾―――指は親指が1、小指が5。
現代の鳥:歯のないクチバシ、1・2・3指からなる翼(2・3・4指説もあ
る)、強い飛翔筋を支える竜骨突起のある胸骨、短い尾など。
後肢についても鳥が前指2・3・4、後ろ向きに1。これに対し爬
虫類(または恐竜)は前に1・2・3。尚これについても鳥類、爬
虫類(恐竜)とも逆の説がある)。
(始祖鳥については以下のA、B2説がある。
A:爬虫類(または恐竜)→始祖鳥→鳥類
B:始祖鳥は爬虫類。
未発見の真の始祖鳥→鳥類である。
さらにはこの前(三畳紀の種)があるはずだと言う説もある。
「鳥の生命の不思議」の著者アドルフ・ポルトマン(1897∼1982年)は
続ける(参考文献参照)
。
羽は保温機能か、飛行機能か。保温から始まったのか飛行から始まったのか。
否、最初から両者を備えていたのか。
さらには姿全体を考えると、地上を2足走行していた爬虫類(または恐竜)か
ら進化したのだろうか、または木から木へと飛び移るうちに滑空に必要な構造
を身につけたのであろうか。今日多数を占めるのは後者の、後肢の発達した、
木の枝に飛び移れる爬虫類(または恐竜)が鳥類の祖先である、とする意見で
あるーーーその後1986年、エール大学のゴーティエ教授が恐竜のうちの獣
脚類が鳥の祖先であるとする現代の学説を発表した(後述)
。
)
鳥のその他の特長としては、哺乳類と同じ温血動物、原則昼行性である。哺乳類との
大きな違いは原則飛翔すること、非草食であること(後述)
、などである。
現代において飛翔するのは昆虫の多くと、鳥の多くと、極く一部の哺乳類と魚類で
ある(こうもりやトビウオ(後述))
。
鳥の飛翔は航空機とは異なり、翼の身体に近いところにある次列風切羽が揚力を、翼
7
の先端側(身体に遠い側)にある初列風切羽が推力を働かせるものになっている。
白鳥など大型の水鳥の離陸・着陸(離水・着水)で言えば、いざ飛び上がる場合、
まず翼を広げ水掻きのある足で水中を蹴り、次いで水面を駆けながら翼を羽ばたか
せ、低く離陸・上昇してゆく。
反対に着水の場合、翼を畳み気味に目一杯広げ身体をお越し、足を前方の水面にスケ
ートさせながらブレーキを掛け着水に至る。これはこれで理に適っている。
鳥の餌は昆虫や実・種子・穀物、また魚であり草食はしない(草食がわずかにいる、
あとは肉食の捕食種がいる)
。これらは軽体重を保ちながら飛行エネルギーを得るため
に、高カロリーを必要とするからである。なかには北アメリカのカッショクペリカン
のように狙った魚めがけ海中にダイブし、追いかけ水中捕食するような鳥もいる。ペ
リカン目は魚を主食にする大型の水鳥であり、翼幅2M以上、体重は十数Kgとなる。
コンドルも概ね同じような大きさである。
スイスの夏の空に欠かせないヨーロッパアマツバメは繁殖の3ヶ月ほどを過ごし、
あとはアフリカにいるか、移動しているかである。
キョクアジサシは北極圏で繁殖し南極圏で越冬する、往復3万6000KMの大陸間
移動を行う鳥である。
これらの渡り鳥には航法が備えられている。
1つは体内時計であり、太陽の位置と時間の情報を処理し、渡りの定位をとらせる機
構を(脳に)持つということ(大型のツルや白鳥、小型だが素早いつばめなど)
。
いま1つは夜間の渡りの定位法である(小型の鳥、また昼夜兼行のガンやカモなど)。
これは夜間航法であり研究の結果によると、星のきらめく夜空が渡りの衝動に方向性
を与えている、ということ。つまり鳥は星座に対し定位するのだということである。
さらにヒマラヤを越える鳥の場合(インドガンやアネハヅルなど)、氷点下30度Cや
地上の酸素濃度の1/3を耐える方法を持つ。
防寒対策は羽毛であり、飛行のための正羽(風切羽など)に加え、保温に優れる綿羽
を持ち体温調節を行う(綿羽は羽毛布団に使われている)
。
哺乳類の場合、1回の呼吸で1度のガス交換であるが、鳥類は1回の呼吸で2度のガ
ス交換が可能である。これは肺に加え気嚢を有しているからである。
吸気した空気は肺と気嚢に入り、肺から呼気すると共に気嚢から空気が肺に入る(吸
気)。1度の吸気で肺が2度呼気(ガス交換)するのである。肺が複対あると思えばよ
い。気嚢は一般に5対ある。
またヘモグロビンが高く、高度に強い体質を有す(一般の渡り鳥は高度1800M以
下を飛ぶ)
。
最後に、鳥と植物の関係であるが鳥は、主に草食のどちらかというと寄生の昆虫の
増加を抑えるバランスを図る働きをもち、さらに種子を遠方にまで運搬し蒔く働きを
有する、植物と共生する動物だと言える。
8
3.2 飛ばない鳥
(1)飛ぶのをやめた鳥
ペンギンは飛ぶのをやめた鳥であり、南極を周辺とする南半球に生息する。かつて
北半球(北大西洋)にもオオウミガラスと言うペンギンに似た種がいたが、19世紀
末(中期という説もある)乱獲がもとで絶滅した(日本海側ではこれも乱獲原因だが、
ニシンの回遊が消滅しつつあった)
。
ここで南極の歴史を見てみよう(参考文献「生命と地球の進化アトラス」)
。
約4億年前に遡ると南北に2つの大陸があった。南のゴンドワナと北のローレンシア
である。やがてこの両大陸は接近し1つの大陸パンゲアとなる(約3億年前)
。次いで
恐竜や針葉樹が繁栄した三畳紀、ジュラ紀に分裂が進み北アメリカと中央アジア、南
のゴンドワナに分かれた。次の白亜紀(約 1.5 億年まえ)には現在に近い状況、北アメ
リカ、ヨーロッパ、アジア、そしてインド、アフリカ。オーストラリアと南極はまだ
近接していたが3000万年前頃に離れ、南極は地球の寒冷化に伴い氷床化していっ
た。それまで南極大陸は緑なす動植物の陸地であった。この間、海面は上昇・下降を
繰り返した。
南極で繁殖するペンギンはエンペラーのみであり、赤道付近ではガラパゴス島であ
る(ガラパゴスペンギン)
。魚を主食としエンペラーペンギンは体調1M程度、体重3
5kg前後と大型である。天敵は陸上では狩をする人間以外にはカモメ類(卵やひな
を餌とする)、海中ではアザラシやシャチなど多い。このためもあり水中で飛ぶがごと
く泳ぐことが最も得意な鳥である。潜水は500M前後可能であり(測定値)
、時速1
0KM前後。このほかイルカ泳ぎもする。
(2)飛べない鳥
飛べない鳥の代表がダチョウである。ダチョウの羽根は紙の張られていない扇子の
ようなものであり飛行は滑空ですら不可能である。鳥類特有の竜骨突起もない。
アフリカ、オーストラリア(エミュー)
、南米(レアほか)に生息。アフリカのダチョ
ウが代表的なもので身長2M以上、体重100kg程度、時速60KM程度で走る地
上最大の鳥である。足に2本の指を持つ(レアのみ足の指が3本である)
。餌は植物を
主体とする草食・雑食である。最近では食用、皮用として飼育されることが多い。
絶滅した種も多い。マダガスタル島で絶滅した身長3M、体重500kgとも言わ
れるエピオルニスと呼ばれる怪鳥エレファントバード(象鳥)がいる(愛知万博のア
フリカ共同館にレプリカが展示された)
。ニュージーランドの怪鳥モアも絶滅種である。
これらはまだ研究・分析中のモンゴル化石であるダチョウ型恐竜(例えばガリミムス
(参考文献参照)
)の子孫であるのかも知れない(ガリミムスに似たものとしてカナダ
で発掘されたオルニトミムスがいる)
。
9
4
太古:飛行の歴史
4.1 植物の上陸と発達
(1)年代紀
(先カンブリア紀(地球誕生∼カンブリア紀前まで)を除く 年単位:万年前)
代
古
紀
カンブリア紀
年
代
概
5億 7000∼5億 500
生
代
要
三葉虫
(無脊椎動物)
オルドビズ紀
5億 500∼4億 3800
シルル紀
4億 3800∼4億 800
脊椎動物
植物の上陸
デボン紀
4億 800∼3億 6000
魚類(シーラカンス他)
両生類、南北2つの大陸
石炭紀
3億 6000∼2億 8600
植物の大繁栄、トンボ、
ゴキブリ、パンゲア1大陸
ペルム紀
2億 8600∼2億 4500
爬虫類 寒冷化
大絶滅(三葉虫等)
中
三畳紀
2億 4500∼2億 800
生
代
大陸の分裂、海水上昇、
針葉樹、恐竜
ジュラ紀
2億 800∼1億 4400
温暖化、海水上昇、
大型恐竜、翼竜、魚竜等
白亜紀
1億 4400∼
6500
分裂加速、一層温暖化
被子植物、トリケラトプ
ス、テラノサウルス、鳥類
南極の動植物 恐竜絶滅
新
古第三紀
6500∼
2400
生
代
哺乳類
3400∼寒冷化、
南極氷床化
新第三紀
2400∼
180
450 最古の人類
300∼
北半球大陸氷河 クジラ
第四紀
180∼
現代
70∼(10 万年毎に氷河縮
小拡大)
1.8∼間氷期
(東北大学自然標本館「地球生命の進化」より引用 年代は発見により変動する)
10
(2)植物の上陸と発達:現代から過去へ遡り
現代の主要植物は「被子植物」といわれる花も実もある広葉樹や草木を一般にさ
す。“めしべ”が奥にしまい込まれているため「被子」と言う(“めしべ”と言った
が、より正確に言うと“種子の元になるもの”である。ここでは“めしべ”と敢え
て称しておく)
。
花は両性花という、めしべ・おしべの雌雄共に同一の花の中にあるものが大半を占
める。同じ種類の(蜜をもつ)他の花から花粉を身につけた虫により受粉する(花
の中にあるおしべとめしべは自家受粉を抑えるため離れて配置されている)
。
この他、雌雄異花(または雌雄同株)というオスメスの異なる花をもつもの、また
雌雄異株という草木自体にオスメスのあるものがある。
雌雄同株の代表はキュウリ、かぼちゃなど野菜類であり、このほかブナ科・ウリ科
の多くがある(どんぐり等のブナ科は高木が多いため見えにくいが花を咲かせる)。
雌雄異株はキウイ、パパイヤやほうれん草、山椒などである(少数派)。
被子植物は、シダ植物→針葉樹→広葉樹と続いた3番目の発達系であり25万種
とも30万種とも言われる。白亜紀以降、最も繁栄している植物である。年代は花
粉化石から測る。
昆虫や鳥、さらには動物まで誘惑し、受粉や種を世界周辺にばらまき、暖温帯、冷
温帯に広く勢力を誇る。乾季や冬の前になると落葉するものがほとんどである。長
い発達のなかで色々な種類があり、変異・変態ではないが雨の多い地域に限り常緑
の広葉樹もある。熱帯雨林である。
スギやマツなどの針葉樹は「裸子植物」といわれる植物の一種で、他にはイチョ
ウ、ソテツがある。裸子植物は種子を持った最初の植物といえる(正確には下記の
注を参照)。雌雄同株でありめしべが露出しており(このため「裸子」と言う)、ス
ギ花粉のように時期には風を主体に“めしべ”が受粉を行う。
「松ぼっくり」などの
球果を持つ場合があり、雄雌の松かさが時期になると開き受粉、種子作りし閉じて
種を保存する。ギンナンやソテツは雌雄異株であり、その実は果実状ではあるが、
あくまでも種子である。
針葉樹は三畳紀からジュラ紀にかけて繁栄した植物であり、現在では冷温帯に群れ
を作る約500種が生き残りと言える。尚、イチョウやソテツ(の祖先)はシダ植
物と針葉樹の間に位置する古い裸子植物である。
注:最初の種子を持つ植物
ややこしい話であるが、最初に種子を持った植物は“シダ種子類”という、
種子をもつシダ植物である(化石から発見された)
。代表はメドゥロサであ
った。
植物は多種多様な組み合わせや実険(?)により進化したものであり、その
多彩な内容詳細は専門の述べるところである(動物も同様であるが)
。
11
さて最古の陸上植物であるシダ植物であるが、藻、コケ、シダと水辺から上陸、
進化した植物である。これらを「胞子植物」と言う。種子の方がより乾燥に強く進
化したものであるが、胞子は雌雄がない単細胞のものである。
胞子植物の例としては“つくし”がある。つくしはシダ植物の一種であるスギナで
あり、早春生えてきて頭に集合する胞子を跳ばして枯れる。その後、茎を同じくす
るスギナが生え茂る。シダでは葉の裏に胞子が形成される。
植物はシルル紀後半に上陸しデボン紀に多様化、そして石炭紀にシダの大木の生
える森林群が形成され、また進化・発展してきたのである。これに伴い昆虫に発展
する節足動物、そして両生類が上陸を果たすのである。
4.2 植物と昆虫(最初の推理Ⅳ1∼2)
(1)動物の王者・昆虫類
動物は大別すると無脊椎動物と脊椎動物に分類できる。別な言い方をすると外骨格
をもつものと内骨格をもつものとも言える。前者の代表が昆虫であり、後者の代表が
哺乳類や鳥類や魚類である(背骨をもつ)
。
無脊椎動物は軟体動物や節足動物などからなり、節足動物の高名なものは三葉虫であ
る。節足動物は狭角類(三葉虫、カブトガニ、クモなど)
、多足類(ヤスデ、ムカデな
ど)、甲殻類(エビ、カニなど)
、昆虫類などからなる。
上陸した最初の動物はヤスデなどの多足類でありシルル紀の植物の上陸に続いたもの
である。次いで脊椎動物の上陸が両生類によりデボン紀に行われた。
昆虫は多足類の進化したものであり(甲殻類に近いとする別の説もある)、頭部・胸
部・腹部の3つの体節、6本の足、そして(原則)4枚の翅からなる。もちろん翅の
ないものもいる(これを別の類とする説もある)
。
最初の昆虫はスコットランドで発見されたデボン紀のトビムシであろうとされている。
次の石炭紀に大発展し、最初の飛翔動物となった。生きた化石とされるトンボやゴキ
ブリなどである。トンボやゴキブリは、卵→幼虫→成虫となる(これを不完全変態と
言う)
。被子植物時代のチョウやガは、卵→幼虫→蛹(さなぎ)→成虫となる(これを
完全変態と言う)
。
動物全体の種の数は既記載種で200万種あり(未記載種を入れると3000万と
も1億ともいわれる)、このうち節足動物が9割、さらにこの9割が昆虫である。哺乳
類は4千∼5千種類である。なお植物は30万種ほどある。
存在期間は、陸上動物で言うと節足動物が約4億年(植物上陸の直後)
、昆虫はデボン
紀であり4億年弱、または3億年強となる。恐竜が2億年、哺乳類は6500万年で
ある。つまり陸上の、動物の成功者、または王者は昆虫だと言える。
12
(2)植物と昆虫
昆虫の特長は外骨格、気管呼吸、開放血管、翅などである。
外骨格はいわば鎧であり対乾性も備えるが、反面「脱皮」が必要になる。気管呼吸と
は、胸部にある気門と言う体表面の入り口から酸素を取り入れ、あたかも血管のよう
に内部に張り巡らされた気管により酸素を供給する呼吸法を言う。呼吸の排出は腹部
の気門から行われる(気門は開閉できる)
。これにより体重の軽さを得ている。口は餌
をとる為のものである(後述)
。開放血管とは血管がないものであり、内臓は身体の血
液中に浮いている状態にあるものを言う。背中にある心臓(背脈管)が脈動して血液
を循環させる。そして筋肉などへエネルギーを供給する。
翅については次節で詳述するが、トンボの場合4枚の翅に各々の筋肉があり独立に動
かす。いずれにせよ脊椎動物と言う動物は非常に異なる構造、身体を有している。
昆虫の代表的なものとしては、トンボやゴキブリ、バッタ、甲虫など石炭紀からペ
ルム紀に発達したものと、次の中生代の被子植物と共に発達したハチ・アリ、チョウ、
カマキリなどがいる。餌は葉や樹の汁(バッタ、甲虫)、蜜(ハチ、チョウ)、他の昆
虫(トンボ、カマキリ)
、などでありゴキブリやアリなどは雑食である。この他腐った
ものが好きなハエや吸血の蚊など多彩である(ハエやアリはキノコなども食す)
。
種子に寄生した幼虫の化石があり、昆虫などの虫と植物との関係は、寄生(餌、棲家
など)
、共生(受粉など)の深い関係にあると言える。いわば植物の上陸と共に上陸し
た動物(昆虫など)は、現在の地球環境に近い状況を過去、共に形成した貢献者と言
える(現在に近い状況はデボン紀末頃とされる)
。かくして両生類が上陸するのである。
(3)昆虫の飛翔(推理Ⅳ1∼2)
昆虫の特長の最大のものが翅であり飛翔である。翅は原則4枚あり、トンボやチョ
ウなどを除き折り畳み式になっている。トンボは4つの筋肉により翅4枚を独立に動
かし中空での静止が可能であり(ホバリング)
、チョウは前後の翅を一緒に動かして飛
ぶ。甲虫は前の翅を硬化させたものであり飛ぶ時は前を開け後ろの翅を用いる。
飛び方としてもう一つの方法があり、翅を筋肉とは直接接続せず外骨格に接続し、外
骨格を振動させることにより翅を羽ばたかせるものでありハチなどはこの方法による。
この方が羽ばたき振動数が格段に向上する(10倍、ないし以上)
。
翅は外骨挌の一部として進化したものである。翅の使い方は、上下の動き(フラッピ
ング)
、翅の前部と後部のねじる動き(フェザリング)並びに空気の粘性を活用し揚力
と推力を発揮し飛翔する。千葉大学の劉浩(りゅう・ひろし)教授により昆虫の自由
飛行を再現するシミュレーターが開発されたそうである(参考文献参照)
。
トンボは生きた化石とも称されるが、捕食性、いわば肉食性の昆虫であり、草食性
の虫や飛ぶ他の虫(ハエなど)を餌とするものである。
ここからは推理となるが、太古も同じとするなら既に草食の飛ぶ虫がいた、または飛
13
ぶがごとく素早く移動する虫がいた。これを追い、トンボは高い飛翔能力を身につけ
たと考えられる。これを推理Ⅳの1とする(Ⅳは4章のヨンであるーーー推理Ⅳ1)
。
では(草食の)昆虫は何故飛ぶに至ったのであろうか。推理Ⅳ2である。
草葉を食す虫は、風に煽られる。飛ばされる。この中でコントロールする術を編み出
して行った。また草葉に必死に摑まる過程でもこの術は磨かれた。翅である。最初に
飛んだ虫はバッタに似たものではないだろうか。
いつか鳥も飛翔することとなり、餌として狙われた昆虫は逃げる術をさらに進化させ、
また被子植物の甘い蜜はチョウやハチなどの種を誘導するに至った。これらが現在の
昆虫の姿ではないだろうか。
4.3 恐竜の飛行
(1)恐竜への進化
両生類の進化系である爬虫類は石炭紀後期に発生しペルム紀に繁栄。その進化系と
される恐竜はペルム紀(古生代の最後の紀)に発生した。ペルム紀末期地球環境の変
動により最大の種の絶滅が起こり、この生き残り4%が次の中生代の最初の紀、三畳
紀へと継承された。その最大のものが“恐竜”である。植物では針葉樹が主体となり
イチョウ、ソテツなどが残った。
ジュラ紀に入り1億6000万年前、動植物の劇的な変化に至り、鳥類(始祖鳥)、
哺乳類も存在するに至る。植物は被子植物が発生し次の白亜紀では主役となる。
参考文献である「生命と地球の進化アトラス」によると、その進化は
爬虫類 → → カメ類
→ トカゲ・ヘビ類
→ 魚竜・長頸竜(首長竜)類
→ 主竜類:ワニ類
翼竜類
恐竜類
鳥類
となる。ここでの鳥類は始祖鳥の類を指す(後述)
。
恐竜の定義は次のものである。
恐竜類 → 竜盤類
→ 鳥盤類
14
恐竜とは、竜盤類と鳥盤類からなり、竜盤類の特長は前方に向く恥骨であり(トカゲ
型の腰)
、草食、肉食とも共通である。4足の大型草食竜ブラキオサウルスや、“スー”
で有名なテラノサウルスなどがいる。
鳥盤竜は草食、肉食ともその恥骨は後方を向く鳥型である。2足歩行のものが多かっ
たが、白亜紀に大型化した4足のもの、例えばステゴサウルスやサイに似たプロケラ
トプスなどがいた。
竜盤類は大別すると2類であり、竜脚類と獣脚類、ブラキオサウルスは前者、テラノ
サウルスは後者にあたる(竜脚類は4足大型の草食、獣脚類は2足の肉食である)。
鳥盤類は大別すると3類であり、装盾類(ステゴサウルスなど)、周飾頭類(プロケラ
トプスなど)、鳥脚類(例えばイグアノドン)から成る(鳥脚類は2足の草食であるが
食物を咀嚼した)
。
これらのほとんどが白亜紀末6500万年前に絶滅し、中生代から新生代の哺乳類の
時代へと進む。
(2)分岐学
分岐学とは1950年代にドイツの昆虫学者HENNIG(へンニグとかヘンニッ
ヒとか呼ばれる)により提唱された種の新しい分類法であり、一般には分岐分類学と
言う。それまでは18世紀スエーデンの博物学者リンネによる分類学があり今でも主
流である。種を、門から始まり種に至る6階層に分類する方法であり、従来から見慣
れてきたものである。尚、当時はまだ進化論がなく、今ではやや古典的な分類・整理
の方法であると言う感がある。
分岐学は種の進化、枝分かれを「系統分岐図」を作成することにより、より合理的に
把握・説明(解明)しようとするものである(最近はコンピューター分析が主体)。
類似する特長(形質と呼ぶ)を持つものを1つの群とし、さらに類似するものを1つ
の群とする。これを繰り返すことにより枝分かれの図が描ける。
今、A、B、C、Dの生物がいたとして、その特長(形質)を■、●、▲で表す。
A
B
■
■
■
●
●
●
▲
C
D
■
▲
AとBが近く、Dが遠いことが分かる(「生物の多様性を記述する」より転載)
。
15
これを人類のDNA分析に応用すると、日本人の起源が新たになる。
アフリカ人、ヨーロッパ人、アメリカ先住民、中国人、アイヌ人、琉球人、韓国人、
日本人のDNA分析を行い群分析を行うと、アフリカ人からヨーロッパ人に分かれ、
そしてアメリカ先住民に分かれてゆく。アメリカ先住民はアジアでは中国人とアイヌ
人に分かれ、さらに琉球人に分かれる。アイヌ人と琉球人の間には関係はあるものの、
やや遠縁である。そして韓国人と日本人は極めて似る群だと言う。
従来の縄文人のいた日本に、弥生人が間を割るように移動してきたものではなく、分
かれて暮らしているところに移動してきた、韓国に残る親戚を有するのが日本人だと
いう訳である(宝来聰著「DNA人類進化学」岩波科学ライブラリーより)
。
1986年、エール大学のゴーティエ教授の分岐学に基づく恐竜の新たな進化論が
それまでの学説を塗り替えた。それが映画、ジュラシック・パークでも紹介された恐
竜の鳥類進化説である。
(3)鳥の祖先の学説
分岐学に基づく最新学説の内容は次のとおりである(分岐学は恐竜の分類・進化論
などに、最近用いられ出したものである)。
現代の鳥類は、2足の獣脚類である“ヴェロキラプトルなど”を祖先とする(始祖鳥
もこの系統の一つ)
。根拠は中国の白亜紀での化石に見られる“羽根をもつ恐竜”の発
見などである。下図は4足に羽根を持つミクロラプトル・グイの化石写真である(恐
竜博2005の案内ページから転載)
。
レプリカが作られたりしているが、4足に羽らしきものがある鳥類と獣脚類(肉食恐
竜)との中間的な動物のイメージである。
なおヴェロキラプトルとは映画ジュラシックパークで、集団で狩りをする敏捷な、全
長2Mほどの肉食竜として描かれた動物である。最近は羽毛を持つように描かれるよ
うになってきた。白亜紀の獣脚類である。
恐竜は今も生きており(生き残りがおり)
、その子孫が鳥類として飛び発ったと言うの
が最新説である(滑空説もある)。
16
(4)逆説など
始祖鳥より後ではないかとする獣脚類が鳥になったとする説に対し、当然意義を唱
える者もいる。サンプルの少なさを指摘する者もいる。その代表的なものを紹介する。
①鳥類が恐竜の祖先説
これは鳥類は恐竜の子孫ではなく、全く逆に、鳥類が先にいて恐竜はここから進化
した、恐竜が子孫だとするものである。BCF(Birds Come First)
と言う論は、ジョージ・オルシェルスキーと言う市井の恐竜研究家の説である。
②鳥は既に存在したとする説(三畳紀の存在)
2つの学説があり、一つは1983年のテキサツ工科大学チャタジーによる三畳紀
後期における鳥に似る化石の発見である。間もなく小さい話題となる。
続く三畳紀説がオレゴン州立大学のテリー・ジョーンズ博士による2000年の発表
である。1969年にソ連で発見された化石がミズーリ州で展示されたのを見て気が
ついたと言う。
③その他
参考文献である「生命と地球の進化アトラス」も最新説にもとづき記述されているが
問題点も記述されている。Ⅱ巻P121鳥類の進化の一部を転載する。
「鳥類は恐竜類から進化したーーーこれに関してはまったく疑いはない。実際、
鳥類は恐竜類に極めて近縁なため、鳥類は別に分類されるべきだとか、分類で
きるということを、多くの科学者は認めていない。 、、
、、、、
、
白亜紀を通じて、恐竜類と鳥類の合いの子のようなあらゆる種類の動物が存在
したが、互いの正確な類縁関係は実際には分かっていない。
1980年代と1990年代の間に中国を始めとして、あらゆる種類の化石が
発見され、
「鳥類らしさ」を示している。翼が発達したが飛行に使うには十分に
は適していなかった。ある動物の翼にはかなり長い羽毛があったが、飛行中の
動物を支えられるほど長くはなかった。 、、
、、、、
、
、、
これらすべての動物を分類する上での問題点は、これらすべての特徴が異なっ
た組み合わせで、異なった時代に、異なった動物に突然生じたことである。
これら鳥類に似た恐竜類の一部は極めて大きく、あるものは全長2Mを越え、
羽毛で覆われていた。この場合は羽毛は明らかに飛行用ではなく、断熱用だっ
たに違いない。 、、
、、、
」
(「生命と地球の進化アトラス」より転載)
17
4.3 翼竜と哺乳類:こうもり
(1)翼竜
現代でいえば、こうもりにやや似る翼竜であるが起源や種類については幾つかの説
がある。ジュラ紀のラムフォリンクスと言う尾の長い翼竜と、白亜紀に主流となった
オルニトデスムス(プテラノドンと言う説もある)などの尾の短く大型となったもの
がいる(三畳紀からいたとする説もある)。
餌は魚とも果実ともされるが、種が多ければ雑食もいたであろうし、大型となると植
物なども考えられる。
白亜紀は植物、昆虫、恐竜、小さな哺乳類、魚など豊富な時代であり、また捕食対象
としての鳥もいた可能性も高く、空を制した翼竜にとっては天国だったに違いない。
魚が主食とは考えがたい(であれば飛ぶのをやめ、海生になればよい)。
飛んだ理由は知るよしもないが、草食なら逃げるため、雑食・肉食なら捕食のためと
なろう。6500万年前、恐竜と共に絶滅したとされる。
(2)哺乳類:こうもり
①出現
こうもり(小こうもり)の起源は、白亜紀後期ではないかとされている。その理由
としてこうもりの持つ音響装置に反応する7000年前のガがいることが分かってい
るからである(こうもろの化石としては5000万年前のものが最古である)
。
またこの頃は被子植物が繁栄している時であり、昆虫も栄えた時であり、かつ夜の花
や夜の昆虫が暗躍していた頃である。花の蜜はこうもりには不十分であり、花から花
へ遍歴しなければならなかった。被子植物に飼いならされた結果かも知れない。
こうもりは哺乳類4∼5千種の約1/4を占める大勢力の一つであり、小こうもりと大
こうもりから成る(小こうもりは最も種類が多い)
。
尚、最も哺乳類から遠い種の哺乳類である。
むしろナマケモノなどに近いーーー地上での歩行の類似性を見れば、一方が木暮らし
(ナマケモノ)
、他方のこうもりが舞い上がったとするのは、余りにも大胆な推理であ
ろう。
②小こうもりと大こうもり
小こうもりは世界に広く分布しており、虫や実や蜜などを食す雑食であり(吸血種
もいる)、夜行性である(エコー・ロケーションと言う反響定位を活用)。この他地上
でも四速歩行できる(ナマケモノを連想する)。後ろ足は退化しており、ぶらさがりが
原則である。
大こうもりは熱帯におり、果実や蜜を食し、視覚を主とする(夕方に行動)
。
18
また動きものろい。体重は 20g∼1.5kgであり、翼開長が2Mになるものもいる。起
源は3500万年前とされる。
この両者は同じ種であるとか、全く異なるとか、いくつかの説がある。
③飛んだ理由
飛んだ理由は不明である。しかし常識はずれのトビウオがいる世界である。息の出
来ない中空へ逃げる術を編み出したのは、海中にダイブして魚を食らう鳥の逆真似で
あろうか。トビウオは主翼、水平尾翼、垂直尾翼をもち、ジャンプ、滑空する。逃げ
るために飛ぶことを行う生物種は多数いる。
こうもりの化石は新生代から見つかっているが、起源が白亜紀だとすれば翼竜に憧
れた樹上の哺乳類が真似をして飛ぶようになったのかも知れない。
ただし翼竜とは前足(翼側)の指と羽(膜)との関係が異なる。樹上に住む哺乳類が
木々を渡るため滑空し、こうもりになったたのだとする説が推理されている。
[コラム]トビウオ
(TBS生物図鑑より転載)
トビウオは島根県の、県魚である。
19
5
推理:それは滑空から始まった!
5.1 思索
これまで見てきたところをまとめ、そして思索すると以下のようであろうか。
動物にとり安全なところは樹上そして空であり、また海ではなかろうか。
昆虫も鳥も多くは樹上に住み、そして飛翔・飛行する。哺乳類の一部には樹上生活する
ものがいる。そして海には陸上から戻った動物もいる。
最新の植物、広葉樹やその関連の草花の多くは熱温帯に広く分布し、現在の勢力を誇
っている(針葉樹は冷温帯の一部に生き残る)
。昆虫は共に繁栄している。
常緑の広葉樹、すなわち熱帯雨林では爬虫類が生き残り、また餌の豊富さから哺乳類の
一部も樹上生活をする(葉を食すナマケモノや葉や実、またアリや昆虫の幼虫を食すオ
ランウータンなどがいる)
。
海中では陸から戻ったクジラ類が豊富な餌と安全な領域を謳歌し、また南海を中心に古
代のサメ、そして深海の生きた化石であるシーラカンスが生き残る。
当然、一世を風靡した恐竜(の一部)が生き残るのは必然であろう。
現代の学説はそれが「鳥」だとしている。
鳥は植物にとり益鳥である。
植物を害するのは、天敵を持たぬ一部の草食動物(象や人間など)であり、特に人間は
森林を絶やし、また酸性雨などをもたらす害多き動物であり、主従を逆転しかねない。
この始末のため植物は次にどのような策略を打つのであろうか。
思索のまとめとして、次の4つの前提を記す。
前提1:陸上に水源または水脈がある。
前提2:そこに植物が存在する。
前提3:草食の動物が寄生または共生する。
前提4:そして肉食または雑食の動物が配置される。
5.2 地上から飛び上がる走力と翼の強さ
既に2章で見たように、飛翔または飛行するためには、まず翼が必要であり、そして
その翼は体重を支え、かつ揚力を生むに足る強さが必要である。
保温効果しか持たない羽根では、時速60kmの走力をもつダチョウでさえ、離陸する
ことは出来ない。
2章での離陸時の速度の近似値は、3.6*平方根(m/S)m/sであった。体重m=1kg、
翼面積S=1平方mの時、離陸時速度は 3.6m/s、すなわち時速13KMである。
20
m/S=0.5 の場合は時速9KMとなる。時速60KMもいらないのである。
逆に言うと、体重を支え揚力を生むに足る翼があれば樹上や丘から滑空が出来、かつ上
昇気流が捉えられればパラグライダーのように、かなり自由に飛行が可能にさえなる。
モモンガの様に滑空できれば、いつかはトビウオのように羽ばたき、あるいは上昇気流
を捉え、あまり不足のない長距離の移動が可能になるに違いない。
ここで前提の5である。
前提5:飛翔または飛行のためにはまず翼が必要であり、そしてその翼は体重を
支え揚力を生むに足る強さが必要である。
5.3 木からの滑空と翼の発達
鳥、または鳥に似た動物が樹上生活を主とし、あたかモモンガのように木々を滑空し
飛び歩き、まれには風に舞い思わぬ飛翔を体験するなか、飛行に足る翼と術を身につけ
て行き、ついには水鳥のように水面をさほど速くはない走力で離陸(離水)が可能とな
るまでになるに強い翼を得るに至った、と言う推測はさほど極端ではなかろう。木々に
は食すに足る昆虫や実または種子があった。
鳥または鳥に似た動物の飛行、それは滑空から始まったとするのが、推理Ⅴ1である。
5.4 推理:鳥類の祖先
推理Ⅴ1は現在の学説を否定するものではない。
但し、保温効果を目的とする羽根を持つ、体長2Mの獣脚類では飛行は出来ず、せいぜ
いダチョウへの進化程度と想像するものではある。飛行の可能性があるのは、始祖鳥や
グイ(P16)などの類なのであろう。
ジュラ紀、翼竜がいた。この時、植物にも動物にも繁栄が見られた。昆虫と翼竜だけ
が空を飛んでいたのであろうか。
前提4により、翼竜は空飛ぶ捕食・雑職動物の王であり下位の鳥または鳥に似た動物が
いたとするのが、推理Ⅴ2である。そしてこの鳥に似た動物が三畳紀にもいたとするのが
(あるいは発生したとするのが)、推理Ⅴ3である。肉食または雑食であろう翼竜の時代
の以前に、既にその捕食の対象がいた(発生した)とする推理は奇抜ではないだろう。
これらは推理である。学説を否定するものも仮説でもない。
ではこの鳥に似た動物のその後はどうなったのであろうか。
6500万年前または最近、絶滅したかあるいはその一部が、例えば針葉樹やその周辺
に、生き残っているかのどちらかであろう。
21
参考文献:
1章
1 つくばエキスポセンター「飛行の歴史」
http://www.expocenter.or.jp/shiori/plane/plane.html
2
(株)ソフトヴィジョン「歴史データベース on the Web」
http://macao.softvision.co.jp/dbpwww/index.html
3
(社)日本ハング・パラグライディング連盟ホームページ
http://jhf.hangpara.or.jp/how/history.html
2章
1 室津義定編著2005年「航空宇宙工学入門(第2版)
」森北出版
3章全般
1 アドルフ・ポルトマン(長谷川博監訳)
2003年「鳥の生命の不思議」どうぶつ社
3章2節
1 伊藤良一「ペンギンの達人」ホームページ
http://homepage2.nifty.com/pen-t/index.htm
2 (財)日本農業研究所「ダチョウについて」
http://www.nohken.or.jp/dachou.htm#e
3 神流町恐竜センター「ガリミムス」
http://www.dino-nakasato.org/jp/special97/Gall-j.html
22
4章全般
1 ドゥーガル・ディクソン著(小畠郁生監訳)2003年
「生命と地球の進化アトラス」朝倉書店
4章1節
1
東北大学自然標本館「地球生命の進化」
http://www.dges.tohoku.ac.jp/museum/tourj.html
2
大阪市立自然史博物館「化石からたどる植物の進化」
http://www.mus-nh.city.osaka.jp/tokuten/2002plantevo/virtual/index.html
3
福原達人「植物形態学」福岡教育大学
http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~fukuhara/keitai/
4章2節
1 古賀克己テキスト2003年「昆虫生理学」九州大学蚕学研究室
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/agpm/sangaku/note/
2 自然総研「虫の不思議」
http://www.toyro.co.jp/library/musi/
3 科学技術振興事業団「飛ぶ昆虫」
http://157.82.67.25:8080/sdb/index.php
4 劉浩「研究成果 研究最前線」千葉大学工学部
http://www.jst.go.jp/kisoken/seika/zensen/10ryuu/
4章3節
1 馬渡俊介「分類学の挑戦」北海道大学大学院系統進化学講座
http://www.hokudai.ac.jp/science/science/H16_11/seibutsu/mawatari_kajihara.htm
23
2
橋本佳明「生物の多様性を記述する」
兵庫県立自然系博物館ニュース「ハーモニー」創刊号(H4年7月)
http://hitohaku.jp/news/docs/hm01-4.html
4章4節
1 J.D.オルトリンガム(松村澄子監修)1998年「コウモリ」八坂書房
[著者プロフィ−ル]
近藤康男 1946年生まれ
東京理科大学理学部卒業
日本電気株式会社出身
プロジェクト&プログラムマネジメント(P2M)資格講習会認定講師
経営アカデミー・マスター(MOTコース)
(推理)飛行の技術:鳥の祖先
2005年12月 第1版
マネジメント・リサーチ・インスティチュート(有)
〒330−0074
さいたま市浦和区北浦和2−5−11
Mail:[email protected]
(無断での転載、転訳などを禁じます)
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