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こちら - 集団的自衛権問題研究会

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こちら - 集団的自衛権問題研究会
集団的自衛権問題研究会 News & Reviews vol.8
2015/04/01 第8号
News
&
Review
[email protected] www.shudantekijieiken.blogspot.jp
第8号の内容
一方、日米安保条約第6条のいわゆる「極東条項」では、米
●2.17公開研究会報告
軍基地を日本に置く根拠を日本および「『極東における』国
(巖谷陽次郎、塚田晋一郎、川崎哲、青井未帆)
際の平和及び安全の維持に寄与するため」としており、地
●安保法制与党基本方針要約
理的な範囲を限定している。現行のガイドラインの「周辺事
●安保法制与党合意の問題点(塚田晋一郎)
態」を政府公式見解は「地理的概念ではない」としているが、
現行ガイドラインによる日米の軍事運用の実態をみれば、
すでに日米安保条約と矛盾していることは自明である。
集団的自衛権問題研究会 公開研究会(2015年2月17日)
「安保関連法制の争点を探る」報告 昨年10月8日に発表されたガイドライン改定作業の「中
間報告」の要点は2つで、1つは「平和」な時と「戦時、有事」
まとめ:巖谷陽次郎
を切れ目なく、一体のものとして考えるという点。もう1つ
集団的自衛権問題研究会は、初の公開研究会「安保関連法
は「周辺事態」の概念そのものが削除され、活動範囲が無制
制の争点を探る」を2月17日に開催した。安保関連法制に向
限になっている点だ。要するに、いつでもどこでも、日米が
けた与党協議が進められる中、議論の構造と主たる論点を
一体化して軍事行動できるための準備を進めているという
探った。一方で有事と平時の切れ目を曖昧にし日本が「武力
ことである。
行使できる」事態を拡大する動きが、他方では日米の軍事協
なお中間報告には、新ガイドラインは日本の「『積極的平
力をグローバルに広げ「武力行使できない」としつつも実態
和主義』に対応」し、米国の「アジア太平洋地域へのリバラン
として武力行使に近づかせる動きが進んでいることについ
スと整合する」と記載されている。
「 アジア太平洋地域を重
て分析した。
視する」としている米国のリバランス政策は、部隊の配置転
まず集団的自衛権行使容認の閣議決定や安保関連法制
換等を見ると、地理的には米軍を引かせようとする動きが
と、その背景にある日米ガイドラインとの関係性を当会研
あり、その穴埋めのため自衛隊の協力が求められ、尖閣等の
究員の塚田晋一郎が報告し、
「 後方支援」恒久法など具体的
島嶼防衛、与那国への陸自の配備などの動きにつながって
な法制の問題点を当会代表の川崎哲が報告した。続いて、憲
いる側面がある。この観点からも、日本の集団的自衛権行使
法をはじめとする既存の法規範の枠組みに、昨年7月1日の
容認とガイドライン改定が密接に繋がっていることがわか
閣議決定や「存立事態」などの新しい概念を落とし込むこと
る。
の問題点に関し、学習院大学の青井未帆教授の講演を受け
今回の改定議論は、米国のいわゆる「知日派」により2012
て議論した。
年8月に出された「第3次アーミテージ・ナイレポート」を受
以下に各報告の要旨をまとめる。
け、野田政権の終盤に検討が始まっている。閣議決定の前提
にはガイドラインがあり、さらにその前提には、アーミテー
日米ガイドライン 塚田晋一郎
ジ・ナイレポートが深く関係しているという文脈も押さえ
日米ガイドライン(「日米防衛協力のための指針」。以下、
ておく必要がある。
ガイドライン)は、自衛隊および米軍の役割分担を記した行
政文書であり、文中にも明記されている通り、法的拘束力は
海外派兵恒久法 川崎哲
ない。つまり、憲法や日本の国内法はもとより、当然ながら
昨年の閣議決定で示された武力行使の「新三要件」に基づ
日米安保条約より下位にあるべきものである。本来上位に
き、
「 切れ目のない安全保障法制の整備」として3点が示さ
ある法的規範の枠外のことをガイドラインに規定すること
れた。1つ目が「武力攻撃に至らない侵害への対処」で、例え
は許されないはずである。
ば「グレーゾーン」事態は、離島警備などに対して自衛隊が
現行のガイドライン(97年改定)は、
(1)平素から行う協
治安出動、海上警備行動を発動できるよう、手続きを迅速化
力、
(2)日本に対する武力攻撃に対しての対処行動等、
(3)
するものだ。また米軍や他国軍を防備するための武器使用
日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影
も認める動きがある。
響を与える場合(周辺事態)の協力、を掲げている。
(1)は平
2つ目は「国際社会の平和と安定への一層の貢献」で、自
時、
(2)は有事、そして(3)は「周辺事態」を指す。現行のガイ
衛隊の活動範囲を限定していた「非戦闘地域」を廃し、
「現に
ドラインですでに、平時から有事までの防衛協力が規定さ
戦闘を行っている現場」以外であれば、活動できることにす
れている。これをさらに「切れ目のない」ものにするため、日
るものだ。いわゆる「後方支援」の考え方である。一方、国連
米両政府は「今年前半」を新たな完了期限として、2度目の
PKOへの協力において、
「 かけつけ警護」や「任務遂行のため
改定作業を進めている(当初は昨年末予定)。
の武器使用」という、武器使用の問題も含まれている。最後
1
集団的自衛権問題研究会 News & Reviews vol.8
の3つ目は、
「 憲法第9条の下で許容される自衛の措置」で、
他国からの武力攻撃に対して自衛権の行使として武力を
集団的自衛権の行使を認め武力行使可能な範囲を大幅に広
持って反撃するという自衛の措置であり、自衛隊法でいう
げようとするものだ。
と76条の防衛出動の場合である。自衛隊の活動のうち、防
「後方支援」のための恒久法を作るといわれているが、こ
衛出動については、
「 憲法上武力の行使はできないけれど、
れまで日本政府は「後方支援」という言葉を使うのを避けて
自衛の場合は例外的に武力行使できる」といった理由付け
きた。
「 後方支援」という言葉は武力行使との一体化の感が
がされてきた。
あるからだ。周辺事態法の際には「後方地域支援」という言
それでは、他の自衛隊の活動についてはどうだろうか。
葉を使い、アフガン戦争やイラク戦争に対する特別措置法
「自衛権ではなく警察権の行使であるので武力の行使には
の中では「非戦闘地域における支援」といってきた。ところ
当たらない」とか、
「 非戦闘地域での支援活動であり、他国
が今や「後方支援」の恒久法を作るという議論が大手をふ
の武力の行使と一体化しないから武力の行使には当たらな
るっているので、驚きである。国連決議を経ずに派遣も可能
い」とか、要は図で言うと「黒丸」の外側の活動なので、合憲
とする議論があるが、それでは何に対する「支援」かさえわ
であるという説明だ。
からなくなる。周辺事態法を改定、拡大し、対テロ戦争など
もっとも、
「 後方地域支援」など、内実としては兵站活動
の「後方支援」も含めるという議論があるが、法体系の出自
に他ならないので、他国でいえば「白地」ではなく「黒丸」
が異なるものだ。アフガンやイラクの特措法は「日本の有事
に位置付けられるような活動を、理屈をつけて「白である」
につながる」という論理ではなく「テロとの戦い」という国
と言っていたようなものなので、限りなく黒に近いグレー
際社会の共通の利益のための国際貢献という論理で行われ
だったというべきと思うが。そういうように、黒やグレーを
た。一方周辺事態法は、放置すれば日本有事に至る恐れがあ
「白」といったり、
「 黒なんだけど一点白い部分があります」
る事態に対するもののはずで、議論の枠組みが異なる。
といったりするなどしてきたために、安保関連法制の議論
「グレーゾーン」事態については、自衛隊の防護対象の拡
は複雑になっているのである。
大という問題がある。95条を改正し、
「武器等防護」の下で、
昨年の閣議決定の中で、
「 切れ目ない安全保障体制の整
自衛隊と連携して活動している米軍部隊や、オーストラリ
備」として示された三つの法整備の柱のうち、
「 グレーゾー
ア軍の武器等も、自衛隊の管理下にある武器と同じとみな
ン」事態対応や国際貢献などは、
「白地」すなわち平時の話だ
し、防護できるようにするというものだ。
が、いよいよ黒丸(有事)への接近が甚だしくなっている。
PKOについては、自らを守るということを越えて、停戦状
政府は、自衛隊が自衛の措置として防衛出動する事態と
態にあるという前提の上で能動的に「任務遂行のための武
して新たに「存立事態(新事態)」といった概念を武力攻撃事
器使用」を認める動きがあるが、どの範囲まで認めるのかが
態法や自衛隊法に盛り込む方向で調整していると報じられ
問題だ。どこまでが自己防衛で、どこからが任務遂行型か不
ている。
「存立事態」とは、
「日本への攻撃がなくとも、密接な
明瞭になる。現場では、実態としての戦闘行為に突入する可
他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の
能性さえ否定できない。自衛隊から戦死者が出るというこ
権利が根底から覆される明白な危険があれば、自衛隊の武
とが現実味を帯びている。
力行使や国民の権利制限が認められる」状況を指すという
今後、テロとの戦いの流れの中にも問題が残る。2009年
が、ホルムズ海峡での機雷掃海などもあてはまるらしく、非
の海賊処罰対処法を踏まえ、2011年、犯罪集団を取り締ま
常に幅のある、そういう意味で法律学的な成熟度の低い概
る拠点としてジブチに自衛隊の拠点ができ、警察行動とし
念である。
て一定の実力行使が認められている。今後、非国家主体であ
これまで、武力の行使にあたるか否かという、それ自体は
るテロとの戦いの中で、この実力行使が拡大される恐れが
シンプルな思考のもとに全体が組み立てられてきたもので
ある。また、仮に日本が「これは後方支援だ。戦闘に参加はし
ある。そういうシンプルな構造が意味を持つのは、一義的
ていない」と線引きしようとしたとしても、
「イスラム国」に
な事態をうまく扱える場合に限る。非常に幅の広い「存立事
よる日本人人質殺害事件にみられたように、日本が「敵」と
態」に対して「自衛のための措置」を行うとすると、真っ黒な
みなされ攻撃の対象となることはあり得る。
中の限られた「一点」だったはずのところを、幅のある曖昧
な概念にしてしまうことにもなるのだから、安保法制の枠
武力行使と存立事態 青井未帆
組み全体にも関わる変化のはずである。一から組み立て直
まず、論議の大前提として、憲法9条が武力の行使を否定
さずに、そんなことができるのか、おおいに疑問だ。
し、
「戦力」の保持も否定し、交戦権も否認しているというこ
集団的自衛権の行使を認めるための論拠は、
「安保環境の
と、これらを例外なしに定めていることを、確認しておきた
変化」ということだけである。しかもその説明は十分に閣
い。
議決定でも国会でもなされたとはいえない。閣議決定には
図で考えてみて、
「白地に黒丸」が描かれているとしよう。
「我が国をとりまく安全保障環境が根本的に変容し、変化し
白地が、国家のなし得ること全部とする。黒丸は、憲法の禁
続ける状況を踏まえれば・・・」とあるが、
「 どういう事実の
じている「武力の行使」とする。国家がなしうることのなか
変化があり、それに対しどういう対処が求められるか」とい
で、
「 武力の行使」は「できないもの」として取り除かれてい
う説明が必要だったはずである。極めて弱い論拠によって、
る。政府は、この「黒丸」の中に、ただ一点、
「白く抜かれる点」
「武力の行使にあたるか否か」を問う枠組みを、別の思考方
があると主張してきた。できないはずの武力の行使への例
法による枠組みに大転換してしまったのだといえる。
外として、武力を行使できる例外的な一点である。それが、
2
集団的自衛権問題研究会 News & Reviews vol.8
「安全保障法制整備に関する与党協議会」で
(要約)
示された「安全保障法制の基本方針」
2015年3月20日発表
5.憲法第9条の下で許容される自衛の措置 (1)自衛隊法、事態対処法関連
閣議決定及びその後の国会で示された政府の考え方を踏ま
え、事態対処法、自衛隊法における「武力の行使」の要件を精
査し、それらの条文に「新三要件」及び上記考え方を盛り込
1.全般
む。具体的には①「新三要件」によって新たに「武力の行使」
いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り
が可能となる新事態については、武力攻撃事態等との関係
ぬくため、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備
を整理し、名称・定義を現行の事態対処法に明記し、②上記
する。自衛隊の海外における活動の参加に当たっては、①実
の整理を踏まえ、自衛隊法第76条(防衛出動)及び第88条
施する活動が国際法上の正当性を有し、②国会の関与等の
(防衛出動時の武力行使)に必要な改正を盛り込み、③新事
民主的統制が適切に確保され、③自衛隊員の安全を確保す
態に対し自衛隊に防衛出動を命ずる際は、原則国会の事前
る措置を定めるという3つの方針を確立し、適切な判断を
行う。
承認を要する、という方向性で検討する。
(2)事態対処法制関連
事態対処法や自衛隊法のほか、上記を踏まえ改正が必要と
2.武力攻撃に至らない侵害への対処(米軍等の武器等の
なる関連法律の改正を検討する。
防護(自衛隊法関連))
自衛隊法第95条を踏まえつつ、我が国の防衛に資する活
動に現に従事する米軍の武器等の防護、および、①「我が国
6.その他関連する法改正事項
(1)船舶検査活動(船舶検査活動法関連)
の防衛に資する活動」として認められ、②米軍と同様な「我
周辺事態安全確保法の見直しに伴う改正を検討するととも
が国の防衛力を構成する重要な物的手段」に当たり得るこ
に、国際社会の平和と安全に必要な船舶検査活動の実施の
とを踏まえた上で、他国軍隊の武器等の防護も可能とする。
手続については国家安全保障会議を含め内閣の関与を確保
する。
法整備を検討する。
(2)他国軍隊への物品・役務の提供(自衛隊法関連)
米軍と共に活動する場面において、情報収集・警戒監視等
具体的なニーズが存在する分野についても、自衛隊が物品・役
3.他国軍隊に対する支援活動(周辺事態安全確保法関
連)
務を提供できるよう法整備を検討する。
(3)在外邦人の救出(自衛隊法関連)
我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態において
武器使用を伴う在外邦人の救出についても①領域国の同
、日米安保条約の効果的な運用に寄与すること等目的規定
意が及ぶ範囲、すなわちその領域において権力が維持され
を見直し、対応措置の改正を検討する。改正の検討にあたっ
ている範囲で活動し、②派遣手続については内閣総理大臣
て、①他国の「武力の行使」との一体化を防ぐための枠組み
の承認を要し、③在外邦人の安全を含む活動の安全な実施
を設定し、②原則国会の事前承認を要するという現行周辺
事態安全確保法の枠組みを維持することの2点を要件の前
提とする。
に必要な措置を定めることの3点を要件の前提とする。
(4)国家安全保障会議の審議事項(国家安全保障会議設置法
関連)
国際的な平和協力活動や憲法第9条の下で許容される自
4.国際社会の平和と安全への一層の貢献
(1)国際社会の平和と安全のために活動する他国軍隊に対
衛の措置にかかる審議事項等について整理し、必要な法改
正を検討する。
する支援活動(新法を検討)
この活動を自衛隊が実施できるようにするため、①他国
の「武力の行使」との一体化を防ぐ枠組みを設定し、②国連
決議に基づくか、関連する国連決議があり、③国会の事前承
認を基本とし、④対応措置を実施する隊員の安全の確保の
安保法制与党合意の問題点
塚田晋一郎
ための必要な措置を定める、という4点を要件の前提とす
る。
(2)国際的な平和協力活動の実施(国際平和協力法関連)
<政治日程ありきの与党合意>
国連PKOでの業務の拡大、及び武器使用権限の見直しを
3月20日、安全保障法制に関する自公与党協議は、
「 安全
行う。国連が統括しない人道復興支援活動や安全確保活動
保障法制整備の具体的な方向性について」と題する合意文
等の実施については、① PKO参加5原則と同様の原則によ
書を発表した。昨年7月1日の閣議決定を法案に落とし込む
り、②国連決議に基づくか、関連する国連決議等があり、③
べく2月13日から週1回ペースで再開された与党協議は、わ
国会の事前承認を基本とし、④参加する隊員の安全の確保
ずか5週間で方針の合意に至った。
のための必要な措置を定めるという4点を要件の前提とす
関連日程を確認しておく。3月26日、与党協議座長の高
る。
村自民党副総裁が訪米しワシントンで講演を行った。4月
12日・26日に統一地方選の投開票が行われる。26日に安
倍首相が訪米、27日に日米防衛・外務閣僚会合(2プラス2)
3
集団的自衛権問題研究会 News & Reviews vol.8
がワシントンで開催される。その後すぐに与党協議がごく
用で開始され、当時のアナン国連事務総長は「違法な戦争」
短期間再開され、5月中旬に安保法制を閣議決定し、国会審
と批判した。同様に、今後も国際法が守られる保証はない。
議に入る。安保法制と表裏一体の関係にある「日米防衛協力
③国会承認を「基本」としている。つまり例外がある。④隊員
のための指針」
( 日米ガイドライン)の改定作業は遅くとも
の安全確保は、例えば①で述べたような状況に巻き込まれ
6月中に完了予定。国会の会期は、すでに高村氏が「1か月強
た場合、不可能だろう。戦闘現場の実相を無視しており、机
の会期延長」に言及しており、6月24日の会期末は、8月上
上の空論に近い。
旬頃まで延長されると思われる。
このように、首相・関係閣僚の訪米日程と国内の統一地方
●国際的な平和協力活動の実施(PKO協力法改正)
選の間断を縫う非常にタイトなスケジュールで安保法制は
「国連PKOでの業務の拡大、武器使用権限の見直し」を行
進められようとしている。国会では、集中審議もなされるで
う。 PKO以外の多国籍軍による人道支援等の活動につい
あろうが、国民の理解はまったく進んでいない。最新の世論
て、①PKO参加5原則と同様の原則、②関連国連決議等、③国
調査でも、集団的自衛権行使や、今国会での成立および新た
会事前承認を基本、④隊員の安全確保、の4点が要件。PKO
な法整備そのものへの反対は過半数を超えている。その問
参加5原則は、以下のとおり。
(1)紛争当事者間の停戦合意、
題性をまず指摘し、3月20日の与党合意の概要および問題
(2)受入国を含む紛争当事者の同意、
(3)中立的立場の厳
点を以下に概観する。
守、
(4)以上の条件が満たされない場合に撤収可能、
(5)武
器使用は要員防護のための必要最小限に限る。
<与党合意の概要と問題点>
「業務の拡大」により、より危険度の高いミッションに自
冒頭の項目、
「 全般」には、公明党の強い要望により、自衛
衛隊が参加することが想定されており、武器使用基準も大
隊の海外活動に当たって、①国際法上の正当性、②国会の関
幅に拡大されるであろう。
「平和協力活動」の名の下に、戦後
与等の民主的統制の確保、③自衛隊員の安全確保、の3点が
初めて日本人が他国の民を殺す状況を生み出しかねない。
盛られた。しかし、閣議決定における「新三要件」と同様に、
与党合意には随所に抜け道が設けられており、いずれも時
●憲法第9条の下で許容される自衛の措置(集団的自衛権=
の政権による恣意的運用が可能であり、何ら歯止めになっ
自衛隊法・武力攻撃事態法などの改正)
ていない。
①「新三要件」によって新たに「武力の行使」が可能となる
新事態について武力攻撃事態等との関係を整理し、名称・定
●武力攻撃に至らない侵害への対処(自衛隊法改正)
義を現行の武力攻撃事態法に明記、②自衛隊法第76条(防
米軍および他国軍の「武器等の防護」を可能とし、その判
衛出動)、第88条(防衛出動時の武力行使)の改正、③原則国
断には「国家安全保障会議を含め内閣の関与を確保」として
会の事前承認、の方向性で検討するとしている。
いる。日本への武力攻撃がない段階で、米軍および他国軍を
「新三要件」は歯止めになっておらず、無制限の武力行使
自衛隊が守るということである。これまでの、日本が攻撃を
につながりかねない。また、自衛隊法第76条は、防衛出動は
された場合にのみ反撃するという専守防衛の概念から逸脱
「武力攻撃事態法第9条の定めるところにより、国会の承認
している。自衛隊が進んで出て行くことにより、国民の生命
を得なければならない」としている(武力攻撃事態法第9条
および幸福追求権が、むしろ損なわれることにつながる。
は事前承認が「原則」だが、
「事前に国会の承認を得るいとま
がない」場合には事後も認めている)。この点がどうなるの
●他国軍隊に対する支援活動(周辺事態法→重要影響事態
かも注意が必要である。第88条は「わが国を防衛するため、
法(仮称))
必要な武力を行使することができる」の箇所が変えられる
これまでの「周辺事態」
( そのまま放置すれば日本有事に
と思われる。
至るおそれのある事態)を廃し、
「 我が国の平和と安全に重
要な影響を与える事態」
(重要影響事態)の概念に。①武力行
●その他関連する法改正事項
使との一体化を防ぐための枠組み、②原則国会の事前承認、
「(3)在外邦人の救出」はいわゆる「テロリスト」等により
の2点が要件。しかし「原則」には当然ながら「例外」がある。
拘束された邦人の救出であるが、ISに対する米軍特殊部隊
自民党はこの「原則」を書き込むことに執着した。
の人質奪還作戦が幾度も失敗に終わっていることなどから
も、こうしたミッションに自衛隊を投入することの意義は
●国際社会の平和と安全のために活動する他国軍隊に対す
非常に疑わしい。戦闘の現場を一番知る自衛隊の機関紙で
る支援活動(海外派遣恒久法を新設)
ある『朝雲』が反論していることも想起したい。
①武力行使との一体化を防ぐ、②関連国連決議、③国会事
前承認を基本、④隊員安全確保、の4点が要件。①はこれま
集団的自衛権問題研究会 News & Review vol.8
2015年4月1日発行/編集発行責任者・川崎哲
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での「非戦闘地域」ではなく「現に戦闘が行われている現場」
以外という、地理的概念に加え時間的概念を含むものに。例
えば戦闘が休止した場所への補給任務を他国軍から要請さ
れ、出向いた時に戦闘が再開したとしても、自衛隊がただち
に撤退することは不可能だろう。自衛隊の戦争参加に直結
しうる。②は、例えばイラク戦争も、過去の安保理決議の援
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