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平成 19 年 8 月 10 日 パリ産業情報センター 駐在員 社本 朗 一般調査

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平成 19 年 8 月 10 日 パリ産業情報センター 駐在員 社本 朗 一般調査
平成 19 年 8 月 10 日
パリ産業情報センター
駐在員
社本 朗
一般調査報告書
フランス自動車産業の近況
フランス国立統計・経済研究所(INSEE)が 7 月 19 日に発表した調査によると、フラ
ンス自動車メーカーの生産、部品生産分野の活動は 2006 年において引き続き低下し
た。フランス自動車メーカーの生産台数は 2005 年に前年比 1.6%落ち込んだのに続い
て、2006 年は同 5.7%減少した。
<フランス自動車メーカーの生産状況>
自動車の世界生産台数は 2005 年に前年比 3%の伸びをみせた後、2006 年にさら
に同 4%伸ばし、約 6,910 万台になった。この伸びはとりわけ中国、インドで顕著であ
る。
ヨーロッパ全体では車の生産台数は多少伸びたが、西ヨーロッパは 1,620 万台の生
産で 1.5%伸びたにすぎなかった。その中で生産台数が著しく伸び悩んだのはイギリス
とフランスである。ドイツは一時期生産が大きく伸びたが、最近の伸びはゆるやかにな
っている。
フランス国内における車の生産台数は 320 万台(2006 年)で、前年比 10.7%の減少と
なっている。とりわけフランス自動車メーカーの生産台数が減っており、プジョー・シトロ
エンは前年比 14%、ルノーは同 11%減少した。一方、フランス自動車メーカー以外の
外国メーカー車の生産は前年比約 10%伸びている。
この結果、2006 年に初めてフランスにおけるフランス自動車メーカーの生産台数
(280 万台)がフランス以外での生産台数(310 万台)を下回った。
フランスにおける自動車生産の後退は、2004-2005 年にかけて始まり(1.6%減少)、
2005-2006 年にはさらに大きくなっている。(5.7%の減少)
<フランスにおける自動車の需要状況>
フランス国内の自動車需要は、新車の登録台数が 2004 年から 2005 年にかけて 3%
伸びるなど堅調だったが、2005 年から 2006 年には約 2%減少した。これは主に軽・普
通自動車の後退に起因するもので、とりわけ個人消費者向けの車で 3.3%の減少がみ
られた。
一方、個人消費者向け中古車市場は伸びている。中古車市場の伸びは、車の技術
向上により、個人消費者が比較的新しい中古車に投資する傾向がでてきたからと考え
られる。
新車の登録台数のメーカー別動向では、フランスの自動車メーカー、プジョー・シト
ロエンが 3%、ルノーが 10%のシェアを失ったが、反対にフィアット(イタリア)は 9%増、
メルセデス(ドイツ)は 7%増、トヨタ(日本)は 11%増など外国メーカーが市場を確保しつ
つある。(すべて前年比)
現在、フランス自動車メーカーが個人消費者向けフランス国内市場に占める割合は
55.3%(2006 年)になり、ドイツ自動車メーカーが 18%強、日本メーカー9%強、韓国メー
カー2.5%強となっている。
ヨーロッパ全体でみると 2006 年の新車登録台数は前年比 0.7%増と安定していた。
特にドイツは 4.5%増で 350 万台の登録を記録した。スペイン(6.9%増)、イタリア
(3.9%増)は 2006 年に新車登録台数を増やし、一方イギリスは 3.9%後退している。
(すべて前年比)
<フランス自動車メーカーの取組み>
フランスの自動車メーカーは、ここ数年来フランス国内及びヨーロッパで失った市場
奪回に取り組んでいるが必ずしも順調ではない。
ルノーは新モデル車の欠如が指摘されているし、プジョー・シトロエンはあまりに流
行を追いすぎたモデルチェンジがフランス国内での市場喪失に拍車をかけている。
さらに最近はフランス人消費者の趣向が中級車志向から変わりつつあり、ある消費
者は非常に安い車を望み、別の消費者は高級な4輪駆動車やスポーツ車を求めてい
る。フランスの自動車メーカーはこうした市場の推移に新しいモデルを投入して対応し
ようと努めている。
最近の良い動向として、フランス自動車メーカーの新車登録台数は今年 7 月になっ
て急増し、ルノーが前年同月比 21.6%増、プジョ―・シトロエンが同 22.2%増を記録した。
日本メーカーを含む外国メーカーも 7 月の新車登録台数を相当伸ばしているため、
フランス自動車メーカーのみが好結果というわけではないが、この傾向が続けばフラ
ンス自動車メーカーと外国自動車メーカーとの市場競争はさらに激しくなると思われ
る。
一般的には今後数年は世界的に、より小さく安い車の需要が伸びるとみられており、
フランス自動車メーカーも生産コストが安く、大きく伸びている市場の近くで活動を行う
ため、中央ヨーロッパと東ヨーロッパでの活動に力を入れている。
プジョー・シトロエンは 2006 年 10 月にスロヴァキアに工場をオープンし、フランスの
工場での生産コストより 1 台につき 500 ユーロ低い生産コストを享受している。ルノー
はダチア(ルノーの子会社)のルーマニア工場、スロベニア、ロシアでの生産を強化し
ている。
2007 年後半にはフランス自動車メーカーの多数のモデルチェンジの発表も予想され
ており、フランス部品メーカーも含めて、今後のフランス自動車メーカーのヨーロッパ市
場での盛り返しが期待されている。
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