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インド税務レポート - 日本貿易振興機構

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インド税務レポート - 日本貿易振興機構
インド税務レポート
~貿易業者による資本財調達に
関する税制上の留意点~
2014 年 3 月
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
チェンナイ事務所
進出企業支援・知的財産部 進出企業支援課
Copyright©2014 JETRO. All rights reserved. 禁無断転載
本報告書の利用についての注意・免責事項
本報告書は、日本貿易振興機構(ジェトロ)チェンナイ事務所がリテイン契約に基づき現地
会計事務所KPMGに作成委託し、2014年3月に入手した情報(2014年2月28日現在適用されて
いる中央物品税法、関税法および関連規則など)に基づくものであり、その後の法律改正など
によって変わる場合があります。掲載した情報・コメントは作成委託先の判断によるものです
が、一般的な情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありません。また、本稿
はあくまでも参考情報の提供を目的としており、法的助言を構成するものではなく、法的助言
として依拠すべきものではありません。本稿にてご提供する情報に基づいて行為をされる場合
には、必ず個別の事案に沿った具体的な法的助言を別途お求め下さい。
ジェトロおよびKPMGは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特
別の、付随的、あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無
過失責任、あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いませ
ん。これは、たとえジェトロおよびKPMGがかかる損害の可能性を知らされていても同様とし
ます。
本報告書にかかる問い合わせ先:
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
進出企業支援・知的財産部 進出企業支援課
E-mail : [email protected]
ジェトロ・チェンナイ事務所
E-mail : [email protected]
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貿易業者による資本財調達に関する税制上の留意点
1.資本財の輸入
資本財のインドへの輸入時には関税(①基本関税(Basic Customs Duty)、②相殺関
税(Countervailing Duty)、③特別追加関税(Special Additional duty))が課せられる。
資本財を輸入した場合の関税などの計算例は、下記の表1のとおりである。
(注)上記に加え、教育目的税(EC:Education Cess)、暫定教育税(SEC:Secondary
and Higher Education Cess)が課される。
(表)
No
項目
税率
計算
金額
CENVAT
クレジット対象
輸入物品
-
CIF 価格
-
評価
A
100
額
陸揚げ費用
-
輸入物品(CIF 価格)×1%
-
B
1
評価額(計)
-
A+B
-
C
101
基本関税
対象外
D
7.5%
C×7.5%
7.58
評価額+基本関税
-
C+D
-
E
108.58
相殺関税
対象
F
12%
E×12%
13.03
教育目的税
(D+F)× 2%
対象外
G
2%
0.41
暫定教育税
(D+F)×1%
対象外
H
1%
0.21
特別追加関税
(E+F+G+H)× 4%
対象
I
4%
4.89
税総額
-
D+F+G+H+I
-
J
26.12
(注)資本財の基本関税は一般的に 7.5%であり、上記においても同率にて計算を実施している。
貿易業者が資本財を輸入販売した場合、アウトプット物品税およびアウトプットサー
ビス税は発生しないと考えられることから、貿易業者は資本財の輸入に対して支払った
相殺関税および特別追加関税にかかる CENVAT クレジットを利用することができない。
しかしながら、貿易業者は相殺関税および特別追加関税にかかる CENVAT クレジット
を顧客に移転する(オプション 1)、または相殺関税にかかる CENVAT クレジットを
顧客に移転するとともに支払った特別追加関税の還付請求を行う(オプション 2)こと
ができる。
相殺関税・特別追加関税にかかる CENVAT クレジットを顧客に移転するためには、
当局に登録を行う必要がある(後述)。
なお、この貿易業者は、発行する請求書において、顧客への販売価額に対して、州付
加価値税(Valued Added Tax)または中央販売税(Central Sales Tax)を課さなければな
らない。
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(注)なお、物品の場合、基本的に同様のスキームが適用可能である。
(オプション 1)
この場合、請求書上において移転される相殺関税および特別追加関税の金額を明記し
伝達した上で、CENVAT クレジット 17.92 を顧客へ移転することとなる。具体的な数
値を用いて例示すると、以下のようになる。なお、貿易業者の負担する陸揚げ費用、倉
庫費用などおよび利益は 24.5 とする。
<販売価額>
100(CIF 価格)+7.58(基本関税)+13.03(相殺関税)+4.89(特別追加関税)+24.5(利益
など)=150
貿易業者は販売価額 150 に対して、顧客に州付加価値税または中央販売税を課すこ
ととなる。また、請求書において、相殺関税 13.03 および特別追加関税 4.89 は顧客に
移転している旨を記載する必要がある。
(オプション 2)
この場合、請求書上において移転される相殺関税の金額を明記し伝達した上で、
CENVAT クレジット 13.03 を顧客へ移転することとなる。一方、特別追加関税 4.89
については還付請求を行うことができる。具体的な数値を用いて例示すると、以下のよ
うになる。なお、貿易業者の負担する陸揚げ費用、倉庫費用などおよび利益は 24.5 と
する。
<販売価額>
100(CIF 価格)+7.58(基本関税)+13.03(相殺関税)+24.5(利益など)=145.11
貿易業者は販売価額 145.11 に対して州付加価値税または中央販売税を課すこととな
る。また、請求書において、相殺関税 13.03 は顧客に移転している旨を記載する必要が
ある。
2.Registered Importer
<導入の背景>
従来、海外から物品を購入した貿易業者を含む輸入者(Importer)は、物品税法上、
CENVAT クレジットを移転するために登録を得ることを要求されていなかった。また、
登録申請書においても輸入者というカテゴリーが記載されていなかった。
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このような状況により、本来輸入者はファーストステージディーラーの定義には該当
しないが、輸入者は実務慣行としてファーストステージディーラーとして登録を行って
きた。
<Registered Importer の導入>
上記の状況を改善するために、2014 年 4 月 1 日から有効の最近の改正では、登録申
請書において「Registered Importer」という新しいカテゴリーが含まれることとなっ
た(Notification’s 8/2014-Central Excise(N.T) dated 28th February 2014)。これに
より、2014 年 4 月 1 日からは、輸入した物品に対して支払った相殺関税および特別追
加関税を移転することを意図するすべての輸入者は Registered Importer として登録を
しなければならないこととなる。また、この Registered Importer から購入したディー
ラーがファーストステージディーラーとなる。これらを例示すると以下の図 1 のよう
になる。
なお、Registered Importer は四半期ごとに物品税当局に対して申告書を提出しなけれ
ばならない。
(注)ただし、既にファーストステージディーラー登録をしている貿易業者が 2014 年
4 月 1 日以降に「Registered Importer」としての登録を行う必要があるかにつ
いては現在明確となっていない。
(図1)
海外サプライヤー
インド国外
インド国内
Registered Importer
または
取引の流れ
ファーストステージ
ディーラー
相殺関税と特別
追加関税の移転
顧客(製造業者)
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Registered Importer またはファーストステージディーラーがクレジットを移転する
際には、Bill of Entry および海外サプライヤーによって発行された請求書とともに、移
転するクレジットの金額を明示した請求書を発行しなければならない。
Registered Importer またはファーストステージディーラーの長所と短所は以下のと
おりである。
(長所)
相殺関税および特別追加関税にかかる CENVAT クレジットを顧客に移転することに
より、両税を顧客から回収することができる。一方、顧客側では、この移転された
CENVA クレジットを製造販売時の物品税などのアウトプットクレジットと相殺できる
ため、コストにならない。
(短所)
顧客は輸入時に支払われた関税金額から逆算することにより輸入価額(仕入価額)を
把握することができ、その結果利益も把握することが可能となる。従って、Registered
Importer またはファーストステージディーラーは顧客に輸入価額および利益を知られ
てしまうこととなる。
3.特別追加関税の還付
特別追加関税を移転せずに、還付請求を行うこともできる。特別追加関税の還付を受
けるための条件は以下のとおりである。
 輸入時に特別追加関税を含むすべての税金を支払っている。
 物 品 の 販 売 時 に 発 行 す る 請 求 書 に お い て “no credit of the additional duty of
customs levied under sub-section (5) of section 3 of the Customs Tariff Act, 1975
shall be admissible”という記載を行っている。
 特別追加関税は会計上において Receivables として計上されている。
 特別追加関税は買主に対して請求されていない(例えば、販売価額の中に含まれて
いない)。
 適切に販売した物品にかかる州付加価値税または中央販売税を支払っている。
<主な書類など>
還付請求時に申告書とともに以下の提出すべき主な書類は、以下のとおりである。
 特別追加関税の支払いを示す書類(例えば、Bill of Entry など)
 輸入した物品の販売時に発行した請求書のコピー
 当局によって承認された州付加価値税または中央販売税の支払証明書
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 特別追加関税は顧客へ移転されていないということを適切に示しているという法定
監査人からの証明証
 自己証明書/宣誓書
 還付を受けるための銀行口座情報
 輸入時の請求書のコピー
 Bill of Lading のコピー
<還付期限>
特別追加関税の還付請求は、輸入時に関税を支払った日から最大 1 年以内に行われ
る必要がある。この還付請求は月次にて行うことができる。
4.High Sea Sales
一般的に、物品がインドの関税領域に到達する前に当該物品の販売契約を締結しイン
ド国内の顧客に対して販売する販売スキームを High Sea Sales という。関税は High
Sea Sales 契約のもとでの顧客の購入価額にもとづき支払われることとなる。High Sea
Sales の基本的なスキームは以下の図 2 のとおりである。なお、この High Sea Sales
では、顧客に貿易業者の輸入価額が知られてしまうこととなる。
(図 2)
海外サプライヤー
購入
依頼書
物品の発送
貿易業者(インド)
港(インド)
物品の通関
請求書
請求書
High Sea Sales
契約
顧客(インド)
1.インドにおける貿易業者は海外サプラ
イヤーに対して発注書を送る。
2.海外サプライヤーは物品を発送する。
3.海外サプライヤーは請求書と Bill of
Lading を貿易業者に対し発行する。
4.物品がインドの関税領域に到着する前
に、貿易業者は High Sea Sales 契約
を顧客と締結する。
5.顧客は Bill of Entry を自己の名前にて
申告し、その購入価額にかかる関税
を支払う。
6.物品は港から直接顧客に対して発送さ
れる。
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