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鎖肛(直腸肛門奇形) 鎖肛とは? 鎖肛(直腸肛門奇形)とは,直腸、肛門

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鎖肛(直腸肛門奇形) 鎖肛とは? 鎖肛(直腸肛門奇形)とは,直腸、肛門
鎖肛(
鎖肛(直腸肛門奇形)
直腸肛門奇形)
鎖肛とは
鎖肛とは?
とは?
鎖肛(直腸肛門奇形)とは,直腸、肛門の発生異常で、おしりに肛門が開いていない
ものから,小さな穴(瘻孔)がみられるものまで様々です.鎖肛は新生児外科疾患で最
も多い病気で 5000 出生に1人の割合で発生します。
鎖肛の患児は肛門がないだけでなく、肛門を閉める括約筋の量が少なかったり括約筋
を動かす神経の異常も合併することがあります。
治療の目的は、手術により良好な排便機能を獲得することです。そのために肛門括約
筋を最大限利用するよう工夫して手術を行います。また、術後におこり得る排便トラブ
ルを予防する排便管理も大切です。
鎖肛の
鎖肛の病型
恥骨直腸筋は特に排便機能に重要な役割をしており、よってこの筋肉と直腸盲端の位
置関係により高位、中間位、低位の3つに病型を大別しています。直腸盲端の位置が恥
骨直腸筋の頭側の場合を高位、恥骨直腸筋の筋束内の場合を中間位、恥骨直腸筋の肛門
側の場合を低位としています。高位型ほど恥骨直腸筋、外肛門括約筋など肛門括約筋の
量が少ない傾向を認めます。肛門形成術ではこの括約筋を最大限活用できるよう注意し
て手術します。
鎖肛の
鎖肛の会陰部外観
男児:肛門があるべき位置になく、その前方の会陰皮膚や陰嚢基部に細い瘻
孔、または黒い胎便が透見できる場合は低位型の肛門皮膚瘻です(図 a)。全体
の 30%と最も多いタイプです。このような皮膚に瘻孔がない場合は(図 b)中間
位、高位の可能性が高く、尿道と瘻孔を形成していることがほとんどです。中
間位型では直腸球部尿道瘻、高位型では直腸尿道瘻(図)、直腸膀胱瘻(図)があ
ります。
女児:肛門があるべき位置になく、その前方の会陰皮膚に細い瘻孔がある場合は低位
型で、特に腟の背側の前庭部に瘻孔がある肛門前庭瘻 が 30%と最も多く、中間位、高位
型は稀です。会陰部に1つの孔しかない場合は特殊型の直腸総排泄腔瘻で 10%と比較的多
く見られます(図)。
検査
会陰部の外観で鎖肛と診断できます。生後 12 時間経過すると、飲み込んだ空気は直腸に
到達するので、そのときに倒立位でレントゲン写真を撮影します(図)
。空気が到達した直
腸盲端の位置と臀部皮膚の距離が離れているときは中間位、または高位型と考え人工肛門
の適応を決定します。
肛門形成術前には、膀胱、直腸造影(図)で直腸尿道瘻の有無など正確な病型を診断し、
骨盤CT検査(図)で肛門括約筋の分布を確認し、手術に備えます。
鎖肛の
鎖肛の手術
低位型は、外瘻孔をブジーし浣腸で排便管理して、新生児期から乳児期に肛門形成術
を行います。
中間位、高位型では人工肛門を造設し体重増加をはかり、乳児期に根治手術を行いま
す。高位ほど肛門括約筋は低形成であり、手術ではその筋肉を最大限に利用する手術を
目指します (図)。
当センターでは Posterior sagittal anorectoplasty(PSARP)法という術式を工夫して
います(小児外科 2010 年 Vol.42 p1169-1172)
術後数ヶ月の期間をおき、肛門拡張が十分になったら人工肛門の閉鎖を行います。
人工肛門閉鎖後の
人工肛門閉鎖後の排便訓練
排便訓練
肛門周囲の知覚や便意がでにくい状態です。肛門括約筋のしめる力も弱い傾向にあり
ます。よって、失禁防止のため浣腸による管理を行います。
健常児でも排便の自立ができる時期はおよそ3,4歳です。発達に伴い便意という感
覚を会得し、更に生活習慣の中で排便が組み込まれて行くと、便意を感じたら適切な時
期まで排便を我慢し、適切な場所で排便をするという排便習慣を確立できます。鎖肛の
こどもも排便の自立のために浣腸を利用した排便訓練をします。
1)グリセリン浣腸の目的
1.
便を完全排泄させ残便をなくすことで失禁が軽減します。
2.
決まった時間に排泄管理することで、生活習慣の中で排便が組み込まれ、排泄に対
する意識が高まります。
3. 便貯留と排泄を繰り返すことで、直腸の伸展刺激されて起こる感覚を覚えて、患者な
りの便意を獲得するのに有効と考えられます。
2)具体的な排便訓練
人工肛門の閉鎖時期は乳児期であり、健常児でも脊髄反射による意識しない排便で失
禁状態です。手術をした乳児も排便機能の発達過程のまっただ中であり、発達段階に応
じた排便訓練が必要です。
1日2回のグリセリン浣腸でまとまって排泄させ、その間の時間帯での漏れが少ない
ように管理します。食後の時間帯の浣腸が胃結腸反射を利用できて効果的です。術後初
期は頻回に肛門周囲の皮膚に便汁が付着して炎症を引き起こします。よって術直後から
肛門周囲の皮膚保護のケアが必要です。浣腸とおしりの皮膚ケアができれば退院です。
外来の管理では、浣腸 2 回以外に漏れが減れば浣腸を1回に減量します。定時の浣腸
を工夫して昼の失禁が無いようにします。便意が出現し自力での排便が出現したら、浣
腸の頻度を減らしていきます。
排便機能の
排便機能の成績
最終目標は浣腸しなくても便意を感じて排便でき、失禁がない状態です。それに近づく
時期は低位型では幼児期、中間位型では学童期、高位型では学童期後半から思春期まで
かかります。高位型ほど便意の感覚が曖昧で、そのため浣腸が中止できる時期が遅れま
す。思春期になり精神的成熟も加わり排便機能か改善することがあります。
もともと括約筋が少ないため失禁傾向が続くお子さんもいます。その場合は洗腸を導
入します。洗腸は人肌程度に温めた水道水を使用し、肛門から注入した水を盲腸付近ま
で到達させ、結腸全体の便を排泄させることで失禁を減らすことを目指します。
鎖肛の治療は、患児が成長とともに快適な学校生活を送れるようになることが重要で
す.そのためには排便訓練が必要で、排便機能の確立のためには医療者とご家族との緊
密な連携が必要です.
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