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<啓発のためのマテリアル ∼学生・教職員に向けた啓発の取り組み

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<啓発のためのマテリアル ∼学生・教職員に向けた啓発の取り組み
<啓発のためのマテリアル
∼学生・教職員に向けた啓発の取り組み∼>
報告者:大倉孝昭先生(メディア教育開発センター)
原田美藤(愛媛大学)
木村隆幸(同志社大学)
■リソースセンターの紹介
聴覚障害に関わる様々な啓発マテリアルが作成されており、以下のようなセンターおよび
企業で販売・配布されている。
・PEPNet リソースセンター(http://prc.csun.edu/)
…アメリカの聴覚障害者高等教育支援ネットワーク(PEPNet)のリソースセンター。啓
発教材の紹介や関連情報へのリンクが充実している。
・ NTID リソースセンター(http://www.ntid.rit.edu/ntidweb/resources.php)
…今回視察に行った NTID で作っているリソースセンター。当事者、保護者、職員、雇
用者など利用者の属性ごとに情報が整理されている。
・HARRIS コミュニケーションズ(http://www.harriscomm.com)
…全米でも大手の出版社。聴覚障害関係の書籍や関連商品も広く扱っている。
・DAWN SIGN PRESS(http://www.dawnsign.com)
…手話に関する書籍やビデオを扱っている出版社。入門書から専門書まで幅広く扱って
いる。
■啓発の全体像
アメリカでの啓発の全体像として、以下の 6 点が挙げられる。
1.聴覚障害者支援のためのマテリアルでビジネスが成立している
2.多様な支援方法や支援の形があり、結果的に社会のより多くの人に聴覚障害者の支援
について理解が得られている
3.聴覚障害や手話に対する考え方が、社会の中で広く受け止められている
その一例として、赤ちゃんと会話するための手話というテーマで、相当数の書籍やビ
デオが出されている。
(例)
・「First Signs」
食べ物の名前や日常生活で使う言葉を、赤ちゃん自身が
手話で表現する様子をまとめている
・「Once Upon A Time・・・」
手話による、グリム童話の紹介ビデオ
・「Make a Difference」
聴覚障害学生支援の方法をまとめた DVD で、学校生活の中で、
教師はどういうことに配慮すればよいかがまとめられている。
4.ろう文化の理解を広めるためのジャンルがある
5.ろう芸術家の作品がある
NTID には世界中のろう者の作品を集めたギャラリーがあり、様々な芸術作品が展示され
ている。
6.ゲームとアクティビティ
・ It's a Deaf, Deaf World
【リンク・日本語訳テキストへ】
NTID のバーバラ氏(Barbara Ray Holcomb)が聴覚障害への理解啓発
のための教材として作成したシュミレーションゲーム。手話を知らない健
聴者が、様々な場面設定で聴覚障害者と接しながら、聞こえないことに対
する理解を深めていく。NTID では教職員を対象とした手話指導の中で活用
している。
ゲームは、最初に「教室」で基本的な手話単語を数種類教わってから
スタートする。聴覚障害者7∼10人がリーダー役となり、ホテル、レス
トラン、銀行、警察署など様々なシチュエーションに配置されたリーダー
と、与えられた課題に沿ってセッション(やり取り)を行う。自分の意見や用件を熱意を
もって伝えられればポイントが獲得できる。一方、音声で話をした場合は減点の対象とな
るほか、ゲーム中に非常事態(原発事故やハリケーンなど)のアナウンス(手話による放
送)があった場合は、自ら情報収集をして対応しなければならない。会場の一角には、唯
一声で話をしてもよいスペース、
「聴者クラブ」があるが、実際に利用する参加者はほとん
どいないという。
最後に、ゲームを通して何を得られたか、参加者同士でディスカッションを行う。
・Part of a Group …学校で実施出来るゲームを紹介した本で、1ゲーム 45 分未満で実行
できるように作成されている
・American Sign Language Activity …手話を教えるための 101 のゲームやアクティビテ
ィを紹介した本で、これも主に教育現場を対象に
している。
■アメリカのマテリアルを日本で利用するために
これまで紹介したようなマテリアルを日本で視聴するためには、まず現物を輸入という
形で入手する必要がある。加えて、DVD そのものを加工することなく日本語字幕を挿入で
きるシステムを作ることで、日本でもより多くの人にこれらのマテリアルを手にしてもら
うことが可能となる。今後、NTID と PEPNet-Japan の協同で、このような日本語字幕入
り教材を作成・配布していく予定である。写真はエクセルを用いて字幕を挿入するシステ
ムで、字幕挿入作業の円滑化のため、現在開発中である。
■学生生活支援の中で実施されている啓発活動の例
・カウンセラーチーム/学生生活センター/Student Life Team(SLT)
NTID では、専門のカウンセラーチーム、学生生活センター、SLT がチームを組んで、
聴覚障害学生の学生生活を様々な面からサポートしている。
・クラス
アクト(http://www.rit.edu/%7Eclassact)
教職員向けに作成された、大変充実した web サイトで、聴覚障害学生を指導する際に必
要な知識が紹介されている。
・DVD「Two Worlds」
聴覚障害学生と接することで感じた体験を、様々な角度から紹介している DVD。RIT 全
体の学生オリエンテーションで使用されており、学生はこれを視聴した後に、感想等をデ
ィスカッションする。
■正課の活動として
・演劇活動
聴覚障害学生、健聴学生が協同で行う活動が多く取り入れられている
■課外活動として
・ボーリング大会
・2 晩連続オンラインゲーム大会
学内のホールを使用し、学生主催で開催されるオンラインゲーム大会。ゲーム中のコミ
ュニケーションは全てチャットで行われ、聴覚障害学生も健聴学生も一緒に楽しめるよう
に工夫されている。
ろう学生への支援の他、健聴
学生や教職員への啓発の成果
として、聴覚障害学生を理解し
ようとするスタンスを持てた
学生が増えたとのこと。
■支援のスタンス
視察中に出会った関係者の言葉から、これらのマテリアルの存在を裏打ちする、アメリ
カの支援スタンスが窺えた。
・聴者、ろう者を問わず、学生が同じ時間作業を共有できる環境作りが重要である。
・
「世界の違う両者が接することは自分たちの成長の機会だと認識できるという考え方を持
つことが重要である。」
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