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形状記憶合金のマイクロ切削加工技術に関する研究
11.形状記憶合金の マイクロ切削加工技術に関する研究 要 所属:ものづくり開発部 氏名:平山明宏 旨 形状記憶合金は、通電加熱などの加熱冷却により、変形させた形状が元の形状に回復する 形状記憶効果を有する材料であり、マイクロアクチュエータの駆動源として有力視されてい ます。本研究では、マイクロポンプなどのマイクロデバイスの開発を目指して、TiNi 形状記 憶合金にマイクロ切削加工技術を適用し、マイクロ切削加工条件が TiNi 形状記憶合金の材 料特性に及ぼす影響について明らかにしました。 ポイント ●形状記憶合金へのマイクロ切削加工技術の適用 形状記憶合金のマイクロアクチュエータの開発を目指して、複雑な工程かつ作製形状が制 約されるなどの課題がある半導体製造技術よりも、中小企業においても技術導入がし易い極 小径工具を用いたマイクロ切削加工技術を TiNi 形状記憶合金に適用しました。 ●TiNi 形状記憶合金のマイクロ切削加工実験 直径 0.4 ㎜の極小径ボールエンドミル工具を用いた TiNi 形状記憶合金のマイクロ切削加 工実験の結果、工具磨耗量の加工特性だけでなく工具の回転数が形状記憶合金の相変態挙動 に及ぼす影響などの形状記憶効果の性能を左右する材料特性についても明らかにしました。 内 容 温度 (℃) (a)オーステナイト相(B2相) Ti原子 Ni原子 M相変態開始温度 M相変態終了温度 冷却 加熱 変形 (b)マルテンサイト相(M相) (c)変形したマルテンサイト相 図 1 形状記憶合金のメカニズムを示す模式図 図 2 マイクロ切削加工前後の形状記憶合金 の結晶構造解析(工具回転数の影響) (1) R 相(マルテンサイト相の一種)の TiNi 形状記憶合金にマイクロ切削加工を行った結果、 加工表面で M 相(マルテンサイト相)と B2 相の混在相へと結晶構造が変化しました。ま た、工具の回転数が大きくなると、B2 相への逆変態が顕著となり、形状記憶効果の発現に 不利な状態へと変化することが分かりました。 (2) 工具の回転数が大きくなると、工具の磨耗量が増加することが分かりました。 TiNi 形状記憶合金のマイクロ切削加工では、形状記憶効果の発現に起因するマルテン サイト相の存在が見られるとともに、工具の磨耗が抑えられる低い工具の回転数の条件 での加工が適していることが明らかとなりました。 ※ 本研究は、平成21年度産学インキュベート事業として、(財)新産業創造研究機構、(有)堀口 鉄工所、兵庫県立大学、兵庫県立工業技術センターが共同で取組んだものです。 (参考)ポスター展示内容 研究背景 形状記憶合金は、加熱することで変形させた形状が元の形状に回復する材料であり、マイクロポンプなどのマイク ロマシンの駆動源として有力視されています。本研究では、形状記憶合金のマイクロアクチュエータの開発を目指し て、中小企業においても技術導入がし易い極小径工具を用いたマイクロ切削加工技術をTiNi形状記憶合金に適用しま した。 ● 形状記憶合金とは? 温度 (℃) ● マイクロ切削加工技術 (a)オーステナイト相(B2相) Ti原子 Ni原子 M相変態開始温度 M相変態終了温度 冷却 加熱 極小径工具の刃先 変形 (b)マルテンサイト相(M相) (c)変形したマルテンサイト相 図2 マイクロ切削加工装置 (3次元形状精密加工装置) 図1 形状記憶合金のメカニズムを示す模式図 形状記憶合金の「形状記憶効果」は、上図に示 すマルテンサイト変態という結晶構造の変化が大 きく関わっています。 0.2mm 極小径工具を高速に回転させて、切込み量や送り量をミクロ ンオ ダ で高精度に制御して切削加工する機械加工技術 ンオーダーで高精度に制御して切削加工する機械加工技術 実験結果 ~工具直径0.4㎜のボールエンドミルによるTiNi形状記憶合金(Ti-48at.%Ni R相)へのマイクロ切削加工実験~ ● 工具回転数/分がTiNi形状記憶合金の 結晶構造に及ぼす影響 ● TiNi形状記憶合金のマイクロ切削加工特性 (マイクロ切削加工後の工具磨耗量や加工表面粗さ) 工具の底刃のSEM観察写真 工具磨耗幅 工具の磨 磨耗幅,μm 100μm 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 i 0m 00 40 図3 マイクロ切削加工表面のTiNi合金のXRDパターン 表面粗さ PV値,μm 表 120000min-1 切削工具 (ボールエンドミル) TiNi合金 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0 05 0.05 0 -1 -1 n 60 in 0m 00 -1 in 0m 00 80 mi 00 00 12 -1 n 図4 マイクロ切削加工後の工具観察 1 1 ピックフィード ヒ ックフィ ト t100μm 5㎜ 1 図5 マイクロ切削加工後の表面粗さ(PV値) ● マイクロ切削加工サンプルの形状記憶挙動 3㎜ 3㎜ 1 nnnnmi mi mi mi 00 00 00 00 0 0 0 0 0 40 60 80 12 表・裏面を除去 図6 マイクロ切削加工品(TiNi合金)の形状記憶挙動観察 まとめ ●マイクロ切削加工表面の結晶構造は、R相単相からM相とB2相の混在相 と変化する。 ●マイクロ切削加工表面の結晶構造は、R相単相からM相とB2相の混在相へと変化する。 高速回転なほどB2相への逆変態が顕著となり、形状記憶効果の発現に不利な状態へと変化する。 ●高速回転なほど、工具の磨耗量が増加する。 ●マイクロ切削加工表面の粗さは、PV値で0.3μm以下の良好な加工面が得られる。 ●マイクロ切削加工品において、形状記憶挙動を確認。 本研究は、平成21年度産学インキュベート事業として、(財)新産業創造研究機構、 (有)堀口鉄工所、兵庫県立大学、兵庫県立工業技術センターが共同で取組んだものです