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計器 - 日本気球連盟
第 3 章 計器 3.1 高度計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1) 気圧高度計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2) 高度計の原理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-1 3-1 3-1 3.2 昇降計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-3 3.3 GPS ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1) GPS の原理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2) GPS 受信機 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3) 測地系の設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4) 座標系の設定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5) 航跡の記録と表示 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-5 3-5 3-6 3-7 3-7 3-8 3.4 球皮内温度計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3-10 NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 第3章 計器 3.1 高度計 1)気圧高度計 一般的に熱気球で使用される高度計は気圧高度計である。すなわち、気圧高度を示す高度計 であり、絶対高度を表示するものではない(第 4 章航法参照)。したがって、基本的には、気圧計で あり、気圧と高度の関係から高度を表示するようになっている。 2)高度計の原理 以前は、機械式のアネロイド高度計がほとんどであったが、最近は半導体圧力センサーを利用 したデジタル式のものが一般的である。ここでは、両者について、簡単に説明する。 • アネロイド高度計 航空機にも使用されているもので、アネロイドと呼ばれる真空の密閉容器(空ごう)が 気圧の変化により膨張したり、収縮したりする動きを増幅させて針を動かすものである。 このとき、指針の動きが、高度を示すように工夫されている。ちなみに、アネロイドと はギリシャ語の「液体がない」という意味である。 原理的に電源を必要としないので、電池は不要である。 アネロイド高度計 (左下のつまみがゼロ点調整用つまみ。1000ft で長針が 1 回転する) NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-1 アネロイド (真空の密閉空ごう) 静圧 指針 ギア等により回転に変換 固定端 支点 (1) アネロイド高度計の模式図 高度が高くなると、気圧が下 がりアネロイドが膨張。この 膨張分を針で表示する。 膨張 (2) アネロイド高度計の動作原理の模式図 アネロイド高度計の動作原理 • 電子式高度計 最近一般的に使用されているデジタル表示の高度計は、気圧の測定を半導体圧力セン サーにより行っている。半導体圧力センサーは圧力を電気信号として取り出すことが可 能で、この信号を演算して高度表示としている。アネロイド高度計に比べて、小型にで きるメリットがあるが、電源を必要とするため交換用の電池を常備しておくなどの対策 が必要である。また、極低温の状況下では液晶が正常に表示されなくなったり、バッテ リーの電圧低下も起こるため、寒冷地や高高度での飛行時には注意が必要である。また、 無線機が近くにある場合、誤作動することもあるので、注意が必要である。 *最近は、腕時計や GPS にも気圧高度計機能搭載されているものがあるが、すくなくとも、 リアルタイムで高度が表示される高度計の搭載が必要である。 NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-2 3.2 昇降計 昇降計は上昇率、降下率、すなわち高度の時間変化を示す計器である。したがって、大気圧の 時間変化を測定することで、高度変化を表示している。 気圧高度計同様、従来は機械式の昇降計がほとんどであったが、最近は電子式高度計の一つ の機能として組み込まれているものが一般的になっている。以下に、両者について、簡単に説明す る。 • 機械式昇降計 航空機でも一般的に使用されているもので、次ページに示す模式図のように昇降計の ケース内のダイヤフラムがケース外の空気と接続されているとともに、毛細管によりケ ース内の空気と接続されている構造になっている。またケース内の空気は基本的に密封 されていて、毛細管を通してダイヤフラムと接続されている。 上昇時を例に動作を説明すると、ケース外部の気圧が下がるため、ダイヤフラム内の 気圧が下がる。これに対して、ケース内は毛細管を通した空気の出入りしかないため、 ケース外の気圧と同じになるには、時間がかかる。そのため、一時的にダイヤフラム内 外での圧力差が生じ、ダイアフラムは収縮することになる。この変化を指針に伝え上昇 率を表示する。高度変化が終了して十分時間がたつと、ケース内の気圧はダイヤフラム 内の気圧と同じになり、指針はゼロにもどる。 同様の原理のもので、ケースが大気に接続され、基本的に密封されたダイヤフラムが 毛細管を通じてケース内の空気と接続されているものもある。この場合は、ダイヤフラ ム内の気圧変化のほうが、ケース内の気圧変化より遅れることから、気圧変化を表示す ることができる。その他、機械式の昇降計として、いくつか種類があるが、ここでは説 明を省略する。 機械式昇降計 NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-3 高度が変化すると静圧が変化しダイヤフラム内の 気圧が変化する。これに対して、ケース内は毛細 管を通した空気の出入りしかないため、一時的に ダイヤフラム内外での圧力差が生じる。 これを指針に伝え、上昇下降率を表示する。 高度変化が終了して十分時間がたつと、ケース内 の気圧はダイヤフラム内の気圧と同じになり、指 針はゼロにもどる。 指針 支点 ダイヤフラム 毛細管 静圧 機械式昇降計の動作原理の模式図 • 電子式昇降計 一般的に。電子式の昇降計として独立していることはなく、電子式の高度計の 1 機能 として上昇/降下率を表示するものが多い。これらは、高度の値を演算して高度変化率 を表示している。そのため、実際の動きよりは表示が遅れる(タイムラグが発生する)の で、注意が必要である。 このように、高度計と昇降計を 1 つのケースに収納できるメリットがあるが、電池が なくなると、すべての情報が得られなくなるので、バッテリーのインジケータを確認し、 早めの交換が必要である。また、交換用の電池の携帯も必須である。 電子式高度計/昇降計 NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-4 3.3 GPS GPS とは Global Positioning System の略で、汎地球測位システムと呼ばれるものである。 基本的には、人工衛星から発信される電波を受信することで、位置を正確に求めるシステ ムであり、カーナビや携帯電話などの民生機器にも利用されているが、もともとは、米国 国防総省が軍事用として開発したシステムである。衛星の配置状況や電波の受信状態がよ ければ、10m 程度の精度で位置の特定が可能である。 このように、GPS というのはシステム全体の名称であり、気球で一般的に GPS と呼ばれ ているのは、ハンドヘルド GPS 受信機のことである。これらは、現在位置を示すだけでは なく、速度、進行方向、目的地までの距離、時間などを表示するようになっている。また、 機種によっては、気圧高度計や電子コンパスを内蔵しているものもある。 以下に、GPS について簡単に説明する。 1)GPS の原理 GPS の原理を簡単に説明すると、各人工衛星から、その衛星の場所と時刻が発信され、 それを地上の GPS 受信機で受信し、発信時刻から受信時刻までの時間から距離を計算する。 これを、4 個の人工衛星からの情報にに対して行うことで、位置を特定するものである。 下図のように、人工衛星は地球の周囲の 6 軌道面に各 4 個ずつ合計 24 個配置されている。 各人工衛星は、非常に正確なセシウム原子時計を搭載していて正確な時刻を送信する。こ れは、時間差から距離を計算するシステムの根幹をなす部分である。同時に、各衛星は、 自分自身の位置情報と、他のすべての衛星の概略情報を送信する。(そのため、GPS 受信機 で最初の衛星からの情報が得られたあとは、2 個め以降の衛星を捕捉しやすくなる)。一方、 受信側もある程度正確な時計が必要である。なぜならば、時間差から距離を計算するため である。仮に、受信側も、人工衛星に搭載しているのと同じ精度の原子時計が搭載されて いれば、3 個の衛星からの情報により、位置を特定することが可能である。しかし、実際に は、受信側の時計はクオーツ時計であり精度はそれほどよくないので、3 個の衛星からの情 報だけでは、誤差が大きく、位置を特定することができない。そこで、4 個目の衛星からの 情報により、誤差分を計算し位置を特定することになる。そのため、GPS で位置を特定す るためには、4 個の衛星からの情報が必要になる。ただし、3 個の衛星からの情報しか捕捉 できない場合でも、地球表面上にいることを仮定すれば位置の特定は可能になる。また、 できるだけ多くの衛星からの情報を捕捉した方が、より精度の高い位置の特定が可能にな る。 地球の周りの6つの軌道面に4個ずつ、合計24個の人工衛星 が配置されている。各衛星は12時間で1周している。 GPS衛星の配置のイメージ図 NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-5 2)GPS 受信機 気球では GARMIN 製の GPS 受信機が一般的に使用されている。GARMIN 製のものだ けでも何種類も発売されており、機能や価格から自分の目的にあったものを選ぶことにな る。ここでは、気球で役に立つ GPS の機能について簡単に説明する。詳しい機能説明など はメーカーのウェブサイト等で確認できる。 • 現在位置表示 設定により、緯度/経度、UTM 座標系などを選択できる。 • 時刻表示 衛星からの情報の捕捉状態にもよるが、正確な時刻表示が可能である。 • 速度 現在位置の変化から速度を計算して表示する。気球で速度を知る方法としてはもっと も手軽で正確な方法である。 • 進行方向 現在位置の変化から進行方向を計算して表示する。 • 目的地までの距離、方向、進行方向からのズレ、到達時刻 事前に目的地を登録することで、目的地までの距離、方向等を表示することができる。 競技飛行でよく使用される機能で、この場合、ゴールを目的地として設定する、 。 • 航跡図の表示、記録 航跡図をリアルタイムに表示するだけでなく、パソコンへデータを転送することで、 地図ソフトなどで航跡図を確認することができる。機種によっては、高度情報も記録 されるので、航跡を 3 次元的に確認できる。 その他にも、さまざまな機能があるが、ここでは省略する。 ガーミン製 GPS (写真の機種は GPSMAP76S) NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-6 3)測地系の設定 GPS を使用する場合、測地系を正しく設定しなければならない。この設定を誤ると、地 図と GPS の表示がまったく異なることになるためである。GARMIN 製の GPS 受信機では Map Datum として設定するものであるが、日本では基本的に下記のどちらかに設定するの が一般的である。 • TOKYO: 日本測地系。2002 年 4 月の測量法改正まで日本で採用されてきた測地系で、従来の日 本地図等はこの測地系に基づいて作成されていた。 • WGS84: 世界測地系の 1 つで、GPS は基本的にこの測地系で運用されている。 測量法改正後に日本で採用された新しい測地系とほぼ同じである。そのため、今後は WGS84 を使用するのが一般的になると考えられる。 基本的には、使用する地図の測地系にあわせて、GPS の MapDatum を設定する。例え ば、競技地図のデジットと対応させる場合は、デジットがどの測地系に基づいているかに より、GPS の MapDatum を設定する。また、海外でフライトする場合も、その地図の測 地系にあわせて MapDatum を設定する。GARMIN の GPS 受信機は、ほとんどの測地系を サポートしているので、リストから選択することで設定が可能と思われる。 4)座標系の設定 GPS で位置を表示するときの座標のことであり、一般的に緯度経度か、UTM を使用する。 GPS 受信機では Location Format 等として設定する。 • 緯度経度 最も一般的な座標系である。国土地理院の地形図は、基本的に緯度経度の座標を系 で作成されているので、GPS を緯度経度表示にしておけば、地図上の位置と容易に対 応させることができる。 基本的に 60 進数であるが、どの桁から 10 進数を使用するかにより、いくつかの設 定があるので注意が必要である。 ○○度○○分○○.○○秒 :秒の小数点以下を 10 進数表示 ○○度○○.○○分 :分の少数点以下を 10 進数表示 ○○.○○度 :度の小数点以下を 10 進数表示 • UTM/UPS UTM/UPS 座標系は以下の基準で座標が決められている。 • UTM は北緯 84 度から南緯 80 度の範囲で、UPS は極地帯で使用される座標系。 • 経度 180 度から、東回りに 6 度幅のゾーン(帯)に分割され、各ゾーン内で座標が設 定される。日本付近では 52 帯~55 帯となる。 • 座標系の原点は各ゾーンの中央子午線と赤道の交点である。 日本付近のゾーンの中 央子午線は東経 129 度(52 帯)、135 度(53 帯)、141 度(54 帯)となる。 • 座標値の単位はメートルで、横軸は東に行くほど数値が大きくなり、縦軸は北に行 くほど数値が大きくなる。 • 北半球では原点を(500,000m、0m)とする。 • GPS 受信機では 54S/269206/4014660 のように表示される。 これは、 「54 帯」 、 「中 央子午線(東経 141 度線)から西に 230794m(500000-269206)m」 、 「赤道から北に 4014660m」の位置を表す。 国土地理院発行の地形図では緯度経度が使用されているが、競技地図のほとんどは地形図 上に UTM 座標系に基づいたデジットが引かれている。UTM 座標系では座標値がそのまま メートル単位になるので非常に利用しやすい座標系である。そのため、気球では UTM 座標 系を利用されることが多い。ただし、国によっては、地図自体が UTM 図法で作成されてい ないため、UTM 座標系を使用できないことがあるので注意が必要である。 NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-7 5)航跡の記録と表示 前述のように、多くの GPS 受信機ではリアルタイムに航跡を表示するとともに、航跡デ ータを記録する機能がある。したがって、飛行終了後、航跡データをパソコンにダウンロ ードすることにより、地図上に航跡図を表示することができる。ここでは、カシミール 3D を使用して、国土地理院発行の数値地図に航跡図を表示させた例を示す。このようにして、 航跡図を確認することで、効率よく、フライトの検証をすることができる。 航跡図を表示することが可能なソフトの代表的なものとしては下記のものがあげられる。 • カシミール 3D (http://www.kashmir3d.com/) フリーソフトであるが、地図データは別途入手する必要がある。ただし、書籍版を購 入すると、ソフトの詳細な使い方の説明が記載されているとともに、付属の CD-ROM にプログラムと、地図データとして国土地理院 5 万分の 1 地形図、20 万分の 1 地形図 が収録されているので、初めての方にはお勧めである。 • Ozi Explorer (http://www.oziexplorer.com/) シェアウェアソフトであるが、デモ版で使い勝手を確認してから購入することができ る。これも、地図データは別途入手する必要がある。Windows CE 版もあるので、PDA での使用が可能である。ただし、日本語対応はされていない。 • その他の地図ソフト 市販の地図ソフトの多くに、GPS 連携機能があるため、GPS を接続することで、現在 地を表示し、航跡を表示させることができる。ただし、ほとんどの場合、GPS 受信機 に記録された航跡データをダウンロードして、地図上に表示させる機能はない。したが って、その場合には変換ソフトを利用して、当該地図ソフトの航跡ファイルのフォーマ ットに変換する必要がある。変換ソフトはフリーソフトとして、提供されていることが 多いので、探してみるのも手である。当然、変換ソフトを作製することも可能と思われ る。 NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-8 国土地理院の数値地図 50000(地図画像)『古河』 カシミール 3D を使用して航跡を表示した地図画像 (赤線が航跡) NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3-9 3.4 球皮内温度計 熱気球は球皮内外の温度差により浮力を得て飛行するので、球皮内温度計はある意味では、 最も基本的な計器である。 球皮内温度計測の最大の目的は、球皮への負荷をモニターすることであるため、最高温度 にさらされる天頂部リップ付近の温度を計測する。したがって、温度計のセンサー部は天 頂部付近に取り付ける。これに対して、実際に温度を表示させる表示部はバスケット内に 配置するため、この間の配線が必要になる。ただし、一部には無線式のものもあり、天頂 部に発信機を取り付け、手元の表示部まで信号を飛ばすものである。いずれにしても、温 度測定は、熱電対もしくはサーミスタで計測するのが一般的である。 熱電対、サーミスタによる温度測定原理の詳しい説明は省略するが、熱電対は、一方の端 部を接合した2種類の金属線の、両端の温度差により、電位差が生じる事を利用して温度 を測定するものである。それに対して、サーミスタは、半導体抵抗温度センサーのことで 温度による電気抵抗の変化を利用して温度を測定するものである。 低温 金属A V 高温 金属B 一方の端部を接合した2種類の金属線の、両端の温度が異なると熱起電 力により電位差が生じる。この電位差を測定し、換算することで温度を 計測することができる。 熱電対温度計の仕組み NKR-PHB-Ver.3.0 第 3 部 3 章 Rev.1.00 3 - 10