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平成28年7月分 シンガポールの労務事情 他

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平成28年7月分 シンガポールの労務事情 他
No.051
シンガポール駐
駐在
在員
員事
事務
務所
所情
情報
報
平成 28 年 7 月 1 日
伊予銀行 シンガポール駐在員事務所
<経済>
シンガポールの労務事情
東南アジアに複数拠点を持つ企業が増え、
「統括拠点をどこに置くのが良いか」という相談を受
けることが増えました。いくつか比較するポイントがありますが、その中でとかく目が行きがち
なのが税制優遇や外資規制ではないでしょうか。一方、実際にオペレーションを始めると軽視で
きないのが人事、労務の問題です。
東南アジアに限れば、統括拠点の候補地として有力なのはシンガポール、マレーシア、タイで
す。この 3 国を「解雇」というキーワードで比較すると、以下の表のようになります。
普通解雇
シンガポール
マレーシア
タイ
正当な理由は不要。契約上定め
正当な理由が必要とされて
「公正な理由」が必要とされ
る予告通知期間又はその期間
いる
ている
予め定める懲戒事由に該当す
懲戒解雇するためには、一定
労働者に法律上定められた
る場合には、通知期間を設けず
の聴聞手続きを経なければ
非違行為がある場合は、懲戒
に懲戒解雇を行うことが可能
ならない
解雇できる
分の給与を支払えば解雇可能
懲戒解雇
こうして比較してみますと、シンガポールが最も雇用者にとってオペレーションしやすい国だ
ということが分かります。ただし、シンガポールの労働局である MOM(Ministry of Manpower)
は、労働者が雇用者に不当な扱いを受けていないか常に目を光らせていますので、例えば「MOM
のレギュレーションに則った就業規定を整備し、適正に運用する」という基本をおろそかにする
と、後々大変なことになりますので侮ってはいけません。
また、
「優秀な人材をいかに確保するか」というテーマではどうでしょうか。教育水準という点
では、やはりシンガポールが突出しています。ただ、昨今シンガポールでは日系企業の人気が低
下しており、高い給料を払うか、何かしらのインセンティブを与えないと優秀な人材に長期間働
いてもらうことは難しいのが実情のようです。日本の本社で数十年前に制定された人事評価制度
をとりあえず当地に持ち込んだ結果、給与とパフォーマンスをタイムリーに連動させることがで
きず、本当は優秀なローカルスタッフのパフォーマンスが下がってしまったり、早期退職の原因
になったりする、というケースはよく聞きます。逆説的になりますが、当地の労働マーケットに
合った人事評価制度を制定し、できるだけ短いサイクルで回すだけでも、従業員の定着率やパフ
ォーマンスが上がる、ということのようです。
シンガポールに限らない話ですが、日本人従業員に対してであれば許されるかもしれない「曖
昧さ」の部分は、海外では通用しないと考えた方が良いでしょう。海外に拠点を出すことを検討
される際は、是非「労務・人事」面の重要性も意識してご検討ください。
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No.051
シンガポール駐
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在員
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事務
務所
所情
情報
報
平成 28 年 7 月 1 日
伊予銀行 シンガポール駐在員事務所
ASEAN 経済共同体(AEC)の発足
昨年12月、ASEANに加盟する10カ国は、FTA(自由貿易協定)を高度化し、域内競争力を高
めるため、ASEAN経済共同体(AEC)を発足させました。総人口6億2,000万人、域内名目GDP2.5
兆ドルの大きな経済圏が本格始動したことで、ASEAN域内外で注目を集めています。
AECは、①単一市場と単一生産基地(関税撤廃等)、②競争力のある経済地域(インフラ開
発等)、③公平な経済発展(域内での格差是正等)、④グローバル経済への統合(FTAの推進
等)4つの戦略目標を掲げて、これらの達成のため、「モノ・ヒト・サービスの自由化」を進
めることとしています。
【モノの自由化】
加盟6カ国(シンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイ、インドネシア、フィリピン)間
では、2010年に一部の品目を除いて関税が全撤廃されています。後発の4カ国(カンボジア、
ラオス、ミャンマー、ベトナム)においても、2018年までに例外を除く全品目の関税が撤廃
される見込みです。関税の撤廃により、ASEANを一つの生産基地として位置づけた域内分業の
動きが加速しています。例えば、労働集約的な生産工程の一部をタイからカンボジアやラオ
ス等の周辺国への移転する動きなど、新たなサプライチェーンが生まれています。
加えて、域内では積極的なインフラ整備が進められています。日本も国際協力している、
ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーのインドネシア半島の南部地域を東西につなぐ「南
部経済回廊」もその一つです。一方で、国内保護のための輸入許可の厳格化といった非関税
障壁の撤廃にはほとんど進展が見られないため、関税撤廃のメリットを打ち消してしまう可
能性も指摘されています。
【ヒトの自由化】
ASEAN出身者の域内移動は既に短期滞在ビザが不要になっており、観光業への好影響が期待
されています。また、熟練労働者の移動の自由化も議論されていますが、優秀な人材が給与
の高い国に集まってしまう弊害もあり、明確な方針はまだ出されていない状況です。
【サービスの自由化】
シンガポールとカンボジアを除いて、域内には外資規制が厳しい国が多く、サービスの自
由化に向けた取組みは遅れています。ASEAN資本企業に対しては外資出資比率を70%まで開放
するなど、規制緩和に向けた議論が続けられていますが、こちらも結論を得るには時間を要
しそうです。
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平成 28 年 7 月 1 日
伊予銀行 シンガポール駐在員事務所
シンガポールの見本市情報
Marina Bay Sands
名称
期間
SINGAPORE INTERNATIONAL WATER WEEK 2016
07 月 10 日~07 月 14 日
WORLD CITIES SUMMIT 2016
07 月 10 日~07 月 14 日
TOURISM TECHNOLOGY ASIA 2016
07 月 20 日~07 月 21 日
SINGAPORE INTERNATINAL JEWELRY EXPO 2016
07 月 21 日~07 月 24 日
rd
The 3
Manufacturing Processes for Medical Technology
08 月 31 日~09 月 02 日
Exhibition and Conference
Build Eco Xpo Asia
09 月 07 日~09 月 09 日
Mostra Conbegno Expoconfort Asia 2016
09 月 07 日~09 月 09 日
Suntec
名称
th
The 10
Occupational Safety + Health Asia
期間
08 月 24 日~08 月 26 日
Singapore Expo
名称
期間
該当なし
*上記の見本市は予定が変更になる場合もありますのでご留意ください。
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平成 28 年 7 月 1 日
伊予銀行 シンガポール駐在員事務所
★トピックスレポート(シンガポール人スタッフ便り)★
ラマダーン(断食の月)
イスラム教徒には、宗教上の義務として課された 5 つの行為(五行)があります。五行は、①
信仰告白、②礼拝、③喜捨、④巡礼、そして⑤断食を指し、その中の一つである断食はラマダー
ンに行われます。ラマダーンはイスラム暦(ヒジュラ暦)の第 9 番目の月を意味しており、その
月に世界中のイスラム教徒が断食するのです。
「断食」と言っても昼夜を問わず断食するわけではなく、日の出から日没までのあいだ断食し、
日没から日の出までの間に 1 日分の食事を摂るのが通常です。ラマダーンはコーラン(イスラム
教の聖典)において啓示されており、イスラム教徒にとってとても重要なものと考えられている
のです。
ラマダーンの断食は飲食を控えるだけに留まりません。喫煙、投薬をはじめ、喧嘩することな
ども控えなくてはならない、とされています。基本的に、断食は全てのイスラム教徒に課せられ
ますが、乳幼児や妊婦、高齢者、病人、旅行者などには例外的に適用除外されます。
(富裕者層の
中にはあえてこの時期に海外へ旅行する人もいるのだとか)
今年のラマダーンは 6 月 6 日から 7 月 5 日までです。ラマダーン明けの 7 月 6 日はハリ・ラヤ・
プサヤ(マレー語で「偉大な断食の日」の意)というイスラム教徒最大のお祭りが開かれ、シン
ガポールでは祝日となっています。この日はシンガポール各地のモスクや広場にはイスラム教徒
が大勢集まり断食明けの礼拝を行い、その後、親類や友人の家を訪問して断食明けを祝います。
親類や友人とは、握手をしながらお互いの罪を許しあう挨拶を行うのが恒例行事となっています。
シンガポールは多民族国家であり、主な民族構成は、中華系が 70%強、マレー系が 10%強、イ
ンド系が 10%弱となっています。イスラム教は主にマレー系住民によって信仰されていますが、
必ずしも多数派ではない宗教のお祭りも祝日としてしまうところは、ダイバーシティ先進国であ
るシンガポールの懐深さかも知れません。
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