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「ロボット手術の現状と未来」記者懇談会

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「ロボット手術の現状と未来」記者懇談会
報道関係各位
2010 年 3 月 16 日
「ロボット手術の現状と未来」記者懇談会
~3台目のダ・ヴィンチ(手術ロボット)導入にあたって~
いま、ロボット手術を取り巻く状況が大きく変わりつつあります。ここ数年の間に海外
において手術ロボットは急速に普及しており、米国においては約 1000 台、韓国を中心
にアジアで 60 台がすでに稼働しています。
その一方で、わが国ではロボット手術に対する認識不足や薬事許可が得られない
等の事情により、東京医科大学病院の 1 台を含め、国内で 6 台の稼働にとどまってい
るのが現状です。
そうしたなかで、このたび当病院では手術用として 2 台目のダ・ヴィンチを導入すると
同時に、文部科学省からの支援を得て、研究・実験用としてさらにもう 1 台を 3 月 16
日に導入いたします。
ダ・ヴィンチに関しては、2005 年、当病院が心臓外科にて冠動脈バイパス手術等に
対応するため最初に導入しました。以来、泌尿器科においては前立腺がんで約 160
例の手術を実施しており、抜群の操作性などその機能・特性をフルに活用しながら、
極めて良好な成績を得ています。
また、平成 21 年 1 月からは前立線がんの手術に対して「高度医療」として認められ、
保険診療との併用が可能となるなか、昨年末には産科・婦人科、2010 年に入って消
化器外科、さらには、近々呼吸器外科でも活用されるなど、その活躍分野が拡大して
います。
●医療を取り巻く時代背景とダヴィンチシステムの役割
2008 年 11 月に社会保険国民会議が発表した調査データによれば、わが国の人口
は 2025 年において 2007 年時点より 900 万人減少し、65 歳以上の高齢者が全人口
に占める割合は、21%から 30%に増えると予測しています。
現在の神奈川県民に匹敵する人口が消え去り、約 3 人に 1 人が高齢者という 25
年後の日本。その影響は、もちろん医療の世界にも及び、医療保険収入が減る一方
で医療費が増大するという現在の事態が、より深刻化すると想定されます。
このような課題を解決していくひとつの方向は、各地域の医療機関が連携し、医療
に係るヒトやモノなどの資源をより効率よく投入しながら、その地域で医療を完結して
いくことです。
そこで、重要になるキーワード、それが治療の質の「均一化」です。あるレベル以上
の治療をどの病院でもスタンダードに提供できること。つまり、治療の質のバラツキを
少なくしていくことで治療に係る不確定要素を下げることができ、そのことが患者に対
する侵襲性を低くすること、かつ、医療費を下げることにつながります。
そうした治療の質の「均一化」を実現する役割を担っていくのが、ダ・ヴィンチであり、
当病院ではそうした将来像を見据えながら、今後、ダ・ヴィンチの積極活用に取り組
んでいます。
●ダヴィンチシステムとは
正式名称は、「ダヴィンチサージカルシステム」(米国インテュイティブ・サージカル社
製)といい、コンソールボックスにて医師が患部を映し出すモニターを見ながら装置を
動かすと、その医師の手の動きがコンピュータを通してロボットの腕に伝わり、手術を
行うシステムです。
ダヴィンチシステムの利点は、以下の通り。
1.短期間のトレーニングで手術の技能を向上
ロボット支援を通じて手術の標準化が可能になるため、導入したどの病院でも手術
の技能を習得する期間の短縮、およびレベル向上を図れる。
2.医師にとってイメージ通りの手術が可能
ロボットの腕は 200 度以上回転でき、従来の腹空鏡手術と比べて可動域が格段に
アップしている。さらに、患部の3D(立体)画像を見ながら手術操作を行うことがで
きる。
3.患者への負荷を大幅に軽減
立体感のある3D(立体)画像で患部を拡大し事前に止血しながら手術ができるため、
従来と比べて出血量が少なく、低侵襲。そのため術後の回復が早く、退院までの期間
が大幅に短くなった。また、傷が小さく目立たない点も評価を得ている。
ダ・ヴィンチの全景
患者から離れたコンソールで操作
●ダヴィンチシステムを取り巻く世界の現状
ダヴィンチシステムは、欧米を中心に 1420 台以上が既に稼働しており、症例は
年々増加しています。ちなみに、いまから 10 年前に世界で初めてダヴィンチシステム
の導入に踏み切った米国では、昨年行われた前立腺がん手術の約 85%でダヴィン
チシステムが用いられています。また、婦人科における使用状況も泌尿器科に次い
で第 2 位となっています。
さらに、アジアにおいても韓国では既に約 27 台が稼働しており、中国でもダヴィンチ
システムの導入が急速に進みはじめているなか、日本はロボット手術の分野におい
て 10 年の遅れをとっているともいわれています。
●東京医科大学病院とダヴィンチシステム
当大学病院の心臓外科が「冠動脈バイパス術」に対する最新の手術方法として、日
本ではじめてのロボット支援手術を導入したのは 2005 年。そこで用いられたのが、
2005 年 4 月当時、日本ではまだ 4 台しか稼働していないダヴィンチシステムでした。
以後、当大学病院では心臓外科で 29 例、泌尿器科で 162 例、産科・婦人科におい
ては 29 例、呼吸器外科で 2 例、消化器外科・小児外科で 2 例と、ロボット手術の積極
的な取組みがなされています。
こうしたなか、2008 年 12 月「根治的前立腺全摘出術における内視鏡下手術用ロボ
ット支援」という名称で、正式に高度医療(第 3 項先進医療)として厚生労働省に承認
されるなど、日本におけるロボット手術を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。
東京医科大学病院におけるロボット手術の実績
平成 22 年 3 月 16 日現在
診療科名
手術開始年・月
対象疾患
冠動脈バイパス術
心臓外科
平成17年12月
僧帽弁形成術
症例数
19例(39 例)
10例(22 例)
( )内は金沢医大での実績
平成18年8月
根治的前立腺摘除術
160例
平成21年7月
膀胱全摘除術
2例
子宮癌手術
13例
良性子宮腫瘍手術
16例
泌尿器科
産科・婦人科
平成21年3月
呼吸器外科・甲状腺外科
平成22年3月
消化器外科・小児外科
平成22年2月
縦隔腫瘍
今後肺癌を予定
大腸癌
2例
2例
●産科・婦人科のロボット手術
産科・婦人科 主任教授 井坂 恵一
世界的にみると産婦人科におけるロボット手術の普及は、泌尿器科についで第2位と報告され
ていますが、昨年まで日本では実施されていませんでした。
東京医科大学病院産科・婦人科教室では、既に心臓外科、泌尿器科がダ・ヴィンチ手術を実施し
ている幸運に恵まれ、昨年 3 月に本邦第 1 例目の産科・婦人科におけるダ・ヴィンチ手術を開始し
ました。感想を述べると操作性が極めて良好で、手術環境が整備されれば日本においても広く普
及する事を確信しました。同時に世界の趨勢には相当乗り遅れており、本邦における早急なロボ
ット手術普及の必要性を痛感し、産科・婦人科におけるロボット手術の普及をめざし、昨年 12 月に
第 1 回日本婦人科ロボット手術研究会を開催いたしました。
研究会には、全国 50 施設から 100 名に及ぶ産婦人科医が集まり、ロボット手術に対する関心
の高さに驚きました。今後は、将来の婦人科手術の核となるべくロボット手術の普及のため努力
を惜しまぬつもりです。
第 1 回日本婦人科ロボット手術研究会
本件に関するお問い合わせ先
東京医科大学大学病院
企画広報室長 宇佐美 脩
〒160-0023 東京都新宿区西新宿 6-7-1
TEL:03-3342-6111(代) 内線 2022
FAX:03-3340-1897
E-mail:[email protected]
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