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Ⅲ. COE研究員 - 東北大学 21世紀COE プログラム
Ⅲ. COE研究員 ― COE研究員一覧 ― 固体地球研究グループ 鈴木 由希,博士(理学) (地震火山ダイナミクス, 受入: 吉田武義) 内田 直希,博士(理学) (地震火山ダイナミクス, 受入: 長谷川昭) 根本 克己,博士(学術) (地震火山ダイナミクス, 受入: 土屋範芳) 宮原 正明,博士(理学) (核マントルダイナミクス, 受入: 大谷栄治) 2005 年 4 月 1 日から Konstantin Litasov, Ph. D (核マントルダイナミクス, 受入: 大谷栄治) 流体地球・惑星研究グループ 上原 裕樹,博士(理学) (気候変動ダイナミクス, 受入: 花輪公雄) 石戸谷 重之,博士(理学)(気候変動ダイナミクス, 受入: 中澤高清) 浅海 竜司,博士(理学) 山﨑 敦, (気候変動ダイナミクス, 受入: 井龍康文) 博士(理学) (太陽地球系ダイナミクス,受入: 岡野章一) 地球進化史研究グループ 石田 春磨,博士(理学) (受入: 浅野正二) 新妻 祥子,博士(理学) (受入: 掛川武) 日本学術振興会 COE 枠 博士研究員 宮崎 和幸 (気候変動ダイナミクス, 指導: 岩崎俊樹) 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 す ず き ゆ き 鈴木 由希 受入教員名:吉田 武義 研究グループ名:固体地球研究グループ(地震火山ダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 噴火現象•機構の理解を目的とし,火山下でのマグマプロセスの物質科学的研究を 課題とした.研究対象は,1)マグマ溜りでのプロセス,マグマ溜りの深度•構造•時間発 展と,2)溜りよりも浅所での,噴火に際したマグマ挙動(上昇速度,停滞深度•時間)と マグマでの現象(減圧による結晶作用,発泡),に大きく二分される.1)が 2)の出発点と いう点で,二つの課題は互いに切り離せない関係にある. (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 課題 2)(浅所でのマグマ挙動)については,A)マグマの減圧で起きる現象について の研究と,B)特定火山での事例研究,を並行し進めている.A)については過去に行っ た実験的研究(Suzuki et al. in review)の結果を元に,減圧に伴う結晶作用の普遍 性を探った.火山噴出物から,マグマ挙動の情報をより良く抽出できるようにすることを 目的としている.B)については有珠火山を対象とし,共同研究を進めている.近年の 2 噴火(2000,1977)を引き起こしたマグマは,溜りでの温度,圧力条件が似ているので, 組織比較によって容易にマグマ挙動の相違を明らかにすることができる.これにより噴 火様式や位置の決定要因と深度を探ることを主な目的としている(鈴木•中村;合同大 会 2006 発表予定).加えて,中村氏の博論テーマである 77 年噴火に対しても,2000 年噴火の成果(Suzuki et al. in review)や A)の結晶作用の知見を元に,助言や分析 指導を行なっている. 課題 1)(マグマ溜りプロセス)について,榛名,新島での事例研究(後者は吉木氏修 論)を行った.榛名では一噴火を対象とし噴火誘発プロセスを,新島では一火山のマグ マ供給系の進化の研究を,それぞれ行った. さらに火山岩分析で頻用される WDS について,試用と分析値評価を開始した. 【研究成果】 (1) 成果概要 噴火に際しマグマの減圧によって起きる結晶作用について,理論•実験的研究並び に事例研究のレビューを行った(発表並びに論文作成).火山噴火を理解する上での, 物質科学データと地球物理学データ融合の重要性を鑑み,結晶組織からマグマ挙動を より良く読み取るための改善点と課題を提案した.榛名火山の研究では,混合マグマ から端成分マグマの情報を注意深く読み取ることで,同火山のマグマ供給系を明らか にした.同時に溜り周辺でのマグマのダイナミックス(溜りへの注入,溜りでの移動,溜 りからの上昇)の記録を解読し,噴火準備過程について,より具体的な実像を与えた. 以上の研究により,歴史時代噴火がなく近代的な観測のなかった同火山でも,噴火現 象をより良く理解できるようになる.すなわち上の物質科学的成果を元に,将来の噴火 に際し起きる地震活動や地殻変動を評価し,噴火予知を行うことが可能になる. 他のテーマについても,内外の学会で発表した. (2) 業績リスト 【論文】 Yuki Suzuki, James E. Gardner and Jessica F. Larsen: Experimental constraints on syneruptive magma ascent related to the phreatomagmatic phase of the 2000 A.D. eruption of Usu volcano, Japan. Bull. Volcanol. (in review). Yuki Suzuki and Setsuya Nakada: Magma plumbing system and eruption mechanism in recent eruptions of Haruna volcano, central Japan. Journal of Petrology (will be submitted soon). 鈴木由希: 噴火に際したマグマ挙動の物質科学的研究-結晶組織・組成の役割と, 減圧結晶化実験-, 火山(平成17年度中に投稿) 【学会やシンポジウム等での発表】 鈴木由希,榛名火山のマグマ供給系と噴火メカニズム,地球惑星科学関連学会, 東京,2005 年 5 月. 吉木佳奈・鈴木由希・中村美千彦,伊豆新島火山のマグマ供給系の進化,地球惑 星科学関連学会,東京,2005 年 5 月. Yuki Suzuki , Experimental constraints on syneruptive magma ascent related to the phreatomagmatic phase of the 2000 A.D. eruption of Usu volcano, Japan, 21COE International Symposium 2005, Sendai, July, 2005. 鈴木由希,噴火に際したマグマ挙動の物質科学的研究-結晶組織・組成の役割と, 減圧結晶化実験-,火山爆発夏の学校,伊香保,2005年9月. 鈴木由希・Gardner James E.・Larsen Jessica F., 珪長質メルトの減圧結晶化実 験-噴火に際したマグマ上昇過程の物質科学的研究への示唆-,日本火山学 会秋季大会,札幌,2005 年 10 月. Yuki Suzuki, Magma plumbing system and eruption mechanism in recent eruptions of Haruna volcano, central Japan, AGU Fall Meet, San Francisco, December, 2005. Kazuki Nakamura, Yuki Suzuki and Hiromitsu Taniguchi, Degassing processes of Usu 1977 Plinian eruption: Implications from its pumice textures, AGU Fall Meet, San Francisco, December, 2005. 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 う ち だ な お き 内田 直樹 受入教員名:長谷川 昭 研究グループ名:固体地球研究グループ(地震火山ダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 相似地震解析に基づくプレート間すべりの時間発展の追跡と非地震性すべり領域 の検出 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 北海道南東沖の相似地震解析から 2003 年に発生した十勝沖地震(M8.0)後の準 静的すべりの加速(余効すべり)が,2004 年 11 月 29 日に M7.1 の地震が発生した根 室半島沖付近まで達しており,準静的すべりの加速がこの地震の発生時期に影響を 与えた可能性を示した.この結果について,AGU にて口頭発表し,論文を準備中であ る. 相似地震自動検知システムの構築と改良を行い,4 月より毎月ホームページにて相 似地震によるプレート間すべりのモニタリングの結果の公開を開始した.また,このシ ステムの概要と結果について,地震学会にて「小繰り返し地震による千島・日本海溝 沿いプレート境界の準静的すべりモニタリング」と題して招待講演を行った.同発表に ついては,2006 年 5-6 月頃刊行予定の雑誌月刊「地球」の特集号への原稿依頼を受 け執筆中である. 2005 年 8 月 16 日に宮城県沖で発生した M7.2 の地震について,この地震後の余 効すべりがあまり顕著でないことを相似地震解析から示した.この結果について, AGU 及び地震学会にて発表し, EPS 誌への論文を執筆中である. 2006 年 1 月に COE の若手研究者の海外派遣制度により米国地質調査所におい て W. L. Ellsworth 氏および S. Kirby 氏と共同研究・議論を行った. 研究課題「相似地震解析による北海道南東沖プレート境界での準静的すべりの推 定」が平成 17 年度科学研究費補助金の若手研究 B に採択され,精力的に研究を行 った. また,国内外の学会や研究集会での成果の発表を積極的に行った. 【研究成果】 (1) 成果概要 平成 17 年度の研究活動により主に以下のような成果があった. ・ 2003 年十勝沖地震の震源域の周辺でのプレート間すべりの時間発展の推定 2003 年十勝沖地震の震源域近くにおいては,本震後相似地震活動が活発化し,準 静的すべり(余効すべり)が推定された.そのすべり量は本震アスペリティの海溝側や 東側で比較的大きい.2003 年十勝沖地震後の準静的すべりの加速は,2004 年 11 月 29 日に M7.1 の地震が発生した根室半島沖付近まで達しており,準静的すべりの 加速がこの地震の発生時期に影響を与えた可能性が考えられる.2003 年十勝沖地 震,及び 2004 年 11 月 29 日の地震の余効すべりは 2005 年のおわりの時点でも継 続しているようにみえる. ・ 相似地震自動検知システムの構築と改良 日本海溝沿いに加え,千島海溝沿い(北海道南東沖)において相似地震のモニタリ ングができるようになった.今後は,東北地方南部(茨城・千葉県沖)への解析領域の 拡大,及び検知システムの安定化のため改良を行う予定である. ・ 相似地震の精密な震源決定 波形の相似な地震のなかから,同じアスペリティの繰り返し破壊を正確に抽出する ことは本研究課題の目的を達成する上で非常に重要である.平成 17 年度の COE の 若手研究者の海外派遣制度による米国地質調査所滞在により,波形の相関を用い近 接した地震の走時差を正確に求める手法を習得した.今後この手法を用いて相似地 震の精密な震源の決定を行う予定である. (2) 業績リスト 【論文】 Uchida, N., T. Matsuzawa, A. Hasegawa, and T. Igarashi, Recurrence intervals of characteristic M4.8±0.1 earthquakes off Kamaishi, NE Japan - Comparison with creep rate estimated from small repeating earthquake data, Earth Planet. Sci. Lett., 233, 155-165, 2005. Hasegawa, A., N. Uchida, T. Igarashi, T. Matsuzawa, T. Okada, S. Miura and Y. Suwa, Asperities and quasi-static slips on the subducting plate boundary east off Tohoku, NE Japan, SEIZE volume,Columbia University Press, in press 2006. Okada, T., N. Umino, T. Matsuzawa, J. Nakajima, N. Uchida, T. Nakayama, S. Hirahara, T. Sato, S. Hori, T. Kono, Y. Yabe, K. Ariyoshi, S. Gamage, J. Shimizu, J. Suganomata, S. Kita, S. Yui, M. Arao, S. Hondo, T. Mizukami, H. Tsushima, T. Yaginuma, A. Hasegawa, Y. Asano, Aftershock distribution and 3D seismic velocity structure in and around the focal area of the 2004 mid Niigata prefecture earthquake obtained by applying double-difference tomography to dense temporary seismic network data., Earth Planet. Space, 57, 435-440, 2005. Umino,N., T. Kono, T. Okada, J. Nakajima, T. Nakajima, T. Matsuzawa, N. Uchida, A. Hasegawa, Y. Tamura, G. Aoki, Revisit to the 1930s’ three Miyagi-oki earthquakes with magnitude more than 7 : Possible rupturing of asperities that caused the 1978 M7.4 Miyagi-oki earthquake, submitted to Earth Planet, Space, 2006. Nishimura, T., S. Tanaka, T. Yamawaki, H. Yamamoto, T. Sano, M. Sato, H. Nakahara, N. Uchida, S. Hori and H. Sato, Temporal changes in seismic velocity of the crust around Iwate volcano, Japan, as inferred from analyses of repeated active seismic experiment data from 1998 to 2003., Earth Planet. Space, 57,491-505, 2005. 岡田知己・海野徳仁・松澤暢・中島淳一・内田直希・中山貴史・平原 聡・柳沼直・長 谷川昭・浅野陽一・Zhang Haijiang・Thurber Clifford H.,DD トモグラフィ によって推定された 2004 年新潟県中越地震の断層の微細構造,月刊地球, 号外 53 号,2-10,2005. 【学会やシンポジウム等での発表】 Uchida, N., T. Matsuzawa, S. Hirahara, T. Igarashi, M. Kasahara, A. Hasegawa, Quasi-static Slips Around the Source Areas of the 2003 Tokachi-oki (M8.0) and 2005 Miyagi-oki (M7.2) Earthquakes, Japan Estimated From Small Repeating Earthquakes, AGU 2005 Fall Meeting, San Francisco, California, December 2005. (Oral) Uchida, N., T. Matsuzawa, T. Nakayama, A. Hasegawa, Y. Motoya, M. Ichiyanagi, M. Takada, M. Okayama, M. Kasahara, Quasi-static slips before and after the 2003 Tokachi-oki and November 29, 2004 off-Kushiro earthquakes at SE off Hokkaido, Japan estimated from repeating earthquakes, AOGS 2005, Singapore, June 2005 (Invited). Uchida, N., T. Matsuzawa, T. Nakayama, A. Hasegawa, Y. Motoya, M. Ichiyanagi, M. Takada, M. Okayama, and M. Kasahara, Spatio-temporal distribution of inter-plate quasi-static slip southeast off Hokkaido, Japan, estimated from repeating earthquakes, 21COE International Symposium 2005 Spatial and Temporal Fluctuations in the Solid Earth - Clues to the Future of Our Planet -, Sendai, Sendai City War Reconstruction Memorial Hall, July, 2005. (Poster) Uchida, N., T. Matsuzawa, S. Hirahara, T. Igarashi, A. Hasegawa, and M. Kasahara, Monitoring of quasi-static slip along the subducting plate boundary of NE Japan by small repeating earthquake analysis, Asian Academic Seminar JASS05, Nagoya, Nagoya University, October, 2005. (Poster) 内田直希・松澤暢・平原聡・長谷川昭,小繰り返し地震による千島・日本海溝沿いプ レート境界の準静的すべりモニタリング,2005 年日本地震学会秋季大会,札 幌市 北海道大学 ,2005 年 10 月(招待講演). 内田直希・松澤暢・平原聡・長谷川昭,2005 年 8 月 16 日宮城県沖の地震(Mj7.2) 周辺の相似地震活動,2005 年日本地震学会秋季大会,札幌市 北海道大 学 ,2005 年 10 月 (ポスター). 内田直希・松澤暢・中山貴史・長谷川昭・本谷義信・一柳昌義・高田真秀・岡山宗 夫・笠原稔, 相似地震活動から推定された過去約 10 年間の十勝沖~釧路沖 の準静的すべり, 2005 年球惑星科学関連学会,千葉県幕張メッセ国際会議 場 ,2005 年 5 月 (口頭). 内田直希・松澤暢・平原聡・五十嵐俊博・長谷川昭・笠原稔, 小繰り返し地震による 東北日本沈み込み帯の準静的すべりのモニタリング, 研究集会「地殻活動デ ータに基づく予測シミュレーションモデル構築に向けて」 , 東京, 東京大学地 震研究所, 2005 年 11 月. Matsuzawa, T., N. Uchida, T. Okada, K. Ariyoshi, T. Igarashi, and A. Hasegawa, Quasi-static slips before and after large interplate earthquakes inferred from small repeating earthquake data, The 4th International Workshop on Statistical Seismology, Kanagawa, Shonan Village campus, January, 2006 S Kirby, T Okada, N Uchida, A Hasegawa, T Matsuzawa, R Hino, Supraslab earthquakes above the Pacific-plate slab in NE Japan: A possible graveyard of detached seamounts and volcanic ridges?, AGU 2005 Fall Meeting, San Francisco, California, December 2005. Miura, S., S. Yui, N. Uchida, and A. Hasegawa, Spatio-temporal Evolution of Postseimic Slip Following the 2003 Tokachi-oki Earthquake (M8.0) Estimated by GPS and Repeating Earthquakes, AOGS 2005, Singapore, June 2005. Matsuzawa T., N. Uchida, T. Okada, A. Hasegawa, and T. Igarashi, Rupturing of asperities fostered by slow slips and its implications in earthquake prediction, 21COE International Symposium 2005 Spatial and Temporal Fluctuations in the Solid Earth - Clues to the Future of Our Planet -, Sendai , Sendai City War Reconstruction Memorial Hall, July, 2005. 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 ね も と かつみ 根本 克己 受入教員名:土屋 範芳 研究グループ名:固体地球研究グループ(地震火山ダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的:地震発生メカニズムにおける岩石-水相互作用 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 <概要> 断層における地震発生メカニズムに対する流体(主に水)の影響を明らかにするた めには、まず、断層内の流体流動特性を把握することが必要である。そのために、岩 石き裂内における流体移動場としての間隙構造の把握、ならびに流動現象としての流 体流路、流速分布の理解を目的として、垂直応力下においてせん断(かみ合わせ)変 位を有する引張き裂の接触分布、ならびに間隙分布の定量評価を実施した。また、間 隙分布の定量評価結果にもとづく流動シミュレーションによる流体流動特性の評価を 行った。 さらに、流体流動をともなう断層における摩擦すべり挙動の解明を目的として、封圧 下において流体流動をともなう模擬断層の摩擦すべり実験装置を構築し、すべり特性、 流動特性を評価する摩擦すべり実験を実施した。 また、研究により得られた結果を、学会発表・論文発表を通して公表し、国内外の研 究者と議論するとともに、今後の研究に還元できるよう情報収集を行った。 <その他の研究活動> 国際ワークショップ(3rd International Workshop on WATER DYNAMICS)を 開催し、研究成果の発表・討論を行った。また、本 WS において実行委員として運営に も参加した。 アメリカ合衆国地質調査所 (USGS, Denver)を訪問し、以前本 COE 招聘研究員と しての経歴を持つ Brian Rusk 博士ならびに彼の所属する研究グループのメンバー と、物質分析装置(LA-ICP-MS;レーザー削孔誘導結合プラズマ質量分析装置)の仕 様について情報収集を行うとともに、その装置を使用した分析手法について議論し た。 <進捗状況> ・100MPa までの垂直応力において、3 mm 程度までのせん断(かみ合わせ)変位を 有する岩石試料内既存き裂面の接触分布測定を実施した。さらに接触分布の測定 結果を元にして、上述の条件における不連続面の間隙分布の評価を行った。本間隙 分布の評価結果に基づいて流体流動シミュレーションを実施し、100MPa の垂直応 力、3 mm 程度のせん断(かみ合わせ)変位条件における既存き裂面の流動分布を 明らかにした。 ・封圧下において流体流動をともなう模擬断層の摩擦すべり模擬実験装置を構築し、 本実験装置を使用して、封圧 5 MPa、すべり速度 0.001 mm/s の条件において定常 的な流体供給を受ける模擬断層の摩擦すべり挙動、ならびに透水性を評価する岩石 実験を実施した。本実験においては、摩擦すべりと透水性との密接な相関を示唆す る結果が得られている。今後、さらに実験を進め、摩擦すべり挙動に対する流体流動 の影響を明らかにする。 【研究成果】 (1) 成果概要 ・垂直応力下(~100 MPa)においてせん断(かみ合わせ)変位を有する引張き裂内 の流体流動を明らかにするために、まず流動場となるき裂の間隙構造を、接触分布 を測定することにより評価した。この結果、間隙構造は、き裂に加わる垂直応力の増 加にともない、間隙部が孤立していくことが明らかとなった。また、せん断(かみ合わ せ)変位の増加にともない、間隙部の著しい増加が生じ、かつ、せん断変位方向に対 し垂直方向に間隙部の連結度が増加することが観察された。本結果を、国際学会に おいて論文投稿するとともに、口頭発表した。 ・上記のき裂接触分布の測定結果にもとづいて、コンピュータ上で再現したき裂間隙 を用いてき裂内流動シミュレーションを行い、流速分布の推定を行った。これにより、 き裂内流動に対する垂直応力、せん断(かみ合わせ)変位の影響を評価した。その 結果、 1.垂直応力の増加にともない、き裂透水性が減少する 2.せん断(かみ合わせ)変位の増加にともない、き裂透水性が増加する 3.き裂内の高透水方向がせん断変位の方向に依存する ことが明らかとなった。本結果により、ある応力条件にある不連続面において、せん 断変位にともなう流体流動特性が明らかとなった。本結果を国際ワークショップにプ ロシーディングを投稿するとともに、ポスター発表した。また、国内学会において口頭 発表した。 (2) 業績リスト 【投稿論文】 Nemoto, K., H. Oka, N. Watanabe, N. Hirano and N. Tsuchiya (2005), Measurement of hydraulically ineffective area on a fracture under normal stress condition, Geothermal Resources Council Trans., 29, 413-417 【プロシーディング】 Watanabe, N., N. Tsuchiya, N. Hirano and K. Nemoto (2005), Flow path and distribution of permeability in single rock fracture based on flow experiment using rubber-confining pressure vessel, Proc. of the 1st workshop on IODP physical property measurement, 8-15 Nemoto, K., H. Oka, N. Watanabe, N. Hirano and N. Tsuchiya (2005), Evaluation of fluid flow path in a single fracture undergoing normal stress and shear offset, Proc. of 3rd International Workshop on WATER DYNAMICS, (Submitted) 【学会やシンポジウム等での発表】 根本克己,岡秀行、渡邉則昭、平野伸夫、土屋範芳 (2005), 単一き裂の接触分布 測定とき裂内流路構造の推定,2005 年度日本地熱学会学術講演会予稿集 (2005 年 11 月、雲仙) Nemoto, K., H. Oka, N. Watanabe, N. Hirano and N. Tsuchiya (2005), Evaluation of fluid flow path in a single fracture undergoing normal stress and shear offset, Proc. of 3rd International Workshop on WATER DYNAMICS, Tohoku University, Sendai, Japan 長谷川 昭・海野徳仁・松澤 暢・三浦 哲・日野亮太・岡田知己・内田直希・河野俊 夫, 2005 年 8 月 16 日宮城県沖地震(M7.2)について-想定宮城県沖地震と の関連, 第 24 回日本自然災害学会 学術講演会, 仙台市, 東北大学, 2005 年 11 月 海野徳仁・河野俊夫・岡田知己・中島淳一・松澤 暢・内田直希・長谷川昭・田村良 明・青木元,過去の宮城県沖地震の震源再決定,2005 年日本地震学会秋季 大会,札幌市 北海道大学 ,2005 年 10 月 岡田知巳・柳沼直・北佐枝子・海野徳仁・松澤暢・中島淳一・内田直希・河野俊夫・ 長谷川昭,2005 年,1978 年宮城県沖地震の余震分布の比較-余震活動域 の時間的保存性,2005 年日本地震学会秋季大会,札幌市 北海道大学 , 2005 年 10 月 飯尾能久・片尾浩・上野友岳・Bogdan Enescu ・平野憲雄・岡田知巳・内田直希・ 植平賢司・松本 聡・松島 健・清水 洋,福岡県西方沖地震の余震の応力降 下量分布,2005 年日本地震学会秋季大会,札幌市 北海道大学 ,2005 年 10 月 清水洋,高橋浩晃,岡田知己,金沢敏彦,飯尾能久,宮町宏樹,松島健,一柳昌義,内田 直希,岩崎貴哉,片尾浩,後藤和彦,松本聡,平田直,中尾茂,植平賢司,篠原雅尚, 八木原寛,亀伸樹,卜部卓,松尾のり道,山田知朗,渡邉篤志,中東和夫,Bogdan Enescu,内田和也,橋本信一,平野舟一郎,八木健夫,河野裕希,上野友岳,齊藤 政城,堀美緒, 福岡県西方沖地震・緊急観測の概要および地震活動, 2005 年 球惑星科学関連学会,千葉県幕張メッセ国際会議場 ,2005 年 5 月 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 みやはら まさあき 宮原 正明 受入教員名:大谷 栄治 研究グループ名:固体地球研究グループ(核マントルダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 研究課題Ⅰ: 環状暗視野走査透過電子顕微鏡法(ADF-STEM)の地球科 学への 応用 研究課題Ⅱ: 収束イオンビーム(FIB)法による鉱物の TEM 薄膜作製 研究課題Ⅲ: 含水リングウーダイトの TEM 観察 研究課題Ⅳ: テクタイト成因の解明 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 研究課題Ⅰ:ADF-STEM は結晶中のナノレベルの界面や欠陥の識別に大きな力 を発揮し、原子分解能像観察と微小領域の分光分析が同時に行える電子顕微鏡法 である。最近、研究代表者は比較的低倍率(数万倍)での ADF-STEM が地球科 学系試料の微少部二次元解析(組織観察・格子像・元素の定量分析・元素マッピン グ・元素の存在状態解析等)に極めて有効であること明らかにしつつある。 ADF-STEM と FIB を併用することで,地球惑星物質進化解明に劇的な進展が期 待される。しかし、低倍率での ADF-STEM は未知領域で、その有用性、像解釈及 び結像原理は未解明の部分が多い。そこで、これらの点を明らかにする為に、積層 欠陥をもつ層状珪酸塩鉱物及び連晶鉱物への ADF-STEM 適用を試みた。 研究課題Ⅱ:現在、FIB 法による鉱物の TEM 薄膜作製が急速に発展しつつある。 しかし、FIB 法による TEM 薄膜作製はごく一部の鉱物に適用されたのみで,未だ その技術は確立されていない。また,FIB 法で作製された TEM 薄膜は、その膜厚 が厚い(120-130 nm)上に、ガリウム・スパッタ物質等による汚染の為、高分解能観 察及び高精度分析には不向きである。FIB 法の適用範囲を広げる為にはこれらの 点を解決する必要がある。そこでまず,様々な形態の試料から TEM 薄膜を作製し, さらに,TEM 薄膜をより薄くし(100 nm >),汚染部の除去を行う為の手法の確立を 試みた。 研究課題Ⅲ:高圧・高温合成実験の結果から,リングウーダイトには最大で 2.8%の H2O が含まれうることが知られている。しかし,リングウーダイト中の水の存在形態 については明確にされていない。そこで,0.10~1.9 wt%の H2O を含むリングウー ダイトを TEM で観察し,リングウーダイト中の水の存在形態について検討した。 研究課題Ⅳ:地球上の特定の地域にはテクタイトと呼ばれるガラス質物質が存在し, その成因は謎である。テクタイトには様々な極微少包有物があり,これらが成因解 明の鍵となる可能性がある。そこで、FIB,TEM 及び ADF-STEM によりテクタイト 中の極微少包有物を探索し、その成因解明を試みる。 【研究成果】 (1) 成果概要 研究課題Ⅰ:積層欠陥をもつ層状珪酸塩鉱物及び連晶鉱物の格子像とこれに対応 する化学組成情報の同時取得に成功し,元素の挙動・分布と結晶構造との関係が 明確になった。ADF-STEM が電子線に弱い鉱物の解析に有効であることが判明し た 。 ADF-STEM の 地 球 科 学 系 試 料 に お け る 有 用 性 が 確 認 さ れ , 今 後 ADF-STEM が地球科学において急速に普及することが予想される。なお,これら の研究成果の一部を 13th International Clay Conference で発表し、平成17年度 日本粘土学会優秀講演賞を授与された。 研究課題Ⅱ:バルク試料及びダイアモンド・マルチアンビルセルで高温高圧合成さ れた試料の FIB 法による TEM 薄膜作製に成功した。FIB 加工時の試料へのダメ ージを最小にする手順を確立した。FIB で試料から 10×15×1.0μm 程度のブロッ クを切り出し、これを半月状グリッド先端部に取り付ける手法を確立した。この手法 により FIB 加工後のクリーニングが可能となった。 研究課題Ⅲ:含水リングウーダイト結晶内に数 10~100 nm の Mg 相を見出した。 また,結晶間隙にも Mg 相を見出した。 研究課題Ⅳ:中国産及びカンボジア産テクタイト3試料を入手し、一部試料でナノ鉱 物を確認した。 (2) 業績リスト 【論文:査読有り】 Miyahara1, M., Uehara, S., and Kitagawa, The application of ADF-STEM with EDS analysis to an intergrowth mineral, to be submitted. Miyahara1, M., Uehara, S., Takahashi, Y. and Kitagawa, Two-dimensional high-resolution element distribution in chlorite-vermiculite mixed-layer mineral - The experimental utilization of ADF-STEM with EDS analysis-, to be submitted. 宮原正明・松井章弘・北川隆司・西戸裕嗣・地下まゆみ, 六甲花崗岩中に発達する 粘土細脈の構成粘土鉱物種と形成年代, 投稿中. Ohta, E., Miyahara, M., Ohkawa, M. and Hoshino, K. Fe-deficient, Si-substituted magnetite and accompanying Fe oxides and hydroxides from the Kumano mine, Yamaguchi Prefecture, Japan: Reappraisal of the maghemite (γ-Fe2O3) ore, submitted. Miyahara, M., Kitagawa R. and Uehara, S. (2005) Chlorite in metabasites from the Mikabu and North-Chichibu belts, Southwest Japan. Clays and Clay Minerals, Vol. 53, pp.466-477. 宮原正明・宇野洋平・末峰宏一・地下まゆみ・北川隆司・矢田部龍一 (2005) 四国 中央部の三波川,御荷鉾及び秩父帯に産する粘土鉱物について-善徳,怒 田・八畝,蔭,西の谷地すべり及び桧山トンネルより得られたボーリングコア の分析結果-. 地すべり. Vol. 42, pp.53-60. 【論文:査読無し】 宮原正明・上原誠一郎・北川隆司(2005)TEM-EDS による元素マッピングの緑泥 石・バーミキュライト混合層鉱物への適用.九州大学超高圧電子顕微鏡室研 究報告書,No. 29,pp.85-86. 【学会及びシンポジウム等での発表】 Miyahara, M. and Uehara, S., 2-D high-resolution element distribution image of phyllosilicates - Application of ADF-STEM with EDS analysis -, to be submitted (The 16th international Microscopy Congress). Miyahara, M., Uehara, S., Takahashi, Y., and Kitagawa, R. (2005) Alteration process from chlorite to chlorite-vermiculite mixed-layer mineral due to weathering - A front–line high-resolution chemical analysis by STEM-EDS -. The 3rd International Workshop on Water Dynamics, Abstracts and Program, p.79. 太田絵里・宮原正明・大川真紀雄・星野健一(2005)Siに富む磁鉄鉱及びその変質 鉱物(赤鉄鉱・針鉄鉱)-山口県熊野鉱山産磁赤鉄鉱鉱石(?)の再検討-. 日本鉱物学会2005年度年会講演要旨集,p.154. 宮原正明・大谷栄治・下宿彰・工藤貴英(2005)Hydrous RingwooditeのTEM観 察.日本鉱物学会2005年度年会講演要旨集,p.33. Miyahara, M., Uehara, S., Takahashi, Y. and Kitagawa, R. ( 2005 ) Interpretation of vermiculitization of Mg-chlorite using element distribution map obtained by STEM-EDX. The proceeding of annual meeting of the Mineralogical Society of Japan, p.111. Miyahara, M., Uehara, S., Takahashi, Y., Zheng, G. and Kitagawa, R. (2005) Vermiculitization mechanism of Mg-chlorite formed in metabasalt. The 13th International Clay Conference, abstract, pp.123-124. 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 リ タ ソ フ コ ン ス タ ン チ ン Litasov Konstantin 受入教員名:Ohtani Eiji 研究グループ名:Core-Mantle 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【Research activity】 (1) Research title/topic or purpose of your research Influence of water and other volatiles on phase relation in the Earth’s mantle and deep water cycle. (2) Outline/summary of your research activity in 2005 ① In situ X-ray diffraction study of olivine-wadsleyite phase transformation in anhydrous and hydrous peridotite with implication to 410-km seismic discontinuity. ② Water partitioning between olivine and wadsleyite. ③ P-T-V equation of state of superhydrous phase B and phase D. ④ Phase relation in peridotite-CO2 system to 20 GPa. 【Result of your research activity in 2005】 (1) Summary of the results We performed high-pressure high-temperature experiments on olivine-wadsleyite phase transformation in anhydrous and hydrous pyrolite compositions using in situ X-ray diffraction technique. In the anhydrous run at 1673-1773 K we observed nucleation of wadsleyite in olivine-bearing assemblage at 14.2 GPa and 1673 K. Then, we heated the sample to 1773 K and released pressure to observe reverse transformation. Growth of olivine peaks in wadsleyite-bearing assemblage we detected at 14.4 GPa and 1773 K. Although we did not determine the Clapeyron slope of the OWT boundary precisely, it was found to be consistent with the Clapeyron slope in (Mg,Fe)2SiO4 determined by Katsura et al. [2004]. Applying their Clapeyron slope we can obtain linear equation for OWT boundary in pyrolite as P (GPa) = 0.0039 T (K) + 7.47 using the Au pressure scale [Tsuchiya, 2003]. The observed interval of olivine and wadsleyite coexistence was about 0.2-0.3 GPa in present experiment. In hydrous pyrolite system (with about 3 wt.% of H2O) we performed two preliminary experiments approaching the phase transformation boundary both from the fields of the olivine and wadsleyite stability at 1423 K. In the experiment on olivine to wadsleyite transformation we observed appearance of minor wadsleyite peaks at 12 GPa and 1423 K. In the experiment on the transformation from wadsleyite to olivine we observed appearance of olivine peaks at 12.4 GPa at 1423 K. Based on these experiments we estimated insignificant shift of olivine stability boundary to the lower pressures for less than 0.5 GPa, but clear broadening of the interval of olivine-wadsleyite transition loop for about 1.2 GPa in the hydrous system. Since we determined phase transition in hydrous pyrolite only at 1423 K we could not determine the effect of water on the Clapeyron slope of olivine-wadsleyite transformation boundary. In order to evaluate influence of water on the pressure and transition interval of the olivine-wadsleyite transition, synthesis experiments were carried out in hydrous Forsterite90 composition at 9-16 GPa and 1273-1873 K. Three additional starting materials, representing (a) Mg2SiO4, (b) San-Carlos olivine (Fo89) and (c) CaO-MgO-Al2O3-FeO-SiO2 peridotite, were loaded in every experimental assembly simultaneously. We observed significant expansion of olivine + wadsleyite stability loop to the lower pressure for 2-3 GPa at 1473 K, whereas there was no significant shift of the phase transition boundary at 1873 K. These results are consistent with thermodynamic calculations made by Wood [1995] and inconsistent with recent experimental data by Chen et al. [2002]. We report here preliminary results on water content of coexisting phases. Water solubility of olivine increases with pressure up to 0.15 wt.% H2O at 14 GPa. At 12-15 GPa H2O content of olivine is almost the same at temperatures from 1373 to 1773 K, whereas the H2O content of wadsleyite decreases from about 2.1 wt.% at 1373 K to 0.7 wt.% at 1773 K. We determined the partition coefficient of H2O between two phases. Dwd/ol is 11.8 at 1473 K, 7.2 at 1673 K and 4.5 at 1773 K. However if we apply recent calibration of H2O content in olivine by Bell et al. [2003] these Dwd/ol values are three times lower. We have conducted two in situ X-ray diffraction experiments on PVT-equation of state of superhydrous phase B. We collected volume data for Fe-free and Fe-bearing superhydrous phase B along TP-paths from 25 to 0 GPa and up to 1000oC. These results are now in preparation. (2) Publications 【Papers】 Litasov, K.D., Litasov, Yu.D., Malkovets, V.G., 2005. Metasomatism and transformations of the upper mantle beneath the southern Baikal territory: evidence from xenoliths of the Bartoy Volcanic Area. Geochem. Int., 43: 242-267. Litasov, K.D., Ohtani, E., 2005. Phase relations in hydrous MORB at 18-26 GPa: Implications for heterogeneity of the lower mantle. Phys. Earth Planet. Inter., 150: 239-263. Litasov, K.D., Ohtani, E., Sano, A., Suzuki, A., Funakoshi, K., 2005. Wet subduction versus cold subduction. Geophys. Res. Lett., 32, L13312, doi:10.1029/2005GL022921. Litasov, K.D., Ohtani, E., Sano, A., Suzuki, A., Funakoshi, K., 2005. In situ X-ray diffraction study of post-spinel transformation in a peridotite mantle: Implication to the 660-km discontinuity. Earth Planet. Sci. Lett., 238, 311-328. Lakshtanov, D., Vanpeteghem, C.B., Jackson, J.M., Bass, J.D., Shen, G., Prakapenka, V., Litasov, K.D., Ohtani, E., 2005, The equation of state of Al-H-bearing SiO2 stishovite to 60 GPa. Phys. Chem. Miner., in press. 【Papers in press】 Litasov, K.D., Litasov, Yu.D., Ivanov, A.V., Rasskazov, S.V., Yurimoto, H., Demonterova, E.I., Sharygin, V.V., Mal’kovets, V.G., 2006, Upper mantle beneath Udokan volcanic field: Study of peridotite xenoliths in Late Cenozoic basaltoids, Russ. Geol. Geophys., 47 (1), in press. Vanpeteghem, C.B., Angel, R.J., Ross, N.L., Jacobsen, S.D., Litasov, K.D., Ohtani, E., 2006, Al-Fe-substitution in MgSiO3-perovskite structure: a single-crystal X-ray diffraction study, Phys. Earth Planet. Inter., in press. Malkovets, V.G., Griffin, W. L., O’Reilly, S.Y., Litasov, K.D., Agashev, A.M., 2006, Structure and Composition of the Mezozoic Upper mantle beneath the North Minusinsk depression, South Siberia, Jour. Petrol., in press. Litasov, K.D., Ohtani, E., 2006, Effect of water on the phase relations in the Earth’s mantle and deep water cycle, in Geol. Soc. Amer. Spec. Paper, in press. Litasov, K.D., Ohtani, E., Sano, A., 2006, Influence of water on major phase transitions in the Earth's mantle, in “Earth deep water cycle”, S.D. Jacobsen and S. van der Lee editors, American Geophysical Union, Geophys. Monogr., in press. Litasov, K.D., Ohtani, E., Kagi, H., and Ghosh, S., 2006, Influence of water on olivine-wadsleyite phase transformation and water partitioning near 410-km seismic discontinuity, in Proceeding of 3rd International Workshop on Water dynamics, Amer. Inst. Phys., in press. 【Conference presentations】 Litasov, K., Ohtani, E., Sano, A., Suzuki, A., Funakoshi, K., 2005, Influence of water on post-spinel transformation in a peridotite mantle: in situ X-ray diffraction study, European Geoscience Union, 2005 General Assembly, Vienna, Austria, CD-edition. Litasov, K., Ohtani, E., Sano, A., Suzuki, A., Funakoshi, K., 2005, Post-spinel phase transformation in dry and hydrous peridotite mantle, Abst. 2005 Japan Earth and Planetary Science Joint Meeting, Makuhari-Messe, Chiba, CD-edition. Sano, A., Ohtani, E., Litasov, K., Kubo, T., Kikegawa, T., Funakoshi, K., 2005, The effect of water on post-garnet phase transformation in MORB and dynamics of subducting slab at 660 km, Abst. 2005 Japan Earth and Planetary Science Joint Meeting, Makuhari-Messe, Chiba, CD-edition. Lakshtanov D.L., Sinogeikin S.V., Litasov K.D., Ohtani E., Bass J.D, 2005, Effect of Al3+ and H+ on elasticity of stishovite, Abst. 15th W.M. Goldschmidt Conference, Moscow, Idaho, USA, A254. Litasov, K., Ohtani, E., Sano, A., Suzuki, A., Funakoshi, K., 2005, Influence of water on major phase transformations in the Earth’s upper mantle, Ext. Abst. of 21th Century COE International Symposium “Spatial and Temporal Fluctuations in the Solid Earth, Clues to the Future of Our Planet”, Sendai, Japan, p.8-11. Ghosh, S., Ohtani, E., Litasov, K., Suzuki, A., Terasaki, H., 2005, Phase relations in peridotite-CO2 system to 20 GPa: preliminary results, Ext. Abst. of 21th Century COE International Symposium “Spatial and Temporal Fluctuations in the Solid Earth, Clues to the Future of Our Planet”, Sendai, Japan, p.36-38. Sano, A., Ohtani, E., Litasov, K., Kubo, T., Hosoya, T., Funakoshi, K., Kikegawa, T., 2005, Garnet-perovskite transformation in hydrous Mid_Ocean Ridge basalt, Ext. Abst. of 21th Century COE International Symposium “Spatial and Temporal Fluctuations in the Solid Earth, Clues to the Future of Our Planet”, Sendai, Japan, p.48-49. Kawazoe, T., Ohtani, E., Sano, A., Terasaki, H., Litasov, K., Suzuki, A., 2005, In situ X-ray observation of eutectic temperatures and solid phases in Fe-FeS system under high pressures, Abst. Vol. of Ann. Meeting of Japanese Soc. of Mineral. Petrol. Econ. Geol., Ehime Univ., Ehime, Japan, CD-edition. Ghosh, S., Ohtani, E., Litasov, K., Suzuki, A., Terasaki, H., 2005, Phase relations in peridotite-CO2 system to 20 GPa, Abst. Vol. of Ann. Meeting of Japanese Soc. of Mineral. Petrol. Econ. Geol., Ehime Univ., Ehime, Japan, CD-edition. Ohtani, E., Litasov, K.,Sano,A.,Funakoshi,K., 2005, In situ X-ray diffraction study on the effect of water on the phase transitions in the mantle and its implications for the slab dynamics, Abst. Vol. of Ann. Meeting of Japanese Soc. of Mineral. Petrol. Econ. Geol., Ehime Univ., Ehime, Japan, CD-edition. Litasov, K.D., Ohtani, E., Suzuki, A., Terasaki, H., Funakoshi, K., 2005, In situ X-ray diffraction study of influence of water on major phase transitions in the Earth’s upper mantle, Abstract of 46th High Pressure Conference of Japan, Rev. High Pressure Sci. Tech., v.15, p.280. Ghosh, S., Ohtani, E., Litasov, K., Suzuki, A., Terasaki, H., 2005, Phase relations and melt compositions in peridotite-CO2 system to 20 GPa, Abstract of 46th High Pressure Conference of Japan, Rev. High Pressure Sci. Tech., v.15, p.110. Litasov, K.D., Ohtani, E., Kagi, H., Ghosh, S., 3rd International workshop on Water Dynamics, Abstracts and program, Sendai, Japan, p.45. Litasov, K.D., Ohtani, E., 2005, Influence of water on the phase transitions of olivine and its polymorphs in the Earth's mantle, AGU Fall Meeting, San Francisco, USA. Ghosh, S., Ohtani, E., Litasov, K., Suzuki, A., Terasaki, H., 2005, Carbonate stability and melt composition in peridotite-CO2 system to 20 GPa, AGU Fall Meeting, San Francisco, USA. 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 うえはら ひろき 上原 裕樹 受入教員名:花輪 公雄 研究グループ名:流体地球・惑星圏研究グループ(気候変動ダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【活動内容】 (1) 研究課題または研究目的 ① 観測資料を用いた北太平洋亜熱帯循環系を横切る熱・淡水輸送量評価, および数 値モデルの出力データ解析による輸送量評価方法の検証 ② 音波流向流速計および衛星海面高度計データを用いた, 黒潮流軸 (最強流部) の流速・位置変動の考察 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 (2) 課題①については, 昨年度に続き, 北太平洋における高密度投下式水深水温計 資料を用い, 北太平洋亜熱帯循環系を横切る熱・淡水輸送量の時間平均の評価,およ び北太平洋北部・西部海域における海洋熱収支の定量化の研究に従事した. 本年度 は, 評価方法における改善点 (衛星海面高度計データを用いた, 地衡流計算の検証・ 後方散乱計データ (風応力) の活用など) について取り組んだ. これらは, 6 月に短期 招聘された, 米国・スクリップス海洋研究所の Roemmich 博士の提案によるものであ る. その後この解析が進んだため, 2 月に博士の研究室を訪問し, 最終的な取りまとめ を行う予定である. 熱輸送量評価手法の検証研究に関しては, 昨年度まで用いたモデ ルの出力データのみでは十分な検討が出来ない課題 (鉛直流の水平分布の計算な ど) があったため, 気象研究所より新たなデータの提供を受け, 再度解析を行ってい る. 本年度は, 課題①と並行し②に取り組んだ. 東京-小笠原間フェリーに搭載された 音波流向流速計と衛星海面高度計資料を用い, 黒潮の流軸 (最も流速が大きい部分) の流速・位置に見られる, 数ヶ月程度のスケールの変動について考察した. また気象 研究所から提供された海面高度の客観内挿データを用い, この黒潮流軸の変動に対 し, 黒潮再循環域に数多く見られる中規模渦が重要な役割を果たすことが分かった. 【研究成果】 (1) 成果概要 課題①は, (2)で述べた改善点に関連する解析は完了し, 論文原稿を準備中であり (1 月現在), 2 月中に Journal of Oceanography 誌に投稿を予定している. また, 課 題②については, 流向流速計の資料解析から得られた黒潮流軸の変動特性に関する 結果を日本海洋学会で, これに海面高度資料の解析を合わせ, 中規模渦が流軸変動 に与える影響について考察した結果を, 米国地球物理学会主催の国際学会などで発 表する予定である. (2) 業績リスト 【論文:課題①に関するもの】 Uehara, H., S. Kizu, D. Roemmich and K. Hanawa, 2005: Heat transport across the PX-40/37 line in the North Pacific subtropical gyre. J. Oceangr., in preparation. 【学会やシンポジウム等での発表:課題②に関するもの】 上原・木津・花輪・吉川, TOLEX 測線における黒潮流速・流軸の変動特性, 2005 年度秋季海洋学会, 仙台, 2005 年 9 月. Uehara, H., S. Kizu, Y. Yoshikawa, and K. Hanawa, Velocity and position variations of the Kuroshio axis south of Japan influenced by mesoscale eddies in the Kuroshio recirculation region, 2006 Ocean Science Meeting, Honolulu, Febraury 2006. Uehara, H., S. Kizu, Y. Yoshikawa, and K. Hanawa, Velocity and position variations of the Kuroshio axis south of Japan influenced by mesoscale eddies in the Kuroshio recirculation region, IPRC seminar, Honolulu, Febraury 2006. 上原・木津・花輪・吉川, TOLEX 測線における黒潮流速・流軸の変動特性 (II), 2006年度春季海洋学会, 東京, 2006年3月 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 いし ど や し げ ゆき 石戸谷 重之 受入教員名:中澤 高清 研究グループ名:流体地球・惑星圏研究グループ(気候変動ダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的:大気中酸素濃度の高精度計測に基づく全球炭素循環の 解明 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 人為起源の温室効果気体の中で、気候変動への影響が最も大きい二酸化炭素 (CO2)は、そのリザーバーである大気、海洋、陸上植物圏間の分配量が未だ十分な 精度で求められたとは言えない状態にあり、将来の濃度予測の上で大きな問題を残し ている。この問題の解決に貢献するため、本研究では、近年注目を集めている大気中 酸素(O2)濃度(δ(O2/N2))の高精度観測を基にした CO2 循環の研究を平成 16 年度に 引き続いて以下のように推進した。 ・仙台市郊外、北極スバルバール諸島ニーオールソン基地、および南極昭和基地にお ける地上観測を継続するとともに、岐阜県高山の森林における観測を新たに開始した。 また日本上空の航空機観測を、観測高度を拡充し継続した。これらの観測から δ(O2/N2)の 3 次元的な時空間変動を明らかにし、経年変化に基づく人為起源 CO2 収 支の解析を行った。 ・岩手県三陸上空および南極昭和基地上空の成層圏において過去に採取した成層圏 大気試料の分析を進め、世界に先駆けて中部成層圏におけるδ(O2/N2)の経年変化を 明らかにし、過去約 10 年間の人為起源 CO2 収支の解析に応用した。 ・より高精度で時間的に密なδ(O2/N2)の変動を検出するために開発した連続観測装 置の分析条件を決定するとともに、値の基準となる標準ガスを新たな手法で大量生産 した。開発した装置を用いて仙台市郊外において試験的な観測を開始した。 ・δ(O2/N2)測定の標準ガスの国際統一基準を確立し全球的なデータベースの構築を 目指すため、Scripps 海洋研究所、Max Plank 研究所、Princeton 大学他、計 10 機 関とスケールの相互比較実験を行った。実験はフラスコに充填した試料と高圧シリン ダーに充填した試料とを用いて行った。 【研究成果】 (1) 成果概要 地上観測と日本上空の航空機観測から得られた対流圏のδ(O2/N2)は、全ての観測 基地において明瞭な経年減少を示した。仙台市郊外および日本上空の観測結果から 推定された1999年10月から2005年2月の期間の陸上生物圏と海洋によるCO2吸収 量は、それぞれ1.4±0.4GtC/yr、および1.8±0.7GtC/yrであった。 重力によるO2とN2の拡散分離による影響を補正した成層圏のδ(O2/N2)と、同時に 観測した成層圏と対流圏のCO2濃度から推定した成層圏の空気塊の平均年代とを用 いることで、1993年10月から2001年9月の期間の過去のδ(O2/N2)の経年変化を推定 した。結果から、同期間の陸上生物圏と海洋によるCO2 吸収量を、それぞれ1.1± 1.3GtC/yr、および1.8±1.3GtC/yrと見積もった。 開発したδ(O2/N2)連続観測装置に、測定試料の温度や圧力の厳密な安定化など の改良を加え、±2.5 per meg の精度を達成した。この精度は東北大における従来の 測定法に比べてさらに高精度である。また JFP 小山工場と共同で、目標値から約 30per meg 以内のδ(O2/N2)値を持つ標準ガスを、47L シリンダーに 15MPa の高圧で 充填して大量生産する方法を開発した。仙台市郊外における試験的な連続観測結果 から、冬期のδ(O2/N2)と CO2 濃度の関係に日変化が見られ、化石燃料消費と大気海 洋間のガス交換の両方の影響を反映している可能性が示唆される。 得 ら れ た 結 果 を 、 Geophysical Research Letters に 投 稿 し た 。 ま た 7th International Carbon Dioxide Conference 、 13th WMO/IAEA Meeting of Experts on Carbon Dioxide Concentration and Related Tracer Measurement Techniques、および第 11 回大気化学討論会において発表した。その他各研究に共 著者として貢献した。 (2) 業績リスト 【論文】 Ishidoya, S., S. Suhawara, G. Hashida, S. Morimoto, S. Aoki, T. Nakazawa and T. Yamanouchi, Vertical profiles of the O2/N2 ratio in the stratosphere over Japan and Antarctica, Geophys. Res. Lett., submitted. 【学会やシンポジウム等での発表】 ・国際学会 Ishidoya, S., S. Suhawara, G. Hashida, S. Morimoto, S. Aoki, T. Nakazawa and T. Yamanouchi, Vertical profiles of the O2/N2 ratio in the stratosphere over Japan and Antarctica, Seventh International Carbon Dioxide Conference, September 25-30, 2005. Sugawara, S., S. Aoki, T. Nakazawa, J. Tang, D. Zhang, G. Shi, Y. Liu, S. Morimoto, S. Ishidoya, T. Saeki, T. Hayasaka, and M. Ishizawa, Observation of atmospheric CO2 concentration and its carbon isotopic ratio in China, Seventh International Carbon Dioxide Conference, September 25-30, 2005. S. Ishidoya, T. Nakazawa and S. Aoki, Preparation of a large amount of standard aiir for atmospheric O2/N2 measurements, 13th WMO/IAEA meeting of experts on carbon dioxide concentration and related tracer measurement techniques, Boulder, Colorado, USA, September 19-22, 2005. ・国内学会 石島健太郎、Prabir K. Patra、滝川雅之、秋元肇、中澤高清、青木周司、石戸谷 重之、Shamil Maksyutov、町田敏暢、菅原敏、橋田元、森本真司、大気中 N2O 濃度の空間分布と季節変動について— 観測とモデルの比較—、大気化 学シンポジウム、豊川、2006 年 1 月 11−13 日 町田敏暢,青木周司,中澤高清,豊田栄,巻出義紘,菅原敏,石戸谷重之,橋田元, 森本真司,本田秀之,並木道義,飯島一征,山上隆正,三陸上空と昭和基地 上空で観測された水素濃度の鉛直分布,大気球シンポジウム,相模原, 2006 年 1 月 23−24 日 菅原敏,青木周司,中澤高清,石戸谷重之,弦間康二,町田敏暢,橋田 元,森本 真司,豊田栄,本田秀之,並木道義,飯嶋一征,井筒直樹,山上隆正,クライ オ実験によって得られた日本上空成層圏大気中の微量気体の長期変動,大 気球シンポジウム,相模原,2006 年 1 月 23−24 日 菅原敏,青木周司,中澤高清,石戸谷重之,町田敏暢,橋田元,森本真司,本田秀 之,日本上空の成層圏における二酸化炭素濃度の長期変動と対流圏成層圏 の非平衡について,日本気象学会 2005 年度秋期大会,神戸,2005 年 11 月 20−22 日 佐伯田鶴,菅原敏,青木周司,中澤高清,石戸谷重之,Jie Tang,Dongqi Zhang, Guang-Yu Shi,Yu-Zhi Liu,森本真司,早坂忠裕,石澤みさ,中国における 温室効果気体の観測,日本気象学会 2005 年度秋期大会,神戸,2005 年 11 月 20−22 日 高村近子,中澤高清,村山昌平,石島健太郎,石戸谷重之,青木周司,森林生態 系における酸素濃度と二酸化炭素濃度の変動について,日本気象学会 2005 年度春期大会,東京,2005 年 5 月 15−18 日 菅 原 敏 , 青 木 周 司 , 中 澤 高 清 , 石 戸 谷 重 之 , Jie Tang , Dongqi Zhang , Guang-Yu Shi,Yu-Zhi Liu,森本真司,佐伯田鶴,早坂忠裕,石澤みさ,中 国における大気中の二酸化炭素とメタンの観測,日本気象学会 2005 年度春 期大会,東京,2005 年 5 月 15−18 日 石戸谷重之,菅原敏,橋田元,森本真司,青木周司,中澤高清,弦間康二,山内恭, 本田秀之,三陸および南極昭和基地上空における成層圏大気中の酸素濃度 の分布,第 11 回大気化学討論会,奈良,2005 年 6 月 15−17 日 豊田栄,吉田尚弘,菅原敏,石戸谷重之,弦間康二,青木周司,中澤高清,橋田元, 森本真司,山内恭,鈴木香寿恵,町田敏暢,本田秀之,南極昭和基地上空に おける成層圏大気中一酸化二窒素アイソトポマー比の分布と変動,第 11 回 大気化学討論会,奈良,2005 年 6 月 15−17 日 菅原敏,石戸谷重之,橋田元,青木周司,中澤高清,弦間康二,森本 真司,山内 恭,町田敏暢,豊田栄,吉田尚弘,本田秀之,南極昭和基地上空の成層圏に おける CO2 および SF6 の濃度とその平均年代についての考察,第 11 回大気 化学討論会,奈良,2005 年 6 月 15−17 日 菅 原 敏 , 青 木 周 司 , 中 澤 高 清 , 石 戸 谷 重 之 , Jie Tang , Dongqi Zhang , Guang-Yu Shi,Yu-Zhi Liu,森本真司,佐伯田鶴,早坂忠裕,石澤みさ,中 国における二酸化炭素濃度とその炭素同位体比の観測,第 11 回大気化学 討論会,奈良,2005 年 6 月 15−17 日 佐伯田鶴,菅原敏,青木周司,中澤高清,石戸谷重之,Jie Tang,Dongqi Zhang, Guang-Yu Shi,Yu-Zhi Liu,森本真司,早坂忠裕,中国における大気中メタ ンの観測,第 11 回大気化学討論会,奈良,2005 年 6 月 15−17 日 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 あ さ み りゅうじ 浅海 竜司 受入教員名:井龍 康文 研究グループ名:流体地球・惑星圏研究グループ(気候変動ダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的:造礁サンゴ骨格の地球化学的記録を用いた古海洋環 境解析 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進歩状況 平成 17 年度では,主に,グアム島で採取した造礁サンゴ骨格から得られた高時間 分解能の炭素・酸素同位体比データ(1787 年から 2000 年)に基づいて,西太平洋域 の海洋環境変動(特に,数年スケール〜数十年スケールの気候変動)を復元する研 究に取り組み,得られた結果を論文に公表し,学会で発表した.また,過去数百年間 の西太平洋域の海洋環境変動を空間的に復元することを目的として,サイパン島から 得られた造礁サンゴ骨格の炭素・酸素同位体比および金属元素濃度の分析を行っ た. その他には,炭酸塩岩中の金属元素濃度の定量化学分析の手法を習得するため に群馬大学に赴いた。また,サーモエレクトロン株式会社に赴いて,ICP-MS を用いた 高性能・高分解能分析に関するワークショップに参加した. さらに,統合国際深海掘削計画・IODP Expedition 308 South Pacific Sea Level (Tahiti)の Off Shore Party に参加するためにブレーメン大学に赴き,南太平洋のタ ヒチで掘削された炭酸塩堆積物や化石サンゴ骨格の地球化学的記録を抽出する研究 に携わった. 【研究成果】 (1) 成果概要 グアム島のサンゴ骨格の同位体比記録に基づいた過去 213 年間の古海洋環境変動 復元に関する研究の成果を,国際学術雑誌(Asami et al., 2005, J. Geophys. Res.) に発表し,NOAA(アメリカ大気海洋庁)のデータセンターに公表した.また,この成果 の一部を日本地質学会第 112 年年会で発表し,優秀講演賞が授与された.また,造礁 サンゴ骨格の長期記録に関するレビュー論文を国内学術雑誌に投稿した(浅海ほか, revised,地球化学). (2) 業績リスト 【学術雑誌:査読あり】 Ryuji Asami, T. Yamada, Y. Iryu, T. M. Quinn, C. P. Meyer and G. Paulay, 2005. Interannual and decadal variability of the western Pacific sea surface condition for the year 1787-2000: Reconstruction based on stable isotope record from a Guam coral, Journal of Geophysical Research, 110 (C5), C05018, doi: 10.1029/2004JC002555. 浅海竜司・山田 努・井龍康文:過去数百年間の古気候・古海洋変動を記録する現 生サンゴー数年〜数十年スケールの変動と長期変動の復元ー,revised,地 球化学. 【その他】 Ryuji Asami, T. Yamada, Y. Iryu, T.M. Quinn, C.P. Meyer and G. Paulay, 2005. Guam Coral Oxygen Isotope Data for 1790 to 2000, IGBP PAGES/World Data Cenceter for Paleoclimatology Data Contribution Series # 2005-051. NOAA/NGDC Paleoclimatology Program, Boulder CO, USA. http://www.ngdc.noaa.gov/paleo/coral/guam.html. 【学会やシンポジウム等での発表】 浅海竜司:サンゴ骨格に基づいた古気候復元,IODP Expedition 308 South Pacific Sea Level (Tahiti)シンポジウム,東京大学,2005 年. 浅海竜司・山田努・井龍康文:過去 200 年間の古エルニーニョ記録,日本地質学会, 京都大学,2005 年. 浅海竜司・山田努・井龍康文・G. Camoin:タヒチ化石サンゴの地球化学的記録が 語る第四紀の海洋環境変遷—IODP Expedition 310 Tahiti Sea Level の 展望—,日本地球化学会,琉球大学,2005. 浅海竜司・山田努・井龍康文:西太平洋域における 18 世紀末以降の海洋環境変動 —グアム島のサンゴ骨格記録からの復元—,日本地球化学会,琉球大学, 2005. 山田努・邊見紗知・浅海竜司・井龍康文:サンゴ礁の生物から読み取る高分解能環 境情報—シャコガイ殻の成長線と同位体比の例—,日本地球化学会,琉球 大学,2005. 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 やま ざ き あつし 山﨑 敦 受入教員名:岡野 章一 研究グループ名:流体地球・惑星圏研究グループ(太陽地球系ダイナミクス) 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的:プラズマ可視化の研究 より具体的には、「太陽地球系物理学においてダイナミックに変化する中性粒子や荷電 粒子(プラズマ)の大局的な空間構造を把握するための、共鳴散乱光を用いたリモートセン シング観測機器の開発」。 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 現在進行中の月周回衛星ミッションにプラズマイメージャーとしてヘリウムイオンおよび 酸素イオン共鳴散乱光を検出する極端紫外光望遠鏡を搭載予定である。観測に成功すれ ば、世界初となる電離圏から散逸する酸素イオンの散乱光画像を取得でき、酸素イオン流 出量の磁気活動度依存性、プラズマ圏の境界域と散逸経路の関係が明らかになる。また、 リングカレント発達時の酸素イオン供給メカニズム、電離圏へ戻る荷電粒子の流入経路・過 程の解明につながる成果を得られると考えられる。本年度は、観測器フライト品の電気性 能試験および較正試験、打上環境試験および熱環境試験を行うと同時に、オンボードプロ グラム・地上系ソフトウェアの作成を行った。 同様の技術は他惑星の電離圏・磁気圏撮像においても有効である。金星・火星電離圏 観測が可能となる観測機器の設計を行い、国内外の惑星探査計画に有意義な観測提案を 行った。しかし、希薄な酸素イオンの撮像には克服すべき困難な課題が残っている。酸素イ オン共鳴散乱光に隣接する波長域に存在し、非常に強度の強くノイズ源となる水素のライ マンα線を如何に除去するかという課題である。解決案として、光学系の反射鏡コーティン グの改良に着手した。 また、われわれの開発した多波長オーロラカメラを搭載した INDEX 衛星の打上が 2005 年 8 月に行われ、過去に例をみない時間分解能のオーロラ観測に成功し、オーロラ発光粒 子の同時観測に成功した。衛星運用を日夜行うとともに、観測データ評価・解析を行ってい る。 さらに、「のぞみ」衛星で観測した惑星間空間のヘリウム散乱光データを用いて、ヘリウ ムの 3 次元分布を求め、緯度・経度方向に非対称性があることがわかった。太陽光の緯度 依存性がこの分布非対称性をもたらすとの結論を得た。米国学術誌への投稿論文を投稿 し、修正中である。 また、金星電離圏界面の太陽風磁場依存性と水星ナトリウム大気観測に関する共同研 究および地球磁気圏界面のリモートセンシング観測に関する共同研究を行いそれぞれ米 国学術誌に投稿した。 【研究成果】 (1) 成果概要 SELENE 衛星搭載プラズマイメージャーの開発行い、可視光望遠鏡の較性試験・極端 紫外光望遠鏡の較性試験・地上系および搭載系ソフトウェアの開発を完了した。 共著も含め米国学術誌に 4 編の論文を投稿した。 (2) 業績リスト 【論文】 Kanao, M., N. Terada, A. Yamazaki, I. Yoshikawa, T. Abe, and M. Nakamura (2006), The effect of the motional electric field on the Venus nightside ionopause, Journal of Geopysical Research, in press. Taguchi, S., K. Hosokawa, A. Nakao, M. R. Collier, T. E. Moore, A. Yamazaki, N. Sato, and A. S. Yukimatu (2005), Neutral atom emission in the direction of the high-latitude magnetopause for northward IMF: Simultaneous observations from IMAGE spacecraft and SuperDARN radar, GEOPHYSICAL RESEARCH LETTERS, in press. 【投稿中論文】 Yamazaki, A., I. Yoshikawa, K. Shiomi, Y. Takizawa, W. Miyake, and M. Nakamura, Latitudinal variation of the solar He I 58.4 nm irradiance from the optical observation of the interplanetary He I emission, submitted to Journal of Geophysical Research. Yoshikawa, I., H. Nozawa, S. Kameda, H. Misawa, S. Okano, and A. Yamazaki, Which is a substantial source of sodium in the exosphere of Mercury ?, submitted to Journal of Geophysical Research. 【特許出願中】 酸素イオン共鳴散乱光撮像装置 【紀要】 山崎 敦, 三宅 亙 (2005), 紫外光観測器の 感度アップ , ISAS ニュース , ISSN 0285-2861. 【学会やシンポジウム等での発表】 山崎 敦, 三澤 浩昭, 土屋 史紀, 笠羽 康正, 高島 健, 小オービターによる「木星電 磁圏」探査計画~モデルペイロードの検討状況(撮像系)~, 地球惑星科学関連 学会 2005 年合同大会, 幕張メッセ. 山崎 敦, 三澤 浩昭, 土屋 史紀, 笠羽 康正, 高島 健, 中川広務, 木星電磁圏の直 接探査 ~リモートセンシングと粒子の同時観測~, 第 118 回地球電磁気・地球惑 星圏学会講演会, 京都大学. 山崎 敦, 田口 聡, 細川 敬祐, 中尾 昭, 藤田 茂, 田中 高史, マグネトポーズ境界で 発生する高速中性粒子について ~三次元シミュレーションと IMAGE/LENA 観 測からの考察~, 第29回極域宙空圏シンポジウム, 国立極地研究所. 山崎 敦, リモートセンシング観測(光学)と解析の現状と数値シミュレーション, 平成17 年度 名古屋大学太陽地球環境研究所 研究集会 「宇宙プラズマ/太陽系環境 研究の将来構想座談会4 ~数値実験とのシナジー研究の開拓に向けて~」, 伊 良湖ガーデンホテル. 平原 聖文, 藤川 暢子, 坂野井 健, 小淵 保幸, 井野 友裕, 山崎 敦, 浅村 和史, 笠羽 康正, 岡田雅樹, れいめい衛星による理学観測の初期結果, 第6回 宇宙 科学シンポジウム, 宇宙科学研究所. 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 い し だ は る ま 石田 春磨 受入教員名:浅野 正二 研究グループ名:地球進化史研究グループ 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 地球史においては巨大な隕石の衝突が幾度かあり、地球環境、ひいては生物進化 の過程に激変をもたらしたことが判っている。中でも、隕石衝突の際に発生するエアロ ゾルは、太陽光の入射を長期にわたって遮断し、地表の生物圏に大きな損傷を与えた と考えられている。本研究では、隕石衝突起源のエアロゾルが放射収支に与える影響 を、放射伝達計算モデルから定量的に評価し、隕石衝突と地球の気候変動、そして生 物絶滅との関係を評価することを目的とする。 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 前年度までに、エアロゾルの微物理特性および光学特性を考慮した一次元の放射 伝達モデルを構築し、エアロゾルの種類や発生量を変化させて放射収支計算を実行 できるようにした。これによって、エアロゾルが放射収支に与える影響を定量的に評価 することを可能にした。今年度は、紫外線域や可視光線領域といった細かい波長帯毎 においても放射収支が計算できるように放射伝達計算モデルを改良した。また、エア ロゾルの化学組成の変化も考慮できるようにした。更に、エアロゾルが存在する大気 における加熱率の鉛直プロファイルの計算を可能にした。 【研究成果】 (1) 成果概要 硫酸エアロゾルがオゾン層の破壊を通して、紫外線の入射量にどの程度影響を与 えるかについて評価するため、エアロゾルの発生量と成層圏中のオゾン量を変化させ ながら、太陽放射を紫外線領域、可視光線領域、および近赤外線領域の各波長帯毎 に分けて反射率、透過率、吸収率を計算した。その結果、地表面に到達する可視光線 域の入射量は、ほとんどエアロゾル量にのみ依存するのに対し、紫外線域においては、 エアロゾル濃度が小さいとき(約 10-4 g/cm2 以下)ではオゾン濃度の変化にも大きく依 存した。これは、オゾン量低下による紫外線の増加の影響は、エアロゾルが多い場合 はほとんど無いことを示唆している。またエアロゾルによる可視光線域、近赤外域の 吸収量は、エアロゾル濃度に比例していたが、紫外線域ではエアロゾル濃度が 10-4 g/cm2 付近で極大になることが判った。紫外線域の透過および吸収は、エアロゾルの 存在高度にも依存していることが示された。 エアロゾルが存在する大気における加熱率の鉛直プロファイルを波長帯毎に計算し た結果、10-2 g/cm2 程度のエアロゾルが成層圏中部に存在している場合は、加熱率は 一日あたり 30K 以上にもなることがわかった。これはおもに近赤外領域のエアロゾル による吸収によって引き起こされていた。一方、エアロゾル層の上層では、主に可視光 線域における吸収によって、一日あたり約 3K の加熱が存在していた。これは、エアロ ゾルによって反射された太陽光をオゾンが吸収することによって引き起こされると考え られる。また、エアロゾル層がオゾン極大層より下に存在する場合は、紫外線はオゾン に吸収される前にエアロゾルによって反射されてしまうため、紫外線による加熱率は 大きくないことが判った。 (2) 業績リスト 【論文】 H. ishida and S. Asano, 2005, A quasi-analytic solution of the radiative transfer equation for three-dimensional, heterogeneous atmospheres. Proceeding of IRS 2004 (in press). H. ishida and S. Asano, 2005, A quasi-analytic solution of the radiative transfer equation for three-dimensional atmospheres. Journal of Quantitative Spectroscopy and Radiative Transfer (revised). 【学会やシンポジウム等での発表】 Scientific Assembly of the International Association of Meteorology and Atmospheric Sciences 2005 (Beijing): A solution of the 3-D radiative transfer equation by using the wavelet function. 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 にいつま さ ち こ 新妻 祥子 受入教員名:掛川 武 研究グループ名:地球進化史研究グループ 在任期間:平成 17 年 4 月 1 日~平成 18 年 3 月 30 日 【活動内容】 (1) 研究課題または研究目的:初期地球における地球磁場と生命の進化 (2) 平成 17 年度研究活動の概要・進捗状況 地球磁場が生命に及ぼした影響をとらえるため,地球磁場発生初期に相当する約 35〜27 億年前の堆積岩と火山岩について古地磁気・岩石磁気・鉱物学的・地球化学 的な研究を行った.この研究は,西オーストラリア・ピルバラ地塊で掘削されたコア試 料を用いて,H16 年度から鹿児島大学根建心具教授との共同研究として進めている. 東北大学では,TEM 観察,SEM 観察,EPMA,XGT 分析に従事した.また,全国共 同利用施設・高知大学海洋コア総合研究センターにて,試料の収集,古地磁気・岩石 磁気実験を行い,古地磁気の検出,岩石中に含まれる磁性鉱物のキュリー点ならび に磁気特性を測定した.27 億年前の堆積岩に含まれる Ni の起源を推定するため,同 位体測定の予備実験を行った. また,30 億年前の古地磁気は未だ報告されていな いことから,カナダ・オンタリオ州のスティープロック鉱山で,30 億年前の堆積岩,炭酸 塩岩,火山岩の試料を採取し,予察的に古地磁気測定を行った. 【研究成果】 (1) 成果概要 27.7 億年前の西オーストラリア Mt. Roe Basalt とこれに挟在する堆積岩から古地 磁気方位を検出することに成功した.変質の少ない玄武岩のブロッキング温度 450-600˚C の古地磁気成分は,これまで報告されている Mt. Roe Basalt の古地磁気 方位と良く一致し,磁鉄鉱が初生的な古地磁気を保存していることから,今後,テリエ 法などを用いた古地球磁場強度の復元に用いることができる. 一方,変質した玄武岩,凝灰岩,堆積岩の古地磁気成分は,450˚C 以下のブロッキ ング温度で,現在の地磁気方向や掘削方向の上向きに近い方向を示し,ばらつきも 大きい.これらの古地磁気成分の解釈としては,次の3つが考えられる.(1)初生的な 磁鉄鉱が変成作用によってキュリー点より低いブロッキング温度の古地磁気成分を獲 得した.(2)磁鉄鉱が低温酸化によりマグへマイト化し,変質後に再帯磁した.(3)キ ュリー点 320˚C の磁硫鉄鉱が古地磁気成分を獲得した.いずれの場合も,玄武岩の 冷却に伴う古地磁気獲得以後の履歴を保存していると考えられる. 磁硫鉄鉱は,主に堆積岩中と,堆積岩に接する玄武岩中に産する.堆積岩中に含 まれる磁硫鉄鉱は,石英と共存する数 100µm 程度の砕屑性粒子と自生のノジュール (〜数 cm)がある.前者は,磁硫鉄鉱(Fe7S8)より鉄に富む組成をもち,後者は,磁硫 鉄鉱(Fe7S8)に近い値をもつことから両者で生成環境が異なると考えられる.前者は 現在の酸化的な大気中では不安定な鉱物であるため,当時の後背地,砕屑物の供給 過程,堆積環境を復元に重要な意味をもつ.後者は,Ni を数%含む磁硫鉄鉱など非 化学量論的な硫化鉱物が多いことから,100˚C 以下の低温で生成し,初期生命(硫酸 還元菌など)の関与を記録している可能性がある.どちらの硫化鉱物にもペントランダ イトが含まることが特異な点で,太古代の環境復元や生命と鉱物の相互作用の結果 が,Ni の同位体分別効果などとして記録されていることが期待できる. (2) 業績リスト 【論文】 Niitsuma, S., Kakegawa, T., Nagase, T., Nedachi, M., Occurrence of meta-stable sulfide minerals in organic carbon-rich sedimentary rocks of the 2.77 Ga Mt. Roe Basalt in Western Australia(投稿準備 中). Niitsuma, S., Sakaki, H., Nedachi, M. et al., Paleomagnetism of the Mt. Roe Basalt in the Pilbara Craton, Western Australia(投稿準備中). Suganuma, Y., Hamano, Y., Niitsuma, S., Hoashi, M., Hisamitsu, T., Niitsuma, N., Kodama, K., and Nedachi, M., Paleomagnetism of the Marble Bar Chert Member, Western Australia: implications for an Apparent Polar Wander Path for Pilbara craton during Archean(投稿 準備中). 日本地質学会 編(2006)日本地方地質誌 4・中部地方,朝倉書店,東京,p 564. 分担執筆. Niitsuma, S., Ford K. H., Iwai, M., Chiyonobu S. and Sato, T. Magneto-biostratigraphy correlation in pelagic sediments, ODP Site 1225, eastern equatorial Pacific, Proceedings of the Ocean Drilling Program, Scientific Results Volume 201 (revised). 【学会やシンポジウム等での発表】 Suganuma, Y., Hamano, Y., Niitsuma, S., Hoashi, M., Hisamitsu, T., Niitsuma, N., Kodama, K., and Nedachi, M., 2005. Paleomagnetism of the Marble Bar Chert Member, Western Australia: implications for an Apparent Polar Wander Path for Pilbara craton during Archean. AGU fall meeting (December, 2005. San Francisco). Niitsuma, S., Kakegawa, T., Nagase, T., Nedachi, M., 2005. Occurrence of meta-stable sulfide minerals in organic carbon-rich sedimentary rocks of the 2.77 Ga Mt. Roe Basalt in Western Australia. 2005年度日本質量 分析学会同位対比部会(2005年11月高知). 新妻祥子・掛川武・長瀬敏郎・根建心具,2005. 西オーストラリアMt. Roe Basalt (27.7億年前)に挟在する堆積岩中の準安定な硫化鉱物とその意義.日本地 質学会第112年学術大会講演要旨,59(2005年9月京都). 菅沼悠介,浜野洋三,新妻祥子,帆足雅通,久光敏夫,新妻信明,小玉一人,根建 心具,2005. 太古代におけるピルバラ地塊の仮想古地磁気極移動曲線の復 元と大陸移動速度.日本地質学会第112年学術大会講演要旨,61(2005年9 月京都). Niitsuma, S., Kakegawa, T., Nagase, T., Nedachi, M., 2005. Discovery of greigite from Archean rock?, 地球惑星科学関連学会合同大会要旨, B001-004 (2005年5月千葉幕張). Niitsuma, S., Kakegawa, T., Nagase, T., Nedachi, M., 2005. Significance of nickel-rich sulfides in the 2.77 Ga Mt. Roe sedimentary rocks. Abstracts 2005 Japan Earth and Planetary Science Joint Meeting, P074P-007 (May, 2005. Chiba). 菅沼悠介,浜野洋三,新妻祥子,帆足雅通,久光敏夫,新妻信明,小玉一人,根建 心 具 , An apparent polar wander path for Pilbara craton during Archean, 地球惑星科学関連学会合同大会要旨, E012-012 (2005年5月千 葉幕張) Suganuma, Y., Hamano, Y., Niitsuma, S., Hoashi, M., Hisamitsu, T., Niitsuma, N., Kodama, K., and Nedachi, M., 2005. Paleomagnetism of the Marble Bar Chert Member, Pilbara craton, Western Australia, Abstracts 2005 Japan Earth and Planetary Science Joint Meeting, P074P-010 (May, 2005. Chiba). 平成 17 年度 COE フェロー活動報告 みやざき かずゆき 宮崎 和幸 指導教員名:岩崎 俊樹 研究グループ名:流体地球・惑星圏研究グループ(気候変動ダイナミクス) 身分:日本学術振興会特別研究員(DC3) 採用期間:平成 15 年 10 月 1 日~平成 18 年 3 月 31 日 【研究内容】 (1) 研究課題または研究目的 本研究の目的は、成層圏および対流圏における大気微量成分の子午面輸送・混合 過程を明らかにすることである。時空間に連続した輸送解析を行うため、大気大循環 モデルに結合した3次元化学輸送モデルにより構成される大気微量成分の再解析シ ステムを構築した。また、物質輸送過程を適切に理解するために、独自の子午面輸送 診断手法の開発にも取り組んだ。 (2) 平成 17 年度研究活動の概要 まず、数値モデルを用いて観測データの不足を補い時空間に連続した輸送解析を 可能とするために、ナッジング大気大循環モデルにより駆動される化学輸送モデルを 使用して過去 10 年程度について大気微量成分の再解析を実施した。高精度の再解 析を実施するために気象場を同化する手法について最適化を図った結果、再現され る微量成分分布および子午面循環は同化気象変数と同化緩和時定数に強く依存する ことを明らかにした。 次に、微量成分の子午面輸送を診断する手法として、質量重み付き帯状平均に基 づく輸送方程式を用いた独自の手法を提案した。この解析手法は従来の解析手法と 比較して幾つかの利点が示し、物質輸送過程の厳密な診断と新たな理解が可能とな ると考えられる。 開発した再解析システムにより再現された微量成分分布に独自の輸送診断ツール を適用し、オゾンなど大気微量成分の輸送・混合過程の理解に向けたいくつかの研究 に取り組んだ。まず、子午面オゾン輸送の季節変動とそのオゾン全量への寄与、子午 面におけるオゾンのライフサイクルを明らかにした。更に、子午面での大気混合輸送 の基本的概観を理解するため、微量成分分布から算出される水平拡散係数の物質依 存性と共通性を明らかにした。長寿命化学種は共通する拡散係数の時空間変動を示 し、その特徴は大気混合輸送の基本的様相を示すと考えられ、大気寿命が数年よりも 短い化学種では、非線形効果のために拡散係数は大きな値になり物質間の共通性は 失われることを明らかにした。また、成層圏亜熱帯および極渦縁辺付近で観測される 長寿命化学種の急な南北濃度勾配の変動メカニズムを明らかにするため、化学種濃 度勾配変動に対する輸送過程の役割を定量的に診断した。その結果、鉛直移流およ び水平混合が成層圏における長寿命化学種の南北濃度勾配の変動に対して支配的 であり、濃度勾配の発達・減衰は子午面循環および大気波動の砕波に伴う混合の季 節変動と関連して説明されることを明らかにした。 【研究成果】 (1) 成果概要 オゾンなど成層圏の大気微量成分の輸送・混合過程に関する研究成果をいくつか の国際学会や学術誌に発表し、多くの研究者と議論を持つことができた。更に、高精 度な微量成分の再解析への提言として、微量成分の再解析システムに関する論文も 学術誌に発表し、その結果はデータ同化に関する国際学会でも発表した。また、本年 度に取り組んだ成層圏の輸送・混合過程に関する研究の未発表部分については今後 論文としてまとめる予定である。 (2) 業績リスト 【論文】 Miyazaki, K. and T. Iwasaki, Diagnosis of meridional ozone transport based on mass weighted isentropic zonal means, J. Atmos. Sci., 62, 1192-1208, 2005. Miyazaki, K., T. Iwasaki, K. Shibata and M. Deushi, Roles of transport in the seasonal variation of the total ozone amount, J. Geophys. Res., 110, D18309, 1029/2005JD005900. Miyazaki, K., T. Iwasaki, K. Shibata, M. Deushi and T. Sekiyama, The impact of changing meteorological variables to be assimilated into GCM on ozone simulation with MRI CTM, J. Meteor. Soc. Japan, 83, 909-918, 2005. 【学会発表】 Miyazaki, K., and T. Iwasaki, Diagnosis of meridional ozone transport based on mass weighted isentropic zonal means, 2005/6/13-17, AMS 13th Conference on Middle Atmosphere, Cambridge, Massachusetts, USA. Miyazaki, K., T. Iwasaki, K. Shibata and M. Deushi, The roles of transports in seasonal variation of total ozone amount, 2005/6/13-17, AMS 13th Conference on Middle Atmosphere, Cambridge, Massachusett, USA. Miyazaki, K., T. Iwasaki, K. Shibata, M. Deushi and T. Sekiyama, Choosing meteorological variables to be assimilated into CTM driven by GCM for ozone reanalysis, 2005/6/13-17, AMS 13th Conference on Middle Atmosphere, Cambridge, Massachusetts, USA. Miyazaki, K., and T. Iwasaki, Diagnosis of meridional ozone transport based on mass weighted isentropic zonal means, 2005/7/18-29, The IAGA Scientific Assembly, Toulouse, France. Miyazaki, K., T. Iwasaki, K. Shibata and M. Deushi,, The roles of transports in the seasonal variation of the total ozone amount, 2005/7/18-29, The IAGA Scientific Assembly, Toulouse, France. Miyazaki, K., T. Iwasaki, K. Shibata, M. Deushi, T. Sekiyama and T. Sasaki, Choosing meteorological variables to be assimilated into CTM driven by GCM for ozone reanalysis, 2005/9/12-15, Third Stratospheric Processes And their Role in Climate (SPARC) Data Assimilation (SPARC-DA3) Workshop, Banff, Canada. Miyazaki, K., and T. Iwasaki, Diagnosis of mean-meridional circulation and meridional constituent transport based on mass weighted isentropic zonal means, 2005/9/12-15, Third Stratospheric Processes And their Role in Climate (SPARC) Data Assimilation (SPARC-DA3) Workshop, Banff, Canada. Miyazaki, K., T. Iwasaki, K. Shibata, M, Deushi, T. Sekiyama, H. Akiyoshi, M. Takigama, Diagnostic tool for meridional constituent transport based on mass-weighted isentropic zonal means: Intercomparison of MRI and NIES chemical transport models, 2005/10/17-19, CCMVal2005, Boulder, USA. 宮崎和幸, 岩崎俊樹, 大気組成から算出される拡散係数の物質依存性と共通性, 2005/11/20-22, 日本気象学会 2005 年秋季大会, 神戸 宮崎和幸, 岩崎俊樹, 柴田清孝, 出牛真, 関山剛, ナッジング化学輸送モデルを 用いた大気組成シミュレーション- 気象場同化手法の検証 - , 2006/1/11-13, 第 16 回大気化学シンポジウム, 豊橋