Comments
Description
Transcript
基礎技術 - NTT
基 礎 技 術 CONTENTS 新しい結晶構造に作り替えた単結晶シリコン らせん方向が温度で反転するシリコン高分子 超臨界流体を利用した極微細パターン形成技術の開発 電子のスピン状態の操作により半導体レーザの偏光特性を制御 フォトドライブ IC のコア回路 −共鳴トンネルダイオードと単一走行キャリアフォトダイオードで構成− 電気化学発光によるレーザ発振 光コネクタサイズで低電力な 2.5Gbit/s 光受信モジュール 小型・高集積可能な自己保持型マイクロ光スイッチ(熱毛管型光導波路スイッチ Olive) 16 × 16 熱光学マトリクススイッチ 低温動作固体電解質型燃料電池の空気極用新材料 −発電効率が40%向上の見通し− 電力消費を平準化し、夜間電力を有効活用するナトリウム・硫黄電池システム 古紙のリサイクルから新素材を開発(マイクロポーラスマテリアル:MPM) 速報型日英機械翻訳システム(ALTFLASH) 音や映像を瞬時に探索する時系列アクティブ探索法 人の言葉に臨機応変に応対するコンピュータ(音声対話システム DUG-1) 運動錯視 −視覚における「動き」の情報の新しい役割− なお、掲載されている研究所名は、移行本部発足前の名称となっております。 ○ ○ right-handed helix fast ○ ○ ○ る3-V族半導体を用いて作製されてきました。シリコン(Si)は、 ○ テロ構造は、材料の多様性から、主に、ヒ化ガリウムを代表とす fast ○ い素子の作製を可能としました。異なる元素の半導体によるヘ ○ は、特有の電気的、光学的性質を示し、単一材料では実現できな ○ ○ 薄膜を積層することが可能となりました。得られたヘテロ構造 ○ ○ エピタキシャル成長技術の進歩により、異なる元素の半導体 left-handed helix ○ 新しい結晶構造に作り替えた単結晶シリコン ○ (nm) wavelength ○ ○ 300 250 ○ 当社では、新しい結晶構造をもつ単結晶 Si の成長に、ホウ素 350 ○ ○ ば、Si 単体でヘテロ接合を作製することが可能となります。 ○ に依存しますので、異なる結晶構造をもつ Si 薄膜を積層できれ ○ み合わせることが困難です。ところが、物質の性質は結晶構造 400 ○ 半導体産業における主要な材料ですが、ほかの半導体材料と組 ○ ○ -15 -10 -5 0 5 10 15 Circular Dichroism Signal (a. u.) ●ラセンポリシランの主鎖巻き方向が右巻きから左巻きに転移することによ る光学スイッチ ○ ○ ○ た。その上で、表面 B 濃度と表面欠陥を制御する技術と、表面か ○ ○ 今後は、より完全な単結晶の成長と、より短い周期で双晶境界 ○ ○ を含む結晶の成長を実現するとともに、 新しい物性の確認を目指 ○ ○ 成長に成功しました。 ○ ○ 後の加熱を繰り返すことにより、新しい構造をもつ単結晶 Si の ○ して、これらの技術を基礎に、一定の厚さの Si 層の成長と成長 ○ ら数原子層の領域の結晶方位を測定する技術を確立しました。 そ ○ ○ ○ 密度を精密に制御することが不可欠であることを明らかにしまし ○ 表面 B 濃度と、ステップや B の配列の乱れなどの表面の欠陥の ○ る物性が期待されます。当社は、最初に、双晶 Si 層の成長には、 ○ 的に双晶境界を有する単結晶 Si は、ダイヤモンド型 Si とは異な ○ ○ ○ ○ 性質を用いました。Siは、自然にはダイヤモンド型構造をとりま す。双晶境界は局所的なウルツ鉱型構造とみなせますから、周期 200 ○ 結晶方位が 180°回転した双晶 Si 層がエピタキシャル成長する ○ (B)が規則的に配列した Si(111)表面において、基板に対して 健全な情報流通社会を推進していく上で、単なる高性能・低コ スト化の追求ではなく、 まったく新しい発想や原理にもとづく環 境と人に優しい機能材料やデバイスの研究開発が現在強く望まれ ています。最近研究所では、シリコン原子が細く長くまっすぐに つながった理想的ならせん状高分子(ラセンポリシランという) のらせん構造と光物性を精密に制御することに成功しました。 ラ センポリシランはシリコン原子が長くつながったらせん状の高分 子半導体で、左巻き(あるいは右巻き)の均一ならせんピッチを もち、まっすぐで長さ(1000 分の数 mm)も太さ(シリコン 原子幅= 0.2nm)もきれいにそろったものです。これは、有機 溶媒に簡単に溶けます。取り扱いが易しく、室温でも非常に安定 しています。 以下に示すようなラセンポリシラン構造に由来する いくつかの興味深い現象が見いだされています。 (1)らせんのドミノ倒しのような現象 らせんの巻き性(左巻きあるいは右巻き)を指示する光学活性 なシリコン原料が主鎖中に不純物としてほんのわずか含まれてい ると、主鎖がすべて左巻き(あるいは右巻き)に片寄ってしまい ます。 (2)らせんの巻き性が多数決の原理で決まるという現象 ポリシランに含まれる、 左巻きを指示するシリコン原料と右巻 きを指示するシリコン原料の組成の多少によって、 主鎖がすべて 左巻き(あるいは右巻き)に片寄ってしまいます。 (3)最近見いだされた現象 室温では右巻きを指示していたシリコン高分子の巻き性が温度 を下げることによって、 主鎖が右巻きから左巻きに転移するとい うものです。このらせん方向の反転現象は可逆です。構造の最適 化により、 らせん反転温度を低温から高温まで広範囲に制御でき ることにも成功しました。 このようにラセンポリシランの構造を分子レベルで精密に制御 することにより、光学活性を利用した低消費エネルギー、環境調 和性のスイッチ・メモリーの研究にはずみがつくものと期待され ABCABCABC ABC 32 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ●新しい結晶構造をもつ単結晶 Si の模式図と断面 TEM 像 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (基礎研究所) ○ ○ します。 らせん方向が温度で反転するシリコン高分子 ています。 (基礎研究所) ○ ○ ○ 左回りの 円偏光 ○ なります。 ○ ○ ○ GaAs AlGaAs / AlAs ○ ン倒れは回避できます。究極的なリンス液は、表面張力がゼロの 0 840 860 880 900 ○ 波長(nm) ●面発光レーザの発振スペクトル ○ ○ ○ ○ 能となりました。さらには、簡単な操作で大きな基板を均一に超 ○ ○ 電子のスピン状態の操作により半導体レーザの偏光 特性を制御 研究所では、電子のスピン(電子の自転の向き)を操作し、面 発光レーザの偏光特性を制御することに成功しました。 光の波に は通常用いられる直線偏光と呼ばれる波以外に、右回りと左回り の円偏光と呼ばれる特殊な波がありますが、 面発光レーザにおい ○ ○ ○ (基礎研究所) ○ 臨界処理できる専用装置も併せて開発しています。 ○ ○ 界とされて形成不可能であった超微細なパターンが初めて実現可 ○ ○ この水分制御超臨界乾燥法により、これまで解像限界、形成限 ○ れなくパターンを形成することが可能となりました。 ○ いられる高分子レジストのようなやわらかい材質でも、 倒れや膨 ○ ○ して用いるシリコンはもとより、 デバイスパターン形成工程で用 ○ ○ る原因となるからです。この方法の考案により、基板パターンと ○ 込んだ超臨界流体がパターンの中に拡散してパターンを膨れさせ ○ 水分制御超臨界乾燥法を開発しました。水分があると、水に溶け ○ は、パターン倒れの解決に超臨界流体を理想的に用いるために、 ○ ○ ガスを集めて作られた再利用二酸化炭素を使用します。さらに ○ ○ 超臨界流体です。超臨界流体としては、安全で臨界点が低く、廃 ○ たがって、表面張力の小さいリンス液で洗浄、乾燥すればパター ○ ○ した。毛細管力はリンス液の表面張力によりもたらされます。し ○ ○ (リンス液)を乾燥させる時の毛細管力であることを見いだしま AlGaAs / AlAs ○ 工程で生じます。その原因は、水やアルコールなどの最終洗浄液 発振光 ○ パターン倒れは、 パターンを作製するときに必要な洗浄/乾燥 励起光 0.5 ○ ○ されていきますが、 反面パターンが倒れやすくなることが問題と レーザ出力 ○ ○ が現状です。その結果、高アスペクト比パターンが密集して形成 ○ 特性を保つためには、 パターンの高さはそれほど減少できないの ○ ンを形成しなければなりません。しかしながら、材料の基本的な ○ ○ に必要な高機能デバイスの開発には、 まず微細で高密度のパター 右回りの 円偏光 右回りの円偏光 を照射した場合 ○ コンピュータや携帯電話など通信機器の小型・高性能化のため 1 ○ 超臨界流体を利用した極微細パターン形成技術の開発 て電子スピンの操作により、これらの2種類の円偏光を室温で自 在に発振させられることを世界に先駆けて実証しました。 実験では、赤外線を発光するガリウムひ素製の面発光レーザ に、波長板を用いて右回り、および左回りの円偏光状態に調整し た励起光を照射してレーザ発振させました。 励起光として円偏光 を用いると、 レーザの活性層内にスピンの向きがそろった電子が 励起されますが、 このスピン向きがそろった電子がエネルギー緩 和する過程で円偏光を発光するという現象にもとづいて、 偏光特 性を制御します。実験では、右回りの円偏光を当てたときは右回 りの円偏光が発振、左回りの円偏光の場合は左回りの円偏光が発 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ●形成した 20nm 幅レジストパターン 振することを実際に確認しました。 通常の面発光レーザは直線偏 光を発振しますが、この研究の成果は、電子の自転の向きをそろ えることによって特殊な円偏光が実際にレーザ光となることを実 証してみせた点にあります。 最近エレクトロニクスの最新分野では、電子の自転に注目した 「スピン工学」という新たな研究領域が台頭しつつあります。この 研究成果も電子のスピンを制御し、新たな光機能を創出しようと いう発想から生まれたものですが、電子のスピンを操作すること により2種類の円偏光を自在に発振できることを実証し、従来の 光の強度や波長以外に、光の偏光状態に信号をのせる可能性を示 水分制御超臨界乾燥法 200nm ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ これまでの乾燥法 したという意味で、 光情報通信に新たな道を開く結果といえます。 (基礎研究所) 33 ○ ○ ○ ○ マルチメディアの急激な増加により、 基幹通信網の容量を拡大 ○ ○ フォトドライブ IC のコア回路 −共鳴トンネルダイ オードと単一走行キャリアフォトダイオードで構成− ○ ○ ○ hν hν ○ ○ ○ タフェースを有する超高速 IC(フォトドライブ IC)のコア回路 励起状態 カチオンラジカル状態 基底状態 アニオンラジカル状態 ○ 電極&共振器 電極端子 ア回路において80Gbit/sのDEMUX 動作を実現しました。こ ○ ○ ○ ○ されることより、 実装における電気インタフェースの問題は解決 ○ ○ という超高速光入力信号に対して、40Gbit/sの電気信号が出力 ○ ○ の消費電力は 7.75mW と極めて低消費電力でした。80Gbit/s ○ フォトドライブ IC を開発する予定です。 ○ ○ ○ とにより、コア回路だけでなく、出力バッファを有する超高速 (システムエレクトロニクス研究所、光ネットワークシステム研究所) IC: Integrated Circuit *2 RTD: Resonant-Tunneling Diode ○ *3 UTC-PD: Uni-Traveling-Carrier Photodiode ○ *4 DEMUX: Demultiplexer ○ *5 HFET: Heterostructure Field Effect Transistor 電気化学発光によるレーザ発振 環境中に放出された有害物質や生体内に蓄積された有害物質を、 高感度に検出する技術は、今後ますます重要になってくると思わ れます。光を用いた分析法は、近年の光検出デバイスの発展とと もに、高感度で簡便な方法になってきました。しかし、より詳細 な分析のためには、分光分析が欠かせず、そのためには、発振波 長域が広くかつ発振波長の連続可変なレーザ光源が必要となりま す。これまでは、色素レーザが用いられていましたが、このレー ザを駆動するためには、これとは別に大出力のより波長の短い レーザを必要とし、結果的に全体として非常に高価で大掛かりな 装置となっていました。 研究所では、 電気化学発光を利用した新しい発光素子を作製し、 レーザ発振現象を発見しました。電気化学発光は色素溶液を電気 分解することによって発光する現象ですが、 その発光強度は低く、 発振しきい値には遠くおよびませんでした。そこで、平面白金電 極を 2 枚向い合わせにして、その間隔を数μ m 程度に接近させ、 ● 80Gbit/s の識別・分離動作 電気信号出力 RTD 終えた分子も再び電極に戻って同じ発光反応を繰り返すために、 ○ ○ 強い発光強度を得ることができました。また、電極はミラーとし ても機能するために、微小な共振器としての特性も利用すること ○ ○ ○ ○ ○ 50 100 150 200 250 300 350 400 (EOS:Electro-Optic Sampling) ○ ○ Time(ps) ○ 0 34 め、効率良く色素分子を反応させることができ、また一度反応を ができ、レーザ発振のしきい値を下げることができました。しき い値の観測のほか、発光スペクトルの変調やスペクトルの先鋭化 も観測することができました。 電流駆動による色素分子のレーザ発振はこれまでに例がなく、 新領域への開拓の足掛かりになるだけでなく、小型の分光分析装 ○ ○ 光信号入力 ○ UTC-PD 40Gbit/s 反転電気信号出力 ○ RTD その中の色素溶液の電気分解を行いました。電極間隔が小さいた ○ 電気クロック 信号入力 EOS signal intensity(a. u.) 80Gbit/s 光信号入力 ○ ○ ●フォトドライブ IC のコア回路 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ *1 ○ ○ ○ ○ ○ ジスタ(HFET*5)をモノリシックに集積する技術を確立するこ ○ 今後は、RTDとUTC-PDに加えてヘテロ接合電界効果トラン ○ ○ されています。 ●試作した素子 ○ の電気信号が出力されている様子がわかります。このときの IC ○ の光入力信号が 1 ビットおきに反転・DEMUX され、40Gbit/s ○ ○ PD だけで構成されており、極めてコンパクトです。80Gbit/s ○ ○ の IC のコア回路は図に示すように、2 つの RTD と 1 つの UTC- 溶液導入管 ○ *4 ○ 光入力インタフェースを有するフォトドライブ IC を作製し、コ ○ 板上にモノリシックに集積することに成功しました。この結果、 ○ ○ 作が可能です。研究所では、これらを InP(インジウムリン)基 ○ ○ 150GHz 以上の高帯域をもち、かつ低バイアス電圧でも高速動 ●電気化学発光レーザの動作原理 ○ イッチング速度を有することが特徴です。また、UTC-PD は ○ RTD は室温で負性抵抗特性を示すとともに、極めて速いス ○ ○ ○ を作製しました。 ミラー電極 ○ キャリアフォトダイオード(UTC-PD*3)を用いて、光入力イン ○ ります。そこで、共鳴トンネルダイオード(RTD*2)と単一走行 ○ 題により、将来の 100Gbit/s 級 IC は、極めて実現が困難であ ○ ○ トランジスタの動作速度限界や電気インタフェース限界などの問 ○ 速度のIC*1 が必要となります。しかし現在のIC技術の延長では、 ○ を限界まで利用するには、少なくとも100Gbit/sを超える動作 ハーフミラー電極 ○ することが急務になっています。光ファイバの10THzの広帯域 置やセンサなどへの応用も期待されます。 (基礎研究所) *1 ○ ○ 透過 ○ ○ ります。とくに受信モジュールは送信モジュールに比べて、アナ ○ スイッチチップ 入力光 8心テープ心線 導波路コア 拡大 ○ 規模が大きくなり、超小型・低電力化は難易度が高いとされてい 反射 ○ ログ的要素が強く、3R 機能を実現するために部品点数・回路 屈折率整合液 光導波路基板 ○ *2 ○ 送受信モジュールの超小型化・低電力化・低コスト化が必須にな ○ ○ とする将来のフォトニックネットワークを実現するためには、光 上部基板 溝 ○ 100 波長以上の WDM 技術や波長ルーチング技術をベース 薄膜ヒータ ○ 光コネクタサイズで低電力な 2.5Gbit/s 光受信モジュール 25 ○ 設計の各階層において総合的に見直し、超小型・低電力・低コス ○ ● Olive の基本構造と外観 ○ ○ ○ ○ を採用、低電圧回路構成技術、1 チップ CDR*5 回路構成技術な ○ ○ めに、製造技術として0.5μmSiバイポーラ技術SST-1C(NEL) ○ ○ した。2.5Gbit/s という高速動作領域で低電力化を実現するた セラミック パッケージ ○ IC設計では外付部品削減化・無調整化アンプ回路構成を開発しま 単心心線 ○ た一体型構造を開発、実装方法ではMCM*4とバンプ技術を採用、 m ○ ○ ト化に適した技術を開発しました。超小型化のため、モジュール 構成では光MU*3コネクタと電気バタフライパッケージを融合し 0μ ○ 研究所では、受信モジュールをモジュール構造、実装方法、IC ○ ○ ○ ました。 ○ ○ 50 分の 1 ∼ 7 分の 1、電力において 5 分の 1 ∼ 2 分の 1 を達 ○ ○ は0.64Wを実現しています。サイズにおいて既存モジュールの ○ ○ し、サイズはコネクタ込みで 9.0 × 30.3 × 7.7mm、消費電力 ○ このモジュールの受光感度は -19.4dBm ∼ > -2dBm を達成 ○ ○ どを開発しました。 ○ を進め、光インタフェース全体の小型・低電力・低コスト化を進 ○ ○ トワーク OAM*6 情報を扱うディジタル回路部の小型・低電力化 ○ ○ 今後は10Gbit/sへの高速化、ならびに受信回路の後段でネッ ○ ○ 成しています。 *2 3R: Reshaping, Retiming, Regenerating ○ *3 MU: Miniature Unit-coupling ○ ○ WDM: Wavelength Division Multiplexing *4 MCM: Multi-Chip Module *5 CDR: Clock and Data Recovery *6 OAM: Operation, Administration and Maintenance マルチメディア社会の進展に伴い、 大容量の情報伝達ができる 光通信網や光加入者システムの開発が進められています。 これら の光通信システムには、光配線の柔軟な切り替え作業やシステム が故障した際の予備系への切り替え動作を信頼性が高く行える、 小型・低損失な自己保持型光スイッチが必要となっています。 研究所では、石英系プレーナ光波回路(PLC*1)基板上にマイ クロマシン技術を用いて、 低損失で高集積化が可能な超小型の熱 毛管型光導波路スイッチ(Olive*2)を開発しました。 Oliveは、交差光導波路の交差部に形成された微小溝に導波路 のコアと同一の屈折率を持つ液体を封入し、 溝のそばに形成され た薄膜ヒ−タを用いて液体を移動させて光路の切り替えを行う、 まったく新しい動作原理にもとづく光スイッチです。この光ス イッチでは、 光路の切り替えに溝壁面での光の全反射を利用して いるため、波長や偏波面に依存せず、また低挿入損失(1 × 8 規 模で 3dB 以下)、高消光比(> 50dB)、低クロスト−ク(< ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ *1 ○ (光ネットワークシステム研究所) ○ ○ 展させていく予定です。 小型・高集積可能な自己保持型マイクロ光スイッチ (熱毛管型光導波路スイッチ Olive) ○ ○ リミッタアンプ クロック・データ プリアンプ 再生回路 スリーブ スタッブ レンズ PD ○ ○ バタフライパッケージ(3R-ICs) ○ MUコネクタ 安定な液体を、光部品として実績のある PLC 基板内に密封した 構造であるため、極めて高い信頼性を有しています。 現在この光スイッチは、 低速加入者伝送システムの経済的な高 ○ ●超小型・低電力 2.5Gbit/s 光モジュール構造 -50dB)などの優れた特徴があります。さらに、熱的・化学的に バイス、さらに WDM 用アド・ドロップ・スイッチや光クロスコ ネクト用マトリクススイッチなどの広範囲な応用が期待されてい ます。 ○ ○ 放熱フィン 信頼化に必須な OSU*3 の共通予備構成を実現するためのキ−デ (光エレクトロニクス研究所) *1 PLC: Planar Lightwave Circuit ○ ○ 7.7mm ○ ○ 光信号 2.5Gbit/s 30.3mm *2 Olive: Oil latching interfacial variation effect *3 OSU: Optical Subscriber Unit ○ ○ ○ アウターリード 35 800 新空気極材料 700 電子伝導度 (S/cm) ○ 機能を実現するためのキーデバイスです。研究所では、これまで ○ ○ ○ イッチを研究開発してきました。8 × 8 規模までのスイッチは、 400 従来の空気極材料 300 La0.8Sr0.2MnO3 ○ 200 ○ 500 900 1000 ○ ○ 温 度(℃) ●空気極材料の電子伝導度の比較 ○ ○ ○ ○ 処理により17Wに抑えられ、ボード実装時においても十分冷却 ○ 費電力は、 局所加熱位相トリミング技術による無バイアス電力化 ○ 波長範囲において、ほぼ平たんな波長特性が得られました。総消 ○ ○ プファイバアンプの増幅帯域を網羅する 1530 ∼ 1560nm の ○ ○ 平均 On/Off 比は 55dB と極めて良好であり、エルビウムドー ○ 256通りすべての入出力経路における平均挿入損失は6.6dB、 ○ 得るために、スイッチ干渉計を二重化した構成になっています。 ○ チ素子が集積されています。スイッチ素子は、高い On/Off 比を ○ ○ 石英系導波路群に、256 個(8 × 8 スイッチの 4 倍)のスイッ ○ ○ 100mm 角の PLC チップ内にレイアウトされた総長 66cm の 800 ○ クススイッチは、6 インチウェハ上に作製されており、約 700 ○ 閉塞マトリクススイッチを開発しました。この 16 × 16 マトリ 600 ○ 400 ○ 今回、大規模集積化の要望に応えるために、16 × 16 厳密非 500 0 300 ○ れています。 600 100 ○ ネットワークシステムの進展に伴い、さらなる規模拡大が要求さ LaNi0.6Fe0.4O3 ○ すでに NTT グループ会社を通じて市販されていますが、光波 ○ ○ 用いた位相制御による光路切り替えを行う干渉計型熱光学光ス ○ る石英系プレーナ光波回路(PLC)技術をもとに、熱光学効果を ○ 低損失で長期安定性や大規模集積性に優れるといった特徴を有す ○ ○ 波ネットワークシステムの波長多重(WDM)光クロスコネクト ○ ○ 空間光スイッチは、 将来の高速マルチメディア通信を支える光 ○ ○ ○ 16×16 熱光学マトリクススイッチ ○ ○ 低温動作固体電解質型燃料電池の空気極用新材料 −発電効率が 40%向上の見通し− 固体電解質型燃料電池(SOFC*)は、クリーンで高効率な発電 が可能であり、将来のクリーンエネルギー源として期待されてい ます。SOFC の動作温度は一般に 1000℃ですが、これを 800 ℃程度まで低減することで経時劣化の低減、セルモジュールの小 型化が可能となります。また、低温化により従来のセラミック材 料に加えて安価な金属材料の使用が可能となります。これにより ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (光エレクトロニクス研究所) ○ り、デバイスとしての完成度を向上していく予定です。 ○ 今後は、モジュール化やさらなる消費電力の低減化などによ ○ ○ ○ 可能なレベルになりました。 な動作温度の低減には、固体電解質におけるイオン伝導度の向上 や電極の電子伝導度や電極活性の向上が必要です。 そこで材料探索を行い、低温動作用空気極材料として優れた特 性を有する LaNi0.6Fe0.4O3 を見いだしました。この材料は、従来 材料のLa0.8Sr0.2MnO3 に比べて800℃における電子伝導度が約 3倍優れています(図) 。またc熱膨張係数が電解質材料に近いた め、運転・停止に伴いセル内に生じる熱応力を緩和できます。こ れにより発電効率と信頼性の向上が期待できます。この空気極材 料を用いた燃料電池セルを作製して、800℃で発電試験を行い、 従来のセルに比べて最大出力密度が約 40%向上することを確認 しました。この新電極材料は、従来比で約3倍の電極活性があり、 これも出力密度の向上に貢献したことがわかりました。 今後は、燃料極などほかの要素材料の開発を行い、SOFC の高 10 cm ○ 36 (入出力システム研究所) ○ 5 ○ 0 信頼性化・低コスト化に向けた研究開発を進める予定です。 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● 16×16 厳密非閉塞マトリクススイッチチップ 信頼性が高く安価な燃料電池システムが実現できます。このよう * SOFC: Solid Oxide Fuel Cell ○ ○ 木 ○ 当社は、国内総売電量の約 200 分の 1 を消費する商用電力消 ○ 費量が最も多い企業であり、年々増加する傾向にあるエネルギー ○ コストを抜本的に抑制するため、トータルパワー改革運動 ○ 再生製品 粘土 パルプ工場 ○ 電力消費を平準化し、夜間電力を有効活用するナト リウム・硫黄電池システム 製品 市場 古紙 回収 製紙スラッジ 【再生紙製紙工場】 ○ 資源有効利用 ○ ○ ○ ○ ○ 畑 他の用途 客土 使用済みマイクロポーラスマテリアル再利用 ●ガス浄化●土壌改良 ●劣化防止(耐酸性コンクリート) ●紙のリサイクルの流れと再利用技術 ○ ○ ○ また、 LANによるシステム制御の実現や電力設備のオペレーショ ○ ○ た。その結果、従来技術と比較して、47%の低コスト化および ○ ○ ○ 今後は、電池本体の量産化によるコスト低減が図れるよう、屋 ○ 内設置の実現などの法規制緩和に向けた働きかけを行います。 ○ ○ (入出力システム研究所) ○ ○ ○ サイクル充放電後でも活物質の漏えいがないことを確認しました。 ○ 電池の安全性評価については、過電圧などの試験を実施し、長期 ○ 81%から90%への双方向変換効率の向上を達成しました。 NaS ○ ○ 新しい地絡検出技術を開発し、絶縁トランスの削除を実現しまし ○ ○ 向けて電池電圧の高電圧化や変換電力の大容量化を行うとともに、 ○ きました。双方向電力変換装置については、経済化・高効率化に ○ ンシステム(ALICE*2)との整合性についても実証することがで ○ ○ ○ と充放電効率などの運転データの蓄積を行うことができました。 ○ 験を実施しました。2 年間にわたる試験の結果、安定動作の確認 ○ てはじめて、NaS電池を鈴鹿研修センタに導入し、フィールド試 ○ 電力会社で行われていましたが、このたび当社が電力需要家とし ○ ○ これまで、 NaS電池システムを用いた負荷平準化技術の研究は ○ ○ ○ ギーコストの削減が可能となります。 ○ 約電力を抑制するとともに、深夜電力契約が適用されればエネル ○ 荷設備に放電します。これによりエネルギーの平準化を行い、契 ○ ○ 夜間は商用電源より NaS 電池へ充電し、昼間は NaS 電池から負 ○ ○ 池の充放電を行う双方向電力変換装置などで構成されています。 河川浄化 ○ NaS 電池システムは、電力の蓄積を行う NaS 電池と NaS 電 ○ 電池を用いたエネルギー貯蔵システムを開発しました。 マイクロポーラス マテリアル ○ 度が高く、さらに、サイクル寿命が長いナトリウム・硫黄(NaS) 焼却灰 【焼却処理場】 マイクロポーラスマテリアルの生成 ○ て MWh 級の大容量化が可能で、鉛蓄電池と比べてエネルギー密 現状:埋立て処分 水熱反応 ○ (TPR )に取り組んでいます。研究所では、その運動の一つとし ろ過 整形 ○ *1 乾燥 ・ 焼却 TPR: Total Power Revolution *2 ALICE: Advanced power plants Integrated maintenance Control するとともに、それらの紙のリサイクルを積極的に進めていま す。積極的な紙のリサイクルは、紙資源の保護につながります が、その一方で、再生紙工場における抄紙工程(紙をすく工程) で原料となる古紙の約 30%が製紙スラッジ(製紙かす)として 排出されています。製紙スラッジは有機性汚泥であるため、腐敗 防止と減量のため焼却処分する必要があり、 この焼却灰の埋立地 の確保が新たな問題として浮上してきています。 製紙スラッジ焼却灰の主な成分は、 インクのにじみ防止などの 目的で、紙の繊維に添加された粘土や炭酸カルシウムです。この 灰(廃棄物)をある種の化学的処理により、新しい素材(MPM*) ○ に転換することに成功しました。これまでに、多くの微細孔を有 していること、特定の陽イオンの交換・吸着能に優れている素材 であることを明らかにさせました。 MPMの用途の一つとして、湖沼や河川の水質汚染の原因とな る窒素やリンなどの栄養塩を吸着除去する水の浄化材としての利 用が考えられます。研究所内の実験水路で試験を行ったところ、 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ System 当社では、年間 20 万 t 弱の紙を電話帳・電報用紙などに使用 ○ ○ *1 古紙のリサイクルから新素材を開発 (マイクロポーラスマテリアル:MPM) 通信設備など ○ 商用電源 ○ ○ ○ ○ ●フィールド試験を行った NaS 電池システム構成 ○ 昼間放電 水質浄化材として使用済みとなったMPMを建設残土などに混合 して、 窒素やリンなどの植物栄養素を含んだ土に改良する研究も 行っています。これらの技術の結集により、自然に優しく戻せる ○ ○ ○ ○ 真空断熱容器 と考えております。 このほか、酸性雨に強いコンクリート添加材、温暖化の原因と される炭酸ガスやさまざまな有毒ガスの吸着材および工場跡地に おける汚染土壌の改良材などとしての用途の研究開発を進めてい ます。 ○ ○ ○ 電池制御装置 ナトリウム・硫黄電池 (200kWh×2) セル数:480本 ○ ・充放電制御 ・ヒータ制御 NaS電池モジュール (200kWh)の構成 ○ 双方向電力変換装置 トータルリサイクルの実現化へ一歩を踏み出すことができるもの ○ ○ ○ 夜間充電 窒素とリンを約 50%除去することが確認されました。さらに、 (アクセス網研究所) ○ ○ セル ヒータ ○ 監視制御装置 * MPM: Micro Porous Material 37 ○ ○ 時系列アクティブ探索法の CM探索システムへの応用例 ○ 日本語を英語に自動変換する翻訳システム ALTFLASH* を実 ○ 速報型日英機械翻訳システム(ALTFLASH) ○ パソコン 探索結果 ○ 現しました。ALTFLASH は、意味解析型(ルールベース)翻訳 ○ 音・映像 ○ 意味解析型翻訳は、 単語意味辞書と構文意味辞書を使った多様 ○ ○ ○ 1 F1 18:48 19:56 20:35 22:54 18:30 19:00 19:30 20:00 20:30 21:00 21:30 22:00 22:30 23:00 23:30 00:00 ○ 0 6時間分のテレビ放送のデータから、あるCMを探索した例。 4回放送されたことが示されている。 ● CM 探索システムへの応用と探索結果の例 ○ ○ される災害情報などの完全自動翻訳に適用でき、 翻訳通信に貢献 ○ ○ ALTFLASH は、決算をはじめとする経済情報、速報性が要求 ○ ○ ○ 品質が保証されています。 ○ まま表示して、送信せずにリジェクトし、日本語の誤字があった 場合も同様にリジェクトできるため、英訳したものは 100%の ○ ○ ALTFLASHは、翻訳対象外の記事は画面に赤い字で日本語の ○ ○ に情報を発信することが可能となりました。 ○ の決算速報の英訳が自動化され、海外の利用者へ高速でかつ正確 ○ れました。これにより、同社ではこれまで人手で行っていた企業 ○ ○ ALTFLASH は、日本経済新聞社様に 1998 年 3 月に導入さ ○ ○ ○ ことができます。 類似度 パターンは、蓄積されたデータから統計的手法を使って抽出する ○ ンと英語のパターンのペアにもとづいて翻訳されます。 これらの ○ 使われる定型的な構造の文章の翻訳に適用され、 日本語のパター テレビチューナ またはビデオ ○ ○ な構造の文章の翻訳に適用されます。テンプレート翻訳は、よく ○ 訳を実現します。 ○ ○ システムとテンプレート翻訳システムから構成され、高品質の翻 ○ ○ reports 音や映像を瞬時に探索する時系列アクティブ探索法 時系列アクティブ探索法は、 目的とする音や映像が与えられた とき、これを長時間の音や映像の中から高速に探索する技術で ○ す。たとえば、6 時間分のテレビ放送がパソコン上に取り込まれ ているとき、特定の CM の放送時刻を約 2 秒で、もれなく探索 することができます。 従来、音や映像の探索では、音響スペクトルや画像特徴のずら し照合が用いられていました。これは、目的とする音や映像の特 徴を、 長時間の音や映像の各部分の特徴と照合しながら時間方向 にずらしていく方法です。しかしこの方法では、計算量が膨大と なるために、 長時間の音や映像に対して実用的な処理時間で高精 度の探索を行うことは不可能でした。 今回開発した時系列アクティブ探索法は、 高い精度を保ったま まで、従来法に比べて約600倍の探索速度を実現する技術です。 技術のポイントは、音響スペクトルや画像特徴を直接照合するの ではなく、 ヒストグラムの形に圧縮しながら照合する点にありま ○ す。これにより、まず照合自体の計算量を従来法に比べて低く抑 えることができました。さらに、照合が不要な時間区間を瞬時に 割り出すことが可能となり、精度をまったく犠牲にすることな く、照合計算回数を大幅に削減することに成功しました。 この技術は、 音と映像の双方の時系列メディアに適用可能であ り、特殊な装置を必要としない汎用性の高い技術です。このた め、放送におけるCM統計システムや楽曲使用回数カウントシス テム、 インターネットにおけるマルチメディア版サーチエンジン など、幅広い応用が考えられます。 今後は、この技術をさらに高度化し、膨大なマルチメディア情 報から有用な情報を取り出すための中核技術として発展させてい ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ALTFLASH のモニタ画面例 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ● ALTFLASH のシステム構成 ○ ○ ○ ○ ○ * ALTFLASH: Automatic Language Translator for market FLASH ○ (コミュニケーション科学研究所) ○ ○ できます。 38 く予定です。 (基礎研究所) ○ 実際の運動 ○ ○ 順応 ○ ○ ○ ○ ○ 約や情報検索などの作業を遂行する音声対話システムについて研 ○ ○ の間で情報をやり取りすることにより、利用者と共同で各種の予 ○ ○ 研究所では従来とは異なり、音声による対話を通して利用者と ○ のかわからないときに、行き詰まってしまいます。 テスト(刺激) ○ た。しかし、システムの質問に対して利用者が何を話したらよい ○ ムでは、システムからの質問に利用者が答える形をとっていまし ○ ○ することができます。従来の音声認識を利用した情報入力システ ○ 学ぶことなく使うことのできる人間−機械インタフェースを提供 ○ 実現できれば、人にとって親しみやすく、誰もが特別の操作法を ○ ションの手段です。人とコンピュータとの間で音声による対話が ○ ○ 音声による対話は、人が日常において使っているコミュニケー ○ ○ 人の言葉に臨機応変に応対するコンピュータ (音声対話システム DUG-1) テスト(知覚) 見かけの運動 ○ ○ 者が複雑な語尾表現を話しても正しく理解できるようになりまし ○ ●テスト刺激の方位は運動残効による見かけの運動の方向に傾いて見える ○ の種類に応じて臨機応変に話の進め方を変えることができるよう ○ ○ ムの発話を少しずつ生成していくことができ、利用者の割り込み ○ ○ た。また、利用者の割り込みにいつでも対処できるようにシステ ○ 者の話すそばから利用者の発話を理解していくことができ、利用 ○ DUG-1 を開発しました。音声対話システム DUG-1 では、利用 ○ ○ 音声理解と発話生成部分を改良して、新しい音声対話システム ○ ○ 研究所では、1997 年に報告した音声対話システム Noddy の ○ ○ 究を進めています。 ○ への適用が期待されます。今後は、より高度な機能を備えた音声 ○ ○ 運動錯視 −視覚における「動き」の情報の新しい役割− 近年のマルチメディアの発展によって、 動画像に関わる技術が ますます注目を集めています。 受け手にとって心地よい動画像通 信を実現するためには、人間が動いている対象をどのように知覚 しているのか、その仕組みを解明することが重要です。 研究所では、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ様と共同 で、運動残効という錯視現象を利用して、人間の視覚における運 動情報の新たな役割を見いだしました。運動残効とは、一定の方 向に運動する図形を長時間見つめた後に、 静止図形が反対方向に 動いて見えるという現象です。これまで、運動残効で知覚される 運動は位置の変化を伴わないといわれてきました。そして、この 運動と位置が矛盾した知覚は、 異なる視覚属性に対する神経処理 機構が脳内で独立していることの心理物理学的な証拠と考えられ てきました。しかし、以下に述べるように、この運動残効の常識 は誤っていたのです。 まず、回転する風車図形をしばらく提示し、それを目を動かさ ずに観察します。 つぎに垂直方位で静止した風車図形を提示する ○ ○ ○ ○ うに見えます。このとき、これまでの常識では風車図形は垂直方 位に知覚されるはずですが、 実際には回転運動の方向に傾いて見 えたのです。この方位ずれの特性を詳細に検討した結果、脳内の 運動情報が時間的に積分されて位置変化の情報に変換され、方位 ずれを生み出していることがわかりました。 今回の発見は、これまでの脳科学の常識を覆し、運動の情報が 位置や傾きの知覚に強い影響を与えることを意味しています。 言 い換えれば、運動情報は、運動の知覚だけではなく、運動対象の ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ と、運動残効によって今までとは反対方向に回転運動しているよ 位置や形態の知覚に利用されているのです。この知見は、新しい ○ ○ ○ ○ ●音声対話システム DUG-1 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ (基礎研究所) ○ 対話システムの実現を目標に研究を進めていきます。 ○ ○ システムといったさまざまなサービスシステムのインタフェース ○ ○ この成果は、予約システム、情報検索システム、意思決定支援 ○ ○ にもなりました。 視点での動画像圧縮技術につながることが期待されます。 (基礎研究所) 39