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世界史 B
第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[世界史 B]講評 世界史B 地 学 Ⅰ 古代インド・前近代中国で健闘。年代整序・文化史問題等が課題 Ⅰ.全体講評 Ⅱ.設問別分析 今回の第 3 回 6 月センター試験本番レベル模試の 平均点は 44.6 点で、第 2 回模試の 41.9 点からは大 0 幅とはいえないものの着実に伸びた。夏休み前のこ の時期としてはむしろ自然な結果といえる。古代イ ンドや前近代の中国での善戦が目立つが、近現代史 やアフリカ・内陸アジア史などはこれから克服すべ き分野として、学習の進展を望みたい。 一方で、既習分野でも年代整序 6 択問題や文化史 で低い正答率になっているものが目立った。例え 大問別得点率(%) 20 40 60 80 第1問 47.2 第2問 48.0 第3問 40.9 第4問 42.3 100 ば、年代整序 6 択問題は 3 問あるが、第 1 問問 6 (ナポレオン 1 世関係)は 42.8%、第 2 問問 2(3~ 得点率は第 1 問と第 2 問でほとんど差がなく、 5 世紀の中国史)は 37.3%、第 3 問問 5(古代ギリ 同様に第 3 問と第 4 問の間にも大きな差はないが、 シア)は 27.1% と、年代が古いほど正答率が下が これら 2 つのグループの間ではやや差が出ている。 るという現象が起こっている。文化史でも第 4 問 しかし、各大問は出題の時代・地域とも偏りはない 問 1 のローマ文化についての波線部誤文選択問題 ので、極端な差にはなっていない。第 1 問では古 は 35.1% と低迷している。既習分野でも、とくに 代インド、第 2 問では前近代中国と 19 世紀欧州で 年代把握や文化史に手薄な点が多いという懸念が否 の健闘、第 3 問では小問間の正答率に大きなばら 定できない。 つきがあり、第 4 問にはとくに高い正答率の小問 学習計画に沿って着実に学習を進めるのと同時 がないという特徴が見られる結果となった。 に、既習でもどこがまだ不十分なのかをよく見定め て、ムラのない安定した学力の養成に心がけること 第 1 問 前近代仏教史・近現代欧州政治史 が何より重要である。 古代インドで高得点、近現代欧州は低迷、年 代や地図に注意しよう。 得点分布 世界史B 35 古代インドの問 1(正答率 82.4%) 、問 3(70.6%) 平均 44.6% 30 の正答率は今回の全小問中 1 位と 2 位で、非常に 健闘している。また、問 2 のアジア各地の仏教も ほぼ 50% の正答率を得ている。一方、問 4~問 9 25 受 験 者 20 数 の 割 合 15 (%) の近現代欧州史は全 6 問の平均正答率が約 38%(最 も高い問 8 でも 40% 台半ば)と低迷している。学 習がまだ十分に及んでいない範囲であろうからやむ を得ない事情はあるが、早めにこれらの分野にも足 場を固めてほしい。 10 5 90 ∼ 80 ∼ 70 ∼ 60 得点率(%) ∼ 50 ∼ 40 ∼ 30 ∼ 20 ∼ 10 ∼ ∼ 0 100 1/4 第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[世界史 B]講評 マーク番号 1 2 3 4 5 6 正 答 ② ② ④ ④ ④ ② 正答率 マーク番号 正 答 正答率 82.4% 49.6% 70.6% 32.9% 40.7% 42.8% 7 8 9 ③ ③ ① 択肢の選択率にあまり差が出ていないが、これは 未学習分野の設問の正答率として多く見られるパ ターンである。とはいえ、選択肢 ② の『共産党宣 言』はマルクスとエンゲルスの共著として、また ④ はアダム=スミスの主要著作としてあまりにも 29.4% 45.8% 36.3% 有名である。 第 2 問 中国・イスラーム・近代欧州史 問 1 1 各選択肢の選択率 ④ 4.7% ③ 3.2% ここまで及んでいないことの表れであろう。各選 ① 9.7% おおむね善戦している。年代整序に注意し、 安定度を上げよう。 第 2 問の得点率は 48.0% と、大問中の最高値と なった。半分以上の小問で正答率が 50% を超えて いる。問 1(65.1%) ・問 3(50.8%)から前近代中 国はかなりの力が付いていることが確認できるが、 ② (正答) 82.4% ※注)無回答・マークミスは割愛したため、 選択率の合計は 100% にならないことがある。 以下同様。 古代インドのアショーカ王についてのリード文 中の空欄 2 箇所に入る適語(チャンドラグプタと パータリプトラ)の組合せを選択する問題で、正 答率は 82.4% に達し、今回の全小問中の最高値 となった。チャンドラグプタについては選択率は 92.1%(選択肢 ① と ② の合計値)、パータリプト 同じ前近代中国でも出題形式によっては問 2(年代 整序 6 択)のように低迷する場合も出ている。19 世紀西欧史の問 8・問 9 はいずれも正答率が 50% 台に達したが、比較的正解しやすい設問で、これら だけで安定した学力と判断することはできない。 マーク番号 10 11 12 13 14 15 正 答 ① ⑥ ④ ② ② ① 正答率 65.1% 37.3% 50.8% 55.2% 47.3% 42.5% マーク番号 16 17 18 正 答 ④ ④ ② 正答率 30.5% 51.2% 55.5% ラについても 87.1%( ② と ④ の合計値)と大半の 受験者が正解している。他の選択肢がバーブルと 問 1 10 各選択肢の選択率 アグラなので迷う余地はほとんどなく、この結果 は当然であろう。 ③ 10.9% 問 7 7 各選択肢の選択率 ④ 25.4% ① 18.0% ② 13.4% ④ 10.3% ① (正答) 65.1% 中国の封建制度についての正文選択問題で、正 ③ (正答) 29.4% ② 27.1% 答率は 65.1% に達し、第 2 問の最高値となった。 他の選択肢の選択率はいずれも 10~13% 程度で、 とくに紛らわしい内容のものはなく、正解しやす い設問であろう。古代中国の学習が進んでいるこ マルクスについての正文選択問題であるが、正 との表れでもあろうが、前述のように問 2 の 3~ 答率は 30% に届かず、第 1 問中の最低値となっ 5 世紀の中国に関する年代整序 6 択問題では正答 た。19 世紀の文化史ということで、まだ学習が 率は 37.3% と低く、既習分野でも事項の正確な 2/4 第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[世界史 B]講評 年代的把握を怠らないようにとくに注意したい。 問 4 22 アフリカ史の地図併用問題で、前近代史ながら 問 7 16 各選択肢の選択率 学習が後回しになりがちな分野であり、正答率は 26.9% で第 3 問の最低値となった。地図の a の地 ① 11.0% ④ (正答) 30.5% 域はマリ王国で、これはイの文のマンサ=ムーサ の記述から、b の地域はクシュ王国で、これはア の文のメロエという都の名からそれぞれ判定で ② 25.5% き、イスラーム国家という設問条件から a とイの 組合せに絞り込める。地図中の 2 つの地域と 2 文 の組合せは、2013 年度センター本試第 1 問問 6 ③ 32.8% でも出題されているので、この形式の設問にもよ く慣れておこう。 産業革命についての a・b 2 文の正誤組合せ問 題であるが、正答率は 30.5% で第 2 問の最低値 問 8 26 各選択肢の選択率 となった。産業革命における機械と発明者の組合 ① 19.5% せは必須の重要事項であるが、時代状況等からの 類推が利きにくい分、未習か既習かの違いが結果 に大きく影響する。a のニューコメンの誤り(正 しくはワット)については 60% 以上の受験者が 正しく把握できている( ③ と ④ の合計値)が、b のハーグリーヴズの誤り(正しくはアークライ ④ (正答) 62.9% ② 9.2% ③ 8.1% ト)については、それより約 7 ポイントほど下 オランダについての正文選択問題で、正答率は 回っている( ② と ④ の合計値)。 62.9% で、第 3 問の最高値となった。正解の ④ ウェストファリア条約での独立の国際的承認とい 第 3 問 欧州を中心とする政治・文化史 う事項は、おそらく記憶に残りやすいものと思わ モンゴル帝国・オランダで健闘、アフリカ・ 内陸アジア史等が課題 れる。2 番目に高い選択率(19.5%)であった ① 第 3 問の得点率は 40.9% と大問中では最も低かっ ことはわかっていても、それ以上の正確な知識に たが、一方で、正答率 60% 以上の小問が複数ある 欠けるため、スペイン王カルロス 1 世という記述 大問は第 1 問と第 3 問のみである。他方、20% 台 に引かれて選択してしまったものであろう。 を選んだ受験者は、スペインから独立したという の正答率が複数あるのも第 3 問のみで、小問間の 正答率の差が大きかった。20% 台は問 4 のマリ王 第 4 問 前近代政治・文化史・20 世紀史 国の地図併用問題(26.9%)と、問 5 の古代ギリシ アの年代整序 6 択問題(27.1%)であり、前者は未 ローマ文化史・20 世紀年表問題で苦戦、既 習分野の穴を埋めよう。 習分野の可能性が大きいが、後者は文化史事項(プ 第 4 問の得点率は 42.3% で、大問中では 2 番目 ラトン)の年代把握が難しかった可能性が考えられ に低い数値であったが、小問の最高値が問 5 の 51.7 る。 % に留まり、とくに高い数値の小問が見られな マーク番号 19 20 21 22 23 24 正 答 ① ③ ③ ② ① ② 正答率 34.7% 60.1% 42.0% 26.9% 27.1% 39.5% マーク番号 25 26 27 正 答 ② ④ ③ 正答率 37.7% 62.9% 43.5% かったところが、第 3 問とは異なっている。既習 範囲であるはずのローマ史でも、文化史を問う問 1 では 35.1% と低く、この分野が手薄になっている ことが窺われる。20 世紀史とくに問 7 のアメリカ の年表補充問題、問 9 の 1920 年代のアジア・ヨー ロッパ史も低迷しているが、現時点では学習進度の 関係からやむを得ない結果であろう。 3/4 第 3 回 6月センター試験本番レベル模試[世界史 B]講評 マーク番号 28 29 30 31 32 33 正 答 ① ③ ② ② ① ④ 正答率 35.1% 46.1% 50.5% 42.8% 51.7% 49.5% マーク番号 34 35 36 正 答 ④ ③ ② 正答率 Ⅲ.学習アドバイス ◆まずセンター試験の形式に慣れよう。 今はまず、センター試験がどういうものであるの かを、受験の模擬体験を通してよく理解し、その形 式、リード文や設問の分量などをしっかり把握し 20.6% 46.8% 37.4% て、この試験に慣れることが重要である。そして、 それは今回だけでなく、このセンター試験本番レベ 問 1 28 各選択肢の選択率 ④ 26.2% ③ 13.2% ① (正答) 35.1% ル模試を受け続けることで、より頭に馴染んだもの にしていくことが効果的である。 ◆現時点の学力を正確に把握しよう。 どのような模試であれ、模試は受けた後の活用の 方が大切である。現時点でどの分野がどれだけでき ② 25.4% たのか、あるいはできなかったのかを冷静に判断 し、これからの学習計画や内容にそれを反映させる ことが重要である。また、正解できなかった設問 古代ローマ文化についての波線部誤文選択問題 は、たとえ未習分野であっても、まだ模試の記憶の であるが、正答率は 35.1% で、第 4 問で 2 番目 新しいうちは覚えやすいので、徹底的に頭に叩き込 に低い数値となった。何度か指摘したように既習 むことが非常に効果的である。模試を通じて学習す 分野であっても文化史は手薄になっていることが るということを実践してほしい。 窺われる。選択率も ③ が他に比べて低いものの、 それ以外の 2 つは 25~26% でほとんど差がなく ◆基本を確実に身につけよう。 分散しており、ローマ文化史についての知識の不 センター試験では様々なテーマのリード文にもと 十分さが露呈した結果となった。やはり正答率が づいて設問が出されるが、各小問自体は教科書レベ 低かった第 3 問問 5 の古代ギリシアの年代整序 6 ルの基本事項が大半である。教科書には載っていな 択問題にも文化史事項が含まれていることとも共 いようなリード文であってもまったく恐れる必要は 通する点があろう。 ない。各設問レベルでは、幅広い基本的知識が身に ついていれば、十分に正解が可能である。何より大 問 7 34 切なのは、焦らず基礎知識をしっかり固めることで アメリカ合衆国がソ連を承認した時期に該当す ある。 る選択肢を選ぶ年表補充問題である。正答率は 20.6% で、今回の全小問中の最低値となった。ソ ◆学習の手順をよく考えよう。 連を承認した大統領がフランクリン=ロ(ル)ー まず教科書を基本に各地域のタテの歴史の流れを ズヴェルトであることがわかっていれば、世界恐 確実に把握しよう。ヨコのつながりは非常に重要で 慌が始まって以後の時期は d(= ④ )しかなく、 あるが、今はタテの歴史の流れの把握を先に徹底し その意味では正解しやすい設問であるが、現代史 て行うことが重要である。その際、各事項の年代を であり、まだ学習が及んでいないことが考えら しっかり把握し、年代整序 6 択問題や時期指定問 れ、現時点ではこの結果はやむを得ないであろ 題への対応力を養うことも不可欠である。また、文 う。 化史は切り離して後でまとめてやるのではなく、そ の時代の政治や経済、社会との関連の中で一緒に文 化事項も学習することが効果的である。さらに、地 図や図版などを合わせて参照し、立体的な学習に努 めることも怠りなく実践してほしい。 4/4