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Title イメージセンサによる新しい車車間可視光通信 Author 李, 曜廷(Li

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Title イメージセンサによる新しい車車間可視光通信 Author 李, 曜廷(Li
修士論文
2013 年度
イメージセンサによる
新しい車車間可視光通信
李
曜廷
(学籍番号:81233701)
指導教員
教授
春山
真一郎
2014 年 3 月
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
システムデザイン・マネジメント専攻
論
学籍番号
文
要
81233701
氏
旨
名
李
曜廷
論 文 題 目:
イメージセンサによる新しい車車間可視光通信
(内容の要旨)
近年、世界中で安全・円滑・快適な移動のための ITS(Intelligence Transport System)
の研究が盛んに行われている。車車間通信では速度や加速度や道路状況、位置情報などを
交換しあうことで、協調走行や事故防止が可能となる。
本研究では、前方の車両の情報を後方の車両が受け取ることにより安全運転を支援する
ことが目的である。そのための手段として本システムでは、テールランプ、ハイマウント
ストップランプの可視光光源を利用しその光強度を変調させることにより前方車両の情
報を送信し、後方車両に設置されたイメージセンサをもちいてそのデータの受信および画
像取得をおこない、それらの情報を統合することにより前方車両の情報を検出する。また、
検出後にその情報を用い、道路にある複数の車の中に通信する車の指定ができる新しい
車々間通信を提案する。そして、遠距離送受信、車間距離測定においても、システム開発、
実証実験を行い、可視光通信による安全運転支援システムの実現性、有効性を検証する。
提案するシステムは従来の電波の方式と比べると、以下のメリットがある。
1、 可視光通信に必要となる LED ランプや LED ヘッドライト、車載カメラが既に車に
普及されているため、コスト面には有利である。
2、 発信源は目に見えるため、どこから情報が来ているかを容易に知ることができる。
3、 情報を受信するかしないか、どの車と通信するかということを能動的に決定するこ
とも可能である。
4、 更に、イメージセンサを使っているため、画像取得もできる。すなわち、通信だけ
ではなく、車間距離の検知や画像処理による事故防止、安全運転支援も可能である。
5、 本方式による車々間通信では、今まで盛んに行われている事故防止、危険回避だけ
ではなく、安全運転支援、更にエンタテインメント面、ドライビングエクスペリエ
ンス面の向上もできるというメリットがある。車を SNS のツールにさせるイノベ
ーション的な未来像を提案する。
本稿では、問題発見から、要求分析、システム設計、MATLAB&Simulink でシステム
のプロトタイプの作成、検証、実証実験まで記述し、本システムの実現性や有効性などの
様々な観点から考察し、特に通信する車の指定、車車間通信性能、車間距離測定において
I
実証実験を行うことで検証と評価を行った。
結果、システム要求を満たすとともに本システムの実現性や有効性を確認することがで
き、安定した通信性能と 70 メートル以上の通信距離が得た。そして、距離測定において
は、平均誤差を凡そ 1.61%までに抑えることができた。
キーワード(5 語)
車車間通信、可視光通信、イメージセンサ、ブレーキランプ、MATLAB&Simulink
II
SUMMARY OF MASTER’S DISSERTATION
Student
Identification
Number
81233701
Name
Li Yaoting
Title
New Inter-Vehicle Visible Light Communication Using Image Sensor
Abstract
In recent years, research about ITS (Intelligence Transport System) is actively being proceeding
all around the world. It has been possible of accident prevention, cooperative driving through
exchange transport information, road conditions, the speed or acceleration and so on with each
other in the domain of Inter-Vehicle Communication.
In this study, our goal is support drivers drive safely by receiving transport information from
front cars. In this system, we transmit the information of the preceding vehicle by modulating
lights intensity of visible light source such like tail lamps, brake lamps and a high-mount stop
lamp. To detect information of the preceding cars by performing image acquisition and reception of
data using image sensor that is disposed behind car. In this paper, we propose a new method of
Inter-Vehicle Communication system that users can actively select communication object and just
get the information of the car or send information just to the car which is selected by touch panel,
keyboard or voice and so on. Then we developed a prototype and conduct experiment to verify
performance of long distance communication and distance measurement as well as feasibility of
our safe driving supporting system by visible light communication.
Compared the proposed system and method of the conventional radio, there are the following
advantages.
1.
Since the LED headlight and LED Brake lamp, vehicle-mounted camera which is required
to visible light communication is spreading to the car, it is advantageous in terms of cost.
2.
Since it is visible, can easily know the source of information.
3.
It is possible that users can actively determine that whether or not to receive the
information, and communicate with which car.
4.
Furthermore, we can get communications and image acquisition simultaneously. That
means it is possible for preventing accident and supporting safe driving not only by using
Inter-Vehicle Communications, but also can by detecting inter-vehicle distance or image
processing technology.
III
5.
By this new Inter-Vehicle Visible Light Communication method, on that basis of risk
aversion and preventing accident, there is an advantage in safety driving support, improved
entertainment surface, and more fun in driving experience. We propose an innovative future
of turning cars to a platform of SNS.
In this paper, described the process from problem identification, requirements analysis, system
design, prototype development using MATLAB&Simulink, to verification and validation. Besides,
we evaluated effectiveness and feasibility of our system through this research process. In particular,
we evaluated and validated specification of the car to communicate, inter-vehicle communication
performance, distance measuring by demonstration experiment.
As result, we confirmed effectiveness and feasibility of our system and system requirements. In
the end, we got a more than 70 meters effective communication distance, and achieved less than
1.6% average error rate.
Key Word(5 words)
Inter-Vehicle Communication, Visible Light Communication, Image Sensor, Brake Lamp,
MATLAB&Simulink
IV
目次
1
緒論…………………………………………………………………………………1
1.1 研究の背景と問題意識………………………………………………………1
1.1.1 研究の背景及び各国 ITS の動向……………………………………1
1.1.2 ITS における車車間通信の重要性…………………………………5
1.2 研究目的と新規性…………………………………………………………6
1.2.1 研究目的……………………………………………………………6
1.2.2 新規性………………………………………………………………7
1.2.3 本提案手法により将来的な車車間通信イメージ………………7
1.2.4 まとめ………………………………………………………………10
1.3 本稿の構成…………………………………………………………………11
2
安全運転のための技術の現状及び提案手法…………………………………12
2.1 車々間通信およびレーダー技術の比較について…………………………12
2.1.1 マイクロ波レーダーとミリ波レーダー…………………………12
2.1.2 レーザレーダー……………………………………………………17
2.1.3 超音波センサ………………………………………………………18
2.1.4 カメラ………………………………………………………………18
2.2 従来の安全運転支援システムが抱える問題……………………………19
2.3 本研究の必要性と提案手法の解説………………………………………24
2.3.1 本研究の必要性……………………………………………………24
2.3.2 提案手法の解説……………………………………………………25
3
イメージセンサによる車車間可視光通信システムのデザイン……………29
3.1 システムデザイン…………………………………………………………29
3.1.1 システム要件・設計………………………………………………30
3.1.1.1
送信側……………………………………………………30
3.1.1.2
受信側……………………………………………………37
3.2 システム構成………………………………………………………………45
4
システム開発及び処理手法の説明……………………………………………47
4.1 送信側ソフトウェア………………………………………………………49
4.1.1 機能概要……………………………………………………………50
4.1.2 COM ポート接続機能………………………………………………51
4.1.3 初期設定機能………………………………………………………51
4.1.4 データ送信機能……………………………………………………55
4.1.4.1
遠方測距情報……………………………………………55
V
4.1.4.2
車車間通信情報…………………………………………57
4.1.4.3
繰り返し回数……………………………………………58
4.1.4.4
送信機通信スタート・ストップ機能……………………58
4.2 送信側ハードウェア………………………………………………………60
4.2.1 送信機………………………………………………………………60
4.2.2 送信ユニット………………………………………………………61
4.3 受信側ソフトウェア………………………………………………………63
4.3.1 機能概要……………………………………………………………64
4.3.2 ヘッダーバターン認識……………………………………………65
4.3.3 認識したランプの追跡……………………………………………70
4.3.4 CRC チェックとデータの復調……………………………………70
4.3.5 画面表示……………………………………………………………72
4.3.6 通信する車の指定…………………………………………………73
4.3.7 新しい車間動画伝送………………………………………………75
4.4 受信側ハードウェア………………………………………………………78
4.4.1 受信機の仕様………………………………………………………79
5
システム評価のための実験…………………………………………………… 80
5.1 実証実験……………………………………………………………………80
5.1.1 通信の検証…………………………………………………………81
5.1.2 通信距離の検証……………………………………………………83
5.1.3 車の指定の検証……………………………………………………86
5.2 システム妥当性確認………………………………………………………88
6
結論………………………………………………………………………………90
7
参考文献………………………………………………………………………… 92
8
謝辞………………………………………………………………………………94
付録Ⅰ8B10B 変換について………………………………………………………95
付録ⅡCRC-8 エラーチェックについて…………………………………………104
VI
1 緒論
1.1
研究の背景と問題意識
1.1.1
研究の背景および各国の ITS 動向
21 世紀に向けて、自動車走行の安全性の向上と円滑性の向上の両立を図り、
ひいては交通流を大幅に改善しながら、豊かなモビリティを確保しつつ、環境
/エネルギー問題等に対処しうる自動車交通の実現が社会的に重要な課題にな
っている。
自動車社会の発展と共に、交通事故による悲劇が後を絶たない。2008 年統計
で事故による死傷者数は 95 万人(内死亡者数 5 千人強)になっている。交通事
故件数および死傷者数を削減し、安心・安全社会を実現するという ITS(高度道
路交通システム)への官民挙げた取り組みは、日本の基本方針(内閣府の施策)
となっている[1]。(図1参照 )
官民連携による推進体制
世界一安全な道路交通社会
強固な連携
J-Safety 委員会
ITS 推進協議会
支援・協力
提言
意見
交換
ITS 推進協議会メンバー
官側:内閣官房、警察庁、総務省、経済産業
省、国土交通省、自動車交通局等
民側:日本経済団体連合会、ITS Japan 等
関係機構など
図1
ITS に対する官民連携による取り組み
ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)とは、人と
道路と自動車の間で情報の受発信を行い、道路交通が抱える事故や渋滞、環境
対策など、様々な課題を解決するためのシステムとして考えられました。常に
最先端の情報通信や制御技術を活用して、道路交通の最適化を図ると同時に事
故や渋滞の解消、省エネや環境との共存を図っていきます。関連技術は多岐に
わたり、社会システムを大きく変えるプロジェクトとして新しい産業や市場を
作り出す可能性を秘めています[2]。
1
日本の ITS 分野の研究開発は、1970 年代の初めから始まった。当初は ITS と
いった用語もなかったが、1995 年横浜の第 2 回世界会議を機に、日本人の研究
者から ITS という用語が提唱され、世界共通の用語として定着した。
1996 年 7 月に策定された「ITS 推進に関する全体構想」
(以下、
「ITS 全体構想」)
により、関係省庁の動きが一本化された。これ以降を ITS 推進のファーストス
テージとして、開発 9 分野、21 の利用サービスを設定し、開発・実用化・普及
のロードマップが策定され、産官学民協力のもと国家プロジェクトとして推進
されるようになった。この中で、カーナビ、VICS、ETC、ASV 等、ITS 個別要素
技術の研究開発が推進され、これらはカーナビ市場の成長とともに日本の ITS
の成功事例として世界に知られている。ほかにも、信号制御や道路防災などの
道路交通管理分野、またバスロケーションシステムや PTPS 等の公共交通分野、
さらには携帯電話を使ったテレマティクスサービス分野等様々な分野で、着実
な展開・実用化が進んだ。
ファーストステージの実用化・普及に係る残された課題に関し、産官学の関
係者がこれまでの成果を評価し、セカンドステージの取り組みの方向性として、
「安全・安心」
「環境・効率」
「快適・利便」を基本概念とする「ITS 推進の指針」
が、日本 ITS 推進会議により取りまとめられた。この指針が、2006 年 1 月の「IT
新改革戦略」に反映され、ITS は安全・環境・利便達成に貢献する技術として位
置づけられ、
「世界一安全な道路交通社会」を目指すインフラ協調安全運転支援
の実用化プロジェクトが官民連携のもと進められている。
1)「安全・安心」:自動車が日常生活に定着している中、車車間通信・路車
間通信を用いたインフラ協調型を含む安全運転システムの開発・実用化が進め
られてきており、情報通信技術・自動車制御技術の進化と共に、信頼性・耐久
性の高い交通安全対策のシステム構築が求められている。また、近年の交通事
故の状況を見ると、高齢者が関係した事故が急増しており、高齢者等も安心し
て移動ができる社会を作る必要がある。
2)「環境・効率」:地球温暖化の主原因とされる CO2 排出量の約 2 割は運輸
部門が占め、その約 9 割が自動車から排出されている。また、 NO2、SPM(浮遊
粒子状物質)等による大気汚染は特に大都市部等において深刻な状況にある。
自動車単体のみならず、公共交通を含めた交通需要の適正化、道路交通管理の
高度化による交通流・物流の効率化といった ITS の活用により、環境にやさし
い社会を目指す。
3)「快適・利便」:最先端の情報通信技術を活用し、必要な情報を、いつで
も、どこでもリアルタイムに享受できるユビキタスネットワーク環境を構築し、
誰もが快適で意のままに移動できる社会の実現に貢献していく。こうした社会
2
実現においては、地域社会の活性化や高齢化社会という視点からの検討も必要
である。
政府の取り組みや官民協力のもと、シーズ志向で着手された ITS が、セカン
ドステージにおいて目的志向・ユーザ視点の取り組みに進展した。横浜の ITS
世界会議から約 15 年を経て、ITS は、道路交通分野のみならず広く移動交通分
野全体へ影響を与え、IT 活用による国民生活の向上と国民経済の活性化に貢献
する新技術として、地域や産業分野に広がっている。
今後は「地球環境や安全、渋滞などの交通課題を解決し、人々の豊かな生活
と産業・文化の発展に期する」、すなわち「持続可能なモビリティ社会の実現」
に向けた取組が重要です。実際、政府の IT 新改革戦略やイノベーション 25 戦
略会議、総合科学技術会議に加え、産業界の産業競争力懇談会(COCN)提言にも
ITS が含まれており、将来の交通社会やモビリティ向上に向け ITS に期待がかけ
られている。
現在の交通を取り巻く状況は、地球環境問題の深刻化、情報通信分野の国際
競争の激化、経済低迷による自動車を始めとする産業界への影響、新興国の台
頭、電動化の拡大による自動車技術の変化等、実に様々な課題がある。これら
の課題の解決に向け、ITS Japan としても、新交通物流特別委員会を通じた社会
還元加速プロジェクトへの提言活動や、2030 年までの社会環境の変化を想定し
た「ITS 長期ビジョン 2030」を策定するなど、総合交通ビジョンの視点からロ
ーリングを行い実現に向けた活動を継続している。
現在の多くの ITS プロジェクトは、2012 年に実用化する目標で研究・普及が
行われている。2013 年の ITS 世界会議・東京は、これまでの日本の ITS を検証
し世界に発信していく場であり、さらに加速していくための重要な機会である。
今後のモビリティ社会について、ITS 推進を活性化させ弾みをつける場として、
期待されている。
海外における ITS の開発・実用化も日本と類似した経緯をたどっているが、
各国の交通事情を反映して推進されている。
米国運輸省 DOT(Department of Transportation)は 2004 年に VII(Vehicle
Infrastructure Integration)Program を発表し、DOT 主導のもとに VII を推進
をする目的で関係諸国体が招聘された。その組織構成は、AASHTO(American
Association of State Highway and Transportation Office)、および自動車メ
ーカ(OEM)で構成された組織となり、道路管理者が統括するインフラとカーメ
ーカが製作する車両との通信(Vehicle to Infrastructure Communication)を
利用した安全システムの開発を宣言した DSRC(Dedicated Short Range
Communications)を利用したインフラ側に必要な機器、通信プロトコルの開発、
3
車両側の受信機、制御等、市場に導入するために必要な要求事項の策定を行い、
2010 年に市場投入を考えていた。しかし、インフラ側の要件決定はアメリカの
各州に裁量権があり、独立に決定することが可能であり調整が進まなかった。
2010 年に DOT の研究・革新技術局(RITA: Research and Innovative Technology
Administration)が ITS 戦略リサーチプラン(ITS Strategic Plan)として、新し
いプランである IntelliDrive を発表した。これは従来の VII が車とインフラ聞
の通信を利用したシステム構築を第一義にしていたのに対し、車車間通信
(Vehic1e to Vehicle Communication)を主体とした Safety Application の研
究開発を第一義にしたものであり、インフラ車両間通信を第二義的なものとし、
従来からの路線変更を意味している。NHTSA(National Highway Traffic Safety
Administration)は、車車間通信を用いた前車追突警報システムを 2013 年に義
務化する考えであると表明している[3][4]。
EU は、27 カ国から成立し ITS に関する統括的立場にあるのは欧州委員会(EC)
であり、 2008 年末に EC から ITS に関する普及のための Action Plan COM (2008)
886 が発表された。内容は、欧州全体で、環境負荷の少ない効率的で安全な交通
流および物流を実現するために、統一的で整合のとれた ITS の展開、利用を目
指すことを宣言しておリ、その中で 6 つの優先行動領域をまとめ、2009 年-2014
年までの行動計画を策定している。その中の 1 つに、運輸インフラ車両の統合=
幅広いアプリケーションに共通的に適用可能な協調システムが挙げられている。
その中で最も ITS に関し特徴的である記述が優先行動領域 4 (図2)であり、シ
ステムの通信関係および標準化の要請までしていることである。欧州委員会は、
CEN、 ETSI に対し 68 項目に関する標準化項目を各標準化機構に要請し、その推
進を図った。将来の協調型システムが市場に投入された場合に、各国のシステ
ムが相互互換性を保つためには、システムが市場投入される前に標準を策定す
る必要性があるからである。
また欧州は、協調型 ITS 実現のために、EC が予算を提供した数多くの協調型
ITS に関する Project が存在し、その成果を共有し標準化を行う際に成果を共有
化するマネジメン卜を行っている。たとえば CIVIS (Cooperative
Vehicle-Infrastructure Systems)Project は、路車間通信開発のための設計、
テストを行い、Safespot Project は、車車間通信、路車間通信を用いた衝突回
避アシス卜システムの開発を行っている。
4
図2
欧州 ITSAction Plan 通達項目
また、標準化に関しては、日本はアメリカおよび欧州のように政府および地
域標準化機関、各国プロジェクトの相互連携を交えた積極的な標準化活動にな
っていないのが現状であり、標準化に関する各国間の協調体制という観点から
は後塵を拝しているのが現状である。
今後日本としては、産官学の連携を図りながら日本としての標準化戦略を構
築し、積極的に各種標準化活動に参画することにより、日本の協調システムの
世界標準化に向けた活動を行っていく必要性があると考えれる。
1.1.2 ITS における車車間通信の重要性
日本における交通事故死者数、死傷者数、死傷事故件数は、交通量の急激な
増大に伴い大幅に増加し、昭和 45 年にピークに達し交通戦争と呼ばれました。
これに対し、様々な対策を講じたことにより、急激に減少しましたが、昭和 50
年前半から再び増加傾向となりました。その後、重点的な事故対策、通学路に
おける歩行空間の整備など様々な交通事故対策を実施したことにより、死者数
は平成 5 年以降、死傷者数及び死傷事故件数は平成 17 年以降、減少傾向に転じ
ています
[5]
。
5
近年の交通事故の発生状況を見ると、平成 24 年中の交通事故死者数は 4,411
人(前年比-252 人、-5.4%)、死傷者数は 829,807 人(前年比 -29,466 人、-3.4%)、
死傷事故件数は 665,138 件(前年比-26,918 件、-3.9%)となり、連続して減少
していますが、近年下げ止まりの傾向となっています。
国際道路交通事故データベース(IRTAD)がデータを公表している 29 ヵ国中
の人口 10 万人あたり死者数を見ると、日本は 4.3 人であり 9 番目に少なくなっ
ています。
そして、年齢別の死者数では、日本は 65 歳以上の高齢者の死者数は 50%を占
めており、欧米の約 17%~26%と比較して非常に大きくなっています。また、
人口の中で、高齢者の占める割合と死者数の中で、高齢者の占める割合を比較
しても、欧米はほぼ同じ比率であるのに対し、日本は死者数の中で、高齢者の
占める割合が非常に大きくなっています。
また、事故原因の大部分(約 70%)は、発見の遅れと言われる。上述の各調
査機構のデータにより、とくに高齢者運転手や初心者にとって、経験不足や危
険発見の遅れ、一時停止不能などは交通事故の主要な原因のことがわかった。
そこで、それぞれの車が、通信機能を利用して、自車の運転情報、位置情報あ
るいは運転手の情報を周囲の車に知らせあう、また、車はその電波・光ビーコ
ンを受信して周囲の車の運転情報や位置を認識する「車車間通信」が求められ
る。車車間通信により、安全運転における情報提供や注意喚起、または自動運
転などを提供することができるのを考えられている。、
1.2
研究目的と新規性
1.2.1
研究目的
本研究では、安全・快適・便利な交通環境を構築には不可欠である車車間通
信において、従来の電波による通信方式では簡単に実現できない二つの問題、
「通信する車の指定」と「情報の発信源の可視化」を本稿で提案するイメージ
センサーによる車車間可視光通信システムにより、解決することを期待してい
ます。さらに、本提案する方式で、今までのない将来性のある車車間コミュニ
ケーションシステムを提案する。
本システムの目的は、前方の車両の情報を後方の車両が受け取ることにより
新しい車車間通信、車車間安全運転を支援することである。そのための手段と
して本プロジェクトでは、テールランプ、ハイマウントストップランプの可視
光光源を利用しその光強度を変調させることにより前方車両の情報を送信し、
6
後方車両に設置された高速イメージセンサをもちいてそのデータの受信および
画像取得をおこない、それらの情報を統合することにより前方車両の情報を検
出する。そして、検出後に、その情報を用いて、どの情報がどの車に送信され
ているのかが確定でき、通信する車の指定したり、さらに選択した車とのコミ
ュニケーションをとることで、後方車両の安全運転を支援することが可能にな
る。さらに、車車間可視光通信のプロトタイプを作成し、システム性能や通信
効果などを実験することにより、イメージセンサーによる車車間可視光通信の
実現性と必要性を論じる。
1.2.2
新規性
本研究の新規性としては、ユーザーが能動的に道路にある車の中から、通信
したい車を選べることである。
通信したい車を選ぶには、従来の車車間通信システムでは GPS 信号や指向性
の鋭いアンテナを使い、前方または後方の車と通信することでができたが、そ
れは、ユーザーが能動的に選んだことではなく、システムがかってに通信して
いるのである。そして、GPS により、通信する車を選択する際に、いろいろな反
射やビルの影響で GPS の位置精度が不安定で、システムの信用度が低い。その
ため、本研究では、可視光通信を使い、従来に実現できなかったユーザーが能
動的に通信したい車と通信できるという機能を実現し、さらに本応用で、選ん
だ車との通信により、安全運転支援だけではなく、更にエンタテインメント面、
ドライビングエクスペリエンス面の向上もできる。
1.2.3
本提案手法により将来的な車車間通信イメージ
たとえば、通信する車を選ぶことができたら、将来的に、どんなことができ
るのかを二つの例で説明する。
例1、車車間動画伝送システムである。道路上の別運転手が見えるが、自分
が見えない景色、或は友達同士間でエンタテインメントの動画やナビ情報をな
どをシェアしたい場合、電波ではできないこととしては、送信してもらう車を
選ぶことなのである。そのため、本研究に提案する技術を使い、ユーザーが主
動に選んだ車から見える前の景色や動画などいろいろな情報を自分に伝送する
ことができるのだ。そのイメージは図3になる。図4から図6までは車を指定
し、動画伝送の処理手順を示している。
7
図3
車車間動画伝送システムのイメージ
②通信
したい
車の番
号を入
力して
くださ
いとい
うメッ
セージ
①受信でき
た後、車を標
記し、左側に
車の番号を
つけている。
そして、前の
車からのメ
ッセージは
「musashiya
! Fantastic!
Facebook:VL
CITS」です。
図4
③車の番号を
入力する。(複
数の車がいる
ときに、ユーザ
ーがわかりや
可視光通信
8
図5
車を指定する
④前の車に
遮った景色
(前の車の
運転手が見
える景色)
本研究の提
案により、
さえぎった
景色も運転
手が選ぶこ
とで見える
ようにな
る。
前の車
(自分
が見え
る景色)
差
よ
を
し
る
分
り
認
て
に
車
識
い
図6
動画伝送
例2、安全運転支援ではないが、SNS の流行やモビリティー社会の発展趨勢に
応じ、運転手や乗用人員のエンタテインメント面を向上させるシステムである。
道路に走っている車を選ぶと、出てくる情報としては、運転情報以外に、選択
した車の運転手からのメッセージや気持ちの表現などなど、たとえば、
「友達に
なりましょう!Facebook
ID:Keiokeiko」、「明日午後 3 時一緒にサッカーしよ
9
うぜ!Facebook
ID:SoccerKing」、
「日吉の武蔵屋のラーメンがめっちゃうまい、
ペキンダックもあるよ!!行かなきゃ損!」、
「修論に必死、助けてー。Twitter:
QQ」のようなカスタマイズした情報も出せられる。従来の車車間通信では、し
ゃっべている車がどれなのかわからないし、しゃっべている運転手の姿も見え
なく、ある意味で冷たい技術で、従来の車車間通信により、画期的に運転する
ことをより面白くならないだと思う。しかし、本研究に提案する技術で、運転
することを画期的に面白くなることができるのではないかと考えられる。運転
することはもっと面白くなれ、いままでの車車間通信イメージを変えるかもし
れない。さらに、このシステムの実現にしたがって、消費者にとって車を買う
意欲が増えるかもしれないし、新しいビジネスモデルも見つけられると考えら
れる。そのイメージは図7になる。
図7
1.2.4
車間コミュニケーション
まとめ
上述により、イメージセンサによる車車間可視光通信を用いて従来の電波方
式の車車間通信でできない「通信する車の指定」
「情報発信源の可視化」問題を
解決するとともに、新たな車車間通信システムのイメージを提案し、イノベー
ション的に車をモビリティー社会における SNS のツールになり、より豊富な、
快適な、楽しい面白い、安全な運転環境が構築できると考えられる。そして、
10
技術面だけではなく、消費者に刺激を与え、経済景気にも貢献し、新たなビジ
ネスモデルも考えられる。
1.3
本稿の構成
まず第1章では、緒論として ITS(高度道路交通システム)の現状と車車間通
信の重要性に関しておおよその流れと現状を説明した。また、その上で、本研
究の目的を説明した。次より述べる第 2 章では、車々間通信技術の現状及び提
案手法の解説に巡って、各車車間通信技術を比較し、従来の車車間通信が抱え
る問題を分析することにより、本稿にて提案する新しい車車間通信方式の必要
性などを解説する。第3章では、イメージセンサーによる車車間可視光通信し
システムのデザインに関して、システム要求分析・機能の洗い出しとシステム
アーキテクチャデザインに巡って述べる。また、第 4 章では、前章に述べたシ
ステムに対する要求に基づき、送信側と受信側では、それぞれソフトウェアお
よびハードウェアをデザインし、具体的な処理手法を説明する。また、システ
ムの処理手順を説明するには、必要となるユースケース図やシーケンス図など
を用い、解説する。第 5 章ではシステム評価のための実証実験を行い、実験結
果や考察などを述べる。最後に、第 6 章では、本稿のまとめを記し、また今後
実用化に向けてどのような課題があるかを明確にする。
11
2 安全運転のための技術の現状及び提案手法の解説
2.1
車々間通信およびレーダー技術の比較について
IT(情報技術)化の波は様々な分野に広がり始めているが、道路交通の分野
にも、IT 化の大きな波が押し寄せようとしている。道路交通システムと情報通
信システムをうまく連携させることにより、交通事故の防止や物流の効率化、
さらには自動運転による高齢化社会への対応など、道路交通システムのさらな
る高度化をねらった高度道路交通システム(Intelligent Transport Systems:
ITS)の構築が、いま世界中で急ピッチで進められている。ITS は道路交通を取
り巻く非常に広い分野にわたる一連のシステムの総称ですが、ITS で提供される
サービスの中には、自動料金収受システム(Electronic Toll collection: ETC)
や道路交通情報通信システム(Vehicle Information Communication System:
VICS)のような道路側から車両へ情報提供、また自動隊列走行や安全運転補助
に必要な、車両走行状態や制御情報の車両間での交換など、道路側と車両、ま
たは車両間における様々な情報交換を必要とするものがある。このような路車
間あるいは車々間で、様々なマルチサービスの提供や、非常に高信頼性を必要
とする通信路確保などの観点から、横須賀無線通信研究センター無線伝送研究
室では、Radio on Fiber 技術を用いた路車間通信技術、およびミリ波を用いた
車々間通信技術の検討を進めている。
車車間通信技術は、自動車を走行中のドライバが、互いの運転意志を含めた
走行状態を知ることによって、より安全、かつ円滑な走行を実現するために有
効な技術であり、高密度な車群走行の制御を行うための基幹技術の一つでもあ
る。自動車に求められる環境認識、操作支援のための機能は、車間距離制御(ACC:
Adaptive Cruise Control)、渋滞時などの低速時の先行車追随(Stop&Go)、衝
突警報(Collision Warning)、衝突被害軽減(Collision Mitigation)、駐車ア
シスト(Parking Aid)、ブラインドスポット検知(Blind Spot Detection)
、後
方警戒(Rear Crush Collision Warning)、衝突回避(Collision Avoidance)、
などがある。環境認識のためのセンサとしては、ミリ波レーダー、マイクロ波
レーダー、レーザレーダー、赤外線センサー、超音波センサー、カメラなどが
ある。これらはそれぞれ物理特性に基づく特徴を有している[6]。
2.1.1 マイクロ波とミリ波
マイクロ波(マイクロは、英: Microwave)は、電波の周波数による分類の一
つである。「マイクロ」は、電波の中で最も短い波長域であることを意味する。
一般的には波長 1m から 100μm、周波数 300MHz から 3THz の電波(電磁波)を
12
指し、この範囲には、デシメートル波 (UHF)、センチメートル波 (SHF)、ミリ
メートル波 (EHF)、サブミリ波が含まれる。しかし、明確な定義がある用語で
はなく、より狭い範囲やより広い範囲に対して用いられることもある。マイク
ロ波の発振には、マグネトロン、クライストロン、進行波管 (TWT)、ジャイロ
トロン、ガンダイオードを用いた回路などが用いられる。伝播(アンテナより
電波として空中を伝播させるものを除く)には一般的に同軸ケーブルが使われ
るが、出力(電力・ワット数)の高いものには金属製の導波管が用いられる。
また、近年ではマイクロストリップ線路など共に固体化(半導体)された発信
器の利用も増えてきている。マイクロ波の応用分野は広く、衛星テレビ放送、
マイクロ波通信、レーダー、マイクロ波プラズマ、マイクロ波加熱(中でも最
もポピュラーなものが電子レンジ)、マイクロ波治療、マイクロ波分光法、マイ
クロ波化学、マイクロ波送電などがある。これらを研究する学問を総じてマイ
クロ波工学と呼び、その他の応用として、水洗便所の小便器にマイクロ波セン
サが組込まれ自動洗浄にも採用されている。日本の地上波アナログテレビ放送
では、2012 年 3 月末まで難視聴地域用に第 63 チャンネルから第 80 チャンネル
まで 12GHz 付近が割り当てられていた[7]。
路側から車側への情報提供のための路車間通信については、現在 5 GHz マイ
クロ波帯を利用した狭域通信(Dedicated Short Range Communications: DSRC)
システムが主に検討されていますが、将来サービスが想定される動画伝送や高
速データ通信など、各種マルチサービスに対応することも期待されている。
ミリ波と呼ばれる電波が私たちの身の回りで役立てられるように、なりまし
た。ミリ波とは、文字どおり、波長がミリメートルのオーダ(1~10mm)の電
波のことであり、周波数でいえば 30~300GHz に相当し、携帯電話や無線 LAN で
使われている電波の周波数のおよそ 10~100 倍になる。このような波長が短い、
周波数が高いという特徴を生かすことで、走行中の車間距離を高精度に測定し、
衝突を防ぐための車載レーダに用いたり[8]、ギガビット級の伝送速度の高速無
線通信が実現されています[9]。
13
図8
電磁波の応用と分類
車と車の間で直接情報をやりとりする車々間通信システムは、これまでにも
通信媒体として赤外光などを利用したシステムなどが検討されてきましたが、
太陽光の影響を受けにくい、また雪や霧などの天候の影響を受けにくいという
理由から、電波を利用した車々間通信システムへの期待が高まっている。そこ
で 60GHz などのミリ波帯電波を用いた車々間通信システムの技術検討を進めて
いる。ミリ波帯の電波は大気中での吸収が大きく、比較的短距離で急速に減衰
してしまうため、長距離通信には向きませんが、車々間通信で想定されている
百数十 m 程度の距離であれば問題はなく、むしろはやく減衰してしまうことで
電波干渉を防ぐことができ、電波の場所利用効率の向上が期待できるという特
14
徴がある。また、既に実用化されているミリ波を利用した自動車レーダーとの
機能統合により、大幅なコストダウンが可能であるというメリットもある。
車々間通信が扱う情報は、前方障害物情報やブレーキ・アクセルなどの制御
情報など安全に関わるものが多く、通信路には非常に高い信頼性を必要とする
が、ミリ波を自動車のような移動体相互の通信に使うためには、フェージング
やドップラーシフトなどの電波伝搬における様々な困難を克服する必要がある。
そこで、図9に示すようなシステムを用いた高速道路などでの走行実験による
電波伝搬測定等を通して、最適な変調方式や誤り訂正方式などの検討を進めて
いる。また、周波数帯や変調方式、アクセス方式などを国内外で統一する必要
がある[10]。
図9
ミリ波車車間電波伝搬系統
現在、ITS 安全運転支援無線システムで利用が想定される周波数帯は、①ア
ナログテレビジョン放送の跡地であり、2012 年 7 月から利用可能となる
700MHz 帯(715MHz~725MHz)、②既に ITS 用途として割り当て済みである
5.8GHz 帯(5770MHz~5850MHz)がある。
700MHz 帯は、現在、TV 放送(アナログ、デジタル)で利用されており、ま
た、近い周波数帯(800MHz 帯)で携帯電話システムとしても利用されているよ
15
うに、電波の回り込みが可能であり、ビル影、大型車後方等の見通し外を含め
た広範囲で利用可能である。 特に、見通し外の交差点における出会い頭衝突事
故の防止への実現に適した周波数帯である。 700MHz 帯は、車車間通信に適し
た周波数であるが、以下の課題があり、今後の検討が必要である。
① 電波の回り込み特性があるが、一方、電波が飛び過ぎるため、車車間通信
システムの相互干渉回避が必要である。
② 車載アンテナ地上高のような低い地上高伝搬路での無線サービスの実施
例が少なく、電波伝搬特性の把握が必要である。また、隣接周波数システムと
の干渉が発生する可能性があり、その回避が必要である。
5.8GHz 帯は、電波の直進性が強く、ビル影、大型車の後方等の見通し外には、
電波が回り込みにくい。 5.8GHz 帯は、以下の課題があり、今後の検討が必要
である。
① 車車間通信に使用する場合、路車間通信システム(ETC 等)を含む干渉回
避に必要である。
② 車載アンテナ地上高のような低い地上高伝搬路での無線サービスの実施
例が少なく、電波伝搬特性の把握が必要である。
現在、欧米では 5.9GHz 帯を用いた安全運転支援システムの開発が進められて
いる。
アプリケーション層については、日本、米国、欧州において各国の事情に合
わせた形で独自に検討が進められている。一方、5.9GHz DSRC の下位層(ネッ
トワーク層、物理層)は、北米で審議が進んでいる IEEE802.11p 及び IEEE1609
を欧州へ用いて標準化される形で検討が進められている。欧州の 5.9GHz DSRC
については、ETSI TC ITS によれば、2009 年末までに標準化を終え、2012 年か
ら 2015 年にかけて実展開を目指すこととしている。
日本では、現在、ITS 情報通信システム推進会議において 700MHz 帯を用い
た車車間通信用実験ガイドライン(RC-006)が策定され、検討が進られている。
本ガイドラインにおける通信方式として、変調方式を OFDM Orthogonal
Frequency Division Multiplexing(直交周波数分割多重)方式、アクセス方式を
CSMA/CA Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance(搬送波検知多重
アクセス/衝突回避)方式としており、現在欧米において検討が進められている
通信方式との共通性が図られている。無線システムの基本的な通信方式は欧米
と共通性が図られているが、国際競争力確保の観点から、可能な範囲で米国及
び欧州において検討されている方式と調和を図ることが重要である。なお、方
式の検討に当たっては、日本で検討されているアプリケーションに基づく要求
要件を満たすことが重要である[11]。
16
前述の通り、ITS 安全運転支援無線システムの変調方式、アクセス方式につ
いては、日本、北米、欧州において共通性がある。一方で、日本においては隠
れ端末問題、上位プロトコルなど、実用化に向けて検討すべき課題があること
から、日本で検討中の安全運転支援のためのアプリケーションに基づく要求条
件を満たすことを前提として、可能な範囲で欧米において検討されている通信
方式との調和を図り、国際標準である ITU-R 勧告や ISO 化を目指すことが重要
である。なお、欧米において検討されているシステムアーキテクチャについて
も、諸外国の動向を踏まえ、国際調和の観点から検討を進めていくことが重要
である。
2.1.2 レーザレーダ-
LIDAR(英語:Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and
Ranging、
「光検出と測距」ないし「レーザー画像検出と測距」)は、光を用いた
リモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザー照射に対する
散乱光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析するも
のである。日本語ではライダー、ライダとカタカナ書きされることも多い。軍
事領域ではしばしばアクロニム LADAR (Laser Detection and Ranging) が用い
られる。この技法はレーダーに類似しており、レーダーの電波を光に置き換え
たものである。対象までの距離は、発光後反射光を受光するまでの時間から求
まる。そのため、レーザーレーダー (Laser Rader) の語が用いられることもあ
るが、電波を用いるレーダーと混同しやすいので避けるべきである[12]。
走行環境認識の代表的なセンサーであるミリ波レーダー、レーザレーダ、マ
シンビジョン(カメラ)について、それぞれの性能比較を表1に示す。単独で
すべての応用に使える万能な手法はない[13]。
表1
代表的走行環境認識手法の比較
17
2.1.3 超音波センサ
超音波センサとは送波器により超音波を対象物に向け発信し、その反射波を
受波器で受信することにより、対象物の有無や対象物までの距離を検出する機
器である。超音波の発信から受信までに要した時間と音速との関係を演算する
ことでセンサから対象物までの距離を算出します。また、送波器と受波器間を
通過する物体によって生じる超音波の減衰またはしゃ断を検出することにより
対象物の有無を検出する機器もある。超音波の発信・受信には圧電セラミック
を使用している。
圧電セラミックとは素子に加わった機械的な力により電極間に、力に応じた
起電力が発生する。また逆に電極間に電圧を印加すればその大きさに応じて機
械的変位を生じる。この起電力の大きさにより対象物の有無やセンサから対象
物までの距離を検出・計測する。なお、空気を媒体としているため、風の吹く
ところや高温物体による空気の揺らぎのある場所では正しい計測が行われない
可能性があり、また、音波を吸収する物体(粉体等)に対して使用する場合も
注意する必要がある[14]。
2.1.4 カメラ
衝突しそうになったとき、自動的にプレーキを掛けて止まってくれる自動車
が今話題になっている。このような裂置では前方の状況を捉え、衝突の危険性
を判断するためのセンサが重要な役割を担うが、そのセンサの一つにカメラが
ある[15]。
自動運転機能を実現するためには、新たに搭載しなければならない部品が数
多くある。まず従来よりも数多くの認識センサを搭載する必要がある。認識セ
ンサは、
“ぶつからないクルマ”と称される自動ブレーキ機能を備える車両の普
及に従って、低コスト化が進んでいる。調査会社の英 SBD(Secure by Design)
社は「前方を院視するカメラの普及率は、2013 年は 7.3%だが 2020 年には 64.7%
まで高まる」と予測する[16]。
低コスト化と並んで課題となるのが、認識精度の向上である。解決策として、
自動車メーカーや認識センサを供給するメーカー各社は、センサ単体の精度向
上と並んで、複数のセンサを統合するセンサフュージョンに取り組み始めた。
ミリ波レーダを得意とする富士通テンは 2013 年 11 月、自動車が車道にある障
害物を検知するための技術をフランス Valeo 社と共同で開発することで合意し
た。
Valeo 社はカメラを用いた周辺監視に強みを持つ。富士通テンの担当者は「競
争が激化する中で、開発スピ-ドを優先して共同開発の道を選んだ」とする。
18
2017 年ごろには、共同開発したシステムの実用化を目指す。
“ぶつからないクルマ”に搭載される自動ブレーキなどは総称して、先進運
転支援システム [ADAS(advanced driving assistant system)]と呼ばれている。
ADAS の普及を後押しする動きの一つが、規制強化である。欧州における新型車
の安全性評価の基準である[EuroNCAP]は、2014 年から評価項目として自動ブレ
ーキと車線逸脱警報を盛り込み、2016 年から歩行者検知を含んだ自動ブレーキ
を加える予定である。日本ではまず大型のバスやトラックで自動プレーキ機能
の搭載を義務化し、2014 年 11 月から順次適用する。
障害物を検知するセンサには、カメラや赤外線センサ、ミリ波レーダ、レー
ザーレーダ、超音波センサなど複数の種類がある(表2)。現在の主流は「単眼
カメラ+ミリ波レーダ」の組み合わせ。低コストの単眼カメラと、雨や霧など
の悪天候や夜間でも認識精度が落ちないミリ波レーダによって補完し合ってい
る。軽自動車を中心とする低価格車では、赤外線レーザレーダを採用する動き
も活発だ。
単眼カメラに対してステレオ・カメラは、対象物の認識や距離推定の制度に
優れるが、使いこないには多くのノウハウが必要となる。今のところ、富士重
工業の「EyeSight」に採用されている日立オートモーティブシステムズの製品
が先行しているが、2014 年から 2015 年にかけてドイツの会社がステレオ・カメ
ラの新製品を導入することで競争が激化しそうだ。
表2
2.2
自動運転に用いるセンサの主な方式の比較
従来の安全運転支援システムが抱える問題
自動車に求められる環境認識、操作支援のための機能は、車間距離制御(ACC:
Adaptive Cruise Control)、渋滞時などの低速時の先行車追随(Stop&Go)、衝
突警報(Collision Warning)、衝突被害軽減(Collision Mitigation)、駐車ア
シスト(Parking Aid)、ブラインドスポット検知(Blind Spot Detection)
、後
19
方警戒(Rear Crush Collision Warning)、衝突回避(Collision Avoidance)、
などがある。環境認識のためのセンサとしては、ミリ波レーダー、マイクロ波
レーダー、レーザレーダー、赤外線センサー、超音波センサー、カメラなどが
ある。これらはそれぞれ物理特性に基づく特徴を有している[6]。
これらを車載センサへ応用した場合の適合性を表3に示す。ミリ波やマイク
ロ波を用いたセンサは、レーザや赤外線を用いたセンサに比べ検知・通信距離
が長く、雨天性能・霧・雪での性能(全天候性)、相対速度の直接計測が可能で
あり、先行車両などの運動予測性能に優れるという特徴がある。また、ミリ波
レーダやマイクロ波レーダに比べ周波数が高いため、要求される角度分解能(ア
ンテナビーム幅)に対しアンテナ径が小さく、車両への搭載性に優れている。
表3
自動車に搭載される各種センサの比較
近距離
遠距離
レーザ
超音波
レーダ
レーダ
レーダ
センサ
検知範囲>2m
△
△
△
○
○
×
検知範囲 2-30m
○
○
○
×
△
×
検知範囲 30-150m
×
○
○
×
×
×
角度検出範囲<10deg
○
○
○
×
○
○
角度検出範囲>30deg
△
×
○
△
○
○
角度分解能
△
△
○
×
○
○
相対速度検出
○
○
×
△
×
×
耐天候性
○
○
△
△
△
△
夜間での検出
○
○
○
○
×
○
性能・方式
カメラ
赤外線
カメラ
そして、「第 4 回 国際自動車通信技術展」(2013 年 3 月 13~15 日、東京ビッ
グサイト)の基調講演に、トヨタ自動車の常務役員である友山茂樹氏は、
「地域
や時間帯によって異なるホワイトスペース(使用されていない電波の周波数帯
域)を自動的に検知し切り替えれば、自動車の車車間通信に有効活用できる」
と述べ、現在自動車向けとして認められている 5.8GHz 帯や 700MHz 帯にとどま
らない電波の利用法を提案した。現在、日本では、路車間通信に 5.8GHz、車車
間通信に 700MHz の周波数帯域を使用している。同氏は、「交通事故の 60%が交
差点で発生している。遮蔽(へい)物の影響を受けにくい 700MHz の周波数帯域
を用いる車車間通信を使えば、見通しの悪い交差点での交通事故を減らせるだ
ろう」と語り、700MHz 帯の車車間通信を使った安全支援システムの開発に注力
20
する方針を示した。この車車間通信について、安全支援システムにとどまらな
い利用法を検討している。それが、自動車を車車間通信で数珠つなぎにするこ
とで、通常の車車間通信では接続できないほど距離が離れた車両間でも通信を
行えるようにする「アドホック通信」である。もし、全ての車両間がアドホッ
ク通信で接続されれば、あたかも通信キャリアのように独自の通信網を構築で
きるわけだ。
しかし、700MHz 帯を用いる車車間通信は通信容量に限界がある。通信距離も
限られているので、車車間通信する相手の車両が周辺にいなければ、通信その
ものが行えない。
そこで、放送波が使用している周波数帯域には、干渉を避けるためのホワイ
トスペースが設けられている。しかし、地域や時間帯によってホワイトスペー
スの周波数が異なることもあり、活用は難しいとみられていた。同氏は、
「ホワ
イトスペースを自動的に検知して、使用する周波数帯を切り替えられれば、車
車間通信に利用できる。このホワイトスペースを用いた車車間通信は、かなり
離れた場所にいる車両との通信も可能になるし、通信容量も大きくとれるだろ
う」と強調する。
ただし、電波による車車間通信では欠点があると考えられている。通信する
には、通信相手の IP アドレスや MAC アドレスなどを問わずに、各車がルータの
役割になり、情報を中継したり、送受信したりするわけだ。ブロードキャスト
のような方式で、周りの車に同じ情報を出し続けている。この方式では災害時
に通信インフラが寸断された場合にも活用できるというメリットがある。しか
し、この方式により、運転手にとって、以下のデメリットもある。
1. 情報の到来方向がわからないため、どの情報がどこの車から送信されてい
るのかを知ることが難しい。ここに問題があるのは、車のいる場所による
安全運転支援するための情報である。車両周囲の状況を把握するためには
GPS 情報が必要である。GPS の精度により、GPS の位置情報に基づいた道
路情報や運転情報と実際にいる場所とかかわる道路情報や運転情報に常
に一致しているという保証がない。この場合では、通信元がわからない、
いつも受け身的に情報を受信するため、自分に役に立たない情報が入って
くる可能性もあるという。
2. 電波での通信方式により、誰かと通信する、あるいは情報を受信するかし
ないかということをドライバーは能動的に決定することができない。指向
性が鋭いアンテナを使うことで、前方や後方の車との通信ができているが、
これは運転手が能動的に決めるわけではなく、受身的にひたすら受信する
形である。もし、ある車だけとコミュニケーションを主動的にとりたい場
21
合では、現在の方式ではなきない。また、横のレーンにいるある車だけと
情報交換したい場合、あるいはホワイトスペースに他の車がなく、そして
遠く離れているある車だけと通信したい場合では、ブロードキャストのよ
うに同じ情報を周りの車に無差別に出し続ける方式以外では、現在の電波
を利用した車車間通信では難しいである。そのため、情報のセキュリティ
ー上では懸念すべきである。
3. 車車間通信だけを活用することで、安全な交通環境を構築ことができない。
そのため、車車間通信だけではなく、車間距離測定技術や、画像処理危険
検知や回避などの技術も必要である。すべての機能が備えるには、相当な
金額がかかることがわかった。そのため、コストが低く、インフラ面の負
担が低く、かつ複数な機能がひとつの安全運転システムに含まれることが
期待されている。
4. 他のシステムとの共存に関して、懸念点がある。700MHz 帯にて本システ
ムを実現するためには、隣接する周波数帯を使用する他のシステムとの共
存条件を明確化する必要がある
[21]
。
ITS 用途には、710MHz~730MHz のうち、
10MHz 幅が割当てられているが、
これより低い周波数にある地上波デジタル放送及び高い周波数にある電
気通信のガードバンド幅を検討する必要があり、できる限り ITS 用途の帯
域を低い周波数側に配置することとされている。したがって、これら地上
波デジタル放送、電気通信と ITS との干渉量を推定し、共存を図るための
検討を早急に実施する必要がある。他システムが ITS に与える被干渉、ITS
が他システムに与える与干渉が発生しうる状況を検討し、他システムとの
共存条件の明確化という本課題を解決するために、干渉量の定量的な検討
をさらに進めるとともに、今後、放送事業者、電気通信事業者、並びに
ITS のシステムに関わる関係者が連携した検討が必要である。
5. シャドウイングと自システム内干渉である。無線により車相互に、あるい
は路側機から情報を取得する。このため、周囲の環境により電波伝搬の状
況が変化した場合には、通信性能に影響が及ぶ可能性がある。第 1 の問題
は、シャドウイング及び反射である。トラックなどの大型車両が存在する
場合、大型車両は電波を遮り、また別の方向に反射することがある。この
場合、大型車両の陰に隠れた車では、遮蔽による情報の一時的途絶が発生
する。これがシャドウイングである。加えて、大型車両で反射した電波は、
想定しない場所に届いてしまう可能性もある。このような不要反射も、届
いた先の車の通信を妨害する可能性がある。第 2 の問題は、隠れ端末であ
る。アクセス方式として CSMA/CA 方式を用いる前提で検討が進んでいる。
22
CSMA/CA 方式は、車載無線機や路側機がお互いの送信状態を監視しながら、
送信タイミングの調停を行う方法であり、端末の存在が認識されている際
には簡便でかつ有効に動作する。しかしながら、お互いの存在を認識して
いない端末が複数存在する場合には、両者が同時に送信した際に干渉が発
生する可能性がある。これらお互いの存在を認識しない端末を隠れ端末と
呼ぶ[21]。
6. 情報セキュリティである。は安全運転を支援するために、車両の走行に関
わる様々な情報の提供が検討されている。このため、情報セキュリティも
重要な課題と言える。情報セキュリティに関する方策を立案するには、シ
ステム全体の定義、セキュリティを脅かす脅威の分析、それぞれの脅威に
対する対策立案、対策の運営管理などのステップを確実に実施する必要が
ある[21]。
電波以外の技術では、注目されているセンシング技術はカメラですが、車載
カメラにより、低コストで、車載認識、障害物検出、自動ブレーキなどの安全
運転機能ができるが、一番大きい欠点というと、夜間での検出性能が落ちると
いうことだ。
そして、現在、世界に注目しているところは、事故防止、危険回避、または、
安全運転支援ですが、将来には、車車間通信により安全運転の上で、エンタテ
インメント面、ドライビングエクスペリエンス面の向上させるための車車間乗
用人員間のインタラクションやコミュニケーションにも、ますます各メーカが
注目を集めている。
また、複数の車両が混在して走行する自動車交通の中で、自車の周囲の運転
者間での意思情報の伝達が必要とされる場合も多い。例えば停止や右左折、車
線変更等の意思情報の伝達は、事故防止のために必要不可欠な情報であり、灯
火類による視覚的な情報伝達が法令等で定められている。またこれら法令に定
められるもの以外にも、灯火、警音器やジェスチュア等により、優先権の移譲
や謝意、怒りの伝達等、様々な意思情報の伝達が行われている。一方、近年は
ITS の重要な要素技術として、運転支援や自動運転を目指した車車間通信技術の
研究開発も進みつつある。このような通信技術とすることにより、従前とは異
なったより高度な運転者間でのコミュニケーションを実現することが期待され
る。このような背景から、これまで無線 LAN と GPS を用いることにより、特定
の車両にメッセージを送信できる運転者間コミュニケーションシステムのプロ
トタイプを開発してきた[19] [20]。
23
従来の電波による運転手間コミュニケーションでは、送信対象車両を特定す
るには、GPS による位置情報を用いる。それにより得られた位置情報および進行
方向に関する情報はサーバに転送され、サーバに登録・蓄積される。ある車両
から車両情報の検索要求があった場合、まず、その車両の一定の範囲内の車両
を抽出する。前方または後方の車両の検索では、抽出した車両から同一方向に
進む車両のみを選び、さらにその中で距離が最小である車両を求める。また交
差車両を検索する場合には、抽出された車両から進行方向が直交する車両のみ
を選び出し、さらに左右どちらの位置にいるかを計算し、対象車両を求める。
求められた車両の情報から IP アドレスと確認用の車両情報(車種や色等の情報)
を加えて、検索を行なった車両に返す[19]。
車両間におけるメッセージの送受信は、車両情報サーバから取得した IP アド
レスを基に、無線 LAN によるネットワークを介して文字情報により行う。メッ
セージの送受信においては、運転操作の妨げにならないような送信方法とする
必要があることから、ユーザーが予め設定したメッセージから選択して送信す
るものとする。送信されたメッセージは、ネットワークを通じて該当車両の端
末が受信する[19]。
しかし、前節にものべったように、GPS による位置情報の精度が不安定で、場
所により精度が大幅に外れるケースも少なくない。そのため、GPS による位置情
報で送信対象を特定するのが適当かどうかの検討が必要である。
2.3
本研究の必要性と提案手法の解説
2.3.1 本研究の必要性
前節に解説した車車間通信技術とセンシング技術の比較および問題点により、
従来の事故防止、危険回避、安全運転支援技術を分析した結果、将来に必要と
なる技術やシステムに対する要求分析、将来に望まれる必要な車車間通信シス
テムの特徴が表5に示す。本研究では、現状の問題点を解決するため、そして
表5に書いてあるシステムに対する要求に満たしている車車間通信システムを
提案する。
24
表4
将来に望まれる車車間通信システムの特徴
必要な特徴
できること
どの情報がどこの車から送信されているのか一目瞭
情報の到来方向がわかる
然に知ることで、運転における安心感が向上でき、
誤った位置情報に基づいた情報を防ぐことが可能
従来の受身的に送受信することではなく、運転手が
誰かと通信する、或は情
報を受信するかしないか
ということをドライバー
は能動的に決定できる
能動的に通信したい車を指定することができ、その
車だけと送受信ができるため、通信効率の向上や情
報のセキュリティー上の安心もできる。さらに、指
定した車との通信により、運転手間・乗用人員間の
コミュニケーションもでき、エンタテインメント面、
ドライビングエクスペリエンス面の向上できる
コスト低減のため、安全
運転に必要となる機能を
ひとつの技術システムに
含まれる。
車車間通信、画像処理、距離測定などの機能をひと
つの安全運転システムでできるため、コストが低減
でき、効率よくなる。普及によい
他のシステムとの共存
万全な情報セキュリティ
ー仕組み
夜間での性能がよい
あ互いに干渉なく
不法使用を防ぐ。安心利用
夜間の運転でもより安心に
表5に示したように、将来にはこのような技術が望まれ、従来の安全運転シ
ステムにこのような技術を加えることで、よりよい交通環境が構築できると想
定している。前節に述べた従来の車車間通信における問題点を解決するには、
また上述の未来で望まれる安全運転支援システムを構築するために、本研究で
は、必要となる技術の特徴に満たしている可視光通信による新しい車車間通信
システムを提案する。
2.3.2 提案手法の解説
低炭素社会を目指す環境改善へのグローバルな動きは、照明の世界において
も、従来の白熱電灯から二酸化炭素の排出量が少ないデバイスへの移行を促し
ている。近年、改良が進んだ結果、輝度が大幅に向上した LED(Light
Emitting
Diode:発光ダイオード)は、今後の照明器具といて脚光を浴びているが、加え
て安全性やセキュリティーなどの面ですぐれているため、通信への利用も注目
25
されている。すでに、LED などを利用した可視光通信の標準化や普及促進は数年
が経過し、さまざまなシステムへの応用が検討されてきたが、最近は ITS の分
野において、道路にある移動体との通信手段としても期待されている[18]。
可視光通信とは、目に見える光である“可視光”を使った新しい通信技術で
ある。これは、LED など半導体素子の高速応答性を利用して可視光によって情報
を発信し、フォトダイオードや CMOS などの素子で受信してデータ通信を行う技
術である。可視光は、図8に示すように電磁波の一種であり、その波長は 380
-780nm で、太陽光や照明に含まれている。可視光通信が近年脚光を浴びている
理由として、LED が照明器具などへ普及すると、照明器具を利用した通信が可能
となる以外に、環境やセキュリティーなど社会の動向にマッチした次のような
特徴があることもあげられる。
1、
目に見える光であるため、通信可能エリアがわかりやすいという特徴
があり、情報の発信源を認識しやすい。
2、
可視光通信は、通信範囲を限定することができるため、高精度な位置
情報の提供や展示案内など、歩行者に適した用途を実現したすい。そ
して、コストが低いため、ITS における移動体では、車だけではなく、
人やバイクにも応用できる。
3、
通信媒体は日常接している光で、電波ではないため、人体や電子機器
への影響などが起きにくく、地下や病院など、電波が届かない場所や
使えない場所でも使用できる。
4、
LED を用いた信号機や灯台などの既存のインフラを利用し、通常の LED
照明で通信ができる。
26
図10
電磁波応用と可視光の波長
可視光通信の ITS への応用では、数十 M から数百 M の中長距離において、発
信源から発信される光を確実に受信することが必要になる。この技術が実用化
されると、可視光通信による路車間通信と車車間通信ができるようになってい
る(図11)。
図11
可視光通信を応用した路車間通信と車車間通信のイメージ
本研究では、前方の車両の情報を後方の車両が受け取ることにより安全運転
27
を支援することが目的である。そのための手法として本システムでは、テール
ランプ、ハイマウントストップランプの可視光光源を利用しその光強度を変調
させることにより前方車両の情報を送信し、後方車両に設置されたイメージセ
ンサをもちいてそのデータの受信および画像取得をおこない、それらの情報を
統合することにより前方車両の情報を検出する。また、検出後にその情報を用
い、道路にある複数の車の中に通信する車の指定ができる新しい車々間通信を
提案する[図12]。そのため、本研究で使われる実験設備としては、車のハイ
マウントストップランプとブレーキランプの組み合わせを2セット、イメージ
センサと PC2台となる。
イメージセンサ
図12
テールランプ等からの可視光送信
テールランプなどを利用した車車間通信
提案するシステムは従来の電波の方式と比べると、以下のメリットがある。
1. 可視光通信に必要となる LED ランプや LED ヘッドライト、車載カメラが既
に車に普及されているため、コスト面には有利である。
2. 発信源は目に見えるため、どこから情報が来ているかを容易に知ることが
できる。
3. 情報を受信するかしないか、どの車と通信するかということを能動的に決
定することも可能である。
4. 更に、イメージセンサを使っているため、画像取得もできる。すなわち、
車車間・路車間通信だけではなく、画像処理や車間距離の検知による事故
防止、安全運転支援も可能である。
5. 本方式による車々間通信では、今まで盛んに行われている事故防止、危険
回避だけではなく、安全運転支援、更にエンタテインメント面、ドライビ
ングエクスペリエンス面の向上もできるというメリットがある。
6. 可視光通信による車車間通信では、夜間でも車のブレーキランプやテール
ランプが点灯されるため、通信距離は 100 メートル以上と考えられている。
28
3 イメージセンサによる車車間可視光通信システム
のデザイン
3.1
システムデザイン
本研究では、前方の車両の情報を後方の車両が受け取ることにより安全運転
を支援することが目的である。そのための手法として本システムでは、テール
ランプ、ハイマウントストップランプの可視光光源を利用しその光強度を変調
させることにより前方車両の情報を送信し、後方車両に設置されたイメージセ
ンサをもちいてそのデータの受信および画像取得をおこない、それらの情報を
統合することにより前方車両の情報を検出する。また、検出後にその情報を用
い、道路にある複数の車の中に通信する車の指定ができる新しい車々間通信を
提案する[図12]。
前方車両から送信される情報としては、自車と前方車両間の距離、自車から
みた前方車両の方向、前方車両の進行方向、GPS 情報、速度、ハンドル状態、ブ
レーキ状態、運転手自身の状態など様々な情報を送信することが理論的には可
能である。事実、前方車両の車内ネットワーク CAN(Controller Area Network)
上に流れる情報はすべて可視光通信によって送信することが可能である。本研
究では、時間的制約のため、通信する車を指定するに必要となる車の ID 情報、
や安全運転に必要である自車と前方車両間の距離、前方車両のスピード、加速
度などの情報を検出することに限定する。
後方車両(受信側)
LED光源
前方車両(送信側)
ディスプレイ
イメージセンサ
CAN(Controller Area Network)
CAN(Controller Area Network)
可視光受信ECU ECU
図13
ECU ….
可視光送信ECU ECU
可視光通信による車車間通信システム図
29
ECU ….
図13に描かれている可視光通信による車車間通信システム図において、前
方車両の CAN の ECU の一つである可視光送信 ECU が送信データをもとに送信波
形を生成し、それをもとにテールランプ、ハイマウントストップランプの LED
光源の光強度を変調する 3 個の LED 光源からはすべて同じデータを送信するこ
ととする。後方車両では、前方車両から放射された LED 光の変調信号を高速イ
メージセンサで撮像をし、それをもとに可視光受信 ECU が変調信号を復調して
データを復元し、そのデータをもとに、通信する車の選択、自車と前方車両間
の距離、前方車両の運転情報を検出し、その検出結果をディスプレイに表示さ
せる。
また、図14にはテールランプとハイマウントストップランプを利用した可
視光信号が車両から放射されている状態が描かれている。送信機は、車のテー
ルランプと、ハイマウントストップランプを利用する。
ハイマウントストップランプからの可視光送信(オプション)
ハイマウントストップランプ
テールランプ
テールランプからの可視光送信
図14
テールランプとハイマウントストップランプを利用した可視光通信
3.1.1 システム要件・設計
3.1.1.1
送信側
送信側の車両では 3 個の LED 光源を変調制御する必要がありその位置関係が
図15に示されている。2 個のテールランプの間隔が𝑤(mm)あり、テールランプ
の中点の上方にハイマウントストップランプが設置されているとする。また、
ハイマウントストップランプはテールランプから𝑑(mm)奥まったところの上方
30
ℎ(mm)に設置されているとする。
ハイマウントストップランプ
h(mm)
d(mm)
w (mm)
w/2 (mm)
w/2 (mm)
テールランプ
テールランプ
図15
テールランプとハイマウントストップランプの相対的位置関係
これらの情報が可視光送信によって送信されるが、そのデータフレームフォ
ーマットが図16に示されている。データフレームでは同じデータを繰り返し
送信し連続するデータフレーム間にはギャップタイムがある。また、データフ
レームは、ヘッダ、データペイロード、エラーチェックで構成されている。ヘ
ッダ信号によりそのデータフレームのスタートを示し、データペイロードで送
信するデータを送り、最後にデータペイロードのデータをもとにした CRC コー
ドを付加する。
ギャップタイム
ヘッダ
Header
Pattern
エラー
データペイロード チェック
Data
ヘッダ
Header
Pattern
CRC
エラー
データペイロード チェック
Data
CRC
時間
図16
データフレームフォーマット
31
データフレームフォーマットの詳細が図17に示されている。データフレー
ムは、まず、ヘッダパターンから始まり、データペイロードが続き最後にエラ
ーチェックが付加される。データペイロードのなかには、Car ID、LED width、
LED height、LED depth、速度や加速度、または位置情報などの情報が含まれて
おり、それぞれのデータ長は 2 バイトか 1 バイトある。Car ID は前方車両を識
別するものであり、車ごとに固有の番号を割り振る必要がある。2 バイトを使用
した場合、65536 車両の識別をすることが可能である。
また、LED width、 LED height、LED depth は、それぞれ、図26で説明をし
た、2 個のテールランプの間隔
w(mm)、ハイマウントストップランプの奥行
d(mm)、その高さ h(mm)の情報を 2 バイトの 2 の補数(2's complement)で表現
する。その値は、-32768mm から 32767mm まで表現することができる。2 の補数
で表現する理由は、ハイマウントストップランプの奥行 d(mm)が負の値をとる可
能性がある、つまりハイマウントストップランプがテールランプよりも後ろに
突き出ているものも有りうるからである。また、w(mm)、と h(mm)にかんしては、
正の値しかとりえないと思われるが、d(mm)との統一性をとるために、w も h も
2 の補数で表現することとする。CRC コードは CRC-8 をもちい、受信したデータ
のエラー検出用に用いられる。
図17
詳細データフレームフォーマット
次に、データフレームおよびギャップタイムの波形について述べる。波形は
光強度を変化させることで発生させる。すべての波形に共通するのは、データ
フレームとギャップタイムのすべての時間において光強度の平均値は光強度が
オンの強度の半分になるように設計されていることである。そのようにするこ
とで送信データの内容によらず平均送信パワーを一定することができ、その結
果、人間の目にはちらつかないようにすることができる。
32
図18にヘッダパターンの波形が示されている。ヘッダパターンはそれにつ
づくデータの波形と区別するために、データ波形とはことなる波形にする必要
がある。後述するデータ波形でのシンボル長は1シンボルを伝送する時間長を
意味するが、ヘッダパターンの時間的長さは 2 シンボル長とし、その最初の1
シンボル時間は光強度をオン、次の1シンボル時間は光強度をオフにする。図
中の下向きの矢印はイメージセンサによるサンプリングのタイミングを示して
おり、その時間での光強度をイメージセンサのピクセルでとらえることができ
る。
仕様する高速イメージセンサのフレームレートは1200fpsであるので、
サンプリングの間隔は 1/1200 秒=833μ秒であり、シンボル長はその 2 倍の 1667
μ秒となり、その時間をかけて 1 ビット情報を送ることができる。なお、光送
信機のタイミングとイメージセンサのタイミングは同期していないため、かな
らずしもこのタイミングでサンプリングされるとは限らず、タイミングのずれ
による問題がでる場合があるがその解決法に関しては後述する。
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
ヘッダーパターン:0000000000
図18
ヘッダバターンの波形
図19にデータ及びエラーチェックの信号波形が示されている。変調は2PPM
(Pulse Position Modulation)を行う。1シンボルを伝送するシンボル時間内
で、伝送データが0の場合は、第 1 スロットの光強度がオンで第2スロットの
光強度がオフであり、伝送データが1の場合は、第 1 スロットの光強度がオフ
で第2スロットの光強度がオンである。変調方式として2PPM を使用することに
より、送信データの内容によらず平均送信パワーを一定することができる。
33
イメージセンサによる
サンプリングのタイミング
伝送データ
光強度
0
0
1
0
1
1
0
時間
第2スロット
第1スロット
1シンボル長
図19
データ及びエラーチェックの信号波形
図19のなかにイメージセンサによるサンプリングのタイミングが示されて
おり、このタイミングでサンプルすることにより正しい光強度をサンプルする
ことができる。しかし、図20に示されているサンプリングのタイミングでは、
光強度が変化する瞬間にイメージセンサでサンプリングが行われるので正しい
光強度をサンプルするのが難しくなる。
イメージセンサによる
サンプリングのタイミング
伝送データ
光強度
0
0
1
0
1
1
0
時間
第2スロット
第1スロット
1シンボル長
図20
サンプリングのタイミングが光信号の変化時と同期した場合
本システムでは送信側と受信側は同期しないという前提なので、このような
不都合なサインプリングのタイミングが起る可能性がある。そのため送信側あ
るいは受信側のタイミングを常に変化させることにより不都合なタイミングが
起ることを防ぐ方策をとる。本システムにおいては、受信側のイメージセンサ
のタイミングを変化させるのは難しいので、送信側の LED 光源の発光タイミン
グを毎データフレームごとに変化させることによりタイミングのずれを調整す
34
る。その方法を図21を用いて説明する。図21に示されているギャップタイ
ムの時間を1シンボル長の 1⁄4 の長さにし、あるデータフレームの送信後、ギ
ャップタイムでタイミングをずらしてから次のデータフレームを送ることによ
りそのタイミングをずらす。この方法により、例え図21内の前データフレー
ム受信時に、もし光強度が変化する瞬間にイメージセンサでサンプリングが行
われ正しい光強度をサンプルするのが難しい場合でも、1⁄4 シンボル長のギャッ
プタイムで送信のタイミングがずれて、次データフレームのヘッダやデータの
サンプリングを正しいサンプリングのタイミングにすることが可能である。
イメージセンサによる
サンプリングのタイミング
ギャップタイム
前データフレームの
エラーチェック
光強度
…….
1
次データフレームの 次データフレームの
Header pattern
データ
0
…………………...
時間
1シンボル長
シンボル長
図21 ギャップタイムの波形
このようにすることで前データフレームの受信がエラーとなっても、次デー
タフレームは正しく受信することができる。送信データは固定データを繰り返
し送るので、前データフレームのデータを破棄したとしても次データフレーム
のデータを正しいサンプリングで取得することで正しいデータを受信すること
ができる。
データ(Data)部は、データ種別、Car ID、2 個のテールランプ間の幅 w[mm]、
ハイマウントストップランプとテールランプ間の高さ h[mm]、ハイマウントスト
ップランプとテールランプ間の奥行き d[mm]から構成されます。
35
Header
Pattern
Data
(9Byte)
CRC
(1Byte)
データ
幅
高さ
奥行き
Car ID
w[mm] h[mm] d[mm]
種別
(2Byte)
(2Byte) (2Byte) (2Byte)
(1Byte)
・データ種別(1Byte)
送信するデータ種別情報。
・Car ID(2Byte)
Car ID は前方車両を識別する ID。0~65,535 の 65,536 車両の識別をする事が
可能となります。
・幅 w[mm](2Byte)
2 個のテールランプ間の幅情報。情報は 2 の補数で表現します(-32768mm~
+32767mm)※。
・高さ h[mm](2Byte)
ハイマウントストップランプとテールランプ間の高さ情報。情報は 2 の補数
で表現します(-32768mm~+32767mm)。
・奥行き d[mm](2Byte)
ハイマウントストップランプとテールランプ間の奥行き情報。情報は 2 の補
数で表現する(-32768mm~+32767mm)。
また、ちらつきを低減するには、本研究では 8B10B を利用し、8 ビットのデー
タを 10 ビットに変えることで、ちらつきを抑える。データ(Data)部は、8B10B
変換したデータデータを送信します。下図にデータ種別が「0x01」、8B10B のラ
ンニング・ディスパリティ(RD)が(-)の場合の波形を示します。
「0x01」の場合、
0x0AE が送信されます。データ(Data)部は 90 シンボルとなります。付録 I 参照。
0
0
1
0
1
0
0x0AE
36
1
1
1
0
また、CRC は CRC-8 CCITT を使用します。以下に生成多項式を示します。
x8  x 7  x 3  x 2  1
CRC は、データ(Data)部同様、8B10B 変換したデータを送信します。下図に CRC
が「0xAB」、8B10B のランニング・ディスパリティ(RD)が(+)の場合の波形を示し
ます。「0xAB」の場合、0x14B が送信されます。付録Ⅱ 参照。
0
1
0
1
0
0
1
0
1
1
0x14B
3.1.1.2 受信側
受信側では、高速イメージセンサを用いて前方車両の画像および、前節で説
明した LED 光源のデータを受信する。図22にはイメージセンサから見たテー
ルランプとハイマウントストップランプの角度がしめされている。2 個のテール
ランプの角度がβ、ハイマウントストップランプの仰角がαであるとする。
ハイマウントストップランプ
h(mm)
d(mm)
w (mm)
w/2 (mm) w/2 (mm)
テールランプ
テールランプ
β
α
図22
イメージセンサーかあら見たテールランプとハイマウントストップラ
ンプの角度
37
また、図23には、イメージセンサに投影された車両の像が示されており、
レンズにより上下左右が反対になっている。
図23
車両がイメージセンサに投影されている状態
図24は、イメージセンサ上での車両の投影像とその寸法が、車両を上にし
てしめされている。イメージセンサ上で 2 個のテールランプの距離が𝑤𝑖 (mm)、
ハイマウントストップランプの高さがℎ𝑖 (mm)、であるとする。なおレンズの焦点
距離は𝑓 (mm)とする。
hi (mm)
wi (mm)
図24
イメージセンサ上での車両の投影像とその寸法
38
以上の画像および LED 光源からの受信データをもとに、
① 通信する車の識別し、通信したい車を選択する。
② 車と前方車両間の距離を検出する。
以下にそのそれぞれの処理手法について説明する。
① 通信する車の識別し、通信したい車を選択する。
本研究で提案するイメージセンサによる車車間可視光通信を用いて道路にい
る車の中に、ブロードキャスト方式ではなく、車のテールランプなどの可視光
を利用した可視光通信によってそれぞれの車を認識し、運転手が主動的に能動
に通信したい車だけの通信ができる。その手法としては、まず、可視光通信に
より車の ID を検出した後、認識した車の周りに四角いの枠を描く。そして、そ
の枠の中に車の ID 番号を書いて、その画面をモニターに表示させる。最後に運
転手がタッチパネルやキーボードによる入力で、通信したい車を選択し、取得
したい情報を入手する。処理のフローチャットは図25に参照する。実際の処
理イメージは図26から図31まで参照する。
図25
通信したい車を指定するフローチャット
39
図26
可視光通信によって、車を認識しているイメージ。グリーンの四角い
の枠で囲んだのは認識したテールランプやハイマウントストップランプである。
図27
可視光通信により、まず右側の車の ID を認識できた。ID 番号を画面に
書く。そして、認識した車の周囲にも枠を書くことで、車を認識したことを示
す。
40
図28
図29
左右の車はすべて認識できたイメージ
ユーザーがキーボードで番号を入力することにより、通信したい車を
選択することができる。
41
図30
ユーザーが車1を選択した後のイメージ、車 ID が1である車の運転情
報が画面に映す。
図31
ユーザーが車2を選択した後のイメージ、車 ID が2である車の運転情
報が画面に映す。
上述の処理手法により、ユーザーが能動的に、通信したい車だけとの通信を
とるができるようになる。
② 車と前方車両間の距離を検出する。
42
前方車両のハイマウントストップランプが点灯している場合と消灯している
場合で計算方法が異なるため、それぞれの場合について説明をする。
②のケース1:前方車両のハイマウントストップランプが消灯している場合
前方車両のハイマウントストップランプが消灯している場合、可視光通信で
データを受信できるのは 2 個のテールランプからのデータのみであり、また画
像も 2 個のテールランプの像のみを検出できるものとする。図32に示されて
いるように、ケース1では、前方車両が後方車両の真正面にあり、前方車両の
向きが後方車両の向きと同じ方向であることを前提とする。
前方車両
q
後方車両
図32
前方車両が後方車両の真正面にあり、前方車両の向きが後方車両の向
きと同じ方向の状態
この前提の下では、2 個のテールランプの間隔離𝑤(mm)、イメージセンサ上で
のテールランプ間の距離𝑤𝑖 (mm)、レンズの焦点距離𝑓(mm)、車両間距離 q(mm)
の間には以下の関係が成り立つ。
q=(
𝑤
𝑤
+ 1) 𝑓 ≅
𝑓
𝑤𝑖
𝑤𝑖
これにより車両間距離を計算することができる。
②のケース2:前方車両のハイマウントストップランプが点灯している場合
前方車両のハイマウントストップランプが点灯している場合、つまり前方車
43
両の運転者がブレーキを押している場合、後方車両が可視光通信でデータを受
信できるのは 2 個のテールランプおよびハイマウントストップランプからのデ
ータであり、また画像も 2 個のテールランプおよびハイマウントストップラン
プの像を検出できるものとする。図33に示されているように、ケース2では、
前方車両の向きが後方車両の向きと異なる方向でも同じ方向でも構わない。
前方車両の進行方向
前方車両
q
後方車両
図33
前方車両が後方車両の真正面にあり、前方車両の向きが後方車両の向
きとは異なる方向の状態
この前提の下では、前方車両の向きがどの方向に向いていてもハイマウント
ストップランプの仰角αは変わらないことを利用して距離を計算する。
ハイマウントストップランプの高さℎ(mm)、イメージセンサ上でのハイマウント
ストップランプの高さℎ𝑖 (mm)、レンズの焦点距離𝑓(mm)、車両間距離 q(mm)の
間には以下の関係が成り立つ。
q=(
ℎ
ℎ
+ 1) 𝑓 ≅
𝑓
ℎ𝑖
ℎ𝑖
これにより車両間距離を計算することができる。そのイメージは図34に参照
する。
44
車間距離:80メートル
車間距離:13.6M
進行方向:左10度
速度:30M/S
図34
3.2
車間距離:120メートル
車間距離:17.2M
進行方向:まっすぐ前
速度:60M/S
受信側のディスプレイの表示例
システム構成
前節にて、本研究のシステム設計および機能について解説した。システム機
能に基づいたシステム構成にめぐって分析する(図35)。
45
イメージセンサに
よる車車間可視光
通信システム
送信システム
LED駆動回路システ
ム
電源システム
ソフト制御システ
ム
受信システム
イメージセンサ駆
動システム
可視光通信システ
ム
変調システム
LED識別システム
エラーチェックシ
ステム
LEDトラキングシス
テム
データ編集
復調システム
データ種類や送信
仕様設定システム
エラーチェックシ
ステム
画面表示システム
車を選択システム
図35
システム構成
46
4 システム開発及び処理手法の説明
本研究では、前方の車両の情報を後方の車両が受け取ることにより安全運転
を支援することが目的である。そのための手法として本システムでは、テール
ランプ、ハイマウントストップランプの可視光光源を利用しその光強度を変調
させることにより前方車両の情報を送信し、後方車両に設置されたイメージセ
ンサをもちいてそのデータの受信および画像取得をおこない、それらの情報を
統合することにより前方車両の情報を検出する。また、検出後にその情報を用
い、道路にある複数の車の中に通信する車の指定ができる新しい車々間通信を
提案する。
前方車両から送信される情報としては、自車と前方車両間の距離、自車から
みた前方車両の方向、前方車両の進行方向、GPS 情報、速度、ハンドル状態、ブ
レーキ状態、運転手自身の状態など様々な情報を送信することが理論的には可
能である。事実、前方車両の車内ネットワーク CAN(Controller Area Network)
上に流れる情報はすべて可視光通信によって送信することが可能である。本研
究では、時間的制約のため、通信する車を指定するに必要となる車の ID 情報、
や安全運転に必要である自車と前方車両間の距離、前方車両のスピード、加速
度などの情報を検出することに限定する。
そして、本研究で提案する新しい車車間通信の実現性や性能評価のため、プロ
トタイプを開発した(図36、プロトタイプを使い、実験するイメージ)。大き
く分けると、可視光による情報を送信するための送信側システムと(図37-
図39、送信側におけるソフトウェアとハードウェアのイメージ)イメージセ
ンサによる情報を受信し、ユーザーからの指令をうけ、処理した映像をリアル
タイムで画面に表示させる受信側システムがある。本章では、送信側と受信側
のシステム開発にめぐって、処理手法やソフトウェアの設計およびハードウェ
アの設計を解説する。
47
図36
プロトタイプで実験するイメージ(右の画面にある Dist は車間距離を示す。
Spd は前方車両の速度、Acc は加速度を示す。)
図37
図38
送信用ソフトウェアのイメージ
送信機を駆動するための駆動回路のイメージ
48
図39
4.1
送信機で送信しているイメージ
送信側ソフトウェア
送信側では、前方車両のテールランプ、ブレーキランプまたはハイマウント
ストップランプを利用し、前方車両の運転情報を後方の車に送信する(図40
で送信ソフト接続構成を示す)。今回は、送信するデータを三種類に分けている。
それぞれは、第一種としては、自車の Car ID、Width、Height、Depth である。
第二種としては、車速、加速度、スロットル開度、緯度 N/S、緯度(度)、緯度
(分)、緯度(1/1000 分)がある。第三種としては、経度 E/W、経度(度)、経
度(分)、経度(1/1000 分)がある。図41はソフトウェアイメージ図である。
図40
送信ソフト接続構成
49
図41
ソフトウェアイメージ
4.1.1 機能概要
表5にイメージセンサによる車車間可視光通信送信ソフトの機能一覧を記し、
表6にデータ種別一覧を記す。
表5
イメージセンサによる車車間可視光通信送信ソフトの機能一覧
表6
データ種別一覧
50
そして、各機能で送信ユニットへ送信するデータフォーマットを図42に示
す。
図42
各機能で送信ユニットへ送信するデータフォーマット
4.1.2 COM ポート接続機能
COM ポート接続機能では、各種データを送信するために、コンボボックスで選
択された COM ポートをオープンし送信ユニットと接続する。表7に情報送信用
PC -送信ユニット間の通信仕様を記す。
表7
情報送信用 PC-送信ユニット間の通信仕様
4.1.3 初期設定機能
初期設定機能では、構成設定(SETTING.ini)ファイルに記載されたヘッダーパ
ターン送信方法・送信ヘッダー長・ヘッダーパターン・ギャップタイム設定・
送信機の通信速度・マンチェスター通信設定を、USB で接続された送信ユニット
へ送信する。図43に初期設定を行うボタンを赤枠で示す。
51
図43
初期設定送信ボタン
初期設定機能は以下の情報を送信ユニットへ送信する。
・データ種別(自動付加)
・ヘッダーパターン送信方法
・送信ヘッダー長
・ヘッダーパターン
・ギャップタイム設定
・送信機の fps 分周値
・LED 出力方法設定
表8に初期設定機能で送信するデータを示す。
表8
初期設定機能送信データ
また、図44と図45にヘッダーパターン送信方法・送信ヘッダー長・ヘッ
52
ダーパターンの設定によるヘッダーシンボル出力例を示す。ヘッダーパターン
送信方法の設定は Header_Leng レジスタの最上位ビットに有る。
図44
ヘッダーパターン送信方法・送信ヘッダー長・ヘッダーパターンによ
るヘッダーシンボル出力例 1
53
図45
ヘッダーパターン送信方法・送信ヘッダー長・ヘッダーパターンによ
るヘッダーシンボル出力例 2
表9に送信機の fps 分周値による通信で使用する fps 値の変化を示す。通信
で使用する fps 値は式(1)で求めることができる。
1
600[fps] × n+1 = 通信で仕様する fps・・・・(1)
n=送信機の fps 分周値とする。
表9
送信機の fps 分周値による通信で使用する fps 値の変化
54
4.1.4 データ送信機能
データ送信機能では、遠方測距情報・車車間通信情報・繰り返し回数を、USB
で接続された送信ユニットへ送信する。図46にデータ送信機能で送信ユニッ
トへ送信するデータ群を赤枠で示す。
図46
送信ユニットへ送信するデータ群
4.1.4.1 遠方測距情報
図47に遠方測距情報の入力箇所を赤枠で示す。
図47
測距するための情報入力箇所
55
遠方測距情報は以下の情報を送信ユニットへ送信する。
・データ種別(自動付加)
・Car ID
・送信機の 2 個のテールランプの幅 Width[mm]
・送信機のハイマウントストップランプとテールランプとの高さ Height[mm]
・送信機のハイマウントストップランプとテールランプの奥行き Depth[mm]
・CRC(自動付加)
表10に遠方測距情報で送信するデータを記す。
表10
遠方測距情報送信データ
幅 Width[mm]と高さ Height[mm]はマイナスの値はあり得ないが、奥行き
Depth[mm]は車種によってプラスとマイナスの値となるため、混乱を避けるため
全て同じ 2 の補数表現とする。図48に奥行き Depth のプラス・マイナス方向
を示す。
図48
奥行き Depth のプラス・マイナス方向
56
4.1.4.2 車車間通信情報
図49に車車間通信情報の入力箇所を赤枠で示す。
図49
車車間通信情報の入力箇所
車車間通信情報は以下の情報を送信ユニットへ送信する。
・データ種別(自動付加)
・車速[km/h]
・加速度[m/s2]
・スロットル開度[%]
・緯度情報
・経度情報
・CRC(自動付加)
表11、表12に車車間通信情報で送信するデータを示す。加速度に関して
は取得したデータを 10 倍した値で送信する。
表11
車車間通信情報送信データ(車速、加速度、スロットル開度、緯度情報)
57
表12
車車間通信情報送信データ(経度情報)
4.1.4.3 繰り返し回数
図50に示すのは送信する際に、繰り返しデータを送信する回数である。繰り
返し回数は以下の情報を送信ユニットへ送信する。表13に繰り返し回数設定
時の送信動作を記す。
・データ種別(自動付加)
・繰り返し回数[回]
図50
繰り返し回数入力箇所
表13
繰り返し回数設定時の送信動作
4.1.4.4 送信機通信スタート・ストップ機能
送信機通信スタート/ストップ機能では、コマンド送信指示を USB で接続され
た送信ユニットへ送信する。図51に送信機の通信スタート/ストップ指示を行
58
うボタンを赤枠で示す。
図51
送信機の通信スタート/ストップ指示ボタン
送信機通信スタート/ストップ機能は以下の情報を送信ユニットへ送信する。
・データ種別(自動付加)
・送信機通信スタート/ストップ指示
表14に送信機通信スタート/ストップ機能で送信するデータを示す。
表14
送信機通信スタート/ストップ機能送信データ
繰り返し回数に 0 又は 1 が設定されていた場合、送信機通信スタート指示後、
1 秒後に送信機通信ストップ指示を送信ユニットへ送信する。
送信機通信ストップ時は遠方測距・車車間通信共に 0 データを送信している
状態になっている。PC ソフトからは通信をストップを送信するのではなく、0
データを送信するようにする。CRC についても 0 を送信するか、CRC 値を送信す
るかは構成設定(SETTING.ini)ファイルで変更する。
以上解説したのとおり、機能ごとにシステムを設計し、送信側ソフトウェア
59
を開発した。次節から、送信側ハードウェアについて解説する。
4.2
送信側ハードウェア
4.2.1 送信機
送信機は、LED ランプ:3 個(ハイマウントストップランプ:1 個、テールラ
ンプ:2 個)、送信ユニット、スタンドから構成され、車車間通信の評価を行う
もので、前方車両を模擬したものである。図52に送信機の構成図を以下に示
す。
図52
送信機の構成図
ランプ部はハイマウントランプ、ブレーキランプ、ポジションランプを独立
に制御できる。ランプ部のイメージは図53に示す。
図53
ランプのイメージ部
60
4.2.2 送信ユニット
送信ユニットは情報送信用 PC と USB で接続され、情報送信用 PC と通信を行
う。制御部は送信用 PC から USB 経由で書き込まれた送信データを LED ドライバ
でランプ部の LED を駆動する。送信データを生成する FPGA 基板と LED ドライバ
回路をケースに収めて使用する。図54に送信ユニットの構成図を示す。送信
するための電子回路図は図55に示す。
図54 送信ユニットの構成図
61
図55
送信するための電子回路図
62
4.3
受信側ソフトウェア
受信用システムは Matlab・Simulink で、イメージセンサと PC1 台を使い、プ
ロトタイプシステムを開発した。本受信システムを用いて前節に解説した送信
機から送られている前方車両の情報を受信し、運転手あるいは乗用人員に安全
運転支援またはエンタテインメント面の向上を行う。受信用システム画面は図
56に示す。インターフェースイメージは図57から図58までに示す。
図56
図57
受信用システム画面
システムインターフェース)(右の車が認識でき、復調中)
63
図58
4.3.1
イメージセンサで撮っている映像を差分をとっている画像
機能概要
受信用システムの機能を解説する。フローチャットは図59に示す。
① まず、イメージセンサで撮っている映像をリアルタイムで差分をとること
により、前方車両から送られているデータフォーマットのヘッダーバターンを
認識する。認識したことを示すには、ランプの周囲に緑の四角いの枠を書く。
② 認識できたランプの座標を取得し、ランプの中央点追跡する。追跡するに
は、次の時点に可能となるランプの座標を推測し、許容範囲内であれば引き続
き追跡する。そうではなければ、ランプをカメラの認識範囲外になるため、ラ
ンプ失ったと認識し、データを廃棄する。
③ ランプを追跡しながら、データをバッファーにし、復調する。
④ 復調したデータに対し、CRC えらチェックを行う。正しくなければ、データ
を廃棄する。
⑤ CRC チェックで問題ない復調したデータをまず車 ID を抽出し、画面に表示
させる。
⑥ ユーザーが画面に表示された車 ID をキーボードに入力することで、通信し
たい車を選択でき、指定した車の情報を画面に表示させられる。
⑦ 復調したデータを利用し、選択した車までの車間距離を計算し、画面に表
示させることができる。
以上の機能により、ユーザーが車車間可視光通信システムを通じて、車車間
通信をおこない、通信したい車を指定し、指定した車の情報を表示させられる。
そして、車間距離も計算できる。
64
図59
4.3.2
受信用システムのフローチャット図
ヘッダーバターンを認識
車車間可視光通信するには、まず前方車両のテールランプ、ブレーキランプ、
またはハイマウントストップランプを認識しなければならない。本研究で使う
手法としては、色や形で画像処理によりランプを識別することではなく、イメ
ージセンサをリアルタイムで撮っている映像を前後2フレームの差分をとるこ
とで、特別なヘッダーバターンを認識する。差分のイメージは図60に参考。
65
1 フレーム目の
2 フレーム目の
差
分
3 フレーム目の
差
分
4 フレーム目の
差
分
図60
差分のイメージ
認識した後、ランプごとにはオブジェクトと呼ばれ、オブジェクトに対して
ラベリング(図64)をすることにより、白と黒の2値画像が得られる。こう
すると、オブジェクトが白い色になり、他の部分が黒い色になる(図58)。そ
の2値画像を使い、オブジェクトの周囲に四角いの枠を書くことで、ユーザー
に認識した、データ復調中だよという状況をしめす(図57)。図61に実際に
作ったプログラムのスクリーンショットです。
図61
ヘッダー認識
66
図62
ヘッダー認識するため差分をとる
図62に示すのは、オレンジ色のブロックに書いてある閾値により、1フレ
ーム前の画像と現在のフレームの差分をとっている。
図63に実際に差分をとる処理の図ですが、多いため一部だけ示す。
図63
差分をとる
L1
図64
L2
ラベリングのイメージ(左、ラベリング前。右、ラベリング後)
67
ラベリング された 範囲の画 像デー タを用い、 ヘッダ ーパター ン (Header
Pattern)を検出します。ヘッダーパターン(Header Pattern)のシンボル長は 16
シンボルとし、バイナリで「0x0002」となります。差分は「プラスの差分(+)」、
「マイナスの差分(-)」と分けて判断します。
ヘッダーパターンの直前の画像は、点灯している場合と消灯している場合が
考えられるため、一番最初の差分を無視した場合、
「+」
「-」
「+」
「-」
「+」
「-」
「+」
「-」
「+」
「-」
「+」
「-」
「+」
「-」
「+」「-」「+」「-」「+」
のパターンが考えられます。上記パターンが検出された場合、ヘッダーパタ
ーン(Header Pattern)が検出されたと判断します(図65、次のページ)。
差分をとることで、オブジェクトが現れる。さらに、2値画像にするため、
以下のコードを使っている。
function y = fcn(label,cnt)
%#codegen
for k = 1:cnt(1)
num = sum(label(:) == k);
if (num > 1)
label(label==k) = 1;
else
label(label==k) = 0;
end
end
y = logical(label);
オブジェクトを識別し、最後にMatlab・Simulinkの機能であるBlob分析に
より、各オブジェクトの座標などの情報を取得する。
68
前
デ
ー
タ
L1
L2
L1
1
シ
ン
ボ
ル
目
L1
L1
2
シ
ン
ボ
ル
目
L1
L1
3
シ
ン
ボ
ル
目
L1
L1
図65 ヘッダ
ーバターンを検
出するイメージ
4
シ
ン
ボ
ル
目
L1
差
分
無視
差
分
差分有
(+)
差
分
差分有
(-)
差
分
差分有
(+)
差
分
差分有
(-)
差
分
差分有
(+)
差
分
差分有
(-)
差
分
差分有
(+)
L2
L2
L2
L2
L2
L2
L2
L2
69
4.3.3
認識したランプの追跡
オブジェクトの座標を取得した後、データを復調するには、オブジェクトを
追跡し、中央点のランプの輝度変化を観察しなければならない。まずここで、
追跡するには、推測座標を使っている。車が道路上に走っているため、一定な
ランプの座標を持つことができないと考えられる。データを復調する際に、常
にランプの中央の輝度を読むことが必要であるため、ランプを追跡している。
1フレーム前の座標を使い、現在のフレームとくらべ、オブジェクトの座標の
変化が3ピクセル以内であれば、同じランプだとわかり、そのランプの輝度変
化を読み続ける。こういう方法で、ランプを追跡している(システムイメージ
は図66に参考)。
図66
4.3.4
追跡するためのプログラム
CRC チェックとデータの復調
まず、データを復調するというのは、光信号で受信したデータを人間が読み
やすい十進数データに変えることを示す。本研究で使っているデータフォーマ
ットは8B10B 変換後に 110 ビットで、ヘッダバターンが 10 ビットであるため、
データ部と CRC 部は 100 ビットとなる。そして、1 ビットが2フレームで構成さ
70
れるので、200フレームのデータをバッファーに溜め、復調すれば光で送ら
れるデータを十進数データにかえることができる。
ベリングされた範囲の画像データを用い、データ(Data)を検出します。デー
タ(Data)検出は、ヘッダーパターン(Header Pattern)検出が OK となった場合と
します。データ(Data)の検出では、シンボルごとの差分を求め、プラスの差分
なら「0」、マイナスの差分なら「1」とします(図67)。データ(Data)はマ
ンチェスター符号化方式を採用しているため、シンボル間で差分が無い場合は
同期外れとみなし、ヘッダーパターン(Header Pattern)の検出からやり直しま
す。
200 フレームの画像データから 100 ビットの 2 進数データを受け、受け取った
データが正しいかどうかを確認するには、CRC エラーチェックを実施する。
CRC については CRC-8 CCITT を使用します。以下に生成多項式を示します。
x8  x 7  x 3  x 2  1
CRC の検出では、データ(Data)の検出と同様にシンボルごとの差分を求め、プ
ラスの差分なら「0」、マイナスの差分なら「1」とします。CRC もマンチェス
ター符号化方式を採用しているため、シンボル間で差分が無い場合は同期外れ
とみなし、ヘッダーパターン(Header Pattern)の検出からやり直します。具体
的な処理手順は付録Ⅱに参考。
71
L1
1
シ
ン
ボ
ル
目
2
シ
ン
ボ
ル
目
L2
L1
L2
L1
L2
L1
差
分
プラスの差分 ⇒ 「0」
差
分
マイナスの差分 ⇒ 1
差
分
プラスの差分 ⇒
L2
:
:
:
L1
7
2
目シ
ン
ボ
ル
L1
L2
L2
図67
4.3.5
0
プラスの差分とマイナスの差分
画面表示
画面表示に関しては、四つの種類がある。
① ランプを認識しているときには、画面に何も表示させない(図68)。
② ヘッダーバターンを見つけた後、ランプの周囲にわくを書く(図69)。
③ データ受信する完了した後、車の周囲に枠をかく。そして、車 ID を枠の左
上表示させる(図70)。
④ ユーザーが通信したい車を選択したあと、選択した車の運転情報や車間距
72
離を画面に表示させる(図71)
。
4.3.6
図68
図69
図70
図71
通信する車の指定
本研究で主張している通信したい車を指定するのは従来の車車間通信と違い、
従来のシステムでは簡単にできないことである。現在実験環境の制限があり、
タッチパネルで通信したい車をタップすることで選択することができないが、
ユーザーがキーボードに車 ID を入力することで、車が指定できる。指定できる
車は前方や後方の車だけではなく、横のレーンにある車でも、遠く離れても通
信範囲内(次章にて説明する)であれば車を選択することができる。
インターフェースは図72にしめす。
73
図72
車を指定する提示 Window
車を指定するためのコードは一部をここに載せる。
function varargout = mytest_gui(varargin)
gui_Singleton = 1;
gui_State = struct('gui_Name',
mfilename, ...
'gui_Singleton', gui_Singleton, ...
'gui_OpeningFcn', @mytest_gui_OpeningFcn, ...
'gui_OutputFcn', @mytest_gui_OutputFcn, ...
'gui_LayoutFcn', [] , ...
'gui_Callback',
[]);
if nargin && ischar(varargin{1})
gui_State.gui_Callback = str2func(varargin{1});
end
if nargout
[varargout{1:nargout}] = gui_mainfcn(gui_State, varargin{:});
else
gui_mainfcn(gui_State, varargin{:});
end
function mytest_gui_OpeningFcn(hObject, eventdata, handles, varargin)
handles.output = hObject;
guidata(hObject, handles);
function varargout = mytest_gui_OutputFcn(hObject, eventdata, handles)
varargout{1} = handles.output;
function figure1_KeyPressFcn(hObject, eventdata, handles)
k = str2num(eventdata.Key);
if isempty(k)
k = 99;
else
74
if (k < 1)||(k > 4)
k = 99;
end
end
set_param('KeioVLCITS02/Labeling/CarNumber/Thecarnumber','Value',num2s
tr(k));
4.3.7
新しい車間動画伝送
前節で説明した車の指定によって、道路に走っている目の前の車をそれぞれ
区別でき、指定した車の ID、運転情報や位置情報などが送信されます。さらに、
アドホック通信や遠距離無線通信などに使われている IP アドレスまたは MAC ア
ドレスも可視光通信により送信される。そのため、従来の車車間通信で実現で
きなかった通信したい車を選ぶことが本研究手法で実現できるようになった。
そして、送信された IP アドレスや MAC アドレスを用いて、指定した車との高速
な無線通信もできる。新しい車間動画伝送システムはこの機能を活かし、従来
の電波システムで前方の近隣車両の動画しか受信できなかった状況を変え、横
のレーンにある車との動画伝送、または遠く離れた車との遠距離通信でも可能
になる。
新しい車間動画伝送システムの仕組みとしては、可視光通信により通信した
い車の IP アドレスを取得し、IP アドレスを用いて無線 LAN 経由で指定した車で
見える景色の動画を自車に伝送する。この機能を実現するには、Matlab が用意
してくれた TCPIP 通信のための M ファイルを修正しなければならないため、修
正したコードが下記になる。
function stcpiprb(block)
setup(block);
SetOutputPortDataType(block);
SetOutputPortDims(block);
function setup(block)
if strcmpi(block.DialogPrm(4).Data, 'on')
block.NumOutputPorts = 1;
else
block.NumOutputPorts = 2;
end
block.NumDialogPrms = 8;
block.DialogPrmsTunable = {'Nontunable', 'Nontunable',
'Nontunable', ...
'Nontunable', 'Nontunable', 'Nontunable', ...
'Nontunable', 'Nontunable'};
block.SampleTimes = [block.DialogPrm(6).Data 0];
75
block.SetAccelRunOnTLC(false);
block.SetSimViewingDevice(true);
block.AllowSignalsWithMoreThan2D = true;
block.RegBlockMethod('SetOutputPortDimensions', @SetOutputPortDims);
block.RegBlockMethod('SetOutputPortDataType',
@SetOutputPortDataType);
block.RegBlockMethod('Start', @Start);
block.RegBlockMethod('Outputs', @Outputs);
block.RegBlockMethod('Terminate', @Terminate);
function SetOutputPortDims(block)
block.OutputPort(1).Dimensions = block.DialogPrm(3).Data;
if (block.NumOutputPorts == 2)
block.OutputPort(2).Dimensions = 1; % Size is 1.
end
function SetOutputPortDataType(block)
% Set the output port properties.
block.OutputPort(1).DatatypeID =
tamslgate('privateslgetdatatypeid', ...
block.DialogPrm(7).Data);
block.OutputPort(1).Complexity = 'Real';
block.OutputPort(1).SamplingMode = 'Sample';
% If there are two ports, set the second one too.
if (block.NumOutputPorts == 2)
block.OutputPort(2).DatatypeID = 0; % double
block.OutputPort(2).SamplingMode = 'Sample';
block.OutputPort(2).Complexity = 'Real';
end
function Start(block)
% Get the block name.
blockName = get_param(block.BlockHandle, 'Name');
% Check if the host specified is empty/invalid.
[name address] = resolvehost(block.DialogPrm(1).Data);
if ( isempty(name) && isempty(address) ) % Error out if empty.
error(message('instrument:instrumentblks:hostinvalid'));
end
% Find if any underlying objects exist with the same host and
% port.
inputParams = {'tcpip' block.DialogPrm(1).Data ,
block.DialogPrm(2).Data, ...
'ByteOrder',
block.DialogPrm(8).Data,'NetworkRole','Server'};
tcpipObj = instrumentslgate('privateslsfcncreatenetworkobject', ...
block, inputParams);
% Set the UserData field for the block so that it stays persistent
76
% during the simulation.
set_param(block.BlockHandle, 'UserData', tcpipObj)
% Set the Input buffer size on the object.
isErr = instrumentslgate('privateslsetinputbuffersize', tcpipObj,
block);
if isErr % Error if input buffer size cannot be set.
error(message('instrument:instrumentblks:bufferError',
blockName));
end
% Set the timeout value on the object.
if strcmpi(block.DialogPrm(4).Data, 'on') % Blocking mode
if (block.DialogPrm(5).Data > tcpipObj.Timeout) % Check if required
timeout is more.
% Wait for asynchronous write to get over before closing.
while (get(tcpipObj, 'BytesToOutput') ~= 0)
% Just wait until previous async fwrite is complete.
pause(0.01);
end
tcpipObj.Timeout = block.DialogPrm(5).Data;
end
else % Non-blocking model
% Do nothing. Any timeout value is fine as we do not block at all.
end
% Open the object
if ~strcmp(get(tcpipObj, 'Status'), 'open') %Check if already open.
try %Try opening the object.
fopen(tcpipObj);
catch %#ok<CTCH>
% Display error that port is invalid.
error(message('instrument:instrumentblks:portinvalid',
blockName));
end
end
%endfunction Start
%% Outputs - Generate block outputs at every timestep.
function Outputs(block)
tcpipObj = get_param(block.BlockHandle, 'UserData');
% If blocking mode, just wait until data is received.
if strcmpi(block.DialogPrm(4).Data, 'on')
data = localGetData(tcpipObj, block);
if (numel(data) ~= prod(block.DialogPrm(3).Data))
error(message('instrument:instrumentblks:timeouterror'));
end
else
bytesAvailable = get(tcpipObj, 'BytesAvailable');
if (bytesAvailable >= block.OutputPort(1).DataStorageSize)
data = localGetData(tcpipObj, block);
block.OutputPort(2).Data = 1; % Set status to 1.
else % If requested data not available
data = [];
block.OutputPort(2).Data = 0; % Set status to 0.
77
end
end
% Reshaping the size.
if ~isempty(data)
if ~isscalar(block.DialogPrm(3).Data)
data = reshape(data, block.DialogPrm(3).Data);
end
block.OutputPort(1).Data = data;
end
%endfunction
%% Terminate - Clean up.
function Terminate(block)
% Call the terminate method for network objects.
instrumentslgate('privateslsfcnterminatenetworkobject', block,
'tcpip');
%endfunction Terminate
%% localGetData - Return DATA in specified data type.
function data = localGetData(obj, block)
% Perform fread of specified size and precision.
tempData = fread(obj, prod(block.DialogPrm(3).Data), ...
block.DialogPrm(7).Data); %#ok<NASGU>
dataStr = sprintf('%s(tempData)', block.DialogPrm(7).Data);
% Convert to required data type.
data = eval(dataStr);
左の図に示すのは、前方車両にさえぎった風景である。前の車の前には実は
飛び出そう人の姿が隠れているため、危険性があるという状況を現れている。
右の図に示すのは、自車から見える景色では、隠れされている飛び出そう人の
姿が見えないため、車の後ろの画像しか見えない。
本研究で提案した方式で、車がどこにいるのにかかわらず、前方車両であれ、
左右のレーンにある車であれ、ユーザーが車を選択すると、隠れた景色が見え
るようになる。こういう機能により、潜在な危険性を低減できると考えられる。
4.4
受信側ハードウェア
受信するには、イメージセンサを使い、画像を撮っている。本来、システム
デザイン時に 1200fps の高速なイメージセンサを使い受信することであったが、
高速受信するに使う組み込みハードウェアの設計がスケジュール上に制限があ
78
るため、今回 PC の性能に応じて、4fps のイメージセンサを使い、受信すること
になった。
4.4.1
受信側の仕様
イメージセンサ:4fps、120*160 Pixel、画角:44 度、焦点距離:5.94
画像解像度:120*160 Pixel
79
5 システム評価のための実験
イメージセンサによる新しい車車間可視光通信システムのプロトタイプを用
いて本システムの検証と妥当性確認を行った。検証にあたって、システム構成
にしたがって、正しく通信できるかどうか、通信の距離の測定(車間距離測定
も含め)、車が指定できるかどうかの検証を行った(図73)。妥当性確認にあ
たって、2.3.1に書いてある表5に示したように、将来に望まれる車車間
通信技術の要求にしたがって、妥当性確認を行う。
受信システム
イメージセン
サ駆動システ
ム
LED識別シス
テム
LEDトラキン
グシステム
エラーチェッ
クシステム
復調システム
図73
5.1
可視光通信シ
ステム
画面表示シス
テム
車を選択シス
テム
受信側システム構成
実証実験
検証に関しては、可視光通信システム性能にめぐって、正しく通信できるか
どうか、通信の距離の測定(車間距離測定も含め)、車が指定できるかどうかに
めぐって、実証実験をおこなった。実験場所が二つに分かれ、遠距離通信や測
距を検証する際に、協生館2階のベランダで行った(長さ約76メートル、図
74)。車の指定の検証や動画伝送などは、協生館6階の廊下で行った。
図74
実験環境
80
5.1.1
通信の検証
検証する内容としては、LED 送信機から送られたデータが正しく復調できたか
どうかについて検証を行う。
図75
送信ソフトのイメージ
図75に示したもには、送信側の PC から車 ID,車のサイズ、車速度、加速度、
位置情報などの情報を車の LED ランプのより、送信するソフトのインターフェ
ースである。図に示したように、各項目はそれぞれの値で設定されている。検
証するには、受信側では、可視光通信により、図75に示したデータどおりに
受信できるかどうかを検証する。 図76は実験をやるときの風景である。図7
7は受信側ソフトで、受信した結果である。
図76
実験風景
81
図77
受信結果のイメージ
実験により、表15に書いてあるのは、送信するデータと受信したデータの比
較である。
表15
通信検証
送信内容
送信
受信
Car ID
1
1
Width
1100
1100
Height
900
900
Depth
100
100
車速度
60
60
加速度
0.1
0.1
スロットル開度
0
0
緯度:NS
N
N
緯度:度
0
0
緯度:分
16
16
緯度:1/1000分
172
172
経度:EW
E
E
経度:度
24
24
経度:分
14
14
経度:1/1000分
0
0
実験により、送信側により送信されたデータが正しく受信できた。
82
5.1.2
通信距離の検証(車間測距も含め)
実験場所が図74に参考。実験風景が図76に参考。通信距離を測るには、
協生館の2階のベランダを利用し、可視光通信による測定した車間距離と実際
に図った距離を計測することで、本研究で提案した車車間通信システムの通信
範囲およびサブ機能としての車間距離測定機能の性能について検証を行った。
その結果は昼間通信最大距離は73メートルで、車間測距の最大距離は41
メートルだ(表16)。夜間には、最大通信距離は73メートルで、車間測距の
最大距離は44メートルだ(表17)。なお、該実験では、最大通信距離を測定
する際に、実験場所の長さの制限のため、73メートルという最大通信距離を
得たが、観察により、実際に最大通信距離が100メートル以上超える可能性
もあると考えている。
表16
実際の距離(M)
1.680
2.000
3.000
4.000
5.000
6.000
7.000
8.000
9.000
10.000
11.000
12.000
13.000
14.000
15.000
16.000
17.000
18.000
19.000
20.000
21.000
22.000
23.000
24.000
25.000
昼間の実験結果
可視光で測った距離(M)
1.682
2.005
2.940
3.875
4.825
5.799
6.928
7.925
8.719
9.921
10.938
11.901
12.904
13.712
14.876
15.881
16.978
17.789
18.695
19.459
20.776
21.736
22.591
23.569
25.056
83
誤差(M)
0.002
0.005
-0.06
-0.125
-0.175
-0.201
-0.072
-0.075
-0.281
-0.079
-0.062
-0.099
-0.096
-0.288
-0.124
-0.119
-0.022
-0.211
-0.305
-0.541
-0.224
-0.264
-0.409
-0.431
0.056
26.000
27.000
28.000
29.000
30.000
31.000
32.000
33.000
35.000
37.000
39.000
41.000
25.807
27.021
27.021
28.124
30.041
30.624
29.958
32.811
34.160
36.709
37.870
41.390
表17
実際の距離(M)
1.880
3.000
5.000
7.000
9.000
11.000
13.000
15.000
17.000
19.000
21.000
23.000
25.000
27.000
29.000
31.000
33.000
35.000
37.000
39.000
41.000
43.000
45.000
-0.193
0.021
-0.979
-0.876
0.041
-0.376
-2.042
-0.189
-0.84
-0.291
-1.13
0.39
夜間の実験結果
可視光で測った距離(M)
1.898
2.966
4.952
6.866
8.960
10.796
12.705
14.680
16.657
18.848
20.975
22.554
24.177
27.343
28.710
30.697
32.717
34.669
36.265
38.280
38.280
43.610
44.454
誤差(M)
0.018
-0.034
-0.048
-0.134
-0.04
-0.204
-0.295
-0.32
-0.343
-0.152
-0.025
-0.446
-0.823
0.343
-0.29
-0.303
-0.283
-0.331
-0.735
-0.72
-2.72
0.61
-0.546
そして、計算により測距に関する誤差率は約1.61%である。誤差と実際
の距離との関係は図78、図79に参考。
84
誤差
-0.5
-1
1.680
2.000
3.000
4.000
5.000
6.000
7.000
8.000
9.000
10.000
11.000
12.000
13.000
14.000
15.000
16.000
17.000
18.000
19.000
20.000
21.000
22.000
23.000
24.000
25.000
26.000
27.000
28.000
29.000
30.000
31.000
32.000
33.000
35.000
37.000
39.000
41.000
誤差
可視光通信により測った距離は実際の距離との誤差(昼間)
2.5
2
1.5
1
0.5
0
-2.5
図78
0
-0.5
-1
-1.5
-2
-2.5
実際の距離
図79
誤差と実際の距離との関係(夜間)
85
昼間の誤差
-1.5
-2
実際の距離
誤差と実際の距離との関係(昼間)
可視光通信により測った距離は実際の距離との誤差(夜間)
2.5
2
1.5
1
0.5
夜間の誤差
5.1.3
車の指定の検証
車の指定というのは、車車間可視光通信により、道路の前方に走っている車と
通信を行いたいときに、ユーザーが能動的に、通信したい車を指定し、通信を
行うということである。本研究では、車を指定するに使われている手法として
は、まず可視光通信によりそれぞれの車を識別し、受信完了の前後順序に従っ
て、自車のモニター画面に映されている前方車両の左側に番号をつける。そう
すると、ユーザーが番号を見て、キーボードの数字キーで入力することで、通
信したい車の情報が表示され、通信を行う。実は、車を指定する際に、タッチ
パネルを用いて通信したい車をタップすることで、上述の車の指定作業ができ
ると考えられるが、このたび修士研究で提案する新しい車車間通信システムを
検証するに作られたプロトタイプではタッチパネル機能は搭載されていないた
め、今度はキーボードで操作することを決めた。
図80に示すのは実験場所の風景である。図81に示すのは前方車両にさえ
ぎった風景である。図82から図84までは車を指定する手順を示す。通信し
たい車を能動的に指定することにより、冒頭でのべったように、車は新たな通
信手段になり、たとえば SNS のツールなどでも可能である。また、運転体験も
より一層面白く、楽しく、豊富になると考えられる。さらに、本研究の新しい
車車間通信システムにより、新しいビジネスモデルも可能だし、車を買う意欲
の向上や経済の回復にも貢献できないかと考えられる。
図80
実験風景
図81
86
前車にさえぎった画面
②通信
したい
車の番
号を入
力して
くださ
いとい
うメッ
セージ
①受信でき
た後、車を標
記し、左側に
車の番号を
つけている。
そして、前の
車からのメ
ッセージは
「musashiya
! Fantastic!
Facebook:VL
CITS」です。
図82
③車の番号を
入力する。(複
数の車がいる
ときに、ユーザ
ーがわかりや
すくするため
に、受信できた
前後順序で、
1、2,3のよ
うに番号をつ
ける。将来に
は、タッチパネ
ルで、タップす
ることで車を
選べる)
可視光通信し、車 ID とメッセージを表示させる
図83
通信したい車の ID を入力する
87
④前の車に
遮った景色
(前の車の
運転手が見
える景色)
本研究の提
案により、
さえぎった
景色も運転
手が選ぶこ
とで見える
ようにな
る。
前の車
(自分
が見え
る景色)
差
よ
を
し
る
分
り
認
て
に
車
識
い
図84
5.2
車を指定した後、選んだ車が見える景色を伝送する
システム妥当性確認
第2章に解説した車車間通信技術とセンシング技術の比較および問題点によ
り、従来の事故防止、危険回避、安全運転支援技術を分析した結果、将来に必
要となる技術やシステムに対する要求分析、望まれる必要な車車間通信システ
ムの特徴を表5に示す。本研究では、現状の問題点を解決し、表4に書いてあ
るシステムに対する要求に満たしている将来の車車間通信システムを提案する。
表4
将来に望まれる車車間通信システムに対する要求分析
必要な特徴
できること
どの情報がどこの車から送信されているのか一目瞭
情報の到来方向がわかる
然に知ることで、運転における安心感が向上でき、
誤った位置情報に基づいた情報を防ぐことが可能
誰かと通信する、或は情
報を受信するかしないか
ということをドライバー
は能動的に決定できる
従来の受身的に送受信することではなく、運転手が
能動的に通信したい車を指定することができ、その
車だけと送受信ができるため、通信効率の向上や情
報のセキュリティー上の安心もできる。さらに、指
定した車との通信により、運転手間・乗用人員間の
88
コミュニケーションもでき、エンタテインメント面、
ドライビングエクスペリエンス面の向上できる
コスト低減のため、安全
運転に必要となる機能を
ひとつの技術システムに
含まれる。
車車間通信、画像処理、距離測定などの機能をひと
つの安全運転システムでできるため、コストが低減
でき、効率よくなる。普及によい
他のシステムとの共存
万全な情報セキュリティ
ー仕組み
夜間での性能がよい
あ互いに干渉なく
不法使用を防ぐ。安心利用
夜間の運転でもより安心に
前節にのべった各実証実験を通じ、そして可視光通信の技術特徴に対する分
析により、本研究で提案したイメージセンサによる車車間可視光通信システム
はすべてのシステムエンジニア視点の要求に満たしている。そして、本提案シ
ステムにより、技術システム以外に、社会システム視点で見ると、更なる利点
があると考えられる。それは、LED とステレオカメラがどんどん普及していく車
社会において、車の基本物件を用いて通信を行うため、省エネルギー面では非
常に有利である。また、しゃっべている車がどれなのかわからないし、しゃっ
べている運転手の姿も見えなく、ある意味で冷たい技術だった従来の車車間通
信のイメージと違い、画期的に運転することをより面白くなることも利点だと
思う。この利点を活かすことで、運転することを画期的に面白くなることがで
きるのではないかと考えられるし、消費者にとって車を買う意欲が増えるかも
しれないし、新しいビジネスモデルも見つけられると考えられる。
89
6 結論
本システムの目的は、前方の車両の情報を後方の車両が受け取ることにより
新しい車車間通信、車車間安全運転を支援することである。そのための手段と
して本プロジェクトでは、テールランプ、ハイマウントストップランプの可視
光光源を利用しその光強度を変調させることにより前方車両の情報を送信し、
後方車両に設置された高速イメージセンサをもちいてそのデータの受信および
画像取得をおこない、それらの情報を統合することにより前方車両の情報を検
出する。そして、検出後に、その情報を用いて、どの情報がどの車に送信され
ているのかが確定でき、通信する車の指定したり、さらに選択した車とのコミ
ュニケーションをとることで、後方車両の安全運転を支援することが可能にな
る。さらに、車車間可視光通信のプロトタイプを作成し、システム性能や通信
効果などを実験することにより、イメージセンサーによる車車間可視光通信の
実現性と必要性を論じた。
本研究では、安全・快適・便利な交通環境を構築には不可欠である車車間通信
において、従来の電波による通信方式では簡単に実現できない二つの問題、
「通
信する車の指定」と「情報の発信源の可視化」を本稿で提案するイメージセン
サーによる車車間可視光通信システムにより、解決した。さらに、本提案する
方式で、今までのないイノベーション的な車車間コミュニケーションシステム
を提案した。本提案により、将来的に車は社交サービスのツールやプラットフ
ォームになる日を期待している。
特に、従来の電波による車車間通信システムの問題点を解決するにあたって、
ユーザーが能動的に通信したい車を指定できないという問題点、および情報が
どこのどの車から送られているのか知らないという問題点を解決するには、イ
メージセンサによる車車間可視光通信システムを提案した。該提案では、すで
に車に搭載されてつつある LED ブレーキランプやヘッドーライト、ステレオカ
メラを通信ツールとし、車車間可視光通信を行うことで、車の識別や、指定、
距離測定、メッセージ伝達、動画伝送などいろいろな可能性がある。
そして、イノベーション的に可視光通信を用いて新たな車車間通信のイメー
ジも提案した。それは、車を SNS のツールやプラットフォームになった未来像
である。これにしたがって、車周辺のサービスや、車社交にめぐるビジネスモ
デルも、更なる国の経済回復にも貢献できるかもしれないと考えられる。
車は IT により面白くなるという趣旨で、将来的には、道路に走っている車を
タップすると、いろいろな面白いメッセージが出てきて、お互いにフォローし
たり、コンテンツをシェアしたり、広がったりする。または、コミュニケーシ
90
ョンしたり、友達になったりする日の到来を想像している。
実用化するまでには、まだ多くの課題が残っている。たとえば、通信距離の
範囲が受信側に使われている受信機の性能に依存するため、解像度と画角、焦
点距離、フレームレートこういった受信機の性能は通信距離とどういった関係
性があるのか、または、実際に道路に走っている車と通信する際に、本研究で
提案した方式の安定性や通信性能はどうなるのか、また車の振動の影響や受信
するにランプの追跡に使われるアルゴリズムの最適化も必要である。
本修士研究では、時間の制限のため、前述の課題を個々取り組むには難しい
が、今までのない発想で、新しい車車間通信システムを世の中に提案すること
を目的であり、新たな扉を開き、みんなの知恵により、更なる安全、安心、快
適、かつ楽しい交通環境が構築できたらと考えられる。また、今後の博士課程
で、上述の問題点を取り組んでいき、そして可視光通信の可能性をもっと広げ
ていくと考えられる。
91
7 参考文献
[1]唐沢 好男, ‘第 52 回移動体通信研究会・ITS 車車間通信の研究開発動向と
課題’ 目黒会 CHOFU Network, vol.21-2,
pp.11-13, 2009.11.
[2]ITS Japan ‘ITS とは’, http://www.its-jp.org/about/
[3] 赤津 洋介, ‘海外の ITS の動向と標準化’, 2013.
[4]ITS の標準化 2012, (社)自動車技術会資料
[5] 国土交通省, ‘交通事故の現状’
http://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/sesaku/genjyo.html
[6]稲葉 敬之, 桐本 哲郎, ‘車載用ミリ波レーダ’自動車技術, vol.64,
No.2,2010.
[7]マイクロ波
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AD%E6%B
3%A2
[8]堀松:“ミリ波センサの実用化,”MWE 2005 Microwave Workshop Digest,
pp.417-419,2005.
[9]永妻・枚田:“120 GHz 帯を利用し 10 Gbit/s 無線技術,”NTT 技術ジャーナ
ル, Vol.16,No.9,pp.36-39,2004.
[10] 佐藤 勝善、加藤 明人, ‘ITS 情報通信システムの開発’,
http://www.nict.go.jp/publication/CRL_News/0010/its.html
[11]‘ITS 安全運転支援無線システムの在り方’, ITS 無線システムの高度化に
関する研究会 報告書, 総務省, 平成 21 年 6 月.
[12]http://ja.wikipedia.org/wiki/LIDAR
[13]二宮 芳樹,‘ITS における走行環境認識技術’
[14] 超音波センサ 概要/原理/分類/用語解説
http://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/50/26/
[15]実吉 敬二, ‘ 車載用ステレオカメラ誕生物語’
[16]特集
自動車の未来202X 第 2 部
カメラを軸に低コスト化進む、無線や
ハーネスに新技術
[17] ‘トヨタがホワイトスペースの有効活用に意欲、車車間通信が通信網に進
化する’http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1303/15/news029.html
[18]島田 重人, 武田 洋子, ‘可視光通信の動向と ITS への応用’
[19]蒔苗 耕司,
佐藤 史朗, ‘第 5 回 ITS シンポジウム 2006 車車間通信技術
を適用した運転者間コミュニケーションシステム’
[20]佐藤 史朗,蒔苗 耕司,‘無線 LAN を用いた運転者間コミュニケーション
92
システム’,情報処理学会研究報告,2005, 89.2005-ITS-22(15), 83-86, 2005.
(電子情報通信学会技術研究報告, Vol.105, No.260, ITS2005-30, 49-52,
2005.)
[21]‘第 5 章 ITS 安全運転支援システムの実現に向けて’, ITS 無線システム
の高度化に関する研究会 報告書, 総務省, 平成 21 年 6 月.
93
8 謝辞
指導教員である春山真一郎教授には丁寧かつ親切なご指導を頂いただけでは
なく、さまざまなプロジェクトを通して非常に多くのチャンスに触れる機会を
頂きました。またご自身の経験からくるアドバイスなど、研究以外にも多くの
ことを学ばせて頂きました。二年間のご指導に心より深謝致します。
また、副査を担当してくださりご助言をくださった小木哲郎教授にも厚く御
礼申し上げます。石橋金徳特任助教、長沢安希子氏、中濱正宜氏、横山祐司氏、
村上諒治氏、小田治嗣氏、卒業された中島円氏、清水氏、中山氏、来氏、若尾
氏ら春山研のメンバーとはミーティングや合宿において非常に有意義かつ楽し
い時間を共有させていただき、また実験や意見交換などに暖かな気持ちで多く
の時間を割いて手伝ってくださいました。また研究の基礎を教えていただき、
先輩としてさまざまなアドバイスを頂きました森谷氏、有田氏、鈴木氏ら春山
研の諸先輩方に心から感謝いたします。
また海外の留学生活をずっと支えて、励まして、学習生活を支えてくださっ
た家族に深く感謝します。
最後になりましたが日々進化を続けるシステムデザイン・マネジメント研究
科において刺激をくださった先生方、事務の皆様、プロジェクトなどにおいて
かかわりのあった企業の方や海外大学院の留学生・先生方など、たくさんの方々
と非常に有意義な二年間を過ごさせていただきました。このような恵まれた環
境で、一緒に学ぶ時間を共有できた皆様に深く感謝したいと思います。
94
付録 I
ちらつきを抑えるに使った8B10B 変換について説明する。
例:
転換表:
95
96
97
98
99
100
101
102
103
付録Ⅱ
本研究で使った CRC-8について例で説明する。
その演算手法とは、下図に示す。
104
105
Fly UP