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IMT リバース課金 サービスの実用化

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IMT リバース課金 サービスの実用化
IMT リバース課金
サービスの実用化
FOMA i モードサービスで導入したリバース課金サービス
の概要,および機能概要について紹介する.
はなおか ひでゆき
いいたか
た け し
し ら い
りょう
花岡 秀行
飯高 剛士
白井
亮
おおにし
たく
わ し お
さとし
な が い
あい
大西
拓
鷲尾
諭
長井
愛
あ ま や
やすひろ
天谷 泰博
きっかわ
み
ほ
吉川 実穂
1. まえがき
2001 年 5 月に FOMA(Freedom Of Mobile multimedia
Access)における i モードサービスが開始され,2002 年夏に
は第 3 世代移動通信(IMT : International Mobile Telecommunications)網におけるリバース課金サービスが導入され
た.リバース課金とは,サイト閲覧の際にかかるパケット
通信料をユーザに対して無料にし,情報提供者に課金する
サービスである.PDC 移動パケット通信システム(PDC−
P :PDC mobile Packet data communication system)におけ
る i モードサービスでは,すでに本サービスは提供されて
いたが,これにより FOMA でもユーザに対してパケット通
信料が無料のサイトを提供することが可能になった.
2001 年 5 月のサービス開始から現在に至るまで,FOMA
における i モードサービスでは,PDC−Pにおける i モードサ
ービスに比べて大容量/高速通信の特徴を活かしたサービ
スが数多く提供されてきている.今回導入されたリバース
課金サービスは FOMA i モード契約を結んでいる全ユーザ
が対象であり,さまざまな情報サイトへの入り口を無料化
するなどして,ユーザに対してより利用しやすく i モード
サービスを提供できるようにしたものである.
本稿では,FOMA i モードにおけるリバース課金サービ
スについて解説する.
2. サービス
2.1
サービス概要
i モードサービスでは,さまざまな情報が各種情報提供者
によって提供されており,ユーザは i モード携帯電話を利
用してサイト閲覧を行ったり,情報提供者が i モードサー
バを経由してユーザの i モード携帯電話に対して情報の配
信を行ったりすることができる.従来は,サイト閲覧や配
信された情報の量(パケット量)によって定まる料金がパ
16
NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 10 No.3
ケット通信料としてユーザに対して課金されていた.しか
では毎週新しく提供されるサイトの情報を通信料無料で
し,FOMA i モードにおけるリバース課金サービスの導入
提供することにより,新サービスの利用を促している.
*2
s PUSH 型 情報配信サービスにおけるリバース課金
によって,i モード携帯電話でアクセスするコンテンツごと
にパケット通信料の課金先を指定することが可能となり,
情報提供者からユーザへ情報を配信する際に,ネット
情報提供者はユーザに負担をかけずにサービスおよび情報
ワーク側から特定ユーザの i モード携帯電話にメッセー
の提供が行えるようになった.
ジを送るような PUSH 型の情報配信サービス(メッセー
また IMT i モードサーバ(GRIMM : Gateway service
ジフリーサービス)にもリバース課金の仕組みが利用さ
Representative Internet Market Mobile access exchange)内
れている(本サービスは現在のところ FOMA における i
において故障・輻輳が発生した場合,通信できなかったに
モードサービスでは提供されていない)
.例えば,ユーザ
もかかわらず発生したパケット通信料についてはユーザに
の年齢層や性別などの情報を元にして広告の配信を行い
課金されないよう請求処理を行うが,今回のリバース課金
たい情報提供者は,リバース課金の仕組みを利用するこ
を用いることにより従来よりも迅速に実施できる.
とで将来 FOMA における i モードサービスでもメッセー
現在,FOMA i モードサービスで提供されているリバー
ジフリーサービスが開始された際にパケット通信料をユ
ス課金を利用したサービスを以下に説明する.
ーザではなく情報を提供者した側に課金し,特定ユーザ
*1
a PULL 型 情報提供サービスにおけるリバース課金
に対して容易に情報を配信することができる.
ユーザが i モード携帯電話を利用して Web サイト上の
リンクを選択し,サイト閲覧を行う際に,コンテンツご
2.2
とにパケット通信料の課金先を定めることができる.例
えば,
“iMenu”
,
“週刊i ガイド”
,
“オプション設定”
,
“お
サービス機能概要
PULL 型情報提供サービスを例に,リバース課金サービ
スの仕組みを簡単に説明する.
知らせ&ヘルプ”といったサイトをリバース課金サイト
として登録することにより,サイト閲覧にかかるパケッ
ト通信料の課金先はユーザに対してではなく,情報提供
者に課金されることになる(図 1)
.例えば,週刊iガイド
iMenu
q マイメニュー
w 週刊 i ガイド
e メニューリスト
r とくするメニュー
t i エリア
y i アプリサーチ
u オプション設定
i お知らせ&ヘルプ
*1
PULL 型:ユーザが情報を取得するために何らかのアクションを必
要とするサービス
* 2 PUSH 型:ユーザが情報を取得するためのアクションを行わなくて
も,自動的に情報が配信されるサービス
▼ i モーション
-----oooooooo----お知らせ&ヘルプ
-----oooooooo----◆ FOMA の i モード
サービスについて
→ FOMA ココがスゴイ
◆おしえて i モード
→ジャンルから
q 料金
w i モードパスワード
e i モードメール
・・・
i モードのサイトから映像や音
のデータを i モーション対応端
末に取り込み,再生して楽し
むことができます.
▼メール機能のアップ
・文字数
全角 5000 文字まで送受信でき
ます。
-------------------
・添付ファイル送受信
静止画やメロディを添付して
送受信できます。
週刊 i ガイド
q 今週の特集
w 新着サイト
e 新着 i アプリ
r オススメ i アプリ
t 注目サイト
・・・
-----------------地域版 i ガイド
ユーザへの
通信料
無料
無料
図1
耳より情報
∼∼∼∼∼∼∼∼
i ガールおすすめ
今月の
新入りサイト
IP サイト
【地域版週刊 i ガイド】
【各 IP サイト】
有料
i メニュー
17
現在の i モードサービスでは,
“iMenu”ページが i モードサ
スAP機能を提供している.
イトの入り口となって,ドコモからのお知らせや各種情報
ネットワーク内の AP 機能を提供するために,FOMA ネ
提供者のページへリンクしている.ユーザが i モード携帯
ットワークでは AP 層のシステムとしてゲートウェイシス
電話を利用してそれらのサイトへアクセスすると,そのペ
テムを導入しており,端末の利用形態(移動機器単体,移
ージの情報量によって決まるパケット通信料が 1 つのペー
動機+パソコン)や接続先(インターネット,ユーザLAN)
ジを閲覧するたびに,ユーザに課金されることになる.リ
ごとに異なるゲートウェイシステムで機能提供している.
バース課金サービスの開始以前は前述したようにユーザに
今後のさまざまなサービスの追加を考慮した場合,ゲー
すべてのパケット通信料が課金されていたが,リバース課
トウェイシステムに加えてサービスに応じたネットワーク
金サービスによって,情報提供者が提供するページごとに
内機能を実現する装置として MSA(Multimedia Service
ユーザに対してそのページ取得にかかるパケット通信料を
Agent)を導入することが考えられる.それにより,以下の
無料に指定することが可能となる.つまり,HTML
ようなメリットが考えられる.
(HyperText Markup Language)ページを取得する場合には
・サービスに応じた AP 固有機能を集約化することで,開
発の簡素化・効率化が可能である.
必ず 1 回の HTTP(HyperText Transfer Protocol)リクエス
ト/ HTTP レスポンスがセットとなるが,その HTTP 単位
・ゲートウェイシステムへの機能追加を削減することで
にリクエスト先 URL がユーザ課金対象であるか情報提供者
新機能やサービス導入を容易に実現できる.また,運
への課金対象であるかをドコモ網内で判別して課金先の決
用後もサービスの一元管理が可能となる.
リバース課金を第 3 世代移動通信(IMT − 2000 : Inter-
定を行う.
national Mobile Telecommunications−2000)サービスで実現
3. 開発コンセプトと
ネットワーク機能分担
するにあたり,ネットワークでの課金サービスを実装する
ための装置として課金サービス用 MSA として SAC(multi-
リバース課金を FOMA ネットワークで実現する際に考慮
media Service Agent for aCcounting)を導入した.
した開発コンセプト,および開発コンセプトに基づいたネ
3.2
ットワーク機能分担を以下に示す.
ネットワーク機能分担および構成
前述したようにリバース課金サービスの特徴として
3.1
開発コンセプト
HTTP 単位での課金先切替が挙げられる.このような課金
FOMA ネットワークでは,移動通信におけるインターネ
を実現するためには,HTTP レベルでデータ量を計測する
ット関連サービス導入の迅速化,およびシステム開発の効
必要がある.ゲートウェイシステムにおいて WPCG
率化を考慮して,CN(コアネットワーク)と独立した AP
(Wireless Protocol Conversion Gateway)が HTTP プロトコ
(アプリケーション)層によりネットワークとしてのサービ
ルを実装している(図 2)
.
HTML
HTML
HTTP
HTTP
HTTP
HTTP
W−TCP
W−TCP
TCP
TCP
IP
IP
IP
IP
L2
L2
L2
L2
L2
L1
L1
L1
L1
L1
MS
GMMS
WPCG
HTML:HyperText Markup Language
HTTP:HyperText Transfer Protocol
IP:Internet Protocol
TCP:Transmission Control Protocol
W−TCP:TCP Profile over W−CDMA
図2
18
i モードサービスのユーザデータプロトコル
IMT−GRIMM
NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 10 No.3
WPCG では課金ビルを生成する
CCC_I
ための課金データを収集し,SAC
SAC
ビル通知
で課金データから課金ビルを生成
することにより.WPCG の移動機
ビル通知
課金データ
と IMT − GRIMM 間のプロトコル
変換機能に性能的な影響を及ぼさ
ないような機能分担とした(図 3,
情報提供者
WPCG
コアネットワーク
MS
IMT−GRIMM
CP
表 1)
.
PULL 型情報提供サービスでは,
コンテンツの要求
移動機からの HTTP リクエストに
コンテンツ応答
対し,IMT − GRIMM が課金先を
判断し HTTP コンテンツとともに
WPCG に通知する.WPCG では,
収集したパケット情報と HTTP 情
報および IMT − GRIMM から通知
CCC_I:Customer Cell record Collector_IMT
GRIMM:Gateway service Representative Internet Market Mobile access exchange(i モードサーバ)
IMT:International Mobile Telecommunications(第 3 世代移動通信)
SAC:multimedia Service Agent for aCcounting
WPCG:Wireless Protocol Conversion Gateway
MS:Mobile Station(移動機)
図 3 リバース課金を実現するための各ノード間の機能分担
される課金先情報を課金データと
して SAC へ送信する.SAC では
表 1 リバース課金を実現するための各ノード間の機能概要
WPCG から送信された課金データ
をもとに課金先情報を設定した課
金ビルを CCC_I(Customer Cell
record Collector_IMT)へ送信す
る.CCC_I においてコアネットワ
ークからのビルと SAC からのビ
ルとのマージ処理を行い,明細情
報を作成する(図 4)
.
PUSH 型情報配信サービスにお
移動機
LMMS
ノード名
機能
GRIMM
コンテンツに対応した課金先(ユーザ/情報提供者側)の通知
WPCG
パケット情報収集
SACへの課金情報通知
SAC
リバース課金用ビルの作成
CCC_I
コア側ビルとSAC側ビルのマージ処理
CCC_I :Customer Cell record Collector_IMT
GRIMM :Gateway service Representative Internet Market Mobile access exchange(iモードサーバ)
SAC :multimedia Service Agent for aCcounting
WPCG :Wireless Protocol Conversion Gateway
GMMS
WPCG
SAC
GRIMM
CCC_I
HTTP リクエスト
HTTP レスポンス&課金先情報
HTTP レスポンス
課金情報
ビル作成
ビル作成
ビル作成
ビル情報
ビル情報
ビル情報
ビルマージ
CCC_I:Customer Cell record Collector_IMT
GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System
GRIMM:Gateway service Representative Internet Market Mobile access exchange(i モードサーバ)
HTTP:HyperText Transfer Protocol
LMMS:Local Mobile Multimedia switching System
SAC:multimedia Service Agent for aCcounting
WPCG:Wireless Protocol Conversion Gateway
図4
リバース課金サービスのシーケンス(PULL 型)
19
移動機
LMMS
GMMS
WPCG
SAC
GRIMM
CCC_I
着信情報&課金先情報
着信通知処理
課金情報
ビル作成
ビル作成
ビル作成
ビル情報
ビル情報
ビル情報
ビルマージ
CCC_I:Customer Cell record Collector_IMT
GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System
GRIMM:Gateway service Representative Internet Market Mobile access exchange(i モードサーバ)
LMMS:Local Mobile Multimedia switching System
SAC:multimedia Service Agent for aCcounting
WPCG:Wireless Protocol Conversion Gateway
図5
リバース課金サービスのシーケンス(PUSH 型)
いては,IMT −GRIMM から WPCG に着信を通知する際に
なお,ある一定時間以上リクエスト先 Web サーバから
課金先情報を合わせて通知する.それ以降は PULL 型と同
の応答がない場合には,IMT−GRIMM で応答がない旨の
様なシーケンスにより課金先情報に従った明細情報を作成
HTTP レスポンスを生成し,保持した課金先情報を一緒
する(図 5)
.
に通知する.
PUSH 型情報提供サービスでは,WPCG へ着信を通知
4. 各ノードでの実現機能
する際に課金先情報リストに従った課金先情報を一緒に
4.1
通知し,移動機への着信に要した通信処理の課金先を指
IMT − GRIMM 機能概要
a 課金先管理機能
ある期間において情報提供者課金とする場合には,コ
ンテンツごとに課金先情報リストとしてサーバに設定す
し示す.着信を受けた移動機より引き続きデータ取得処
理が行われる場合は,データ取得処理に対する課金先
を,PULL 型と同様にして指し示している.
る.この設定作業は保守端末を用いて運用者が常に変更
可能となっている.課金先情報を登録・変更する際に
4.2
は,課金先不明とならないように情報提供者リストと不
a IP パケットキャプチャ処理機能
整合チェックを行い,課金先となる情報提供番組が運用
FOMA i モ ー ド で は 移 動 機 か ら の 発 呼 を 契 機 に ,
中である場合に限り設定できることとする.また,情報
GMMS(Gateway Mobile Multimedia switching System)
提供番組が運用停止となった場合は,すでに登録してあ
から WPCG に接続通知が送信される.WPCG では,この
る課金先情報を停止することによって確実に課金先を指
接続通知の受信を契機に課金データを格納するためのテ
し示すことを可能としている(図 6)
.
ーブルを確保する.具体的には,TCP/IP(Transmission
s 課金先変更機能
20
WPCG 機能概要
Control Protocol/ Internet Protocol)パケット情報を収
PULL 型情報提供サービスでは,WPCG から HTTP リ
集・格納するパケットキャプチャテーブルと HTTP レイ
クエストを受信した時点で,リクエスト先 URL と課金先
ヤのユーザデータ情報を収集・格納するコンテンツアク
情報リストのマッチングを行って課金先を決定し,この
セス情報テーブルの 2つである(図 7)
.
情報を保持する.そして,リクエスト先 Web サーバから
WPCG が移動機からの HTTP リクエスト受信や移動機
HTTP レスポンスを受信して WPCG へデータを転送する
への HTTP レスポンス送信時に WPCG で受信した
際に,保持した課金先情報を一緒に通知することによっ
TCP/IP パケット情報が IP パケットキャプチャ機能に通
て,データ取得処理に対する課金先を指し示している.
知される.IP パケットキャプチャ機能では,通知された
NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 10 No.3
IMT−GRIMM情報管理機能部
課金先情報リスト
情報提供者リスト
コンテンツq 情報提供者 A 課金
課金期間中
コンテンツw 情報提供者 B 課金
課金期間外
コンテンツe 情報提供者 C 課金 課金期間中
課金先 D
の追加
課金先の
追加・変更オーダ
コンテンツr 情報提供者 D 課金
不整合
チェック
課金開始
情報提供者 A
運用中
情報提供者 B
停止
情報提供者 C
運用中
情報提供者 D
運用中
情報提供者 E
運用中
情報提供者 B
の停止
課金先の
追加・変更オーダ
課金先 H
の追加
GRIMM:Gateway service Representative Internet Market Mobile access exchange(i モードサーバ)
IMT:International Mobile Telecommunications(第 3 世代移動通信)
図6
課金先情報の管理
SAC
WPCG
まとめて
SAC へ送信
コンテンツアクセス
情報収集機能
課金先情報
コンテンツ
アクセス
情報テーブル
コンテンツ
アクセス
情報
パケット
キャプチャ
情報
ユーザデータ
課金先情報
ユーザデータ
IP パケット
キャプチャ機能
パケット
キャプチャ
テーブル
TCP
課金データ
収集制御
IP
移動機
IMT−GRIMM
GMMS
GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System
GRIMM:Gateway service Representative Internet Market Mobile access exchange(i モードサーバ)
IMT:International Mobile Telecommunications(第 3 世代移動通信)
IP:Internet Protocol
SAC:multimedia Service Agent for aCcounting
TCP:Transmission Control Protocol
WPCG:Wireless Protocol Conversion Gateway
図7
WPCG 機能概要
21
SAC
本体装置(現用系)
本体装置(待機系)
ディスク装置
遠隔保守端末
WAN
OPE−LAN
CCC_I−LAN
WPCG−LAN
WAN
遠隔保守端末
WAN または LAN
CCC_I:Customer Cell record Collector_IMT
OPE:OPeration Equipment(オペレーション端末)
SAC:multimedia Service Agent for aCcounting
WAN:Wide Area Network
WPCG:Wireless Protocol Conversion Gateway
図8
CCC_I
WPCG
SAC ハードウェア構成
パケットの発 IP アドレスを元に該当するパケットキャプ
に述べる.
チャテーブルを検索し,パケット種別やパケット情報長
a ハードウェア構成
を設定する.HTTP レスポンス送信時には,上位層であ
SAC 本体装置はサーバ,課金情報を保存するディスク
る HTTP レイヤのユーザデータはコンテンツアクセス情
装置で構成されている.周辺装置として本体装置の監視,
報収集機能に通知される.IMT−GRIMM から HTTP レス
保守を行う保守端末,ネットワーク機器として他ノード
ポンスと一緒に通知された課金先情報は,コンテンツア
との接続に要するルータ,ハブで構成される(図 8)
.
クセス情報収集機能により,コンテンツアクセステーブ
SAC 本体はサーバ 2 台でクラスタを構成する冗長化を
ルの該当する箇所に格納される.課金先情報は,リバー
行っている.これにより 1 台が故障によって処理ができ
ス課金を実現するために IMT−GRIMM と WPCG との間
なくなった場合,待機系に切り替えることでサービスの
で必要な情報であり,HTTP レスポンスを移動機に中継
中断を回避する.他ノードとの接続ルートは冗長化して
する際はWPCG で削除される.
おり,ネットワークの故障時には別ルートに切り替える
このほかにも WPCG では課金ビル情報を作成するため
にさまざまなデータを収集し,各々のテーブルに格納し
ている.
s 課金データ転送機能
ことで通信を継続する.
s ソフトウェア構成
SAC のソフトウェア構成は基本 OS,ミドルウェア層,
アプリケーション層の 3層構成になっている.
ユーザが呼を終了した場合,GMMS より WPCG に解
システム上で基本 OS を動作させ,ミドルウェア層に
放通知が送信される.WPCG でこの解放通知を受信した
より本体のクラスタ管理,ディスク装置管理,ハードウ
場合,課金データ収集制御部に呼が終了したことが通知
ェア管理を実装している.アプリケーション層は WPCG
される.課金データ収集制御部では,パケットキャプチ
から送信されるデータの受信,ディスク装置の蓄積,明
ャテーブルおよびコンテンツアクセス情報テーブルを検
細ビル生成,CCC_I への転送,各種保守機能を実現して
索し,該当するユーザ情報を抽出して両者を 1 つの課金
いる.
データとして SAC へ転送する(図7)
.
d 機能概要
SAC の課金処理の機能概要について,以下に述べる
4.3
SAC 機能概要
今回,本サービス提供のために新規導入した SAC につい
てハードウェア構成,ソフトウェア構成,機能概要を以下
22
(図 9)
.
① 課金データ受信機能
WPCG でキャプチャーされたパケット情報を受信す
NTT DoCoMo テクニカルジャーナル Vol. 10 No.3
SAC
ディスク装置
WPCG
データ受信
データ集計
ビル生成
データ蓄積
データ蓄積
データ転送
CCC_I
CCC_I:Customer Cell record Collector_IMT
SAC:multimedia Service Agent for aCcounting
WPCG:Wireless Protocol Conversion Gateway
図9
SAC の課金処理機能概要
CCC_I
ユーザ課金
ビル転送
ビル通知
SAC
ユーザ課金
データ A
情報提供者
課金ビル転送
ドコモ
地域会社 A
RMB
ビル通知
GMMS
情報提供者課金
データ B
ユーザ課金
ビル転送
振分
ビル通知
突合
突合
ユーザ課金
データ C
LMMS
情報提供者
課金ビル転送
ドコモ
地域会社 B
RMB
情報提供者課金
データ D
CCC_I:Customer Cell record Collector_IMT
GMMS:Gateway Mobile Multimedia switching System
LMMS:Local Mobile Multimedia switching System
RMB:Rating system for MB(料金明細システム)
SAC:multimedia Service Agent for aCcounting
図 10
CCC_I 機能概要
る機能である.各ユーザ単位に呼切断などの契機によ
に蓄積を行い,データ消失を防いでいる.再開などの
り WPCG から SAC に転送される.データの消失を防止
故障時はディスクからデータをリカバリすることで状
するため,データを受信した SAC が該当データをディ
態を戻すことが可能である.
スクに蓄積してから WPCG に応答を返却する.
② ビル生成機能
④ ビル転送機能
受信機能同様,通信路でのデータ消失時の対策とし
明細ビル生成にあたっては TCP 信号で到達確認を行
て送信するデータはディスクに書き込みを行ってから
い,該当パケットのデータ量を課金対象としている.
CCC_I に送信し,CCC_I からの応答で蓄積されたこと
WPCG から送信された課金先情報に基づいて課金先を
を確認してから,送信確定データとして扱う.確定さ
切り替えてビル生成を実施する.
れるまでは再送を繰り返し行い,伝送路によるデータ
③ ビル蓄積機能
消失を防いでいる.
受信したデータ,送信したデータはすべてディスク
23
4.4
CCC_I 機能概要
CCC_I はドコモ料金システム群(MoBills : Mobile communication Billing systems)の 1 システムである.FOMA 用
の明細ビル情報をコアネットワークおよび SAC から収集す
るのが主な業務である.FOMA i モードの場合,CCC_I は
コアネットワーク,SAC から収集した明細ビル情報を突合
し,各々のビルから必要データを抽出して 1 ビルとする.
その後は移動機ユーザ請求分データ量,リバースコンテン
ツ側への請求分データ量に分けられ,各 FOMA 移動機契約
ドコモ地域会社,コンテンツ契約ドコモ地域会社の料金明
細システム(RMB : Rating System for MB)へ振り分け転
送する(図 10)
.
5. あとがき
リバース課金サービスにより,
“iMenu”や“お知らせ&
ヘルプ”といったサイトについて,情報提供者に課金する
サービスを実現した.今後も市場動向や利用者ニーズを考
慮しつつ,リバース課金サービスを利用したサービスの追
加を行っていく予定である.
24
文 献
[1]神宮司,ほか:“ゲートウェイ技術−WPCG, TCPGW, ExGW−”,
本誌,Vol.9,No.3,pp49−60,Oct.2001.
用 語 一 覧
CCC_I : Customer Cell record Collector_IMT
FOMA : Freedom of Mobile multimedia Access
GMMS : Gateway Mobile Multimedia switching System
GRIMM : Gateway service Representative Internet Market Mobile access
exchange(i モードサーバ)
HTML : HyperText Markup Language
HTTP : HyperText Transfer Protocol
IMT,IMT−2000 : International Mobile Telecommunications−2000
(第 3 世代移動通信)
IP : Internet Protocol
LMMS : Local Mobile Multimedia switching System
MoBills : Mobile communication Billing systems
(ドコモ料金システム群)
MS : Mobile Station(移動機)
MSA : Multimedia Service Agent
OPE : OPeration Equipment(オペレーション端末)
PDC−P : PDC mobile Packet data communication system
(PDC 移動パケット通信システム)
RMB : Rating system for MB(料金明細システム)
SAC : multimedia Service Agent for aCcounting
TCP : Transmission Control Protocol
W−TCP : TCP Profile over W−CDMA
WAN : Wide Area Network
WPCG : Wireless Protocol Conversion Gateway
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