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インターンシップ・現場からの報告

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インターンシップ・現場からの報告
GSICS 国際公務員養成プログラム
インターンシップ実施記録②
実施機関:世界銀行本部
Education for All – Fast Track Initiative (EFA-FTI) 事務局
世界銀行本部 Education for All-Fast Track Initiative(EFA-FTI)事務局での 1 ヶ月半のイ
ンターンシップが無事終了しました。非常に貴重な体験した。今回はまとめの報告とし
て、世界銀行のワークスタイルの紹介、後半のインターンシップの内容とその次のステ
ップ、インターンシップの機会を獲得する方法、そしてインターンを終えての感想を報
告させていただきます。
■ 世界銀行のワークスタイル
インターンシップ期間が半分過ぎた頃からようやくこちらのワークスタイルに慣れ
てきました。EFA-FTI 事務局のスタッフはだいたい午前 9 時前後に出勤し仕事を開始し
ます。フレックスタイム制になっており、決まった総労働時間を守っている限り、始業・
終業時刻をそれぞれが決定できる仕組みになっています。8 時半から 5 時頃まで働く職
員もいれば、10 時から 7 時半頃まで働く職員もいて、それぞれのライフスタイルに合
わせた勤務時間が選べるようになっています。
午前中は各自オフィスでデスクワークをしていることが多いですが、スタッフが完全
に揃う 11 時頃から月曜日は定例ミーティング、そして 3 日に 1 回くらいのペースで緊
急のミーティングが入ります。緊急のミーティングは、クライアント国や他のドナーと
の会議(電話会議、テレビ会議)であったり、EFA-FTI 事務局や世銀内部での決定事項
のためのミーティングであったりします。クライアント国、ドナーとの正式な会議以外
は、自分のインターンシップ内容と直接関係のないものでも可能な限り参加させてもら
うようにしました。EFA-FTI 関連の会議では事前に会議資料がメール経由で配布され、
会議は全員が事前配布資料に目を通したものとして議論が進みます。各々の仕事に加え、
こういったミーティングが頻繁に行われるため、スタッフは短時間に大量の資料を読み
こむ必要があります。ミーティングは今後の方針などの決定を行う重要なものですが、
それに加え、スタッフの意見交換の場でもあります。チームリーダー、シニアのスペシ
ャリスト、コンサルタント、インターンの違いはなく、誰でも自由に積極的に発言をし
ているのには大変驚きました。昼食の時間帯は自由ですが、BBL ミーティングといっ
て、各自昼食を取りながらミーティングが行われることもあります。その他、世界銀行
ではランチタイム(だいたい 12 時~14 時の間)にほぼ毎日どこかでセミナーや勉強会
が開催されており、自由に参加することが可能です。私も興味があるセミナーに何度か
参加しました。午後からは、他部署とのミーティングに出かける人、各自のオフィスで
それぞれの仕事にとりかかる人など様々です。スタッフは日中大変忙しくしているもの
の、午後 6 時頃にはオフィスにほとんど人がいなくなってしまいます。最初は仕事のス
ペースがつかめず遅くまでオフィスで仕事やイントラネットなどをチェックしていま
したが、こちらでは残業は「頑張っている人」ではなく、「勤務時間内に仕事がこなせ
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なかった、仕事効率が悪い人」と解釈されることが多いということを聞き、できるだけ
勤務時間内に仕事を終わらせるように努力しました。
その他の世界銀行のワークスタイルの特徴として AWS(Alternative Work Schedule)
という制度があります。これは、職員(コンサルタント、インターンは除く)に対して
適応されるもので、月曜日から木曜日まで毎日 1 時間多く仕事をすることによって、
(隔
週で)金曜日を休みにすることができるという制度です。他にも職員のワークライフバ
ランスがうまく取れるような配慮が様々なされており、非常に働きやすい環境になって
います。
EFA-FTI 事務局のスタッフ
金曜日は AWS を適応し休みにしているスタッフもいる。また、金曜日はカジュアル
フライデーで、スタッフはジーンズやラフな格好をしている人が多い。
■ インターンシップ後半内容
前回のインターンシップ報告でも紹介したとおり、私のインターンシップのメインタ
スクは、EFA-FTI イニシアティブで支援を行っている 37 ヵ国の教育の分権化政策につ
いて調査することと、分権化が進行している国における EFA-FTI イニシアティブと分権
化の関連性とそのインパクトを分析することでした。最初に簡単に指示は受けていたも
のの、詳細は自分で考えて行うというスタンスであったため、リサーチの骨組みを作り
上げるまで時間がかかり、その間多くの人にアドバイスをもらいながら試行錯誤で取り
組みました。スーパーバイザーには随時進捗状況を報告。多忙を極めるスーパーバイザ
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ーでしたが、ミーティングの時間を作ってくれ、方向性に関するアドバイスや世銀内の
他のスペシャリストの紹介などもしてくれました。世銀内の専門家やプロジェクトのチ
ームリーダーにもインタビューし、プロジェクトに関する知識を深めました。また、イ
ントラネットを使い、EFA-FTI 関連文書や、ジャーナル、教育政策文書などを集め、大
学の研究室にいた時と同じように毎日大量の文献を読み、まとめるという作業を行いま
した。さらに、EFA-FTI 関連の追加のタスク(インディカティブ・フレームワークの修
正作業、新しくイニシアティブに参加する国の教育セクター分析)も任されていたため、
後半は大変忙しいインターン生活となりました。
最後の週には、インターンシップの総まとめとして教育スペシャリストのスタッフの
前でプレゼンテーションを行いました。リサーチテーマ、インターンタスク内容は非常
にチャレンジングなものでしたが、スタッフから有益なコメントやアドバイスをもらい、
またよい評価もしていただきました。最後に提出したレポートは今後 EFA-FTI 事務局の
レポートの一部になる予定です。
インターンシップ最終報告プレゼンテーション後にスタッフと
スタッフが非常に多忙な週であったため、プレゼンは BBL 形式で昼食を取りながら
行った。プレゼン後スタッフからプレゼントをもらった。
■ インターンシップからの次のステップ
私はインターンシップを始めるにあたって、インターンは現場での実務を通して、必
要とされるスキルを習得できる絶好の機会だと捉えていました。さらに私の場合は、博
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士論文を提出し最終試験を終えた後でのインターンシップ参加であったため、博士課程
修了後の次のステップを模索していた時でもありました。よって、インターンシップを
通してスキルを修得すると同時に、そのスキルを活かす場を探すことも考えていました。
そのため、インターンシップ中は積極的にネットワーキングを行い、教育スペシャリス
トや世銀で働く日本人スタッフにコンタクトを取り、彼らのキャリアパスやアドバイス
を聞くと同時に、自分も世銀で仕事を見つけたいということをアピールし続けました。
世銀のイントラネットには全職員の専門性や関わっているプロジェクトの情報などが
あり、スタッフであれば誰もが自由に閲覧できるようになっています。人づてに別のス
タッフを紹介してもらいコンタクトを取ったり、自分で興味のあるプロジェクトや分野
に携わっているスタッフをイントラネットから見つけ出し、CV を添付してコンタクト
を取りました。コンタクトをとった全ての人から返事が返ってきたわけではありません
(返事があったのは 3 割以下です)
。
「気にするな」と周囲に言われても、やはり返信が
ないとショックでしたし、「残念だけれど今は雇えない(理由は様々:例えば予算がな
い、人を増やすつもりはない、雇うプロジェクトが今はないなど)」と言われ落ち込ん
だ時もありました。しかし、いつもアドバイスとして言われていたのは、「今縁がなか
ったとしても、どこで声がかかるか、いつ縁が巡ってくるかわからないので、いろいろ
な人にアピールし続け、連絡をとり続けること」ということでした。インターンシップ
後半はインターンの仕事量が増えていたのに加え、こういったネットワーキングも行っ
ていたため忙しく、また進路に関して先行き不透明であったため非常に不安でもありま
した。
そんな状況に急展開があったのは、インターン終了の 2 週間前でした。地道な努力が
実り、縁もあり、最後には 2 つのコンサルタントのポジションにチャレンジできる機会
に恵まれました。1つはインターンをしている EFA-FTI 事務局から。シニア教育スペシ
ャリストが、私が次のステップを探しているというのを聞いて「短期間のリサーチでよ
ければコンサルタントとして雇えるかもしれない」と言ってくれました。もう 1 つは、
同じく Human Development Network の別のユニットのマネージャーから。10 月から勤務
できるコンサルタントを探していて、たまたまイントラネット上に掲載していた私の経
歴、仕事内容を見て、「コンサルタントを探している。君の経歴を見て、的確だと思う
のだけれど、働いてみる気はないか。」というメールをもらったのがきっかけで話がす
すみ、インタビューを受けた結果「是非採用したい」と言っていただきました。いろい
ろな条件を考慮した結果、最終的に後者のポジションで働くことに決めました。
私の場合は、全て運が良かったのだと思います。学会で名刺交換した世界銀行の職員
にコンタクトをとり続け運良くインターンシップの機会を得、本プログラムから支援を
いただき、そして最終的に運良く世界銀行で次のステップを見つけることができました。
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世界銀行の場合ストレートに正規職員になるという手もありますが、正規職員の大半が
40 代以上ということを考えれば、すぐに正規職員になるのは若手にとっては非常に狭
き門です。Young Professional(YP)などもありますが、競争が非常に激しくこちらも狭
き門です。世界銀行で若手がキャリアをスタートさせる際に最も多いパターンが、コン
サルタントからのスタートです。多くの職員が、コンサルタントからキャリアをスター
トさせ、世界銀行内で成果を出し(ここでしっかりアウトプットを出し評価してもらわ
なければなりません)、機が熟したときに正規職員に応募するというキャリアパスを歩
んでいます。
Human Development Network Department の入り口
ここから入るのも ID が必要でセキュリティがしっかりしている
■ インターンシップの機会を獲得するには
国際公務員を目指す人にとって、インターンシップは国際公務員に必要な資質を養う
絶好の機会だと思います。また、インターンシップで築いたネットワークが、今後の進
路につながるきっかけになる可能性は大いにあります。国際公務員の世界では運や縁が
非常に重要であるというのをよく耳にします。運や縁は自分でコントロールできるもの
ではありませんが、その運や縁をつかむため、インターンとしてまず国際機関の内部に
身を置くというのは1つの戦略だと思います。世界銀行で出会ったインターンに数人に
どのようにその機会を獲得したか聞いてみたところ、大きく分けて次の 3 つの方法があ
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ることがわかりました。
①パターン 1:世界銀行の正規のインターンシップ・プログラムに応募
前回の報告にも書きましたが、世界銀行は毎年大学院生を対象にインターンシップ を
夏休みと冬休みの期間有給で提供しているので、プログラムに応募してインターンシッ
プの機会を獲得する方法です。
②パターン 2:学会等で世界銀行のスタッフと知り合いになり、インターンシップ受け
入れの代診をする
私がこの方法です。学会やセミナーの場で声をかけ名刺交換し、その後 CV を添付した
メールを送りインターンシップ受け入れの打診をする方法。職員は多忙を極めているた
め返事が返ってこないこともよくあります。正規のインターンではないため、世銀から
の財政的支援はありません。
③パターン 3:世界銀行から出ている報告書、パブリケーションなどから、職員の連絡
先を調べ、個人的にメールを送る
世界銀行のパブリケーションからだれが執筆に関わったか名前を調べ(個人の名前で出
版されているものもあれば、Human Development Network のように部署の名前で出版さ
れているものもある。その場合は Acknowledgements のところに、執筆に携わった人、
関係者の名前が記載されていることが多い)、そこからコンタクトしてみる。インター
ネットの検索等で運良くメールアドレスがみつかることもあるので、これも1つの方法
です。
どれも運ですし、必ずうまくいくというものではありませんが、それほど難しいもの
でもないことがわかったと思います。とにかく積極的に動くことです。ダメもとでもい
いのです。何がきっかけでチャンスにつながるかわかりません。将来国際機関で働くこ
とに興味があるなら、是非インターンシップにチャレンジしてほしいと思います。
■ インターンシップを終えて。
世界銀行 EFA-FTI 事務局でのインターンシップは 1 ヶ月半と短い期間でしたが、非常
に収穫の多いインターンシップとなりました。まず、インターンシップを通して国際公
務員に必要な実務能力を向上させることができました。具体的には、膨大な専門資料を
短時間で読みこむリーディング能力、それを短時間にまとめるライティング能力、プレ
ゼンテーション能力を向上させることができました。また、実際に世界銀行で働くこと
によって、国際公務員として必要な作業処理能力、コミュニケーション能力も向上させ
ることができました。そして何より、インターンシップの機会を活用して次の進路につ
なげることができました。
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本プログラムの支援をいただかなければ、スムーズにインターンシップを遂行するこ
とができなかったでしょうし、先生方の励ましやサポートがなければ、次の進路につな
げることができなかったと思います。本プログラム、そして関係の先生方には改めて御
礼申し上げます。今後国際公務員を志す学生が一人でも多く本プログラムを活用し、目
標へ一歩前進していくことを祈念しております。
文責
荘所真理(GSICS 博士後期課程)
2009 年 9 月 21 日
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