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平成 24 年度防災調査研究 成果報告書
平成 24 年度防災調査研究 成果報告書 首都直下地震発生時の被災地における 情報流通の在り方について 関東 ICT 推進 NPO 連絡協議会 巻 頭 言 関東 ICT 推進 NPO 連絡協議会 代表幹事 伊藤 洋(山梨県立大学学長) 「板っ子一枚下は地獄」ということわざがあります。舟の上げ板3寸その下には死に至 る深い海のあることから舟乗り稼業の危険なことを諭します。しかし、この俚諺の範囲と しては舟乗りに限ったものではありません。 「北米」 ・ 「太平洋」 ・ 「フィリピン海」 ・ 「ユーラ シア」と4つの「プレート(板っ子)」の上に乗っている日本列島の住民にとっては大地そ のものが「板っ子」であることを承知せざるを得ません。そのことを完膚なきまでに知ら しめたのが、貞観以来といわれ、史上最大ともいわれる 2011 年 3 月 11 日襲来の東日本大 震災でありました。 あの日、阿鼻叫喚の巷と化した東北から東日本太平洋岸一帯の被災地内部を除く外側に おいては、官制情報・マスコミ情報などマクロな情報についてはさすがに情報化時代とい うにふさわしい情報が伝えられてはいました。しかし、肝心の被災地内部における情報に ついて、人々が自ら置かれている窮状を知り、それを己につながる身内や友人知己にどの ように伝えたかということになるといまだに詳らかになったとは言えません。 ところで、個人のレベルに至る災害情報の重要性について切実な主題として語れられる ようになったのは、1995 年 1 月 17 日に勃発した兵庫県南部地震が最初でした。この時期が ちょうど TCP/IP を基本プロトコルとするいわゆるインターネットが民間開放されようとし ていた時期と軌を一にしていたからでありました。インターネットが核戦争後においてな お通信が確保するというテーマに応える通信プロトコルであったことと、阪神淡路大震災 とがぴったり符合したことが特に強調されたことは言うまでもありません。 そして、その後の ICT の進化は実に驚異的ですらありました。それゆえに、もはやいか なる大災害がきても情報ネットワークの途絶は無いはずだという思いが無かったわけでは ありません。しかし、実態は全くそうではなかったようです。思いも及ばない数々の崩壊 原因が ICT システムの脆弱性を露出させたからです。 本報告書は、関東 ICT 推進 NPO 連絡協議会が、上記災害時における ICT システムとその 利用技術に関する反省に立って、地域防災を ICT の立場から調査し、提言するものです。 言うまでもなくこれをもって必要十分などというつもりは毛頭ありませんが、地域の安全 と安心を確固たるものにするためのささやかな提言としてお受け取りいただければ幸甚に 存じます。大方のご批判をお寄せいただければなお一層ありがたく存じます。 2 目 次 第1章 調査研究の概要 1-1 調査研究の目的 ················································· 4 1-2 背景 ··························································· 4 1-3 目指すべき着地点 ··············································· 4 第2章 東日本大震災の教訓 2-1 東日本大震災の教訓 ············································· 5 2-2 ヒアリング調査 ················································· 6 2-3 東日本大震災後の新たな動き ······································ 7 第3章 首都直下地震への対応 3-1 首都直下地震の特徴 ············································· 8 3-2 首都直下地震への対策············································ 8 3-3 ローカル情報の重要性············································ 9 第4章 被災地の情報流通の在り方 4-1 情報流通の現状と課題············································ 10 4-2 今後に向けての対応策············································ 11 第5章 防災まちづくりの提言 5-1 「ICT 地域防災情報支援システム」 ································ 12 5-2 行政が情報をプッシュする仕組み ·································· 13 5-3 被災者が情報をプルする仕組み ···································· 14 5-4 情報ボランティアの人材育成 ······································ 17 5-5 既存団体との連携 ··············································· 19 5-6 平時の利活用 ··················································· 21 5-7 本システムの課題 ··············································· 22 第6章 提言の具現化 6-1 周知広報活動 ··················································· 24 6-2 フィールド試験 ················································· 24 6-3 最終報告 ······················································· 24 6-4 まとめ ························································· 25 参考資料(用語解説) ······················································· 26 3 第1章 調査研究の概要 1-1 調査研究の目的 関東 ICT 推進 NPO 連絡協議会は、その時代のトレンドに注目し、これまで「市民 メディア活動」や「地域デジタルアーカイブ」等先進事例調査を実施し、その有効性 を取りまとめ公表してきました。 このような中、一昨年、私たちは、東日本大震災の惨劇を目の当たりにして、多く の地域課題に直面する一方で、当協議会の活動地域である首都圏においても、直下地 震の切迫性が更に高まり、地域防災力の向上が早急な課題として浮上してきました。 多くの人命、財産及び地域資料を奪う地震災害において、最大課題の一つが「被災 地に情報がない」ことです。そこで、これまでの調査研究で得た知見、災害ボランテ ィアとしての経験値及び ICT 利活用ノウハウ等を駆使して、被災者の安全確保と減災 効果を高める地域社会の構築を目的に、同協議会の中に防災調査研究(*)を立ち上げ調 査研究を実施してきました。 *:25 ページ参照 1-2 背景 「発災初動期の論議が少ない」地震対策を考える際、時系列に整理する必要があり ますが、初動期に比べ復旧復興期は、対応期間が圧倒的に長いため、課題が山積して 対策論議も活発になります。一方、初動期は、喉元過ぎて熱さを忘れてしまうのか、 復旧復興期の対策に追われてしまうのか、腰を据え論議する機会が非常に少ないです。 しかし、初動期には、多くの犠牲が生じます。その一方で、私たちの対応次第で救 命や減災効果が最も高まる重要な時期です。そこで、初動期対応を改めて考えます。 「被災地に情報なし対策も見えない」内閣府中央防災会議において、災害情報の重 要性については、誰もが認識しているところですが、誰がどのように入手し、精査し、 被災者まで届けるのか具体的かつ効果的なアイディアがなかなか出てきません。特に 被災者が身の安全を確保するために必要なローカル情報を受発信する標準的なスキー ムがないため、地方公共団体は、独自の対応を迫られているのが実情です。 「技術連携、情報連携が少なく被災地ではバラバラ」新たな技術やアプリケーショ ンが続々開発されており、技術の良さには納得しますが、技術同士が連携した仕組み や、メディア同士が連携した情報伝達がなく、それぞれがバラバラに動いています。 例えば、ソーシャルメディアの利活用、ARによる避難所案内、ネオポスターによる 情報提供など、単独での論議・検証ではなく、これらが一体となり地域コミュニティ の中で行政や人がどのように介在し利活用できるのか、また、情報連携できるのか、 災害現場で命の守る現実的な仕組みづくりが急務です。 1-3 目指すべき着地点 首都直下地震が発生した際、その初動期の被災地において、被災者がいかに二次災 害を回避し身の安全を確保するか、その時必要となるローカルな災害情報をどのよう に受け取るか、その標準的な仕組みを検討のうえ提言し具現化することが着地点です。 4 第2章 東日本大震災の教訓 2-1 東日本大震災の教訓 第一報が被害を拡大 気象庁は、大津波警報の第一報を 14:49 に発出しております。 「予想される津波の高さは、岩手 3m、宮城 6m、福島 3m」でした。この情報が海岸 から離れた地域の方の避難を遅らせ大きな要因となりました。津波予測技術が高精度 化すれば、第一報の正確性も増し、市民の安全確保につながったことでしょう。 電話回線の輻輳 被災地において、固定通信では、最大 190 万の通信回線が被災し、 移動通信では、 最大 29,000 局の基地局が停波しました。 時間軸で被災度を分析すると、 発災直後よりは、1日~2日後に停波した基地局数がピークを迎えています。なぜな ら、地震により商用電源が全てダウンし、基地局電源がバッテリーや自家発電発動機 に切り替わり運用してきたところ、蓄電池や軽油が枯渇したために1~2日後、停波 した基地局数が急増したわけです。このことから考えると、基地局が運用できている 発災初動期に、いかに情報収集できるかが大きなポイントと分かります。 首都圏は、東日本大震災の被災地ではない 一方、首都圏では震度5強の地震が発 生し、交通機関の脆弱性が露呈され、515 万人の帰宅困難者が発生しました。その内、 徒歩帰宅者は、通常の3倍以上の時間を要し帰宅したわけですが、幸にして生死に関 わるほどの危険には遭遇しなかったのです。 しかし、首都直下地震が発生すれば状況は全く異なります。各地で火災が発生し古 いビルや橋梁が崩落し歩道は安全に歩けません。それを避けるため車道にも人が溢れ 交通は慢性麻痺の状況が続き緊急車両もお手上げです。あの時、安全に帰宅できた経 験値を鵜呑みにして行動すると非常に危険であり2次災害に巻き込まれます。首都直 下地震の恐ろしさを正しく認識し行動することが何よりも重要です。 図表2-1 5 2-2 ヒアリング調査 東日本大震災の教訓として、被災地の動向、周辺地域での活動状況及び地域間連携 事例をヒアリング調査して、防災調査研究のテーマである、発災初動期以後の被災者 支援の在り方を導き出すことを目的としてヒアリング調査を行いました。 調査対象は、当協議会の活動範囲である関東圏において、最も被害の大きな地域や 顕著な災害対応を実施した地域・団体に対して以下のとおり実施しました。 ア コミュニティ FM における被災時の取り組み(FMOZE・FM 桐生) 中越地震:放送局を運用できる即戦力の人材を派遣した 東日本大震災:放送業務の役割分担の必要性、緊急告知ラジオの活用、情報特派 員の設置、平時からのコミュニケーションが災害時の情報収集に有効。 発信の在り方:情報の信頼性の確保とスピード、得た情報は視聴者に確実に届け る、メディアリテラシー、ソーシャルメディア型コミュニティ FM 今後:地域メディア間の連携と情報共有が重要 イ 調布市及び市内の既存団体の動き 行政:避難所一覧、広域避難場所、ハザードマップ、防災マップ、防災教育、各 種防災調査等実施。最近は、「防災教育の日」の設定、「避難所運営マニュアル作成 のためのガイドライン」を作成。 問題点:自分で命を守るしかないが、どう行動するか判断するための情報がない こと。要援護者は、どこに住んでいるか全体を把握しきれない。 既存団体:情報連携できる可能性ある団体は 50 団体ある。連絡会の必要性。 まとめ:情報拠点づくり。平時の地域情報発信。市民による積極的参加。 ウ かながわ東日本大震災ボランティアステーション事業 ・ 「震災時に活躍した ICT 事例」 事例 1 宮城県女川町(株)高政(ツイッター)、事例 2 自治体のツイッターアカウン トの増加、事例 3 ツイッターに「ライフラインアカウント検索」機能が追加、事 例 4 気象情報会社ウェザーニューズのアンケート、事例 5 テレビ番組をインター ネットに流す、事例 6 がんばろう東日本プロジェクト、事例 7 テレビ番組をワン セグで見る、事例 8 被災地の道路情報一覧サイト、事例 9 アマゾンほしい物リス トヤフー、楽天、事例 10 ツイッターとコミュニティ FM、事例 11 ALL311 震災 情報ポータルサイト ・ 「復興まちづくりモデル」 ① 大槌町での復興まちづくり ② ホームページお助け隊 ・ 「大規模災害における広域連携モデル」 ① 遠野モデル検証 ② かながわ金太郎ハウス ・ 「ツイッター・フェイスブック・ホームページによる情報トライアングル」による 情報循環モデルを、かながわ東日本大震災ボランティアステーション事業におい 6 ても活用した大規模災害時にボランティアが広域連携するための情報活用モデル として提案。 エ 被災者に対する遠隔地からの情報支援(仙台・山梨間連携) 東日本大震災時、山梨から東北へ出張中の上司の安否確認のため、携帯電話、 twitter、SNS、Ustream 中継等により情報収集し生存確認、事態の把握及び安全な 場所への避難誘導に役だった。 調査の結果から見えてきたことを次のとおりまとめてみました。今後、防災まち づくり、特に災害時情報支援策の構築に当たっては、重点事項として十分生かした いと考えております。 ・地域間、地域内、業種間の横串連携の必要性 ・情報リテラシーと受発信能力を高める人材育成 ・既存団体、帰宅困難者、情報弱者、外国人との情報連携支援 ・地域の情報発信力を高める仕組みづくり 2-3 東日本大震災後の新たな動き ソーシャルメディアの光と影 直近の大地震は、2007 年 7 月に発生した中越沖地震で すが、当時、活用されたソーシャルメディアと言えば、地域 SNS やブログでした。twitter や Facebook 等は、まだ普及されておらず、今回、初めてこのようなソーシャルメディア が災害情報の流通に役だったわけです。情報通信白書でも、情報の入手源としての利用 価値を謳っています。しかし、その一方では、ソーシャルメディアの即時性の高さが仇 となって、発災初動期からデマ情報が流布されました。これまでは、発災から2,3日 後、救助隊、ボランティア及びメディアなどたくさんの人が被災地に入ってきてからデ マ情報は急増する傾向だったのです。被災地における情報流通を考えた場合、信頼でき る情報とそうでない情報とを見分ける仕組みや人的ネットワークの初動体制をいかに構 築するかがポイントになってきます。 災害デジタルアーカイブの利活用 災害デジタルアーカイブは、民産学官問わず、あ らゆる業種で研究が進められています。教育の一環で震災の記録と教訓を次世代に継承 することはもちろんのこと、ボランティア活動として、水没・毀損した地域資料や地域 コンテンツを再生する膨大な作業を熱心に行います。あるいは、「ひなぎく」(国立国会 図書館) 、 「311まるごとアーカイブス」 (事務局:独立行政法人防災科学技術研究所内) や安否確認システム「パーソンファインダー」 (Google)のように総合的な取り組みも各 方面から実施されています。これらは、被災地の復旧・復興にも大いに役立つもので、 これだけ活発にデジタルアーカイブ等の利活用が進んだのは、一つの特徴的な流れでは ないでしょうか。 7 第3章 首都直下地震への対応 3-1 首都直下地震の特徴 私たちは、首都直下地震が発生した際の本当の恐ろしさを平時からしっかりイメー ジしておくことが大事です。そのイメージから対策が見えてきます。 では、首都圏が被災した最悪の事態とは、社会がどのような状態なのでしょうか。 ア 電気、水道、ガスや鉄道など生活関係インフラが全てストップします イ 同時多発的に被害が発生し、強い余震が頻発して二次災害も拡大します ウ 橋の崩落や道路の寸断により人や車両の移動は困難となります。 エ 多くの帰宅困難者が発生します。身の安全の確保が最重要課題対策です。 オ 高層ビルにおける長周期地震動による被害や高層住宅難民が発生します。 カ 警察、消防、救急、行政の救助・支援は圧倒的に手が足りず期待できません キ 被災地に災害情報は流通しません。被災者ほど何が起きたか分かりません。 ク 被災要因は、地震の直接的被害の他、火災延焼、液状化、ガラス片等落下物、将 棋倒し等です。特に地理に不案内な外出者が災害に巻き込まれやすいです。 ケ 住民は避難所へ、外出者は一時滞在施設へ避難することになりますが、外出者数 に対して一時滞在施設で受け入れられる数は、圧倒的に不足しています。 3-2 首都直下地震への対策 インフラや環境面での整備 当然ながら、現状の課題をしっかり認識し被害を最小限に食い止めるため、行政が 中心となって平時から以下のような対策を講じることが重要と考えられます。 住宅:密集する木造住宅の不燃化や耐震対策、高層ビル難民への対策 道路:道路ネットワークの整備や老朽化対策 避難所:住民が避難する場所であるため、外出者が安全に避難できる場所の確保 現実的な避難訓練・防災訓練の実施 自助で自分の命を守り、共助で初期消火や救助を行い医師に引き渡す訓練を実施し ます。一時救護施設の確保やトリアージについても学びます。この場合、地域コミュ ニティ単位で実施し、コミュニティ間の連携も視野に入れることが重要です。 通勤途上や外出中に発災した場合の対応策 通勤ルート上の地域特性を把握することと、徒歩途中、電車移動中、駅滞在中等そ れぞれの場所での行動を決めておきましょう。携行品には、携帯電話や携帯ラジオの 他に、軽くていざという時に役立つ物を入れておきます。例えば、ホイッスル、アル ミブランケット、スカーフ、バンダナや帽子など。洋服やコートは、フード付きが好 ましい。水を補給できるようペットボトルは空になっても捨てません。 街中で発災した場合の行動 ア 発災直後の現状認識 自身のケガの状況は勿論のこと、見える範囲内で被害状況 を確認します。 (被災した人、混乱する道路状況、倒壊したビル等) 8 イ 少ない情報から身の安全を確保 ビルが林立する首都圏では、歩道をむやみやた らに移動することはたいへん危険です。周囲を見渡しウインドガラスの近くや古い ビルには近寄らない、比較的新しいビルや耐震対策済みのビルにひとまず逃げ込み ます。そこが自分の一次避難場所と認識します。 ウ 一時避難中にやるべき行動 ・現在地の位置の確認と自身のケガの状況や周辺状況を改めて確認します。 ・何が起こったか、手持ちのメディアや周囲の人から地震速報を確認します ・災害用伝言ダイヤルや J-anpi 等を活用し、安否確認に努めます ・避難所(住民用)及び一時滞在施設(外出者用)など公的避難施設を調べます ・頻発する余震の発生状況(発生間隔)を観察し移動するタイミングを計ります 安否確認の可否による行動 ~暫くして安否確認ができた場合~ ア 近くに公園や学校等、より安全な場所がある場合は、そこまで移動します イ 公園やビル(トイレ)で水が確保できるか試します。街中では自販機やコンビニ で購入できますがすぐに完売します。水筒等を持ち歩くことが望ましいです。 ウ 明るい内は、安全に動けるエリア(ビル内・公園内等)で共助を開始します エ 一夜を明かすための準備をします。 (暗くならないうちに用意すること) 寒冷や風雨をしのげる場所や寝処を確保します。真冬の公園は、厳しいので、極 力、学校、公共施設、大型ビル内のホールなど屋根のある場所を探します。 ~どうしても安否確認(登録)ができない場合~ 一時的に避難した場所にメモ(滞在した日時、名前、住所(○○市○○町程度) 、ケ ガの有無、行き先)を残してから公的施設等へ移動します。 3-3 ローカル情報の重要性 地理に不案内な外出者が多い 首都圏では、生活している住民以外に帰宅困難者(通 勤・通学、出張、ショッピング、観光等)が約 650 万人とも言われています。その多 くは、駅から目的地までは行けても、基本的に地理に不案内なため、その途上で発災 した場合、どこに避難したらよいか分からず途方に暮れます。そんな時に必要なのが ローカル情報(避難できる場所やルート情報等)です。 情報がない場合の行動心理 被災地では、ローカル情報が流通しないため、人は、 情報を求めて駅に向かう傾向があります。電車が止まっているのは分かっていますが、 駅に行けば何か別な情報が得られるのではないかと、ターミナル駅には 20 万人以上の 人が殺到します。最悪の場合、明石歩道橋事故のような将棋倒しによる大惨事が同時 多発的に発生してしまうことです。二次災害を少しでも軽減させるためには、駅前の 混乱状況を周辺地において、駅に向かっている人に伝え、駅に近づかないことや安全 な避難場所へ誘導するようなローカル情報を共有することがたいへん重要です。 9 第4章 被災地の情報流通の在り方 4-1 情報流通の現状と課題 東日本大震災が情報行動に与えた影響について、総務省がまとめた平成 24 年版情報 通信白書によると、 『発災直後は、ラジオ、テレビ、防災無線といった即時性の高い一 斉同報型ツールの利用率が高く有用性も高かった』インタビューコメントでも「震災 当初はラジオが唯一の情報入手手段であった」とラジオの評価が高いです。 しかし、情報収集手段とその評価について着目すると「ラジオは情報を手に入れら れたが、細かい情報までは入ってこなかった」また、携帯電話については「携帯電話 は無線なので災害時こそ使えると思っていたが、全く使えずショックだった」と低い 評価に止まっています。このように、 『情報伝達のためには、複数の伝達経路を活用し て情報伝達することの必要性が示唆される結果となった』と紹介しています。また、 注目すべきは、近隣住民の口コミ情報が発災直後には防災無線と同程度の評価を得、 避難後の生活情報の収集手段としては、第2位のインターネットを押さえ、ダントツ の一位となっていることです。 これを受けて、主な情報流通を時系列にまとめると以下のとおりとなります。 発 災 時 【マスメディア】 :テレビ・ラジオで緊急地震速報、地震情報、津波情報 【行政】 :防災行政無線で避難勧告指示 【住民】 :自助により身の安全を確保 初 動 期 【マスメディア】 :地震情報、津波・余震情報、被害情報、鉄道情報 (0~24H) 【行政】 :防災行政無線や防災情報システム等で避難勧告や被害情報 【住民】 :携帯電話等で安否確認(家族、職場、友人) 、共助 災害対応期 【マスメディア】 :余震情報、火災情報、被害情報、鉄道情報 (24~72H) 【行政】:避難情報、被害情報、安否情報、行政情報、救急・救命情報 【住民】:携帯・インターネットで安否確認や共助支援情報 復旧復興期 【マスメディア】 :余震情報、被害情報、鉄道情報、ライフライン復旧 (72H~ ) 【行政】 :避難情報、行政情報、生活情報、医療情報、ボランティア情報 【住民】 :携帯・インターネットで安否確認やボランティア情報 また、情報流通の課題をまとめると、以下のとおりとなります。 緊急地震速報:比較的浅い場所が震源となる首都直下地震が発生した場合、P 波 S 波 がほぼ同時に到達するので、一部地域ではその有効性が乏しくなります。 マスメディア:まず、地震情報(震源地、各地の震度、津波の有無等)を把握するに は評価も有用性もありますが、被災者が身の安全を確保するために必要 なローカル情報の提供が困難となります。 防災行政無線:聞き取れるエリアにばらつきが出ることと、聞き逃すと後で情報を確 認することが困難となります。 行政の対応:行政職員も被災者となります。土日に発災すれば、職員の参集すら困難 10 となり災害対応そのものに影響が出てきます。個人情報の保護や流言飛語 の対策により行政から発出される情報は、総じて遅れます。 帰宅困難者:特に外出者や外国人観光客等に対する情報支援策が少ないです。 情報ボランティア:現状は、市民に対するコーディネートがなく活用が少ないです。 このように、地震情報(震源地、各地の震度、津波)など大きな情報は、ラジオ・ テレビを通じて提供されますが、被災者が身の安全を確保するためのローカルな情報 は、誰もがその必要と認めながらも、標準的な提供方策が確立されず、行政も独自の 対応を迫られ大きな課題となっています。 4-2 今後に向けての対応策 そこで、発災初動期において、被災者が極力、危険を回避しながら避難するために 必要な情報をどのように入手できるか、その支援策を検討し具体的な情報流通の仕組 みを考えることにします。二次災害に巻き込まれず命を繋ぐことが先決です。なぜな らば、助かった者は、その後、別の命を助ける可能性が十分あるからです。 それでは、このような仕組みを考える際に押さえておくべきポイント、つまり、実 現性と有用性の観点から、その前提となる必須要素を次のとおりまとめました。 ア 情報流通に必要な人材づくり 「情報団」 :普段から情報発信しているメディアリテラシーの高い市民メディアな どがローカル情報の収集の役割を担当 「情報ディレクター」 :収集した情報から被災者に提供できる情報の仕分けを担当 イ 情報受発信の拠点づくり 「情報前進基地」 :各地に情報収集の前進基地(避難所・公共施設等)を配置 「まちかど情報ステーション」 :ローカルな情報を受発信できる拠点を街中に構築 ウ ICTの利活用(インターネット等が利用できる前提) 「ソーシャルメディア」 :災害情報の受発信に効果のあるメディアを積極的に活用 「ネオポスター」 :被災者が簡単な操作でローカルな情報を収集できるアプリ 「AR」 :視覚的に街中情報や避難所誘導ができるので、被災地で有益 エ 地域間の連携 広域災害に対応するためソーシャルメディアの人的ネットワークを活用(被災地 内において情報を受発信する現場も相当輻輳しますので、周辺地域の市民メディア やスイッチャーとの情報連携・情報支援を受けられるネットワークを普段から構築) オ ローカル情報を共有する新たな仕組み 情報を受発信する過程において、適材適所に人員を配置し既存のメディアや技術 を十分活用して、行政と市民が有機的に情報連携できる仕組みを考えます。 通常、まちづくりに必要な要素として、 「人」 「もの」「金」そして「情報」と言わ れますが、本システムは、既存の「もの」を使い、極力「金」を押さえ「人」が主 役で「情報」を流通させる仕組みを基本とします。 11 第5章 防災まちづくりの提言 5-1 「ICT 地域防災情報支援システム」 第4章に基づき、行政が情報ボランティアを活用して情報収集する仕組みと被災者 がまちかど情報ステーションから情報を自らプル(引っ張る)する仕組みとを ICT で つなぐシステムです。これにより、行政は、直接、被災者へ情報提供する手間が軽減 され本来業務(災害対応)に専念できるようになります。一方、被災者は、身近な場 所から必要に応じローカル情報を簡単な操作で入手することができます。 ア 目的:ローカル情報を円滑に流通させることで、被災者が少しでも安心・安全に 行動し総じて二次災害を軽減させることが目的です。 イ 条件:首都圏において大規模地震(最大震度 7、M7 級)が発生した場合を想定し、 市町村単位(災害対策本部)を基本とし管轄下の自治会・町内会などのエリ ア毎の地域情報をイメージしながら地域全体の情報共有を図ります。 (図表5-1) ウ 特徴:システムを構成する特徴的な要素についてまとめました。 【行 政】平時、情報ディレクターや情報団に対し役割や使命を委嘱・登録します。 災害対策本部は、情報を円滑に収集するため情報前進基地を配置します。 ネオポスターを活用するためマッチングサーバー等を構築します。 地域メディアと連携してローカル情報を即時放送できるようにします。 【被災者】ネオポスターで情報入手します。近隣のまちかど情報ステーションに掲示 された防災ポスターや住宅地図をスマートフォンで写真撮影しますと、ポス ターや地図に予めマッチングした情報(例:現地点から一番近い避難所や安 否情報等)をそのスマートフォンに配信される仕組みです。 図表5-1 12 5-2 行政が情報をプッシュする仕組み 地震は、行政の閉庁日に発生する場合もありますし、職員も被災して戦力が激減す ることも想定しなくてはなりません。そこで、情報収集、情報仕分け及び情報発信に 関する専門作業を情報ボランティア(情報団・情報ディレクター)にお願いします。 図表5-2-1 情報団:被災地内においてローカルな災害情報を収集し、情報前進基地等に情報を 提供する専門集団です。防災関係機関や被災者に対し情報を伝達するボランティア組 織で、いわば消防団の情報通信版です。自治会・町内会と同程度の地域規模を基本に 組織して、平時は、行政や消防団と連携し防災・防犯・防火等の情報を提供し信頼関 係を構築します。災害時には、信頼できる情報源と判断され被災者へ情報を即時に届 けます。担い手は、メディアリテラシーの高い市民メディアやソーシャルメディアを 積極的に活用している市民です。 図表5-2-2 13 情報ディレクター:情報団の中でも情報受発信の専門的知識、技能、経験を有し、 災害情報を迅速かつ正確に伝達するための人員です。災害対策本部及び情報前進基地 (情報フロント)で収集された情報を素早く仕分けし被災者に提供可能な情報と保留 する情報とに分けます。 また、効率的かつ効果的に情報仕分けを実施するためツイッターのツイートデッキ を活用します。エリア毎に情報を整理できるので、情報の仕分けのみならず、エリア 毎に時々刻々と変化する被害状況を把握できます。 仕分けられた情報は、後述するマッチングサーバーやコンテンツサーバーへ登録し ます。サーバー情報は、災対本部、前進基地双方で確認できます。 情報ディレクターは、フレキシブルな対応力を求められますので、平時から地域に 密着したメディア(地域SNS・コミュニティFM・CATV)と協力して地域情報 化に貢献していることが望ましいです。 図表5-2-3 5-3 被災者が情報をプルする仕組み これまで、外出者が街中で災害情報を入手する手段は、ラジオ放送、防災行政無線 及び口コミ情報程度です。しかし、このような情報源からでは、自分が被災した場所 周辺のローカル情報は入手できないため、自分の行動を決められず、身の安全の確保 が困難となります。しかも、待っているだけでは、有益情報は、一向に望めません。 そこで、被災者自らが情報を積極的に入手する仕組みを考えます。平時、市民が良 く利用する場所(コンビニ、カフェ、郵便局、バス停や総合防災案内板)を地域情報 の受発信拠点(まちかど情報ステーション)と位置づけます。被災者は、この拠点ま で来れば、ネオポスターというスマートフォンのアプリを活用してローカル情報を入 手することができます。 14 図表5-3-1 ネオポスター:静止画(ポスター等)と連携したコンテンツ配信アプリのことで、 スマートフォンの写真機能からポスター・チラシ等を撮影するだけで、ポスターに関 連する動画情報等がスマホに配信されるものです。例えば、歌手のポスターを撮影す ると、歌手が実際に歌っている動画がスマホから見られます。QRコードに似た仕組 みですが、コード化する必要がなく、ポスターそのものを撮影します。特出すべきは、 撮った写真がピンボケでも一部欠けていても、そのポスターを認識し情報が配信され ることです。成熟度の非常に高い技術で、高齢者の活用にも期待されます。 ・ 静止画像をコード化し、アプリを利用することでQRコード等の印刷が不要 ・ 東北大学(未来科学技術共同研究センター)等産学協働組織TM委員会で開発し た最新の画像認識技術で、撮影距離や光源の影響を受けずに画像を認識できます ・ 画像認識と情報提供を組み合わせた新しいカスタマーサービスを生み出します 図表5-3-2 15 まちかど情報ステーション 平時から地域情報を入手できる拠点を構築し、非常時 は、ローカルな災害情報を入手できる拠点となります。情報弱者への支援も行います。 定義:平時、誰もが利用し認知度の高い場所(コンビニ、カフェ、郵便局、バス 停、総合防災案内板等)を災害時の情報受発信拠点とします。 役割:本システムにご協力いただけるコンビニ等店舗のウィンドウに「防災情報 ポスター」を貼付し、ネオポスターを活用する情報支援の拠点であることを周知し ておきます。平時は、地域情報(天気:ゲリラ豪雨等、観光情報、不審者情報、身 近なお得情報等)を入手するために利用し操作に慣れておきます。 災害時は、ローカルな災害情報を入手するために利用します。貴重な情報は、み んなで共有するため、予め用意しておくポストイットに記載し、店舗内外に張り出 します。スマートフォンを持たない情報弱者への情報支援の拠点ともなります。 図表5-3-3 (1) 図表5-3-4 まちかど情報ステーションから情報を取得(2) 16 また、街中でよく目にします町内会地図や総合防災案内板が情報拠点となります。 掲載されている地図を撮影すると、その場所から一番近い避難所の情報が入手できま す。例えば、避難所受入の可否、避難所のライブ映像、ルート案内及びルート上の被 害情報等を確認することができ、身の安全を確保する行動につながります。 図表5-3-5 5-4 情報ボランティアの人材育成 情報団の役割と地位の位置づけ 東日本⼤震災を受けて、情報団構想が現実的な課題となりつつあります。本システ ムにおいて、情報団の役割は、非常に重要であり情報流通の要となります。 そこで、平時から情報団のスキル向上を目的とした人材育成が不可欠です。 その担い手となるのが、近年、社会問題や地域課題等を検証し積極的に情報発信し ている市民メディアです。災害時には情報団としての役割がたいへん期待されます。 しかし、行政や地域社会は、市民メディア活動を支援・認定する制度を持ちません。 そこで、市民メディアの地位向上と新規情報団の拡大、そして何よりも情報団のイ ンセンティブを引き出す機会を創出するため、情報団の役割と地位について、法令等 により明確にすることが必要と考えております。 市民防災情報士(仮称)の資格認定 地域防災や救急救命の専門的知識、技能、経験を有し、実践的な訓練を受けた者に 付与される「防災士」、 「上級救命技能」の資格があるように、ローカルな災害情報を 収集し仕分けし、行政や地域メディアと情報連携するボランタリーな「防災情報団」 の資格認定・登録制度を提案したいと思います。防災情報団は、消防団と親和性を持 つよう、市町村長が団長を任命し、平時は、消防団との連携を図りながら防災・防犯・ 防火等の情報を発信します。この経験を積むことで行政、消防団及び地域住民からの 信頼を集めます。災害時には、近隣の被災情報や避難情報等を行政と協働で流通させ 17 ます。情報団から提供された情報は、信頼できる情報として、行政が即時、被災者に 届けることができます。やがて、地域防災力の向上に寄与する情報受発信の専門集団 へと成長します。 個人の資格制度(民間資格)として「一般市民防災情報士」 (情報団員)及び「上級 市民防災情報士」 (情報ディレクター)の2種類を設定します。資格認定は、既存の防 災士研修センターにお願いする方法、または、地域情報化の人材育成機関として新た に防災情報士研修センター(仮称)を設立して実施する方法が考えられます。同セン ターでは、行政と連携して防災情報団の登録申請手続きを代行し、資格試験の実施や 人材育成の一環として各種講習会を開催します。これにより地域雇用の創出にも寄与 します。 防災情報士の講習会 防災情報士研修センターは、平時の防災防犯情報及び非常時の災害情報を流通させ、 地域防災力の向上を目的とした人材を育成するため、定期的に防災情報士の講習会を 開催します。講習会の講師として報道のプロ等有識者を配置し、以下の項目について 講義を行います。 ・地域情報化(ICT 利活用)に関する基本的知識・実技の習得 ・メディアリテラシースキルの向上 ・地域防災の専門的知識の習得 ・行政や地域メディアとの連携の在り方 ・災害現場での対応の在り方(限界を超えてはいけない) ・情報団の平時の役割と情報受発信訓練 消防団は、ハードな活動イメージがあるため、防災に関心がある女性でも参加には 躊躇する傾向にあります。しかし、情報団であれば、女性参加につながりますので、 地域ニーズの多様化に応えます。また、広く門戸を開放し、多業種多方面から講習会 に参加できるようします。特に、地理情報や地理案内に優位な運送業界やタクシー業 界、または、都市計画や現状に詳しい地元建設業者へのアプローチも効果が期待でき ます。 図表5-4(修了証のイメージ図) 18 5-5 既存団体との連携 本システムが災害現場において、円滑かつ効果的に運用できるかどうかは、既存団 体といかに連携できるかが大きな鍵となります。また、机上の計算値のみで閉じる報 告書ではなく、近い将来、具現化するためには、特にこの点の論議を深めていくこと が重要です。 ア 行政との連携 本システムと行政との接点は、情報前進基地となる避難所や一時 滞在施設等です。避難所には、避難所運営に携わる行政職員、災害ボランティアセ ンターの設置・運営を行う社会福祉協議会の職員及び学校関係者が参集されます。 そして、本システムから情報ディレクター及び情報スタッフが配置されますので、 横串のコミュニティを形成し災害対応に当たって必要となる情報をいかに共有でき るかが重要なポイントです。では、必要となる情報とは何でしょうか。以下のとお りまとめました。 ・被災状況の把握(情報ディレクター → 行政・社協等) 情報団から得た情報を分析しエリア毎にまとめた被害状況を行政等に提供します。 ・要援護者の安否確認(社協 → 情報ディレクター) 社協職員が福祉サービス利用者へ電話や現地調査のうえ安否確認し、その状況を 情報ディレクターへ提供します ・避難所の名簿作成(行政 → 情報ディレクター) 行政は、続々と避難してくる住民の居所・氏名を一覧表にまとめ、情報ディレク ター等へ提供します。 ちなみに、東日本大震災では、個人情報の提供を容認している住民が大多数を占 め、命を守ること、家族等の安否を確認することが何よりも優先されました。 ・ボランティアセンターの開設(社協 → 情報ディレクター) 社協は、情報ディレクターから提供された被害情報に基づき、設置判断、運営体 制及びボランティア募集の時期等を決定し情報ディレクターへ情報提供します。 情報ディレクターは、このような情報共有に基づき得られた情報をその時点で利 用可能なあらゆる情報ツール及びネオポスターマッチングサーバー及びコンテンツ サーバー等に入力し、まちかど情報ステーションを経由して被災者へ情報提供しま す。当然のことながら、その課程において、被災者へ提供する情報と提供しない情 報を仕分けするとともに、グレーな情報は、災対本部へ報告します。 イ 地域メディア(コミュニティFM・CATV等)との連携 まず、地域メディアは、日頃誰と連携しているかを把握しておく必要があります。 例えば、災害時の情報提供に効果を発揮しているコミュニティFMでは、リスナー と密に連携しています。番組に対する意見・感想はもとより、地域の動きや身近な 出来事などを情報提供してくれます。その情報が放送を通じ多くのリスナーに還元 されます。このような流れが平時から構築されていると、いざ災害が発生した際に 19 は、リスナーが情報団の役割を果たすことができます。しかし、リスナーはあくま でリスナーですから情報団のような専門的知識を強要するわけにはいきません。役 割を明確に区別しておくことが必要ですが、一部のリスナーは、その経験を重ねる ことで特派員となり、やがては、情報団の資格をとりたいと目的意識が明確となり モチベーションを高めることができます。では、本システムは、地域メディアとど のように連携するのでしょうか。以下のとおりまとめました。 ・被害情報の提供(地域メディア → 災害対策本部) 地域メディアは、日頃、実績のあるリスナーや視聴者から送られてきた情報を災 対本部(情報ディレクター)へ情報提供します。なお、伝達手段は、電話・口コミ・ メール・ツイッター等です。 ・被害情報の提供(災害対策本部 → 地域メディア) 災対本部は、集約した信頼情報をコンテンツサーバーに入力し被害情報を蓄積し ますが、地域メディア(責任者)に仕分けされた信頼情報のみ閲覧出来るようにし ます。しかし、行政が信頼できる情報と位置づけたとしても、その情報を放送する ことでの影響度は別問題であり、局側の自己責任で善し悪しを判断し放送すること になります。 地域には、あらゆる団体があって日々活動を行っています。少々考えただけでも、 商工会、青年会議所、消防団、防犯協会、交通安全協会、シルバー人材センター、 医師会、体育協会、文化協会、父母の会、老人クラブ、街づくり協議会、そして、 NPO 法人等が存在します。災害時は、普段の枠を超えて、このような方々が情報ボ ランティアにもなります。時には情報弱者や要援護者へ情報を届けてくれるしょう。 災害時の情報流通を円滑に推進するため、このような既存団体と普段から顔の見え る関係を維持していくことが必要です。そのためにも、例えば、 「非常時連携連絡会」 のような会合を定期的に開催し、異業種間連携を推進することが非常に重要です。 図表5-5 20 5-6 平時の利活用 本システムの有効性の判断は、被災者が災害時にどれだけ本システムを活用するか 否かです。そのためには、まず、平時から本システムの存在を知らせること、利便性・ 有効性をアピールすること、そして、活用と評価をいただくことです。つまり、まち かど情報ステーションに行けば、何らかの地域情報が得られると日常的に理解され利 用されることがとても重要となってきます。 また、本システムが社会に容認されるためには、地域課題解決に貢献していること がポイントです。昨今の地域課題は、地域特性別に「少子高齢化・限界集落」(農山漁 村地域) 、「地域産業の空洞化・若者の流出」(地方都市)、「地域コミュニティの崩壊」 (首都圏) 、そして、どの地域共通の課題として、 「雇用がない」(地域間連携による定 住) 、 「医者がいない」 (地域医療の再生)という実態です。解決策として、地域交流サ ポート(情報団による取材・情報発信)を行います。平時に社会貢献の場を創出し、 存在価値を高めつつ利活用を促進します。特効薬とはなりませんが、継続することで 課題解決の糸口が見え次の展開につながり、着実に一歩ずつ効果を上げていきます。 平 時 ・疾病予防 → 地域散歩の推奨(テーマ:歴史文化散策、自然散策、食べ歩き) ・産業復活 → 商店街情報(イベント、タイムサービス、限定商品、地域通貨) ・観光客誘致 → 観光情報(現在地から近い順に多言語で観光情報を提供) ・空き店舗活用 → ふれあいサロン(古写真展、わがまちCMの上映等) ・気象情報(各地域の天候情報、ゲリラ豪雨や台風等の警戒情報) 災害時 ・避難する(地域住民:避難所、外出者:一次滞在施設を案内) ・被災情報を確認する(火災場所や延焼方向、通行止めの道路・橋梁) ・安否情報を確認する(避難所毎の避難者リストを閲覧、J-anpi で検索) 図表5-6 21 5-7 本システムの課題 これまで、本システムの仕組みについて、その基盤となる人(情報団)、時間(時間 軸での災害対応) 、空間(ローカル:まちかど情報ステーション)及びメディア(ICT、 市民メディア、地域メディア)等テーマ毎に論じてきましたが、まだ、入り口論です。 本システムを円滑に運用させるためには、各要素の課題を明確化し、必要に応じ詳 細を詰めていくことが次のステップと考えます。 さらには、以下のとおり、社会的課題も考慮する必要があります。 ア 基地局が停波した場合 東日本大震災では、29,000 局の基地局が停波し当該エリ アでは、携帯電話が通じない状況となりました。各通信事業者は、この教訓からい ろいろと対策を講じておりますが、首都直下地震が発生した際は、想定以上の基地 局被害が生じる可能性もあります。日常の連絡手段が絶たれ、混乱を来たします。 そこで、携帯電話の代替ネットワークを考えておくことが重要です。特に首都圏 では、Wi-Fi エリアが拡大していますので、有力な補完候補になります。その中で注 目したいのが、平成 21 年 1 月、 「地域防災コミュニケーション支援システム」 (図表 5-7)の構築に関する調査検討会(総務省関東総合通信局主催)において提言し た「高出力無線 LAN メッシュネットワーク」です。メッシュ状に組まれたアクセス ポイント(AP)は、自律分散しているので、AP の一部が崩壊・故障しても生きて いる AP 同士が勝手にネットワークを再構築するものです。フレキシブル性に富んで おり災害時の利活用に適しています。当時、池袋駅周辺でフィールド試験を実施し その有用性が実証されました。将来は、まちかど情報ステーションに簡易サーバー を搭載した AP を備えることでローカル情報の受発信が強化されることでしょう。 イ アクセスが集中した場合 ローカル情報が入手できない被災者は、情報を求めて ターミナル駅へ向かう傾向にあります。例えば、池袋駅周辺には 20 万人の群衆で溢 れかえるといわれています。駅周辺は、正に二次災害の危険地帯となるわけですが、 と同時に携帯電話等アクセスが集中する場所になるわけです。一基地局で収容でき る回線数には限界があり発信規制がかかるため通信ができにくい状況が続きます。 そこで、技術検証段階ですが、将来的には、 「誰でも放送局」 (東北大学青木輝勝 准教授)が活用できます。アクセス集中を分散させる仕組みですが、VoD(Video on Demand)を簡易に行うことが可能な分割放送スケジューリング方式です。今後の更 なる技術開発と成果が期待されます。 ウ 電源の確保について 地震の規模にもよりますが、一度商用電源がダウンすると 復旧までに相当時間がかかります(参照:図表2-1)その間、基地局ではバッテ リーや非常用発電機により電源を確保しますが、どれも一時的な対策であるため、 やがては停波してしまいます。代替としての自然エネルギー、大型ゼンマイ、手動 等による電源の確保やバッテリーの長時間化対策が検討されています。 エ 情報弱者への対応 スマートフォン等情報端末は、普及していますが、高齢者の 22 活用は未だ少ないです。本システムを ICT で完結しなかったのもこの理由からです。 まちかど情報ステーションに来れば誰でも情報を共有できます。ICT に強い方が 情報を収集して、店内に予め設置しておくホワイトボードに情報を掲載します。ま た、メモしたポストイットをウィンドウに、時間軸に整理して貼付しておけば、店 舗周辺で何が起きているかを誰もが理解できます。さらには、外国人が入手した情 報を多言語で掲載すれば、外国人の避難行動にも役立ちます。また、情報団が地域 の動きを知るうえでも、情報弱者との仲立ちをするうえでも有益な場となります。 オ 一時滞在施設の確保 帰宅困難者を受け入れるため、行政は、大学や民間施設の指定に尽力しています が、施設に避難した者が余震等により死傷した場合、その責任は施設側にあるため、 一時滞在施設の確保に苦慮しています。最近、「帰宅困難者対策保険」等が民間企業 から発売されましたが、同時に国からの支援策も待ちたいところです。 <「地域防災コミュニケーション支援システム」実地試験の内容> 目的:池袋駅周辺に地域防災コミュニケーション支援システムを構築し、無線 LAN メッ シュネットワーク及び多様なアプリケーションの有効性を検証するために実施。 内容:駅前の混乱状況を周辺地域へ情報提供するため、駅前ビル屋上に IP カメラを、周 辺郵便局に大型ディスプレイを設置して無線 LAN メッシュでつないでライブ中継す るもの。無線 LAN メッシュの再ルート構築実験やモバイルアドホックの中継実験等 を実施した他、アプリケーションを含めトータルな仕組みの有効性を検証した試験。 図表5-7 地域防災コミュニケーション支援システム 23 第6章 提言の具現化 6-1 周知広報活動 地域にとって、本システムが有効に活用できるのかどうかご意見を頂戴するため、 関係各所へ成果報告書を配布し、必要に応じて補足説明を行います。特に普段から防 災・減災に積極的に取り組んでいる自治体や本システムに興味を示していただいた団 体・市民に対し具体的なご相談をさせていただく予定です。 6-2 フィールド試験 ア 目的 本システムを机上の空論で終わらせないため、実フィールドで情報伝達が 円滑にできるのかどうか、または、入手した情報に基づき、市民が確実に避難でき るのかどうかを併せて検証します。その中で新たな課題を抽出し対策を講じ、より 現実的かつ実用性ある仕組みにバージョンアップすることが目的です。試験は、自 治体の他に大学等研究機関、電気通信事業者、市民メディア及び地域メディア等た くさんの方々との協力を得ながら多方面からの意見を伺いつつ実施します。 スケジュール(平成 25 年度中) イ 6 月~ 周知広報活動 成果報告書を配布し、必要に応じ説明に伺います。 7 月~ 試験場所の選定 本システムの趣旨にご賛同いただいた自治体のうち、フィ ールド試験の協働実施に対しても協力的な自治体から選定いたします。 8月 第1回幹事会報告 9 月~ 試験の打合せ フィールド試験を実施する自治体等関係者、分科会委員及び 選定場所の決定及び実施計画の策定 事務局にて具体的な試験内容及びスケジュールを検討します。 26 年 1 月 フィールド試験の開催 26 年 3 月 フィールド試験結果報告 NPO 協議会 10 周年記念イベントにおいて、 フィールド試験の結果について報告します。 ウ システム導入経費 本システムは、極力、既存のネットワークやアプリを利活用 し、なおかつ、情報ボランティアの理解と協力によって成り立つシステムですから 導入に当たっての金銭的負荷を極力押さえることを目標にしております。 なお、フィールド試験におけるサーバー等費用は、TM委員会(ネオポスター産 学協働開発者)のご協力によって実施しますので、自治体からのご支援は、試験場 所(小学校の校庭等)の確保及び人的支援を中心にお願いすることとなります。 6-3 最終報告 本成果報告書は、この1年間の成果を取りまとめたものではありますが、最終報告 ではありません。今後、本書をより多くの方に届けご覧いただき、ご意見を頂戴して ブラッシュアップします。また、前述のとおり実環境での試験を実施し更に現実性と 説得力のある仕組みに仕上げたいと考えています。 このような過程を踏むことによって、中央防災会議、都道府県及び市区町村のい ずれかの団体が主体的に本システムをモデル事業として展開していただきたい、あ 24 るいは、それぞれの地域特性に見合ったシステムへ改善のうえ導入していただきた いと願っております。 6-4 まとめ 予期せぬ大地震による一時被害は、なかなか防ぐことができませんが、我々の英 知と地域力を結集した対応次第では、二次災害を大いに軽減させることができます。 例えば、当協議会では、関東一円 140 の団体・個人が参加されています。首都直 下地震が発生したとしても、比較的被害の少ない地域の会員が大打撃を受けた被災 地の会員に対し、情報連携や人的支援等遠隔地から様々な支援ができるのではない でしょうか。 また、先の東日本大震災では、多くの方がボランティアとして被災地に入りまし た。訳あって被災地へ行けなかった方々の多くは、震災復旧・復興のために、何か お手伝いをしたいという有り難い声もよく聞きました。そのようなニーズに応える ためにも、また、二次災害を軽減させるためにも、情報団による情報流通の仕組み を是非、具現化したいと考えております。 近い将来、必ず来るのであろう首都直下地震に備えて、我々ができる最大限の体 制に基づき、まちぐるみで災害対応に当たる頼もしい姿を各地から見られるよう期 待しながら本書を閉じます。 ─── 関東 ICT 推進 NPO 連絡協議会 平成 24 年度防災調査研究 ─── ≪親 会≫ 関東 ICT 推進 NPO 連絡協議会 幹事会 ≪分科会≫ 座 長 丸山 高弘(NPO 法人地域資料デジタル化研究会 副理事長) 構成員 小保方 貴之(NPO 法人桐生地域情報ネットワーク 理事) 同 長友 眞理子(NPO 法人調布市民放送局 副代表) 同 杉浦 裕樹(NPO 法人横浜コミュニティデザイン・ラボ 代表理事) (順不同) 25 参考資料(用語解説) ≪A~Z≫ AR:拡張現実。人が知覚する現実環境をコンピュータにより拡張する技術、およびコンピュータにより拡張された現実 環境そのものを指す言葉。 英語の Augmented Reality の日本語訳であるため、それを日本語発音した「オーグメンテッド・リアリティ」や、 省略形の AR も用いられる。また、拡張現実感(かくちょうげんじつかん)とも言う。拡張現実はバーチャルリアリテ ィ(VR)の変種であり、その時周囲を取り巻く現実環境に情報を付加・削除・強調・減衰させ、文字通り人間から見た現 実世界を拡張するものを指す。バーチャルリアリティが人工的に構築された現実感と現実を差し替えるのに対し、拡張 現実は現実の一部を改変する技術である。(*1) AT:電波法施行規則(昭和 25 年電波監理委員会規則第 14 号)第 4 条にある無線局の種別ごとに定められた「アマチュ ア無線局」のコード。アマチュア無線局は、目的外通信として非常災害時人命救助に活躍。 GIS:地理情報システム。 (geographic information system(s))。コンピュータ上に地図情報やさまざまな付加情報を持 たせ、作成・保存・利用・管理し、地理情報を参照できるように表示・検索機能をもったシステム。人工衛星、現地踏 査などから得られたデータを、空間、時間の面から分析・編集することができ、科学的調査、土地、施設や道路などの 地理情報の管理、都市計画などに利用される。(*1) J-anpi:大規模災害時に様々な企業・団体が保有する各種安否情報を、まとめて検索・確認できる Web 共同サイト。2012 年 10 月 1 日から提供開始。(*2) P 波:Primary wave(第一波)または Compressional wave(疎密波)という。進行方向に平行に振動する弾性波。固 体・液体・気体を伝わる。速度は岩盤中で 5 - 7 キロメートル/秒、地震発生時最初に到達する地震波で、初期微動を起 こす。(*1) QR コード:1994 年にデンソーの開発部門(現在は分離しデンソーウェーブ)が開発したマトリックス型二次元コード である。なお、QR コードという名称(および単語)はデンソーウェーブの登録商標(第 4075066 号)である。QR は Quick Response に由来し、高速読み取りができるように開発された。当初は自動車部品工場や配送センターなどでの使 用を念頭に開発されたが、現在ではスマートフォンの普及などにより日本に限らず世界的に普及している。(*1) MCA:マルチチャネルアクセス無線(Multi-Channel Access radio system)。複数の無線局が複数の無線チャネルを共 同使用することで電波帯域を有効利用する技術である。なお、チャネル制御が指令局の指令で行われるものと各無線局 が自立的に行うものとがある。(*1) S 波:Secondary wave(第二波)または Shear wave(ねじれ波、たわみ波もしくは剪断波)という。進行方向と直角 に振動する弾性波。固体を伝わる。速度は岩盤中で 3 - 4 キロメートル/秒、P 波に続いて到達し、主要動と呼ばれる大 きな揺れを起こす。(*1) SNS:ソーシャル・ネットワーキング・サービス(social networking service)。社会的ネットワークをインターネット 上で構築するサービスのこと。代表として、日本では mixi、GREE、Mobage、Ameba、世界では Facebook、Myspace、 26 LinkedIn などがある。(*1) ≪あ≫ アドホック・メッシュ無線: 「アドホックネットワーク」は、通信機器が基地局に依存しないで自律分散的にネットワー クを構築するネットワークです。現在、実用に向けてさまざまな 研究が行われています。災害現場で電話の基地局が壊 れて使えない時などの利用が考えられている。 「無線メッシュネットワーク」は、通信機器を持つアクセスポイント同士を網目状に結ぶことで構築される無線バッ クボーンのことです。有線バックボーンと比較すると、配線のコストが削減され、ネットワークの構築・拡大が容易で あるなどの利点を持っている。(*3) ≪か≫ コミュニティ FM:都道府県単位をエリアとする FM 放送局とは対照的に、区市町村単位(又は 2 以上の区市町村)を エリアとする FM 放送局のことをいう。 ≪さ≫ 情報リテラシー: information literacy。情報(information)と識字(literacy)を合わせた言葉で、情報を自己の目 的に適合するように使用できる能力のことである。(*1) スイッチャー: 「切り換え器」の意。ここでは、情報ディレクターが「切り換え器」のように、情報団や一般の情報提供 者から吸い上げた情報を仕分けし、マッチングサーバーや災対本部に登録・提供する役割を担う。 スキル:skill。通常、教養や訓練を通して獲得した能力のことである。(*1) ≪た≫ ツイートデック:TweetDeck。Twitter の公式クライアント・アプリケーションの 1 つである。カラムと呼ばれる「列」 ごとにソーシャルメディアの友達や話題を割り当てて分類することで、混乱を起こさずに一覧表示できる。(*1) トリアージ:Triage。人材・資源の制約の著しい災害医療において、最善の救命効果を得るために、多数の傷病者を重 症度と緊急性によって分別し、治療の優先度を決定すること。(*1) ≪な≫ ネオポスター:Neo Poster。東北大未来科学技術共同研究センター、NPO法人湘南市民メディアネットワーク及び株 式会社デジコンキューブによる産学協働組織TM委員会で開発したスマートフォンアプリ。QR コード等特別なコード を作成する必要がなく、既存のポスター・チラシ・名刺等をスマホで写真撮影するだけで関連情報を配信するシステム。 ≪ま≫ メディアリテラシー: media literacy。情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、 活用する能力のこと。(*1) 出典・引用*1 wikipedia *2 NTT 持株会社ニュースリリース *3 新潟大学 情報通信ネットワーク研究室 27 最 後 に 本報告書は、被災地における初動期の対応について被災者目線で考えたものですが、こ こで提言している「ICT 地域防災情報支援システム」は、何も初動期の情報流通に限って活 用するものではなく、災害対応期、復旧期、復興期のどの場面においても、十分対応でき るシステムとして考えております。 しかし、内容的には、まだまだ未成熟で、更なる精査と実環境での検証が必要です。そ こで、読者の皆さまがお感じになったこと、どんな些細なことでも結構ですので、ご意見・ アドバイスを頂戴したいと存じます。本書が、首都圏の一大事に、少しでもお役立ていた だけるよう、更に努力を重ねて参ります。 本書が少しでも防災・減災の取り組みに役立てば、この上ない喜びです。 最後となりましたが、本書作成に当たり、当協議会会員の皆さまはじめ、大学の先生方、 行政(防災担当)の方、社会福祉協議会の方、市民メディアの方、地域メディアの方、 ジャーナリストの方、ICT 事業者の方業者の方、そして、何よりも東日本大震災の被災地で 活動された多くの皆さまのご理解とご協力を賜りました。この場をお借りして御礼申し上 げます。