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ワイヤレスIPアクセスシステムにおける サービスエリア拡張技術の
WIPAS エリア拡張技術 R&D 屋内配線技術 ワイヤレスIPアクセスシステムにおける サービスエリア拡張技術の開発 NTTアクセスサービスシステム研究所 う え の しゅうた た な か としきよ う す い かずなり や す い よしゆき 上野 衆太 /田中 逸清 /碓井 一成 /安井 由幸 / しんどう よしひこ まるやま ひでゆき 進藤 喜彦 /丸山 秀幸 光と無線の組み合わせで,迅速にブロードバンドアクセスを実現するワイヤレス IPアクセスシステムのさらなる適用性を向上させた,屋内・屋外のサービスエリア 拡張技術について紹介します. WIPASとは ワイヤレスI P アクセスシステム ( WIPAS: Wireless IP Access System) は,「光+無線」により,低コストで迅 速にブロードバンドサービスを提供する, おける光ファイバの引き込みが困難な Terminal)から構成されます.APはIP 集合住宅等へのサービス提供など,多 ネットワークと光ファイバで接続されま 様な環境に応じてサービスを展開してい す. W I P A S の無 線 伝 送 速 度 は最 大 ます. 80,Mbit/s(イーサレイヤの伝送速度は WIPASのサービスイメージを図1に 最大46,Mbit/s)であり,回線の品質 に応じて伝送速度を変更する適応変調 示します. 26,GHz帯 FWA( Fixed Wireless WIPASは,電柱等に設置される基地 機能を有しています.WIPASはこれま Access)システムです(1) .地方におけ 局AP(Access Point)と,ユーザ宅 で集合住宅や地域イントラネットを活用 るディジタルデバイド解消,都市部に に設置される加入者局WT(Wireless した戸建住宅へ適用されてきました.そ AP ニュータウンへの適用 AP WT WT 地域イントラネット 戸建住宅の適用 AP 光ファイバ IPネットワーク 集合住宅への適用 図1 サービスイメージ 32 NTT技術ジャーナル 2005.6 R れに加え,昨年11月からはニュータウン トランス技術により,これまでのサービ 拡張は,公衆無線LANサービスにも適 地域などの戸建住宅への適用も開始さ スエリアの周辺地域にまでカバーエリア 用することができます(図4).LANケー れています. を広げることができます(図2). ブル,光ケーブル等の有線設備のない広 今回の取り組み 今回はWIPASのサービスエリアを拡 張するために,次の技術を開発しました. ① 「光+無線+無線」によるサービ 無線エントランス方式のイメージを いエリアやイベント会場等に対して,あ 図3に示します.主局側には指向性が るいは臨時的な使用に対して,無線によ *1 高いカセグレンアンテナ を用いること る柔軟性に富んだインフラを構築するこ で,システムとしての利得を上げ,最大 とにより,公衆無線LANサービスのエリ 2km程度までの無線中継を低コストか つ迅速に実現し,WIPASのサービスエ スエリア拡張 光+無線によるサービスエリアをさら に広げるために,ワイヤレスアクセス方 *1 リアの拡大を図ることができます. 光+無線+無線によるサービスエリア カセグレンアンテナ:主反射鏡と副反射鏡 との2枚の反射鏡からなる複反射鏡アンテ ナであり,主反射鏡に放物面を,副反射鏡 に双曲面を用いたアンテナ. 式を高度化し,安価かつ迅速にアクセス 回線を構築する光 + 無線 + 無線による サービスエリア拡張技術を開発しました. これにより,光ファイバが未整備である エリアに対しても,ブロードバンドサー ビスの提供をより効率的に実現すること これまでの サービスエリア ができます.市街地から離れた田園等の ルーラル地域や,河川,幹線道路,鉄 道などの条件によって光ファイバが敷設 されていないエリアに対してWIPASを適 用する場合,APまでの光ファイバを延 ばす敷設工事に費用と時間を要すること 「光+無線+無線」 により拡張された サービスエリア があります. このような場 合 に, WIPAS装置を対向させることにより, 光ファイバ 無線エントランス回線 無線エントランス回線を構成することが 図2 「光+無線+無線」による面的展開 できます.光+無線+無線によるサービ スエリアの面的展開では,この無線エン AP AP 光ファイバが敷設されていない エリアにブロードバンドサービ スを提供 主局 従局 光ファイバ WT ∼ 2 km程度 これまでのサービスエリア 拡張されたサービスエリア 図3 「光+無線+無線」によるサービスエリア拡張技術 NTT技術ジャーナル 2005.6 33 & D ホ ッ ト コ ー ナ ー 無線LAN基地局 主局 従局 光ファイバ 公衆無線LANのサービスエリアを 低コストかつ容易に拡張 図4 「光+無線+無線」による公衆無線LANのサービスエリア拡張 アを拡大することができます.またWT を2台対向させることにより,経済的か つ簡易な無線エントランス回線を構成 し,離れた場所にスポット的なサービス 屋内ワイヤレス化により, ユーザ利便性の向上, 宅内工事の超簡易化 光ファイバ エリアを展開することができます. さらに,光+無線によるサービスエリ ア拡張技術を発展させ,将来的には, ワイヤレス 屋内にある情報端末まで無線アクセスを 光ファイバ 行い,家の中で端末を自由に持ち運ぶ ことができるブロードバンドサービスの実 現も目指します.図5に適用イメージを 示します. ② 屋内配線の簡易化によるサービス 図5 屋内ワイヤレス化サービスの適用イメージ エリア拡張 すき間ナビゲータユニットは,エアコ ンダクト等の配管がなく屋内への配線が 困難であった窓や壁面に対して,WTを 容易かつ即応的に設置するためのもので, 今回商用化を実現しました(図6). 試作品では信号線を平行型の線とし 格 *2ケーブルによる構内LAN間の接続 (2) 用品としても商用化されています . ③ 嵩上げポールによるサービスエリ ア拡張 WTが設置されるユーザ宅において, 保できなかったユーザ宅においてもAPか らの見通しを確保できるようになります. 嵩上げポールは,さまざまな設置場所 に対応するため,3タイプの試作を行い ました.それぞれの嵩上げポールの仕様 を表に,外観を図7(a)∼(c)に示します. ていましたが,今回の商用化にあたって, APからの見通し可能な範囲を広げるこ より対線(twisted pair cable)とする とにより,サービスエリアの拡張につな ことで外部からの衝撃に対する強度や, がる嵩上げポールの開発を行っています. るアーム部を伸縮可能な構造としている ノイズを遮断するシールド効果を一層高 これまでのWTをベランダや軒下に設 ことです.材質にはアルミを採用してい めることができました.なお,この屋内 置する施工方法では,建物等による遮 るため軽量であり,さらにアルマイト加 配線技術は,汎用的なカテゴリー5規 蔽のためAPとの見通しを確保できず, 工を施すことで錆や腐食への耐力を向上 サービスの提供が困難な場合がありま しています. *2 34 カテゴリー5規格:米国電子工業会と米国 通信工業会による非シールドより対線の規 格分類.カテゴリー5は100 Mbit/sクラスの データ伝送可能なケーブルのグレード. NTT技術ジャーナル 2005.6 した. 軒下用嵩上げポールの特徴は,支え 金属フェンス用嵩上げポール,および 今回開発した嵩上げポールを用いるこ コンクリートフェンス用嵩上げポールの とで,これまで建物等により見通しを確 特徴は,ポールの上部の厚みを可能な限 R & D ホ ッ ト コ ー ナ ー <配線構造> 加わる衝撃の方向 衝撃を分散 衝撃を分散 1 mm 信号線 電源線 衝撃緩和材 より対線によるシー ルド効果の向上 図6 すき間ナビゲータユニットの設置例 ビスエリアの拡張,屋内までの完全無線 表 嵩上げポールの仕様 ポールの長さ ポール重量 材質 (a) 軒下用 1.2 m 0.9 kg アルミ (b) 金属フェンス用 3.25 m 5kg ステンレス (c) コンクリートフェンス用 3.25 m 5kg ステンレス 化のための開発を進めていく予定です. ■参考文献 (1) 水本・吉江・畠山・杉本・丸山・馬場:“ワ イヤレスIPアクセスシステムにおける適用領 域拡大のための取り組み,”NTT技術ジャー ナル,Vol.16,No.7,pp.64-68,2004. (2) h t t p : / / w w w . n t t - a t . c o . j p / n e w s / 2 0 0 4 / release43.html (後列左から)丸山 秀幸/ 田中 逸清/ 進藤 喜彦 (前列左から)安井 由幸/ 上野 衆太/ (a) 軒下用 (b) 金属フェンス用 (c) コンクリート フェンス用 図7 嵩上げポールの外観 り薄く(1.5,mm)し,ステンレス素材 を使用することで重量,耐久性に配慮 しています. ていく予定です. 今後の予定 今後,嵩上げした状態でのアンテナ方 ディジタルデバイド解消ソリューショ 向調整の実現方法等の検討を進めると ンとして,光+無線,光+無線+無線に ともに,商用化に向けた取り組みを行っ より,多様な環境に応じて,さらなるサー 碓井 一成 無線アクセスの柔軟性を生かしたブロー ドバンドサービスのさらなるエリア拡張を 目指して技術開発に取り組んでいきます. ◆問い合わせ先 NTTアクセスサービスシステム研究所 ワイヤレスアクセスプロジェクト TEL 046-859-3293 FAX 046-859-5624 E-mail [email protected] NTT技術ジャーナル 2005.6 35