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HAS3
「博士学位論文」
表皮ヒアルロン酸合成制御機構の解明
佐用 哲也
論文要旨
表皮ヒアルロン酸合成制御機構の解明
研究分野
生
化
学
紹介教授
野水
基義
学位申請者 佐用
哲也
ヒアルロン酸(HA)は, N-アセチルグルコサミン(NAG)とグルクロン酸(GlcA)の二糖
が交互に結合した高分子多糖で, 哺乳動物の結合組織に広く存在するグリコサミノグ
リカンのひとつである. その分子量は 107Da にも及び, 構成単糖のもつ水和能に加え,
オーバーラップした三次元ネットワークが水分子を束縛することにより, 高い水和体
積を獲得する. HA は水和ゲルとして組織の水分保持を担い, また組織に機械的特性を
賦与する. 皮膚真皮に存在する HA は, 細胞外マトリックスを構築する分子として機
能する一方で, 表皮の HA は重層した表皮細胞の細胞間隙に存在して細胞間スペース
を維持し, 細胞の増殖や分化に寄与する. 皮膚の HA は生体 HA の約 50%を占めるが,
加齢により減少することが知られている. 細胞の増殖・分化といった基本的な細胞機
能に関与する HA の減少は, 皮膚機能の低下に関わると考えられ, HA 代謝制御剤は抗
老化機能性素材として有望である.
皮膚 HA の半減期は 0.5-1.5 日と短く, そのターンオーバーを担う HA 合成系は, 厳密
に制御されていると推測される. HA 合成酵素(HAS)には 3 種のアイソザイムが存在す
ることが知られているものの(HAS1, HAS2, HAS3), ヒト表皮において, いずれのアイ
ソザイムにより HA 合成が調節されているかは不明である.
本申請論文では, 表皮 HA の合成制御機構を明らかにするとともに, 抗老化機能性
素材につながる化合物を探索することを目的とし, 以下の 3 章において正常ヒト表皮
細胞おける HA 合成制御因子の作用機構を詳細に検討した.
第1章
HA 合成酵素遺伝子(HAS)発現変動による HA 合成制御
ヒト表皮細胞の HA 合成を惹起するサイトカインとして IFN-, 逆に抑制するサイト
カインとして TGF-を見出した. それぞれのサイトカイン刺激後の HAS 遺伝子の発現
について検討したところ, HA 合成変動と一致した発現挙動を示したのは, 表皮細胞で
ドミナントに発現する HAS3 mRNA であった(Fig. 1). 表皮ヒアルロン酸合成を促進さ
せるレチノイン酸の刺激でも HAS3 遺伝子の顕著な発現誘導が観察された. これらの
結果から表皮 HA の合成は, 3 種の HAS 遺伝子のうち, 主に HAS3 遺伝子の発現を介し
て制御されると考えられた.
ヒト真皮線維芽細胞において HA 合成を調節する合成酵素遺伝子は, 主に HAS2 であ
ることから, 表皮と真皮では HAS の発現パターンが異なると推測される. 表皮細胞の
HA 合成を抑制した TGF-は, 線維芽細胞
では主に HAS2 mRNA 発現誘導を介して
HA 合成を促進する. TGF-が, 表皮細胞の
a
b
2.4 kb
HAS1
4.9 kb
増殖を抑制し, 逆に線維芽細胞の増殖を促
進するサイトカインであることを考えあ
HAS3
2.0 kb
わせると, TGF-による合成制御は細
胞増殖時にスペースを確保するという HA
の役割を支持する応答であると考えられ
G3PDH
た.
ヒト表皮細胞により合成される HA 分子
量サイズは, サイトカインによる刺激の有
6
0 0.3 1 3
0 1 3 10
IFN-(ng / ml) TGF-(ng / ml)
Fig. 1 The HAS3 transcript level of human
keratinocytes was upregulated by IFN- but
無に関わらず, 高分子量(>1×10 Da)であ
downregulated by TGF- in a dose-dependent
った. したがって, HAS3 により合成される
manner. Human keratinocytes were cultured in
HA の分子量サイズは, 高分子であると考
various concentrations of IFN- (a) or TGF- (b).
えられた.
本研究により, 表皮細胞における HA の合成制御には, 3 種の HAS 遺伝子のうち主に
HAS3 遺伝子の発現が重要な役割を担っていることが明らかになった. 表皮における
速い HA のターンオーバーを勘案すると, 合成機構だけでなく分解機構の解明も必要
である.
第2章
レチノイン酸レセプターを介した HA 合成制御
役割を演ずるが, その前駆体はカロテンやク
リプトキサンチンに代表される食餌性のプロビタ
ミン A カロテノイドである. -カロテンが RA と同
様に, HAS3 mRNA の発現を誘導すること, 加えて
その HA 合成誘導が レチノイン酸レセプター
(RAR)拮抗薬である LE540 により阻害されたこと
により, 表皮細胞におけるプロビタミン A から RA
に至る代謝経路の存在が示された. 一方, 哺乳類
SEAP activity
(arbitrary chemiluminescence units)
レチノイン酸(RA)はビタミン A の活性本体で, 細胞増殖および分化の制御に重要な
8000
**
**
6000
4000
2000
0
0
2
5
10
ではレチノイドに代謝されないルテイン, ゼアキ
Lutein (M)
サンチンおよびアスタキサンチンなどのノンプロ
Fig. 2 Effect of lutein on RAR activation.
ビタミン A カロテノイドにも HAS3 mRNA 発現誘
Significantly different from the control value;
導活性およびその発現挙動と一致する HA 合成の
**P < 0.01 (William’s test).
誘導が観察された. HA 合成に及ぼすルテインの効果は-カロテンと同様, LE540 で抑
制された. ルテインによる刺激後に RARE 依存の転写活性が増大したことから(Fig. 2),
ルテインの代謝物あるいはルテイン自体が RAR のリガンドとして機能していること
が示された. さらに表皮細胞での HA 合成に対するルテインの効果が, レチナール脱
水素酵素(RALDH)の阻害剤であるシトラールにより抑制されたことから, ルテインは
プロビタミン A 同様, 表皮細胞内でアルデヒド化合物に変換され,
続いて酸化反応を
受けて RA 類似体に代謝されることで生理活性を発揮させることが示唆された.
第3章
細胞内 HA 基質プールの変動による HA 合成制御機構
表皮細胞の HA 合成を高める化合物として, N-アセチルグルコサミン(NAG)を見出し
た. 細胞内には複合糖質のリソソーム分解物として NAG が存在する. この NAG は,
NAG キナーゼ(NAGK)により NAG6-リン酸に, 最終的には糖供与体である UDP-NAG
に変換されることで, 糖タンパクや糖脂質の糖付加に再利用される.
表皮細胞で NAGK mRNA の発現を認め, さらに NAG の添加により細胞内 UDP-NAG
作用は, 細胞内基質の増大によるものであることが
示された. 加えて, HA 生合成過程において基質の合
成が律速になっていると考えられた. 表皮細胞に
RA と NAG を同時に作用させることにより, 相乗的
な HA 合成促進効果を認めたことから, HA のもう一
つの糖供与体である UDP-GlcA の細胞内プールは,
HA 合成の律速にはなっていないことが示唆された.
150
UDP-NAG (ng/g DNA)
量が増加したことから(Fig. 3), NAG の HA 産生促進
50
0
10 mM NAG
次に, NAG の細胞内取り込みについても検討した.
NAG の取り込みはグルコーストランスポーター
100
-
+
Keratinocytes
-
Fibroblasts
Fig. 3 Effect of NAG on UDP-NAG pools.
(GLUT)を介するものでなく, 単純拡散により取り込まれると予想し, 細胞内で NAG
へと変換可能な親油性の NAG グリコシド誘導体を合成・評価した. NAG グリコシド誘
導体は NAG に比して低濃度域で作用を示した. この結果は, NAG が単純拡散により細
胞内に取り込まれることを示唆した.
これらの結果から, HA の合成調節が転写レベルだけでなく, 細胞や組織においては
細胞内基質レベルにおいても制御されることが示唆された.
以上, Fig. 4 に示すように, 表皮 HA 代謝に関わる新たな知見について記載した.
Chapter 2: Regulation of HAS3 gene
expression via RAR activation.
Lutein
Provitamin A (Nonprovitamin A)
Chapter 3: Regulation of HA
production by UDP-NAG pool.
NAG << NAG amphiphilic derivatives
simple diffusion
HA
BCO1
Retinal
-NAGase
Aldehydes
RALDH
Retinoic acid
RXR
RAR
RARE
NAG
Carboxylic acids
NAG kinase
(NAGK)
NAG6-P
gene
expression
HAS3 >> HAS1, HAS2
UDP-NAG
UDP-GlcA
Chapter 1: Regulation of HA synthesis
via HAS3 gene expression.
Fig. 4 Regulation of HA synthesis in keratinocyte.
まず, 表皮の転写レベルにおける HA 合成の制御は主に HAS3 mRNA が担うことを
見出した. このことにより, 表皮 HA 合成制御剤開発において, HAS3 mRNA 発現を指
標にした薬剤探索が可能となることが期待される.
次に, RAR 活性化を機序とし, かつ安全性の高い HA 合成制御剤の候補として, プロ
ビタミン A およびシクロヘキセン環とポリエン構造を有するノンプロビタミン A カロ
テノイドを見出した.
最後に, HA 合成促進剤として細胞内基質プールを増大させる NAG を見出し, 転写
レベルによる制御だけではなく, 細胞内基質プールへ作用も HA 合成制御剤開発の重
要なストラテジーになることを示した. 膜透過を考慮した両親媒性 NAG 誘導体の開
発により, 効率的に HA 合成を亢進させることが可能なことも示した.
本研究結果の掲載
1) J. Invest. Dermatol., 118, 43-48 (2002).
2) Biosci. Biotechnol. Biochem., 77, 1282-1286 (2013).
3) Skin Pharmacol. Physiol., 17, 77-83 (2004).
目次
頁
1
諸論
第1章
ヒアルロン酸(HA)合成酵素遺伝子(HAS)発現変動による
ヒアルロン酸合成制御
第1節:序論
4
第2節:実験材料および実験方法
1-2-1
培養器具および試薬
4
1-2-2
細胞培養
4
1-2-3
HA 合成能評価および HA 定量
5
1-2-4
1-2-5
1-2-6
HA 分子量分布の測定
HAS3 cDNA の単離
ノザンブロット解析
5
6
6
1-2-7
統計処理
6
第3節:実験結果
1-3-1
サイトカインの表皮細胞 HA 合成に及ぼす影響
6
1-3-2
IFN-および TGF-の HAS 遺伝子発現に及ぼす影響
9
1-3-3
レチノイン酸の HAS 遺伝子発現に及ぼす影響
第4節:考察
第2章
10
10
レチノイン酸レセプターを介した HA 合成制御
第1節:序論
12
第2節:実験材料および実験方法
2-2-1 培養器具および試薬
12
2-2-2 細胞培養
13
2-2-3
13
RT-PCR 法
2-2-4 HA 定量
14
2-2-5
14
DNA 定量
2-2-6 レポーターアッセイ法
14
2-2-7
統計処理
14
第3節:実験結果
2-3-1
カロテノイドの HAS3 遺伝子発現を介した HA 合成促進作用
14
2-3-2
ルテインによる RAR 活性化
17
2-3-3
ルテインの HA 合成誘導に対するシトラールの効果
18
第4節:考察
第3章
19
細胞内 HA 基質プール変動による HA 合成制御
第1節:序論
21
第2節:実験材料および実験方法
3-2-1 培養器具および試薬
21
3-2-2 両親媒性 NAG 誘導体の合成
21
3-2-3
22
細胞培養
3-2-4 DNA 定量
22
3-2-5
HA 定量
22
3-2-6
HAS 活性測定
22
3-2-7
硫酸化 GAG 合成能評価
23
3-2-8 NAGK cDNA の単離
23
3-2-9 ノザンブロット解析
23
3-2-10 細胞内 UDP-NAG の定量
23
3-2-11 NAG の細胞内取り込み評価
24
3-2-12 統計処理
24
第3節:実験結果
3-3-1 NAG による表皮細胞の HA 合成促進作用
24
3-3-2 NAG の HAS3mRNA 発現に及ぼす影響
25
3-3-3 NAG の HAS 活性に及ぼす影響
26
3-3-4 NAG による細胞内 UDP-NAG プールの増大
26
3-3-5 両親媒性 NAG 誘導体による HA 合成促進作用
28
第4節:考察
30
総括
32
謝辞
34
掲載論文
35
引用文献
36
略語一覧
HA: hyaluronan
HAS: hyaluronan synthase
HABP: hyaluronan binding protein
GAG: glycosaminoglycan
IFN-: interferon-gamma
TGF-: transforming growth factor-beta
RA: all-trans retinoic acid
RAL: all-trans retinal
RAR: retinoic acid receptor
RARE: retinoic acid responsive element
SEAP: secreted alkaline phosphatase
BCO1: -carotene 15, 15′-monooxygenase
RALDH: retinal dehydrogenase
NAG: N-acetylglucosamine
GlcN: glucosamine
GlcA: glucuronic acid
Glc: glucose
UDP-NAG: uridinediphosphate-N-acetylglucosamine
UDP-GlcA: uridine diphosphate glucronic acid
NAGK: N-acetylglucosamine kinase
-NAGase: -N-acetylglucosaminidase
GLUT: glucose transporter
1
諸論
ヒアル ロン 酸 ( HA)は , - N- アセチ ルグ ル
コ サ ミ ン (NAG) と  -D- グ ル ク ロ ン 酸
( Glc A) の二 糖 が 交互 に 結 合し た 高 分子 多
糖 で, 哺乳 動 物 の結 合 組 織に 広 く 存在 す
るグリ コサ ミノグ リカ ン( GAG) のひ とつ
である ( Sc hem e 1). HA の分 子量は 10 7 Da
にも及び , 糖自 体がもつ 水和能に 加え ,
H OH
H
COOH
H O
H O
HO
HO
H
H
OH
H
O
H
H
O
NH
H
COCH3
Scheme 1. Structure of hyaluronan (HA)
オー バ ーラ ッ プし た 三次 元 ネッ ト ワー ク に水 分 子を 束 縛す る こと に より , 高 い 水
和体 積 を 獲得 す る . 生 体内 で は 水和 ゲ ル とし て 存 在し , 組 織 の 水分 維 持 や機 械 特
性に関 わっ ている .
組織の HA 濃 度は , 臍 帯で 最も高 く, 皮膚 およ び硝 子体が これ に続 く. しか しな
がら絶 対量 では皮 膚に 存在 する HA が 圧倒的 に多 く, 全身 の約 50 %を占め る. 1 )
皮
膚は, 乾燥 や紫 外線 などの 外部 刺激 から生 体を 守る 最前 線にあ る. 皮膚 HA は , 組
織の 水 分保 持, 弾 力 性の 維 持だ け でな く, 多様 な 皮膚 生理 に 関わ る と考 え られ る .
例え ば, HA 合 成能 を亢 進さ せ たモ デル マ ウス では 創 傷治 癒が 促 進さ れる こ と
2)
,
3)
他方で HA を 分解除 去す ると 表皮 細胞の 最終 分化 が促進 され るこ と が 報告 され て
おり, HA の細 胞増 殖や 分化 への 密接 な関 係 が示 唆さ れて いる . 申 請者 らは , UVB
照射後 の皮 膚炎症 過程 にお いて , 組 織 HA 量だ けで なく , そ の分子 量サ イズ が大 き
く変動 する こと を示 した .4 ) した がっ て HA は , さ まざ まな 環境 に対 して , 柔軟 に
その量 と分 子サイ ズを 変化 させ , 物 理的・生 理的な 特徴 を発 揮して いる と考 えら れ
る. 皮膚の 組織 中で は, 0 .5- 1.5 日
5, 6 )
とい う半 減期で 新たな HA に置 換さ れて いる こ
とから , そ の活 発な 合成 と分解 の平 衡が , HA の機 能発 現に 重要で ある と考 えら れ
る
7)
. 一 方, 皮膚の HA は加 齢に 伴い減 少す るこ とが報 告さ れて いる .8 -10 ) また , 加
齢に伴 い脱 アセチ ル化 され た HA が 増加 する こと,1 1 ) さ らに 光老化 皮膚 のエ ラス ト
ーシス 部位 で HA が減少 する こと
12 )
が 報告 されて いる . 細 胞の 増殖・分 化と いっ た
基本的 な細 胞機能 に関 与す る HA の 量的お よび 質的 変化は , 皮膚機 能の 低下 に関 わ
ると考 えら れ, HA 代 謝制 御剤は 皮膚 老化 を予 防する 機能 的素 材とし て有 望で ある .
HA 代謝を 担う HA の合成 機構 は, 他の GAG の それ とは大 きく 異な る ( Sc he me 2) .
HA 以外 の GAG は , コ アタ ンパク を有 する プロテ オグ リカ ン分子 とし て生 合成 さ
れる. す なわ ち, リボ ソー ムで 翻訳 され たコ アタ ンパ クが粗 面小 胞体 に移 行し , 次
いで, ゴル ジ複 合体 に組み 込ま れた 多くの 酵素 群に より GAG 鎖 が 伸長 , 修 飾さ れ
た後 に細 胞外 へ分 泌さ れる こと にな る. 一 方, HA 生合 成の 場は 細胞 膜で あり , 合
成に必 要な 酵素は HAS のみ であ る. 膜酵 素であ る HAS は , UDP- N- アセ チル グル コ
サミン (UDP- NAG)と UDP- グル クロ ン酸( UDP- Glc A)の 2 つの 糖ヌク レオ チド を基 質
として , 2 糖の 繰り 返し 配列で ある HA を 細胞 外へ直 接伸 長さ せて いく. 13 )
2
Sulfated GAG
HA
Proteoglycan
Core protein
Elongation of sugar
chains by HAS
HAS
Golgi
Elongation of sugar chains
by glycosyltransferases
Core protein
ER
Proteoglycan
core protein mRNA
HAS
mRNA
Scheme 2. Sugar chain elongation of sulfated GAG and HA
HAS を コ ードす る遺 伝子 (HAS1 , HAS2 , HA S3) は, 199 6 年以 降, ヒト およ びマ ウス
で相次 いで 同定さ れた .14 -18 ) ヒ トの HA S1- 3 はア ミノ 酸レ ベル で互い に 64 .9- 78. 4 %
の高い ホモ ロジー を持 ち, 何れ も 6 つの 膜貫通 ドメ イン と 1 つの膜 結合 ドメ イン か
ら成 る. 近 年, 真 皮線 維芽 細胞 培養 系 にお いて , 細胞 外マ トリ ッ クス( E CM ) 構築 に
重要な サイ トカイ ンの T GF-が, 主に HA S2 遺 伝子発 現誘 導を 介して HA 合 成を 促
進する こと が明ら かに され てい る. 19 ) 従 来, HA は 結合 組織の E CM を構 成す る分 子
と し て 知 ら れ, 皮膚 HA の 研究 対 象 は 主 に 真 皮 で あ っ た. そ の一 方 で , 1988 年
Tamm i ら の免疫 組織 染色 より , 重 層上皮 組織 の表 皮に も HA が存在 する こと が示 さ
れた. 20 ) 表皮 層で は, 基 底細 胞が 増殖 ・分 化を 経て , 脱 核・ 脱顆 粒 ・辺 縁体 形成 に
より バリ ア機 能を 有 する 角層 が形 成 され , 表 皮 層全 体が 1-2 カ 月で ター ン オー バ
ーする こと が知ら れて いる .21 ) 表皮 基底 層, 有棘 層のみ なら ず, 角層 にも HA が 存
在する こと が報 告さ れ,2 2 )
表皮 細胞 自身 が HA を合 成す るこ とが示 され た. 表 皮
層の乾 燥重 量当た りの HA 量は , 真皮の それ の約 2 0 %と少 ない が, 主に 構造 タン パ
クに よ り構 築 され る 真皮 結 合 組織 と 異な り, 細胞 が 密接 に 隣接 す る表 皮 細胞 間 の
HA 濃 度は , 約 2 m g/m l に 達す る.23 ) 細 胞間ス ペー スが 限られ てい る表 皮では , HA
の量 と 質の 両 方が , 細 胞の 生 存お よ び生 理 機 能発 現 に必 要 な水 環 境の 変 化に 関 係
3
すると 考え られ , そ の代謝 を担 う HA 合成 系も , さ らに 厳密 に制御 され る必 要が あ
る. し かし な がら , 表皮 組 織の HA 合成 の 調節 機 構に つい て は未 だ 不明 な点 が 多
い.
本論文 では , 表 皮 HA の合 成制 御機 構を明 らか にす るとと もに , 抗 老化 機能 性素
材を目 指し た HA 合成 制御剤 を開 発す ること を目 的と した . 第 1 章 では , ヒ ト表 皮
細胞 の HA 合 成の 調節 因子 であ るサ イ トカ イン およ びレ チノ イ ドを 用い , 既知 の
HA 合成 酵素 3 種( HAS1, HAS2, HAS)の うち , い ずれ のア イソザ イム を介 して HA
合成が 制御 されて いる かに つい て検討 した . 第 2 章 では , レ チノイ ン酸 の前 駆体 で
あるプ ロビ タミ ン A, さら にレチ ノイ ン酸 に代謝 され ない ノンプ ロビ タミ ン A カ
ロテノ イド 類の HAS 遺伝 子発現 に及 ぼす 効果 と, レチ ノイン 酸レ セプ ター( RARs)
活性化 の関 与につ いて 検討 した . 第 3 章で は, HAS 遺伝 子発 現の変 動を 伴わ ずに 表
皮細胞 の HA 合成 を促進 する 化合 物とし て, N- アセチ ルグ ルコ サミン (NAG) を見 出
し, 細胞内 基質 (UDP- NAG)プー ル変 動に よる HA 合成 制御 機構 につい て検 討し た.
4
第 1章
HA 合 成酵 素遺 伝子 ( HAS)発 現変 動に よる HA 合 成 制御
第 1 節 :序 論
創 傷治 癒 の 過 程 は , 炎 症 , 肉 芽 形 成 , 結 合 織 化の 大 きく 3 つの 過 程 か ら 成 る.
その際 , 真皮 HA は 肉芽形 成時 に増 加し , 細 胞遊 走・増 殖・ 血管 新生・ コラ ーゲン
分解 お よび 再 構築 の ため の 水 和ス ペ ース の 提供 な どに 寄 与す る .2 4 ) 線 維 芽細 胞培
養系で は , IL -1, T NF-, - FGF, P DGF, I GF- 1 およ び T GF-など の炎 症性 サイ トカイ
ンや増 殖因 子が HA の 合成を 惹起 する . 25 -27 ) ヒ ト皮膚 線維 芽細 胞で は, E CM 構築に
重要な 役割 を担う T GF-が, 主に HA S2 m RNA の発 現誘導 を介 して HA の合 成を促
進させ るこ とが示 され た .1 9 ) 一 方 , 表 皮に おいて は , E GF 刺激 後の HA 合 成惹起 に,
Ha s2 m RNA の 発現誘 導を 伴う ことが , ラット 由来 表皮 株化細 胞を 用い た実 験で報
告され たが ,28 ) ヒト 組織 ・細胞 にお ける その制 御機 構は 未だ不 明で ある .
そこで 本研 究で は, ヒト 表皮 におけ る HA 合 成制御 機構 を明 らか にす る目的 で,
ヒト由 来表 皮細胞 に発 現する HAS 遺伝子 を同 定す ると ともに , サイト カイ ン添 加
による HA 合 成変 動と HAS m RNA 発 現変 動の 挙動に つい て検 討した . さらに , 表
皮 HA の合 成を 亢進 するこ とが 知ら れる レチノ イン 酸( RA) 2 9 )の 応答性 につ いて も
検討し た .
第 2 節 :実 験材 料お よび 実験 方法
1- 2- 1
培養 器具お よび 試薬
以下 の試 薬, キッ ト等 は , そ れぞれ 市販 品を 購入 し使用 した .
Nor ma l h um an for e sk in k er atino cyt e s (Kura bo 社 製) , Bo vine p it ur ita ry extr axt ( BPE )
(Kura bo 社 製), M CDB153 me dium (Wak o P ur e Ch em ic a l 社 製), Re com bin ant h uma n
IL-1  T NF IL -8 お よび IL -10 (I nter gen 社製 ),
Re com bin ant h um an I FN- およ び
T GF-1 ( R& D 社 製), a ll- tran s ret ino ic a c id ( Sigma 社製 ), Sup e r scr ipt II ( Gibco BML 社
製 ), Ge ne Amp PCR k it (Pe rk in- Elme r 社 製 ), Hum an gly c er aldeh y de -3- pho sp hat e
dehy dro gen a se ( G3PDH) c DNA ( Clonte ch 社 製) , p SPT 18 ( Ro ch e 社 製), Dix igen in ( DI G)
RNA la belin g k it,
DI G n ucle ic ac id det er ction kit お よ び
a inti-DI G alka lin e
pho sph ata se co njugat e ( Ro ch e 社 製) , Po sit iv ely ch ar ge d ny lo n me m br an e ( Ro ch e 社 製) ,
RNa id kit ( Bio101 社製 ),
Stre ptomyc e s h ya lu ro ly tic u s 由 来 hy a luro nida se ( Se ika gak u
社製) , D-[1 ,6- 3 H(N)] gluco sam ine hy dr och lo r ide (62 Ci/mmo l) (NE N Re sea rch Pr o duct s
社製) , Se pah a dex G- 50 お よび Se ph aro se CL-2 B (Ph arm a cia 社 製) ,
社製) ,
1- 2- 2
Ch uga i Hya luron an p late ( Ch uga i Dia gno st ic s Sc ien ce 社製) .
細胞 培養
DE -52 (Wh atma n
5
正常 ヒト表 皮細 胞を , 5 m g/l in sulin , 1 80 g/l hy droc ort ison e, 14. 1 m g/l
O-ph o spho ry leth ano lam in e, 6.1 m g/l 2- am ino ethan ol, 100 n g/l E GFお よび0 .4 %
(vo l/vo l) BP Eを 含有し たM CDB1 53培 地(0 .1 mM Ca 2+ ) を 用い て24- we ll p lat eに播
種し, コン フル エン トの状 態に 至る まで培 養し た. 上記 培地 から E GFお よび BP E
を除い た培 地を用 いて 24 h 培養 した 後, サイ トカイ ンを 添加 した . サ イト カイン
存在下 でさ らに6 から2 4h培 養し た. サイト カイ ン添 加後6 h培 養し た細 胞から
T otal RNAを 抽出し た. 一方 , 18 h 培養 した 細胞の 培養 上清 を採取 し、 その 上清 を
用いて HAの評 価を 実施 した . さ らに all-tran sRAにつ いて は, 添加2 4 h 後のtot al
RNAおよ び培 養上清 を試 験に 供した .
角化 不溶 性膜の 評価 は, Sh ima da らの 方法 30 ) に従 った . 0 .25 %トリ プシ ンで 処理
した細 胞を1 .2 mM Ca Cl2 およ び20  M Ca lcium io noph or e含有 培地 で懸 濁した . こ
の懸濁 を37 ℃にて 2 h イン キュ ベート した 後, 2 % SDS含 有20 m M dith iothr e itol水
溶液中 で100 ℃ , 5 m in処 理し た. 角化 不溶 性膜形 成で , SD S耐性 とな った 細胞数
を血球 計算 盤を用 いて 計測 した .
ヒト 皮膚 線維芽 細胞 Detro it 551 (AT CC CCL100 )は , 10 % FBSを 含有 した ME M培
地を用 いて コンフ ルエ ント の状 態に至 るま で培 養した 後, Po ly( A) + RNAを 抽出し
た.
1- 2- 3
HA 合 成 能評 価およ び HA 定 量
I FN- , T GF- I L-1 , T NF- , I L-8 , I L-1 0 とと もに [ 3 H] gluco sam ine (1 0 Ci/ml) を
表皮細 胞培 養系に 添加 し , 1 8 h 培養 した . HA 合成 能は , 培 養上 清 の hy aluron ida se
感受 性画 分へ の 取り 込み 量を 評 価し た.3 1 ) 培養 上清 を h ya luron ida se (1 .5 T RU/m l)
で消化 した 後, Se pha dex G- 50 カ ラム (1. 5 ×5 c m)に アプ ライ し, 分取 した v oid 画 分
の放射 活性 を測定 した . hy a lur on ida se 未 処理 および 処理 サン プルの 放射 活性 差を 算
出し , HA への 取り 込み 量とし た . HA 産生 量は , ヒ アル ロン 酸結合 タン パク を利 用
した Ch uga i hy aluron an p lat e を 用い , プ ロト コール に従 い評 価した 。
1- 2- 4
HA 分 子 量分 布の測 定
プロ ナー ゼ処理 (30 g/m l)した 培養 上清 を DE- 52 イ オン 交換 カラム (1 .0 ×1 2
cm) に供 し , 10 mM T ris- HCl ( pH 8.4 )に より 平衡化 した . そ の後 , Na Cl のリ ニア グ
ラジェ ント (0-0 .6 M)に より 溶出 し, HA 画 分を 分取し た. HA 画 分 を Seph ar o se CL-2 B
ゲルろ 過カ ラム (1. 0×55 c m)に 供し , 1. 0M Na Cl 溶液 により 溶出 させ た. 2 .5m l/フ ラ
クショ ンで 分取し , 各画分 の放 射活 性を測 定し た.
6
1- 2- 5
HAS3 cDNA の 単 離
ヒ ト HAS3 遺伝 子 cDNA は ,
RT-P CR およ び sec on d P CR によ り単 離した . まず ,
ヒ ト 表 皮 細 胞 か ら 抽 出 し た Total RNA を 用 い , m RNA の シ ー ケ ン ス ( Gen Bank
ac ce ssio n n um ber AF232 772) を元 に, 下記 のプ ライマ ーを 設計 し, RT-P CR を 行っ た.
Hum an HAS3 sen se pr im er 5’ - GGAAAGCT T GGCAT GT ACCGCAACAG- 3’ ; Hum an
HAS 3 ant isen se pr im er 5’ -AGAGGAGGGAGTAGAGGGAC -3 ’ (30 cyc le) . 次 に, 得ら
れた RT-PCR 産 物を アガ ロー ス電気 泳動 に供 し, ゲル から回 収し たサ イズフ ラク
ション を鋳 型とし て, se con d P CR を下 記の pr im er を 用い て行っ た. Huma n HAS3
sen se pr im er 5’ - GGAAAGCT T GGCAT GGACC GCAACAG-3’ ; Hum an HAS 3 ant ise n se
prime r 5’ -AGGGAAT T CGGAAGCAGGCGT AGGT G- 3’ (30 cy cle , 下 線部は HindI II お
よび Eco RI 制限 酵素 サイト ).
得 られ た P CR 産 物を アガロ ース ゲル 電気 泳動の 後,
ゲルか ら切 りし精 製し た. 精製 した c DNA を Hin dII I/E coR I で 消化し , プラス ミド
ベク ター (p SPT 18) HindI II /E co RI サイ トに 組み 込み , シー ケシ ング によ り, 目的
とする HAS3 c DNA が得 られた こと を確 認し た. DI G 標 識した ant ise n se /sen se RNA
プロー ブの 調製は , DI G RNA la be lin g kit プロ トコー ルに 従い 実施 した.
1- 2- 6
ノザ ンブロ ット 解析
細胞よ り抽 出し た Tota l RNA を 0. 8 % fo rm alde hy de/a garo se ゲルを 用い た電 気泳 動
によ り 分離 し , ナイ ロ ンメ ン ブレ ン に転 写 し た. ハ イブ リ ダ イゼ ー ショ ン は DI G
Nuc le ic Ac id Detect ion Kit のプ ロト コール に従 い実 施し , 化 学発 光法 により 検出 し
た.
1- 2- 7
統計 処理
統計解 析は SAS シ ステ ムによ り実 施し た. Dun nett's m ultiple comp ar ison te st
でコン トロ ールと の有 意性 を解 析し, 用量 依存 性の 評価 には Willia m’s te st を
用いた . p 値 0 .05 未満 を統 計的に 有意 とし た.
第 3 節 :実 験結 果
1- 3- 1
サ イ トカイ ンの 表皮 細胞 HA 合 成 に及 ぼす 影響
3
[ H] gluco sam in e の HA へ の取り 込み 活性 を HA d e no vo 合成 能の指 標と し, I FN- ,
T GF- , IL -1, T NF- , I L-8 およ び I L-1 0 の表 皮細 胞 HA 合成 に及ぼ す影 響に つい て
検討し た. その 結果 , I FN- によ り HA の 合成 が惹起 され , T GF-添 加に より 合成 能
の低下 が認 められ た (Fig. 1 -1) . 評 価に 供した 他の サイ トカ イン類 は HA 合 成に 影
響を及 ぼさ なかっ た .
7
8
Fig. 1-1 Ef fect of c ytokeines on hyalu ron an
*
3H
dpm × 10-5 /w ell
synth esis
6
in
c ultu red
human
ke ratinocytes.
Conflurent human kera tinocytes we re incubated in the
absence or presenc e of 10 ng/ml I L-1, TNF- , IL-8,
4
IL-10, IFN-, or TGF- with [3H]glucosamine. The
incorpora tion of [ 3H]glucosa mine into hyalurona n
during 18 h inc ubation period was determined. Eac h
2
*
0
C o I L TN IL
IL
I
T
-1 0 FN-  GFn tr - 1 F- -8
ol


column represents the mea n± SD of 4 separa te
exper ime nts. *Significantly different from the control
va lue; p < 0.01.
さらに , I FN- お よび T GF-の作 用に つい て用 量に対 する 応答 性を 検討 した とこ
ろ, I FN-は 添加 1-10 n g/m l ま で用 量依 存的に HA 合成を 促進 した . 一方で , T GF-
は添加 0.3 n g/m l 以 上で HA 合 成を 抑制 し, 1.0 n g/m l 以 上の 添加濃 度で は , そ の作 用
が飽和 した (Fig. 1 -2) . 両サイ トカ イン 添加に より 培養 上清 中に蓄 積さ れる HA の 絶
対量を 定量 し (Ta ble 1 -1) , IFN- お よび T GF-が実 際に HA 産生量 を変 動さ せて い
るこ とを 確認 した . また , 本培 養条 件下 にお い て I FN- と T GF- は 細 胞数 およ び
角化不 溶性 膜形成 に影 響を 及ぼ さず (Ta ble 1- 2) , こ れら のサ イトカ イン の HA に 及
ぼす効 果は , 増殖お よび 分化 に依 存した 現象 では ないこ とが 示さ れた .
a
b
Fig. 1-2 The hyaluronan synthesis of human keratinocytes was upregulated by IFN - but dow n
regulated by TGF- in a dose dependent manner. Conflurent human keratinocytes were incubated
with fresh medium for 24 h followed by cultivating with [ 3H]glucosamine and various concentrations of
(a) IFN- (1-30 ng/ml) or (b) TG F- (0.3-10 ng/ml) for 18 h. The incorporation of [3 H]glucosamine into
hyaluronan was determined. Each column represents the mean±SD of 4 separate experiments.
*Significantly different from the co ntrol value; p < 0.01.
8
Table 1-1. Effect of IFN-and TGF- on hyaluronan production
Treatment
Concentration
(ng/ml)
Hyaluronan productiona
(ng/ml)
Control
0
126±9
IFN-
1
185±34*
473±14 *
64±5 *
10
1
10
TGF-
aK eratinocytes
64±4 *
were grown in the same condition as for F ig. 1-2. Hyaluronan content was measured as
described in M aterials and Methods. The data represent the mean±SD of 4 separate experiments.
*Significantly different from the control value; p < 0.01.
Table 1-2. Effect of IFN-and TGF- on total cell and cornified cell number
Treatment
Control
Concentration
(ng/ml)
Cornified cell number a
(×10- 5 cells/well)
4.86±0.34
4.58±0.46
4.56±0.57
4.48±0.71
4.38±0.66
1.33±0.25
1.56±0.18
1.18±0.18
1.32±0.11
1.30±0.21
0
IFN-
1
10
TGF-
1
10
aKeratinocyte s
Total cell number
(×10-5 cells/well)
were grown in the sam e conditions a s for Fig. 1-2. The number of cornified cells
forme d in response to calcium ionophore we re estimated as described in Materials and Methods.
The results are the means of 4 wells±SD.
次に , IFN- お よび T GF-が, 産生 され る HA の分 子量 に及 ぼす効 果に つい て検 討
した . 培 養上 清から 精製 した HA を Se ph aro se CL- 2B ゲ ルろ 過カ ラム に供し , そ
れから 得ら れたク ロマ トグ ラム を比較 した (Fig. 1-3 ). サイ トカイ ン刺 激お よび
Fig. 1-3 H uman k eratin oc yte s synthesized h ighmolec ular mass hyaluronan und er basal or
cytokine-stimulated conditions. Conflurent huma n
keratinocyte s we re incubated with [3 H] glucosam ine
only (open c ircles), [ 3H]glucosamine and 10 ng/m l
IFN-c lose d triangles) or 10 ng/ml TGF - (close d
circ les) for 18 h. Hyalurona n in media fra ction wa s
pur ified using DE-52 ion-exchange chr om atography
and chromatographed using a S ephar ose CL-2B
colum n
9
無刺激 のい ずれの 場合 も産 生さ れた HA は主 に vo id 画分 に溶 出し た. つま りそ れ
らの分 子量は 1×10 6 Da より も大き いこ とを 示し ており , I FN- およ び T GF-は , い
ずれも 高分 子 HA の産 生を 誘導す るこ とが わかっ た .
1- 3- 2
IFN- お よび TG F- の HAS 遺 伝 子 発 現に及 ぼす 影響
表皮 細胞の HA 合 成が これ まで報 告さ れて いる HAS ファ ミリー のい ずれ によ り
調節さ れて いる かを 調べ るた め, IFN- お よび T GF-で刺 激し た表 皮細 胞を 用い ノ
ザンブ ロッ ト解析 を実 施し た HAS3 m RNA には約 4.9 k b の主 な転 写産 物と約 2 .0 k b
の異 なる サイ ズの 転 写産 物が 存在 した . IFN- の 刺激 に より 両シ グナ ルの 強 度が 顕
著に上 昇し た ( Fig. 1-4 a) . 一 方, T GF-の添 加し た用量 に応 じて HAS3 の転 写レ ベ
ルは減 少し た( Fig. 1-4 b). この HAS 3 m RNA の顕著 な発 現変 動に 対し, 2.4 k b の HAS 1
mRNA は T GF-刺激 後に わずか に発 現量 が上昇 する もの の( Fig. 1 -4 b) , I FN- 添加 に
よる発 現変 動は認 めら れな かっ た( Fig. 1 -4 a). HA S2 m RNA は, 培養 ヒト 皮膚 線維 芽
細胞 で は 高い 発 現レ ベ ル にあ る こと を す でに 確 認し て い るが ,19 ) 表 皮 細 胞か ら 抽
出した Tot al RNA を用 いた 本検討 にお いて は, サイ トカイ ン刺 激, 無刺 激に 関わ ら
ず発現 を検 出する こと がで きな かった . し かし なが ら, Po ly (A) + RNA を用 いた解 析
で, 痕跡量 の HAS 2 シグ ナル が検 出さ れたこ とか ら( Fig. 1- 4c ), 表皮 細胞 は皮膚
a
c
b
HAS1
2.4 kb
4.9 kb
HAS2
4.8 kb
3.2 kb
HAS3
2.0 kb
G3PDH
0
1
3
10
IFN-(ng / ml)
Fig. 1-4
0
0.3
1
G3PDH
Ke
Fi b
rat
rob
l as in oc
yt e
ts
s
3
TGF-(ng / ml)
The HAS3 transcript level of human keratinocytes was upregulated by IFN- but
downregulated by TGF- in a dose-dependent manner. H uman keratinocytes were cultured in
various concentrations of IFN-(0-10 ng/ml) (a) or TGF- (0.3-3 ng/ml) (b) for 6 h and total RN A was
extracted. Equal amount of samples (5 g/lane) were hybridized with HAS1 and HAS3 probes. (c)
Poly(A) + RNA extracted from confluent cells was used for northern blot analysis. Equal amounts of
samples (2 g/lane) from fibroblasts and keratinocytes were hybridized with HAS2 probe. Blots were
stripped and rehybridized with a G3PDH probe to control for variation in loading. Similar results were
obtained in two independent experiments.
線維芽 細胞 に比し て極 めて 低レ ベルで はあ るも のの, HAS2 m RNA を発 現し てい る
10
ことが わか った .
以上 の結 果から , I FN- およ び T GF-の 刺激に よる 表皮 細胞の HA 合成 変動は , 主
に HAS3 m RNA の発 現変動 を介 して いる と考え られ た.
1- 3- 3
レ チ ノイン 酸 の HAS 遺 伝 子 発現 に及 ぼす 影響
表皮 HA 合 成を 惹起 する こと がすで に報 告さ れて いる レチ ノイ ン酸 ( RA) 29 ) を用
いて, RA が培 養表皮 細胞 の HA 合成 と HAS 遺伝子 発現 に及 ぼす効 果に つい て検 討
した. RA は, HAS3 m RNA の発 現を強 力に 誘導 する ととも に, HA 合 成を 顕著 に亢 進
さ せ た( Fig. 1 -5) . I FN- に よ る 応 答 と 同様 , HAS1 m RNA に 顕 著 な 誘導 を 認 め ず ,
HAS 2 m RNA は 本条件 では 検出 でき なかっ た.
a
b
HA content (ng/well)
500
*
400
*
*
HAS3
300
200
100
G3PDH
0
0
0.1
0.5
1
CTRL
tRA
all-trans RA (M)
Fig. 1-5 T he HA S3 transcript level of human ker atinocytes was u pregulated by all-trans RA. (a)
Huma n ker atinocyte s wer e cultured in various conce ntrations of a ll-trans RA (0-1.0 M ) for 24 h and
hyaluronan produc tion was me asured as described in Materials and Methods. The data represent the
mean±S D of three sepa rate experim ents. *Significa ntly differe nt from the contr ol value; p < 0.01.
(b) Ker atinocytes were inc ubeted for 24 h in the pr ese nce of all-trans R A at a concentration of 1.0 M.
Total RNA was extracted and subjectied to northern blot as describe d in Materials and Methods. Similar
results wer e obtaine d in two inde pendent experiments.
第 4 節 :考 察
HAS に は 3 種 のア イソ ザイム が存 在す る ( HAS1, HAS2 , HAS3 ). 本研 究では , ヒ
ト表皮 細胞の HA 合成 を惹 起する サイ トカ インと して I FN- , 逆に 抑制 する サイ ト
カイン とし て T GF-を 見出 した . こ れら サイ トカ インに よる HA 合 成挙 動と 一致 し
た発現 挙動 を示 す HAS 遺 伝子 が HAS3 m RNA で ある ことも 明ら かに した . さ らに ,
サイト カイ ン以 外の 表 皮 HA 合成 促進 因子 とし て, RA に つい て検 討し たと ころ ,
RA は , IFN- と 同様 顕 著に HA S3 m RNA 発現量 を増 加さ せるこ とを 見出 した .
真 皮線 維芽 細胞 でド ミナ ン トに 発現 し, か つ HA 合 成を 主に 調節 する 合 成酵 素
11
遺伝 子が HA S2 であ る
19 )
のに 対し , 表皮 細胞 で主 に発 現し てい る遺 伝子 は HAS 3
mRNA で あった . このこ とか ら, 皮膚 組織 の表 皮と真 皮で は, HAS の発 現様 式が 異
なると 考え られた . 線維芽 細胞 で HAS2 m RNA 発現を 誘導 する T GF-は , 表 皮細 胞
では HAS 3 m RNA 発 現を 抑制し , HA 合 成能 を低 下させ た. 真皮 にお ける T GF-は ,
創傷 治 癒時 の 真皮 マ トリ ッ クス 再 構築 に 中心 的 な役 割 を担 い , 線 維芽 細 胞の 増 殖
を促進 する . 32 , 33 ) 一方 , 表皮 では , 基 底層 から 有棘層 にか けて T GF-が 恒常 的に 発
現し て お り, 3 4,
35)
表 皮 細 胞増 殖 に対 し , 抑 制 的に 働 く .3 6 ) 同 一 のサ イ ト カイ ン が
表皮と 真皮 で逆 の HA 合成 制御 を担 うこ とは , 応答 性の 異な るア イソ ザイ ムの 存
在を 示唆 する もの であ る . ま た , そ れ ぞれ の細 胞に 対す る T GF- の異 なる の 合
成制 御は  組織 の再 構築 , ある いは 細胞 増殖 の際 の水 和ス ペー スの 確保 など の HA
の複雑 な役 割を担 う応 答性 と考 えられ る.
I FN-は , 活性化 T 細胞 から放 出さ れる 代表的 なサ イト カイン であ り , そ れ自 体
は表 皮細 胞の 増 殖を 抑制 す る. 3 7 ) そ の 一方 で細 胞 増殖 を促 進す る T GF-の誘 導 等
を介 し て     表 皮 過 増殖 を 伴う さ まざ ま な 病変 に も関 与 す る. 急性 湿 疹に お け
る病理学的特徴の表皮海綿状浮腫の形成に関与するサイトカインの一つとして
IFN- が知 られ てお り, 急性 湿疹 の病 変部に おい て HAS 3 m RNA の 顕著 な発 現上 昇
と E-カ ドヘ リン の減少 が示 され た.4 0 ) 海 綿状 浮腫で の HA の 病態生 理的 な役 割は ,
表皮 細 胞間 ス ペー ス を広 げ る こと で 細胞 間 接着 を 減弱 さ せる こ とで あ る. し た が
って海 綿状 組織に おけ る HA 量 の増 加は, 有 害化合 物の 濃度 を低下 させ るた めの 生
体適応 過程 である と推 察さ れる .
3 種 ある HAS ア イ ソザイ ムに よる 生成 HA の明 確な 違い は明ら かに され てい な
い. それぞ れの HAS 強 制発現 系で , 合 成酵 素の 比活 性は HAS3 >HAS2 >HAS1 の順 で
HAS3 が 最も 高い 活性を 発揮 する が, HAS1 と HAS2 は平 均分 子量 ~2 ×10 6 Da の高 分
子量の HA を 合成 する のに 対し , HAS3 は 2 ×1 0 5 - 2 ×10 6 Da の 比較的 低分 子を 合成 す
る
41 )
こ とが報 告さ れて いる. 一 方, 本研 究では ヒト 表皮 細胞に より 合成 される HA
分子量 サイ ズは , サ イトカ イン によ る刺激 の有 無に 関わ らず, 高 分子量 ( >1 ×10 6 )
であっ た. した がっ て上記 の報 告と は異な り, 表皮 細胞 培養 系に おいて は HAS3 に
より合 成さ れる HA も高分 子量 のも のとな るこ とが 示され た. 無細 胞系 と細 胞培 養
系よる 検討 結果の 相違 と考 える と, 分泌さ れる HA の 分子 量サイ ズの 調節 は, HAS
以外の アク セサリ ータ ンパ クが 担って いる 可能 性も考 えら れた .
本研 究で は, 3 種の HA S 遺伝子 の中 で主 に HAS 3 遺 伝子 の発現 が, 表皮 細胞 の HA
合成の 調節 に重要 な役 割を 担っ ている こと を示 した.
12
第 2章
レ チノ イン 酸レ セプ ター を介 した HA 合 成 制御
第 1 節 :序 論
第 1 章 にお いて , RA は, HAS3 遺伝 子発 現を誘 導し , 表 皮細 胞の HA 合 成を促 進
させる こと を示し た. RA は ビタ ミン A の 活性 体で あり , 細 胞の分 化増 殖の 制御 な
ど重要 な生 理活 性を 有す る. さら に尋 常性 乾癬 , 一部 角化性 疾患 , 尋常 性座 瘡お よ
び悪性 腫瘍 の薬物 治療 にも 用い られる . 美 容面 でも in v iv o お よび iv v itro 両 面か ら
多く の 研究 が なさ れ , 欧米 で はシ ワ 等の 光 障 害皮 膚 の改 善 剤と し て認 可 され て い
る
42)
. しかし なが ら,
RA は その 効果だ けで なく , 副 作用 として 皮膚 刺激 , 落屑 性
紅斑お よび 掻痒 等を 引き 起こ す. T a da k i ら は, RA がシ ワに改 善効 果が ある 一方 ,
特に 日本 人皮 膚 に対 する 刺 激性 が高 いこ と を指 摘し てい る. 43) こ のこ とか ら, RA
にかわ る安 全性が 高く , か つ有 効な 改善剤 が望 まれ てい る.
RA の 前駆 体は, カロ テンお よび ク リプ トキサ ンチ ンに 代表さ れる 食餌 性の
プロビ タミ ン A カロ テノ イドで ある . プ ロビ タミ ン A は小 腸上皮 細胞 に吸 収さ れ
た後 , カ ロテ ン- 15,1 5’ -モ ノオ キシ ゲナ ー ゼ( BCO1) によ り 中央 開裂 して レ チナ ー
ルに変 換, さら にレ チナー ルデ ヒド ロゲナ ーゼ ( RAL DHs)によ り酸 化さ れ, RA を 生
成する .44 ) a ll- tran s RA は, 核内 レセ プタ ーで あるレ チノ イン 酸レ セプ ター( RARs)
と結合 し, 9- cis RA レセ プタ ーの レチノ イン 酸 X レセプ ター ( RXR S) とヘ テロ ダイ マ
ーを形 成し て DNA のレ チノ イン 酸応答 配列 ( RARE) に結 合し てそ の下 流の 遺伝 子
発現を 制御 する . 近 年, HAS2 遺伝 子は RAR シグナ ルの 直接 のター ゲッ ト遺 伝子 で
あるこ とが 報告さ れた .45 ) しか し一 方で , RA の HA 合 成促 進作 用に, extra ce llula r
sign al-re gulate d kina se 1/2 (E RK1 /2) 活性 化を 介した 二次 的な 応答が 関与 する こと が
示唆さ れて いる .46 )
本研究 では , 経 口摂 取によ り RA へ変換 され るプ ロビタ ミ ン A カロ テノ イド が ,
表皮細 胞の RAR シグナ ルを 介して HA 合成 を誘導 する か否 かにつ いて 検討 した .
さらに 哺乳 類では レチ ノイ ドへ 変換さ れな いノ ンプロ ビタ ミン A カ ロテ ノイド
の RAR 活性 化を 介し た HA 代 謝に 及ぼ す効果 につ いて も検 討した .
第 2 節 :実験 材料 およ び実 験方 法
2- 2-1
実 験器 具お よび 試薬
LE54 0 お よ び Am80 (Wako P ure Chem ica l 社 製 ) , - cry ptoxa nthin, lut ein,
ze ax anth in, a sta xanth in , ly cop ene , - iono ne , - iono ne お よび c itr a l ( Extr a synth e se
社製) , phyto ene ( Car oten at ur e 社 製) , a ll- tran s r etin oic a cid, a ll- tran s r et ina l およ
び-c arot en e ( Sigma 社 製). Ch 55(To cr is Bio sc ienc e 社製) , Hya luron an bin din g
prote in ( HABP ) ( Se ik a ga ku 社 製 ) , EZ- L ink ma le im ide act iv ate d hor ser a dish
pero xida se k it (P ie rc e 社 製 ), 3,3 ',5,5 '-tetr am ethy lbe nz idin e (T M B) substr ate
47 )
13
so lut ion (Mo ss 社製 ), T RI zo l r e a ge nt (In vit ro gen 社 製) , T ran scr iptor Fir st Str an d
cDNA Synth e sis k it ( Ro she ), p RARE -TA- SE AP お よび p SE AP2 - ba sic v ecto r お
よび E sc Ape SE AP c hem ilumine sce nc e dete ct ion kit ( Clont ec h 社製 ), Fugen e 6
tranf e ctio n r e a ge nt ( Ro she ).
その他 の試 薬につ いて は, 第 1 章で 記載し たも のを 用い た.
2- 2- 2
細胞 培養
ヒト表皮 細胞 は第 1 章で記 載し た方 法に従 い培 養し た. 24- we ll プレ ート およ び
12- we ll プ レー トに播 種し た細 胞がコ ンフ ルエ ント に達し た後 , 0. 04 %(v /v ) BPE を
含有し , hy dro cort ison e お よび E GF を除去 した 培地 に変換 し, 評価 化合 物を 添加 し
た. HA 産 生量 の評価 は 24 - we ll プ レート の培 養上 清を用 い, 細胞 画分 は RT-P CR に
よる評 価に 用いた . 12- we ll プレー トの 細胞 は, レポ ーター アッ セイ に用 いた.
2- 2-3
RT- PCR 法
表皮 細胞か ら T RIz o l 試薬 によ り Tota l RNA を 抽出し , 逆転写 反応 は T ran scr ipto r
Fir st Str an d cDNA Synth e sis k it プロト コー ルに 従い実 施し た. HAS 3, G3PDH, BCO1 ,
RAL DH1, RALDH2 およ び RALDH3 m RNA 検出 に用 いる P CR プライ マー セッ トは ,
prime r 3 を利 用し , エ キソ ンジャ ンク ショ ンに設 計し た.
HAS 3 sen se : 5’ - CT GCACCT GCT CAT T CAGAG- 3’ ,
HAS 3 anti- se n se : 5’- GAGT CGCACACCT GGAT GT A-3 ’,
G3PDH sen se : 5 ’- ACCACAGT CCAT GCCAT CAC-3 ’,
G3PDH ant i- sen se: 5’ -T CCACCACCCT GT T GCT GTA- 3’,
BCO1 sen se : 5 ’- ACAGAGAT GT GAAGGAGGGAAG- 3’ ,
BCO1 ant i- sen se: 5’ -T CCAAACT CAGACACCACAAT C-3 ’,
RAL DH1 sen se: 5’ -CTCTGCCAGG TAGAAGAAGGAG-3 ’,
RAL DH1 ant i- se n se : 5’ - GT GGAGA GCAGT GAGAGGAGT T-3 ’
RAL DH2 sen se: 5 ’- AGAACT CAGAGAGT GGGAGAGT GT-3 ’
RAL DH2 ant i- se n se : 5’ -AT GTAGAGT GCACT GAGT GGT GT T-3’
RAL DH3 sen se: 5 ’- GGA GCAGGT CTACT CT GAGT T T GT-3 ’
RAL DH3 ant i- se n se : 5’ -AAGCGTAT T CACCTAGT T CT CT GC-3 ’
PCR サ イ ク ル お よ び 増 幅 c DNA プ ロ ダ ク ト サ イ ズ は , HA S3 : 25c yc le s, 48 8 bp ;
G3PDH:22 cy cle s, 4 52 bp. BCO1 : 22 cy cle s, 44 1 bp ; RALDH1 : 22 cyc le s, 48 6 bp ;
RAL DH2: 22 cyc le s, 526 bp; RALDH3 : 22 cy c le s, 512 bp. PCR に より 得られ た cDNA を
ethidium brom ide 含有 2 % ア ガロ ース ゲルを 用い た電 気泳動 によ り分 離し た.
14
2- 2- 4
HA 定 量
培養 上 清 HA の定 量は , hy a luro nan bin din g prote in ( HABP )を用 い た Rilla ら 4 8 )の サ
ンドイ ッチ アッセ イ法 に従 った . 96 we ll プレ ート に HABP をコ ーテ ィン グし, 標 準
サ ンプ ル お よ び評 価 サ ン プ ルを ア プ ラ イし た . 室 温 にて 2 h 静 置 の 後, EZ -L in k
ma le im ide act iv ate d hor ser a dish p er ox ida se kit を用 いて ペル オキシ ダー ゼ標 識し た
HABP ( HRP- HABP)を 反応 させ, サ ンドイ ッチ を形 成させ た. 次に , HRP の基 質で あ
る 3,3 ',5, 5'-tetr am ethy lbe nz idin e (T M B) substr ate so lution を 添加 し, 450 n m の 吸光 度
を測定 した . サ ンプ ル中 の HA 濃度 は, 標準 サンプ ルに より 作成し た検 量線 を用 い
て算出 した .
2- 2- 5
DNA 定 量
DNA 量の 定量 は, John son -Wint ら
49)
に よる 蛍光 試薬( 3, 5- diam ino ben zo ic a cid)
(DABA)を 用い た手法 で実 施し た. 24- we ll プ レー ト上 の細 胞を 8 0 % 冷 エタ ノー ル
で固定 した 後, DABA ( 400 m g/m l)を添 加し , 60 ℃, 45 m in イン キュ ベー トした . 反
応後, 1 N HCl を 0 .5 m l 添 加し, 蛍 光強度 (励 起波 長:42 0 nm, 蛍光 波長 :540 n m) を
測定し た. 標準 サン プルに より 作成 した検 量線 より DNA 量を 算出 した .
2- 2- 6
レポ ーター アッ セイ 法
RARE ト ラン ス活 性化の 評価 は, 2 コ ピー の RARE シー ケンス およ び Se cr ete d
alka lin e pho sphat a se ( SE AP) レポー ター 遺伝 子が 組み込 まれた p RARE-TA- SE AP ベ
クタ ーを 用い た. ま た バッ クグ ラン ド 測定 用は プロ モ ータ ーを 欠 く p SE AP2- ba sic
ベクタ ーを 用いた . 1 2- we ll プレ ートに 培養 した 表皮細 胞に , Fugen e 6 トラ ンス フ
ェク シ ョン 試 薬を 用 いて そ れ ぞれ の ベク タ ーを 導 入し た. トラ ン スフ ェ クシ ョ ン
24 h 後 に ル テイ ン を添 加 し, さらに 2 4 h 培養 し た. 培 養 上 清の SE AP 活性 は ,
Esc Ap e SE AP c hem ilumine sce nc e dete ct ion システ ムを 用い て評 価した .
2- 2- 7
統計 処理
統計解 析は SAS シ ステ ムによ り実 施し た. Dun nett's m ultiple comp ar ison te st
でコン トロ ールと の有 意性 を解 析し, 用量 依存 性の 評価 には Willia m’s te st を
用いた 。p 値 0. 05 未 満を 統計 的有意 とし た.
第 3 節 :実 験結 果
2- 3- 1 カ ロテ ノイ ドの HAS 遺 伝 子 発 現を 介し た HA 合 成促 進作 用
さま ざま なカ ロテ ノイ ドお よび その 関連 化合 物を 用い , ヒ ト表 皮細 胞の HA 合
成への 関与 を検討 した ( Fig. 2-1 ). 本研 究の検 討に 用い た化 合物 を Fig. 2 -2 に示 し
た. 表皮細 胞 の HA 合 成は , プ ロビ タミ ン A の- カロ テンお よび- クリ プト キサ ン
15
チン だけ でな く, ノン プロ ビタ ミ ン A に 属す るル テイ ン, ゼア キ サン チン およ び
アスタ キサ ンチン の存 在下 で亢 進した ( Fig. 2-1 a) . 一 方, リコ ピン , フィト エン , イオノ ンお よび- イオノ ンに はそ の効 果を認 めな かっ た( それぞ れの 処理 群の HA
産生量 , 254 , 1 83, 27 4, 274 n g/we ll v s コ ント ロー ル群 の HA 産 生量 , 288 n g/m l) . こ
れらの こと から , HA 合 成を 促進す るに はシ クロヘ キセ ン環 とポリ エン 部の 両方 を
併せ持 つ構 造が必 要と 考え られ た. これ らカ ロテ ノイド による HA 合成 変動 の挙 動
は, 誘導さ れる HA S3 遺 伝子 の発 現挙 動と一 致し た( Fig. 2- 1 b) .
a
Hyaluronan content (ng/well)
1200
***
1000
800
***
***
Fig. 2-1 Effects of carotenoids on hyaluronan
***
600
synthesis in keratinocytes. Confluent human
*
absence or presence of -carotene, -cryptoxanthin,
400
lutein,
200
0
b
keratinocytes were incubated for 48 h in the
zeaxanthin,
and
astaxanthin
at
a
concentration of 5 M. (a) Hyaluronan content was
Co


L
Z
A
ntr - Ca r - Cr y ute in ea xa sta x
ol
ot e
pto n
nt h
an
t hi
ne
xa n
i
n
thi
n
measured as described in Materials and Methods.
Values represent mean±SD of 3 replicate assays.
Significantly different from the control value; *P <
0.05, ***P < 0.001 (Dunnett’s test). (b) Total RNA
HAS3
was extracted and subjected to RT-PCR. The PCR
products were visualized in a 2% agarose gel
G3PDH
stained with ethidium bromide.
Co

Lu
Ze
A
C
a x st a
ntr -C a
t
a n xa n
r ot rypt e in
ol
thi
en
ox
e
n thi n
ant
hin
 -Caroten e
 -Cryptoxanth in
Lu tein
Zeaxanthin
Lycopen e
phytoene
-Ionone
 -Ionone
Astaxanthin
Fig. 2-2 Chemical st ructure of compounds examined in this study. Ca rotenoids used in this study
were in the all-trans configura tion.
16
表 皮細 胞が プ ロビ タ ミ ン A か ら RA に至 る 代謝 経 路を 有 する かを 調 べる た め ,
BCO1 およ び RALDHs の発現 を転 写レ ベル で検討 した . 表皮 細胞は BCO 1 m RNA
を発現 し, RALDHs( RALDH1 -3) のう ち RALDH3 をド ミナ ントに 発現 した (Fig. 2-3 ).
BCO1
d
ki
fi
ke
br
ra
ob
tin
la
oc
st
yt
s
es
RALDHs
sto
m
keratinocytes
y
ne
ac
h
testis
R
A L R A RA
D LD LD
H
H
H
1
2
3
Fig. 2-3 BCO1 mRNA and RALDH3 mRNA are exp ressed in hu man keratinocytes.
Total RNA was subjected to RT-PCR. The PCR products were visualized in a 2% agarose
gel stained with ethidium bromide.
c
**
1200
**
DNA content (g/well)
Hya lurona n content (ng/well)
a
**
800
400
0
6
4
2
0
0
0.3
1
3
5
0.3
1
3
5
Lute in (M)
L utein (M)
b
0
H AS3
G3PDH
0
0.3
1
3
5
Lute in (M)
Fig. 2-4 The hyalur onan synthesis of human keratinoc yt es was upregulat ed by lutein in a dose
depe ndent manner. Conflue nt human kera tinocytes were inc ubated with var ious concentra tions of
lutein (0.3-5 mM) for 48h. (a) Hya lurona n content was measured a s de scr ibed in Materials and Methods.
Values represent mean±SD of 3 replicate assays. Signif ica ntly dif ferent from the control value; **P <
0.01 (William’s test). (b) Total RNA wa s e xtracted and subjecte d to RT -PCR . The PCR products were
visua lized in a 2% a ga rose ge l stained with ethidium bromide . ( c) DNA c ontent wa s measured a s
desc ribed in Materials and Methods. Values represent mea n± SD of 3 re plic ate assays.
ノンプ ロビ タミ ン A が どのよ うな 機構 で HA S 遺伝 子発 現を 介し た HA 合成 を惹
17
起す るの かを 調べ るた め, 評価 した ノン プロ ビ タミ ン A の うち , ルテ イン を用 い
て検討 を進 めた . ル テイン は, 添加 1 -5 M で用 量依 存的な HA S3 m RNA 発現 誘導 を
伴って HA 産 生を 亢進し た( Fig. 2 -4 a , b). 本 実験条 件下 にお いてル テイ ンは 細胞 の
ウェル 当た りの DNA 量に 影響 しなか った こと から, こ の HAS3 m RNA 発現 量の 増
加に細 胞増 殖が関 与し ない こと を示し た( Fig2- 4 c ) .
2- 3- 2
ルテ インに よ る RAR 活 性 化
ノンプロ ビタ ミン A の ルテ インに よる HA 合 成誘 導に RARs の 関与 の有 無を 明
らかに する ため , RAR パ ンアン タゴ ニス トであ る L E54 0 50 )を 用い た. LE 540 の添 加
により , プ ロビ タミ ン A の  -カ ロテ ンのみ なら ず, ル テイン の HA 産 生促 進作 用
も抑制 され た( Fig. 2 -5a ). コン トロ ール 群の HA 合成 も L E54 0 存在 下で 一部 阻害 さ
れた . さ らに , ルテ イン の RARs 活性 化を レポ ータ ーア ッセ イで 評価 した と ころ ,
HA 合 成を 亢進 する 濃度域 にて RARE 作 動に よる SE AP 活性 を用量 依存 的に 上昇 さ
せた( Fig. 2 -5 b) . したが って ルテ イン自 体あ るい はそ の代謝 物が , 表皮 細胞 の RAR
a
***
300
200
***
**
100
0
Control -Carotene
Lutein
SEAP activity
(arbitrary chemiluminescence units)
Hyaluronan content (ng/well)
リガン ドと して機 能す るこ とが 示され た .
8000
b
**
**
6000
4000
2000
0
0
2
5
Lutein (M)
10
Fig. 2-5 Effect of lutein on RAR activation. (a) Following 30min incubation of human keratinocytes in the
presence (open columns) or absence (closed columns) of 0.2 M LE540, -carotene or lutein were added to
the culture at a concentration of 5 M and incubated for 24 h. Hyaluronan content was measured as
described in Materials and Methods. Values represent mean±SD of 3 replicate assays. Significantly
different from the value of LE540 untreated cells; **P < 0.01, ***P <0 .001 (Dunnett’s test). (b)
Keratinocytes transfected with pRARE-TA-SEAP reporter vector and an internal control vector were treated
with the indicated concentration of lutein (2-10 M) for 24 h. SEAP activity was measured by the EscApe
SEAP Chemiluminescence system. Values represent mean±SD of 3 replicate assays. Significantly different
from the control value; **P < 0.01 (William’s test).
18
2- 3- 3
ルテ イン の HA 合 成誘 導に 対する シト ラー ルの 効果
表皮細胞 はレ チナー ルを レチ ノイン 酸へ と変 換する 能力 を有 する .51 ) RALDHs の
阻害薬 であ るシト ラール
52 )
を 用い , ル テイ ンの HA 合成 誘導 に及ぼ す影 響を 検討 し
た. シトラ ール は, RA 刺 激によ る HA 合成 誘導 には 影響し なか った が, ルテ イン 存
在下で の HA 合成 誘導を 阻害 した (Fig. 2 -6) . こ の結 果から , ルテイ ンは プロ ビタ ミ
ン A の代 謝と 同様 , 表 皮細 胞によ りア ルデ ヒド に変換 され , 引 き続き RALDH 依 存
的な酸化反応によりレチノイン酸様のカルボン酸へと代謝され , その代謝物 が
Hyaluronan content (ng/well)
RAR の リガ ンドと して 機能 する と考え られ た( Fig. 2- 7).
n.s.
800
**
***
600
n.s.
400
200
0
Control
RA
RAL
Lutein
Fig. 2-6 Citral in hibits the ef fect of lutein on h yaluronan synth esis. F ollowing 30 min incubation of
human keratinocytes in the presence ( open columns) or absence (c lose d columns) of 20 M citral, 10 nM
retinoic acid (R A) , 50 nM retinal (R AL) and 10 M lutein were added to the cultur e and inc ubated for
48 h. Hyaluronan c onte nt was me asured as described in Materials and Methods. Va lues represent
mean±SD of 3 replicate a ssays. Significantly differ ent fr om the value of citral untre ated ce lls; **P <
0.01, ***P < 0.001 (Dunnett’s test).
Lutein
Monooxygenase?
Aldehydes
A ldehyde
dehydrogenase
Citral
Carboxylic acids
LE540
RARE transactivation
HAS3 mRNA induction
Hyaluronan production
Fig. 2-7. Possible metabolic transformation of lutein in keratinocytes.
19
第 4 節 :考 察
本研 究に より , プ ロビ タミン A に 属する -カロ テン のみ ならず , ノン プロ ビタ ミ
ン A で ある ルテイ ンも RAR 依 存的 に表皮 細胞 の HA 合 成を 亢進す るこ とが 明ら か
になっ た.
-カロ テン は重 要なビ タミ ン A 源で あり, 2 つの レチニ ル基 から 構成 される . 小
腸の粘 膜中で BCO1 によ り中央 開裂 し, 2 分子 のレ チナー ルを 生成 する . さ らに こ
のレチ ナー ルが RAL DHs に より 活性型 レチ ノイ ドであ る RA に 変換 され る. BCO1 5 3,
54)
, RALDH55 ) と も に 表皮 で の 発現 が 確認 さ れ てい る . 本 研究 で 用い た 培 養ヒ ト 正
常 表 皮 細 胞 で も BCO1 が 発 現 し て い る こ と , か つ RAL DHs( RAL DH1-3) の う ち
RAL DH3 がドミ ナン トに 発現し てい るこ と を m RNA レベ ルで 確認 した . し たが っ
て, プロビ タミン A の一 種で ある- カロテ ンお よび- クリ プトキ サン チン が, 表 皮
細 胞で レ チ ノ イ ドに 変 換 さ れ る可 能 性 は 十 分あ る . - カ ロ テンが RA と 同 様 に ,
HAS 3 m RNA の 発現 を誘導 する こと , またそ の HA 合成 誘導が RAR 拮 抗薬 であ る
LE54 0 の 存在 下で 阻害さ れた こと により , 表皮細 胞に おけ るプロ ビタ ミ ン A 代 謝
経路の 存在 が裏付 けら れた .
一方 , 哺 乳類 でレチ ノイ ドに 代謝 されな いノ ンプ ロビタ ミン A カ ロテ ノイ ドの
ルテ イン , ゼ アキ サ ンチ ンお よ びア スタ キ サン チン と いっ たノ ン プロ ビタ ミ ン A
カロテ ノイド
4 7 )にも
HA S3 m RNA 発現 誘導 活性お よび HA 合成促 進作 用が 観察 さ
れた. これ らキ サン トフィ ル類 は、カロ テン の水素 原子 のい くつか がヒ ドロ キシ ル
基, また は 同じ 炭 素原 子 に結 合 する 水 素原 子 のペ ア がオ キ ソ基 と 置換 し た構 造 を
持つ . こ れ ら基 本 骨格 は カロ テ ンと 同 じく シ クロ ヘ キセ ン 環と ポ リエ ン から 構 成
され る 構 造類 似 体で あ る . ノン プ ロ ビタ ミ ンで あ る ルテ イ ンの 作 用 が- カロ テ ン
と同様 , LE 540 で抑制 され , さ らに ルテ インの 刺激 によ り RARE 依 存の 転写 活性 が
増大し たこ とから , ルテイ ンの 代謝 物ある いは ルテ イン 自体 が RAR の リガ ンド と
して機 能し ている こと が示 され た.
これま でに , M at sumoto ら 5 6 )は, 無 細胞系 にお いて ルテイ ン が RAR に結 合す るこ
とを報 告し ている 。し かし ながら , 本検討 にお いて , 表 皮細 胞への ルテ イン の効 果
が, RAL DH の 阻害 剤で ある シト ラール によ り抑 制さ れた こと から, ル テイ ンは プ
ロビ タミ ン A 同 様, 表 皮細 胞に より アル デヒ ド化 合物 に変 換さ れ, さ らに 酸化 反
応を受 けて RA 様の アナロ グに 代謝 される こと で生 理活性 を示 すと 考え られる . 表
皮細胞 にお けるル テイ ンの 代謝 経路の 詳細 , お よび 実際 に RAR リ ガン ドと して 機
能する 代謝 化合物 につ いて はさ らなる 検討 が必 要であ る.
ノンプ ロビ タミ ン A の一 種で ある ルテイ ンは , ゼ アキ サン チンと とも に主 に網
膜に 存在 す る. 黄 斑色 素 にと って 必 須の 栄養 素
認され てい る.
58)
57)
であ り, 皮 膚で も その 存在 が 確
こ れら のキ サント フィ ルは , 優 れた 抗酸 化物質 であ り, 59,
照射 によ り惹 起さ れ る表 皮炎 症,
61 )
光老 化あ る いは 光発 癌
62 )
60 )
UVB
に 対し て抑 制 効果 が
20
あるこ とが 報告さ れて いる . さ らに P ao lm bo ら は, ルテ イン および ゼア キサ ンチ ン
の外用 によ る皮膚 弾力 性, 皮膚 水分 および 脂質 過酸 化に 対する 有用 性
63 )
を 報告 し
て いる . こ れ ら皮 膚 に 対す る ル テイ ン の 多彩 な 効 果は , そ の 化 学的 性 質 の抗 酸 化
作用だ けで なく , レ チノイ ド様 の活 性が関 与し てい る可 能性も 考え られ る.
本章で は, プロ ビタ ミン A だけ でなく , ノンプ ロビ タミン A の 代謝 産物も RAR
に対す るア ゴニス ト活 性を 有し , HAS3 m RNA 発 現誘 導を伴 って 表皮 細胞 の HA 合
成を 促 進さ せ るこ と を明 ら か にし た. 抗 酸 化 活性 と とも に レチ ノ イド 様 の生 理 活
性を 併 せも つ カロ テ ノイ ド 類 は, 自 然老 化 や 光老 化 によ り 低下 し た皮 膚 機能 を 改
善させ る可 能性が 示さ れた .
21
第 3章
細 胞内 HA 基 質 プー ルの 変動 によ る HA 合 成制 御機 構
第 1 節 :序 論
表皮細 胞の HA 合 成能を 高め る天 然物質 の探 索を 行っ たとこ ろ, N- アセ チル グル
コサミ ン( NAG) にそ の作 用を 見出し た. NAG は , カ ニ, エビ などの 甲殻 類の 外殻 を
起源 と する 天 然多 糖 類キ チ ン を構 成 する 単 糖で あ り, す で に食 品 分野 で 広く 応 用
されて いる .64 ) 生体 にお いて は, HA の他 にヘパ リン およ びヘ パラ ン硫 酸な どの 硫
酸化 GAG の 構成 単糖 であ ると同 時に , 様 々な 糖タ ンパク , 糖脂質 を修 飾す るア ミ
ノ糖 であ る. NAG が 糖 供与 体と して 機能 す るに は, 高 いエ ネル ギー を持 た なけ れ
ばならないため, ヌ クレオチドに活 性化される必要が ある. 糖ヌ クレオチド の
UDP -NAG は , グ ルコ ー スト ラ ンス ポ ータ ー( GL UT ) に より 取り 込 まれ た グル コ ー
スから , そ の 2 -5 %が ヘキソ サミ ン経 路を経 て生 合成 される .65 ) 近 年, UDP- NAG を
糖供与 体と して O- NAG 転移 酵素 により 触媒 され る O-グ リコ シル化 の修 飾部 位が ,
タン パク のリ ン酸 化 部位 と同 一, あ るい はそ の近 傍 であ るこ とか ら, NAG は 細 胞
内シグ ナル 伝達に おい ても 重要 な役割 を担 うこ とが解 明さ れつ つある .66 , 67 )
本研究 では , 培 養表 皮細胞 にお ける NAG の HA 合成 促進 機序を , RA の 作用 点と
比較す るこ とで検 討し た.
第 2 節 :実 験材 料お よび 実験 方法
3- 2- 1
培養 器具お よび 試薬
Human sk in f ibro bla sts ( Detr iut 551, AT CC CCL11 0) (AT CC 製 ), Rer ino l およ
び Retino ic a cid ( Sigm a 社 製) , N-a c etylgluco sam in e ( NAG) ( Se ika gak u 社製 ),
Ea gle’s m in im a l e ssentia l me dium (M EM ) (I CN Bio me dica ls 社製 ), Fet al bo vine
ser um ( FBS) (I rv in e Sc ient if ic 社 製) , 3, 5 - diam in o be nzo ic a c id ( Sigm a 社 製) , DC
prote in a ssa y k it ( Bio r a d 社製 ), So dium[ 35 S] Sulfat e (1 00 m Ci/mm ol) ( Am er sh am
Pharm a cia
Biote ch
社 製 ),
UDP- [ 14 C] Glc A
(30 0
m Ci/mmo l) お よ び
3
[1,6 - H( N)] N- a cety lgluco sam ine (60 Ci/mm ol)( Am er ic an Ra dio la bele d Chem ica ls
社製) , Pa rtisp he re SAX (W hatm an 社製) , UDP -N-a cety lgluco sam in e ( Kyo wa 社
製).
その他 の試 薬につ いて は , 第 1 章 および 第 2 章で 記載し たも のを 用いた .
3- 2- 2
両親 媒性 NAG 誘 導 体 の合 成
NAG の 1 位 に親油 性残 基を 付加した NAG 誘 導体 を, 一般 的な方 法に 従っ て合 成
した ( Sc h em e 3 ). 1,2 - Ac etam ido-1 ,3, 4,6 -tetr a- O- ac ety l-2 - deoxy --D- glucopy ran o se A
を, T M SOT f 存 在下で , グリコ シル 化反 応の際 の脱 離基 とし て反応 性が 高い オキサ
ゾリン ドナ ーへと 誘導 した . CSA 存 在下, オ キサゾ リン ドナ ーと各 脂肪 族ア ルコ ー
22
Scheme 3. Design and synthesis of NAG derivatives
ル(n =2 , 4 , 5 , 6, 8, 12 ) と のグリ コシ ル化 を行 い, それ ぞれ 55 -75 %の 収率で -グリ
コシド B を得た .  グリ コシ ドの 脱アセ チル 化に より , 目 的とす る 1 位 に親 油性 を
もつ NAG 誘 導体 を定 量的 に得た .68 )
3- 2- 3
細胞 培養
ヒト 表皮 細胞の 培養 は第 1 章に 記載 した 方法で 実施 した 。ヒト 皮膚 線維 芽細 胞
(Detro it 55 1)は , 10 % FBS 含有 ME M 培 地を 用い て 24 - we ll プレ ート に播 種した . コ
ンフル エン トに達 する まで 培養 の後, FBS 不 含培 地で 培地 交換を おこ ない 24 h 馴 化
させた . 次 に評 価化 合物を 添加 し, 24 h 後 の培 養上 清中 HA 量を 定量 した 。
3- 2- 4
DNA 定 量
DNA 量の 定量 は, 第 2 章で 記載し た方 法に 準じて 実施 した .
3- 2- 5
HA 定 量
培養 上清 中の HA 量は , 第 1 章 で記 載し た方法 に準 じて 実施 した.
3- 2- 6
HAS 活 性測 定法
HA 合 成酵 素活性 の測 定は , It ano らの 方法
41)
に 従い実 施し た. NAG (5 m M)
あるいは a ll- tran s Retino ic ac id ( RA) (1 M )で 24 h 刺激し た表 皮細 胞を回 収し ,
0.5 mM dith iothr e iro l お よび 0.2 5 m M suc ro se を含 有す る 10 m M HEP E S-Na OH
(pH 7 .1 )中で 超音 波破 砕した . 次に , 細 胞破 砕画 分を超 遠心 (105 ,000 g, 1 h)す
ること によ り粗膜 画分 を得 た. UDP -[ 14 C] GlcA(10 Ci/m l) , 5 m M dith ioth re ito l,
15 m M M gCl2 , 0 .2 mM UDP- Glc A, 1. 0 m M UDP- NAG を 含 む 2 5 m M
HEPE S- Na OH (p H 7 .1 ) に粗 膜画 分 を添 加 する こ とに より 酵 素反 応 を開 始し
(tota l vo lum e 20 0 l), 37℃ で 1 h イ ンキ ュベ ートし た. 酵素 反応 は, 2 % so dium
do de cy l sulf ate 存在下 で 10 0℃ , 1 min 処 理する こと に停 止した . 酵素反 応物
を Se p h a de x G- 5 0 ゲル ろ過 カラム ( 1 5 x 5 0 m m ) に 供し, そ の素通 し画 分の
23
放射活 性を 測定し た.
3- 2- 7
硫酸 化 GAG 合 成能 評価
硫酸化 グリ コサミ ノグ リカ ン(硫 酸化 GAG) の de n ov o 合成 能は , [3 5 S] Sulf ate の培
養上清 GA G 画分 への 取り 込み活 性に より 評価し た. 培養 表皮 細胞 に NAG ( 5 m M) ,
あるい は RA (1 M) を添 加し, [ 35 S] Sulfat e (2 0 Ci/ml)と とも に 48 h 培養 した, 培 養
上清 をプ ロナ ーゼ で 消化 (30 µg/ml) した 後, Se ph a dex G- 50 ゲル ろ過 カラ ム( 15x5 0
mm)に 供し , そ の素 通し 画分の 放射 活性 を測定 した .
3- 2- 8
NAG K c DNA の 単 離
ヒト N- ac ety lgluco sa mine kina se ( NAGK) 遺伝 子の cDNA は RT -P CR よ り単離 した 。
ヒ ト 表 皮 細 胞 か ら 抽 出 し た Tot al RNA を 用 い , m RNA の シ ー ケ ン ス ( Gen Ban k
ac ce ssio n n um be r AJ242 910 )を 元に 下記 のプ ライ マー を 設計 し, RT -P CR を 行っ た .
Hum an NAGK sen se p r ime r 5’ - GGAAAGCT T GGCACACGAT CCGAGGT C- 3’ ; Huma n
NAGK ant ise n se p rime r 5’- AGGGAAT T CGGA GCCGCCT CTAGGT T G- 3’ ( 30 cy c le , 下
線部は Hind III およ び E coR I 制限 酵素 サイ ト) .
得 られ た P CR 産物 をア ガロ ース ゲ
ル電気 泳動 の後 , ゲ ルから 切り し精 製した . 精製 した c DNA を HindI II /E co RI で 消
化し, プラ スミ ドベ クター (p SPT 18) HindI II /E co RI サイト に組 み込 んだ . シ ーケ シ
ングに より , 目 的と する NAGK c DNA が得 られた こと を確 認し, DI G RNA la belin g
kit プ ロト コルに 従い , DI G 標 識し た antisen se/sen se RNA プロ ーブ を調製 した .
3- 2- 9
ノザ ンブロ ット 解析
ノザン ブロ ット解 析は , 第 1 章 で記 載した 方法 に準 じて 実施し た .
3- 2- 10
細胞 内 UDP- NAG の 定 量
90 mm dish に 播種し た表 皮細 胞を, サ ブコン フル エン トまで 培養 し, 0 .04 % BP E
含有, E GF お よび hy dro cort isone 除去 培地 にて 24 h 馴 化し た. 10 m M NAG を添 加し ,
24 h 培養 の後 , 0 .25 % T ryp sin 溶液 を用い て細 胞を 回収し た. ヒト 皮膚 線維 芽細 胞
は, 10 % FBS 含 有 M EM 培 地を 用い て 90 m m dish に 播種し , コンフ ルエ ント まで 培
養した . そ の後 , FBS 除去 培地 でさ らに 24 h 培養 し, 0.2 5 % T ryp sin 溶液 を用 いて 細
胞を回 収し た. それ ぞれの 細胞 懸濁 液は 1 00 ℃ , 4 min 熱 処理し た後 , - 20℃ で凍 結
した . 凍 結融 解後 , サ ンプ ルを 0.22 m メン ブレ ンフ ィルタ ーで ろ過 し, Swee ne y
ら の 方法
6 9 ) に 従い
HPLC に よ る 分 析を 実 施 し た . HPLC 条 件 は , 充 填 カ ラ ム :
Partisphe re SAX ( 4.6 m m× 12.5cm ), 溶 離 液: 3 0 mM KH2 P O4 (p H 3.5 ), 流 速 ; 1
ml/m in に設定 し, 260 n m の UV 吸 収によ り検 出し た. 標品 とし て UDP- NAG を 使 用
24
し, 予め作 成し た検 量線を もと に定 量をお こな った .
3- 2- 11 NAG の 細 胞 内 取り 込み 評価
24- well プレ ート に播 種し た表 皮細胞 をコ ンフ ルエ ント の状 態まで 培養 し, 培 地
を除去 の後 , 細 胞表 面をグ ルコ ース 不含 Kre bs- Rin ger リ ン酸 緩衝液 (KRP )で 洗浄 し
た. 細胞に , [ 3 H] Glc N (1 Ci/m l KRP, 2 0 nM )ある いは [ 3 H] NAG (1 Ci/m l KRP, 1 7 nM )
を添 加 し, そ れ ぞれ の 添加 群 にグ ル コー ス ト ラン ス ポー タ ー阻 害 薬で あ るサ イ ト
カラシン B を 添加 した (0-3 0 M ). 37 ℃で 10 m in 静置後 , 上 清を 除去 し, ice -c old
PBS で 細胞 表面 を 3 回 洗浄 した . 0 .2 % SD S 溶 液で 細胞を 溶解 させ , 液 体シ ンチ レ
ーショ ンカ ウンタ ーで 放射 活性 を測定 した .
3- 2- 12
統計 処理
統計解 析は SAS シ ステ ムによ り実 施し た. Dun nett's m ultiple comp ar ison te st
でコン トロ ールと の有 意性 を解 析し, 用量 依存 性の 評価 には Willia m’s te st を
用いた . p 値 0 .05 未満 を統 計的に 有意 とし た.
第 3 節 :実 験結 果
3- 3- 1
NAG に よ る 表皮 細胞 の HA 合 成促 進作 用
単糖の HA 合成 に及ぼ す影 響を 把握 するた め, グル コー ス, ガラ クト ース, マ ン
ノース , グ ルク ロン 酸およ び NAG をそ れぞ れ最 終濃 度 10 m M でヒ ト表 皮細 胞に 添
加した とこ ろ, NAG 添 加群 のみ 顕著 に HA 合 成が 促進 された ( Fig. 3 -1) . NAG が 作
用を発 現す る添加 濃度 域に つい て調べ たと ころ , 添 加 3 mM より 1 0 m M ま で用 量
依存的 に HA 合成 が亢進 され た( Fig. 3- 2a ).
HA content (g/well)
0.6
Fig.
3-1
production
0.4
Effects
in
of
monosaccharides
keratinocytes.
Normal
on
HA
human
keratinocytes were cultured with glucose, galactose,
mannose, NAG or glucuronic acid at the concentrations
of 10 mM for 24 h and hyaluronan production was
0.2
measured as described in Materials and Methods..
Values represent mean± SD from three individual wells.
0
Co
Gl
nt
c
ro
l
Ga
l
M
an
NA
G
Gl
cA
25
次に, NAG のヒ ト皮 膚線維 芽細 胞の HA 合成 能に及 ぼす 作用 につい て検 討し たと
ころ, 表皮 細胞 に作 用を示 す濃 度域 では , HA 産生 に影響 しな かっ た( Fig. 3-2 b). 尚 ,
本実験 条件 下では 表皮 細胞 , 線 維芽 細胞と もに DNA 量に 顕著 な変 動を認 めず , HA
産生量 の増 減が細 胞数 に依 存す る結果 でな いこ とも確 認し た( Fig. 3- 2a , b ) .
a
1.0
*
*
2
0.5
0
0
1
0
3
5 10
NAG (mM)
H A content (g /well)
*
4
2.0
2
1.0
0
0
1
DNA content (g /well)
b
4
DNA content (g /well)
HA content (g /well)
1.5
3
5 10 0
NAG (mM)
Fig. 3-2 NAG enhanced HA production in hum an keratinocytes. NAG (1-10 mM) added to a culture of
human keratinocytes (a) or human skin fibroblasts (b) for 48 h. HA content (solid bar) and DNA content (open
circles) we re measured as described in M aterials and M ethods. Values r epresent mean± SD from thr ee
individual wells. *P < 0. 05 (William’s test).
3- 3- 2
NAG の H AS3 m RNA 発 現 に 及 ぼす 影響
第 1 章 およ び第 2 章にお いて , 表皮 細胞の HA 合成 は主 に HAS3 遺 伝子 の発 現
を介し て調 節され てい るこ とを 示した . そ こで NAG お よび レチノ イド の HA 合 成
促進作 用へ の HAS3 m RNA 発現 の寄 与につ いて 検討 した . ノ ザンブ ロッ ト解 析の 結
果から , RA あ るい はレチ ノー ルの 刺激 で HAS3 m RNA の顕 著な発 現誘 導が 認め ら
れた( Fig. 3-3 a , b) が, NAG は HA 合 成を 促進 する濃 度 ( 5 m M)で HA S3 遺 伝子 発現 に
影響を 及ぼ さなか った . NAG と RA と の同 時添 加群に おい ては , RA 単独 添加 群と 同
レベル の発 現量の 増大 に留 まっ た( Fig. 3-3 a) .
a
Fig. 3-3. Effec ts of NAG and retinoid s on the
b
e xpr ession of
HAS3
mRNA
in
keratinocytes.
Ker atinoc ytes were incubated for 24 h in the presence
HAS3
of NAG (5 mM) and R A (1 M), alone a nd in
c om bination (a), re tinol (1 M) ( b). Equal am ounts of
tota l RNA (5 g per lane) were hybridiz ed with a n
HAS3 probe . B lots were stripped and rehybridized with
G3PDH
a G3PDH probe to control f or variation in loading.
ROH
CTRL
NAG + R A
RA
NAG
CTRL
S imilar results were obtained in two independent
e xperime nts.
26
3- 3- 3
NAG の HAS 活 性 に 及 ぼす 影響
NAG が HA 合 成酵 素活 性に及 ぼす 効果 につ いて検 討し た. Fig. 3-4 に示 すよ うに ,
RA が 顕著 に HAS 活 性を 増大 させた のに 対し , NAG 添加 では HAS 活性 変動 が認 め
られな かっ た.
**
Fig. 3-4.
presence of NAG (5 mM) or RA (1 M). HAS activity was
determined as described in M aterials and M ethods. Values
5
represent mean± SD of four experiments. **P < 0.01
(Dunnett's test).
0
3- 3- 4
Effect of NAG and RA on HAS activity in
keratinocytes. Keratinocytes were incubated for 24 h in the
10
3H
HAS activity
dpm x 10-3/ mg protein
15
CTRL
NA G
RA
NAG に よ る 細胞 内 UDP- NAG プ ー ル の増大
NAG は, NAG k in a se( NAGK)に よる リン 酸化を 介し て最 終的 に UDP- NAG へ 変 換
される .70 ) 表皮 細胞 およ び皮膚 線維 芽細 胞の NAGK 発 現に ついて 転写 レベ ルで 検
討した. ノ ザンブロッ ト解析の結 果, 表 皮細胞およ び皮膚線 維芽細胞は , 共 に
NAGK m RNA を 発現 してい るこ とを 確認し た( Fig. 3- 5a) . 次に , 表 皮細 胞 に NAG を
添加後 , 細 胞内 UDP- NAG プ ール サイ ズを HPL C にて 解析 した( Fig. 3- 5 b) . NAG の
添加に より 表皮細 胞内 UDP-NAG 量 が顕著 に増 大し たこと から , 表 皮細 胞に 取り 込
まれた NAG は , UDP -NAG に変 換さ れると 考え られ た. 通常 培養条 件下 にお ける 皮
膚線維 芽細 胞の UDP- NAG プ ールは , DNA 当 たり表 皮細 胞の約 4 倍 の値 を示 した .
このこ とか ら, 線維 芽細胞 培養 系で NAG に よる HA 合 成誘 導が認 めら れな かっ た
のは( Fig. 3- 2 b) , 線 維芽 細胞の UDP-NAG プー ルが HA 合成 の律速 にな らな いこ と
がその 一因 と推測 され た.
Fig. 3-5. Effect of NAG on UDP-NAG pools.
a
NAGK
28S
Ke
Fi
rat
br
in
ob
oc
la
yt
sts
es
UDP-NA G (ng/g DNA)
150
(a) The expression of
b
NAG kinase (NAGK)
mRNA in Keratinocytes and skin fibroblasts.
Total RNA were extracted form keratinocytes
100
and skin fiborblasts. Equal amount of samples
were hybridized with NAGK probes. (b) The
pool
50
sizes
of
UDP -NAG
in
untreated
keratinocytes and fibroblasts and NAG -treated
keratinocytes. Keratinocytes were incubated with
0
10 mM NAG
-
+
Keratinocytes
-
Fibroblasts
NAG for 24 h. Cells were extracted with boiling
water and analysis for UDP-NAG by HPLC as
described in M aterials and Methods..
27
次に , 細 胞内 基質 プール サイ ズを 増大さ せる こと がわ かった NAG と , HA 合成 を
転写レ ベル で制御 する RA に つい て, HA 合 成誘導 に至 る経 時的変 化を 比較 検討 し
た( Fig. 3 -6) . RA 刺 激によ り, 添加 1 日 目まで に HA 産生量 が顕 著に 増加 し, それ 以
降はコ ント ロール 群と 同様 の合 成挙動 を示 した . 一 方, NAG に よる 上清 中の HA 蓄
積量は , 添 加 2 日 目では じめ て有 意に増 加し た後 , 3 日後 まで直 線的 に増 加し , RA
に比し て遅 れたタ イミ ング で HA 合成が 促進 され た.
細胞内 UDP -NAG は, HA の みな らず硫 酸化 GAG の 基質 にも なり得 るこ とか ら,
NAG の 効果 が HA 合成に 特異 的か 否かを 調べ るた めに ,
硫 酸化 GAG 合 成 に及 ぼ
す NAG 添加 の影 響に ついて 検討 した . RA は, 添加し た [ 35 S] Sulf ate の 上清 への 取
り込み 活性 を増 大さ せた のに 対し , NAG は 取り 込み 活性 に影 響を 及ぼ さな かっ た
(Fig. 3- 7). し たがっ て NAG は , 硫酸 化 GAG 合 成に は関 与せず , HA 合成 を特 異的 に
HA production (g /well)
亢進す ると 考えら れた .
0.5
Fig. 3-6 Time course of the effects of NAG and RA on
0.4
HA production in human keratinocytes. H uman skin
0.3
keratinocytes were incubated in medium only (open
circles), in the presence of NAG (5mM)(closed circle)
0.2
or RA (1M)(closed triangles). HA production was
0.1
estimated.
Values represent mean± SD of four
experiments.
0
1
2
Days in culture
**
12
Fig. 3-7 Effects of NA G and RA on the incorporation
of [35 S]Sulfate into glycosaminoglycans. Keratinocytes
well
dpm x
10-4/
35S
3
were incubated for 48 h with medium only or medium
8
supplemented with NAG (5 mM) or RA (1 M). The
[3 5S]Sulfate incorporated into [35 S]glycosaminoglycan in
the supernatant was determined as described in
4
Materials and Methods. Values represent mean± SD o f
four experiments. **P < 0.01 (Dunnett's test).
0 CTRL
NAG
RA
Fig. 3- 8 に , NAG と レ チノイ ドを 同時 に添加 した 際の 表皮細 胞の HA 産 生量 を示
す. レチノ ール , RA と もに NAG との 同時添 加に より 相乗的 に HA の産 生量 を増 加
28
させた . 添 加し た RA の 添加濃 度(1 M) は, RA 単独 添加 にお いては すで に作 用が 飽
和する 濃度 である こと から(第 1 章 Fig. 1- 5), NAG と の同 時添 加によ り UDP -NAG
プール が増 大し , HA 産生 が相 乗的に 亢進 した と推測 され た.
HA production (g /well)
1.5
b
a
1
1
0.5
0.5
0
0
NAG + Retinol
Retinol
NAG
CTRL
NAG + RA
RA
NAG
CTRL
Fig. 3-8. Synergistic stimulation of keratinocyte HA production by NA G a nd retinoids.
Keratinocytes were incubated for 24 h in the presence of NA G (10mM) and RA (1 M) (a), NAG
(10 mM) and retinol (1 M) (b), alone and in comb ination. HA production was assessed as
described in M aterials and Methods. V alues represent mean± SD of three experiments.
3- 3- 5
両 親 媒性 NAG 誘 導 体 によ る HA 合 成促 進作 用
NAG の HA 合成 促進作 用の 発現 には, 本 研究の 実験 条件 では 3 mM 以上 の添 加濃
度が必 要で ある . NAG の 細胞 内へ の輸 送を , グ ルコ ースト ラン スポ ータ ー( GL UT )
を介し て輸 送され る Glc N と 比較 検討し た. 細胞 に添 加し た[ 3 H] Glc N は , 10 min 後 ,
その放 射活 性の 約 0. 7 %が細 胞内 に取 り込ま れ, さら に GL UT 阻害 薬の サイ トカ ラ
シン B を添 加す るこ とで その取 り込 みが 阻害さ れた . 一 方, [3 H] NAG を 添加 した 細
胞画分 の放 射活性 は, [ 3 H] Glc N のそ れに比 して 極め て低い レベ ルで あり , サ イト カ
ラシ ン B の 添加 で放 射活性 に変 化が 認め られな かっ た( Fig. 3-9 ). 得ら れた 放射 活
性は , 細 胞に 非 特異 的 に吸 着 した [ 3 H]NAG を 検 出 し てい る 可能 性 もあ る. こ の 結
果から , NAG は Glc N と異 なり , GL UT を介して 輸送 されな いこ とが 示さ れた. し た
がっ て NAG の 作用 発現に 高濃 度の 添加が 必要 な理 由は , 水 溶性 が高 い NAG が , 単
純拡散 で細 胞膜を 透過 する 必要 がある ため と推 測され た. そこ で NAG の疎 水性 を
向上さ せる ため に 1 位に C2 か ら C1 2 の アルキ ル鎖 を導 入し た NAG 誘 導体 を合 成
29
した. 68 ) そ れぞ れ 0 .1 mM の濃 度で 表皮細 胞培 養系 に添加 した とこ ろ, アル キル 鎖
長 C8( CLo gP, 2.41 7) で最大 の HA 合成 促進 作用を 認め , 10 mM NAG 添加 群と 同レ ベ
ルの作 用を 示した ( Fig. 3-1 0) .
12
3H
dpm x 10 -3/10 min
[ 3H] GlcN
[3H] NAG
Fig. 3-9 E ntry of radiolabe lled GlcN and NAG
into ke ratin oc yt es. Human ke ratinocyte s were
8
in KRP buf fer with [3H]Glc N ( 1
inc ubated
C i/ml) or [ 3H]NAG (1 Ci/ml) in the presence
and the absence of c ytoc hala sin B for 10 min at 37
4
C° . Suga r transport wa s me asur ed as described in
Mate rials and Methods. Values represent m ean±
SD of three experiments.
0
0
1
10
30
0
1 10 30
Cytochalasin B (M )
n=3, mean±SD
Control
OH
1 mM NAG
HO
HO
10 mM NAG
O
OC nH2n +1
NHAc
NAG2
Compd
n
NAG4
NAG2
2
-0.757
0.1 mM NAG5
NAG4
NAG5
4
5
0.301
0.830
NAG6
NAG8
6
8
1.360
2.417
NAG12
12
4.533
NAG6
NAG8
NAG12
0
1
2
3
HA production (-fold)
CLogP
4
Fig. 3-10 Effects of NA G and N AG analogues on HA production in keratinocytes. Human
keratinocytes were cultured with N AG (1 or 10 mM) or 0.1mM NAG analogues (NAG2, NAG4, NA G5,
NAG6, NAG8 and NAG12) for 48 h. HA content was assessed as described in Materials and Methods.
Values represent mean± SD of three experiments.
30
第 4 節 :考察
本研究 にお いて , NAG が培 養表 皮細 胞の HA 合 成を 促進す るこ とを 示した . その
合成促 進機 序は , 転 写レベ ルに おけ る合成 制御 (第 1 章 およ び第 2 章 )と は異 なり ,
細胞内 基質 レベル にお ける 制御 による もの であ った.
NAG は , HA を含む GAG, 種 々の糖 タン パク 質およ び糖 脂質 を構成 する 単糖 であ
る. 一方 , リン 酸化部 位の O- NAG による タン パク 修飾が , 細胞内 シグ ナル 伝達 に
関与 する こと が示 唆さ れて いる .67 ) そこ で, 転 写レ ベル にお ける 制御 を想 定し , 表
皮細胞 の HAS 遺伝 子発 現お よび HAS 酵 素活 性を測 定し たが , NAG はい ずれ にも 影
響を及 ぼさ なかっ た. そこ で, 添加 した NAG が表 皮細 胞内 に取り 込ま れ, HA の 細
胞内基 質へ と変換 され てい る可 能性に つい て検 討した . HA に対す る細 胞内 の糖 供
与体は UDP -N-アセ チル グル コサ ミン( UDP- NAG)と UDP-グ ルク ロン 酸( UDP- Glc A)
であり , GL UT より取 り込 まれた グル コー スから Sc h em e 4 に 示す経 路に より 合成 さ
れる. UDP- NAG は , そ の前 駆体自 体が ヌク レオチ ド, グル コー ス, アミ ノ酸 およ び
脂肪 酸 の代 謝 系か ら 供給 さ れ るた め, そ の 合 成は 複 雑に 制 御さ れ てい る と予 想 さ
れる .
一方, 細胞 内には複合 糖質
G lucose
のリソソーム分解物として
GLUT
NAG が 存 在 す る . 細 胞 内 の
NAG は NAG キ ナー ゼ( NAGK)
Glucose1 -P
Glucose6 -P
によ り NAG6- リ ン酸 に, 最終
U DP-Glucose Fructose6 -P
UDP-GlcA
Glycolysis
GlcN6-P
的 に は 糖 供 与 体 で あ る
NAG6-P
UDP -NAG に 変 換 さ れ る こ と
NAG1-P
UD P-N AG
H AS
HA
Scheme 4. Biosynthetic pathways of UDP-NAG and UDP-GlcA
で, 糖タンパク質や糖 脂質の
糖 付 加 に 再 利 用 さ れ る .7 0 ) そ
こで, 表皮細胞および 真皮線
維芽細 胞で の NAGK の発 現を
転写 レ ベル で調 べ たと こ ろ,
いずれ の細 胞に おい ても
NAGK m RNA が 発現 して いる
ことを確認した. した がって
添加し た NAG が 細 胞内 に取り 込ま れる と, そ の NAG は 速や かに UDP- NAG へ と 変
換され ると 予想さ れた . NAG の細 胞内 基質 プール 量を 定量 した ところ , NAG を 添
加され た表 皮細胞 で UDP- NAG 量の増 加が 観察 された . これら の結 果か ら, NAG の
作用は , 細 胞内 基質 増大 作用に よる もの であ り, HA 生 合成 過程に おい て基 質の 合
成 が 律速 に な っ て いる と 考 え ら れた . 一 方 , 皮 膚 線 維芽 細 胞 で は, 細 胞あ た り の
UDP -NAG が 表皮 細胞 の約 4 倍 と高 かっ たこ とから , UDP -NAG の 細胞 内プ ール が
31
HA 合成 の律 速にな って おら ず, その ことが 線維 芽細 胞培養 系に て NAG の 作用 を
認めな い原 因であ ると 推測 され た.
また, 表皮 細胞 に RA と NAG を 同時 に添 加する こと によ り, 相乗 的な HA 合 成促
進効果 を認 めたが , このこ とより HA のも う一 つの糖 供与 体で ある UDP- Glc A の 細
胞内プ ール は, HA 合 成の 律速 になっ てい ない ことが 示唆 され た.
NAG に より表 皮細 胞の HA 合 成を 促進さ せる には , mM オー ダーの 添加 が必 要で
ある. アイ ソト ープ 標識体 を用 いた 実験か ら NAG の 細胞 内取 り込 みは , グ ルコ サ
ミンに 比し て極 めて 低レ ベル であ ったこ とか ら, NAG は グル コー スや グル コサ ミ
ンの よう に グル コー スト ラ ンス ポー タ ー( GL UT )を 介し た 取り 込み では な く, 単 純
拡散に より 取り込 まれ ると 予想 された . そ こで NAG の 疎水 性を向 上さ せる ため に
1 位 に C2 か ら C1 2 の ア ル キ ル 鎖 を 導 入 し た NAG 誘 導 体 を 合 成 し た .
-N- Ac ety l- D- gluco sam in ida se (- NAGa se )が ヒト 皮 膚に 存在 する こと がす で に知 ら
れ,71 ) さら に培 養表 皮細 胞にも -NAGa se 活 性が 確認さ れた こと から( 結果省 略) ,
NAG 誘 導 体 1 位の 立体は , 細胞内 で NAG へ 変 換可 能な- 体とし た. 1 位 にア ルキ ル
鎖を 8 , あ るい は 12 付加 した NAG 誘 導 体は, NAG 有 効濃度 の 10 0 分 の 1 濃度で , ほ
ぼ同 等の 作用 を発 揮 した . こ の 結果 によ り, NAG が 単 純拡 散に より 細胞 内 に取 り
込まれ るこ とが示 唆さ れた ( Sch em e 5 ).
本研 究に より , HA の 合成 調節 が HAS の 発現 変動 だけで なく , 細 胞や 組織 にお い
ては細 胞内 の基質 レベ ルで も制 御され 得る こと が示さ れた .
NAG8, NAG12 >> NAG
simple diffusion
Glc
GlcN
HA
-NAGase
GLUT
NAG
NAG kinase
(NAGK)
HAS
NAG-6P
UDP-GlcA
HAS; hyaluronan synthase
GLUT; glucose transporter
UDP-NAG
Scheme 5. Possible mechanism for modulation of hyaluronan
production by NAG derivatives
32
総括
ヒ ア ルロ ン 酸( HA) の 特徴 は , そ の高 い 水分 保 持 能に あ り, 生体 内 の水 を 水和
ゲルと して 保持す る役 割を 担っ ている . 表皮 細胞 間を埋 める HA は 、増 殖・分 化 ・
移動・接 着と いった 基本 的な 細胞機 能と 密接 な関 係があ り, 加齢 に伴 う HA の減 少
は皮膚 機能 の低下 に関 与す ると 考えら れて いる . 表 皮 HA の 代謝制 御剤 は抗 老化 機
能性素 材を 開発す る上 で有 用で ある. しか し HA 研 究の 対象は , 関節 , 眼お よび 皮
膚真皮 など の結 合組 織が 主体 であ り , 重層 上皮 組織 であ る表 皮の HA 代謝 機構 に
ついて は未 だ不明 な点 が多 い.
本 研 究で は , 表 皮に お ける ヒ アル ロ ン酸 合 成制 御 機構 の 解明 と その 制 御剤 の 開
発を主 眼と して検 討を 進め た.
第 1 章 では, 表 皮で の HA 合成 が 3 種類 あ る HA 合成酵 素遺 伝子 のう ち, 表皮 で
はい ず れに よ り制 御 され て い るか を 明ら か にす る ため , ま ず種 々 サイ ト カイ ン の
HA 合成 に及 ぼす影 響に つい て検 討した . その結 果, I FN- が HA の 合成 を促 進し ,
T GF- が 逆 に 抑制 す る こ とを 見 出 し た. 両 サ イ ト カイ ン に よ る合 成 変 動と 一 致 す
る発現 挙動 を示す のは ヒト 表皮 細胞で 恒常 的に 発現し てい る HA S3 であ った. 表 皮
HA の合 成を促 進さ せる ことが 知ら れる レチノ イン 酸( RA) も HAS3 m RNA の 発現 を
顕著に 増加 させた . これら のこ とか ら, 転写 レベル にお ける 表皮 細胞 の HA 合成 制
御は, 主 に HAS3 が担う こと を示 した .
HAS 3 遺 伝子 発現 を強力 に惹 起し た RA は , 細胞の 分化 増殖 の制御 など 重要 な役
割を 担う ビタ ミン A の活 性体 であ り, 美 容面 にお いて も, 欧米 で はし わな どの 光
障 害皮 膚 の 改善 薬 と して 認 可 され て い る. し か し なが ら , 多 岐 にわ た る 強い 生 理
活性を 有する RA は, 皮膚 刺激 等の 副作用 を生 じる ことが あり , 安 全か つ有 効な 改
善剤が 望ま れてい た.
第 2 章で は, ビタ ミン A 源で あるカ ロテ ノイ ド類に 着目 し, HA 合 成へ のビ タミ
ン A 関連 物質の 関与 につ いて調 べた . そ の結 果, RA へと代 謝さ れる- カロ テン や
-クリ プト キサン チン とい った プロ ビタ ミン A カロ テノ イド だけで なく , 哺乳 類
におい ては ビタミ ン A に 変換 され ないル テイ ン, ゼア キサ ンチン およ びア スタ キ
サンチ ンの ノンプ ロビ タミン A カロ テノ イド も, HAS 3 m RNA 発現誘 導に 伴って HA
の産 生を 亢進 さ せた . ノン プロ ビタ ミ ン A の ルテ イ ンの 効果 は, RA レ セプ タ ー
(RAR)阻害 剤で ある LE5 40 により 抑制 され た. 加え てルテ イン は, レポ ータ ーア ッ
セイで , RAR を 活性 化する 能力 を有 するこ とも わか った . さ らにル テイ ンに よる 作
用が レチ ナ ール 脱水 素 酵素 ( RALDH)阻 害剤 の シト ラー ル によ り抑 制 され たこ と か
ら, ルテイ ン自 体よ りむし ろ, その 代謝 化合 物が , RAR アゴ ニスト とし て機 能す る
ことを 示し た. した がって , ヒト表 皮細 胞は , ノ ンプ ロビタ ミン A カロ テノ イド を
RAR と結 合可能な RA ア ナログ に代 謝す る能力 を有 し, それ により RA 様の 生理 活
33
性が惹 起さ れると 考え られ た.
第 3 章に おい ては , 天 然化 合物 の中か ら表 皮細 胞の HA 合成 制御因 子を 探索 した
ところ , N-ア セチ ルグ ルコサ ミン (NAG)に その 効果 を見出 した . NAG は HAS 遺伝 子
発現お よび 酵素活 性に は影 響せ ず, 第 1 章およ び第 2 章 にお ける転 写レ ベル での 制
御 と は 異 な る 作用 点 が あ る と 考 え ら れ た. そ こ で, NAG が 細 胞 内 の 糖 供 与 体 の
UDP -NAG へ変 換さ れる可 能性 につ いて検 討し た. 複合 糖質 のリソ ソー ム分 解物 で
ある NAG を UDP- NAG に 変換 し再 利用 するた めの NAG キナー ゼ( NAGK) に着 目し ,
その発 現を 検討し たと ころ , 表 皮細 胞は , NAGK m RNA を恒 常的に 発現 して いる こ
とがわ かっ た. した がって 添加 した NAG は, HA の細 胞内 基質で ある UDP- NAG へ
と変換 され ること が示 唆さ れた . NAG 処理 した 細胞 の UDP- NAG 量 が実 際に 増加 し
たこと から , NAG の 作用 点は細 胞内 基質 プー ルの増 大に ある ことを 明ら かに した .
次に, NAG の作 用を 高める こと を目 的とし て, 両親 媒性 の NAG 誘導 体を 合成 した .
NAG 誘 導体 は, NAG の 添加 有効 濃度 の約 1 %濃度で HA 合 成を 促進 させ, HA 合 成
の制御 剤の 可能性 を示 した . さ らに NAG が 輸送担 体に よる 取り込 みと いう より む
し ろ 単 純 拡 散 に よ り 細 胞 内 に 取 り 込 ま れ る こ と を 示唆 し た . こ れ ら の 結 果 か ら ,
細 胞, 組 織 に おい て は 転写 レ ベ ルに お け る制 御 だ けで な く , 細 胞内 基 質 プー ル も
HA 合成 の制 御機構 とし て機 能す ると考 えら れた .
以上 , 本申 請論文 では , 抗老 化機能 性素 材開 発に 向けた 表皮 HA 代謝 制御 に関 わ
る新た な知 見を提 示し た.
まず , 表 皮の 転写 レベル にお ける HA 合成 の制 御は 主に HAS 3 m RNA が担 うこ と
を見出 した . こ のこ とによ り, 表皮 HA 合成 制御剤 開発 にお いて, HAS3 m RNA 発 現
を指標 にし た薬剤 探索 が可 能と る.
次に , RAR 活性 化を機 序と する ことか ら RA 様 の生 理活性 が期 待で き, かつ 安全
性が高 い HA 合 成制 御剤と して , プ ロビ タミン A お よび シク ロヘキ セン 環と ポリ エ
ン構造 を有 するノ ンプ ロビ タミ ン A カロ テノ イドの 可能 性を 示した .
最後に , HA 合 成促 進剤 として 細胞 内基 質プ ールを 増大 させる NAG を見出 し, 転
写レベ ルに よる制 御だ けで はな く, 細胞内 基質 プー ルへ の着眼 も HA 合 成制 御剤 開
発 の重 要 な スト ラ テ ジー に な るこ と を 示し た . さ らに , 膜 透 過 を考 慮 し た両 親 媒
性 NAG 誘 導体が , よ り効 率的 に HA 合成を 亢進 させ るこ とを示 した .
34
謝辞
本 申請 論文 の作 成に あた り, 終 始ご 懇篤 なる ご指 導を 賜り まし た伊 東
なら びに 野水
晃教 授
基義 教授 に 深甚 なる 謝意 を 表し ます . また , 本研 究 の遂 行に あた
り, ご親 切な ご指 導を いた だき まし たカ ネボ ウ化 粧品 価値 創成 研究 所
井上 紳太
郎博 士 に心 か ら感 謝 の意 を 表し ま す. さ らに , 本 研究 に あた り, ご懇 切 なご 助言
をいた だき ました 価値 創成 研究 所の方 々に 厚く 感謝致 しま す.
35
掲 載論 文
本研究 の内 容は以 下の 論文 に発 表した .
第 1章
Sa yo T , Su giyam a Y, Ta kah a sh i Y, Oz a wa N, Sak a i S, I sh ik a wa O, Tam ura M an d In o ue S,
Hya luron an syntha se 3 r e gulate s hya luron an synthe sis in c ult ure d h uman k er atin ocyt e s. J.
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第 2章
Sa yo T , Sugiy am a Y an d I no ue S, L ut e in, a no npro vit am in A, act iv ate s th e r etino ic a c id
re cepto r to in duc e HAS3- dep en dent h ya luron an synth e sis in ke rat ino cyt e s. Bio sc i.
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第 3章
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hya lur ona n p ro duction in h um an ke rat ino cyte s. Sk in Ph ar ma co l. Phy sio l. , 17 , 7 7-8 3
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