Comments
Description
Transcript
資料 7-2 - 経済産業省・資源エネルギー庁
資料 7-2 総合資源エネルギー調査会 基本問題委員会 「各々の選択肢案に関し提起された主な指摘について」への回答 環境エネルギー政策研究所(ISEP) 飯田哲也 【再生可能エネルギー】No.6、No.7、No.14、No.15、No.16 への回答 再生可能エネルギーの導入可能性については、環境省中央環境審議会の「2013 年以降の 対策・施策に関する検討小委員会/エネルギー供給 WG」において、詳細な検討が行われて いる。このエネルギー供給 WG には委員として検討に参加しており、この分野の有識者と 共にその内容に対して十分な評価・検討を行ってきている。 まず、導入ポテンシャルについては、これまでの環境省および経産省における導入ポテ ンシャル(エネルギーの採取・利用に関する種々の制約要因による設置の可否を考慮したも の)に関する調査検討結果を踏まえており、2050 年までにこれを最大限顕在化させることを 目指して、施策を最大限強化する場合を高位ケースでは想定している。その結果、高位ケ ースでは 2020 年までに発電電力量の 20%程度、2030 年までに 20~40%の発電電力量なる ことが見込まれる(高位ケース 2020 年 1983 億 kWh、2030 年に 3441 億 kWh)。2030 年の 高位ケースの内訳は、以下の図および表のとおりであるが、条件が整えば 2050 年までの導 入見込量を前倒しすることも可能と考えられる。 2030 年 高位ケース 設備容量[万 kW] 発電量[億 kWh] 大規模水力 1,124 244 中小水力発電 1,643 826 148 91 73 45 682 390 太陽光発電(住宅) 2,805 295 太陽光発電(非住宅) 7,255 763 風力発電(陸上) 2,370 415 風力発電(着床) 320 84 風力発電(浮体) 560 147 海洋エネルギー 349 142 17,330 3,441 大規模地熱発電 温泉熱発電 バイオマス発電 合計 発電コストについては、コスト等検証委員会での検討結果が参考になるが、太陽光発電、 風力発電などは導入量が増えるにしたがって、学習・経験曲線あるいは大規模化によるコ ストダウンを将来的に見込むことができる。すでに日本国内においても導入が進んでいる 住宅用太陽光発電については、コストダウンが加速しており、メガソーラーや風力発電に ついても、海外での事例と同様のコストダウンが期待できる。コスト検証委員会の試算で は 2030 年には、再生可能エネルギー発電コストは他の電源と同じレベルになるとされてい るが、世界の趨勢をみれば、これは前倒しが十分に可能である。また、バイオマス発電以 外の再生可能エネルギーでは燃料調達が原則として不要であることから、20 年を超える長 期間の運転(設備更新を伴う)を想定すれば、その発電コストはさらに下げることができる。 すでに世界の再生可能エネルギー市場は急成長の段階に入っており、市場の拡大に伴う波 及効果はすでに明確である。再生可能エネルギーの市場に関する最新レポートとしては、 Bloomberg New Energy Finance “Who’s Winning the Clean Energy Race?2011 Edition” http://www.newenergyfinance.com/WhitePapers/download/68 を参照。世界の再生可能 エネルギー市場の規模は 2300 億ドルを超え、成長を続けているが、そのうち日本は 86 億 ドルで約 4%の市場シェアとなっている(日本の市場のほとんどが住宅用太陽光発電)。 図:世界の再生可能エネルギー市場の推移(BNEF,2012) 再生可能エネルギーの導入に伴う経済的な影響については、設備投資などに伴う費用と 便益を評価することが重要であり、固定価格買取制度など市場メカニズムを活用した施策 が十分に効果があることが欧州などで証明されている。再生可能エネルギーの便益として の①温室効果ガスの削減②エネルギー自給率の向上③化石燃料削減④産業活性化⑤雇用の 創出などを勘案すれば、その費用を固定価格買取制度を通じて電気料金の賦課金とするこ とは十分に合理的な施策であり、市場を活用した資金の調達や設備投資が実現可能である。 電気料金への影響についても、現在の燃料費調整制度が上限としている 5 円/kWh を下回る 賦課金で 2030 年までの長期的な制度の運用が可能と考えられる。しかも、将来の化石燃料 の上昇を考えれば、回避可能原価の上昇に伴い、再生可能エネルギーの導入により電気料 金の上昇を抑制する効果を持つと考えられる。 図:再生可能エネルギー固定価格買取制度の電気料金賦課金の試算(環境省,2012) 再生可能エネルギーとして太陽光発電および風力発電を大量に導入した際の送電網への 影響については、合理的な費用の範囲で対策を行うことが可能である。環境省のエネルギ ー供給 WG でも詳細な評価・検討が行われている。太陽光発電と風力発電が大規模に導入 された上記の 2030 年の高位ケースでも、地域ブロック別・1 時間レベルの需給バランスに 対する調整能力を考慮した試算が行われている。この場合、広域の系統運用でカバーでき ない局面では、需要の能動化、揚水発電の利用、出力抑制の順で対策を実施することを想 定している。火力発電などバックアップ電源による調整も必要になるが、上記の対策と組 み合わせることにより、既存の設備を活用した合理的な範囲での運転が可能と考える。2030 年までの系統対策費用の試算では高位ケースで合計 5.1 兆円(2690 億円/年)となり、十分に 合理的な設備投資の範囲に収まると考えられる。 再生可能エネルギー導入の実現性については、すでに日本よりも 10 年先行している欧州 の導入実績および政策、今後の政策目標について参考にすべきである。日本が 1990 年から 2010 年にかけて再生可能エネルギーの電力の割合をほとんど増やさず、寧ろ減尐させてい るのに対し、EU 各国では 2000 年以降、着実に再生可能エネルギーの導入量を増やしてい る。ドイツ、スペイン、英国においては 2000 年からの 2010 年の 10 年間で再生可能エネ ルギーによる発電量を約 3 倍に増やしている。さらに EU では 2020 年までの再生可能エネ ル ギ ー の 導 入 目 標 を 最 終 エ ネ ル ギ ー 消 費 の 20% と 定 め 、 さ ら に 国 別 の 導 入 計 画 (NREPA:National Renewable Energy Action Plan)を策定している。発電量に占める再生 可能エネルギーの国別の実績と、2020 年までの政策目標を以下の図に示すが、EU 各国は 2020 年までに 35%を超える再生可能エネルギーの導入目標を掲げており、日本の 2030 年 の目標として 35%はむしろ最低限のレベルと言える。 図:国別の再生可能エネルギーによる電力の比率と政策目標(IEA, EU データより ISEP 調べ) 【原子力】No.27-2 への回答 雇用に関する効果では明らかに大規模集中型の発電設備よりも分散型の再生可能エネルギ ーほど雇用効果は大きい(以下の表)。原子力発電所については、今後、廃炉に伴う雇用があ る程度考えられるではないか。太陽光発電などの再生可能エネルギーの機器については、 国際競争下にあり、機器そのものの国内シェアだけでその経済効果や雇用効果を判断する ことはできない。すでにドイツでは再生可能エネルギー分野において、日本の数倍の市場 規模に達しており、様々な政策面・経済面の調整が行われている。再生可能エネルギー分 野では機器そのもの経済効果もあるが、事業を行うための制度、金融、設計、施工、メン テナンスなど多岐にわたる経済効果がある。さらに導入に伴う環境面、エネルギー安全保 障、農林水産業や地域活性化など様々なメリットが得られるなど多面的な評価が必要であ る。詳しくは ISEP ブリーフィングペーパー「ドイツは自然エネルギーへのシフトを継続す る」(2012 年 4 月 18 日) http://www.isep.or.jp/library/2772 を参照。ドイツでは日本と 比べて設備容量で約 5 倍(発電規模では 10 倍相当)の太陽光発電がすでに導入されており、 毎年の導入量も日本の 5 倍を上回るペースとなっていることに注意(以下の図)。 図: 日本とドイツの太陽光発電の導入量の推移(作成:ISEP) 以上 No.23 への回答 従前のエネルギー基本計画にあわせて経産省がエネルギー需給の試算を行い、BAU では 業務で 2030 年に向けて 2008 年比でエネルギー原単位(電力だけでなく熱利用も含む最終 消費全体)が約 10%悪化、家庭で 2008 年比約 20%悪化としていた。こんな BAU から省エ ネを考えても余り減らないが、実際には 2000 年代のトレンドは業務、家庭共にエネルギー 全体では原単位改善傾向にあり、電力消費原単位も家庭は横ばい、業務は改善に向かい、 こうした架空の BAU は見いだしにくい。 今後の省エネは、労働環境にせよ生活環境にせよ悪化・我慢を求めるのは慎重にすべき である。新築建築物の断熱規制すら導入できず、一方で浪費型機器の製造販売を一部で放 置する従前の不十分な政策の結果としてエネルギー浪費でかつ劣悪な生活環境があった。 政策転換で大きな省エネと生活環境改善の両立は十分可能である。逆にエネルギーを使え ば必ず豊かになるという因果関係はなく、その浪費を前提にする必要はない。