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第2章 - 大分県
第2章 大分県農林水産業の 基礎的条件 第2 章 1 大分県農林水産業の基礎的条件 恵まれた自然条件 本県は瀬戸内海と豊後水道に面した九州東岸に位置し、変化に富んだ地形・気候、多くの名水など 豊かな自然に恵まれています。 (1)変化に富んだ地形 本県は県北の中津・宇佐平野、県央の大分平野など比較的規模の大きい平野が広がる一方、内 陸には日田、玖珠、由布院、竹田などの盆地を抱えています。 また、九州本土の最高峰(中岳1,791m)も擁し、久住・飯田地域には広大な高原地帯が形成さ れています。 さらに、大野川、山国川、駅館川、大分川、番匠川、三隈川などの河川が県土を潤し、豊後水 道域のリアス式海岸や豊かな藻場、豊前海には広大な干潟などが形づくられています。 第 (2)多い中山間地域 本県の耕地の70%は中山間地域に位置しています。このことは農業などの生産活動にとっては コスト高などの課題を生みますが、棚田が織りなす芸術的なまでの風景は訪れる人々の心を癒 し、寒暖の差は米や果樹などの旨みを増幅させます。 章 2 1 2 (3)多様な気候 本県の年平均気温は17℃で、全体として温暖な気候といえます。 気候区分は、瀬戸内型、太平洋沿岸型、内陸山地型に分類され、地形とも連携して、地域ごと に特色ある気候を有しています。県南部の豊後水道沿岸は、黒潮の影響で温暖湿潤、亜熱帯性植 物や珊瑚も生育します。一方、内陸山地は、標高が高く冷涼で、冬季には積雪も観測されます。 (4)豊かな水資源 本県には、祖母・傾山系、くじゅう火山群、英彦山・犬ヶ岳山系に代表される山岳系や玖珠・ 耶馬溪の溶岩台地などと、これらを覆う豊かな森林があり、全国名水百選に数えられる男池湧水 群、竹田湧水群を始めとする数多くの湧水の源流をはぐくんでいます。森林で育まれた豊富な湧 水は、大地に潤いを与えるとともに、地域の生活や生産活動に利用され、生産基盤を支える資源 として重要な役割を果たしてきました。 加えて、近年の名水ブームが都市住民の背中を押すようにして、地産地消や直販活動の核とな り、農山漁村の新たな魅力づくりに貢献しています。 (5)生産性の高い海 本県の海岸線の総延長は772km(全国13位)で、日本の三大干潟のひとつである豊前海は幼稚 魚の育成場として重要な役割を果たしており、県南部のリアス式海岸は天然の良港であるととも に、魚類養殖に適した静穏域を形成しています。本県は瀬戸内海からの内海水と黒潮からの外洋 水が混合するため生産性が高く、海洋地形は変化に富み、多種多様な海の幸をはぐくんでいます。 2 豊かな地域資源 本県には自然環境の優位さに加え、様々な地域資源が存在します。 全国一の源泉数を誇る温泉を始め、宇佐神宮や富貴寺大堂、臼杵磨崖仏などの国宝に代表される多 くの観光資源、国東市国見町のケベス祭りや杵築市大田のドブロク祭りなど地域に根付いた伝統行 事、地元の新鮮で安全な食材を使った様々な郷土料理、さらに、臼杵市の味噌・醤油、全国トップク ラスの出荷額を誇る宇佐や日出の焼酎といった地場産業も地域資源という意味から捉えることが必要 です。 10 ○気象 ○平均気温: 16.8℃ ○最高気温: 33.3℃ ○最低気温: 1.9℃ ○降水量 :1,656mm ○河川 ○1・2級河川:3,063.1km(全国12位) ※総務省:社会生活統計指標(平成21年) ※国土交通省:河川管理統計(平成22年) ○森林面積 ○温泉 ○民有林面積 うち人工林面積:213千ha(全国14位) うち天然林面積:154千ha(全国18位) ○源泉数: 4,790孔 (全国 1位) ○湧出量:298,227㍑/分(全国 1位) ※林野庁:森林資源の現況(平成19年) ※大分県生活環境部調べ(平成21年) ○自然公園面積 ○自然公園面積:174,849ha (全国 7位) ※大分県生活環境部調べ(平成22年) ○海岸線と干潟面積 ○農地面積 ○海岸線 :771,844m (全国13位) ○干潟面積: 3,728.9ha(全国 5位) ○耕地面積 :58,200ha ○中山間農業地域: 71.5% ※国土交通省:海岸統計(平成22年) 海岸生物環境調査報告(環境庁:1998.3) ※第57次大分農林水産統計年報(平成21年) 世界農林業センサス(平成17年) ○農林水産業の有する公益的機能の評価額 全 国 89兆4,439億円 大分県 1兆2,550億円 項 目 農 業 林 業 水産業 合 計 評価額(億円) 備 考 全 国 大分県 82,226 1,500 国土の保全、水源かん養、 保健休養など 702,638 10,258 国土の保全、水源かん養、 二酸化炭素吸収、保健休養など 109,575 792 物質循環補完機能、環境保全機能、生態系保全機能など 894,439 12,550 農業(農村) 有機性廃棄物 処理機能 4億円 気候緩和機能 2億円 土壌浸食防止 機能 71億円 保健休養機能 218億円 合計 1,500億円 水源かん養機能 1,205億円 林業(森林) 保健休養機能 648億円 化石燃料代替機能 34億円 水源かん養機能 3,310億円 二酸化炭素 吸収機能 127億円 全 国:農業・林業(日本学術会議) 水産業(㈱三菱総合研究所) 大分県:大分県農林水産部調べ 水産業(漁村) 生命財産 保全機能 44億円 保養・交流・教育機能 88億円 物質循環 補完機能 247億円 表面崩壊 防止機能 1,534億円 合計 1兆258億円 表面浸食防止機能 4,605億円 生態系 保全機能 279億円 合計 792億円 環境保全機能 134億円 11 第2 章 多様な生産活動の展開 3 本県は豊かな自然環境や恵まれた地域資源を背景として、バランスよく、しかも特色ある農林水産 業を展開してきました。変化に富んだ地形・気候や豊富な水資源は、農業では平野部の米、白ねぎか ら高原地帯のトマトや畜産物、林業では全国3位の蓄積量を誇るスギ、水産業では豊後水道の関あ じ・関さば、養殖魚、水産加工品や豊前海のアサリなど、多種多様な農林水産物を育んできました。 また、近年は農林水産物の直販所の増加、グリーンツーリズム、ブルーツーリズムへの積極的な取 組、食品加工業への地元原材料の供給、生産部門と流通部門との強い結びつきなど農林水産業の新た な広がりが見られるようになってきました。 第 章 2 大分県農林水産業産出額の推移 九州各県の農林水産業産出額(平成21年) 産出額(億円) 産出額(億円) 3000 5000 3 4500 2500 4000 3500 2000 1500 農業 1,746 農業 1,520 農業 1,353 1000 林業292 500 水産業 600 0 7年 林業193 水産業 542 12年 農業 4,005 3000 2500 農業 1,339 農業 1,313 林業163 林業188 林業165 水産業 383 水産業 380 水産業 383 17年 20年 21年 2000 1500 1000 500 0 農業 1,313 林業165 水産業383 大分 農業 1,376 農業 2,098 農業 1,274 林業118 水産業318 福岡 農業 3,004 農業 3,073 林業58 林業70 林業11 水産業 958 林業122 林業218 水産業332 水産業343 水産業 710 佐賀 長崎 熊本 宮崎 鹿児島 水産業239 ※産出額:農 業(農林水産省:生産農業所得統計) 林 業(農林水産省:生産林業所得統計) 水産業(農林水産省:海面漁業生産統計調査) 内水面については、大分県水産振興課調べ 木材生産 (4.2%) 花き (3.5%) 大分県産出額 (1,861億円) 九州産出額 (20,167億円) 米 (16.1%) 米 (10.3%) 野菜(いも含) (16.4%) 野菜(いも含) (21.6%) 果実 (7.7%) 果実 (5.8%) 畜産 (23.0%) 花き (3.4%) 栽培きのこ 類生産等 (4.6%) 農業 (その他) (3.9%) 畜産 (32.3%) 海面漁業 (9.9%) 農業 (その他) (6.7%) 木材生産 2.1% 全国産出額 (101,947億円) 米 (17.7%) 野菜(いも含) (22.5%) 果実 (6.8%) 畜産 (25.9%) 花き ※注 平成21年数値 (3.4%) 九州産出額には、内水面漁業・養殖業の生産額は含まない 12 内水面漁業・ 養殖業 (1.1%) 農業 (その他) (5.2%) 海面養殖業 (9.6%) 海面漁業 海面養殖業 (8.3%) (7.9%) 栽培きのこ 類生産等 1.6% 海面漁業 (9.6%) 海面 養殖業 (4.0%) 木材生産 栽培きのこ 内水面漁業・ (1.8%) 類生産等 養殖業 (2.2%) (0.9%) 大分県の主要な農林水産物 品 目 農 業 林 業 水 産 業 項 目 単位 大分県 全国順位 出 典 ねぎ 生産量 t 14,800 8 1 みつば 生産量 t 1,290 5 1 にら 生産量 t 2,760 10 1 ピーマン 生産量 t 4,290 7 1 ハウスみかん 生産量 t 2,690 3 2 日本なし 生産量 t 10,500 11 2 カボス 生産量 t 6,587 1 3 ホオズキ 生産量 万本 95 1 3 バラ 生産量 万本 1,230 8 4 肉用牛 飼養頭数 頭 65,300 12 5 乳用牛 飼養頭数 頭 15,400 18 5 スギ 生産量 千㎥ 648 4 6 乾しいたけ 生産量 t 1,375 1 7 生しいたけ 生産量 t 1,398 16 7 まだけ 生産量 千束 89 1 7 タチウオ 生産量 t 1,837 2 8 クルマエビ 生産量 t 119 2 8 ガザミ類 生産量 t 268 3 8 養殖ヒラメ 生産量 t 1,477 1 8 養殖ブリ 生産量 t 14,638 3 8 その他の養殖ブリ類 生産量 t 1,933 2 8 天然ウナギ 生産量 t 37 2 8 オイカワ 生産量 t 126 2 8 塩干加工品 生産量 t 7,207 9 9 ※ 出典 1 農林水産省:第85次農林水産省統計表 野菜生産出荷統計(平成21年) 2 農林水産省:第85次農林水産省統計表 果樹生産出荷統計(平成21年) 3 大分県農林水産部園芸振興室調べ(平成21年) 4 農林水産省:第85次農林水産省統計表 花き生産出荷統計(平成21年) 5 農林水産省:第85次農林水産省統計表 畜産統計(平成21年) 6 農林水産省:木材統計(平成22年) 7 林野庁:特用林産基礎資料(平成21年) 8 農林水産省:第57次農林水産統計年報(平成21年) 9 農林水産省:水産物流通統計年報(平成21年) 13 第2 章 4 基礎的な生産構造 農林水産業従事者は、減少を続け、高齢者の割合も 大きくなっていますが、担い手の規模拡大や団塊の世 代の新規参入などのチャンスであり、今後、新たな展 開が期待されます。 一方、目標の600に近づいている集落営農組織や7 割を超えるほ場整備率、16市場による豊富な原木供給 体制、県一漁協による漁業者支援体制の整備、あるい はまた、試験研究機関等で集められ、実証されてきた 第 多くの貴重な情報など、生産を支える基盤も着実に蓄 積されています。 章 2 4 〈農業〉 ○農業従事者 ○耕地 ○耕地面積 :58,200ha ○耕地利用率 : 90.7% ○水田基盤整備:28,077ha(73.6%) ○総農家数 :46,623戸 ○主業農家数 : 5,144戸 ○基幹的農業従事者数:34,462人(65歳以上:68.0%) ○農業法人数 : 419法人 ○集落営農法人数 : 158法人 ※農林水産省:第57次大分農林水産統計年報(平成21年) 大分県農村整備計画課調べ(平成22年) ※世界農林業センサス(平成22年) 大分県農山漁村・担い手支援課調べ(平成22年) 大分県集落・水田対策室調べ(平成22年) 主業副業別農家数の推移(販売農家) 総農家数の推移 年 年 2 55,681 7 17,894 48,381 12 16,064 42,021 17 35,215 22 29,512 0 15,690 17,267 17,111 2 73,575 15,927 7 64,445 11,318 12 57,711 52,482 7,970 16,414 11,558 46,623 25,364 22,763 22 5,144 5,833 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 80,000(戸) 0 20,000 42,021 29,512 30,000 基幹的農業従事者数の推移(販売農家) 年 2 10,907 7 6,640 12 8,776 1,967 4,496 4,255 0 14 11,344 14,287 8,891 17,696 42,336 4,474 6,005 6,389 17 2,810 5,438 4,647 22 15,965 10,000 20,931 22,011 23,417 20,000 38,128 35,297 34,462 30,000 40,000 53,304 15 ∼ 29 30 ∼ 49 50 ∼ 59 60 ∼ 64 65歳以上 50,000 48,381 35,215 18,535 10,000 55,678 25,505 8,687 17 6,263 6,189 販売農家 自給的農家 23,337 60,000(人) 40,000 主業農家 準主業農家 副業的農家 50,000 60,000(戸) ○大分県の試験研究成果事例 ○気象予測を考慮した潅水技術による夏秋トマトの裂果軽減 技術を開発 ○夏秋ピーマンのタバコガ被害、軟腐病に対する新しい防除 技術を確立 ○地球温暖化に対応し品質低下の少ない水稲新品種を選定 ○年内に出荷できるカンキツ新品種「大分果研4号」を育成 ○マーケットニーズに対応したトルコギキョウのF1品種「ミ オシリーズ」を育成 ○「勝福平」「萬福8」 「玉吹雪」など優良種雄牛を造成 ○効率的な肉豚生産を可能とする凍結精液による人工授精法を 開発 ○高周波蒸気複合乾燥機による効率的な木材乾燥技術を確立 ○しいたけ乾燥時の燃料消費量を削減できる効率的な操作技術 を確立 ○新たな養殖種として期待されるカワハギの種苗量産技術を開 発 ○県産カボスを用いた餌による養殖ブリの肉質改善技術を開発 ○海域特性に合わせたヒジキ養殖技術を開発 〈林業〉 ○林業従事者 ○森林組合作業班員 : 823人 ○乾しいたけ生産者数:4,217戸 ○生しいたけ生産者数: 321戸 ※大分県林務管理課:森林組合の現況(平成21年) 大分県林産振興室:特用林産物需給表(平成22年) 森林組合作業班員数の推移 しいたけ生産者数の推移 年 年 2 146 7 196 985 791 12 123 17 90 451 331 368 281 300 1,577 535 443 388 21 174 0 446 600 1,522 7 1,017 39歳以下 40 ∼ 59歳 60歳以上 823 1,200 1,500 535 9,660 6,802 12 809 900 9,125 2 4,907 657 7,459 511 5,418 17 4,200 358 4,558 21 4,217 321 4,538 1,800 (人) 0 2,000 4,000 乾ししいたけ 生しいたけ 6,000 8,000 10,000(戸) 〈水産業〉 ○水産業従事者 ○海面漁業経営体数 :2,983経営体 ○海面漁業就業者数 :5,217人 ○水産加工場従業者数 :2,030人 ○内水面養殖業経営体数(延べ): 60経営体 ※漁業センサス(平成20年) 大分県水産振興課調べ(内水面養殖業経営体数 平成22年) 海面漁業経営体数の推移 小型底びき網 刺網 釣り 年 2 771 907 7 545 826 12 511 872 17 402 616 20 370 513 0 1,000 1,801 1,178 1,730 1,066 1,574 1,307 1,181 1,009 684 743 2,000 その他の漁業 海面養殖業 567 5,224 3,000 2 1,400 7 1,050 415 4,582 12 710 270 4,236 15 655 229 3,238 176 海面漁業就業者数の推移 年 3,850 2,550 2,250 1,795 20 570 1,503 2,983 4,000 5,000 6,000 (経営体) 0 2,000 2,040 2,420 2,510 2,280 2,157 2,720 1,920 1,610 10,010 7,940 7,080 1,222 5,952 15 ∼ 39歳 40 ∼ 59歳 60歳以上 女性 987 5,217 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 (人) 15