...

太陽系の科学 (`10)= (TV)

by user

on
Category: Documents
0

views

Report

Comments

Transcript

太陽系の科学 (`10)= (TV)
事務局 開講
記載欄 年度
科目名(メディア)
2010年度
=
科目
区分
専門科目
太陽系の科学
科目
コード
履修
制限
1563602
(’10)=
無
単位
数
2
(TV)
〔主任講師(現職名): 吉岡一男(放送大学教授)
〕
〔主任講師(現職名): 海部宣男(国立天文台名誉教授)
〕
講義の概要
近年、太陽系の理解は急速に進んでいる。無人探査機など新たな観測手段によって惑星や衛星の詳しい様子が分かってきた
ことに加え、冥王星の仲間である太陽系外縁天体が多数発見され惑星の外側に広大に拡がる太陽系の外縁部が見えてきた。
そうした新しい情報をもとに、太陽系の形成と46億年にわたるその歴史が具体的に理解され、また、地球を他の諸惑星との比較
でとらえる比較惑星学が、新たに確立してきた。さらに、太陽系以外の恒星を回る惑星が続々と発見され、われわれの太陽系を
無数の惑星系の中のひとつとして考え、その特徴や位置づけを研究する比較惑星系学も生まれつつある。本講義はこれら科学
の新たな発展を広く網羅し、分かりやすく解説して、太陽系について現代科学が獲得した斬新な見方と理解を提供する。学生
諸子は本講義を履修することで、われわれの地球、環境、そして人間存在そのものをも、科学的な視点で考えることができるよう
になるだろう。
授業の目標
放送大学では太陽系に関するまとまった講義は一時途絶えていたが、この間、太陽系の理解は急速に進んだ。地球環境や文
明の未来が社会的関心を呼ぶようになったいま、太陽系の物理的・歴史的な理解は、市民がもつべき基本的教養としても、また
人類社会の現在と未来を科学的に考える上でも、重要である。本講義は、一新された太陽系の構造、起源と歴史の理解に加
え、新たに成立しつつある比較惑星学・比較惑星系学をも基礎に、地球とその上の生物、人間を見直すことを目標としている。
現代社会に生きる教養人として、本講義により新しい太陽系像を身につけ、太陽系・宇宙の大きな空間と時間スケールで地球と
その上で進化してきた人間・生物を考える視野を育てて欲しい。
履修上の留意点
本講義は2009年度までの『宇宙からの情報('05)』の後継講義として、ただし大きく内容を変えて開設する。また、以前開設され
ていた『太陽系の科学』(小尾・吉岡)が力学を中心とした内容であったのとも大きく異なり、近年太陽系探査や観測の前進を踏
まえて獲得された広く新しい理解を内容とする。従って力学の理解を深めたい受講生は、上記教科書『太陽系の科学』(放送大
学)を参考にされたい。本講義の内容にかかわる参考書としては、「シリーズ現代の天文学」(評論社刊)第1巻『人類の住む宇
宙』、同第9巻『太陽系と惑星』がある。やや専門的になるが『惑星地質学』(東京大学出版会)も、よい参考になるだろう。
回
テ ー マ
1 太陽系の「発見」
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
本講義の導入として、人間による太陽系の認識の発展を、
「発見」をキーワードとして整理する。かつて人々にとって日
月五惑星は神だった。太陽系はどのように発見され、認識
され、理解されてきたか。惑星の動きの観察から成立した最
海部宣男
初の科学である天文学、地動説への転換、望遠鏡とともに 海部宣男
進んだ太陽系の拡大をたどり、冥王星問題の背景となった (国立天文台 (国立天文台
名誉教授)
名誉教授)
最近の大きな発見まで触れる。
【キーワード】
星座、惑星の運動、天動説、地動説、天体力学、暦、冥王
星問題、太陽系外縁天体
惑星の運動は、天体間に働く万有引力という概念の成立に
よってどのように理解されるか。彗星の運動や惑星をまわる
衛星の運動も同様に説明されることなど、太陽系を支配す
る力学について、入門的に概説する。さらに、太陽系の惑
天体力学と惑星の運 星の軌道が長い年月安定であることやその理由を理解す 吉岡一男(放 吉岡一男(放
2
動
送大学教授) 送大学教授)
る。
【キーワード】
力と運動、ケプラーの法則、万有引力、天体力学、太陽系
の安定性
回
テ ー マ
3 地球と月
4 太陽と地球
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
私たちが住む惑星・地球について、その形成、構造、プ
レートテクトニクス概念の成立などによって理解されてきた
内部運動、海洋、気候などを理解する。また地球に一番近
い天体である月について最新の探査データを元にその真 吉川 真
の姿に触れ、その誕生についての考え方を知る。さらに、 (JAXA宇宙科
学研究本部
地球と月の相互作用や、暦との関係を理解する。
准教授)
【キーワード】
地球の内部構造、地球の歴史、プレートテクトニクス、大陸
と海洋、月、巨大衝突説
吉川 真
(JAXA宇宙科
学研究本部
准教授)
太陽系の引力の中心である太陽がどのような天体であるか
を、その内部構造の説明を通して学ぶ。また、その外層構
造や表面で起きている現象についても学ぶ。そして、太陽
表面から放たれる放射や太陽風などが惑星にどのような影
響を及ぼしているかについて学ぶ。とくにその例として、地 吉岡一男(放 吉岡一男(放
送大学教授) 送大学教授)
球の気候変動に及ぼす太陽の影響を挙げる。
【キーワード】
太陽の内部構造、水素燃焼反応、太陽表層の活動、太陽
の放射、地球の気候、ミランコヴィッチ・サイクル
1960年代から打ち上げが始まった数多くの太陽系無人探
査ロケットにより、惑星や衛星についての理解は非常に大き
な飛躍を遂げた。地球型の小型岩石惑星、特に金星と火
星については驚くべき発見が相次ぎ、地球を含めた比較惑
星学が発展しつつある。木星や土星など巨大惑星の衛星 長沼 毅(広
無人探
機
げ も、それぞれに特徴的な活動を示すことが明らかになり、惑
無人探査機が広げる
も それぞれに特徴的な活動を示すことが明らかになり 惑 島大学准教
5 惑星観
星物理学の理解の飛躍をもたらした。ここではまず、そうし 授)
た惑星探査機の活躍を概観する。
長沼 毅(広
島大学准教
授)
【キーワード】
宇宙開発、無人探査機、バイキング、ボイジャー、ガリレオ、ホイヘ
ンス、比較惑星学
6 金星と火星:地球の
兄弟星
地球は太陽系の中で、金星と火星の間に位置している。地
球とは似ても似つかない、灼熱地獄とも言うべき表層環境を
持つ金星に対し、かつて豊富な水が循環していた火星は、
現在では完全に凍結し極度に乾燥している。人類が惑星
全体の単位で環境問題を考えるきっかけとなったこれら2つ 宮本英昭(東 宮本英昭(東
の惑星の姿を、最新の探査データと共に概観し、地球環境 京大学准教 京大学准教
授)
授)
へのメッセージを読み取ることを試みる。
【キーワード】
地球型惑星、二酸化炭素、水の存在条件、気候変動、温
暖化、生命の存在
7 地球型惑星の比較
外国を旅することで、かえって自国について理解が深まるこ
とがある。同様に、地球と似た天体を調べることは、地球の
深い理解へとつながるはずだ。ここでは特に、地表面の痕
跡や熱損失などのキーワードで地球型惑星を比較し、地球
の特異性と他天体との類似性について考察する。なぜ地球 宮本英昭(東 宮本英昭(東
に人類が存在するかという究極的な問いに対するヒントを探 京大学准教 京大学准教
授)
授)
りたい。
【キーワード】
火山、プレートテクトニクス、水、衝突現象、クレーター、月
回
テ ー マ
8 巨大惑星の世界
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
太陽系を外側から見れば、ごく内側を回る小さな水星、金
星、地球、火星は、ほとんど目に留まらない。惑星系として
の太陽系の主役の座を占めるのは、外側を大きく回る木
星、土星、天王星、海王星の巨大惑星である。巨大惑星
と、それらを回る多彩なリング、衛星などを概観し、太陽系 吉岡一男(放 吉岡一男(放
送大学教授) 送大学教授)
の基本的な構造を把握する。
【キーワード】
太陽系の構造、巨大惑星、惑星の物理量、太陽系の質量
と角速度の分布
太陽系で最も火山活動が活発な天体は、地球ではなく巨
大惑星の衛星である。巨大惑星の衛星には、地下に海が
存在するもの、温泉が噴き出ているもの、さらには極度に歪
なものや表面が無数の断層で引きちぎられているものなど
が知られており、驚くべき多様性を持つ。近年の探査で
宮本英昭(東 宮本英昭(東
巨大惑星の衛星た 次々と明らかにされた新事実を整理し、地球や小惑星との
京大学准教 京大学准教
9
ち:驚くべき多様な世 比較を試みることで、この多様性の持つ意味合いについて
授)
授)
界
議論する。
【キーワード】
ガリレオ探査機、カッシーニ・ホイヘンス探査機、潮汐加熱、間欠
泉、地球型惑星
小惑星や彗星のような「太陽系小天体」というものがどのよう
な天体なのかを、最近の観測や探査の結果を参照しながら
概観する。また、これらの天体の分布や軌道運動、物理的
小惑星と彗星、隕石 性質を知り、小惑星や彗星が太陽系の起源を調べる鍵に
10
なっていることを理解する。さらに隕石、流星そして天体の
と流星
地球衝突問題について知識を深める。
吉川 真
吉川 真
(JAXA宇宙科
学研究本部
准教授)
吉川 真
(JAXA宇宙科
学研究本部
准教授)
海王星の軌道付近やその外側に、近年、多数の小天体が
発見されている。これらを太陽系外縁天体と総称するが、
冥王星もその1つである。また、冥王星については、2006年
に惑星ではなくて準惑星と定義された。さらに、より遠方に 吉川 真
も天体が発見され始めた。このような太陽系外縁天体につ (JAXA宇宙科
学研究本部
いて現在までに分かったことを理解する。
准教授)
吉川 真
(JAXA宇宙科
学研究本部
准教授)
【キーワード】
小惑星、彗星、太陽系小天体、隕石、流星、オールト雲
11 太陽系の果て
【キーワード】
冥王星、太陽系外縁天体、カイパーベルト、オールトの雲、
太陽系のサイズ
太陽系がどのように形成されたのかについて、最新の理解
を述べる。歴史的な考察につづき、理論と太陽系外縁天体
の発見など観測から得られた現代の太陽系形成論を概観
する。講義で見てきた太陽系の諸天体や多彩な特徴が、見 海部宣男
海部宣男
太陽系誕生のシナリ 事に説明できることがわかり、われわれが住む地球という天
(国立天文台 (国立天文台
12
オ
体についても理解が深まるだろう。
名誉教授)
名誉教授)
【キーワード】
太陽系の特徴、カントの星雲説、原始太陽系星雲、京都モ
デル、雪境界線、惑星の成長時間
回
テ ー マ
13 無数の惑星の中で
内 容
執 筆 担 当放 送 担 当
講 師 名講 師 名
(所属・職名) (所属・職名)
太陽系外の恒星を回る惑星が、続々と発見されている。で
は過去の太陽系外探査は、なぜ成功しなかったか、1995年
の第一発見をもたらした観測手法はどういうものかを説明す
る。ついで、生まれかけの星(原始星)をまわる原始惑星系
円盤の電波観測や赤外線観測を概観する。太陽系での常 海部宣男
海部宣男
識とは全く違うことで衝撃をもたらしたこれら太陽系外惑星 (国立天文台 (国立天文台
系の特徴、それを含む新しい惑星系形成論、またその中で 名誉教授)
名誉教授)
の太陽系の位置づけについて述べる。
【キーワード】
太陽系外惑星、ドップラー法、灼熱巨大惑星,楕円軌道惑
星,軌道安定性
太陽系外の無数の恒星を回る惑星が普遍的に存在する
ことが分かった現在、地球外生命の探求も現実味を帯びて
論じられている。ここでは、地球外生命が存在する可能性
が議論されている太陽系天体として、火星、エウロパ、タイ
長沼 毅(広
他の惑星・衛星に生 タン等について考察する。その上で地球外生命の発見の
島大学准教
14
意義を考察し、さらに太陽系外惑星の生命探査計画につ
物は存在するか?
授)
いも述べる。
長沼 毅(広
島大学准教
授)
【キーワード】
火星、エウロパ、ガニメデ、タイタン、エンケラドゥス、系外惑
星
15
地球の生物:
過去・現在・未来
これまでの講義で得られた太陽系についての知見を踏ま
え、地球とその上で進化してきた生命の歴史を概観する。さ
らに地球生物系の未来にはどのような可能性があるか、時
らに地球生物系の未来にはどのような可能性があるか 時
海部宣男
間スケールに応じた予測を考察し、私たち人間という存在 海部宣男
(国立天文台
(国立天文台
を見直してみよう。
名誉教授)
名誉教授)
【キーワード】
地球史と生命史、人間活動と環境、地球の未来、環境の変
動、人類文明
Fly UP