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組織反応陽性荷電鉄コロンドのプロテイン銀 と 塩化金による現像
岡山医誌 (1997) 109, 151∼156 組 織 反 応 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ ン ドのプ ロ テ イ ン銀 と 塩 化 金 に よ る現 像 岡 山大学 医学 部解 剖 学第 二講座(主 任:村 上宅 郎教 授) 村上 宅 郎,蘇 衛 東,洪 大塚 珞 珈,朴 大勳 愛二 健照 会 セ オ病 院(院 長:瀬 尾憲 治博 士) 瀬 尾 憲 (平成9年8月11日 Key words: Cationic iron colloid, protein silver, gold physical chloride, 治 受理) development, Bodian's Prussian silver 言 た.後 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ドで 染 色 した 試 料 は,一 般 reaction, impregnation 混 合 水 溶 液 で10分 緒 blue 間 還 元 し,蒸 留 水 で充分 洗 っ 染 色 は 省 略 し た. 鉄 コ ロ イ ド処 理 し た 切 片 の 一 部 は,プ ロテ イ に フ ェ ロ シ ア ン化 カ リ ウ ム と塩 酸 で処 理 し,組 ン 銀 や 塩 化 金 に よ る 現 像 を お こ な わ ず,従 織 と反 応 した 鉄 コ ロ イ ドをPrussian 方 法 でPrussian blue反 応 と して 検 出 して い る1).し か し,鉄 コ ロ イ ド と組 織 との 反 応 が 弱 い 場 合 に はPrussian blue反 redで 応 blue反 来 の 応 を 行 いnuclear fast 後 染 色 し た1,2). 以上 の切 片 はすべ てバ ルサ ム で透徹 して光 顕 も弱 く,染 色 結 果 の 判 定 に 苦 しむ こ と が あ る2). 観 察 し た. 本稿 は これ を補 うた め の プ ロ テ イ ン 銀 と塩 化 金 結 に よ る現 像 法 を紹 介 す る. 果 脳 には神 経細 胞 を囲 む陰性 荷電 硫酸 化 プ ロテ 材 料 と 方 法 オ グ リ カ ン(perineuronal 0.1Mカ ド液(pH コ ジ ル酸 緩 衝4%パ 7.2)で ラ ホル ム ア ル デ ヒ 灌 流 固 定 し たICRマ glycans)が ウ スの 脳 のパ ラ フ ィ ン 包 埋 標 本3)か ら10∼15μmの 厚さ あ り陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ドに よ く反 応 い て 述 べ る. 大 脳 皮 質 と小 脳 核 の プ ロ テ オ グ リ カ ン の 鉄 コ トとカ コ ジ ル 酸 と共 に 煮 沸 す る こ とに よ っ て 調 1.5)で proteo す る3∼5).以 下 こ の プ ロ テ オ グ リ カ ン の 所 見 に つ の切 片 を作 製 し,塩 化 鉄 を ヒ ドラ ジ ン ヒ ドラ ー 製 した 微 細 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ド(pH sulfated ロ イ ド反 応 は 従 来 のPrussian 処 に 観 察 で き た(Fig. 理 した2). blue反 1A).プ 応 で明 瞭 ロ テ イ ン銀 と塩 化 金 処 理 に よ る現 像 で こ れ ら の プ ロ テ オ グ リカ ン この切 片 を1%プ ロテ イン銀(Albumosesilber, Merck)水 溶 液 に3∼4時 で1∼2分 間 洗 っ た.次 に,同 切 片 を1%塩 金 水 溶 液 に20∼30分 浸 し,蒸 留 水 で10∼15分 っ た後 に1%ハ は 一 層 明 瞭 に 観 察 で き,そ 間浸 した後 に蒸留 水 イ ドロ キ ノ ン ・5%ホ の 網 目構 造 も明 ら か に 観 察 で き た(Fig.1B). 化 小 脳 皮 質(小 洗 ea)の ルマ リン 脳 糸 球)と 海 馬(Fasciola 鉄 コ ロ イ ド反 応 はPrussian は 非 常 に 微 弱 で あ っ た が(Figs. 151 ciner blue反 2A, 2A 応で Inset), 152 村上 宅 郎:他4名 Fig. 1B Fig. 1A Fig. 1A and Inset. (pH 1.5), stained Sections from treated with with nuclear detectable with the rat potassium fast Prussian cerebral cortex, ferrocyanide red. Some blue neurons reaction after which and HCl possess the were stained for Prussian marked cationic with blue perineuronal iron colloid cationic sulfated staining iron reaction and colloid counter proteoglycans (arrowheads). •~250, Inset: •~800. Fig. 1B and Inset. (pH 1.5), Sections and sulfated from treated with proteoglycans (arrowheads). •~250, the rat protein are clearly cerebral silver and and cortex, which gold chloride sharply were for stained physical demonstrable by with cationic iron colloid development. Perineuronal the development physical Inset: •~800. プ ロ テ イ ン銀 と塩 化 金 に よ る現 像 で 明 瞭 か つ 高 考 い コ ン トラ ス トで観 察 す る こ と が で き た(Figs . 2B, 2B Inset). 大 脳 皮 質,小 察 本 研 究 は 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ドで染 色 し た 標 本 脳 皮 質,海 馬 台 で プ ロ テ イ ン銀 をプ ロテ イ ン銀 と塩 化 金 で 現 像 す る と,従 来 の と塩 化 金 に よ る現 像 で神 経 線 維 と くに 細 い 線 維 Prussian が 明 瞭 に 可 視 化 さ れ た(Figs. 1B, 2B, 2B Inset). 組 織 と結 合 し た 鉄 コ ロ イ ドを 明 瞭 に 可 視 化 で き Prussian る こ と を示 し た.こ blue反 応 で は,こ の よ う な神 経 線 維 の blue反 応 よ り一 層 強 い コン トラス トで の現像 法 はす で に知 られて 明 瞭 な観 察 は で きな か っ た(Figs. 1A, 1A Inset, お り,山 2B, で あ る ジ ア ミ ン とチ オ カ ル ボ ヒ ドラ ジ ドで 処 理 2B Inset). 神 経 膠 細 胞,血 鉄 コ ロ イ ド(pH 管 内 皮 や 他 の 細 胞 は 陽性 荷 電 1.5)と こ れ に つ づ くPrussian 田 とそ の 共 同 研 究 者 は,陽 性 荷電 物質 し た 脾 臓 の 標 本 をプ ロ テ イ ン 銀 と塩 化 金 で 現 像 し て,血 管 内皮表 面 の陰 性荷 電 基に 結合 した ジ blue処 理 あ る い は プ ロテ イ ン銀 と塩 化 金 現 像 処 ア ミ ン とチ オ カ ル ボ ヒ ドラ ジ ドを現 像 可 視 化 し 理 に 反 応 し な か っ た. て い る6). 本 研 究 の 鉄 コ ロ イ ド処 理 を 省 略 した 予 備 的 実 験 で は,プ ロ テ イ ン 銀 と塩 化 金 に よ る処 理 の み 組 織 反 応 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ ン ドの プ ロ テ イ ン 銀 と塩 化 金 に よ る現 像 Fig. 2B Fig. 2A Fig. 2A and Inset. stained Sections with Prussian lycans Fig. 2B are Inset:•~450. and Inset. and thin Sections cationic sulfated reaction so 800, with from cationic blue that from iron protein で はperineuronal chloride. silver. Purkinje sulfated rat cerebellar colloid and counter-stained they show the coterx (pH 1.5), a slight rat (pH are Arrow P the iron colloid proteoglycans gold 153 with nuclear Prussian blue cerebellar 1.5) and cortex treated clearly demonstrated indecates some cell. •~800, (A) treated (B) with hippocampal fasciola potassium ferrocyanide fast and the fibers red. reaction silver physical cinereum and Perineuronal sulfated (arrowheads). hippocampal protein by nerve and with P Purkinje fasciola and gold development concomitantly cinereum chloride. stained (Inset), HCl for proteog cell. •~ , stained Perineuronal with or protein developed silver with Inset: •~450 proteoglycansは 維8)は 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ド処 理 後 にPrussian も ち ろ ん の こ と小 脳 皮 質 海 馬 の プ ロ テ オ グ リカ blue反 応 を示 す.も ン様 網 目構 造 は 決 し て染 色 され な か っ た(未 発 ロ テ イ ン銀 と塩 化 金 に よ る現 像 処 理 に 強 く反 応 表 所 見).従 した(未 っ て,本 研 究 で 示 し た 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ドで処 理 し た 後 の プ ロ テ イ ン 銀 と塩 化 金 に 対 す る 陽 性 反 応 は 同 鉄 コ ロ イ ドの 組 織 と の 反 応 (結合)を 反 映 して い る こ とは 明 らか で あ る. Prussian blue反 応 で は通 常 観 察 で きな い神 経 終 ち ろ ん,こ れ らの 線 維 も プ 発 表 所 見). しか し,一 方 で 本 研 究 で 用 い た 現 像 法 は神 経 とくに その 終 末 を特 異 的 に染 め る とされ るBodian 氏 渡 銀 法 と原 理 的 に 同 じで あ り9,10),本研 究 で 現 像 され た 神 経 終 末 はBodianの 渡 銀効 果 を反 映 末 線 維 が プ ロ テ イ ン 銀 と塩 化 金 に よ る現 像 法 で して い る可 能 性 が あ る.事 実,本 明 瞭 に 可 視 化 さ れ た こ と も,同 現 像 法 が 有 用 で イ ド処 理 を 省 略 し た 予 備 的 実 験 で は,プ あ る こ と を示 して い る と思 わ れ る.坐 骨神 経 を ン 銀 と塩 化 金 に よ る 現 像 処 理 の み で 神 経 終 末 が 構成 す る神 経 線 維7)や脊 髄 の 白 質 と髄 質 の神 経 線 軽 度 で あ る が 染 色 さ れ た(未 発 表 所 見).従 っ て, 研究 の鉄 コロ ロ テイ 154 村上 鉄 コ ロ イ ド処 理-プ 宅 郎:他4名 ロ テ イ ン 銀 ・塩 化 金 現 像 に ま り,本 研 究 に お け る現 像 で は,プ ロ テ イ ン銀 対 す る神 経 線 維 終 末 の 強 い 反 応 は プ ロ テ イ ン銀 が 組 織 と反 応 した 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ドに 結 合 し, の 現 像 効 果 に 同 銀 の神 経 親 和 性(媒 染 効 果)が 次 に 銀 を イ オ ン化 イ 頃向 に従 っ て 金 に 置 換 して 色 重 な っ た.もの と思 わ れ る.な お,プ ロ テ イ ン銀 調 を整 え て い る こ と に な る. と塩 化 金 に よ る 現 像 処 理 で は,細 胞 核 と核 小 体 結 語 も媒 染 さ れ る の で,特 に 後 染 色 を 必 要 と し な い. わ れ わ れ の 先 の 研 究 で は,陰 ドで 処 理 し た小 腸 のPaneth細 塩 化 第 二 鉄 を ヒ ドラ ジ ン ヒ ドラー ト と カ コ ジ 性 荷電 鉄 コ ロイ 胞 の 果 粒 はPrus ル 酸 と共 に 煮 沸 して 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ドを 調 製 sian blue反 応 に 陽 性 で あ っ た11).一 方,本 研 究 し た(Murakami の 予 備 実 験 で は,陰 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ドで 処 理 し で マ ウ ス の 脳 切 片 を染 色 し,そ た小 腸 のPaneth細 胞 の果粒 は プ ロテ イン銀 と ン 化 カ リウ ム と塩 酸 でPrussian 塩 化 金 に よ る 現 像 に 反 応 し な か っ た.ま 予 備 実 験 で,陰 た,同 性 荷 電 鉄 コ ロ イ ド処 理 を 省 い て et al, 1986).こ の コロイ ド の後 フ ェ ロシア blue反 応,あ る い は プ ロ テ イ ン 銀 と塩 化 金 で 物 理 的 現 像 処 理 を 行 っ た.そ の 結 果,現 像 法 の 方 が よ り強 く明 直 接 プ ロ テ イ ン銀 と塩 化 金 処 理 を行 った とこ ろ, 瞭 な コ ン トラ ス トを産 む と い う利 点 が あ る こ と Paneth細 が わ か っ た.こ 胞 の 果 粒 は 見事 に 染 色 さ れ た(未 発 表 の現像 法 で神 経周 囲硫 酸化 プ ロ 所 見).こ れ らの 所 見 は プ ロ テ イ ン 銀 は 陰 性 荷 電 テ オ グ リカ ン や 神 経 終 末 線 維 が 光 顕 下 に 明 瞭 に 物 質 で あ る こ と を 示 して い る と考 え られ る.つ 可 視 化 さ れ た. 文 1) Seno S, Akita physiochemical Histochemistry T, 献 Ono T and Tsuji T: Fine-granular characteristics and histochemical (1985) 82, 307-312. cationic iron colloid. use for the detection Its preparation, of ionized anionic groups. 2) Murakami T, Taguchi T, Ohtsuka A, Sano K, Kaneshige T, Owen RL and Jones AL: A modified method of fine-granular cationic iron colloid preparation: Its use in light and electron microscopic detection of anionic sites in the rat kidney glomerulus and certain other tissues. Arch Histol Jpn (1986) 49, 13-23. 3) Murakami T, Taguchi T, Ohtsuka A and Kikuta A: Neurons with strongly negative-charged surface-coats in adult rat brain as detected by staining with cationic iron colloid. Arch Histol Cytol (1993) 56, 13-21. 4) Murakami T, Ohtsuka A and Taguchi T: Neurons with intensely negatively charged extracellular matrix in the visual cortex. Arch Histol Cytol (1994) 57, 509-522. 5) Murakami T, Ohtsuka A, Taguchi T and Piao DX: Perineuronal neurons in the brain and spinal cord: A histochemical and adult mice. sulfated proteoglycans and electron microscopic and dark study of newborn Arch Histol Cytol (1995) 58, 557-565. 6) Ueda H, Fujimori O and Abe M: Histochemical elium lining the splenic blood vessels in the rat. analysis of acidic glycoconjugates in the endoth Arch Histol Cytol (1996) 59, 389-397. 7) Toda K, Nishida K, Inoue H, Ohtsuka A and Murakami T: Strongly anionic sites in peripheral axons of the rat sciatic nerve: Light and electron microscopic detection using cationic iron colloid. Arch Histol Cytol (1995) 58, 485-492 . 8) Murakami T, Ohtsuka A and Ono K: Neurons with perineuronal sulfated proteoglycans in the mouse brain and spinal cord: Their distribution and Golgi's silver nitrate. and their reactions to lectin Vicia villosa agglutinin Arch Histol Cytol (1996) 59, 219-231. 組 織 反 応 陽 性 荷 電 鉄 コ ロ ン ドの プ ロ テ イ ン銀 と塩 化 金 に よ る現 像 155 9) Bodian D: A new method for staining nerve fibers and nerve endings in mounted paraffin sections. Anat Rec (1936) 65, 89-97. 10) Bodian D: The staining of paraffin section of nervous tissues with activated fixatives. protargol. The role of Anat Rec (1937) 66, 153-162. 11) Ohtsuka A and Murakami T: Fine anionic iron colloid and its use in light and electron microscopic detection of cationic sites in the rat kidney. Arch Histol Jpn (1986) 49, 543-552. 156 村上 Physical development of tissue-reacted protein Takuro 宅 郎:他4名 silver cationic iron colloid with and gold chloride MURAKAMI1), Wei Dong Su1), Luo Jia HONG1), Da Xun PIAO1), Aiji OHTSUKA1)and Kenji SEO2) 1)Section of Human Morphology, Department of Anatomy, Okayama University Medical School, Okayama 700, Japan (Director: Prof. T. Murakami) 2) Kensho-Kai Seo Hospital, Fukuyama, Japan (President: Dr. K. Seo) Rat brain sections were treated with fine granular cationic iron colloid, which was prepared by boiling ferric chloride with hydrazine hydrate and cacodylic acid (Murakami et al., 1986). The sections were then treated with ferrocyanide and HCl for Prussian blue reaction or with protein silver and gold chloride for physical development. Physical development had an advantage over Prussian blue reaction in that it produces clear and highly contrasted images under a light microscope. Thus, the perineuronal sulfated proteoglycans of the nerve cells were clearly demonstrated by physical development. and the fine processes