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熊本県民主医療機関連合会 精神科専門研修プログラム

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熊本県民主医療機関連合会 精神科専門研修プログラム
熊本県民主医療機関連合会 精神科専門研修プログラム
Ⅰ. はじめに
様々な社会システムの急激な変化に伴い、そこに発生する現代人の精神科領域問題も多様化しています。そして、
その結果として精神科医師に求められる技術も広範囲にわたるものとなっています。実際の事例として統合失調症や
躁鬱(そううつ)病などの内因性疾患だけでなく、ストレス性疾患、心身症、老年期精神疾患、登校拒否・摂食障害に代表
される思春期の危機、中年期危機、などライフサイクルからみた不適応が多方面に及んでいます。
Ⅱ. プログラムの概 要
1. 研修期間
4 年間
2. 研修場所
病院名:菊陽病院
3. 研修の目的
研修の目的を 6 つの項目に分けて紹介します。
① 臨床精神医学の修練
すべての精神科疾患について診断し、治療方針を決定できる。
② 種々の形態の精神科医療に対応できる
一人で外来医療から入院医療まで責任を持てる。デイケア、総合病院での外来、リエゾンなどに対応し、場を使いこ
なし、治療システムを作る能力持つ。
③ チーム医療能力・態度
治療チームを組織し、民主的集団医療を実践できる。
④ 地域(社会)精神衛生的な視野を育て、自らの役割を発揮できる。
病院の外に出て行き、精神保健センター・作業所・家族会・患者会・福祉・保健所と協力し保健予防活動や、「共同の
営みとしての医療」が実践できる。
⑤ 患者様を取り巻く社会のあり方に警鐘を発していく
精神科では「生活と労働の場で疾病を捉える視点」は従来から実践されていますが、さらに社会に問いただしていく
姿勢が必要です。医療制度・福祉制度・政治のあり方にも目を向ける必要があります。
⑥ 臨床研究能力・態度
一人で臨床精神医学のレポートが書ける。
4. 研修の目標
①
②
③
④
精神科面接の基本(受容的・支持的)を習得し患者―医師の良好な関係を築ける。
必要十分な病歴(現病歴だけでなく発達的・家族関係的・社会的視点を含めた)の聴取とカルテ記載ができる。
精神状態の基本的な捉え方と適切な記述ができる。
精神科症状に対する初期的対応と治療が行える。 不眠、譫妄、不安認知症、興奮、幻覚妄想、自殺念慮などに適
切な初期対応が行え必要に応じて精神科専門医にコンサルト出来る。
⑤ 精神疾患の common disease に対して急性期回復過程を学ぶ。
z 認知症(脳血管性を含む)・うつ病・統合失調症。
z ストレス関連疾患・身体表現性疾患。
z アルコール依存症・症状精神病・不安性障害やその他の疾患。
⑥ 向精神薬の基本的使い方(作用・副作用など)を学ぶ。
⑦ 精神科特有の治療構造について学ぶ。
⑧ 精神科のチーム医療について学ぶ。
⑨ 法律・倫理に照らしながら人権に配慮した医療の有り方を学ぶ。
z 精神保健福祉法医療、保険制度、障害者自立支援法、守秘義務、倫理委員会、インフォームドコンセント。
⑩ 家族の気持ちに共感し支援できる。家族教室への参加。
⑪ 地域精神医療について学ぶデイケア・生活支援センター・グループホーム・訪問看護センターなどの社会復帰施
設の見学、自助グループへの参加。
⑫ 一般科病院における精神医療について学ぶ。
z 心身相関やリエゾンについて。
5. 研修スケジュール(研修の流れ)
<研修 1 年目(卒後 3 年目)>
状態像の評価ができ、急性期状態に対応できるようになる。統合失調症やその他の急性期疾患が対象。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
⑩
⑪
精神病理学用語が使いこなせる。(所見を取り記載する)
必要かつ充分な病歴を取れ、正しい症状評価・精神医学的診断ができる。
必要な身体的検査や心理テストのオーダーができる。
治療計画を立てて実行できる。特に入院の必要性や、自傷他害などの攻撃的行為の可能性を評価できる。
精神科救急とクライシス・インターベンションのトレーニング。統合失調症・躁鬱病・薬物依存・せん妄など急性期へ
の対応。家族相談への対応。
患者さんが信頼感を持つような治療的面接が行える(支持精神療法)。ご家族に対しても支持的面接ができる。
向精神薬を使いこなせる。
急性精神病状態の寛解過程をつかむ。
集団精神療法的な場を経験する。
治療スタッフとの良好な協力共同関係をつくれる。(情報収集・治療計画立案およびその実行)
できれば学会発表をする。
<研修 2 年目>
慢性期患者も含め単科精神病院でのトータルな治療が行えるようになる。統合失調症・神経症・境界例が対象。
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
統合失調症病患者治療・リハビリテーションを、OT・PSWなどと協力して行える。(作業療法の処方・デイケア)
慢性神経症、境界例を扱う。
集団精神療法・家族療法について学ぶ。
力動精神医学的観点を持った面接が次第に行える。
思春期ケースなどに対して家族力動を考慮した治療を経験する。
保健所などの地域精神衛生の場への参加をする。
学会発表を1回はする。
<研修 3 年目>
人・アルコール・嗜癖など幅広い患者への対応、地域精神医療。
① 老年精神医療。(認知症など老年期の精神疾患のシステミックな勉強)
② アルコール依存症の治療。
z 大集団療法。
z 一般科との連携。
z アダルト・チルドレン、ギャンブル依存症、摂食障害などの嗜癖についても学ぶ。
z セルフヘルプグループ
③ 地域精神保健(保健所アドバイザー他)の場で、地域のスタッフと協同して精神保健活動を行う。
④ デイケア
⑤ 学会発表を行う(一つ以上)、できれば臨床論文を一報書く。
<研修 4 年目>
精神科専門医および精神保健指定医を取得する。
①
②
③
④
精神保健指定医資格をとる。病棟管理・スタッフ教育。
リエゾン・コンサルテーション。【くわみず病院】
専門分野を決めて深めていく。
臨床精神医学論文を書く。(4 年間で少なくとも一本の論文を書く)
6. 研修の方略
① 勉強会カンファレンス治療プログラム等など
z 抄読会 : 水曜日の早朝学習 7:30~8:30
z 医局症例検討会 : 毎月曜日医局員全員で患者さんの診察をした後カンファレンスを行う 14:00~15:30
z 病棟での主治医毎のカンファレンス : (毎週)9:15~9:45
z OT(作業療法)カンファレンス : 毎週水曜日 9:00~10:00
z レクチャー臨床 : 研修医向けクルズス講義 21 項目(※)
z 臨床研修委員会 : 毎月第1・第3火曜日 14:30~15:30
z 全職種参加症例検討会 : 毎月第3水曜日 14:00~16:00
z 虐待防止ネットワーク会議 : 隔月第3月曜日 17:30~20:00
z 事例検討会(民生員、保健婦、保健所、福祉課、警察などを交えた)
z 各種家族教室(統合失調症・男性女性アルコール)への参加
z アルコール依存症リハビリテーションプログラム、ギャンブル依存症リハビリテーションプログラムへの参加
z 時間外の院外の精神科関連の勉強会研究会に関してはオーベンと一緒に参加する
(※) 精神科講義(クルズス)一覧
1) 精神科における主治医とは何か
2) 病歴の取り方・表現の仕方・カルテの記載の仕方・予診の取り方
3) 精神科ソーシャルワーク
4) 精神科看護
5) 処方約束事
6) 精神科救急
7) 向精神薬の使い方
8) 精神科医薬の歴史
9) アルコール依存症の診断と治療
10) 統合失調症の診断と治療
11) 気分障害の診断と治療
12) デイケア
13) 精神科作業療法
14) 老年期精神障害の診断と治療
15) 脳波の読み方
16) 人格障害~境界性など
17) 精神分析既説
18) 心理テスト・SST・発達心理
19) 集団精神療法~集団を扱うコツ
20) 精神医療を巡る情勢・精神保健福祉法
21) PTSD・解離性障害
② 精神科救急 : 研修開始第3週目から副当直を経験する。●週目から当直を経験する。また昼間院内急変に関し
ても積極的に駆けつけ、救急の技量を磨く努力をする
③ 外来研修
z 初診患者の予診聴取・本診及び再診への陪席
z くわみず病院 診察への陪席
z 事例検討会への参加
z 保健所・市町村役場
z 乳幼児健診業務の見学
z 措置鑑定業務の見学
z 社会復帰施設の見学
z 精神科デイケア
z 生活支援センター
z 訪問看護ステーション
z 精神科グループホーム
7. 研修の評価
① 研修目標(Ⅱ- 4.)に対しての自己評価及び指導医による評価を行う。5 段階評価(1~5)
評価 5
研修目標を 100%充分に達成している。
評価 4
研修目標を 75%達成している。
評価 3
研修目標を 50%達成している。
評価 2
研修目標を 25%達成している。
評価 1
十分な情報がなく評価できない。
② 毎週担当オーベンと研修状況をチェックする
各研修医の研修医ノートを見ながら行う。
③ 月 1 回精神科専門研修委員会で評価を行う
z 所定の用紙に目標・受け持ち症例・総症例数・自己評価・感想などを記入して提出する。
z 研修に関与した医師だけでなく他職種もいれて総合的に研修評価を行う。
④ レポート
研修期間中に担当した入院患者全例のケースレポート、退院した患者の退院時サマリー、外来患者(予診-本診-
再診)のケースレポートを提出する。
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