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平成 21 年度における活動とその成果の報告

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平成 21 年度における活動とその成果の報告
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東洋大学人間科学総合研究所紀要 第 12 号(2010) 287-291
■研究所プロジェクト① 「日本における地域と社会集団─公共性の構造と変容─」
平成 21 年度における活動とその成果の報告
大豆生田 稔*
研 究 課 題:日本における地域と社会集団-公共性の構造と変容-(平成 19~21 年度)
予 算:平成 21 年度 1,244,000 円
研究代表者:大豆生田稔
研究分担者:森公章、神田千里、白川部達夫
◆研究計画の概要
本研究は日本、および朝鮮半島、中国など東アジアをも含む地域の 10 世紀から 20 世紀初頭に至る
長期的な地域空間を対象として、生成・展開・消滅を繰り返した社会集団の構造、およびその変容を
実証的・総合的に解明することを目的とする。日本を含む東アジア地域には、古代~中世~近世~近
代と、その歴史的展開のなかで、さまざまな性格の地域が重層的・複層的に生成・展開した。それら
は、むらを構成する共同体から、より広範な地域的結合へと重層的に存在すると同時に、多面的なつ
ながりが複層的に諸地域を結んだ。そして、多種多様な地域の存在と、それらの諸関係のあり方を現
実に具体化したのが、地域内・地域間に存在した多様な社会集団であり、それがとりもつ公共性であ
った。それらの社会集団は、農業・鉱工業・商業など諸産業の営み、宗教・宗派などの組織、自治的
な行政組織、同業者・同職者の集団、植民地における居留民社会、企業を構成する多様な組織など、
実に多様な契機をもって形成され、それ自体多様な組織構造を有しながら運動し変貌を遂げていった。
本研究は、歴史的・地域的空間において展開した社会集団について、時代や地域を通じてみられる
特質や共通性、またそれらが具現している公共性の内実について実証的に明らかにすると同時に、さ
まざまな時代や地域におけるケーススタディをもとに、研究代表者・分担者間の討論を通じてそれら
を比較検討し総合する作業を重ねて、日本におけるその特質を解明しようとするものである。
* 人間科学総合研究所研究員・東洋大学文学部
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東洋大学人間科学総合研究所紀要 第 12 号(2010)
◆研究活動
⑴ 出張による史料調査
・熊本市およびその周辺における西国武士の関連遺跡踏査
・西宮市立郷土資料館および尼崎地域研究史料館における岡本家文書の調査・収集
・山口県文書館における、同業組合関係史料の調査・収集
⑵ 史料整理、データ処理等の作業
・イエズス会関係文書のうちルイス・フロイスの畿内布教に関する書翰を解読し、翻刻、電子ファ
イル化を進めた。
・西宮市立郷土資料館において上瓦林村岡本家文書を撮影し、また尼崎地域研究史料館の同家文書
マイクロフィルム版から焼き付けを行った。
・山口県内に事業を展開した防長米同業組合の関係書類・事業報告書・歳入出関係書類をデジタル
カメラで撮影し、ファイルを分類整理し、その一部を翻刻・集計した。
⑶ 研究会
・第 1 回研究会
日時:2009 年 5 月 27 日(水) 14:40~15:30
研究の打合せ(今年度の研究計画について)
・第 2 回研究会 研究所プロジェクト④「歴史のトランスナショナル化とその問題点」
(研究代表者:
岡本充弘)との共催
日時:2009 年 6 月 24 日(水) 17:00~19:00
報告者:下田啓(米国ヴァッサー大学)
報告題名:アメリカにおける日本研究の現状
・第 3 回研究会 公開研究会
日時:2009 年 7 月 13 日(月) 16:30~17:30
報告者⑴:松野聡子(外部講師)
報告題名:近世在地修験の除病祈祷と庶民信仰
─文久二年、秋田藩領における麻疹流行を事例に─
報告者⑵:荒川 将(外部講師)
報告題名:維新期における「藩議会」形成過程─下館藩を中心として─
・第 4 回研究会
日時:2009 年 7 月 22 日(水) 14:40~15:30
研究の打合せ(研究の中間報告と今後の研究計画について)
・第 5 回研究会
日時:2009 年 10 月 14 日(水) 16:00~17:00
研究の打合せ(研究の中間報告と今後の研究計画について)
大豆生田:平成 21 年度における活動とその成果の報告
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・第 6 回研究会
日時:2010 年 1 月 13 日(水) 18:00~19:00
研究の打合せ(研究の取りまとめについて)
・第 7 回研究会 公開研究会
日時:2010 年 1 月 21 日(木) 15:00~18:00
報告者⑴:白田拓郎(外部講師)
報告題名:満州」居留民社会における主食消費の展開
報告者⑵:森 公章
報告題名:西国国衙と武士の展開
─相撲人と武士、『因幡国伊福部臣古志』の検討から─
□研究代表者・研究分担者の活動報告
⑴ 森 公章
1) 西国武士の生成と展開に関する検討
昨年度の因幡方面への現地踏査の成果をふまえて、今年度は武芸としての相撲と武士の関係、西
国国衙と武士の展開過程を究明すべく、因幡国の在庁官人伊福部臣氏を事例として検討を進めた。
その研究成果は下記の公開研究会で概要を報告し、また今年度の報告書に論文の形で掲載する。な
お、この研究との関連で、九州大学図書館所蔵の『因幡国伊福部臣古志』という古系図の写本を入
手・検討することもできた。
2) 西国武士の関連遺跡踏査
2009 年 10 月 30 日~11 月 1 日に熊本市およびその周辺に出張し、肥後国府や菊池氏の拠点など
を踏査することができた。昨年度に刀伊の入寇以降の九州武士団の展開過程を検討したが、今年度
は現地の景観などを実見することができ、西国武士団の拠点についての理解を深める上で有意義で
あった。
3) 研究報告
2010 年 1 月 21 日開催の公開研究会において、「西国国衙と武士の展開―相撲人と武士、『伊福部
臣古志』の検討から―」の題名で研究報告を行った。なお、この詳細は今年度の報告書に論文化し
て掲載する。
⑵ 神田千里
1) 禅宗関係史料の収集
一昨年以来の、近江の在地寺院(総持寺)の活動に関する史料の収集・翻刻作業が、一定の成果
をあげたことをふまえ、寺院僧侶による説法など、信者に対する言説を分析する作業を開始するた
めに、真宗とならんで戦国期に大きな影響力をもった教団である曹洞宗教団に関する基礎史料を収
集した。具体的には『曹洞宗全書』の史伝上・下、同語録一、三、及び『曹洞宗古文書』を購入し
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て研究室に配置し、常時使用する体制を整えた。
2) イエズス会関係文書の解読
昨年より始めた、日本に関するイエズス会関係文書、特に日本でよく知られており、また日本の
宗教にも詳細な報告を記しているルイス・フロイスの畿内布教に関する書翰の解読を進めた。これ
らの史料は、1598 年エヴォラで刊行された『イエズス会日本通信』(Cartas Qve os Padres e
Irmãos da Companhia de Iesus escreuerão dos Reynos de Iapão e China aos da mesma
Companhia da India e Europa, dês do anno de 1549 até o de 1580)が有名であるが、昨年の報告
書で 1565 年 1 月 20 日書翰について明らかにしたように、『イエズス会日本通信』に収録されたも
のは、現存する写本類と比較した場合、かなりの省略・改変が見られる。そこで、よく知られるフ
ロイス書翰の原形を復元すべく、本年はリスボン市科学学士院図書館所蔵の Cartas do Japãon に
収録されている 1565 年 3 月 6 日書翰、及び 1565 年 4 月 27 日書翰を翻刻し、業務委託により電子
ファイル化を行い、前者については、上智大学キリシタン文庫所蔵のローマイエズス会文書館 Jap.
Sin. 文書の写真を利用して校合を行い、訳文と共に本年度の研究報告書に掲載する予定である(科
学学士院図書館の掲載許可は既に得ている)。
⑶ 白川部達夫
1) 西宮市立郷土資料館・尼崎地域研究史料館 2009 年 7 月 29 日~31 日
西宮市立郷土資料館において上瓦林村岡本家文書の内、村内の紛争文書である村方騒動文書を撮
影した。岡本家は大庄屋を勤めたため、上瓦林村組数十カ村の村方騒動文書が残されている。前年
は尼崎地域研究史料館の同家文書マイクロフィルム版から焼き付けたが、史料が大部なこともあり、
焼き付けの手間が大幅にかかったので、途中になっていたものである。今年は直接文書から撮影を
行ったが、残念ながら目録が新しくなったために、旧目録では存在していたものが確認できなくな
っていた。やむを得ず最終日に尼崎地域研究史料館の同家文書マイクロフィルム版か焼き付けを行
うようにしたが、やはり全部は取り切れなかった。
2)「東アジア小農民社会と農民の土地所有」
(7/26 富山県富山市亀谷白樺ハイツ、シンポジウム「東
北アジアの交流と経営・文化」、金沢星稜大学 ORC 東北アジアプロジェクト主催)
公共性の性格は、その地域の社会集団のあり方により大きく変わってくる。前近代の東アジア社
会では村落ということが一つの社会集団であり、その基礎は農民の土地所有の構造に依存する。そ
の土地所有構造の構造を従来研究してきた質地請戻し慣行を中核とした日本の近世農民の所有構造
と同時代の中国(華南地方)と朝鮮の農民の土地所有構造の同質性と異質性を考えた。
⑷ 大豆生田稔
1) 山口県文書館における史料調査・収集(2009 年 8 月 4 日~7 日)
山口県文書館において、前年度から引き続き、明治末~大正初年の行政文書(「山口県庁文書」)
を調査し、『重要物産同業組合一件』、『農事組合』、『農事試験場一件』、『農事試験場』などの県庁
文書簿冊について、関係部分を抽出しデジタルカメラにより撮影した。山口県産米(防長米)の規
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格化・品質管理を目的とした「防長米同業組合」の、事業展開に関係する部分、とくに 1900 年前
後以降 1910 年代半ばにいたる時期の一件書類や事業報告書、視察報告書など、組合事業の特質を
具体的に把握できるような史料の収集につとめた。
2) 収集史料の整理
アルバイト雇用によって収集史料を分類・整理した。簿冊に綴じ込まれた順序にしたがって撮影
した電子化データを、同種史料ごとに分類し年代順に並べかえる作業である。
3) 研究成果の公開
本研究の研究成果は、人間科学総合研究所紀要、冊子体報告書などに公表する予定である。
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