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平成23年度成果報告 - 静岡大学創造科学技術大学院

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平成23年度成果報告 - 静岡大学創造科学技術大学院
特別教育研究経費
「高齢化・福祉社会を支える
ナノバイオ・テクノロジー研究の推進」
平成 23 年度
研究成果報告書
平成 24 年 6 月
静岡大学創造科学技術大学院
特別教育研究経費
高齢化・福祉社会を支える
ナノバイオ・テクノロジー研究の推進
―静 大 独 自 機 能 性 ナノマテリアルや医 療 用 補 助 計 測 装 置 で
よりよく食べる・よりよく暮らす―
平成 23 年度
研究成果報告書
平成 24 年 6 月
静岡大学創造科学技術大学院
目
1.
はしがき
2.
研究プロジェクト概要
次
1
2.1
研究プロジェクト名
2
2.2
研究プロジェクトの目的
2
2.3
研究プロジェクトの概要
3
2.4
提案型研究プロジェクト申請課題一覧
6
3.
平成 23 年度研究プロジェクト活動実績
4.
平成 23 年度研究プロジェクト研究成果
4.1
Ⅰ分野
高齢化対応新規高機能性食科学
7
12
4.1.1
天然変性タンパク質を用いた高齢者向け食品の安定化に関する研究
12
4.1.2
天然素材からの生体機能分子の探索と高機能化
15
4.1.3
食の品質保証のための香気成分生成反応の可視化技術の確立
26
4.2
Ⅱ分野 糖鎖チップ開発
33
4.3
Ⅲ分野 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基礎研究
63
4.4
Ⅳ分野 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
82
5.
平成 23 年度ナノバイオ研究に関わる新聞報道等
91
6.
終わりに
101
1. はしがき
「11 日午後 2 時 46 分ごろ、三陸沖を震源とする大地震があり、宮城県栗原市で震度 7 を観測した。東
京 23 区でも震度 5 強を観測するなど、北海道から九州にかけての広い範囲で震度 6 強〜7 の揺れに見舞
われた。地震の規模を示すマグニチュード(M)は 8.8。気象庁によると、記録が残る 1923 年以降、国
内で最大の地震という。(平成 23 年 3 月 12 日朝日新聞 1 面)。」3 月 11 日午後 9 時警視庁のまとめに
よると死者 60 名、行方不明 56 名、負傷者 241 名と発表された。
ちょうど 1 年後「未曾有の揺れと津波は、町の姿だけでなく住民の生活や人生も一瞬で変えた。生活
に利便性を支えてきた原発は、目に見えない恐怖となり、ふるさとから住民を遠ざけた。発生から 1 年。
多くの被災者には今も悲しみや苦労が続く。しかし、政治は揺れ動き、復興の歩みはなかなか早まらな
い。(3 月 11 日朝日新聞 1 面)」と報道され、全国の死者・不明者は 1 万 9131 名と発表された。
日本全体が氷の上を歩んだ 1 年のようであった。地震から津波、津波から原発、人知の結集と思われ
た様々な取り組みが一瞬で破壊された。“自然は恐るべし”と片付ける問題ではなく、早期復興を願う
のみである。
今回の震災に比べ優先順位では後になると思うが、「ライフ・イノベーションで健康大国」、「グリ
ーン・イノベーションで環境・エネルギー大国」の実現も大事であると思う。日本を象徴する企業、1946
年に設立された“ソニー”の没落と同時に日本の将来も衰退の気運に向かっていると思われるからであ
る。「生命」と「光・電子」を「ナノ・バイオ」というキーワードのもとに、分野横断的融合研究とし
て打ち出した「ナノバイオ科学」が 2 年目を終えた。方向としては間違いないが、肝心な研究費を如何
に確保するかが大きな悩みであった。今年度の研究費は何とか 40 万円程度で推移したが、大震災のしわ
寄せが来る次年度が怖い。
本プロジェクトは、如何に東西研究が融合できるかどうかが大事な課題である。東西の分野が違う研
究者が信頼し合って新しい挑戦をしないとイノベーションはあり得ないと思い、仕掛けてきた。学内で
も「ナノバイオ科学」を中心としたセンターや研究所を望んでいたが、一行も進まない状況であり、設
立を予定しているグリーン科学技術研究所や電子工学研究所に分散して裾を広げていくしかない。
本研究の推進に当たり、関わっておられる先生方、また本学の超領域本部の本部長、統括の各先生方、
また影で支えてくれました鴨志田安子さん、千切麻里衣さんに厚く御礼申し上げる。
プロジェクト代表: 創造科学技術大学院
朴
1
龍洙
2. 研究プロジェクト概要
2.1 研究プロジェクト名
高齢化・福祉社会を支えるナノバイオ・テクノロジー研究の推進
―静大独自機能性ナノマテリアルや医療用補助計測装置で
よりよく食べる・よりよく暮らす―
(以下、「ナノバイオ研究プロジェクト」と略記)
2.2 研究プロジェクトの目的
生 命原理 や機能 を光・電子・ナ ノテク ノロジ ーとの 融合に よるナ ノバイ オ科学 に展開
し 、イ ン フ ル エ ン ザ ウ ィ ル ス 吸 着 剤 や ナ ノ 計 測 装 置 等 の 高 齢 化 対 応 持 続 可 能 な 社 会 を
支える新たな科学技術を切り拓く。
2
2.3 研究プロジェクトの概要
3
4
5
2.4
提案型研究プロジェクト申請課題一覧
所属
I 分野
職名
氏名
高齢化対応新規高機能性食科学
1.
農学部応用生物化学科
教授
原 正和
2.
創造科学技術大学院
〃
〃
〃
理学部生物科学科
創造科学技術大学院
農学部応用生物化学科
〃
創造科学技術大学院
工学部物質工学科
創造科学技術大学院
教授
教授
教授
教授
教授
准教授
准教授
准教授
教授
准教授
特任助教
河岸 洋和
田中 滋康
塩井 祐三
森田 達也
丑丸 敬史
荻野明久
徳山 真治
村田 健臣
渡辺 修治
間瀬 暢之
Susanne
Baldermann
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
特任助教
特任助教
朴 龍洙
永津 雅章
三重野哲
川田 善正
岩田 太
川人 洋二
猪川 洋
村川 明子
尾形 慎
3.
II 分野
天然変性タンパク質を用いた
高齢者向け食品の
安定化に関する研究
天然素材からの生体機能分子の
探索と高機能化
食の品質保証のための香気成分
生成反応の可視化技術の確立
糖鎖チップ開発
創造科学技術大学院
〃
理学部物理学科
工学部機械工学科
〃
電子工学研究所
〃
創造科学技術大学院
〃
III 分野
研究課題
糖鎖チップ開発
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基礎研究
創造科学技術大学院
〃
〃
理学部生物科学科
農学部応用生物化学科
工学部物質工学科
創造科学技術大学院
〃
〃
教授
教授
教授
教授
助教
助教
特任助教
特任助教
特任助教
朴 龍洙
田中 滋康
山崎 昌一
徳元 俊伸
加藤 竜也
坂元 尚紀
尾形 慎
村川 明子
Vipin Kumar Deo
機能性ナノ粒子を用いた
ワクチン開発の基礎研究
IV 分野 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
創造科学技術大学院
理学部化学科
〃
〃
教授
准教授
准教授
准教授
小林
山中
小堀
三井
6
健二
正道
康博
正明
分子集合ナノマテリアルの
創製と機能
3. 平成 23 年度研究プロジェクト活動実績
(1) 第 1 回ナノバイオ科学セミナー
Integrated Biorefining in Western Canada: Fuels and Chemicals from Biomass
(西カナダの統合バイオリファイナリー:バイオマスから燃料とケミカルへの返還)
日時:平成 23 年 4 月 21 日 10:30~11:30
場所:静岡大学総合研究棟 414
講演者:Dr. Dabid Bressler
(カナダ、アルバータ大学)
(2) 平成23年度第ニ回ナノバイオ科学セミナー
「X線を使って分子の構造を見る」
日時:平成 23 年 6 月 17 日 15:00~16:00
場所:静岡大学農学部 B 棟 207 号室
講演者 豊橋技術大学 青木克之 名誉教授
7
(3) 平成23年度バイオサイエンス専攻セミナー・ナノバイオ科学講演会
日時:平成 23 年 7 月 28 日 13:30~17:30
場所:静岡大学 農学部共通教育A棟 301 号室
講演者 光産業創世大学院大学
教授 井出徹
浜松医科大学 医学部医学科
教授 鈴木哲朗
静岡大学 創造科学技術大学院 特任助教 Susanne Balderman
他 博士研究員2名学生4名
(4) 静岡大学国際シンポジウム 2011
-Initiatives for Crossing Boundaries within Science and Technology(超領域研究推進本部、ダブルディグリープログラムに基づくグローバルナノバイオテクノロ
ジー推進のための人材育成プログラム、 アジア、アフリカ環境リーダープログラム、日本生物
工学会、静岡観光コンベンション協会と共催 )
日 時 : 平 成 23 年 1 1 月 28 日 9: 45~ 17 : 0 0
1 1 月 29 日 9: 45~ 18 : 2 0
場所:静岡市産学交流センター B-nest
講演者
静岡大学
創造科学技術大学院
学長
伊東幸宏
研究担当理事
碓氷泰市
大学院長
永津雅章
教授
鈴木款
教授
近藤淳
教授
河岸洋和
教授
朴龍洙
教授
山崎昌一
助教
小谷真也
特任助教
Deo Vipin Kumar
特任助教
Susanne Baldermann
8
教育学部
教授
鳥居肇
准教授
黒田裕樹
教授
徳元俊伸
教授
藤原健智
教授
山内清志
教授
三重野哲
特任教授
Beatriz E. Casareto
客員教授
笠原順三
准教授
道林克禎
准教授
山中正道
准教授
近藤満
准教授
三井正明
講師
小池亨
講師
石原顕紀
教授
川田善正
教授
立岡浩一
教授
佐古猛
教授
吉村仁
教授
金原和秀
教授
脇谷尚樹
准教授
二又裕之
准教授
松田智
准教授
平川和貴
助教
岡島いずみ
電子工学研究所
教授
猪川洋
農学部
教授
原正和
教授
森田達也
教授
平井浩文
教授
王権
教授
小川直人
特任教授
露無慎二
准教授
加藤雅也
助教
加藤竜也
助教
一家崇史
助教
日野真吾
特任助教
大西利幸
特任助教
堀池徳祐
理学部
工学部
他学生41名
9
内閣府
参次官
ブラウンシュバイク
工科大学
浙江大学
副学長
釜山大学
教授
慶北大学
教授
メイヨー医科大学
助教
ラトガス大学
教授
サンクトぺテルプルグ
工科大学
モンゴル科学アカデミー
教授
教授
Martin Korte
他教員8名学生5名
Wei-Huan Fang
他教員7名学生19名
Hyun-jong Paik
他教員 2 名学生 6 名
Shin-Kyo Chung
他教員 2 名学生 5 名
Sungjo Park
他教員 1 名学生 1 名
KiBum Lee
他学生 2 名
Maxim Sychov
他学生 1 名
Bud MENDSAIKHAN
モーリシャス大学
教授
Rangeet Bhagooli
ライプニッツ研究所
教授
Schreiner Monika
教授
鈴木裕道
10
4.
平成 23 年度研究プロジェクト研究成果
4.1
Ⅰ分野
高齢化対応新規高機能性食科学
4.1.1 天然変性タンパク質を用いた高齢者向け食品の安定化に関する研究
12
4.1.2 天然素材からの生体機能分子の探索と高機能化
15
4.1.3 食の品質保証のための香気成分生成反応の可視化技術の確立
26
4.2
Ⅱ分野 糖鎖チップ開発
33
4.3
Ⅲ分野 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基礎研究
63
4.4
Ⅳ分野 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
82
11
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
Ⅰ-1.
天然変性タンパク質を用いた高齢者向け食品の安定化に関する研究
代表者
原 正和
農学部・教授
1.研究目的
高齢者介護の現場では、保存食品の需要が高い。食品の保存性の向上には、糖質素材が広く利用され
ている。しかし、素材によっては、独特な甘味など、食味に影響を与えるものが少なくない。甘味は、
味覚に敏感で薄味を好む傾向にある高齢者には、時としてマイナスのイメージを与えることがあり、無
味で安全な保存剤が求められる。本プロジェクトでは、恒常的に不定構造を維持できるよう分子進化し
た“天然変性タンパク質”を、食品保存剤として活用することを最終目的とする。われわれは、植物の
天然変性タンパク質の一種、デハイドリンが、生体分子や細胞を保護するなど、食品保存剤としての基
本的な性質を備えていることを見出した。また、デハイドリンは無味であり、食品の味に影響を与えな
い。しかし、これらの知見は、大腸菌で生産した組換えデハイドリンを用いて得られたものであり、天
然素材が好まれる食品分野では、そのまま利用しにくいのが現状である。現在、植物から天然のデハイ
ドリンを簡便に精製する技術はなかったが、昨年度、われわれは、野菜、特にカブとダイコンから、デ
ハイドリンを効率よく調製する事に成功した。本年度は、野菜から精製したデハイドリン及び、大腸菌
で合成したデハイドリンの食品保存剤としての性能を調査し、食品保存剤としての活用の可能性を精査
したい。
2.研究計画・方法
デハイドリンの食品保存剤としての機能を確認するため、以下の試験①~③を実施する。
①食品成分の低温及び高温安定化試験:種々の試験方法があるが、ここでは、食品に含まれるフラジャ
イルな成分を保護する作用を調査する。試験対象は機能性タンパク質(酵素:有機酸デヒドロゲナーゼ、
ルシフェラーゼ)とし、低温(-20~-80℃)及び高温(70℃)保存後の、活性の保持と凝集の有無を調
査する。比較対照として、トレハロース等の糖質を用いる。
②食品成分の乳化安定性試験:デハイドリンの乳化安定性を、モデルエマルジョン(ビタミン E)にお
ける乳化度(500 nm)
、加熱(85 度)による乳濁度の低下を指標に調査する。比較対照としてレシチン
を用いる。
③モデル食品の物性試験:デハイドリンを、ゼラチンゲル(3、7%)
、デンプンゲル(10、20%)に対し、
0.1、1、10%になるように加え、低温及び高温で放置し、硬さと弾性率をテクスチュロメータ等によっ
て測定する。離水量を遠心分離法によって測定する。
※以上の成果をまとめ、学会発表を行い、学術雑誌に投稿する。
12
MDH活性(%)
3.主な研究成果
120
100
80
60
40
20
0
濁度OD500
高齢化対応新規高機能性食科学
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
離水率(%)
上記の研究計画と方法に関おける①~③
を順次実施した。
①については、不安定タンパク質として、
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(MDH)を用いた。
本酵素は、複合体として活性を発揮するが、
凍結や高温などの温度ストレスによって複
図2 モデルエマルジョンVE
合体が崩壊し、活性を失う。この系を使って
図1 凍結安定性(MDH)試験
の安定性試験
デハイドリンのタンパク質保護作用を検証
60
した。図1に示すように、MDH は、凍結処理
50
によって、当初の活性の約 10%に減衰した。
40
30
しかし、デハイドリン(図中では DHN)を添
20
10
加した場合、0.1 mg/ml から 10 mg/ml の濃
0
度範囲で、濃度依存的に MDH の活性低下が軽
-DHN
+DHN
減した。この効果は、同濃度のトレハロース
(ポジティブコントロール)よりも高く、デ
ハイドリンが、凍結に弱いタンパク質の安定
図3 モデル食品デンプンゲ
ルの安定性試験
性を高めたことを示している。さらに、熱安
定性試験においても、デハイドリンは、MDH
の過熱失活を抑制した。
②では、デハイドリンの乳化安定性を、モデルエマルジョン(ビタミン E)における乳化度(500 nm)
の加熱(85 度)安定性で調べた。図2に示すように、デハイドリンの添加は、モデルエマルジョンの安
定性を損なう結果となった。これは、ビタミン E の水溶液中での可溶化を促進したとも考えられる。
③では、デンプンゲルとゼラチンゲルの作成を試みた。写真は、ゼラチンゲルの作成状況である。デ
ハイドリン(1 mg/ml)の添加の有無にかかわらず、ゲルの硬さや見かけに違いはなかった。一方、離
水率を遠心分離法で計測したところ、1 mg/ml のデハイドリン添加で、若干、離水率の低下を認めたも
のの、有意な離水率の改善は認められなかった。デンプンゲルについても、同様の結果となった。
①~③の結果を総括すると、デハイドリンは、タンパク質などの高分子の温度耐性(低温及び高温)
を向上させるが、エマルジョンやゲルの安定化には、ほとんど寄与しないことが分かった。デハイドリ
ンの加工食品への応用に関し、エマルジョンの安定性に配慮することを前提に、凍結や高温における高
分子成分の安定性を期待できることが分かった。
4.今後の展開
デハイドリンは、高齢者や障害者向けの食品開発に有効であるといえる。さらに、医薬品、細胞、臓
器の保存性向上にも利用できるであろう。デハイドリンは、ストレスを受けた植物で生成するため、
異常気象によって生じた規格外農作物や廃棄作物から調製することも可能であり、循環型社会の確立
にも貢献できる。
13
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
5.研究業績
(1) 学術論文・著書等
1) Hiroshi Hirata, Toshiyuki Ohnishi, Haruka Ishida, Kensuke Tomida, Miwa Sakai, Masakazu Hara, Naoharu
Watanabe (2012) Functional characterization of aromatic amino acid aminotransferase involved in
2-phenylethanol biosynthesis in isolated rose petal protoplasts. Journal of Plant Physiology, in press
2) Masakazu Hara, Daiki Torazawa, Tatsuo Asai, Ikuo Takahashi (2011) Variations in the soluble sugar and
organic acid contents in radish (Raphanus sativus L.) cultivars. International Journal of Food Science and
Technology 2011, 46, 2387–2392
3) Masakazu Hara, Yuri Shinoda, Masayuki Kubo, Daiju Kashima, Ikuo Takahashi, Takanari Kato, Tokumasa
Horiike, Toru Kuboi (2011). Biochemical characterization of the Arabidopsis KS-type dehydrin protein,
whose gene expression is constitutively abundant rather than stress dependent. Acta Physiologiae Plantarum,
33: 2103-2116
4) Masakazu Hara, Ikuo Takahashi, Michiyo Yamori, Toru Tanaka, Shigeyuki Funada, Keitaro Watanabe (2011)
Effects of 5-aminolevulinic acid on growth and amylase activity in radish taproot. Plant Growth Regulation,
64: 287-291
(3) 特許等
1) 特 願 2011-282111 発明 者:原 正和 出願人 :国立大 学法人静岡大 学、静岡 商工会議所
発明の名称:植物耐熱性誘導剤
2) 特願 2012-012202 発明者:原 正和、碓氷 泰市、尾形 慎、アディッティヤ クルカルニ
出願人:国立大学法人静岡大学、発明の名称:植物成長促進剤
(4) 国際会議発表
1) Masakazu Hara 'Histidine-rich metal binding peptides' as another category of metal binders in plants
-Dehydrin, starting from basics to application- Shizuoka University International Symposium 2011 Mon 28,
Tue 29 November, 2011
(6) 新聞報道等
1) 原 正和 SBS イブニング eye 6 時台特集 H23 年 9 月 28 日放送
14
高齢化対応新規高機能性食科学
Ⅰ-2.
天然素材からの生体機能分子の探索と高機能化
代表者
河岸 洋和
創造科学技術大学院・教授
分担者
塩井
田中
森田
丑丸
徳山
村田
荻野
創造科学技術大学院・教授
創造科学技術大学院・教授
農学部・教授
理学部・教授
農学部・准教授
農学部・准教授
創造科学技術大学院・准教授
祐三
滋康
達也
敬史
真治
健臣
明久
1. 研究目的
自然界には,人間社会に貢献しうる機能性分子を産生している未利用の天然資源がおびただしい数
として存在している。特にキノコは,地球上に 14 万種以上存在するという説がある。そして,そのほ
とんどが美味か否かは別として可食と言われている。多くのキノコが「体に良い」と言われるが,そ
の「体の良さ」
(健康増進効果,疾病予防・治癒効果)を分子レベルで研究された例は他の生物種に比
べて極めて少ない。
本研究では,天然資源,特にキノコかの生体機能分子の探索,構造決定,高機能化,評価を行い,
最終的には新しいカテゴリーの機能性食品・機能性材料などの開発を目指す。
2. 研究計画・方法
1) キノコを世界中から収集し,含水エタノール中で浸せき抽出する。エタノール抽出液は吸引濾過後,
減圧濃縮し,分液ロートでクロロフォルム可溶部と水可溶部に分ける。水可溶部はさらに酢酸エチ
ルと分配する。
2) 抽出物に対してバイオアッセイ(脳神経細胞保護活性,破骨細胞形成抑制活性,抗腫瘍活性等の評
価,細胞寿命延長効果)を行い,その結果を指標に HPLC 等を駆使して活性画分から活性物質の
単離を試みる。
3) 活性物質の構造を機器分析,化学反応によって決定する。
4) 活性物質の高機能化のため,配糖化,プラズマ照射等による構造改変を行う。
5) 活性物質の作用機構の解明を試みる。
6) 他のプロジェクトと共同して,活性物質のナノセンシング技術の開発を試みる。
(1)キノコからの機能性分子探索(河岸)
キノコを世界中から収集し,抽出物のバイオアッセイの結果を指標にクロマトグラフィーを駆使し
て,機能性分子の精製を行う。得られた化合物の構造を NMR,MS などの機器分析によって決定する。
(2)食用キノコのカスパーゼ様プロテアーゼの解析 (塩井)
担子菌類(キノコ)は種類も多く,分解者として生態系で重要な役割を担っている。6種類の食用キノ
コと6種類のプロテアーゼに対する合成基質を用いてプロテアーゼの探索を行ったところ,その種類
は様々で,キノコの種類,pH, キノコの成長条件や部位によって変化することを示した。特にエノキ
15
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
タケやエリンギで は,他のキノコと比較して高い活性を持つ酵素が存在することが明らかとなった。
また,今回用いたキノコ類では,全般的にプロテアソーム系 の酵素が多く存在するが,エノキタケや
ブナシメジではカスパーゼ系の高い活性を持った酵素が存在することがわかった。カスパーゼはプロ
グ ラム細胞死に関与することが知られているが,一部の動物を除いて関与するプロテ アーゼ本体は
わかっていない。そこで,これらのキノコからカスパーゼ様活性を持つプロテアーゼの精製と性質の
決定を試みた。これまでに, エノキタケカスパーゼ様酵素はほぼ均一なまでに精製され,20残基の
N末のアミノ酸が決定された。現在cDNAのクローニング中である。 未だ全長は決定されていない
が,予備的な結果から,この酵素は Ser プロテアーゼ で S41 peptidase superfamily に属することがわか
った。 今後は全長を決定後,発現系を組み立て,この遺伝子が間違いなくカスパーゼ様酵素の物かど
うかを活性の検出により確定していく。ホモロ ジー検索から,この酵素が本来の Cys プロテアーゼの
カスパーゼではなく Ser プロテアーゼでカスパーゼ様の活性を持つこと示している。興味深いことに,
この酵素 はカスパーゼとレグマイン活性の両者を持ち,
植物の Cys プロテアーゼの Vacuolar processing
enzyme と似ていたが,cDNA の相同性は見られなかった。また,塩耐性のタンパク質であるなど,植
物のカスパー ゼ様活性を持つ Ser プロテアーゼ,サスペースとの類似性も見られた。同じタイプ の酵
素がブナシメジでも確認され,今後はブナシメジの酵素についても解析を進め,このタイプの酵素が
広く分布していることを明らかにして いく。
(3)スギヒラタケの毒性発現機構解明(田中)
スギヒラタケの致死分子(致死性高分子とレクチンからなる)は,急性脳死を引き起こすが,脳には
血液・脳関門 (BBB) があるため通常では致死分子は脳へ到達ない。そこで中枢神経でこの致死分子が
BBB を破壊し,致死分子が BBB を通過して急性脳死がおこると仮説を立てた。これらの致死分子 BBB
を破壊するかどうかをグルコーストランスポーター (Glut 1)やタイト結合関連分子に対する抗体を用
いて免疫組織学的に検索する。さらに,レクチンに対する抗体を作製し,時間分解蛍光イムノアッセ
イ系により致死分子測定系を確立し,毒のスクリーニングに使用できるかどうか検討する。
(4)キノコの消化管免疫調節機能解明(森田)
徐々に進行している我が国の高齢化社会に向けて,ウエルネス分野の科学に大きな期待が寄せられて
いる。単なる長命ではなく QOL を高めた長寿であるためには,高齢者に望ましい食事戦略の構築が重
要である。加齢は種々の生体調節機能に変化をもたらすが,近年,加齢に伴う腸内細菌叢の変化は,
腸管のみならず全身性の免疫機能にも負の影響を与えることが指摘されている。従来からキノコには,
β—グルカンに代表される高分子多糖やエリタデニンなど多くの生体調節機能を持つ化合物が見いだ
されている。本研究では,消化管免疫調節機能に焦点を当て下記に示した一連のスクリーニングを実
施する。一連の試験は培養細胞または動物実験(ラット)を用いて実施する。
1)各種天然物素材のイムノグロブリン A およびムチン分泌量に及ぼす効果を大腸内容物で評価する。
2)各種天然物素材のムチン分泌促進作用を培養細胞において評価する。
(5)寿命延長効果をもつキノコ抽出成分の探索(丑丸)
昨年度,真核生物のモデル生物である出芽酵母を用いてのキノコの有用成分の迅速,簡便なスクリー
ニング法の確立,およびその作用機序解析法の確立し,さらに,その系を用いていくつかの有望な寿
命延長効果をもつキノコ成分(河岸より供与)の候補を見出した。
今年度は,1) より短期間で評価できるように系の改良,2) 見出された候補物質の寿命延長効果の確
認,3) さらに,新たな寿命延長効果をもつ未知の化合物を同定することを目指す。
(6)天然素材からの生体機能分子等の抗菌活性評価(徳山)
1) 抗 MRSA 活性測定法
MRSA(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)として,臨床分離の MRSA2932 株を使用する。液
体培地および寒天培地は,それぞれ TSB(トリプトケースソイブロス,Becton Dickinson 社)および TSA
(トリプトケースソイアガー,Becton Dickinson 社)を使用する。
TSB 培地で,振とう培養(30℃,20 時間)した培養液を,同培地を用いて 100 倍に希釈し,その 100
μl を TSA プレート(φ90 mm)に塗抹する。プレートの表面をクリーンベンチ内で乾燥させ,その上
に DMSO ( dimethyl sulfoxide)に溶解させた化合物または各種抽出物の溶液(10 mg / ml )1μlを滴下
16
高齢化対応新規高機能性食科学
した。静置培養後(37℃,20 時間)
,生育阻止円の有無で抗 MRSA 活性を判断する。
2) Candida 属酵母細胞伸長阻害活性測定法
Candida albicans NBRC 1060 の 1 白金耳量をサブロー培地 5ml(グルコース4%,ポリペプトン1%,
酵母エキス 0.75%,寒天 1.5%,pH 7.4,試験管φ18 mm)に移植し,振盪培養(30℃,24 時間)する。
この前培養液の細胞を生理食塩水(0。85%)で 2 度洗浄後,細胞濃度が 5×102 cells/ml になるよう
に,イーグル MEM 培地(日水製薬)に懸濁する。次に,この細胞懸濁液 198 l を 96 穴マイクロプレ
ートに分注した(約 100 cells / well )
。試料 2 l をウエルに添加し(最終濃度1%),静置培養(CO25%,
37℃,24 時間)後,倒立顕微鏡で細胞の形状を観察(100 倍)し,細胞伸長阻害活性を判断する。
(7)機能性物質の配糖体化による構造変換と高機能化(村田)
天然素材からの抽出された化合物には,健康の維持や増進効果をもつ生体機能分子が存在している。
これら機能性物質のさらなる構造変換および高機能化(高い水溶性,吸収性の増加,機能性の制御)
を目的として,糖質を加水分解するグリコシダーゼの糖転移反応をもちいた配糖体化を試みる。具体
的には,糖転移反応により糖が結合可能な水酸基をもつ機能性物質の配糖体化を行う。効率的な配糖
体化を行うために,高い糖転移能もつグリコシダーゼの探索および酵素反応条件の検討を行う。さら
に配糖体化された化合物をカラムクロマトにより分離精製後,各種機器分析法により構造の決定を行
う。
(8)生体機能物質のプラズマ照射による構造変換と高機能化(荻野)
アンモニア,酸素,窒素または希ガスを原料ガスとして生成したプラズマを生体機能物質に照射し,
物質の機能性向上や活性発現への影響を検討する。また,入射イオンエネルギーを制御し,物質の分
子構造に及ぼす影響を調べる。プラズマは,(i)静電プローブによるプラズマパラメータ計測,(ii)真空
紫外・可視域分光計測および(iii)四重極質量分析器による生成種の確認により評価し,生体物質への官
能基修飾に相関のある活性種,主鎖切断や還元・エッチング効果をもつ活性種やプラズマ発光の影響
について理論的な考察を加える。なお,物質の構造変化は,主として X 線光電子分光法(XPS)により測
定する。
3. 主な研究成果
(1)キノコからの機能性分子探索(河岸)
サケツバタケから小胞体ストレス抑制物質,骨芽細胞形成抑制物質,アカヤマドリからは小胞体スト
レス抑制物質,ガルガルからは骨芽細胞形成抑制物質,フミヅキタケ菌糸体からは植物生長抑制物質,
サクラシメジからは-マンノース特異的レクチンを得ることに成功した。これらはいずれも機能性食
品,医薬や診断薬になりうる可能性を有していた。
(2)食用キノコのカスパーゼ様プロテアーゼの解析 (塩井)
カスパーゼはプログラム細胞死(PCD)に関与することが知られているが,一部の動物を除いて関与
するプロテアーゼの本体はわかっていない.そこで,食用きのこからカスパーゼ様活性を持つプロテア
ーゼの精製と性質の決定を試みた.これまでに,エノキタケカスパーゼ様酵素はほぼ均一なまでに精製
され,決定した20残基のN末のアミノ酸配列を元にcDNAのクローニングを行った.この酵素は2
51アミノ酸からなる分子量 34.5kの Ser を活性中心とするプロテアーゼであることがわかった.ホモ
ロジー検索から,この酵素は S41 peptidase superfamily に属し,カスパーゼとの相同性は見られなかっ
た.このことは,この酵素が本来の Cys プロテアーゼのカスパーゼと異なり Ser プロテアーゼでカスパ
ーゼ様の活性を持つこと示している.また,この酵素はカスパーゼ活性の他にレグマイン様活性の両者
を持ち,植物の Cys プロテアーゼで PCD に機能する Vacuolar processing enzyme と似ていたが,cDNA
の相同性は見られなかった.同様に植物のカスパーゼ様活性を持つ Ser プロテアーゼ,サスペースとの
酵素化学的な類似性は見られたが,cDNA の相同性は見られなかった.ホモロジー検索から数種のキノ
コでこの酵素と高い相同性が見られた.また,同じタイプの酵素がブナシメジでも精製され,また性質
17
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
も同じであることが確認され,このタイプの酵素が広く分布していることが明らかとなった.このよう
な酵素化学的性質おそらく機能は類似しているが,構造が異なる酵素分子種については,進化の過程で
特に反応中心の開裂部位に変化が起きたことによるものと考えられる.酵素化学的類似性からキノコを
含むカスパーゼ様活性を持つ酵素が PCD に機能していることが示唆される。
(3)スギヒラタケの毒性発現機構解明(田中)
PPL のペプチド抗体及び native の PPL 抗体を精製し,表面プラズモン共鳴装置(Biacore)を用いて,
それぞれの抗体をセンサーチップに固定化し,計 337 種のキノコ抽出物を流すことでその結合を評価し
た。その結果,スギヒラタケ抽出物以外に顕著な結合を示す抽出物は認められなかった。
(4)キノコの消化管免疫調節機能解明(森田)
① 小腸内ムチン量は非絶食下では対照群に比べ LPC,HPC 群ともに有意な増加を示したのに対し,
絶食下では LPC 群のみで有意な増加がみられた。また,回腸杯細胞数は絶食・非絶食に関わらず群間
で差がなかった。② 消化管粘膜組織における Muc 発現量は LPC 群でのみ変化がみられ,空腸 Muc2
発現量の有意な増加が観察された。一方,胃,回腸の Muc 発現量に差はなかった。③ HT-29MTX とペ
クチンの共培養では,LPC(100 g /mL)でのみ有意な MUC5AC 分泌の増加(35%)が認められ,本作
用は LPS(1 g /mL)と同様であった。④ 脾臓由来のリンパ球組成及び CD4+T 細胞のサイトカインパ
タンに群間で差はなかった。一方,MLN での T/B 細胞比は対照群に比べ LPC 群で有意な増加が観察さ
れ,CD4+/CD8+ 細胞比は対照群に比べ HPC 群で有意な減少を示し,また,CD4+ T 細胞からの IFN-,
IL-10 分泌は LPC 群のみ有意な増加を示した。先の報告と同様,絶食下でもムチン分泌量の増大が認め
られたのは LPC であり,LPC では杯細胞数は変化せず空腸 Muc2 の発現上昇が認められた。また,本
作用は HT-29MTX 株でも確認され,LPC による小腸ムチン分泌量の増加は制御性分泌の刺激によると
考えられた。一方,非絶食下
でのみムチン分泌量の増加が
認められる HPC の作用には回
腸末端でのムチンの鬱滞が推
定された。免疫系への作用も
LPC でのみ顕著であったが,
本作用は全身性免疫の脾臓で
は認められず,MLN に限局し
ていた。IFN-は Th-1 型サイ
トカインであり,Th0 から Th2
への分化を阻害することが知
られている。LPC 摂取による
IFN-分泌促進は Th2 型の過剰な反応に起因するⅠ型アレルギーを抑制する可能性がある。自然免疫の
最前線である腸管バリア機能の中核を担うムチンの増大と,MLN における獲得免疫系への修飾はとも
に LPC のみでみられる。今後はこれら作用に関わる LPC の化学情報の実体および情報伝達機序の解析
を行っていく。
18
高齢化対応新規高機能性食科学
(5)寿命延長効果をもつキノコ抽出成分の探索(丑丸)
1) 寿命延長活性をもつ新規化合物の評価
昨年度スクリーニングで見出されたサナギタケ由来の SANA2 (Beauveriolide I)の寿命延長効果を評価し
その結果を河岸研と共同で報告した (Nakaya et al., Biosci Biotechnol Biochem., in press)。
2) スクリーニングで見つかってきている他の新規寿命延長候補物質
同様なスクリーニング系で,SANA2 以外にも候補物質を 4 つ絞り込めた。来年度,それに関しての評
価を引き続き行う予定である。
3) 寿命評価系の改良
現在用いている酵母は研究室酵母 BY4741 株であるが,この系統は定常期 2 週間培養でも 40%以上の生
存率を示す。短期間で評価できる系を確立するために,生存率が急速に低下する酵母株のスクリーニン
グを試みた。世界中から採取された研究室酵母でない種類の酵母 38 種類(Nottingham 大学 Edward Louis
博士より提供)を長期定常期培養したが,これまでのところもっとも生存率が低下したものでも 40%
弱程度に留まった。今後は培養条件を変更してこれらの株で評価を続けて行く予定である。
(6)天然素材からの生体機能分子等の抗菌活性評価(徳山)
赤キノコおよびチャナメツムタケ(P. lubrica)子実体,ミミナミタケ(Lentinellus cohleatus)
,シラガ
ニセホウライタケ(Crinipellis canescens)およびナラタケ(Armillaria mellea)培養菌体と培養液上清の
各種抽出物(96 サンプル)の抗真菌および抗 MRSA 活性を測定した。
① ミミナミタケ培養菌体ブタ
ノール抽出画分 No. 3 に抗
MRSA 活性が認められた。
② 赤キノコ子実体ヘキサンお
よび酢酸エチル抽出画,チャナ
メツムタケ子実体クロロホル
ム抽出画分,ミミナミタケ培養
液ヘキサン抽出画分および
SAKET24 に弱い抗 MRSA 活性
が認められた。
③ 全てのサンプルで Candida
albicans (NBRC 1060)の細胞
伸長を阻害する抗真菌活性は認められなかった。
(7)機能性物質の配糖体化による構造変換と高機能化(村田)
受容体基質として 6SGal-pNP 及び 6SGalNAc-pNP を用いた場合にシアル酸が転移したとみられる
生成物が HPLC で検出された。そこでカラムクロマトグラフィーで生成物を分離精製した。構造解析
の結果,それぞれの転移反応生成物が Neu5Ac2,3Gal6S-pNP m/z 709 [M+Na]+および
Neu5Ac2,3GalNAc6S-pNP m/z 739 [M+Na]+であることが明らかとなった.シアル酸転移酵素を用いた
硫酸化糖のシアリル化はこれまでに報告のない新しい研究成果である。
19
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
(8)生体機能物質のプラズマ照射による構造変換と高機能化(荻野)
実験に使用するマイクロ波励起表面波プラズマは,生体機能物質へ与える熱的負荷が小さいため,材
料のバルク特性を維持しつつ表面の機能性を改善・制御する応用に適している。また,プラズマプロセ
スの特徴である処理領域の微少性および
位置選択性を活かした複合処理は,生体機
能物質の高機能化や複数の機能を持つ多
機能材料の開発にも有効であると考えら
れる。これらの処理に,照射イオンのエネ
ルギー制御を加えることで,分子構造変換
の選択性や処理効率が向上することを期
待している。なお,利用するプラズマの状
態と得られる効果の関係を体系的に捉え,
プラズマ照射が材料表面に及ぼす影響を
理解するには,プラズマ中の活性種(ラジ
カル)の絶対密度を知ることが重要であ
る。一般的に,電気的に中性なラジカルの
測定は,プラズマ密度や電子温度の測定に
比べ極めて困難であり,ラジカルの種類毎に測定方法を考え,必要な機器を用意する必要が有る。ここ
では,生体機能材料のプラズマ処理において重要な役割を果たすラジカルとして,原子状の水素(H),
窒素(N)および酸素(O)の測定について検討した。これらの密度を吸収分光法で測定するには,真空紫外
領域(< 200 nm)の計測が必要となるため,一般に市販されているレーザーや光源の利用は困難である。
そこで,高密度プラズマの生成に適したマイクロ波放電によりプラズマを生成し,放電管内のガスを測
定したいラジカルに合わせて選択可能な吸収分光用光源を開発した。図 1 に開発した真空紫外吸収分光
用コンパクト光源を示す。放電管内に封入するガス種,混合ガス比およびガス圧などの動作条件の最適
化を行った結果,アルゴンと酸素の混合気体の酸素混合比を 0.6%とした時,吸収分光で利用する波長
130.56 nm の発光強度が最大となることがわかった。また,酸素ラジカル密度と吸光度の関係を数値計
算により解析した結果,生体材料の表面処理で利用する低ガス圧・低温プラズマにおいて,密度が 2×
1015~2×1019 m-3 の酸素ラジカルを測定できることがわかった。
4.今後の展開
(1)キノコからの機能性分子探索(河岸)
さらにキノコからの機能性分子の探索を継続する。
(2)食用キノコのカスパーゼ 様プロテアーゼの解析 (塩井)
細胞のPCDには,動物ではカスパーゼが機能しているが,植物やキノコ類には,本来のカスパーゼ
は存在していない。これまでの我々の研究結果から,キノコ類にはセリンプロテアーゼであるカスパー
ゼ様プロテアーゼの存在が明らかとなった。この酵素は酵素化学的にカスパーゼと同等であり,PCD
に関与していると考えられているが,直接的な証拠はまだ得られていない。今後は,この酵素のPCD
における機能について引き続き研究していく.また,これまでの研究成果をまとめ報文として発表する
予定である。
(3)キノコの消化管免疫調節機能解明(森田)
最近の研究から,腸管バリア機能の低下は,細菌透過のみならず肥満,さらにはメタボリックシンド
ローム発症にも関与することが指摘されている。また,成分栄養剤(ED)や中心静脈栄養(TPN)による
術後管理では,小腸上皮の萎縮を伴う腸管バリア機能の低下から,細菌透過が頻発し,臨床上の問題に
なっている。これらを克服する目的で食物繊維の経口投与が試みられ,その効果にはムチン分泌促進の
関与が推定されている(World J Surg, 19: 144, 1995)が,どのような DF が理想的であるのか未解明
20
高齢化対応新規高機能性食科学
であった。平成23年度の我々の研究結果から,ペクチンの摂取はムチン分泌を促進することが明らか
になったが,ペクチンは水溶性であることにくわえ粘性が低いことから,高齢者で汎用される成分栄養
剤への応用が可能である。杯細胞から分泌されるムチンは,腸上皮表面に非特異的バリアを形成するの
みならず IgA の貯留層として機能することで,また,同時に分泌される trefoil factor と伴に細菌や
抗原透過から腸上皮組織の保護・修復に寄与すると考えられる。今後は leaky gut 症候群のモデルにお
いてペクチン含有成分栄養剤の bacterial translocation に対する抑制作用を評価していく。
(4)寿命延長効果をもつキノコ抽出成分の探索(丑丸)
1) 寿命延長活性をもつ新規化合物の評価
SANA2 以外にも候補物質を 4 つ絞り込めた。来年度,それに関しての評価を引き続き行い,データの
まとまったものから順次論文発表,特許出願を行う予定である。
2) 寿命評価系の改良
世界の酵母 38 種類(Nottingham 大学 Edward Louis 博士より提供)の培養条件を変更して評価を行う。
また研究室酵母の方がたとえると家畜化しているため,自然界の酵母より長期栄養源飢餓に対して弱い
可能性が考えられる。来年度は研究室酵母も系統別に調べて短寿命酵母系統のスクリーニングを行う。
(5)天然素材からの生体機能分子等の抗菌活性評価(徳山)
1)抗 MRSA 活性化が認められキノコ抽出物を更に分画・精製し,抗菌活性試験を行い機能性物質の構
造を解明する。2)新たに各種キノコの抽出物の抗 MRSA 活性や抗真菌活性について引き続き測定する。
(6)機能性物質の配糖体化による構造変換と高機能化(村田)
シアル酸(Neu5Ac)は,インフルエンザウイルスの感染に関与している。また,免疫制御にかかわる
シグレック(糖結合タンパク質)は,シアル酸結合糖鎖に結合し,シグナル伝達に寄与している。最近
になってインフルエンザウイルスの感染やシグレックの結合に硫酸基が関与していることが明らかと
なってきた。本研究で合成した配糖体はウイルス感染や免疫能の制御にかかわる分子として利用できる
と考えられる。
(7)生体機能物質のプラズマ照射による構造変換と高機能化(荻野)
製作した真空紫外吸収分光用光源を利用し酸素ラジカルの密度測定を行い,ラジカルと表面処理の効
果の関係を調べる。また,水素および窒素ラジカル測定のための光源の動作条件を最適化する。表面に
直接作用するラジカル密度の測定結果と表面処理の結果を比較することで,これまでブラックボックス
化していたプラズマと表面処理メカニズムの理解に多いに役立つ。
5.研究業績
河岸洋和
(1) 学術論文・著書等
学術論文
1) Wakimoto, T., Asakawa, T., Akahoshi, S., Suzuki, T., Nagai, K., Kawagishi, H., and Kan, T.: Proof of the
existence of an unstable amino acid, pleurocybellaziridine, in Pleurocybella porrigens (angel’s wing
mushroom), Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 50, 1168-1170 (2011).
2) Wang, J., Ogata, M., Hirai, H., and Kawagishi, H.: Detoxification of aflatoxin B1 by manganese peroxidase
from the white-rot fungus Phanerochaete sordida YK-624. FEMS Microbiol. Lett., 314 164–169 (2011).
3) Misumi, K., Sugiura, T, Tamaguchi, S., Mori, T, Kamei, S., Hirai, H., Kawagishi, H., and Kondo, R., Cloning
and transcriptional analysis of the gene encoding 5-aminolevulinic acid synthase from the white-rot fungus
Phanerochaete sordida YK-6246, Biosci. Biotechnol. Biochem., 75, 178-180 (2011).
21
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
4) Suzuki, T., Umehara, K., Tashiro, A., Kobayashi, Y., Dohra, H., Hirai, H., and Kawagishi, H., An antifungal
protein from the edible mushroom Hypsizigus marmoreus, Int. J. Med. Mushr., 13, 27-31(2011).
5) Wu, J., Tsujimori, M., Hirai, H., and Kawagishi, H., Novel compounds from the mycelia and fruiting bodies
of Climacodon septentrionalis, Biosci. Biotechnol. Biochem., 75, 783-785 (2011).
6) Motrescu, I., Ogino, A., Tanaka, S., Fujiwara, T., Kodani, S., Kawagishi, H., Popa, G., and Nagatsu, M.,
Mechanism of peptide modification by low-temperature microwave plasma, Soft Matter, 7, 4845-4850 (2011).
7) Ito, H., Takemura, N., Sonoyama, K., Kawagishi, H., Topping, D., Conlon, M., and Morita, T., Degree of
polymerization of inulin-type fructans differentially affects number of lactic acid-bacteria, mucosal immune
functions and immunoglobulin a secretion in the rat cecum, J. Agric. Food Chem., 59, 5771-5778 (2011).
8) Kokubo, T., Taniguchi, Y., Kanayama, M., Shimura, M., Konishi, Y., Kawagishi, H., Yamamoto, M., Shindo,
K., and Yoshida, A., Extract of the mushroom Mycoleptodonoides aitchisonii induces a series of anti-oxidative
and phase II detoxifying enzymes through activation of the transcription factor Nrf2, Food Chem., 129, 92-99
(2011).
9) Wu, J., Fushimi, K., Tokuyama, S., Ohno, M., Miwa, T., Koyama, T., Yazawa, K., Nagai, K., Matsumoto, T.,
Hirai, H., and Kawagishi, H., Functional-food constituents in the fruiting bodies of Stropharia rugosoannulata,
Biosci. Biotechnol. Biochem., 75, 1631-1634 (2011).
10) Choi, J-H., Ozawa, N., Yamakawa, Y., Nagai, K., Hirai, H., and Kawagishi, H., Leccinine A, an
endoplasmic reticulum stress suppressive compound from the edible mushroom Leccinum extremiorientale,
Tetrahedron, 67, 6649-6653 (2011).
11) Wu, J., Choi, J-H., Yoshida, M., Hirai, H., Harada, E., Masuda, K., Koyama, T., Yazawa, K., Noguchi, K.,
Nagasawa, K., and Kawagishi, H., Osteoclast-forming suppressing compounds, gargalols A, B and C, from the
edible mushroom Grifola gargal, Tetrahedron, 67, 6576-6581 (2011).
12) Hino, S., Ito, H., Bito, H., Kawagishi, H., and Morita, T., Ameliorating effects of short-chain inulin-like
fructans on the healing stage of trinitrobenzene sulfonic acid-induced colitis in rats, Biosci. Biotechnol.
Biochem., 75(11), 2169-2174 (2011).
13) Motrescu, I., Ogino, A., Tanaka, S., Fujiwara, T., Kodani, S., Kawagishi, H., Popa, G., and Nagatsu, M.,
Effects of nitrogen and oxygen radicals on low-temperature bio-molecule processing, Jpn. J. Appl. Phys., 50,
08JF07-1-08JF07-5 (2011).
14) Wang, J., Hirai, H., and Kawagishi, H., Biotransformation of acetamiprid by the white-rot fungus
Phanerochaete sordida YK-624 , Appl. Microbiol. Biotechnol., 93, 831–835 (2012)
15) Imai, Y., Hirono, S., Matsuba, H., Suzuki, T., Kobayashi, Y., Kawagishi, H., Takahashi, D., and Toshima, K.,
Degradation of target oligosaccharides by anthraquinone-lectin hybrids with light switching, Chemistry-An
Asian J., 7, 97–104 (2012)
16) Hattori, T., Sakabe, Y., Ogata, M., Michishita, K., Dohra, H., Kawagishi, H., Totani, K., Nikaido, M.,
Nakamura, T., Koshino, H., and Usui, T., Enzymatic synthesis of an -chitin-like substance via
lysozymemediated transglycosylation, Carbohydr. Res., 347, 16–22 (2012)
17) Fushimi, K., Anzai, K., Tokuyama, S., Kiriiwa, Y., Matsumoto, N., Sekiya, A., Hashizume, D., Nagasawa,
K., Hirai, H., and Kawagishia, H., Agrocybynes A to E from the culture broth of Agrocybe praecox,
Tetrahedron, 68, 1262-1265 (2012).
18) Wang, J., Majima, N., Hirai, H., and Kawagishi, H., Effective removal of endocrine disrupting compounds
by lignin peroxidase from the white-rot fungus Phanerochaete sordida YK-624, Current Microbiology, 64,
300-303 (2012).
19) Suzuki, T., Sugiyama, K., Hirai, H., Ito, H., Morita, T., Dohra, H., Murata, T., Usui, T., Tateno, H.,
Hirabayashi, J., Kobayashi, Y., and Kawagishi, H., Mannose-specific lectin from the mushroom Hygrophorus
russula, Glycobiology, in press.
20) Qu, Y., Sun, K., Gao, L., Sakagami, Y., Kawagishi, H., Ojika, M., and Qi, J., Termitomycesphins G and H,
additional cerebrosides from the edible Chinese mushroom Termitomyces albuminosus, Biosci. Biotechnol.
Biochem., in press.
21) Nakaya, S., Mizuno, S., Ishigami, H., Yamakawa, Y., Kawagishi, H., and Ushimaru, T., A new rapid
22
高齢化対応新規高機能性食科学
screening system for anti-aging compounds using budding yeast and identification of beauveriolide I as a potent
active compound, Biosci. Biotechnol. Biochem., in press.
22) Sugiura, T., Mori, T., Kamei, I., Hirai, H., Kawagishi, H., and Kondo, R., Improvement of ligninolytic
properties in the hyper lignin-degrading fungus Phanerochaete sordida YK-624 using a novel gene promoter,
FEMS Microbiol. Lett., in press.
23) Choi, J-H., Maeda, K., Hirai, H., Harada, E., Kawade, M., Qi, J., Ojika, M., and Kawagishi, H., A novel
cerebroside, termitomycesphin I from the mushroom Termitomyces titanicus, Biosci. Biotechnol. Biochem., in
press.
著書
1) 河岸洋和(監修)
,
「きのこの生理活性と機能性の研究」
,東京: シーエムシー出版,全 286 頁 (2011).
2) 河岸洋和,菌類の有害物質,
「菌類の事典」
,日本菌学会(編)
,朝倉書店,印刷中
(2) 解説・特集等
1)崔宰熏,河岸洋和,フェアリーリングの化学 – フェアリー(妖精)の正体解明と農業への応用– ,
化学と生物,49(5), 299-301 (2011)
2)河岸洋和,フェアリーリング(fairy ring,妖精の輪)を作る「妖精」の正体解明とその農業へ
の応用の可能性,植調,45(7), 272-277(2011)
3) 河岸洋和,きのこが作物を育てる?— フェアリーリング(fairy rings,妖精の輪)の「妖精」の
正体解明とその農業への応用の可能性,きのこ研だより,34 号,10-14(2011).
(3) 特許等
1) イミダゾール誘導体, 静岡大学(出願人),河岸洋和,崔 宰熏(発明者),特願 2011-099456,
2011/04/27(出願日)
2)アミド化合物, 静岡大学(出願人)
,河岸洋和(発明者)
,特願 2011-180829,2011/08/22(出願日)
3)茸由来破骨細胞形成阻害,静岡大学,株式会社岩出菌学研究所(出願人)
,河岸洋和,原田栄津子,
山口宏治,矢澤一良(発明者)
,特許第 49127020 号 2012/1/27(登録日)
(4) 国際会議発表
1) Kawagishi, H.: 14th Asian Chemical Congress 2011,“Disclosure of the “fairy” of fairy-ring forming fungus
Lepista sordida”, Bangkok, Thailand, September 7, 2011(招待講演).
2) Kawagishi, H.,The 2011 International Symposium on Natural Products Chemistry and Chemical Biology,
Disclosure of the “fairy” of fairy-ring forming fungus Lepista sordida and possibility of its application to
agriculture, Hangzhou, China, November 19-22, 2011(招待講演)
(5) 受賞・表彰
1) 伏見圭司,第 10 回新規素材探索研究会奨励賞,
「フミヅキタケ (Agrocybe praecox) の産生する植
物成長調節物質の探索」
,2011/6/10(指導学生受賞)
(6) 新聞報道等
1)健康産業流通新聞,2011/5/25
2)静岡新聞,2011/10/15
3)静岡新聞,2011/10/22
塩井祐三
(1) 学術論文・著書等
1) Nakamura, M., Iketani, A., and Shioi, Y., A survey of proteases in edible mushrooms with synthetic peptides
as substrates, Mycosicience, 52, 234-242 (2011).
23
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
森田達也
(1) 学術論文・著書等
1) Hino, S., Ito, H., Bito, H., Kawagishi, H., Morita, T., Ameliorating effects of short-chain inulin-like fructans
on the healing stage of trinitrobenzene sulfonic acid-induced colitis in rats. Biosci. Biotechnol. Biochem., 75,
2169-2174 (2012).
2) Ito, H., Takemura, N., Sonoyama, K., Kawagishi, H., Topping, D.L., Conlon, M.A., Morita, T.: Degree of
Polymerization of Inulin-Type Fructans Differentially Affects Number of Lactic Acid Bacteria, Intestinal
Immune Functions, and Immunoglobulin A Secretion in the Rat Cecum. J. Agric. Food Chem., 59, 5771-5778
(2011).
3) Liu,Y., Liu, Y., Morita, T., Sugiyama, K.: Methionine and serine synergistically suppress
hyperhomocysteinemia induced by choline deficiency, but not by guanidinoacetic acid, in rats fed a low casein
diet. Biosci. Biotechnol. Biochem., 75, 2333-2339 (2011).
4) 森田達也:レジスタントプロテインの生理作用,
「消化管の栄養・生理と腸内細菌」(HindGut Club
Japan 編),pp303-309,日本メディア社(2011 年 4 月)
5) 森田達也:腸上皮組織のルミナコイド認識機構,第17回 Hindgut Club Japan シンポジウム,要旨
集 p3, 専修大学(神田)
(2011 年 12 月)
(招待講演)
(2) 解説・特集等
1)森田達也:フラクトオリゴ糖の摂取による炎症性腸疾患の再燃抑制効果に関する研究,pp7-12, 財
団法人糧食研究会 2011 年報告集(2011 年 11 月)
(4) 国際会議発表
1) Morita, T.: Novel nutritional aspects of oligosaccharides. CSIRO Conference, Dietary Fibre & Health,
Adelaide, Australia, May 16-17, (2011)(招待講演).
(5) 受賞・表彰
1) 尾藤寛之,日本食物繊維学会第 16 回学術集会,
「ペクチンの化学情報は,杯細胞からのムチン分泌
を促進すると同時に,腸間膜リンパ節の Th-1/Th-2 バランスを修飾する」
(指導学生受賞)
徳山真治
(1) 学術論文・著書等
1) Sinma, K., Ishida, Y., Tamura, T., Kitpreechavanich, V., and Tokuyama, S., Saccharopolyspora
pathumthaniensis sp. nov., a novel actinomycetes isolated from termite guts (Speculitermes sp.), J. Gen. Appl.
Microbiol., 57(2), 93-100 (2011).
2) Wu, J., Fushimi, K., Tokuyama, S., Ohno, M., Miwa, T., Koyama, T., Yazawa, K., Nagai, K., Matsumoto, T.,
Hirai, H., and Kawagishi, H., Functional-food constituents in the fruiting bodies of Stropharia rugosoannulata,
Biosci. Biotechnol. Biochem., 75(8), 1631-1634 (2011).
3) Sinma, K., Khucharoenphaisan, K., Kitpreechavanich, K., and Tokuyama, S., Purification and
characterization of a thermostable xylanase from Saccharopolyspora pathumthaniensis S582 isolated from the
gut of a termite, Biosci.Biotechnol. Biochem., 75 (10), 1957-1963 (2011).
4) Sukkhum, S., Tokuyama, S., Kongsaeree, P., Tamura, T., Ishida, Y., and Kitpreechavanich, K., A novel poly
(L-lactide) degrading thermophilic actinomycetes, Actinomadura keratinilytica strain T16-1and pla sequencing,
Afr. J. Microbiol. Res., 5(18), pp. 2575-2582, 16 September, (2011)
5) Etoh, H., Suhara, M., Tokuyama, S., Kato, H., Nakahigashi, R., Maejima, Y., Ishikura, M., Terada, Y., and
Maoka, T., Auto-Oxidation Products of Astaxanthin, J. Oleo Sci., 61(1), 47-21 (2012)
(4) 国際会議発表
1) Sinma, K., Kitpreechavanich, V., and Tokuyama, S., Purification, cloning and overexpression of
thermostable xylanase from Saccharopolyspora pathumthaniensis S582 isolated from termite guts. Abstract of
The 4th International Conference on Fermentation Technology for Value Added Agricultural Products, p. 50,
29- 31 August, 2011 Khon Kaen, Thailand
2) Hara, C., and Tokuyama, S., Biological Control of Strawberry Anthracnose by Actinomycetes, International
Union of Microbiological Societies 2011 Congress, 6-15 September 2011, Sapporo, Japan
3) Boondaeng, A., Tokuyama, S., and Kitpreechavanich, V., Xylanase from a novel strain of Microbispora
24
高齢化対応新規高機能性食科学
siemensis DMKUA 245T: enzyme production and characterization, International Union of Microbiological
Societies 2011 Congress, 6-15 September 2011, Sapporo, Japan
村田健臣
(1) 学術論文・著書等
1) Usida, K. and Mutata, T: Material science and engineering of mucin. A new aspect of mucin chemistry,
Studies in Natural Products Chemistry (Bioactive Natural Products), Volume-36/37, in press.
2) Suzuki, T., Sugiyama, K., Hirai, H., Ito, H., Morita, T., Dohra, H., Murata, T., Usui, T., Tateno, H.,
Hirabayashi, J., Kobayashi, Y., and Kawagishi, H., Mannose-specific lectin from the mushroom Hygrophorus
russula, Glycobiology, in press.
3) Ogata, M., Yano, M., Umemura, S., Murata, T., Park, E. Y., Kobayashi, Y., Asai, T., Oku, N., Nakamura, N.,
Matsuo, I., and Usui, T., Design and synthesis of high-avidity tetravalent glycoclusters as probes for Sambucus
sieboldiana agglutinin and characterization of their binding properties. Glycoconj. Chem., 23, 97−105, (2012).
4) 戸田宗豊,村田健臣,笹野昂太,中田博:人工グリコポリマーによる癌転移抑制および抗炎症作用,
京都産業大学先端科学技術研究所所報,第 10 号,15-23,(2011).
荻野明久
(1) 学術論文・著書等
1) T. E. Saraswati, A. Ogino, M. Nagatsu, "Plasma-activated immobilization of biomolecules onto graphiteencapsulated magnetic nanoparticles", Carbon 50 (2012) pp.1253-1261.
2) Akihisa Ogino, Suguru Noguchi, Masaaki Nagatsu, "Optimization of amino group introduction onto
polyurethane surface using ammonia and argon surface-wave plasma", Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 08JF06
(5pages).
3) Ying Zhao, Akihisa Ogino, Masaaki Nagatsu, "Effects of N2/O2 gas mixture ratio on microorganisms
inactivation in low-pressure surface wave plasma", Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 08JF05 (5pages).
4) Iuliana Motrescu, Akihisa Ogino, Shigeyasu Tanaka, Taketomo Fujiwara, Shinya Kodani, Hirokazu
Kawagishi, Gheorghe Popa, Masaaki Nagatsu, "Effects of Nitrogen and Oxygen Radicals on Low-temperature
Bio-molecule Processing", Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 08JF07 (5pages).
5) Masaaki Nagatsu, Teguh E. Saraswati, Akihisa Ogino, "Surface Functionalization of Graphene
Layer-Encapsulated Magnetic Nanoparticles by Inductively Coupled Plasma", Advanced Materials Research,
Vol. 222 (2011) pp 134-137.
6) Akihisa Ogino, Suguru Noguchi and Masaaki Nagatsu, "Low Temperature Plasma Treatment for
Immobilization of Biomaterials on Polymer Surface", Advanced Materials Research, Vol. 222 (2011) pp
297-300.
7) Iuliana Motrescu, Akihisa Ogino, Shigeyuki Tanaka, Taketomo Fujiwara, Shinya Kodani, Hirokazu
Kawagishi, Gheorghe Popa, and Masaaki Nagatsu, "Mechanism of peptide modification by low-temperature
microwave plasma", Soft Matter, 7(10) (2011) pp. 4845-4850.
丑丸敬史
(1) 学術論文・著書等
1) Shigeru Nakaya, Saki Mizuno, Hiroki Ishigami, Yasuhiro Yamakawa, Hirokazu Kawagishi and Takashi
Ushimaru (2012) A new rapid screening system for anti-aging compounds using budding yeast and
identification of beauveriolide I as a potent active compound, Biosci. Biotechnol. Biochem. (In press)
25
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
Ⅰ-3.
食の品質保証のための香気成分生成反応の可視化技術の確立
代表者
渡辺 修治
創造科学技術大学院・教授
分担者
間瀬 暢之
Dr. Susanne Baldermann
工学部・准教授
創造科学技術大学院・特任助教
1.研究目的
蓄積もしくは発散した揮発性成分、二次代謝物質を抽出、吸着後 GC-MS, LC-MS 等で分析する方法は
古くから確立しているが、組織・細胞内局在、移動を可視化する技術は確立されていない。QD ナノク
リスタル(QDs)を利用した植物(食品)組織・細胞内の揮発性成分、二次代謝物質の可視化技術の確立
を目的とする。本研究においては QDs は薬物の標的部位への移動(ドラッグデリバリー)に活用しう
るとの事実に基づき、チャ葉におけるカロテノイド起源の二次代謝物質、香気成分を標的として、カロ
テノイド代謝物質の生成の場を検出する方法を検討する。
2.研究計画・方法
(1)In situ で機能する Q-Dot 複合体
の合成(間瀬暢之担当)
:
植物体中の機能性物質の挙動を可視
化するため、酵素 CCD1 の基質である
カ ロ テ ナ ー ル に Q-dot を 導 入 し た
apo-10’- carotenal-Qdot 複合体を合成
する。下記の逆合成解析に示すとお
り、Q-Dot 部分とポリエン部分を別々
に合成する収束型合成で全合成を検
討する。なお、可視化に必須な Q-Dot
は酵素反応を阻害しないようにする
ため、β- Ionone のシクロヘキセン環上
に導入する。
26
高齢化対応新規高機能性食科学
(2)CCDs の発現精製、酵素反応の解析(Baldermann)
すでに確立した方法でカロテノイド分解酵素
CCDs を大腸菌で発現する。また、チャ葉から精
製した CCDs を得る。これらを用いてまず、アポ
カロテノイドへの反応性を検討する。また、カロ
テノイドの 3 位水酸基にスペーサー修飾した誘導
体を基質として酵素反応を検討する。将来的には
CCDs 標的基質はアポカロテノイドであると考え
られるため、(1)で合成したアポカロテノイド
-QDs が CCDs の基質となることを確認する。
(3)植物への導入、観測(渡辺)
磁場を利用することで植物に導入可能と考えら
れる鉄酸化物で被覆された QSs に水酸基、カルボ
キシル基、アミノ基等を有するリンカーを介して
酵素基質を結合させこれを植物に導入する。基質
と結合していない native な QDs を下記の方法で植
物に導入する。植物葉、花組織木綿糸を通過させ、
水に溶解した QDs を毛管現象を利用して吸収さ
せる。これをドイツ・ブラウンシュバイク工科大
学 TUBS、Prof. Gerike の協力の下、2 光子検出型
顕微鏡によって植物組織内への導入を確認する。予備検討の結果、時間とともに花弁への吸収が増大し
たが、いずれも細胞間質に局在している。本プロジェクトにおいては、減圧強制導入法、プロトプラス
トへの導入も含めて検討し、細胞間質だけでなく、細胞内への導入法を開発する。
3.主な研究成果
本プロジェクトが成功することで植物(食品)組織を壊すこと
なく、香気成分の生成の場を可視化する技術を提示可能となり、
酵素反応の場のナノスケールでの可視化と空間的解析を達成す
る。また、酵素反応生成物の消長を QDs の蛍光を基に追究する
ことも可能となる。
(1)In situ で機能する Q-Dot 複合体の合成(間瀬)
Q-Dot 複合体の合成が達成された場合、生きている植物体の生命現象を直接可視化することが可能に
なる。本研究では酵素 CCD1 の酵素反応の可視化に活用するが、本手法が確立された場合、基質を適宜
変更することにより、多種多様な酵素反応の可視化に応用できる。従って、自由自在に Q-Dot 複合体を
合成する技術を確立する必要があり、本分担課題はその第一歩となる。
量子ドットプローブは、カロテノイド酸化開裂酵素 CCD1 の基質 apo-10’-carotenal を模倣した分子デ
ザイン (1)とした。その合成法として、β-ionone 骨格 (2)とテトラエン骨格 (3)の二つの部位に分けて収
束的合成をすることにした。
27
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
まず、β-ionone 骨格 (2)について、アセタール保護、アリル位の酸化により 3-keto-α-ionone ketal を
40%の収率で合成した。続いて、カルボニル基の還元、脱保護により 3-hydroxy-α-ionone を 44%の収率
で合成した。ジアステレオマー混合物を分離し、トランス体を異性化した結果、67%の収率で 3-hydroxyβ-ionone が得られた。
一方、テトラエン骨格の合成では、Arbuzov 反応、Horner-Wadsworth-Emmons 反応を経由してトリエ
ン骨格に誘導した後、Wittig 反応を経て C12 aldehyde の合成を達成した。
(2)CCDs の発現精製、酵素反応の解析 (Baldermann)
QDs 結合型アポカロテノイドあるいはカロテノイドが CCDs の基質となり得ることを明らかにできれ
ば CCDs 以外の酵素基質例えば香気成分配糖体等への QDs の結合と、加水分解酵素の間の反応も期待さ
れ、より広範な酵素基質と酵素精製反応の場の解析へと展開できる。本年度はキンモクセイから単離し、
シークエンスが明らかと成っている CCD1, CCD4 を大量に発現し、-, -carontene、C27-apocarotenoid,
C14-apocarotenoid を基質として酵素機能解析した。CCD1 は各基質に対して優れた分解活性を有し、そ
28
高齢化対応新規高機能性食科学
れぞれの基質から C13 ノルイソプレノイド系香気成分 ionone を生成した。一方、CCD4 はカロテノイド
類を見かけ上(色調の著しい変化)分解しているが、C13-ノルイソプレノイドは全く検出されなかった。
また、その他のアポカロテノイド類の生成も確認できなかったことから、CCD4 の機能を確認できなか
った。今後は QDs 結合型基質が準備でき次第 CCD1 を用いて基質としての性質を検証する。
(3) 植物への導入、観測(渡辺)
2 光子検出型電子顕微鏡を利用することで、各 QDs 毎に励起エネルギーと調節選択することで基質と
反応生成物の QDs を区別して観測可能である。この技術を活用することで各 QDs の有する特徴的な色
調を観測することで QDs の組織内移動、反応追跡が可能となる。
本技術は局在、移動の観察ができなかった低分子二次代謝産物の可視化を容易に達成する基盤技術と
して活用できるだけでなく、本技術を基に、生命現象の分子レベルでの解析研究の深化・発展、分子の
検出システムへの応用展開が期待される。
, 0/(1. (#2 &345&#&' (
#%
&' /(, ' +(4-&#&40, /#/(
Sampling
Treatment
Qdot
apo-10‘-carotenal
conjugates
Tea
seedlings
Leaves
Localization
Determination of
relative
concentrations
after separation of
tissues by
fluorescence
spectroscopy
Preparation of microscopic sections
Confocal laser
scanning microscopy
FISRT in in vivo localization of
carotenoid derived
volatiles
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本年度は昨年度までに試みたバラ花弁に加え、チャ葉への導
入も試みた。2光子蛍光顕微鏡で緑色あるいは赤色蛍光として
検出可能な、未修飾 QDs を用いた(右図参照)。特に、赤色蛍光
を発する粒子径がやや大きい QDs は植物組織での観察が容易で
ある。
チャ葉への浸漬法での吸収実験の結果、バラ花を用いた予備検
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討時と同様にチャ細胞間質(アポプラスト)に蛍光が認められ
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見られたが、大
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部分の QDs はカ
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ロテノイドが分
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一方、チャ葉に対して-8’-apo-carotenal を同様に吸収させたと
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ころ、GC-MS
により-ionone の生成・発散が確認できた。QDs
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結合型基質が細胞内に導入されれば酵素反応の基質として機能
(
(
すると期待できる。
バラ花弁プロトプラスト(左)、%光子顕微鏡に
バラプロトプラスト(左写真)ではプロトプラスト内に QDs
よるプロトプラスト内の!
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の細胞内移動(図赤色部分)が認められた。
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29
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
4.今後の展開
(1)In situ で機能する Q-Dot 複合体の合成(間瀬)
今後、3-hydroxy-β-ionone のビニル化、phosphonium 塩化を検討し、C12 aldehyde との Wittig 反応を試
みる。さらに、還元、酸化により、目的とする量子ドットプローブ合成基質 (1)および量子ドットを結
合したプローブを合成する。そして、実際に植物細胞内へ強制投与し、二光子励起顕微鏡を用いて検出
を行う。
(2)CCDs の発現精製、酵素反応の解析 (Baldermann)
QDs 結合型基質が入手され次第、大量発現酵素 CCD1 に対する基質選択性を検討する。
(3)植物への導入、観測(渡辺)
植物細胞としてはこれまでと同様、バラ花弁とチャ葉を用いる。昨年度まで
と同様にして、浸漬あるいは木綿糸での吸収(右写真)を繰り返し、細胞内外
への取り込みが QDs の種類(サイズ・蛍光色の相違)、修飾の有無で相違が見
られるかどうかを検討する。
また、バラ花弁からプロトプラストを調製し、QDs および、基質結合型 QDS
を導入し、2光子顕微鏡(ドイツ, TUBS、Prof.Gerike の協力)で観察する。
30
高齢化対応新規高機能性食科学
5.研究業績
渡辺修治
(1) 学術論文・著書等
1) Hirata H, Ohnishi, T, Ishida H, Tomida K, Sakai, M, Hara, M, Watanabe, N. Functional characterization of
rose aromatic amino acid aminotransferase involved in 2- phenylethanol biosynthesis in isolated protoplasts of
rose flowers. J. Plant Physiol. in press.
2)Yang, ZY, Baldermann, S, Murata, A, Tu, Y, Asai T, Watanabe,N. Isolation and identification of sperimidine
derivatives in green tea (Camellia sinensis) flowers and ther distribution in floral organs. J. Sci. Food Agric., in
press.
3) Dong, F, Yang, Z, Baldermann, S, Kajitani, Y, Ota, S, Kasuga,H, Imazeki, Y, Ohnishi, T, Watanabe, N.
Characterization of L-phenylalanine metabolism to acetophenone and 1-phenylethanol in the flowers of
Camellia sinensis using stable isotope labeling. J. Plant Physiol., in press.
4) Dong, F, Yang, Z, Baldermann, S, Sato, Y, Asai T, Watanabe, N. Herbivore-induced volatiles from tea
(Camellia sinensis) plants and their involvement in intra-plant communication leading to changes in
endogenous metabolites. J. Agric.Food Chem., 59, 13131–13135 (2011).
5) Chen XM, Kobayashi H, Sakai M, Hirata H, Asai T, Ohnishi T, Baldermann S, Watanabe N. Functional
characterization of rose phenylacetaldehyde reductase (PAR), an enzyme involved in the biosynthesis of the
scent compound 2-phenylethanol. J. Plant Physiol., 168:88-95 (2011).
(2) 解説・特集等
1)バラ、キンモクセイ、チャの香りの生成メカニズム、渡辺修治、香料,250, 23-33, (2011)
2)花香気成分生合成・発散制御の分子機構に関する生物有機化学的研究、渡辺修治、植物
の生長調節, (2011)
間瀬暢之
(1) 学術論文・著書等
1) 間瀬暢之 植物由来ポリマー・複合材料の開発 第 1 章 新しい植物由来ポリマー・材料とプロセ
ス開発 第 11 節 金属・有機溶媒フリー ポリ乳酸合成:有機分子触媒と超臨界二酸化炭素の活用 サ
イエンス&テクノロジー2011 年
2) Mase, N, Mizumori, T, Tatemoto, Y. Aerobic copper/TEMPO-catalyzed oxidation of primary alcohols to
aldehydes using microbubble strategy to increase gas concentration in liquid phase reactions. Chemical
Communications 2011, 47 (7), 2086-2088.
(2) 解説・特集等
1) 「有機分子触媒的開環重合によるポリ乳酸合成: 超臨界二酸化炭素中での金属・有機溶媒フリー合
成」間瀬暢之 ファインケミカル 2011, 40 (9), 47-53.
2) 「マイクロ・ナノバブルを用いた有機合成: 工業スケールを指向した日本発の次世代型気相-液相
反応の実現へ」間瀬暢之; 水森智也 配管技術 2011, 53 (5), 48-52.
(3)
1)
2)
3)
特許等
特許公開 2011-208116 ポリマー粒子とその製造方法
特許公開 2011-208115 ポリマーの製造方法
特許公開 2011-184531 ポリマー粒子及びその製造方法
(4) 国際会議発表
1) ○Tomoya Mizumori, Shogo Isomura, Nobuyuki Mase「Development of Environmentally-Friendly Organic
31
Ⅰ
Ⅰ 高齢化対応新規高機能性食科学
Synthesis Using Micro-Nano Bubble Strategy to Increase Gas Concentration in Liquid Phase Reactions」the
Second International Symposium on Process Chemistry (ISPC 2011)、2P-26、Kyoto International Conference
Center、2011/8/12
2) ○Yusuke Minami, Naoki Koyama, Fumiya Shibagaki, Nobuyuki Mase「Synthesis of OFF-ON Fluorogenic
Compounds and Its Application for Environmentally-Friendly Catalyst Screening」the Second International
Symposium on Process Chemistry (ISPC 2011)、2P-27、Kyoto International Conference Center、2011/8/12
3) ○Takahiro Kato, Jun Ishizuka, Izumi Okajima, Takeshi Sako, Nobuyuki Mase「Organocatalytic Ring-opening
Polymerization in Supercritical Carbon Dioxide: Metal- and Organic Solvent-free Synthesis of Polylactide」the
Second International Symposium on Process Chemistry (ISPC 2011)、2P-28、Kyoto International Conference
Center、2011/8/12
(5) 受賞・表彰
1) 第 2 回 IJRC 奨励賞
2) 第 42 回中部化学関係学協会支部連合秋季大会 優秀賞
「マイクロ・ナノバブル手法による新規効率的水素付加反応」
○磯村 省吾・水森 智也・永野 利久・間瀬 暢之
Susanne Baldermann
(1) 学術論文・著書等
1) Yang, ZY, Baldermann, S, Watanabe N. Formation of damascenone and its related compounds from
carotenoids in tea. Tea in Health and Disease Prevention, Edited by Preedy, VR, Academic Press,. in press.
2) Baldermann, S, Kato, M, Fleischmann, P, Watanabe, N. Biosynthesis of - and β-ionone, prominent scent
compounds, in flowers of Osmanthus fragrans. Acta Biochim.Pol., in press.
3) Baldermann, S, Mulyadi, A.N., Yang, ZY, Murata, A, Fleischmann, P, Winterhalter, P, Knight, M. Finn,
TM, Watanabe N. (2011) Application of centrifugal precipitation chromatography and high speed
counter-current chromatography equipped with a spiral tubing support rotor for the isolation and partial
characterization of carotenoid cleavage-like enzymes in Enteromorpha compressa (L.) Nees. J. Separation Sci.,
34, 2759–2764 (2011).
4) Felfe, C, Schemainda, M, Baldermann, S, Watanabe, N, Fleischmann P. Metabolism of carotenoid
degradation in leaves of Camellia sinensis– functional and biochemical modifications. Journal of Food Food
Composition and Analysis, 24, 821-825 (2011).
32
糖鎖チップ開発
Ⅱ.
糖鎖チップ開発
代表者
朴 龍洙
創造科学技術大学院・教授
分担者
猪川 洋
岩田 太
尾形 慎
川人 祥二
川田 善正
永津 雅章
村川 明子
三重野 哲
電子工学研究所・教授
工学部・准教授
創造科学技術大学院・特任助教
電子工学研究所・教授
工学部・教授
創造科学技術大学院・教授
創造科学技術大学院・特任助教
理学部・教授
1.研究目的
糖鎖は、細胞内外の分子認識や分子間情報伝達においてに重要な働きを有しているため。注目され
ている。最近、感染症に関わるウイルスと細胞との相互作用には糖鎖が深く関わっていることが明ら
かになり、情報伝達分野においては糖鎖の機能が明らかになりつつある。しかし、今のところ糖鎖と
細胞間の情報伝達に関するロバストな検出法はなく、実用化された例はない。糖鎖は核酸やタンパク
質と異なり複雑な結合様式をとっているため、多様な特異性をもって働く機能性分子である。そのた
め核酸やタンパク質のような鎖状高分子とは異なり、作製ならびに検出は困難を極めている。従って
糖鎖チップを開発することができれば、迅速なウイルス感染症の検出、新規薬剤開発さらには細胞内
外のあらゆる環境で働く糖鎖の機能解明において有用な手段となることは間違いない。
そこで、本研究においては生物学、化学、物理、工学の異分野融合を図り、インフルエンザウイル
スをはじめとするウイルスによる感染症を検出する糖鎖チップを創製することを目的とする。現在、
世界中で感染拡大が危惧される新型インフルエンザウイルス、熱性脳炎(デング)ウイルスやヒトパ
ラインフルエンザウイルスなど人類にとって脅威であることは明らかである。しかし、各感染症には
特定の糖鎖が関与しているため、特定の糖鎖を構造基盤に固定化し、検出する方法を開発する。この
ために、本学のバイオサイエンス、工学部、電子工学研究所の分野横断的に開発に取りかかる。
本研究は、糖鎖の合成、糖鎖のチップ化、ウイルスの検出の三つの研究分野で構成され、各専門家
が分野別担当を決め研究を遂行する。本研究が完成できれば、各糖鎖を構造基盤に固定化したテーラ
ーメード型ウイルスレセプタープローブを合成・設計及び集積化(チップ化)し、ウイルスそれぞれ
に対応した早期ウイルス感知・識別システムの構築が可能となる。さらに、標的ウイルスの機能解明
に向けた新規分子プローブの創製とチップ化し、各新興ウイルスの検出まで展開できる。本研究体制
は図 1 のようである。
糖鎖合成
(1)糖鎖合成用糖転移酵素の開発(朴)
(2)糖鎖ライブラリの作製(尾形)
糖鎖のチップ化
(3)糖鎖プローブの基盤への糖鎖の固定化(村川)
(4)ナノピペットを用いた糖鎖チップ化への応用(岩田)
(5)ナノチューブドットアレイ表面上へのプラズマ化学修飾と選択的バイオ高分子の固定化(永津)
(6)種々のナノ材料による糖鎖の固定化(三重野)
33
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
ウイルスの検出
(7)高分解能接近
場光学顕微鏡を利用
した検出法の開発
 糖鎖合成用糖転移酵素の開発(朴)
 糖鎖ライブラリの作製(尾形)
(川田)
(8)表面プラズモ
ンアンテナ付きSO
Iフォトダイオード
による検出法の開発
ウイルスの検出
糖鎖のチップ化
(猪川)
(9)蛍光寿命イメ
 電子線励起高分解能光学顕微鏡を利  糖鎖プローブの基板表面への固定化(村川)
ージセンサーによる
用した検出法の開発(川田)
 ナノピペットを用いた糖鎖チップ化への応用(岩田)
検出方の開発(川人)  表面プラズモンアンテナ付きSOIフォト  ナノチューブドットアレイ表面上へのプラズマ化学修
糖鎖合成

2.研究計画・方法
ダイオードによる検出法の開発(猪川)
飾と選択的バイオ高分子の固定化(永津)
蛍光寿命イメージセンサーによる検出  守株のナノ材料による糖鎖の固定化(三重野)
方の開発(川人)
図 1.糖鎖チップの開発研究体制
(1)糖鎖合成用糖転移酵素の開発(朴)
本研究室で開発されたバクミドシステムを利用することで高いタンパク生産能力を有するカイコを
タンパク質生産用生体バイオリアクターとして有効利用できると考えられる。この方法で完全長ヒト
由来抗体、糖転移酵素類の発現に成功している。本研究では、ヒト分子シャペロンと糖転移酵素を同
時発現させることで酵素の発現量向上を目指した。カイコ由来の bombyxin シグナル配列を付加したヒ
ト糖転移酵素遺伝子を PCR でそれぞれ増幅し、これらをもとに糖転移酵素発現用バクミドを作製した。
一方各種分子シャペロンはヒト cDNAライブラリよりそれぞれ PCR 増幅し,バクミドを作製した。
作製した糖転移酵素バクミドと各分子シャペロン発現用バクミドをそれぞれカイコ幼虫に接種し同時
発現を行い,注射後 6 日間飼育した後、体液を採取し HPLC にて発現量を測定し、活性を有する場合、
糖鎖ライブラリ作製用酵素として研究分担者尾形助教に提供する。この結果、糖鎖チップに固定する
ための糖鎖合成が可能となり、ウイルスの検出専門家によって検出サンプルとなる。
(2)糖鎖ライブラリの作製(尾形)
申請者はこれまでに、安価な加水分解酵素群を利用した簡便配糖化法や共同研究者である静岡大学
創造科学技術大学院朴龍洙教授(分担者)らによって開発されたバクミドシステムを利用した糖転移
酵素の発現系構築を行ってきた。これら手法を利用して新興ウイルスおよび毒素タンパク質等のレセ
プター分子(糖鎖プローブ)を網羅的に合成する手法を構築する。インフルエンザウイルスは
SA 2,6/3Gal 1,4GlcNAc/Glc 1-R、デングウイルスは Gal 1,4GlcNAc 1,4Gal 1,4Glc 1-R、ヒトパラ
インフルエンザウイルスは SA 2,6/3Gal 1,4-6SGlcNAc 1-R、O-157 のベロ毒素は
Gal 1,4Gal 1,4Glc 1-R、がん細胞の転移に関与する E-セレクチンリガンドは
SA 2,3Gal 1,4(Fuc 1,3)GlcNAc 1-R を標的糖鎖構造とする。作製した一連の糖鎖ライブラリは村川特
任助教(分担者)によってチップ化し、その後川田教授(分担者)
・川人教授(分担者)
・猪川教授(分
担者)らによって相互作用解析を行う。
(3)糖鎖プローブの基盤への糖鎖の固定化(村川)
糖脂質・糖タンパク質の糖鎖は細胞内外の分子認識において必要不可欠である。しかしながら糖鎖は
核酸やタンパク質と異なり複雑な結合様式を有した構造体であり、多様な環境で特異性をもって働く
機能性分子である。インフルエンザウイルスやベロ毒素などヒトに有害な異種生物は糖鎖を認識する
ことでヒトに感染する。その感染を逸早く検知するために糖鎖チップは有意であり開発することは急
34
糖鎖チップ開発
務である。糖鎖チップ開発にあたりアミノ基を有した糖鎖プローブをさまざまな無機金属基板に対し
て均一かつ高密度に固定化させる方法を検討する。糖脂質糖鎖に対しては生体内を模倣した糖脂質の
ミクロドメインを形成させる。ウイルスや毒素などの糖鎖認識タンパク質に関してはまず標的となる
タンパク質を調製しそれらが生体内と同様の環境下で特異的に認識できるように基板上に糖鎖を多価
で固定化することを目指す。
(4)ナノピペットを用いた糖鎖チップ化への応用(岩田)
糖鎖を正確に固定させるために、ピペットやレーザーなどを用いたマニピュレータ技術を用いて材料
や液滴を基盤表面に滴下固定する技術を開発し,糖鎖チップ化への応用を目指して最適化など条件出
しを行う。具体的に用いる技術としては先端がサブマイクロ程度の開口を有するキャピラリーガラス
管をプローブとして有するプローブ顕微鏡を滴下技術に適用する。また最近開発したレーザートラッ
プを用いてナノ材料を液中環境下で滴下し基盤に固定する技術も適応し,高密度なサンプルアレイを
可能にした技術を開発し糖鎖チップ化への応用を目指す。
(5)ナノチューブドットアレイ表面上へのプラズマ化学修飾と選択的バイオ高分子の固定化(永津)
本研究では、カーボンナノチューブアレイ基板を用いてプラズマ化学修飾によるナノチューブ表面
へのアミノ基あるいはカルボキシル基などの官能基の修飾、およびそれら官能基修飾を空間制御した
パターニング技術の開発を行う。従来、ナノチューブアレイ基板としてシリコン基板などが広く用い
られているが、本研究では、ナノチューブの低温成長技術を用い、ガラス基板あるいは樹脂基板を用
いたナノチューブアレイの低温作製技術を確立し、ナノチューブ表面に修飾した官能基に選択的に結
合する糖鎖の固定化実験を実施する。糖鎖固定化の実験では農学部村川助教と連携して進め、ウイル
ス検出用糖鎖チップデバイスの開発を目指す。
(6)種々のナノ材料による糖類の固定化担当(三重野)
インフルエンザウイルス、食中毒細菌、ガン細胞を、少量の血液を用いて容易に検査する方法の開
発が、早急に求められている。ここでは、ウイルスを認識する糖鎖をナノチューブなどのナノ材料に
付加し、水溶液や濾紙状で容易に検査できる、バイオセンサーの開発を目的とする。この目的の基礎
研究として、ナノチューブ材料にガンマポリメタミン酸(γ-PGA)を付加した試料を作成する。ナノ
チューブ形状、付加反応条件、試料密度を変え、γ-PGA の効率的付加条件を見いだす。初期目標とし
ては、ナノチューブとほぼ同量のγ-PGA が付加した試料が、常温で1ヶ月以上安定に保管できること
である。合成試料の形状・特性を AFM、電子顕微鏡、FT-IR などで分析し、付加の形状などを確認す
る。この試料の液体中、濾紙上での安定性を調べる(熱的安定性、PH 安定性、薬品導入安定性など)
。
そして、実際のバイオセンサーへの利用の基礎を作る。γ-PGA については、農学部の尾形助教より提
供してもらう。
単離した炭素ナノチューブに官能基を付け、安定水溶化したナノチューブ試料の合成を試みる。こ
のナノチューブの一部に抗体を付け、付着する抗原の量により感染・病源検査を行う為の基礎研究を
行う。超音波分散処理と酸素プラズマ処理により、水溶性ナノチューブ試料を開発する。
(7)電子線励起高分解能光学顕微鏡を利用した検出法の開発(川田)
本研究では、生物試料を生きたまま高分解能で観察するための基礎シス
テムを開発するとともに、蛍光ラベルしたウィルスを高分解能かつ高感度
に検出する手法を開発することを目的とする。開発する光学顕微鏡では、
真空を大気圧の分離膜を通して、蛍光分子を直接電子線で励起する。その
ため、従来の光学顕微鏡に比べて高い空間分解能を実現することが可能と
なる。また、試料を大気圧や水中で観察することができるため、生きたま
まのウィルス観察が可能となる。電子線で励起可能な蛍光色素について検
討するとともに、退色性についても検討する。さらに、電子線を生物試料
に直接照射することによって、試料に与えるダメージについても明らかに
し、本手法の有効性を確認する。
35
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
(8)表面プラズモンアンテナ付きSOIフォトダイオードによる検出法の開発(猪川)
表面プラズモンから生じる強い近接場光を利用すると、絶縁膜上の薄いシリコン層(SOI: silicon on
insulator)における光吸収効率を向上させ、感度の高いフォトダイオードを得ることができる。本研究
では、ウイルスが表面プラズモンアンテナ上に付着した際に生じる光学的な誘電率の変化を、フォト
ダイード分光感度特性のピークシフトとして検出する方法を検討する。大きなピークシフトを生じる
アンテナ構造、分光器レスのシステム構成法、水中での安定動作などが課題である。
上記の方法に加え、ウイルスを微粒子とみなし散乱光を SOI フォトダイオードによって検出する方法
などについても検討を行う。
(9)蛍光寿命イメージセンサーによる検出方の開発(川人)
我々は、1ナノ秒以下の時間分解能で、蛍光寿命を計測することが可能な蛍光寿命イメージセンサを
提案し、0.18um CMOS 技術に基づき試作を行っている。電荷排出動作のみで、蛍光寿命計測に必要な
時間窓によるサンプリングを実現することで、極微弱な蛍光を繰り返し検出して、増幅する機能を実
現し、デバイスのイントリンシックな寿命として 1.7 ナノ秒を実現している。蛍光を発する糖鎖プロー
ブを開発し、蛍光寿命イメージセンサを用いてウイルス付着による蛍光寿命変化を計測し、提案手法
が有効であるかどうかを実験的に明らかにする。
3.主な成果
(1)糖鎖合成用糖転移酵素の開発(朴)
独自に開発したバクミドシステム用いることで、種々のウイルス・毒素タンパク質およびガン転移
に関与する糖鎖分子{ヒト型インフルエンザウイルス
(SAα2,6Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4GlcNAcβ1-R)
・トリ型インフルエンザウイルス
(SAα2,3Galβ1,4Glcβ1-R)
・E-セレクチンリガンド(SAα2,3Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ1-R)
・デングウイ
ルス(Galβ1,4GlcNAcβ1,4Galβ1,4Glcβ1-R)・ヒトパラインフルエンザウイルス
(SA2,6/3Gal1,4-6SGlcNAc1-R)およびベロ毒素(Galα1,4Galβ1,4Glcβ1-R)
}に対する糖鎖合成酵素
の網羅的な発現系構築を試みた。具体的な糖転移酵素発現に関しては、下記に示す 2 種類の糖転移酵
素①α2,3-シアリルトランスフェラーゼ②α1,3-フコシルトランスフェラーゼを例に記述する。
1. bx-FLAG-tagged α2,3SiaT/bacmid の構築
1-1. bx-FLAG-tagged α2,3SiaT 遺伝子断片の作製
Bombyxin シグナル配列および FLAG タグ付加されたシアリルトランスフェラーゼバクミド
(bx-FLAG-tagged α2,3SiaT)遺伝子断片を、ラット肝臓 cDNA を鋳型とした PCR により作製した。PCR
条件は、以下に示す。
PCR サイクル≫
94 oC.
.
.2 min.
o
94 C.
.
.15 sec.
55 oC.
.
.30 sec.
o
68 C.
.
.1 min.
68 oC.
.
.3 min.
4 oC.
.
.fin
40
cycles
反応液組成
10× PCR Buffer for KOD -PlusNeo
dNTPs (2 mM)
MgSO4 (25 mM)
Forward Primer (12 μM)
Reverse Primer (20 μM)
Template (<200 ng)
KOD -plus- Neo (1 U/μl)
Autoclaved distilled water
各種 Forward Primer および Reverse Primer は、Table 1 に示したものを使用した。
36
5 μL
5 μL
3 μL
1 μL
0.75 μL
0.5 μL
1 μL
Up to 50
糖鎖チップ開発
1-2. TOPO cloning
TOPO cloning により、PCR 産物をエントリーベクターに挿入した。
TOPO cloning 反応液組成
bx-FLAG-tagged α2,3SiaT
Salt Solution
TOPO vector
Sterile Water
1 μL(16.4 ng)
1 μL
1 μL (20 ng)
3 μL
上記反応組成を PCR チューブに入れ、30 分間室温でインキュベートした。その後、DH5α コンピテ
ントセルに形質転換し、カナマイシン 50 μg/mL を含むプレート(LB kan+)に播いて 37 oC で一晩培養
した。8 個のコロニーをランダムに選択し、8 mL の LB kan+で培養した後アルカリ SDS 法によりプラス
ミドを得て、PCR によりエントリーベクターの構築を確認した。
1-3. Gateway technology
作製したエントリーベクター(pENTR/bx-FLAG-tagged α2,3SiaT)を用いて Gateway technology を行っ
た。
bx-FLAG-tagged α2,3SiaT
pENTR/bx-FLAG-tagged α2,3SiaT
pDEST 8 vector
TE buffer
1 μL (150 ng)
1 μL (150 ng)
6 μL
以上をマイクロチューブに入れた後、LR clonase を 2 μL 加え撹拌した。その後、25 oC の恒温槽で 6
時間静置し反応させた。一時間後、Proteinase K を 1 μL 加え、37 oC の恒温槽で 10 分間インキュベート
し、反応を停止させた。反応終了後、DH5α コンピテントセルに形質転換し、LB Amp+培地を用いて 37
o
C で一晩培養し、コロニーを得た。得られたコロニーをランダムに選択し、PCR によりインサートの
確認を行った。
1-4. Bac-to-Bac システム
DH10Bac システインプロテアーゼおよびキチナーゼ両欠損のコンピテントセルにデスティネーショ
ンベクター(pDEST/ bx-FLAG-tagged α2,3SiaT)を形質転換した。LB 培地に以下の抗生物質を加え、37
o
C で 48 時間インキュベートした。
Kanamycin
Gentamycin
Tetracycline
X-Gal
IPTG
50 μg/mL
7 μg/mL
10 μg/mL
300 μg/mL
20 μg/mL
青白選択により、白色コロニーを選択し、PCR によりインサートの確認を行った(Fig. 1 左側)。
37
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
2. bx-FLAG-tagged α1,3FucT/bacmid の構築
2-1. bx-FLAG-tagged α1,3FucT 遺伝子断片の作製
Bombyxin シ グ ナル配列およ び FLAG タ グ付加され たフコシルト ランスフ ェラーゼバクミド
(bx-FLAG-tagged α1,3FucT)遺伝子断片を、ヒト胎児脳 cDNA を鋳型とした PCR により作製した。PCR
条件は、以下に示す。
≪PCR サイクル≫
94 oC.
.
.2 min.
o
94 C.
.
.15 sec.
55 oC.
.
.30 sec.
o
68 C.
.
.1 min.
68 oC.
.
.3 min.
4 oC.
.
.final
40
cycles
反応液組成
10× PCR Buffer for KOD -Plus-Neo
dNTPs (2 mM)
MgSO4 (25 mM)
Forward Primer (12 μM)
Reverse Primer (20 μM)
Template (<200 ng)
KOD -plus- Neo (1 U/μl)
Autoclaved distilled water
各種 Forward Primer および Reverse Primer は、Table 2 に示したものを使用した。
38
5 μL
5 μL
3 μL
2 μL
0.75 μL
1 μL
1 μL
Up to 50
糖鎖チップ開発
2-2. TOPO cloning
TOPO cloning により、PCR 産物をエントリーベクターに挿入した。
TOPO cloning 反応液組成
bx-FLAG-tagged α1,3FucT
1 μL(16.8 ng)
Salt Solution
1 μL
TOPO vector
1 μL(20 ng)
Sterile Water
3 μL
上記反応組成を PCR チューブに入れ、30 分間室温でインキュベートした。その後 DH5α コンピテン
トセルに形質転換し、カナマイシン 50 μg/mL を含むプレート(LB kan+)に播いて 37 oC で一晩培養し
た。コロニーをランダムに選択し、8 mL の LB kan+で培養した後アルカリ SDS 法によりプラスミドを
得て、PCR によりエントリーベクターの構築を確認した。
2-3. Gateway technology
作製したエントリーベクター(pENTR/bx-FLAG-tagged α1,3FucT)を用いて Gateway technology を行っ
た。
bx-FLAG-tagged α1,3FucT
pENTR/bx-FLAG-tagged α1,3FucT
pDEST 8 vector
TE buffer
1 μL (150 ng)
1 μL (150 ng)
6 μL
以上をマイクロチューブに入れた後、LR clonase を 2 μL 加え撹拌した。その後、25 oC の恒温槽で 6
時間静置し反応させた。一時間後、Proteinase K を 1 μL 加え、37 oC の恒温槽で 10 分間インキュベート
し、反応を停止させた。反応終了後、DH5α コンピテントセルに形質転換し、LB Amp+培地を用いて 37
o
C で一晩培養し、コロニーを得た。得られたコロニーをランダムに選択し、PCR によりインサートの
確認を行った。
2-4. Bac-to-Bac システム
DH10Bac システインプロテアーゼおよびキチナーゼ両欠損のコンピテントセルにデスティネーショ
ンベクター(pDEST/bx-FLAG-tagged α1,3FucT)を形質転換した。LB 培地に以下の抗生物質を加え、37
o
C で 48 時間インキュベートした。
Kanamycin
Gentamycin
Tetracycline
X-Gal
IPTG
50 μg/mL
7 μg/mL
10 μg/mL
300 μg/mL
20 μg/mL
青白選択により、白色コロニーを選択し、PCR によりインサートの確認を行った(Fig. 1 右側)。
3. bx-FLAG-tagged α2,3SiaT/bacmid および bx-FLAG-tagged α1,3FucT/bacmid の準備・感染
3-1. α2,3SiaT/bacmid と α2,3SiaT/bacmid の調整
カイコに直接感染を行うために用いる組み換え Bacmid を大腸菌より抽出した。菌株の培養は以下の
ようにして行った。500 mL 容三角フラスコに 50 mL の液体 LB 培地およびカナマイシン 50 μg/mL、ゲ
ンタマイシン 7 μg/mL、テトラサイクリン 10 μg/mL を添加し、37 oC、150 rpm、28 時間の条件により菌
株の培養を行った。
3-2.ラージスケールでのアルカリ SDS 法
ラージスケールでのアルカリ SDS 法は以下のようにして行った。まず、− 20 oC 保存の Bacmid DNA に
対して、Solution I 10 mL を添加し、ボルテックスを用いて菌体懸濁した。次に、Solution II 10 mL を添
加し、ゆっくりと混合したのち室温で 5 分間放置した。続いて、Solution III 10 mL を加えて混合し、4 oC
39
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
で 15 分間放置した。この溶液を 4 oC、9000 rpm で 10 分間遠心を行い、白色のペレットを沈殿させた。
上清を別のチューブに移し、イソプロパノール 23 mL と 3 M 酢酸ナトリウム 300 μL を添加し、混合し
た。混合後、4 oC で 10 分間冷却し、室温、9000 rpm の条件で 10 分間遠心を行った。さらに、情勢を除
去後 70%エタノール 15 mL を加え、混合後、室温、9000 rpm で 10 分間遠心を行った。最後に、情勢を
完全に除去後、真空遠心機で 5 分間乾燥させ、Bacmid を得た。これに対し 500 μL の H2O を加えペレッ
トを溶解した。
3-3.クロロホルム処理およびエタノール沈殿
アルカリ SDS 法によって抽出した Bacmid DNA 溶液中に混在するタンパク質を除去するためにクロ
ロホルム処理を行い、のちにエタノール沈殿を行うことで洗浄した。まず、H2O に溶解した Bacmid DNA
溶液と同量のクロロホルムを添加し、ボルテックスを用いて激しく混ぜ、均一なエマルジョンにした。
混合後、室温、15000 rpm で 3 分間遠心し、水層、タンパク質層およびクロロホルム層に分離した。続
いて、得られた水槽を別のチューブに移し、引き続きエタノール沈殿に供した。まず、クロロホルム処
理後に得られた溶液の1/10 量の 3 M 酢酸ナトリウムを加え、転倒攪拌したのち、100%EtOH を 2.5 倍
量加えて転倒攪拌した。混合後、4 oC、15000 rpm で 10 min 遠心し、上清を除いた。さらに 70%EtOH を
100%EtOH と同量加え、軽く混ぜ、12000 rpm、2 min で遠心した。上清を捨て、真空遠心により乾固さ
せた。最後に 500 μL の PBS で溶解し、-20 oC で冷凍保存した。
4. α2,3-シアリルトランスフェラーゼおよび α1,3-フコシルトランスフェラーゼの発現確認
作成した二種のバクミド(bx-FLAG tagged α2,3SiaT/bacmid/bx-FLAG tagged α1,3FucT/bacmid)がそれ
ぞれ濃度 250 ng/μL となるように PBS で希釈し、そこへ 10%量の DMRIE-C を添加し、カイコ注射用バ
クミド溶液を調整した。次に、5 齢フヨウツクバネ(B. mori)の一群を 6 匹として、1 匹あたり 30 μL
を注射した。注射後、24 時間ごとに体液を採取した。その結果、4 日目から 6.25 日目にかけてそれぞれ
の酵素活性を確認した。酵素活性は感染後 6.25 日目で最大に達し、その酵素活性濃度は α2,3SiaT が 410
mU/mL、α1,3FucT は 309 mU/mL に達した(Fig. 2)
。また、コントロールとして用いた bacmid を注射し
てないカイコ幼虫では、酵素活性は確認されなかった。
40
糖鎖チップ開発
(2)糖鎖ライブラリの作製(尾形)
静岡大学朴龍洙教授(分担者)らによって開発されたバクミドシステム・昆虫細胞および大腸菌発
現系を利用することで得られた計 6 種類の糖転移酵素(β1,3GnT、
β1,4GalT、α1,3FucT、α2,3SiaT、α2,6SiaT、
α1,4GalT)を利用することで、研究計画に掲げた新興ウイルス・毒素タンパク質の感染およびガン転移
に関与するレセプター分子(糖鎖プローブ)計 6 種類{ヒト型インフルエンザウイルス
(SAα2,6Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4GlcNAcβ1-R)
・トリ型インフルエンザウイルス
(SAα2,3Galβ1,4Glcβ1-R)
・E-セレクチンリガンド(SAα2,3Galβ1,4(Fucα1,3)GlcNAcβ1-R)
・デングウイ
ルス(Galβ1,4GlcNAcβ1,4Galβ1,4Glcβ1-R)・ヒトパラインフルエンザウイルス
(SA2,6/3Gal1,4-6SGlcNAc1-R)およびベロ毒素(Galα1,4Galβ1,4Glcβ1-R)
}を全て合成する事に成
功した(図 1)
。
具体的な糖鎖プローブ合成に関しては、下記に示す 4 種類の糖鎖①ヒト型インフルエンザウイルス
認識糖鎖②E-セレクチンリガンド③デングウイルス認識糖鎖④ベロ毒素認識糖鎖を例に説明する。
① ヒト型インフルエンザウイルス認識糖鎖の合成
受容体基質として N-(γ-trifluoroacetamidobutyryl)-β-LacNAc (150 mg, 0.27 mmol)、供与体基質として
CMP-Neu5Ac(263 mg, 0.4 mmol)を 100 mM MOPS buffer (pH 7.5) 2.7 ml、D.W.(14 ml)に溶解し、250
mM MnCl2・4H2O(330 μl)及び 100 mg/ml BSA(330 μl)を加えた。20 U/ μl のアルカリフォスファター
ゼ(17 μl)及びカイコ幼虫発現 α2,6-シアリルトランスフェラーゼ(2 ml, 3062 mU)を添加し、37℃で
静置し反応を開始した。反応液 10 μl を経時的に採取し、190 μl の D.W.に加え、100℃で 5 分間煮沸し、
反応の経時変化を HPLC により分析した。原料のピークがなくなり、Neu5Ac がガラクトース末端に転
移された目的生成物のピークが定常に達した 16 時間後に、100℃で 5 分間煮沸して反応を停止させ、
反応液を 5,800 g で 15 分間遠心分離して、上清をエバポレーターで濃縮し、50 mM Na-Pi buffer pH 7.0
で溶解後、D.W.で平衡化した ODS カラムクロマトグラフィー(2.5 × 30 cm)に供した。流速 2.5 ml/min、
同溶媒で溶出した。各試験管に 18 ml ずつ分取し、各フラクションにつき、N-アセチル基に由来する
210 nm、核酸に由来する 260 nm の吸光度測定及び、HPLC による分析を行い Fr. No. 29~62 を目的物
と CMP の混合画分、Fr. No. 63~101 を目的物の画分として濃縮、凍結乾燥した。その結果、
N-(γ-trifluoroacetamidobutyryl)-β-Neu5Acα2,6LacNAc を収量 150 mg、収率は 66%で得た(図 2)
。
41
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
② E-セレクチンリガンドの合成
初めに、受容体基質である N-(γ-trifluoroacetamidobutyryl)-β-LacNAc(40 mg, 0.072 mmol)及び供与体基
質である CMP-Neu5Ac(70 mg, 0.11 mmol)を 100 mM MOPS buffer(pH7.5, 4.48 ml)、D.W.(404 μl)
に溶解し、250 mM MnCl2・4H2O(88 μl)及び 100 mg/ml BSA(88 μl)を加えた。20 U/ μl アルカリフォ
スファターゼ(20 μl)及びカイコ幼虫発現 α2,3-シアリルトランスフェラーゼ(4.48 ml, 1228 mU)を添
加し、37℃で静置し反応を開始した。反応液 10 μl を経時的に採取し、190 μl の D.W.に加え、100℃で
5 分間煮沸し、反応の経時変化を HPLC により分析した。原料のピークがなくなり、シアル酸がガラク
トース末端に転移された目的生成物のピークが定常に達した 24 時間後に、供与体基質 GDP-Fuc(80.4
mg, 0.128 mmol)及びカイコ幼虫発現 α1,3-フコシルトランスフェラーゼ(3.4 ml, 585 mU)を添加し、
37℃で静置し反応を開始した。反応液 10 μl を経時的に採取し、190 μl の D.W.に加え、100℃で 5 分間
煮沸し、反応の経時変化を HPLC により分析した。原料のピークがなくなり、フコースが N-アセチル
グルコサミン残基に転移された目的生成物のピークが定常に達した 24 時間後に、100℃で 5 分間煮沸
して反応を停止させ、反応液を 5,800 g で 15 分間遠心分離して、上清をエバポレーターで濃縮し、D.W.
で平衡化した ODS クロマトグラフィー (25 × 30 cm) に供した。流速 2.5 ml/min、同溶媒で溶出した。
各試験管に 18 ml ずつ分取し、各フラクションにつき、N-アセチル基に由来する 210 nm、核酸に由来
する 260 nm の吸光度測定および、HPLC による分析を行い Fr. No. 45~53 を濃縮、凍結乾燥した。次に
D.W.で平衡化した Sephadex-G25 カラムクロマトグラフィー(2.5 × 60 cm)に供した。流速 0.5 ml/min、
同溶媒で溶出した。各試験管に 5 ml ずつ分取し、各フラクションにつき、N-アセチル基に由来する 210
nm、核酸に由来する 260 nm の吸光度測定 及び、HPLC による分析を行い Fr. No. 21~29 を濃縮、凍
結乾燥し、N-(γ-trifluoroacetamidobutyryl)-sialylLex を得た。収量は 58.1 mg、収率は 80.6%であった(図
3)。
③ デングウイルス認識糖鎖(ラクト-N-ネオテトラオース)の合成
150 mM Tris-HCl buffer pH 6.8(5.7 ml)
に受容体基質として N-(ε-Trifluoroacetamidocaproyl) β-lactosylamine
(50 mg, 0.09 mmol)
、供与体基質として UDP-GlcNAc・2Na(117 mg, 0.18 mmol)、補因子として MnCl2・
4H2O(14.5 mg)を溶解し、防腐剤として 1%(w/v)NaN3(0.09 ml)を加えた後、昆虫細胞発現 β3GnTII
(250 mU, 3.3 ml)を添加して 37℃で GlcNAc 転移反応を行った。反応を追跡するため、継時的に反応
42
糖鎖チップ開発
液を 20 μl 採取し 180 μl の H2O を加えた後、100℃で 5 分間煮沸して反応を停止させ、HPLC 分析した。
反応開始から 144 時間後、GlcNAc 転移が 100%進んだことを確認し、反応液を 100℃で 5 分間煮沸し
て反応を停止させた。次に反応液に UDP-Gal・2Na(111 mg, 0.18 mmol)を加えた後、カイコ幼虫発現
β4GalTI(950 mU, 0.5 ml)を添加して 37℃で Gal 転移反応を行った。GlcNAc 転移反応と同様に、HPLC
分析によって反応を追跡した。12 時間後、GlcNAc 転移が 100%進んだことを確認し、反応液を 100℃
で 5 分間煮沸して反応を停止させた。反応液を濃縮後、5%MeOH で平衡化(2.0 ml/min)した YAMAZEN
ODS カラムクロマトグラフィー(2.0×50 cm)に供した。約 20 ml/tube ずつ分取後、各フラクションの
210 nm および 260 nm の吸光度を測定した。非吸着部を溶出後、溶媒を 5%(500 ml)-15%(500 ml)
の MeOH 直線濃度勾配法に切り替えた。20 ml/tube ずつ分取後、各フラクションの 210 nm および 260 nm
の吸光度を測定した。目的画分を含む Fr. No. 66~79 を濃縮後、凍結乾燥して目的物である
N-(ε-Trifluoroacetamidocaproyl) β-lacto-N-neotetraosylamine を収量 67 mg、収率 80%で得た(図 4)
。
④ ベロ毒素認識糖鎖の合成
1 M Tris-HCl buffer pH 6.8 ( 0.77 ml ) 及 び D.W. ( 8.6 ml ) に 受 容 体 基 質 と し て
5-(trifluoroacetamidopentyl)-β-LacNAc(40 mg, 0.075 mmol)、供与体基質として UDP-Gal(94 mg, 0.16
mmol)
、補因子として 250 mM MnCl2・4H2O(0.77 ml)を溶解し、100 mg/ml BSA(153 μl)を加えた後、
大腸菌発現精製 α1,4GalT(5 ml)を添加して 37℃で Gal 転移反応を行った。反応開始から 4 時間後、
Gal 転移反応が停止したことを TLC によって確認し、反応液を 100℃で 5 分間煮沸して反応を停止させ
た。反応液を濃縮後、CHCl3:MeOH:H2O=6:4:1 で平衡化(10 ml/min)した Silica gel 60N カラム
クロマトグラフィー(2.5 × 50 cm)に供した。20 ml ずつ分取後、TLC(展開溶媒 CHCl3:MeOH:H2O
=6:4:1)でオルシノール硫酸発色を用い、生成物を確認した。目的画分を含む Fr. No. 17~26 を濃
縮後、凍結乾燥し 5-(trifluoroacetamidopentyl)-β-globotrioside を収量 44 mg、収率 86%で得た(図 5)。
以上の結果より、組換え酵素利用による酵素的手法と有機合成的手法を組み合わせることで高収率(70
~80%)な合成が可能となった。本プロジェクトにより、高純度かつ量的供給が可能で化学的安定性に
も優れたウイルスまたは毒素タンパクの感染およびがん転移に関与する糖鎖プローブの創出が可能と
なり、ウイルスおよび毒素タンパク質の感知・識別システムの構築ならびに次世代糖質マテリアル創
出が期待できる。
本プロジェクトにより、高純度かつ量的供給が可能で化学的安定性にも優れたウイルスまたは毒素タ
ンパクの感染およびがん転移に関与する糖鎖プローブの創出が可能となり、ウイルスおよび毒素タン
パク質の感知・識別システムの構築ならびに次世代糖質マテリアル創出が期待できる。
43
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
(3)糖鎖プローブの基盤への糖鎖の固定化(村川)
生体内において、細胞膜に提示された糖タンパク質あるいは糖脂質の糖鎖はレクチンや毒素、ウイルスなど
のリガンドとして役割を果たすと同時に、細胞の接着、分化、誘導など、細胞社会の秩序形成にも深く関与して
いることが知られている。一般に糖鎖 1 分子だけでは認識性が低いため検出は困難である。そこで認識の検出
手段として安定性が高いことで知られている量子ドットを用いることにした。糖鎖プローブとの固定化において、
カチオン性量子ドットが必要となるが、一般の量子ドットと比べ安定性は低いことが知られている。しかしながら
反応条件を工夫したことでこれまでより量子収率が比較的高く安定性の高い量子ドット CdTe/CdS を作製するこ
とに成功した(図 1,2)。
図 2. 3 次元時間変化の蛍光スペクト
ル
図 1. 3 次元蛍光・励起スペクトル
(Ex: 400 nm)
次に糖鎖受容体である ECA レクチンが量子ドットに PEG を介して固定化された糖鎖を認識できるか共焦点レ
ーザー顕微鏡を用いて確認した。量子ドットに固定化された糖鎖密度に応じて ECA レクチンへの結合量が増
大することが確かめられた。
続いて毒素やウイルスに対して汎用できるか検討することにした。毒素の例としては腸管出血性大腸菌が産
生するベロ毒素に焦点をあて、タイプ 1B および 2B を作製した。またベロ毒素が認識する糖鎖 Gb3 を作製する
ために糖転移酵素(α4GalT)を調製した。これは種々の糖アナログに対して糖転移効率が高くなるように設計し
た。ウイルスの例としては近年猛威をふるっているインフルエンザウイルスに着目し、中でも α2,3 型シアル酸を
認識するトリ由来の H5N1 のヘマグルチニンと α2,6 型を認識するヒト由来の H1N1 のヘマグルチニンを調製し
た。H1N1 タイプにおいては 3 量体が形成されていることが確認された。
44
糖鎖チップ開発
(4)ナノピペットを用いた糖鎖チップ化への応用(岩田)
糖鎖チップのプロセス技術として、ナノピペットを用いた微細加工を応用する
開発に取り組んだ。具体的には内部に金コロイドを含むす溶液を充填可能なナ
ノピペットを用いて滴下したい場所へ位置決めし、静電気力を用いたパターに
ングにより堆積量を再現性よく制御できる技術を見出した。また、本研究では
特にバイオ分野への応用を考慮し、液中環境下でプローブ‐基板間距離を制御
可能なナノピペットプローブを有する走査型イオン電流顕微鏡を開発し、細胞
などへも蛍光試薬などの分子を注入できる技術も開発した。今後 これらの技
術は糖鎖チップ等のプロセス技術への活用が期待できる。
図1
金微粒子コロイド溶液
堆積結果
(5)ナノチューブドットアレイ表面上へのプラズマ化学修飾と選択的バイオ高分子の固定化(永津)
従来のカーボンナノチューブ成長では、基板温度を 700℃程度の高温に加熱することが必要とされ、
使用できる基板材料に制約があった。本研究では、非平衡プラズマの利点を生かし、プラズマのイオ
ン衝撃エネルギーを制御することにより局所的な加熱を実現することによって 200℃以下でのナノチ
ューブアレイ成長を実現する。これらの技術的ブレイクスルーが達成できれば、樹脂基板上に成長さ
せたナノチューブアレイ表面にプラズマ化学修飾および糖鎖固定化を行った低コスト糖鎖チップの開
発が期待される。
これまでに、図 1 に示したような、シリコン基板上に垂直配向成長させたカーボンナノチューブア
レイをアンモニアプラズマ表面処理を行うことにより、ナノチューブ表面をアミノ基修飾し、さらに
アミノ基に選択的に蛍光色素を誘導体化することに成功している。本技術を糖鎖チップ作製に応用す
る上で、樹脂基板上へのカーボンナノチューブの低温成長技術の開発も不可欠である。本研究では、
グラフェン層で覆われた触媒金属ナノ微粒子を用いて、マイクロ波プラズマ CVD によるカーボンナノ
チューブ低温合成技術の開発を目的として実験を行った。図 2 は 250 度以下のポリイミド基板上に合
CNTs
成したカーボンナノチューブの
TEM 写真を示している。図から多層構造のカーボンナノチューブが成
長していることが分かる。現在までに、基板温度を
200 度以下としたカーボンナノチューブの低温合
FE-SEM image
Fluorescent dyes:
Sulfodichlorophenyl ester
成にも成功しており、今後は垂直配向成長および高速成長の実現を目指して研究を進める予定である。
ArNH3 3plasma
ArNH
plasma
0
50mm
200nm
lex=494nm
lem=520nm
10nm
NH3 プラズマによるアミノ基修飾カー
ボンナノチューブアレイの蛍光色素固定化
実験の結果(蛍光顕微鏡による蛍光確認)
NH3/CH4 プラズマによりポリイミド基
板上に低温合成したカーボンナノチューブ
の TEM 写真
図1
図2
また、本研究では、グラフェン層で外包された磁気ナノ微粒子を用いて、プラズマドライプロセス
によりアミノ基修飾し、ウイルスと選択的に結合する糖鎖をアミノ基に固定化するための基礎的研究
を実施した。図3はアミノ基修飾を行った磁気ナノ微粒子に糖鎖(LacNAc)を固定化し、糖特異性を
有する糖結合性タンパク質(レクチン)と結合させ、磁気微粒子の磁気回収によりレクチンの回収量
を調べる実験のフローチャートを示している。本方法を利用することにより、例えばインフルエンザ
ウイルスに対して特異的吸着能を有する糖鎖コーティングを施した磁気ナノ微粒子を用いたウイルス
の選択的回収システムへの展開が期待できる。
45
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
室温、30分
糖鎖あり
糖鎖(LacNAc)固定化
磁気ナノ微粒子
糖鎖なし
-PGAコーティング
磁気ナノ微粒子
【コントロール】
上清のタンパク量
をA280で定量した
+
デイゴマメレクチン
(糖特異性:LacNAc)
磁気回収
280 nmの吸光度
を測定
糖鎖コーティング磁気ナノ微粒子と糖結合性タンパク質(レクチン)との
相互作用解析の説明図
図3
回収率
100
図4は糖鎖を固定化した磁気微粒子と糖鎖
糖鎖(LacNAc)固定化
を固定化していない磁気微粒子のレクチン回
磁気ナノ微粒子
80
収率の測定結果を示している。図から明らか
なように、糖鎖固定化した微粒子では約 80%
60
のレクチンの回収ができており、固定化して
40
-PGAコーティング
いない微粒子の場合と比べると飛躍的に回収
磁気ナノ微粒子
率が向上している結果となっている。現在用
20
い て いる 磁気 微 粒子 はサ イ ズが 直径 20~
0
50nm のグラフェン層でカプセル化された鉄
微粒子であり、最近のアミノ基数の解析結果
図4 糖鎖コーティング磁気ナノ微粒子による
によれば、微粒子 1 個当たり約 105~106 個程度
糖結合性タンパク質(レクチン)回収の測定結果
のアミノ基数トを確認している。市販されて
いる磁気ビーズのアミノ基数 104~105 個程度よりも 1 桁程度高く、磁気ナノ微粒子表面のプラズマを用
いた官能基修飾技術の優位性を示している。
(6)種々のナノ材料による糖鎖の固定化(三重野)
γ-PGA を付加したナノ材料にウイルス吸着性を持たせる。この試料の色変化、蛍光発生によりウイ
ルス検知シグナルを得る。この試料を水溶液としてバイオセンサーに用いる。あるいは、濾紙に吸わ
せた紙状センサーとする。ここに検査の血液を1滴垂らし、ウイルスの有無を検査する。このバイオ
センサーは、小型簡便であり、遠隔地にて短時間にウイルスの検知ができるので、急激な普及が期待
できる。種々のウイルスを区別した検知、食中毒微生物検知、ガンウイルス検知への応用も期待され
る。成果により、医学部・薬学部との共同研究への発展の可能性もある(尾形助教、朴教授ほかとの
共同研究)
。
まず、水に炭素ナノチューブを超音波分散させ、γ-PGA 付加後再度超音波分散させる。すると、安
定したナノチューブ分散液を得ることができた。この液は1ヶ月以上安定した分散を示している。こ
のポリマーの効果を確かめるため、透過電子顕微鏡により形状観察した。すると、ポリマー付加の場
合、ナノチューブが良く分散し、ポリマー包摂が起きていることが確認された。一方、水分散の亜倍
は、ナノチューブが凝集しており、分散していないことが確認された。ポリマーとして PEG を用いた
場合、水中分散性は悪く、ナノチューブの凝集状態が残っていた。よって、γ-PGA の有効性が確認さ
れた。
次に、水に Co 磁性ナノ粒子を超音波分散させ、γ-PGA 付加後再度超音波分散させる。すると、安
定したナノチューブ分散液を得ることができた。この液は1ヶ月以上安定した分散を示している。こ
の液体は磁石で誘導することができ、磁性流体になっていることが確認された。この試料は、乾燥後
46
糖鎖チップ開発
粉体試料として扱うこともできる。磁気医学的応用が期待される。
ナノチューブに官能基を化学結合させ、水溶性を持たせることも可能である。これまで、強酸を用
いた水溶化処理が行われているが、より安全・効率的な機能化を試みた。種々の試行の末、マルチス
図 RF 酸素プラズマで試料を処理
図 未加工 MWNT(多層ナノチューブ)、a(クエン酸のみ処理の MWNT)、
している写真。
b(クエン酸+酸素プラズマ処理の MWNT)の FTIR スペクトルの比較。
ッテップ処理により機能化に成功した。その方法は、炭
素ナノチューブの水中超音波処理、クエン酸による反応
および酸素プラズマ処理である。プラズマは 13.56MHz、
平行平板放電(パワー:〜200W、放電時間:〜20min)
であった。この方法により、ナノチューブの凝集性が解
け、短いナノチューブが水中分散し、その後、カルボキ
シル基と水酸基が付加した。FT-IR, UV 吸収、SEM、熱質
量分析(TG/DTA) により、官能基の付加が確認された。処
理されたナノチューブは良く水中分散しており、1ヶ月
以上保持している。このナノチューブに抗体などの基を
付加することにより医療検査試料として利用できる可能
性がある。
図
未 加 工 MWNT 、 a( ク エ ン 酸 の み 処 理 の
MWNT) 、 b ( ク エ ン 酸 + 酸 素 プ ラ ズ マ 処 理 の
MWNT)の水分散の様子(24 時間放置)。
(7)電子線励起高分解能光学顕微鏡を利用した検出法の開発(川田)
試作したナノイメージングシステムのプロトタイプの最適化を行なった。試作した電子線励起型イメージング
システムのプロトタイプを用いて標準試料を観察し、より高い空間分解能を実現するためにシステムの最適化を
行なった。特に蛍光の発光強度が小さく、信号対雑音比が小さいため、高感度に信号を検出する方法を検討し
た。フォトンカウンティング法およびロックイン検出法を導入することを検討するとともに、フレーム積算法、画像
処理についても検討した。これらの手法を組み合わせることにより、水中の微粒子の挙動観察、生物試料の観
察に成功した。図 1 に金属ナノ粒子を含む水滴を基板上に滴下した場合の観察像の時系列を示す。最初、微
粒子は液滴内を移動しているため微粒子を観察することができないが、時間の経過とともに微粒子が基盤に沈
殿し、微粒子の構造を観察できている。
47
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
図 1. 直径 100nm の金微粒子の液体中での動態観察結果
図 2 には、生物試料として固定した CHO 細胞を観察した結果を示す。(a)は細胞の全体像、(b)は赤枠部分の
拡大像を示す。細胞の核の回りに存在する微小構造がコントラストよく観察できていることが確認できる。図 2(b)
では細胞の微小器官の構造が 100nm 以下の分解能での観察に成功している。また試料の観察場所によって、
明るい輝点または暗い点として観察されており、それらのコントラスト形成のメカニズムを明らかにする必要があ
ると考える。
(a)
(b)
図 2 細胞の観察結果。(a) 細胞の全体像、(b) (a)内の赤枠部分の拡大図
現状では、蛍光膜を透過した電子線により、生物細胞がダメージを受けている状態も観察されている。そのた
め加速電圧、電流量、電子ビームスポットサイズなどによる試料へのダメージを定量的に評価し、実用化および
生物試料観察時における問題点を明らかにし、それらの改良方法を検討し、システムを最適化する必要があ
る。また、多波長蛍光膜や広帯域発光膜を検討し、システムの高機能化を検討することも必要である。
高効率発光、高機能蛍光薄膜の開発を目指して、希土類元素を含む蛍光薄膜を検討した。希土類元素を
含む材料は、高い輝度でカソードルミネッセンスを生じることが知られており、材料を選択することにより、発光波
長を選択できるなどの特徴を有する。希土類元素として Sm、Ce、Eu を、イオン注入法により SiN 膜へドープし
た。図 3(a)に加速電圧を変化させたときの蛍光薄膜の発光強度の変化を示す。いずれの蛍光薄膜においても
加速電圧とともに、発光強度が増加していることが確認できた。加速電圧 5kV において無ドープの SiN 薄膜に
比べて、13%の蛍光強度が増強していることが確認できた。さらに蛍光膜をアニーリング処理をすることにより、よ
り発光が 25%増強することを確認している。図 3(b)にドープした希土類元素による発光スペクトルを測定した結果
を示す。Ce イオンでは波長 410nm 付近、Sm イオンでは 600nm 付近で発光ピークを有していることが確認でき
た。光量全体としては、Ce イオンをドープしたもので 260%、Sm イオンをドープしたものでは 310%の発光増強さ
48
糖鎖チップ開発
れていることを確認した。また、面内の発光強度分布を測定し、ドープイオンの均一性を評価した。その結果を
図 4 に示す。図中右下半分の領域に Ce イオンをドープし、左上半分には蛍光膜が存在していない。Ce イオン
をドープした領域で面内の発光強度分布が一様であり、Ce イオンが均一にドープされていることが確認できる。
レーザーディポジション法においても、レーザー光の照射強度、照射量、波長により製膜条件を制御し、希土
類ドープ型材料の可能性を検討した。
(a)
(b)
図 3 (a)電子線励起による発光強度および(b)発光スペクトル
図 4. 発光強度の面内分布の測定結果
(8)表面プラズモンアンテナ付きSOIフォトダイオードによる検
アノード
ゲート
出法の開発(猪川)
絶縁膜上のシリコン(SOI: silicon-on-insulator)を利用したフォトダイ
オードの光吸収を増大させるために表面プラズモン(SP)アンテナを開
p+ SP n+
アンテナ
発した(図1)。本アンテナでは入射光が共鳴的にSPを励起し、SPから
の強い近接場光がシリコン層に効率良く吸収される。金のライン・ア
カソード
ンド・スペース(L/S)状SPアンテナの実験結果によれば、外部量子効率
(QE)のピーク波長はL/Sの周期pを変えることにより自由に変更でき
ることが示された。また、95 nm厚の薄いSOIでも波長705 nmにて25%
を越えるQE(向上率8.2倍)が得られることが分った。SPの分散関係
は波長以下の距離にある媒質の誘電率rの変化に敏感であるため、SP
アンテナはアンテナ表面に選択的に吸着した生体物質に対するセン
サーになり得る。実際には、検体のrを変えることにより大きなQE 図1 表面プラズモン(SP)アン
の変化を得ることができるが、ピーク波長はほとんどシフトしな テナ付き SOI フォトダイオード
49
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
い。詳細な解析により、QEはL/Sの周期pとSOI中の伝播波長lgが一致した時に最大値を取ることが分っ
た。この事は、シリコンが異なったrを持つ検体に曝された時に大きな波長シフトが期待できる事を示
唆している。
(9)蛍光寿命イメージセンサの糖鎖チップへの応用(川人)
本研究では、蛍光寿命測定による糖鎖プローブの検出法を検討している。蛍光寿命測定は定量化が
容易で、高い感度でウイルス検出が行える可能性がある。従来の蛍光寿命測定は高価で煩雑なシステム
を必要とし普及させることが困難であるが、提案する蛍光寿命イメージセンサを用いることで、大幅な
コスト削減とシステムの簡素化が期待できる。
本年度は蛍光寿命イメージセンサの試作と、基礎評価および蛍光寿命実験を実施した。図 7-1 に試作
したイメージセンサのチップ写真を示す。1ナノ秒以下の時間分解能で、蛍光寿命を計測することが可
能であり、0.18um CMOS 技術に基づき試作した。画素サイズは、7.5um 角であり、有効画素数 256x256
画素を有する。本センサの特長は、①電荷排出動作のみで、蛍光寿命計測に必要な時間窓によるサンプ
リングを行えること、②極微弱な蛍光を繰り返し検出して、増幅する機能を持ち高感度なセンシングが
行える点にある。試作したイメージセンサを用いて、数ナノ秒から数十ナノ秒の寿命を持つ複数の蛍光
試料に対して蛍光寿命測定を行った結果、図 7-2 に示すように蛍光の減衰波形の取得に成功し蛍光寿命
を測定可能であることを示した。加えて、試作したカメラを顕微鏡に搭載し、実細胞での蛍光寿命イメ
ージングにも成功している。
図 7(a) 試作した蛍光寿命イメージセンサ
図 7(b) 4 種の蛍光試料に対する寿命測定結果
4.今後の展開
(1)
、
(2)糖鎖ライブラリの作製(尾形・朴)
糖鎖の合成には二つの大きな問題がある。①タンパク質とは違い糖鎖は遺伝子工学的手法による合
成が不可能である。②糖鎖の構造多様性のため、糖鎖の大量生産が困難で生産にコストがかかりすぎ
る。以上のような観点からみても、本プロジェクトにおける酵素化学的合成手法に基づく糖鎖合成技
術は非常に有効であり、これまでの実績がそれを証明している。また、前述したように糖鎖は構造が
多様であり様々な糖鎖が特有の生命現象に関与している。そこで、今後の展開としては研究分担者で
ある朴龍洙教授らと協力して種々の糖転移酵素の発現およびそれらを用いた糖鎖合成を引き続き推進
する。
50
糖鎖チップ開発
(3)糖鎖プローブの基盤への糖鎖の固定化(村川)
今後はナノ領域に稠密な糖鎖を提示できる量子ドットが糖鎖研究においても有用な手段となりえるの
か取り組んでいく予定である。
(4)糖鎖チップ作成の実現(岩田)
本年度取り組んだナノピペットを用いた微細加工技術を用いて実際に糖鎖チップを高密度に堆積する
技術へと発展させることを目指す。とくに静電パターにングで堆積されたものにおけるダメージについ
ても調べ、堆積されたものが糖鎖チップとして動作できるかどうかを調べる必要がある。
また、影響が少ない液中環境化で堆積する技術についてもナノピペットやレーザートラップを用いた堆
積法を糖鎖チップアレイ製作に用いていく。
(5)ナノチューブドットアレイ表面上へのプラズマ化学修飾と選択的バイオ高分子の固定化(永津)
今後の研究計画としては、磁気微粒子とプラズマ相互作用の効率化を図ることにより磁気微粒子表
面のプラズマ修飾率の向上を図り、さらにアミノ基以外にカルボキシル基の表面修飾の確認を行って
いく予定である。ウイルス回収効率の向上を目指すとともに、磁気微粒子により回収したウイルスの
生存が確認できれば、次のステップとしてウイルス回収後にワクチン製造を行うプロセスが可能とな
る。このテーマについては、バイオサイエンスの研究者および他大学医学系の研究者と共同で研究を
進めていく計画である。
(6)種々のナノ材料による糖鎖の固定化(三重野)
γ-GPA がナノ材料を包摂し、水溶性クラスターを作るため有効であることが示された。今年度、その
水溶性クラスターの安定性を調べる。温度、PH、添加薬品について包摂の安定性を調べ、バイオ材料と
しての有効性を示す。
次にウイルス吸着を前提に、ウイルスセンサーとしての機能性を持たせる研究を行う。色変化、沈殿
速度、蛍光発光などウイルス付加により水溶性クラスターの物理化学変化を起こす必要が有る。その能
力を実験により引き出す。
酸素プラズマ処理によるナノチューブの水溶化について、より単純で再現性ある方法を開発する。そ
のため、ナノチューブ集合体から、1μm 以下の単離ナノチューブを作る方法を開発する。
(7)電子線励起高分解能光学顕微鏡を利用した検出法の開発(川田)
本研究では、生物試料を生きたまま高分解能で観察するための基礎システムを開発するとともに、
蛍光ラベルしたウィルスを高分解能かつ高感度に検出する手法を開発することを目的とする。これま
での基礎実験により、ナノイメージングシステムの基本構成を作製した。本基礎システムを用いて、
生物試料を観察し、その問題点を明らかにする。とくにウイルスを観察する場合のシステムの基本特
性、分解能、問題点を明らかにする。また、電子線で励起可能な蛍光色素について検討するとともに、
退色性についても検討する。さらに、電子線を生物試料に直接照射することによって、試料に与える
ダメージについても明らかにし、本手法の有効性を確認する。
(8)表面プラズモンアンテナ付きSOIフォトダイオードによる検出法の開発(猪川)
平成23年度の開発結果を受け、SP アンテナ付きSOIフォトダイオードを用いて、アルカンチオ
ール等の模擬検体の検出を試みる。ウイルスを微粒子とみなし散乱光をSOIフォトダイオードによ
って検出する方法についてもデバイスを試作して原理検証を行う。これらの検討を通して、実際のウ
イルスを検出する上での課題を抽出する。
51
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
(9)蛍光寿命イメージセンサの糖鎖チップへの応用(川人)
今後は、ウイルス付着による蛍光寿命変化を計測し、蛍光寿命により糖鎖プローブを検出する手法が
有効であるかどうかを実験的に明らかにする
5.研究業績
朴 龍洙
(1) 学術論文・著書等
1)Tatsuya Kato, Suganthi Lavender Manohar, Shin Kanamasa, Makoto Ogata, and Enoch Y Park,
Improvement of the transcriptional strength of baculovirus very late polyhedrin promoter by repeating its
untranslated leader sequences and co-expression with the primary transactivator, J. Biosci. Bopeng., in press
(2012).
2)Ogata M, Yano M, Umemura S, Murata T, Park EY, Kobayashi Y, Asai T, Oku N, Nakamura N,
Matsuo I, Usui T, Design and synthesis of high-avidity tetravalent glycoclusters as probes for Sambucus
sieboldiana agglutinin and characterization of their binding properties. Bioconjugate Chem., 23, 97-105
(2012).
3)Itaru Minagawa, Masafumi Fukuda, Hisako Ishige, Hiroshi Kohriki, Masatoshi Shibata, Enoch Y. Park,
Tatsuo Kawarasaki, and Tetsuya Kohsaka, Relaxin-like factor (RLF)/insulin-like peptide 3 (INSL3) is
secreted from testicular Leydig cells as a monomeric protein comprising three domains B-C-A with full
biological activity in boars, Biochem. J., 441 (1): 265-273 (2012).
4)Vipin Kumar Deo, Yoshitaka Tsuji, Tomomi Yasuda, Tatsuya Kato, Naonori Sakamoto, Hisao Suzuki, and
Enoch Y. Park, Expression of RSV-gag virus like particle in insect cell lines and silkworm larvae, J. Viol.
Methods, 177, 147-152 (2011).
5)Yoshitaka Tsuji, Vipin Kumar Deo, Tatsuya Kato, and Enoch Y Park, Production of Rous sarcoma virus-like
particles displaying human transmembrane protein in silkworm larvae and its application to ligand-receptor
binding assay, J. Biotechnol., 155, 185-192 (2011).
6)Tatsuya Kato, Fumiaki Suzuki, and Enoch Y. Park, Purification of functional baculovirus particles from
silkworm larval hemolymph and their use as nanoparticles for the detection of human prorenin receptor (PRR)
binding, BMC Biotechnology, vol. 11: 60 (2011).
7)Akifumi Mizutani, Hiroyuki Tsunashima, Ken-ichi Nishijima, Takako Sasamoto, Yuki Yamada, Yasuhiro
Kojima, Makoto Motono, Jun Kojima, Yujin Inayoshi, Katsuhide Miyake, Enoch Y. Park, and Shinji Iijima,
Genetic modification of a chicken expression system for the galactosylation of therapeutic proteins produced in
egg white, Transgenic Res., 13 (2011).
8)Wan-fu Yue, Fang Zhou, Jia-biao Hu, Enoch Y. Park, Joe Hull, Yun-gen Miao, Human insulin gene
expressing with Bombyx mori multiple nucleopolyhedrovirus (BmNPV) expression system. Would J. Microbiol.
Biotechnol., 27:393–399 (2011).
(4) 国際会議発表
1)Vipin Kumar Deo, Takuya Iida, Tatsuya Kato and Enoch Y. Park, Expression and purification of human
wnt3a (h-wnt3a) in silkworms, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green
Science and Technology", 3/14-15, 2012.
2)Jinhua Dong, Takahiro Otsuki, Tatsuya Kato, and Enoch Y. Park, Murine antibodies against Neospora
caninum protein, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and
Technology", 3/14-15, 2012.
3)Iida Takuya, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Expression and purification of human-Wnt3a by using
silkworm larvae, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and
Technology", 3/14-15, 2012.
52
糖鎖チップ開発
4)Tatsuya Kato, Fumiaki Suzuki, Enoch Y. Park, Display of the human (pro)renin receptor on Bombyx mori
nucelopolyhedrovirus (BmNPV) particles for application of ligand-binding assay, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka
Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
5)Takeshi Yamamoto, Vipin Kumar Deo, Tatsuya Kato, Tetsuro Suzuki, Enoch Y. Park, Expression and
purification of intracellular antibody (intrabody) in silkworm to develop inhibitors used for treating hepatitis C
virus (HCV) infection, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and
Technology", 3/14-15, 2012.
6)Yuri Kato, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression of hemagglutinin of avian influenza
H5N1(A/Vietnam/1194/2004), 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green
Science and Technology", 3/14-15, 2012.
7)Jiangxue Li, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression and Purification of Hemagglutinin Using
Silkworm Expression System, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green
Science and Technology", 3/14-15, 2012.
8)Takahiro Oizumi, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression of Shigatoxin B subunit, 2nd Zhejiang
Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
9)Megumi Yui, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Preparation of virus-like particles tracking
cancer cells using bacmid expression system in silkworm, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student
Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
10)Hikaru Kato, Tatsuya Kato, Tetsuya Kohsaka, Enoch Y Park, Expression of relaxin-like factor using
silkworm expression system, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
11)Iida Takuya, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Large scale expression of h-Wnt3a by using silkworms
and insect cells and purification, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
12)Megumi Yui, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Preparation of virus-like particles (VLPs)
tracking cancer cells using bacmid expression system in silkworm, Shizuoka University International
Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
13)Jinhua Dong, Takahiro Ootsuki, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Development of a novel diagnostic method
for cattle neosporosis, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
14)Muthukutty Palaniyandi, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Expression and Purification of Human
Pappilomavirus 6b L1 virus-like particles (VLP) and display of chimeric EGFP whole protein incorporated in
VLP epitopes, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries
within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
15)Takeshi Yamamoto, Vipin Kumar Deo, Tetsuro Suzuki and Enoch Y. Park, Expression of hepatitis C virus
core protein and intrabody, an inhibitor of core protein in the silkworm, Shizuoka University International
Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
16)Takahiro Otsuki, Jinhua Dong, Tatsuya Kato, and Enoch Y Park, Display of Neospora caninum antigens
using BmNPV bacmid in silkworm larvae for development of neosporosis vaccines, Shizuoka University
International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and Technology–,
11/28-29, 2011.
17)Deo Vipin Kumar, Tomomi Yasuda, Tatsuya Kato and Enoch Y Park, Display of Hemagglutinin from
H1N1 on virus like particles for vaccinations, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives
for Crossing Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
18)Tatsuya Kato, James R. Thompson, Enoch Y. Park, Development of vectors for high-throughput protein
expression in silkworms, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
53
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
19)Tomomi Yasuda, Vipin Kumar Deo,Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Expression and purification of
hemagglutinin displayed virus-like particles using bacmid expression system in insect cells, Shizuoka
University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and
Technology–, 11/28-29, 2011.
20)Kanematsu Ayumi, Akiko Murakawa. Taiichi Usui, Enoch Y. Park, Evaluation of the Synthetic Glycolipid
Cluster, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p27, 2011.
21)Vipin Kumar Deo, Tomomi Yasuda, Tsuji Yoshitaka, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Virus like particles
(VLPs) a new display technology for vaccination and drug delivery, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and
Graduate Students Forum proceeding p19, 2011.
22)Wonseok Oh, Akiko Murakawa, Jaebeom Lee, Enoch Y. Park, Sugar immobilizated metal nanoparticles,
2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p41, 2011.
23)Nakagawa Haruyuki, Won Seok Oh, Taichi Usui, Enoch Y. Park, Evaluation of sLeX immobilized
nanoparticles binding behavior against E-selectin, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students
Forum proceeding p33, 2011.
24)Yui Megumi, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Construction of virus-like particles (VLPs)
tracking cancer cell, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p34, 2011.
25)Iida Takuya, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Expression of H-Wnt3a by using silkworms, and
purification, , 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p35, 2011.
26)Takahiro Oizumi, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Development of inhibitor for shigatoxin by
multivalant glycan, , 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p38, 2011.
27)Ryoken Nakazawa, Daichi Mori, Taiichi Usui, Enoch Y. Park, Expression of rat alpha2,3-sialyltransferase
ST3 in silkworm, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p39, 2011.
28)In-Wook Hwang, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Expression of KATP channel proteins using
silkworm, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p40, 2011
(5) 受賞・表彰
最優秀ポスター発表賞
1)Megumi Yui, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Preparation of virus-like particles tracking
cancer cells using bacmid expression system in silkworm, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student
Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
2)Takahiro Oizumi, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression of Shigatoxin B subunit, 2nd Zhejiang
Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
3)Muthukutty Palaniyandi, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Expression and Purification of Human
Pappilomavirus 6b L1 virus-like particles (VLP) and display of chimeric EGFP whole protein incorporated in
VLP epitopes, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries
within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
4)Nakagawa Haruyuki, Won Seok Oh, Taichi Usui, Enoch Y. Park, Evaluation of sLeX immobilized
nanoparticles binding behavior against E-selectin, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students
Forum proceeding p33, 2011.
尾形慎
(1) 学術論文・著書等
1) Endo, T., Matsuda, S., Obara, T., Chuma, Y., Ogata, M., Yanagida, Y., Hatsuzawa, T., Usui, T. Label-free
detection of oligosaccharide-lectin interaction using plasmonic optical device for glycomics application. Sensor.
Mater., 2011, 23, 135-146.
2) Ogata, M., Misawa, Y., Usui, T. Molecular design of multivalent glycosides bearing GlcNAc, (GlcNAc)2 and
54
糖鎖チップ開発
Ⅱ
LacNAc: Analysis of cross-linking activities with WGA and ECA lectins. Biosensors – Emerging Materials
and Applications, 2011, ISBN 978-953-307-328-6, 17-34.
3) Ogata, M., Yano, M., Umemura, S., Murata, T., Park, E. Y., Kobayashi, Y., Asai, T., Oku, N., Nakamura, N.,
Matsuo, I., Usui, T. Design and synthesis of high-avidity tetravalent glycoclusters as probes for Sambucus
sieboldiana agglutinin and characterization of their binding properties. Bioconjugate Chem., 2012, 23, 97-105.
4) Hattori, T., Sakabe, Y., Ogata, M., Michishita, K., Dohra, H., Kawagishi, H., Totani, K., Nikaido, M.,
Nakamura, T., Koshino, H., Usui, T. Enzymatic synthesis of α-chitin-like substance via lysozyme-mediated
transglycosylation. Carbohydr. Res., 2012, 347, 16-22.
5) Kato, T., Manohar, S. L., Kanamasa, S., Ogata, M., Park, E. Y. Improvement of the transcriptional strength
of baculovirus very late polyhedrin promoter by repeating its untranslated leader sequences and coexpression
with the primary transactivator. J. Biosci. Bioeng., 2012 in press.
(3) 特許等
碓氷泰市, 朴龍洙, 尾形慎, 宮崎忠昭:ウイルス阻害剤, PCT/JP2011/054384
岩田太
(1) 学術論文・著書等
1)T. Takami1, F. Iwata, K. Yamazaki, J. W. Son, J. K. Lee, B. H. Park, and T. Kawai“Direct observation of
potassium ions in HeLa cell with ion-selective nano-pipette probe” J. Appl. Phys. 111 (2012) 044702
2) F. Iwata, Y. Mizuguchi, H. Ko and T. Ushiki“Nanomanipulation of biological samples using a compact
atomic force microscope under scanning electron microscope observation” J Electron Microsc. 60(6) (2011)
359
3) S. Ito, K. Ito and F. Iwata“Probe type micro magnetic manipulator utilizing localized magnetic field with
closed loop magnetic path”Int. J. of Nanomanufacturing 8 (1/2) (2012) 161
4) S. Ito, F. Iwata“Nanometer-scale Deposition of Metal Plating Using a Nanopipette Probe in Liquid
Condition”,
Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 08LB15 (6page)
(2) 解説・特集等
1) 岩田 太, 牛木辰男,”電子顕微鏡における AFM のマニピュレータ利用”, O plus E 34 (2012)229
2 ) 著書『新・走査電子顕微鏡』日本顕微鏡学会関東支部編,共立出版 (2011) 第 4 章 5-4
SEM と SPM の複合機 pp217-221
(3) 特許等
1) 発明者 岩田 太、名称“微小付着物剥離システムおよび微小付着物剥離方法”
、
出願人 国立大学法人静岡大学 提出日 平成 23 年 8 月 31 日、特願 2011-189801
2) 発明者 岩田 太 他、名称“基板上に微小物質を再現性良く推積させる方法出願人”
出願人 株式会社デザインテック、国立大学法人静岡大学、特願 2011-227227 号
3) 発明者 岩田 太、名称”接触状態検出装置,接触状態検出方法,接触状態検出用コンピューター
プログラム,接触状態検出装置を備る電気伝導度測定システム及接触状態検出方法を含む
電気伝導度測定方法,特願 2011-65959 号
(4) 国際会議発表
1)S. Matsumoto and F. Iwata, “Development of a self-sensitive atomic force microscope for high-speed
imaging in liquid Condition”, The 19th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, 2011.12.19 -2011.12.21
2) K.Yamazaki, K.Fukuda T. Ushiki and F. Iwata, “Single-cell electroporation using a scanning ion conductance
microscope for low-invasive injection of moleculesThe 19th International Colloquium on Scanning Probe
Microscopy”, 2011.12.19-2011.12.21
3) M. Takahashi, H. Ko and F. Iwata, “ Interactive Nano Manipulator using a haptic device for Scanning
Electron Microscopy”, Super Imaging , 2011,12.12
55
Ⅱ 糖鎖チップ開発
4) S. Ito K. Yamazaki and F. Iwata, “Development of Local Deposition Technique using A Nanopipette in
Liquid Condition”, 4th International Conference of Asian Society for Precision Engineering and
Nanotechnology (Hong Kong), 2011.11.16-2011.11.18
5) I. Ishisaki, Y. Ohashi, T. Ushiki and F. Iwata, “Nanomanipulator Based on a High-speed Atomic Force
Microscopy”, 4th International Conference of Asian Society for Precision Engineering and Nanotechnology
(Hong Kong), 2011.11.16-2011.11.18
6) M. Takahashi, H. Ko, T. Ushiki, and F. Iwata, “Interactive Nano Manipulator based on an Atomic Force
Microscope for Scanning Electron Microscopy”, 2011 International Symposium on Micro-Nano Mechatronics
and Human Science, 2011.11.8
7) S. Ito, K. Yamazaki, F. Iwata, “Measurement and Deposition of Nanometer-scale Cu dot Using an Atomic
Force Microscope with a Nanopipette Probe in Liquid Condition”, 7th International Symposium on Precision
Engineering Measurements and Instrumentation (Lijiang, Yunnan, China) 2011.8.7-11
8) T. Ushiki, H. Ko, and F. Iwata, “Atomic force microscopy of biological samples in a real-time stereo
scanning electron microscope”, International Scanning Probe Microscopy Conference , (TU Munchen)
2011.6.19-22
9) F Iwata, Y Ohashi and T Ushiki, “Interactive nanomanipulator coupled with a high speed imaging
technique
International Scanning Probe Microscopy Conference (TU Munchen)2011.6.19-22
(6) 新聞報道等
1) 日経産業新聞、2011.12.13 “薄膜の電気抵抗 1000 分の 1 ミリ範囲 で測定”
2) 日本経済新聞,2011.12.10 “電気抵抗 極小範囲で測定”
永津雅章
(1) 学術論文・著書等
1) 永津雅章 (分担執筆), "大気圧プラズマの技術とプロセス開発", 監修:沖野晃俊, 担当部分; 第 V 編
医療・バイオ応用, 第1章プラズマ滅菌, (株) シー・エム・シー出版 (2011.8 発行).
2) Z. Shao, A. Ogino, and M. Nagatsu, "Effect of water vapor addition on the microwave-excited Ar plasmainduced polyethylene glycol polymerization and immobilization of L-cysteine", Appl. Phys. Exp. 5 (2012)
046201.
3) T. E. Saraswati, A. Ogino, M. Nagatsu, "Plasma-activated immobilization of biomolecules onto graphiteencapsulated magnetic nanoparticles", Carbon 50 (2012) pp.1253-1261.
4) Z. Shao, A. Ogino, M. Nagatsu, "Immobilization of L-Cysteine onto Polyethylene Glycol Polymerized by
Surface-wave Plasma", Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 08JF03.
5) Y. Zhao, A. Ogino, and M. Nagatsu, "Mass Spectrometric Study on Inactivation Mechanism of
Spore-forming Bacteria by Low-pressure Surface-wave Excited Oxygen Plasma", Appl. Phys. Lett. 98
(2011)191501.
6) M. Nagatsu, T. E. Saraswati, A. Ogino, "Surface Functionalization of Graphene Layer-Encapsulated
Magnetic Nanoparticles by Inductively Coupled Plasma", Adv. Mater. Res. 222 (2011) pp 134-137.
7) T. E. Saraswati, T. Matsuda, A. Ogino, M. Nagatsu, "Surface Modification of Graphite Encapsulated Iron
Nanoparticles by Plasma Processing", Diam. Relat. Mater. 20 (2011) pp. 359-363.
(2) 解説・特集等
1) 永津雅章, 荻野明久 "バイオ・医療分野におけるプラズマ科学技術の展開",プロジェクトレビュー
「プラズマ-バイオ融合科学への新展開」
、プラズマ・核融合学会誌 Vol. 87, No. 10(2011) pp.715-720.
2) 永津雅章, "プラズマ生成の基礎と医療・バイオ応用", 応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科
会、第5回プラズマエレクトロニクス・インキュベーションホール テキスト、(2011.9.20) p.45.
3) 永津雅章, "第 48 回応用物理学会スクール「励起ナノプロセス入門-基礎と将来展望-」テキスト,
“5. プラズマ励起”", (2011.8.29, 山形大学) pp.54-69.
56
糖鎖チップ開発
(3) 特許等
1) 永津 雅章, "荷電粒子ビーム生成装置及び荷電粒子ビーム生成方法",特願 2011-254205 (2011.11.21).
(4) 国際会議発表
1) R.V. Bekarevich, S. Miura, A. Ogino, A.V. Rogachev and M. Nagatsu, "The Effect of Substrate on the
Low-Temperature Carbon Nanomaterials Growth by Microwave Excited Surface-wave Plasma Chemical Vapor
Deposition", 15th International Conference on Thin Films (ICTF-15), Kyoto Terrsa, Japan (2011.11.8-11).
2) Z. Shao, A. Ogino, M. Nagatsu, "Construction of a biocompatible surface layer over medical polymer by
surface-wave plasma treatment to improve the anticoagulant property", 15th International Conference on Thin
Films (ICTF-15), Kyoto Terrsa, Japan (2011.11.8-11).
3) M. Nagatsu, R.V. Bekarevich, S. Miura, A. Ogino, A.V. Rogachev, "Low Temperature Synthesis of Carbon
Nanotube and Graphene Ribbon Using Ion-energy Controlled Microwave Plasma"(Oral), 10th International
Conference on Global Research and Education (Inter-Academia 2011), Sucevita, Romania (2011.9.26-29).
4) M. Nagatsu, T. E. Saraswati, K. Kawamura, A. Ogino, "Biomolecule Immobilization onto PlasmaFunctionalized Graphite-Encapsulated Magnetic Nanoparticles for Medical Application", 20th Int. Symp. on
Plasma Chemistry(ISPC-20), Loews Hotel, Philadelphia, USA (2011.7.24-29).
5) T. E.Saraswati, A. Ogino, M. Nagatsu, "Enhancement of Amino Group Addition onto Graphite Encapsulated
Magnetic Nanoparticles for Biomolecules Immobilization by Plasma Processing", 3rd Int. Symp. on Surface
and Interface of Biomaterials (SIB-2011), Hokkaido University Conference Hall (2011.7.12-15).
6) R.V. Bekarevich, S. Miura, D. Lu, A. Ogino , A.V. Rogachev, M. Nagatsu, "Low Temperature Growth of
Carbon Nanomaterials Using Catalytic Nanaoparticles by Microwave-excited Surface-wave Plasma", VI
International symposium "Fullerenes and Nanostructures in Condensed Matter", Minsk, Belarus (2011.7.14-17).
7) T. E. Saraswati, A. Ogino, M. Nagatsu, "RF Plasma-Activated Immobilization of Biomolecules onto
Graphite-Encapsulated Magnetic Nanoparticles for Drug Delivery Application", International Conference on
New Diamond and Nano Carbons 2011 (NDNC2011), Matsue, Japan (2011.5.17-19).
(5) 受賞・表彰
1) 永津雅章、応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会 第 10 回プラズマエレクトロニクス賞
(2012.3.15).
2) 永津雅章、財団法人浜松電子工学奨励会 第 25 回(平成 23 年度)高柳記念賞 「プラズマ科学技術
の医療・バイオ分野応用に関する先駆的研究」(2011.12.18).
3) 永津雅章、平成 23 年度プラズマ・核融合学会賞 第 16 回技術進歩賞 (2011.11.22).
(6) 新聞報道等
1) 永津雅章、日刊工業新聞
関する研究成果).
2011.12.21 (樹脂フィルム上でのカーボンナノチューブの低温成長技術に
三重野哲
(1) 学術論文・著書等
1) T. Mieno, S. Hasegawa, K. Mitsuishi, “Production of Various Carbon Nanoclusters by Impact Reaction Using
Light-Gas Gun as Simulation of Asteroid Collisions in Space”, Jpn. J. Appl. Phys. 50 (2011) 125102-1-5.
(3) 特許等
1) 出願検討中。
(4) 国際会議発表
1) Y. Sugaya, T. Mieno, “Functionalization of Carbon Nanotubes by Oxygen Plasma to Obtain Water-Soluble
Nanotubes”, Proc. 2011 Korean-Japanese Student Workshop, Hamamatsu, Nov. 3, 2011, pp.43-46.
2) T. Mieno, S. Hasegawa, K. Mitsuishi, “Impact Production of Carbon Clusters by a Gas-Gun”, Proc. Shizuoka
Univ. 2011 Int. Conf., Shizuoka, Nov. 29, 2011, pp.156-157.
57
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
川田善正
(1) 学術論文・著書等
1) Yukimasa Matsumura, Wataru Inami and Yoshimasa Kawata, "Laser Control of Self-Organized Microporous
Structure by a Shock Wave Induced with a Nano-Second Pulse," International Journal of Optomechatronics,
Vol. 5, No. 2, pp. 97-106, (2011)
2) Masatoshi Tsuji, Wataru Inami, Yoshimasa Kawata, and Masaharu Ito, "Parallel Signal Readout for
Roll-Type Optical Advanced Memory," Japanese Journal of Applied Physics, Vol. 50, pp. 09MF04, (2011)
3) 辻真俊, 居波渉, 川田善正, 伊藤雅春, "ロール型多層記録媒体を用いた大容量光メモリー," 映像情
報メディア学会誌, Vol. 65, No. 12, pp. 1808-1812, (2011)
4) Atsushi Ono, Hiroki Sano, Wataru Inami and Yoshimasa Kawata, "Surface Plasmon Excitation and
Localization by Metal-Coated Axicon Prism", Micromachines, Vol. 3, No. 1, pp. 55-61, (2011)
5) Yukimasa Matsumura, Wataru Inami and Yoshimasa Kawata, "Laser Control of Self-Organization Process in
Microscopic Region and Fabrication of Fine Microporous Structure, " Advances in Optical Technologies, Vol.
2012, (2011)
(4) 国際会議発表
1) Wataru Inami, Yasunori Nawa, Akihito Chiba, Atsushi Ono, Atsuo Miyakawa, Yoshimasa Kawata and
Susumu Terakawa, "Imaging Beyond the Diffraction Limit by Electron-Beam Excited Assisted (EXA)
Scanning Optical Microscope," Optics in the Life Sciences, pp. NMA6, (2011)
2) Wataru Inami, Yasunori Nawa, Akihito Chiba, Atsushi Ono, Atsuo Miyakawa, Yoshimasa Kawata and
Susumu Terakawa, "High-Resolution Imaging in Liquid by Electron-Beam Excitation Assisted (EXA)
Microscope," Abstract Book of Focus on Microscopy 2011, pp. 145, (2011)
3) Yukimasa Matsumura, Wataru Inami, and Yoshimasa Kawata, "Laser Control of Self-organization Process
in Microscopic Region," CLEO:2011 Laser Science to Photonic Applications Technical Digest, (2011)
4) Keisuke Ushida, Wataru Inami, Yoshinobu Shimamura and Yoshimasa Kawata, "Characteristic Analysis of
CFRP Cutting with Nanosecond Pulsed Laser," Inter-Academia 2011, (2011)
5) Kohei Takamatsu, Wataru Inami and Yoshimasa Kawata, "Two-Photon Excitation with Visible
Femtosecond Laser for Observation of Wide-Gap Semiconductors," The 2011 Korean-Japanese Student
Workshop, (2011)
6) Yasunori Nawa, Wataru Inami, Akito Chiba, Atsushi Ono, Atsuo Miyakawa, Yoshimasa Kawata and
Susumu Terakawa, "Development of Ultrahigh Spatial Resolution Luminescence Microscope for Live Cell
Imaging with Focused Electron Beam Excitation," Shizuoka University International Symposium Initiatives for
Crossing Boundaries within Science and Technology, pp. 75, (2011)
7) Ken Watanabe, Wataru Inami and Yoshimasa Kawata, "Cell Processing with Electron Beam," Yonsei
University - Shizuoka University Students Workshop 2011, (2011)
8) Kohei Takamatsu, Wataru Inami and Yoshimasa Kawata, "Two-Photon Excitation with Visible
Femtosecond Laser for Observation of Wide-Gap Semiconductors," Yonsei University - Shizuoka University
Students Workshop 2011, (2011)
9) Ryuji Noda, Shota Fukada, Yasunori Nawa, Atsushi Ono, Wataru Inami, Du Guan Xiang, Shin Saito and
Yoshimasa Kawata, "Cathodeluminescence Imaging of Metallic Nanostructures," Yonsei University - Shizuoka
University Students Workshop 2011, pp. O-14, (2011)
10) Keisuke Ushida, Wataru Inami, Yoshinobu Shimamura and Yoshimasa Kawata, "Characteristic analysis of
CFRP Cutting with Nanosecond Pulsed Laser," Yonsei University - Shizuoka University Students Workshop
2011, (2011)
11) Masakazu Kikawada, Atsushi Ono, Wataru Inami, Rentarou Akimoto and Yoshimasa Kawata, "Surface
Plasmon Resonance in Deep-UV Region," Yonsei University - Shizuoka University Students Workshop 2011,
(2011)
12) Masahiro Fukuta, Wataru Inami, Atsushi Ono, Yoshimasa Kawata, "Analysis of Light and Electron
Scattering in a Thin Film for EXA Optical Microscope,"Yonsei University -Shizuoka University Students
Workshop 2011, (2011)
13) Masatoshi Tsuji, Wataru Inami, Yoshimasa Kawata and Masaharu Ito, "Parallel Readout Technique of
Roll-Type Multilayered Optical Memory," The 2011 European Symposium on Phase Change and Ovonic
Science (E/PCOS), (2011)
14) Yoshimasa Kawata, Wataru Inami and Yasunori Nawa, "Electron-Beam Excitation Assisted Optical
Miroscopy for Nanoimaging of Biological Specimens," CISD 19th international Consortium Meeting, (2011)
58
糖鎖チップ開発
15) 川田 善正,居波 渉,"電子線励起による高分解能光学顕微鏡の開発," 電顕技術開発若手研究部会
第 3 回ワークショップ, (2011)
16) Yasunori Nawa, Wataru Inami, Atsushi Ono, Atsuo Miyakawa, Yoshimasa Kawata and Susumu Terakawa,
"High-Resolution Fluorescence Microscopy with Direct Electron Beam Excitation," Focus on Microscopy 2011
(FOM2011), (2011)
(5) 受賞・表彰
1) 日本科学研究会 平成 22 年度笹川科学研究奨励賞(居波渉 助教授)
2) 静岡大学 卓越研究者の称号を授与(川田善正 教授)
3) 静岡大学 若手重点研究者の称号を授与(居波渉 助教授)
4) 静岡大学 学長表彰を受賞(辻真俊 D3)
5) 静岡大学 インターナショナルシンンポジウム 2011 Best Poster Award を受賞(名和靖矩 D1)
猪川洋
(1) 学術論文・著書等(猪川)
1) H. Satoh and H. Inokawa, "Surface Plasmon Antenna with Gold Line and Space Grating for Enhanced Visible
Light Detection by Silicon-On-Insulator Metal-Oxide-Semiconductor Photodiode," IEEE Trans. Nanotechnol.,
Vol. 11, to be published, 2012.
2) Atsushi Ono, Yuki Matsuo, Hiroaki Satoh, and Hiroshi Inokawa, "Sensitivity Improvement of
Silicon-On-Insulator Photodiode by Gold Nanoparticles with Substrate Bias Control," Appl. Phys. Lett., Vol. 99,
No. 6, pp. 062105_1-3, Aug. 9, 2011.
3) Wei Du, Hiroshi Inokawa, Hiroaki Satoh and Atsushi Ono, "SOI metal-oxide-semiconductor field-effect
transistor photon detector based on single-hole counting," Optics Letters, Vol. 36, No. 15, pp. 2800-2802, July
20, 2011.
4) Touichiro Goto, Hiroshi Inokawa, Yukinori Ono, Akira Fujiwara and Keiichi Torimitsu, "Electrical
Characterization of Terphenyl-Based Molecular Devices," Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 50, No. 7, pp. 071603-1~6,
July 20, 2011.
5) Hiroshi Inokawa, Wei Du, Mitsuru Kawai, Hiroaki Satoh, Atsushi Ono, Vipul Singh, "Single-Photon Detector
Based on MOSFET Electrometer with Single-Electron Sensitivity," Advanced Materials Research, Vol. 222, pp.
3-7, April 2011.
6) Atsushi Ono, Hiroaki Satoh, Hiroshi Inokawa, "High-Efficiency SOI Photodetector Utilizing Surface
Plasmon Resonance in Gold Corrugated Structure," Advanced Materials Research, Vol. 222, pp. 154-157, April
2011.
7) Hiroaki Satoh, Yuki Matsuo, Hiroshi Inokawa, Atsushi Ono, "Investigation of Adhesion Materials for Gold
Line-and-Space Surface Plasmon Antenna on SOI-MOS Photodiode," Advanced Materials Research, pp.
201-204, April 2011.
(2) 解説・特集等(猪川)
1) 小野篤史、佐藤弘明、猪川洋、「表面プラズモンを利用した光検出器の性能向上」 表面技術、Vol. 62,
No. 6, pp. 291-295, 2011.
(4) 国際会議発表(猪川)
1)Wei Du, Hiroshi Inokawa, Hiroaki Satoh and Atsushi Ono, "Room-Temperature Single-Photon Detector
Based on a Simple SOI MOSFET," The 1st International Symposium on Photonics and Electronics
Convergence (ISPEC2011) P-22, p. 58 (Tokyo, Japan, Nov. 14-15, 2011).
2)Wei Du, Hiroshi Inokawa and Hiroaki Satoh, "Single-Photon Detection by a Simple SOI MOSFET," 24th
International Microprocesses and Nanotechnology Conference (MNC 2011), 26C-6-5L (Kyoto, Japan, Oct.
24-27, 2011).
3)Masahiro Ishii, Atsushi Nakamura, Hiroshi Inokawa and Jiro Temmyo, "Field-Effect Transistor with
Graphene by Direct Alcohol CVD," 2011 Int. Conf. Solid State Devices and Materials (SSDM) K-8-6 pp.
59
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
1292-1293 (Nagoya, 2011.9.28-30).
4)Hiroaki Satoh, Hiroshi Inokawa and Atsushi Ono, "Enhanced Light Sensitivity of Thin SOI Photodiode by
Metal Line-and-Space Grating of Various Materials," 2011 Int. Conf. Solid State Devices and Materials
(SSDM) P-7-25 pp. 266-267 (Nagoya, 2011.9.28-30).
5)Atsushi Ono, Hiroaki Satoh, Ryo Kawai and Hiroshi Inokawa, "Periodic Arrangement of Au Nanoparticles on
SOI Photodiode for Absorption Enhancement," 2011 Int. Conf. Solid State Devices and Materials (SSDM)
P-7-24 pp. 264-265 (Nagoya, 2011.9.28-30).
6)Hiroshi Inokawa, Wei Du, Mitsuru Kawai, Hiroaki Satoh, Atsushi Ono, and Vipul Singh (Invited),
"Photodetector Based on MOSFET Electrometer with Single-Electron Sensitivity," International Conference on
Nanoscience & Technology, China 2011 (ChinaNANO 2011) paper# 5I-005, p. 23 (Beijing, China, 2011.9.7-9).
7)Michito Sinohara, Yuki Kato, Masashi Arita, Akira Fujiwara, Yukinori Ono, Katsuhiko Nishiguchi, Hiroshi
Inokawa, and Yasuo Takahashi, "Observation of New Current Peaks of Si Single-Electron Transistor with a
Single-Hole Trap," 2011 IEEE Silicon Nanoelectronics Workshop (SNW-11) pp. 59-60 (Kyoto, Japan,
2011.6.12-13).
8)Wei Du, Hiroshi Inokawa, Hiroaki Satoh and Atsushi Ono, "Peculiar Hole Lifetime in SOI MOSFET
Single-Photon Detector," 2011 IEEE Silicon Nanoelectronics Workshop (SNW-11) pp. 47-48 (Kyoto, Japan,
2011.6.12-13).
9)Hiroaki Satoh, Hiroshi Inokawa, and Atsushi Ono, "Enhancement of Light Sensitivity of Thin SOI photodiode
by Gold Line-and-Space Grating for Selected Wavelength and Polarization," 2011 IEEE Silicon
Nanoelectronics Workshop (SNW-11) pp. 33-34 (Kyoto, Japan, 2011.6.12-13).
10)Wei Du, Hiroshi Inokawa and Hiroaki Satoh (Invited), "Room Temperature Photon-Number-Resolving
Detector Based on SOI MOSFET," The 4th International Symposium on Photoelectronic Detection and Imaging
(ISPDI 2011) Conference 4, Session 2, paper #7, p. 61 (Beijing, China, May 24-26, 2011).
11)Hiroshi Inokawa, Wei Du, Mitsuru Kawai, Hiroaki Satoh, Atsushi Ono and Vipul Singh (Invited),
"Single-Photon Detection by SOI MOSFET," The 2011 International Meeting for Future of Electron Devices,
Kansai (IMFEDK), pp. 24-25 (Osaka, Japan, May 19-20, 2011).
川人祥二
(1)学術論文・著書等
著書
1) Single-Photon Imaging, Peter Seitz 編著, Shoji Kawahito 他著者 12 名, 第 9 章
「Architectures for Low-noise
CMOS Electronic Imaging」,pp.197-217 担当,Springer 社,2011.
学術論文
1)Izhal Abdul Halin, Amad ud Din, Ishaq b. Aris, Maryam bt. Mohd Isa, Suhaidi Shafie, Shoji Kawahito, “Selection
of amplifier for optimized charge transfer in active pixel CMOS time of flight (TOF) image sensors”, IEICE
Electronics Express, Vol. 8, No.22, P1913-1919, Nov.2011.
2)Min-Woong Seo, Sung-Ho Suh, Tetsuya Iida, Taishi Takasawa, Keigo Isobe, Takashi Watanabe, Shinya Itoh,
Keita Yasutomi, Shoji Kawahito, “A Low-Noise High Intrascene Dynamic Range CMOS Image Sensor With a 13 to
19b Variable-Resolution Column-Parallel Folding-Integration/Cyclic ADC”, IEEE Journal of Solid-State Circuits,
Vol.47, No.1, P272-283, Jan.2012.
3)Kamel Mars, Shoji Kawahito, “A single-ended CMOS chopper amplifier for 1/f noise reduction of
n-channel MOS transistors”, IEICE Electronics Express, Vol9, No.2, P98-103, Jan. 2012
(3)特許等
1)CMOSイメージセンサ, 川人祥二, 特願2006-287005(2006/10/20), 特許第4710017号(2011/4/1)
2)A/D変換器および読み出し回路, 川人祥二, 特願2008-527759(2008/12/22), 特許第4793602号(2011/8/5)
3)共焦点顕微鏡装置, 川人祥二, 寺川 進(浜松医科大学), 特願 2005-024687(2005/2/1), 特許第
4802320 号(2011/8/19)
4)アナログディジタル変換器、A/D変換ステージ、アナログ信号に対応したディジタル信号を生
60
糖鎖チップ開発
成する方法、およびA/D変換ステージにおける変換誤差を示す信号を生成する方法, 川人祥二, 特
願 2008-520636(2008/11/4), 特許第 4893896 号(2012/1/6)
5)イメージセンサ, 川人祥二, 特願 2007-315048(2007/12/5), 特許第 4941989 号(2012/3/9)
6)半導体測距素子及び固体撮像装置, S.Kawahito, 国際出願 10-2009-7013136(2007/11/30), Patent no.
10-1030263, 2011/4/13.
7)高速撮像装置, S.Kawahito, 国際出願 4250088/4, (2004/1/9), Patent no.1509038, 2011/4/20.
8)A/Dconversion array and image sensor, S.Kawahito, 国際出願 4793319.7 (2004/10/27), Patent no.
1679798, 2011/6/29
9)光飛行時間型距離センサ, S.Kawahito, 国際出願 10-2006-7019161 (2005/2/14), Patent no.10-1098216,
2011/12/26.
10)巡 回 型 ア ナ ロ グ ・ デ ィ ジ タ ル 変 換 器 , S.Kawahito, 国 際 出 願 12/812204 (2009/1/8), Patent
no.US8118156, 2012/2/21.
(4) 国際会議発
1) S. Kawahito, Z. Li, K. Yasutomi, “A CMOS image sensor with draining only modulation pixels for
sub-nanosecond time-resolved imaging,” Proc. 2011 Intl. Image Sensor Workshop, pp.185-188, Hakodate, Jun. 2011.
2) K. Yasutomi, Y. Sadanaga, T. Takasawa, S. Itoh, S. Kawahito, “Dark Current Characterization of CMOS Global
Shutter Pixels using Pinned Storage Diodes,” Proc. 2011 Intl. Image Sensor Workshop, pp.316-319, Hakodate, Jun.
2011.
3) J. H. Park, S. Aoyama, T. Watanabe, T. Kosugi, Z. Liu, T. Akahori, M. Sasaki, K. Isobe, Y. Kaneko, K.
Muramatsu, T. Iida, S. Kawahito, “A high-speed low-noise CIS with 12b 2-stage pipelined cyclic ADCs, ” Proc.
2011 Intl. Image Sensor Workshop, pp.339-342, Hakodate,
Jun.2011.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4) K. Kitamura, T. Watabe, Y. Sadanaga, T. Sawamoto, T. Kosugi, T. Akahori, T. Iida, K. Isobe, T. Watanabe,
H. Shimamoto, H. Ohtake, S. Aoyama, S. Kawahito, N. Egami, “A 33 Mpixel, 120 fps CMOS Image Sensor for
UDTV Application with Two-stage Column-Parallel Cyclic ADCs,” Proc. 2011 Intl. Image Sensor Workshop,
pp.343-346, Hakodate, Jun.2011.
5) H. Nakada, M. Watanabe, S. Kawahito, “Parallel Template Matching Operations on a Dynamically
Reconfigurable Vision-Chip Architecture”, IEEE Northeast Workshop on Circuits and Systems, pp. 205-208,
Bordeaux, Jun. 2011.
6) M-W. Seo, S. Suh, T. Iida, T.Takasawa, K. Isobe, T. Watanabe, S. Itoh, S. Kawahito, “Low Noise High
Dynamic Range CMOS Image Sensor with Folding-Integration/Cyclic ADCs”, 2nd Korea-Japan Joint
Symposium and Graduate Students Forum, P66, Daegue, Sep. 2011.
7) S-W. Jun, S. Kawahito, “Design of Digitally Assisted Pipeline ADC Using Incomplete Settling Error
Correction”, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum, P64, Daegue, Sep. 2011.
8) S. Han, K. Yasutomi, S. Kawahito, “A CMOS Time-of Flight Range Image Sensor Using Draining Only
Modulation Structure”, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum, P63, Daegue, Sep.
2011.
9) K. Kagawa, S. Kawahito, “Biomedical applications of CMOS compound-eye camera”, 2nd Korea-Japan
Joint Symposium and Graduate Students Forum, P59-60, Daegue, Sep. 2011.
10)S.Kawahito, S. Ito, Y. Iwama, I. Takai, M. Ando, K. Yasutomi, K. Kagawa, “A 2-D Optical Pulse
Receiver/Imager with Two-Port Pixels for Simultaneously Producing Image and Communication Signals”, 2011
International Conference on Solid State Devices and Materials, GH-1-2, pp1029-1030, Nagoya, Sep. 2011.
11)L.Miao, S.Kawahito, “A Study on Bandwidth Mismatch Calibration for Time-interleaved A/D Converter”,
Inter-Academia 2011, iAY18, Sep. 2011.
12)H.Ogawa, S.Kawahito, “A Time-of-Flight Measurement Circuit Using a Multiple-Stage Amplifier for a
Range Finder with Wide Working Range”, Inter-Academia 2011, iAY15, Sep. 2011.
13)Z. Li, K. Yasutomi, K. Kagawa, S. Ito, M. Hashimoto, S. Kawahito, “Design and Implementation of
CMOS Image Sensor with Draining Only Modulation Pixels for Fluorescence Lifetime Imaging”, The 13th
Takayanagi Kenjiro Memorial Symposium, S3-10-1 - S3-10-3, Hamamatsu, Nov. 2011.
14)M.A.B. Mustafa, M-W. Seo, K. Yasutomi, S. Kawahito, “Reduction of Temporal Noise in 0.18um CMOS
Image , Sensors Using Correlated Multiple Sampling (CMS)”, The 13th Takayanagi Kenjiro Memorial
Symposium, S3-9-1 - S3-9-4, Hamamatsu, Nov. 2011.
15)K. Imai, K. Yasutomi, K. Kagawa, S. Kawahito, “Mismatch Analysis of a column-distributed ramp signal
61
Ⅱ
Ⅱ 糖鎖チップ開発
generator”, The 13th Takayanagi Kenjiro Memorial Symposium, S3-8-1 - S3-8-3, Hamamatsu, Nov. 2011.
16)K.M.R. Amin, S. Kawahito, “Folding-Integration/Pipeline Cascaded Analog-to-Digital Converter for
Nanometer-scale Technology”, The 13th Takayanagi Kenjiro Memorial Symposium, S3-7-1 - S3-7-5,
Hamamatsu, Nov. 2011.
17)M-W. Seo, A. Wang, Z. Li, K. Yasutomi, K. Kagawa, S. Kawahito, “A CMOS Imager Using Focal-plane
Pinhole Effect for Confocal Multibeam Scanning Microscopy”, SPIE Electronic Imaging 2012, San Francisco,
Jan. 2012.
18)K. Kagawa, E. Tanaka, K. Yamada, S. Kawahito, J. Tanida, “Deep-focus compound-eye camera with
polarization filters for 3D endoscopes”, SPIE Photonics West 2012, San Francisco, Jan. 2012.
19)T. Watabe, K. Kitamura, T. Sawamoto, T. Kosugi, T. Akahori, T. Iida, K. Isobe, T. Watanabe, H.
Shimamoto, H. Ohtake, S. Aoyama, S. Kawahito, N. Egami, “A 33Mpixel 120fps CMOS Image Sensor Using
12b Column-Parallel Pipelined Cyclic ADCs”, Proc.2012 IEEE Int. Solid-State Circuits Conf., 22.5, P388-389,
San Francisco, Feb.2012.
20)Y. Kamikubo, M. Watanabe, S. Kawahito, “A Full Dynamically Reconfigurable Vision-chip System
Including a Lens-array”, SASIMI 2012 The 17th Workshop on Synthesis And System Integration of Mixed
Information Technologies, R2-25, pp272-277, Beppu, Mar. 2012.
(6)新聞報道等
1)日刊工業新聞, 静岡大学イノベーション共同研究センター創立20周年 事業化に向けた代表的な産学連
携の取り組み, 2011.11.25
2)電波タイムズ, NHKと静岡大学 SHVカメラ用イメージセンサー開発, 2012. 2.29.
62
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
Ⅲ. 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基礎研究
代表者
分担者
朴 龍洙
創造科学技術大学院・教授
尾形
加藤
坂元
徳元
Vipin
村川
山崎
創造科学技術大学院・特任助教
農学部・助教
工学部・助教
理学部・教授
創造科学技術大学院・特任助教
創造科学技術大学院・特任助教
創造科学技術大学院・教授
慎
竜也
尚紀
俊伸
Kumar Deo
明子
昌一
1.研究目的
ウイルスはエンベロープと呼ばれるタンパク質、或いはカプシドと呼ばれるタンパク質(非エンベ
ロップウイルス)の殻で覆われている。このエンベロープタンパク質やカプシドタンパク質のみで、
遺伝情報を持たないものをウイルス用粒子(Virus like particle, VLP)と呼ばれる。VLP は、表面に抗原
タンパク質などを提示しているので、抗原性を持つので、成分ワクチンとしての研究が注目されてい
る。特に VLP は遺伝物質を持たないので感染の心配が無いので、ウイルスの構造をミミックしたもの
と言える。既に 30 種以上のウイルスを用いた VLP の発現が知られ、その中でパピロマウイルス様粒子
はワクチン用として臨床試験段階に至っている。そこで、VLP を量産する場合、大量発現が可能であ
る点、血清のような動物由来のタンパク質が必要ない点、バキュロウイルスは狭い宿主範囲である点、
バキュロウイルスは簡単な処理で不活性化できる点で昆虫細胞が用いられる。そこで、本研究では、
VLP の作製、相互作用、及び評価に分けて、下記の様な分担体制で研究を遂行する。
作製
1)ワクチン用ウイルス様粒子(VLP)の開
発(朴)
2)Papilloma virus のVLPに RSV-gag を融
合したVLPの作製(加藤)
3)インフルエンザ検出用ナノビーズの作製(村
川)
4)Display of cancer targeting scFVs and Fab
Antibodies on Virus like Nanoparticles for
new drug delivery system(Deo)
作製
評価
63
相互
作用
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
相互作用
5)キュービック相を用いた生体膜の膜融合の研究(山崎)
6)膜タンパク質の機能解析(徳元)
評価
7)ヘマグルチニン提示VLPの評価(尾形)
8)透過型電子顕微鏡による VLP 粒子の微構造評価(坂元)
2.研究計画・方法
(1)ワクチン用ウイルス様粒子(VLP)の開発(朴)
前年度 Rous Sarcoma virus の Gag タンパク質からなるウイルス様粒子(RSV-gag VLP)の発現と精
製に成功した。この成果を基に、インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)を提示したウイル
ス様粒子の発現と精製を試みた。インフルえん罪ウイルス A の H1N1 タイプは感染性が強く短時間で拡
散することから、これに対するワクチンの開発や検出手法の開発が急務である。そこで、昨年発現に
成功した Gag-VLP を用い、Gag-VLP の表面に HA の発現を目的とした。
Trichoplusia ni 由来の Tn-5B1-4 (Invitrogen, San Diego, CA, USA) を発現用宿主として用いた。
細胞は 1% (v/v) antibiotic– antimycotic (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)を添加した Express five
serum free medium (SFM) (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)培地を用い、25 cm2 組織細胞培養用フ
ラスコ(Falcon, Lincoln Park, NJ, USA)にて、27ºC インキュベーター (Hitachi, Japan)で培養を行
った。大量のタンパク質発現のために培地を 200 ml 含む 500 ml フラスコにて浮遊培養を行った。
安定発現株の作製には、
それぞれ pIB/V5-His-Dest と pIZ/V5-His-Dest Gateway vector (Invitrogen,
Carlsbad, CA, USA)を用いた。pRep (A) (ATCC catalogue No. 87702)を鋳型として RSV-gag cDNA を
PCR で増幅した。更に RSV-gag-577 断片は Forward primer: 5′-CACC ATGGAAGCCGTCATAAAGGTG -3′;
reverse primer: 5′-TTA CGA GAC GGC AGG TGG CTC AGG-3′を用い、PCR で増幅した。また、HA の cDNA
は Forward primer: 5′-CGGGGTACCATGGACTACAAGGATGACGATGACAAGATGAAGGCAAACCTACTGGT-3′; reverse
primer: 5′-TCCCCGCGGTCAGATGCATATTCTGCACT3′を用い、pDP122B vector から PCR で増幅した。PCR
断片は、それぞれ pIB/V5-His-Dest と pIZ/V5-His-Dest に挿入し、 pIB/V5-His-RSV-gag-577 と
pIZ/V5-His-HA を得た。挿入配列は Thermo Sequenase Cycle Sequencing kit (USB, Cleveland, Ohio,
USA)によって確認した。pIB/V5-His-RSV-gag-577 は安定株作製に用いられ、pIZ/V5-His-HA vector と
共発現によって VLPs/HA の作製を行った。
発現した VLPs 及び HA はそれぞれ Anti-p10 と Anti-HA (Abcam,
USA)抗体を用いた western blotting で確認した。
64
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
(2)Papilloma virus のVLPに RSV-gag を融合したVLPの作製(加藤)
ウイルスはエンベロープの有無によって分類す
ることができ、エンベロップを有しないウイルス
hPRR または scFv
脂質二重膜
(非エンベロップウイルス)はカプシドと呼ばれる
タンパク質の殻で覆われている。このカプシドタ
ンパク質のみを発現させることで、遺伝情報を持
たないウイルス用粒子(VLP)を生産することが
できる。またエンベロップを有するウイルス(エ
ンベロップウイルス)に関しても、ウイルスを構
成するタンパク質だけを発現させることにより、
エンベロップを持つ VLP を生産することができ
る。VLP はウイルスの大きさと同じく数十から数
Gag タンパク質
L1 タンパク質
百 nm の大きさであり、ナノ粒子としてドラッグ
Rous sarcoma virus VLP
デリバリーやワクチン、ナノカプセルなど機能性
ヒト papillomavirus VLP
ナノマテリアルとして利用可能である。本研究で
はこの VLP をカイコで生産し、効率的な精製方法
VLP の構造
を確立する。またこの VLP 表面への機能性タンパ
ク質の提示法を確立し、機能性タンパク質のアッ
セイヘの応用を試みる。
前年度、非エンベロップウイルスであるヒト papillomavirus(HPV)の L1 タンパク質を用いた。完全
長の L1(L1 Full)および C 末端側を欠損させた L1(L1 479)をカイコで発現させ、脂肪体から部分精
製を行った。今年度はその結果を基に、以下の研究を遂行する。
・HPV L1 VLP のカイコからの精製
2 種類の HPV 6b L1 タンパク質遺伝子(1-500 アミノ酸残基(Full)と 1-479 アミノ酸残基(Short))
を構築し、L1-Full と L1-Short をカイコ-バクミド発現系を用いてカイコ幼虫で発現させた。それぞれ
の遺伝子を持つ BmNPV バクミド DNA をトランスフェクション試薬 DMRIE-C(Invitrogen)と一緒
に注射後、6-7 日飼育したカイコから脂肪体を回収した。回収した脂肪体に 1 匹あたりの脂肪体に 5ml
の割合で PBS(pH7.4)を加え懸濁して、超音波破砕により、タンパク質を抽出した。破砕液を遠心分
離(30000 x g, 10 分間)後、上清を回収した。上清を HiTrap heparin カラムクロマトグラフィーに供
した。PBS(pH7.4)で平衡化した HiTrap heparin カラムに上清 6ml 供し、10ml の PBS でカラムを
洗浄した。洗浄後、1M の NaCl を含む PBS で吸着したタンパク質をグラジエント溶出で溶出させた。
Western blot により、L1 タンパク質の存在するフラクションを決定し、フラクションを回収した。精
製したそれぞれの L1 タンパク質を電子顕微鏡により確認した。
・HPV L1 VLP への EGFP の提示
HPV 6b L1 タンパク質のアミノ酸残基 55-56, 174-175, 348-349 の間へ EGFP を挿入し、L1-EGFP
融 合 タ ン パ ク 質 の 構 築 を 試 み た 。 PCR に よ り、 そ れ ぞ れ の L1-EGFP 融 合 タ ン パ ク 質 遺 伝 子
(L1-EGFP55, L1-EGFP174, L1-EGFP348)を構築した。それぞれの融合タンパク質遺伝子を BmNPV
バクミドに挿入して、カイコ-バクミド発現系を用いてカイコ幼虫でそれぞれの融合タンパク質を発現
させた。それぞれの遺伝子を持つ BmNPV バクミド DNA をトランスフェクション試薬 DMRIE-C
(Invitrogen)と一緒に注射後、6-7 日飼育したカイコから脂肪体を回収した。回収した脂肪体に 1 匹
あたりの脂肪体に 5ml の割合で PBS(pH7.4)を加え懸濁して、超音波破砕により、タンパク質を抽
出した。破砕液を遠心分離(30000 x g, 10 分間)後、上清を回収した。上清から L1-Full および L1-Short
と同様の方法で HiTrap heparin カラムクロマトグラフィーにより、それぞれの融合タンパク質を精製
した。精製した融合タンパク質を電子顕微鏡で確認した。
65
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
HPV 16 L1 protein
BC
DE
CD
HI
FG
EF
: Loop region
(3)インフルエンザ検出用ナノビーズの作製(村川)
インフルエンザウイルスは 2003 年 11 月以来、東南アジアや中央アジアでトリからヒトへ感染する
事例が多数報告され、高い致死率を示している。本来トリとヒトの上皮細胞に発現される糖鎖構造は
異なっているためトリ型インフルエンザウイルスがヒトへは感染しないとされていた。しかし近年ヒ
ト由来細胞にもトリ型が認識する糖鎖を発現したり、感染が流行しているインフルエンザウイルスに
おいてはそのアミノ酸の点変異により認識性が変化したりすることがわかってきた。そこで本研究で
はインフルエンザウイルス感染を防ぐナノビーズを用いたワクチン開発を目的とした。インフルエン
ザウイルスに提示されたヘマグルチニン(HA)が糖鎖を認識することで標的となる生物種へ感染する。
しかしながら HA 固定化ナノビーズや糖鎖が提示されたナノビーズを競合添加することによって、移
入種の HA が標的細胞に侵入することを阻害することが可能となる。まずはヒト型とトリ型の HA を作
製する。ビーズにおいては金属種およびサイズを最適化し、実際にヒト由来細胞を用いてナノビーズ
の結合挙動の観察および定量的評価することを目指す。
(4)Display of cancer targeting scFVs and Fab Antibodies on Virus like Nanoparticles for new
drug delivery system(Deo)
New type of DDS: scFvs and Fabs antibody will be produced and displayed on VLPs by
co-expression in silkworms. The proposed research shall make a true DDS using nanoparticles
produced in silkworms. These VLPs based nanoparticles shall be tested as carriers and their
specificity shall be determined by the scFvs and Fabs on the surface of VLPs. This unique
approach shall provide a method to direct therapeutics towards the cancer cells and avoid toxicity
effects on the normal cells as shown in the figure.
Expected results
scFvs or Fabs
RSV-gag-577 VLPs
Tumor associated glycoprotein-72
Fusion
Cancer cell line
Cancer cell line
(5)キュービック相を用いた生体膜の膜融合の研究(山崎)
膜が 3 次元的につながった生体膜/脂質膜のキュービック相(Q 相)と2分子膜の液晶相 (L相) の
相転移は生体膜のトポロジー変化で重要であるが未解明な点が多い。山崎らは膜の表面電荷(負電荷
を持つ脂質の膜内濃度、または膜界面に結合する電荷を帯びたペプチド濃度で制御)に基づく静電相
互作用により、これらの相転移を誘起できることを初めて発見した (Biophys. J. 81, 983, 2001; Langmuir,
19, 4745, 2003; Adv. Planar Lipid Bilayers & Liposomes, 9, 163, 2009)。静電相互作用はマイルドな相互作用
なので、生体中で起こっている可能性は高い。J. Cell Biol. (173, 839, 2006) の生体中の Q 相の総説で上
記の研究は高く評価された。最近、水溶液の pH を下げることにより (pH2.9 以下)、ジオレオイルホス
ファチジルセリン(DOPS)とモノオレイン(MO)の混合膜(L相)の多重層リポソーム(MLV)が Q 相に相
転移し、かつそれが可逆的であることを発見した。さらに DOPS/MO 膜の一枚膜リポソーム(LUV)
の懸濁液の pH を下げることにより、1 時間以内に LUV を Q 相に構造転移することに成功した
(Langmuir, 24, 3400, 2008)。これらは pH 制御による生体膜の L相と Q 相の間の構造転移の初めての例
である。pH 変化による機能制御は細胞中でよく行われるので、この結果の生物学的意義は非常に大き
66
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
い。これらの相転移や構造転移には膜融合が伴うので、生体膜の膜融合のメカニズムやその応用の研
究のためにも、上記の L相と Q 相の間の構造転移の研究は重要である。
本研究ではこの pH 制御による生体膜の L相と Q 相の間の構造転移の素過程やメカニズム、および
応用の研究を行う。本年度は、低い pH が誘起する DOPS/MO 膜の Lα 相から Q 相への相転移の素過程
を、X 線強度が強い SPring-8 の放射光と混合後ミリ秒単位で測定できる急速二液混合装置やストップ
トフローの装置を用いる時分割 X 線小角散乱法 (SAXS) により研究し、相転移のキネティックス(速
度定数や中間体の同定など)の解明をおこなう。その結果に基づいて、この相転移のメカニズムを解
明する。
(6)膜タンパク質の機能解析(徳元)
新規 GPCR ステロイド膜受容体の発現、精製法の確立)
本研究は新たに見つかったステロイド膜受容体
(mPR)の大量発現とその精製法の確立を目的とする。
一般にステロイドホルモンは核内受容体を介して
mRNA の転写誘導を伴うゲノミック反応により作用す
るものと考えられてきた。しかし、核内受容体だけで
はなく細胞膜表面のステロイド膜受容体を介して
mRNA の転写誘導を伴わないノンゲノミック反応によ
り作用する経路の存在が古くから指摘されてきた(右
図)
。ステロイド膜受容体の同定に向け多くの努力が
はらわれたが、同定には至らなかった。しかし、最近
になりついにステロイドの膜受容体候補である mPR 分
子が発見された。 mPR 分子はあらゆる組織で発現することが明らかになり、このことから細胞膜表面
のステロイド膜受容体を介したノンゲノミックなシグナル伝達経路が一般的なステロイドホルモンの
作用機構の一つであることが示唆され、ステロイド膜受容体分子の構造と機能の解明は生殖医療やニ
ューロステロイドによる脳の機能調節の理解などへの貢献が期待されている。しかし、細胞表面にお
けるステロイドの作用は世界的な議論の過中にあり、未だにこの分子の研究は活発化しておらず国内
において本格的に研究を進めているのは静岡大学のみである。
(7)ヘマグルチニン提示 VLP の評価(尾形)
我々はこれまでに天然ポリペプチドである納豆菌産生 γ-ポリグルタミン酸のカルボキシ基にヒト型
およびトリ型インフルエンザウイルスが特異的に認識するレセプター分子(糖鎖)を多価に結合させ
た人工糖鎖ポリペプチドの合成に成功している。本糖鎖ポリペプチドは親水性の糖鎖と疎水性の主鎖
からなり、両親媒性分子の特徴を有しているのでポリスチレンプレートの疎水基盤上に容易に固定化
できる。この特性を利用し、ELISA 法を基盤としたヘマグルチニン提示 VLP の評価を行う。具体的に
は、各濃度に調製したヒト型またはトリ型インフルエンザウイルスレセプター構造を含有する糖鎖ポ
リペプチドをユニバーサルプレートに添加後、1 分間 UV(254 nm)を照射することで固定化を行う。
続いて、BSA 溶液を用いてブロッキングしたのち、村川特任助教(分担者)によって作製された FLAG
タグ配列を有するヘマグルチニン提示 VLP を添加・洗浄後、一次抗体・二次抗体を処理し最後に ELISA
POD 基質 TMB キット HYPER の発色基質溶液を添加し 405 nm の吸光度を測定する。これにより VLP
のヘマグルチニン提示の有・無および結合特異性を評価する。
(8)透過型電子顕微鏡による VLP 粒子の微構造評価(坂元)
透過型電子顕微鏡による VLP の微構造観察を行う。透過型電子顕微鏡でウィルス等の生物試料を観
察する際には、試料の輪郭を明瞭にするためにオスミウム等の重金属元素を用いたネガティブ染色操
作が必要となる。分担者はこれまでに様々な種類の VLP 観察を行ってきた経験を有している。透過型
電子顕微鏡観察には JEM2100F もしくは JEM2000FX-II を用い、透過像観察を行う。分担者はこれらの
装置の操作に習熟しており、本研究提案においても VLP 粒子の観察に技術的な問題は無いものと考え
ている。
67
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
3.主な研究成果
(1)(3)ワクチン用ウイルス様粒子(VLP)の開発(朴、村川)
HA を提示した VLP を得るために VLP を発現している安定株の単離を行ったところ、D6 株が
VLP を発現していることが分かった。D6 株からは 0.78 mg の VLP を得ることができた。これは、
VLP 精製効率 4.5%に当たる。この株に HA を提示する株を得るために pIZ/V5-His-HA ベクターを
トランスフェクッションし、HA を発現する安定化株 D6/HA を得
た。この株は、二種類以上のタンパク質を発現し、これらは、VLP
表面に提示されていると考えられる。そこで、D6/HA 細胞をマウス
一次抗体 Anti-FLAG と Cy3 ラベルした二時抗体 Anti-IgG を用い
て提示を確認した(図1).
図1. 抗 anti-FLAG 一時抗体と Cy3 をラベルした抗 anti-IgG 抗体
を用い安定株 D6/HA の共焦点レーザー顕微鏡写真
D6/HA 株の培養液上澄みを取り、western blotting と SDS-PAGE を行い、結果を図2に示す。約
75 kDa のバンドはプロテアーゼによる切断されたサブユニットと考えられる。VLP の発現につい
ては、Gag のモノマー61 kDa 及びサブユニットのバンドが確認された(図1、2B)
。
A
B
1
2
3
4
61 kDa
RSV-gag-577
50 kDa
p10-CA-NC
20 kDa
P10-CA
MA
p10
CA
50 kDa
42 kDa
30 kDa
25 kDa
6 kDa
NC
RSV-gag-577
MA-p10-CA
p10-CA-NC
p10-CA
MA-p10
p10
図2. 精製担パック質の Western blotting。Lanes 1, 2, 3, 及び 4 は分子量マーカー (Magic marker
XP)、D6/HA 株より得られたタンパク質を anti-influenza A で確認したバンド、D6 株より得られ
たタンパク質を anti-p10 抗体で確認した gag タンパク質、及びカイコから得たタンパク質を
anti-p10 抗体で確認した gag タンパク質。
更に精製タンパク質を 12% (w/v) SDS-PAGE ゲルに流し、Comassie blue 染色を行ったところ、51
と 25 kDa の分子量が確認できた (図3)。
M
図3.精製タンパク質の SDS-PAGE。Lane M と HA はそれぞ
れ分子量マーカー(Magic marker XP)と D6/HA 株はから得ら
れた HA の Coomassie blue 染色写真。
HA
50 kDa
25 kDa
得られたHAの機能を確認するためにヘマグルチニンアッセイを行ったところ、粗精製HAとV
LPの結合によるヘマグルチニン凝集を確認した(図4)。ヘマグルチニン凝集は、HAがウサギ
赤血球細胞表面のシアル酸と結合するとき見られる現象である。
また、粗精製サンプルについてVLP、VLPにHAを提示したものを Transmission electron
microscopy (TEM)で観察を行った。VLPの形成は確認でき、また、VLP状のHAもVLP表面
に金ナノ粒子が確認できた(図5)ので提示されたと考えられる。しかし、VLP当たり結合した
HA分子の数は未確認であり、今後の課題である。
68
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
図4.粗精製サンプルのヘマグルチニンアッセイ。ウエル
1〜3までヘマグルチニン凝集が確認できた。
Two Fold Diluted
A
B
FLAG tagged
HA with 10nm
gold particles
Lipid bilayer
Lipid bilayer
Protein shell
Protein shell
100 nm
100 nm
図5.VLPs のTEM写真。D
6株から 100 ml の培養液をシ
ョ糖密度勾配(10-60%(v/v))に
かけ、2% phosphor tungstenic
acid で染色を行い、TEM
(JEOL-2100F at 200 kV)で観察
した(A)。 同様な方法でFL
AGをコンジュゲーションし
た金ナノ粒子と反応させた
VLPs/HA のTEM写真(B)。
(2)Papilloma virus のVLPに RSV-gag を融合したVLPの作製(加藤)
HPV L1 VLP のカイコからの精製
L1-Full と L1-short の脂肪体抽出液を 25-60%スクロース密度勾配遠心分離に供したところ、L1-Full
はスクロース密度が高いフラクションに、L1-short はスクロース密度が低いフラクションに確認でき
た。脂肪体破砕液から HiTrap heparin カラムクロマトグラフィーによるそれぞれの L1 タンパク質の
精製を試みた。1M NaCl のグラジエント溶出でタンパク質を溶出したところ、ほぼ同様のフラクショ
ンの位置にそれぞれの L1 タンパク質が溶出された。SDS-PAGE ゲル上で両方の L1 タンパク質がバン
ドとして確認できたが、まだそれ以外のタンパク質も含まれていた。透過型電子顕微鏡でそれぞれの
L1 タンパク質を確認したところ、L1-Full では直径 20 – 50 nm の粒子が確認できたが、L1-Short は直
径数 nm 程度の粒子しか確認できなかった(図 1 (A), (B))。この結果から、L1-Full は HPV VLP を形
成することができるが、L1-Short は VLP を形成できず、5 量体から成るカプソマーの状態で存在して
いることが示唆された。
(A) L1-Full
(B) L1-Short
100 nm
100 nm
図 1 精 製 HPV L1 の 電 子 顕 微 鏡 図 (A) L1-Full, (B)
L1-Short
69
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
HPV L1 VLP への EGFP の提示
それぞれの L1-EGFP 融合タンパク質(L1-EGFP55, L1-EGFP174, L1-EGFP348)をカイコ幼虫で発
現させて、L1-Full および L1-Short と同様の方法で抽出、精製を行った。それぞれの融合タンパク質
を発現させたカイコでは、はっきりとした EGFP 蛍光が確認できなかった。SDS-PAGE ゲル上で脂肪
体破砕液のタンパク質の EGFP 蛍光を確認したところ、L1-EGFP348 の破砕液のみではっきりとした
EGFP 蛍光が確認できたが、予想よりも低分子量の位置にのみにバンドが確認された。それぞれの
L1-EGFP 融合タンパク質をカイコ脂肪体から L1-Full および L1-Short と同様の方法で精製し、精製し
た融合タンパク質を電子顕微鏡で確認した。L1-EGFP55 でははっきりとした VLP が確認できたが、
L1-EGFP174, L1-EGFP348 ははっきりとした VLP が確認できず、VLP の形が崩れていた(図 2 (A),
(B), (C))
。1 次抗体としてマウス anti-EGFP 抗体と 2 次抗体として金コロイドが結合した anti-マウス
IgG 抗体を用いて免疫電子顕微鏡法で L1-EGFP55 VLP を解析したところ、VLP 上に金コロイドが確
認された(図 2 (D))
。このことから、L1-EGFP55 は EGFP を含んだ形で VLP を形成していると示唆
される。しかし、精製した L1-EGFP55 明確な EGFP 蛍光が無いことから、L1-EGFP55 内の EGFP
は正しい構造を有しておらず、蛍光が無い構造で L1 タンパク質と融合されていることが示唆された。
(A) L1-EGFP55
100 nm
(C) L1-EGFP 348
100 nm
(B) L1-EGFP174
100 nm
(D) L1-EGFP55 IEM
100 nm
図 2 精 製 HPV L1-EGFP 融 合 タ ン パ ク 質 の 電 子 顕 微 鏡 図 (A)
L1-EGFP55, (B) L1-EGFP174, (C) L1-EGFP348, (D) L1-EGFP55 の免
疫電子顕微鏡図
70
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
(4)Display of cancer targeting scFVs and Fab Antibodies on Virus like Nanoparticles for new drug delivery
system(Deo)
Bacmid design
The hCC49 cDNA was picked up from pDONG1 (A kind gif from Prof. Ueda) and TOPO
cloned into pENTR/D-TOPO (Invitrogen, Carlsbad, CA, USA) to give pENTR/VHCH1 and
pENTR/VLCL respectively. The sequences of all the PCR fragments inserted into pENTR/D-TOPO
were confirmed by dideoxynucleotide chain terminating sequence (Sanger et al., 1977) using
Thermo Sequenase Cycle Sequencing kit (USB, Cleveland, Ohio, USA). They were used to prepare
the BmNPV expression bacmid for expression of protein in silkworm larvae. VHCH1 and VLCL from
pENTR/VHCH1 and pENTR/VLCL respectively were transferred to pDEST8 by LR reaction
according to the protocol to make pDEST8/ VHCH1 and pDEST8/ VLCL respectively, which were
then transformed in to DH10 BmNPV wild type competent cells to make recombinant bacmids
(Deo et al., 2006). White colonies of recombinant bacmids carrying the VHCH1 and VLCL were
isolated and resulting bacmids were designated as BmNPV bacmid/ VHCH1 and BmNPV bacmid/
VLCL, respectively, and inoculated into 3 ml LB medium along with the antibiotics used for
screening. After culturing them in LB medium with the antibiotics for 36 hours the BmNPV
bacmids were isolated and confirmed by using standard M13 primers. Positive transformants were
re-inoculated in 100 ml LB medium and isolated in large amount for injecting them into fifth-instar
silkworm larvae.
Silkworms rearing and injection
Fifth instars larvae (Ehime Sansyu Co. Ltd., Ehime, Japan) were reared on an artificial diet
Silkmate S2 (Nihon Yokohama, Japan) for silkworms in a chamber (MLR-351H, Sanyo, Tokyo,
Japan) with 65% humidity at 27◦C. Each Silkworm was injected with 40 μl recombinant bacmid
DNA solutions containing 10 μg of BmNPV bacmid DNA, 10% (v/v) DMREI-C reagent
(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA) in PBS using 1 ml syringes. Post injection 7th day the silkworm’s
hemolymph was harvested in tubes containing 2 mM phenyl thiourea to inhibit the melanization
(Falcon, Lincoln Park, NJ, USA). These samples were then aliquoted into 1 ml eppendorf tubes and
stored at – 80ºC.
Protein expression and purification
To detect the expression of recombinant protein, larval hemolymph and fat body from
silkworm larvae, were collected respectively and subjected to 12% (w/v) SDS-poly-acrylamide gel
electrophoresis (SDS-PAGE) using the mini-protean II system (Bio-Rad) (Deo and Park, 2006).
After SDS-PAGE, proteins were blotted on to a PVDF membrane using the Mini Trans-Blot
Electrophoretic Transfer cell (Bio-Rad). The membranes were probes with mouse anti-DDDDK
primary antibody solution for 1 h and secondary mouse anti-rabbit IgG antibody labeled with
horse-radish peroxidase (HRP) for 1 h. Using ECL plus western blotting reagent pack (Amersham
Biosci.) specific bands were detected. Those bands were analyzed using a Fluor-S/MAX
multi-imager (Bio-Rad).
The protein concentrations were estimated using standard BCA protein estimation protocol
from kit (Pierce BCA Assay kit, Japan). Purification of VLPs displaying ScFvs and Fabs will be
done in two stages, first in similar fashion as for VLPs isolation (J. Biotechnology,155,185-192,
2011) and then further purification of the protein using FLAG affinity gel.
Immuno electron microscopy
Samples diluted 1:500 in distilled w buffer were spotted upon the carbon grid (Okenshoji,
71
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
Tokyo, Japan) and dried at room temperature. Negative staining was performed using 2% phospho
tungstenic acid (Silverman and Glick, 1969; Vogt and Simon, 1999). Samples were observed at
50,000× magnifications on TEM (JEM 2100F, JOEL, Tokyo, Japan) operating at 200 kV (Briggs et
al., 2006).
ELISA test for activity confirmation
The activity of the ScFvs and Fabs will be done by ELISA using MUC-1 and TAG-72 antigens
(Analytical Biochemistry; 386, 36-44, 2008.
Further confirmation of the activity of the protein will be performed using LS174T cell line as its
surface has TAG-72.
The bacmids carrying the Fab, ScFvs and VLPs were prepared and confirmed by DNA
sequencing. These bacmids were then injected into the silkworm for protein expression
and purification. The expression of ScFvs and Fabs was confirmed by western blotting
using Anti-FLAG antibodies (Figure 1 A and B).
B
1
1
2
(kDa)
(kDa)
40
30
C
Detection by anti-gag
antibody
80
60
50
40
30
0.5
2
ABS 450 nm/655 nm
A
Detection by anti-FLAG
antibody
Lane 1 : molecular
weight marker
Lane 2 : Fab-gag
hemolymph
20
20
0.4
mock
hemolymph
0.3
Fab
hemolymph
0.2
0.1
Purified Fab
0
BSA
TAG72
Figure 1. a. Detection of Fab using rabbit Anti-FLAG primary antibody. Lane 1= Molecular Weight marker, Lane 2= Purified Sample
containing Fab. B. Detection of gag from Fab-gag co-expressed hemolymph. Lane 1= Molecular Weight marker, Lane 2= Sample from Fabgag co-expressed hemolymph. c. ELISA of purified Fab using TAG-72.
Almost 30μg of Fabs were purified using FLAG sepaharose affinity gels from 1ml
Silkworm hemolymph. The purified Fab showed activity in its ability to recognize
TAG-72 antigen in an ELISA (Figure 1 C).
The VLPs have been purified from silkworm hemolymph using sucrose gradient
method (Journal of Biotechnology. Vol. 155(2011): 185-192).
The cost effectiveness of the new system will be a major advantage as silkworms are easy to rear
and handle. The ingenuity in this proposed research lies in the fact that any antibody against any
other marker can be used in future just by co-expression along with VLPs. Thus, this research will
for the first time unite two major targets for making a biotechnological product viable; efficient
expression of antibodies and effective delivery of drugs.
72
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
(5)キュービック相を用いた生体膜の膜融合の研究(山崎)
中性で L相である 20%ジオレオイルホスファチジルセリン (DOPS)と 80%モ
ノオレイン(MO)の混合膜の多重層リポソーム(MLV) の水溶液の pH を下げるとき
に誘起される L相から Q224 相への相転移 のキネティックスを SPring-8 の放射光
を用いて時分割 X 線小角散乱法 (TR-SAXS) により研究した。中性の緩衝液中で作
成した 20%DOPS/80%MO-MLV の懸濁液と低い pH の緩衝液を新しく開発した急速
二液混合装置を用いて急速に混合し、その後の膜構造変化を TR-SAXS により測定
した。ポリエチレングリコール(PEG)存在下で最終 pH が 2.6 から 2.9 の時は、混
合後 2-10 秒以内にヘキサゴナル II (HII) 相(単分子膜が丸まった管状構造が六方晶
的に積み上がった構造)のピークが現れ成長するが、30-90 s 後から Q224 相のピー
クが現れ始め、その後 HII 相から Q224 相への相転移が起こり、15-30 分以内で HII
相のピークが消失した。この結果から低い pH が誘起する Lα 相から Q224 相への相
転移では中間体として HII 相が出現することを初めて明らかにし、HII 相から Q224
相への転移の速度定数を求めることができた。これらの結果は、現時点では以下の
ように解釈できる。この領域の pH では、自由エネルギーから考えれば Q224 相がも
っとも安定であるが、L相から Q224 相への活性化エネルギーが L相から HII 相へ
のそれに比べて大きいために、最初に L相から HII 相への相転移が急速に起こり、
その後 HII 相から Q224 相への相転移がゆっくり起こったと考えられる(J. Chem. Phys., 134, 145102, 2011)。
さらに上記の研究では明らかにできなかった Lα 相から Q 相への相転移の初期過程を解明すること
を目的にして、SPring-8 の BL40B2 より X 線強度が強い BL45XU にてストップトフローの装置を用い
て、 DOPS/MO-MLV が低い pH になったときの Lα 相から Q 相への相転移のキネティックスパスウエ
イを研究した。200 ms のX線の露光時間で脂質膜の構造を同定することが可能になり、
23%DOPS/77%MO-MLV が低い pH になったときの Lα 相から Q 相への相転移の初期過程で、Lα 相から
HII 相が成長していく過程を検出することに初めて成功した。
(6)膜タンパク質の機能解析(徳元)
新規 GPCR ステロイド膜受容体の発現、精製法の確立)
膨大な数に及ぶ化学物質群との反応性の評価のためにはより簡便なアッセイ系が必要になるた
め、膜タンパク質の発現に適した酵母株(Pichia)を用いた新たな大量発現系の構築を進めた。
これまでに mPRα分子発現 Pichia 酵母株を樹立し、至適培養条件を見出した。本研究ではさらに
精製に向けた可溶化法の検討として界面活性剤による可溶化について検討した。
膜タンパク質の結晶化に実績のある界面活性剤 7 種類について可溶化を試みた結果、n-Dodecyl—
β-D-maltoside (DDM)により共雑タンパク質の混入の少ない良好な結果が得られた。そこで可溶化
品についてニッケルアフィ二ティークロマトグラフィーによる精製を行ったところ、mPRαタンパ
ク質が分画された。精製度がまだ不十分ではあるが分画できる条件が見出されたことは大きな前進
であった。2 段階目以降の精製ステップを早期に確立し、アッセイ系の構築に進めたい。
本研究により mPR 分子の発現に成功すれば、本特別経費の研究課題である機能性ナノ粒子へ応用
する受容体分子の候補となり得る。これにより mPR 分子をターゲットとした創薬に貢献が期待され
る他、化学物質のノンゲノミック反応に対する安全性評価が可能となることが期待される。
活性を有するリコンビナント mPR の大量発現系の構築
膨大な数に及ぶ化学物質群との反応性の評価のためにはより簡便なアッセイ系が必要になるため、膜タン
パク質の発現に適した酵母株(Pichia)を用いた新たな大量発現系の構築を進めた。これまでの研究で
mPRα分子発現 Pichia 酵母株を樹立し、至適培養条件を見出した。本年度はさらに精製に向けた可溶化
法の検討として界面活性剤による可溶化について検討した。これまで一般的な界面活性剤について検討
したが、本年度は膜タンパク質の結晶化に実績のある界面活性剤 7 種類について可溶化を試みた結果、
73
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
n-Dodecyl—β-D-maltoside (DDM)により共雑タンパク質の混入の少ない良好な結果が得られた。そこで可
溶化品についてニッケルアフィ二ティークロマトグラフィーによる精製を行ったところ、mPRαタンパク質が
分画された。精製度がまだ不十分ではあるが分画できる条件が見出されたことは大きな前進であった。2 段
階目以降の精製ステップを早期に確立し、アッセイ系の構築に進めたい。
Ni-NTA⑥イミダゾール濃度
M
M
17 18
74
1718
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
以上、翻訳後修飾系を有することが知
られている Pichia 株によりステロイド
膜受容体が発現可能であることが示され
た。今後の精製法の確立が鍵となるがス
テロイド膜受容体反応性物質のハイスル
ープットスクリーニング系の実現へ向け
て大きな前進が出来た。
(7)ヘマグルチニン提示 VLP の評価(尾形)
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発において、VLP 表面上に提示した分子の確認および評価
は研究の進行において非常に重要な要素を担っている。本研究においては、ヘマグルチニン提示
VLP 評価の前段階として、ヒト型インフルエンザウイルスと同様の糖鎖認識特性を示すセイヨウ
ニワトコレクチン(SNA)および組換えヒト型インフルエンザウイルスヘマグルチニン
{A/California/04/2009(H1N1)}を用いて ELISA 法を試みた。その結果、両方とも糖鎖構造特的
(Neu5Acα2,6Gal)な相互作用を確認した。コントロールとして用いたアシアロ構造や α2,3 シアリ
ルガラクトース構造には結合を示さなかった。これにより、本 ELISA 法がインフルエンザウイル
スヘマグルチニンの糖鎖認識特性を指標とする評価系として利用可能であることを実証した。
(8)透過型電子顕微鏡による VLP 粒子の微構造評価(坂元)
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた VLP 粒子の微構造観察により、合
成された VLP 粒子の形状、サイズ等に関する情報を得ることが出来た。
VLP 粒子の染色には、リンタングステン酸を用いた。右図に示す通り、
観察された VLP 粒子表面を取り囲む明瞭な線が観察されることから、
VLP 粒子の表面が均一にコーティングされていることが明らかとなっ
た。
4.今後の展開
(1)ワクチン用ウイルス様粒子(VLP)の開発(朴)
VLPs は、脂質膜に囲まれたもので、核酸を含んでいない。本研究は昆虫細胞を用い、VLPの
発現を行い、更にVLP表面にHAの提示を試みた。しかし、HAの機能性確認を行う必要はあ
るが、電子顕微鏡からHAの提示が確認された。今後高効率精製を行い、糖鎖との結合実験を必
要とする。糖鎖との結合性が確認できれば、今後インフルエンザワクチンとして開発が可能とな
る。
(2)Papilloma virus のVLPに RSV-gag を融合したVLPの作製(加藤)
本研究で HPV 6b L1 タンパク質の 55-56 番目のアミノ酸残基の間に VLP の構造を破壊することなく
EGFP を挿入することができた。しかし、挿入した EGFP は正しい構造をしていなかった。現在まで
に数十アミノ酸程度のペプチドを L1 タンパク質に挿入して VLP 上へペプチドを提示した報告はある
が、数百アミノ酸からなるタンパク質を提示させた例はない。今後は L1 VLP への効率的でかつ正しい
構造のタンパク質提示法を確立するとともに、機能性ペプチドの L1 VLP への提示を行う。
75
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
(3)インフルエンザ検出用ナノビーズの作製(村川)
ナノビーズにさまざまな分子種を固定化することで機能性ビーズを作製する。機能性ナノビーズと
してヘマグルチニン特異的シアル酸糖鎖を付加させたビーズを作製できれば、世界的に猛威を振るっ
ているインフルエンザウイルスの汎用性のあるワクチンが創製されることになり、死亡者や重篤患者
の削減につながると考えられる。またナノビーズは大量生産が可能であり、機能性ナノビーズは治療
の際のワクチンとしての利用だけでなく検出・解析の際にも有用なツールとなることが期待される。
将来的には多機能を有したナノビーズを創製することを目標とし、オーダーメードな治療に役立つナ
ノビーズとなる可能性を秘めている。
(4)Display of cancer targeting scFVs and Fab Antibodies on Virus like Nanoparticles for new
drug delivery system(Deo)
The next target is to display the Fabs on the VLPs. In order to anchor the Fabs on VLPs a
transmembrane region is necessary. Glycoprotein 64 (gp64) a structural protein of Baculovirus is
well studied protein and has been previously used as a fusion protein for displaying foreign
proteins. Once this bacmid is prepared it will be injected into the silkworms and VLPs displaying
Fabs and ScFvs will be purified.
(5)キュービック相を用いた生体膜の膜融合の研究(山崎)
本年度の研究結果に基づいて、Lα 相から Q 相への相転移の初期過程を解明することを目的にして、
DOPS/MO-MLV が低い pH になったときの Lα 相から Q 相への相転移のキネティックスパスウエイを詳
細に研究する。特に、Lα 相から Q 相への相転移の初期過程に対する水溶液の pH や膜の表面電荷密度
の効果を研究する。また、DOPS/MO 膜の 1 枚膜リポソームである LUV(直径 100 nm)から Q 相への
構造転移のキネティックスパスウエイを同様の方法で調べる。
(6) 膜タンパク質の機能解析(徳元)
今後は発現に成功したリコンビナントステロイド膜受容体について質量分析計を用いたペプチドマ
スフィンガープリントによる同定を行い、ウエスタンブロット陽性バンドがステロイド膜受容体である
ことの確証を得る。その後、その精製法を確立する。リコンビナントステロイド膜受容体にはヒスチジ
ンタグが融合してあり、これを利用したアフィニティークロマトグラフィーによる精製をこれまでの予
備実験で試みたがこのクロマトグラフィーのみでは精製が不十分であった。今後、他のカラムクロマト
グラフィーを組み合わせた精製法を確立し、センサーとして利用可能な標品を単離してセンサーの開発
を開始する。
(7)ヘマグルチニン提示 VLP の評価(尾形)
引き続き今後も、ELISA 法を用いたヘマグルチニン提示 VLP の評価系を提供することで本プロジ
ェクトの円滑な進行を提供する。
(8)透過型電子顕微鏡による VLP 粒子の微構造評価(坂元)
これまでの研究で、VLP 粒子表面の層状構造を確認することが出来た。染色条件により観察に時間
を要する場合が多く、今後は染色条件の最適化による確実な観察を行えるようにする。また他の系の
VLP 粒子等に関しても同様の手法により微構造評価を行っていく。
76
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
5.研究業績
朴 龍洙
(1) 学術論文・著書等
1) Tatsuya Kato, Suganthi Lavender Manohar, Shin Kanamasa, Makoto Ogata, and Enoch Y Park,
Improvement of the transcriptional strength of baculovirus very late polyhedrin promoter by repeating its
untranslated leader sequences and co-expression with the primary transactivator, J. Biosci. Bopeng., in press
(2012).
2) Ogata M, Yano M, Umemura S, Murata T, Park EY, Kobayashi Y, Asai T, Oku N, Nakamura N,
Matsuo I, Usui T, Design and synthesis of high-avidity tetravalent glycoclusters as probes for Sambucus
sieboldiana agglutinin and characterization of their binding properties. Bioconjugate Chem., 23, 97-105
(2012).
3) Itaru Minagawa, Masafumi Fukuda, Hisako Ishige, Hiroshi Kohriki, Masatoshi Shibata, Enoch Y. Park,
Tatsuo Kawarasaki, and Tetsuya Kohsaka, Relaxin-like factor (RLF)/insulin-like peptide 3 (INSL3) is
secreted from testicular Leydig cells as a monomeric protein comprising three domains B-C-A with full
biological activity in boars, Biochem. J., 441 (1): 265-273 (2012).
4) Vipin Kumar Deo, Yoshitaka Tsuji, Tomomi Yasuda, Tatsuya Kato, Naonori Sakamoto, Hisao Suzuki, and
Enoch Y. Park, Expression of RSV-gag virus like particle in insect cell lines and silkworm larvae, J. Viol.
Methods, 177, 147-152 (2011).
5) Yoshitaka Tsuji, Vipin Kumar Deo, Tatsuya Kato, and Enoch Y Park, Production of Rous sarcoma
virus-like particles displaying human transmembrane protein in silkworm larvae and its application to
ligand-receptor binding assay, J. Biotechnol., 155, 185-192 (2011).
6) Tatsuya Kato, Fumiaki Suzuki, and Enoch Y. Park, Purification of functional baculovirus particles from
silkworm larval hemolymph and their use as nanoparticles for the detection of human prorenin receptor (PRR)
binding, BMC Biotechnology, vol. 11: 60 (2011).
7) Akifumi Mizutani, Hiroyuki Tsunashima, Ken-ichi Nishijima, Takako Sasamoto, Yuki Yamada, Yasuhiro
Kojima, Makoto Motono, Jun Kojima, Yujin Inayoshi, Katsuhide Miyake, Enoch Y. Park, and Shinji Iijima,
Genetic modification of a chicken expression system for the galactosylation of therapeutic proteins produced in
egg white, Transgenic Res., 13 (2011).
8) Wan-fu Yue, Fang Zhou, Jia-biao Hu, Enoch Y. Park, Joe Hull, Yun-gen Miao, Human insulin gene
expressing with Bombyx mori multiple nucleopolyhedrovirus (BmNPV) expression system. Would J. Microbiol.
Biotechnol., 27:393–399 (2011).
(3) 特許等
1) 碓氷泰市, 朴龍洙, 尾形慎, 宮崎忠昭:ウイルス阻害剤, PCT/JP2011/054384
(4) 国際会議発表
1) Vipin Kumar Deo, Takuya Iida, Tatsuya Kato and Enoch Y. Park, Expression and purification of human
wnt3a (h-wnt3a) in silkworms, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green
Science and Technology", 3/14-15, 2012.
2) Jinhua Dong, Takahiro Otsuki, Tatsuya Kato, and Enoch Y. Park, Murine antibodies against Neospora
caninum protein, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and
Technology", 3/14-15, 2012.
3) Iida Takuya, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Expression and purification of human-Wnt3a by using
silkworm larvae, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and
Technology", 3/14-15, 2012.
4) Tatsuya Kato, Fumiaki Suzuki, Enoch Y. Park, Display of the human (pro)renin receptor on Bombyx mori
nucelopolyhedrovirus (BmNPV) particles for application of ligand-binding assay, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka
Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
77
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
5) Takeshi Yamamoto, Vipin Kumar Deo, Tatsuya Kato, Tetsuro Suzuki, Enoch Y. Park, Expression and
purification of intracellular antibody (intrabody) in silkworm to develop inhibitors used for treating hepatitis C
virus (HCV) infection, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and
Technology", 3/14-15, 2012.
6) Yuri Kato, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression of hemagglutinin of avian influenza
H5N1(A/Vietnam/1194/2004), 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green
Science and Technology", 3/14-15, 2012.
7) Jiangxue Li, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression and Purification of Hemagglutinin Using
Silkworm Expression System, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green
Science and Technology", 3/14-15, 2012.
8) Takahiro Oizumi, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression of Shigatoxin B subunit, 2nd Zhejiang
Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
9) Megumi Yui, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Preparation of virus-like particles tracking
cancer cells using bacmid expression system in silkworm, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student
Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
10) Hikaru Kato, Tatsuya Kato, Tetsuya Kohsaka, Enoch Y Park, Expression of relaxin-like factor using
silkworm expression system, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
11) Iida Takuya, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Large scale expression of h-Wnt3a by using silkworms
and insect cells and purification, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
12) Megumi Yui, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Preparation of virus-like particles (VLPs)
tracking cancer cells using bacmid expression system in silkworm, Shizuoka University International
Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
13) Jinhua Dong, Takahiro Ootsuki, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Development of a novel diagnostic method
for cattle neosporosis, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
14) Muthukutty Palaniyandi, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Expression and Purification of Human
Pappilomavirus 6b L1 virus-like particles (VLP) and display of chimeric EGFP whole protein incorporated in
VLP epitopes, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries
within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
15) Takeshi Yamamoto, Vipin Kumar Deo, Tetsuro Suzuki and Enoch Y. Park, Expression of hepatitis C
virus core protein and intrabody, an inhibitor of core protein in the silkworm, Shizuoka University International
Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
16) Takahiro Otsuki, Jinhua Dong, Tatsuya Kato, and Enoch Y Park, Display of Neospora caninum antigens
using BmNPV bacmid in silkworm larvae for development of neosporosis vaccines, Shizuoka University
International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and Technology–,
11/28-29, 2011.
17) Deo Vipin Kumar, Tomomi Yasuda, Tatsuya Kato and Enoch Y Park, Display of Hemagglutinin from
H1N1 on virus like particles for vaccinations, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives
for Crossing Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
18) Tatsuya Kato, James R. Thompson, Enoch Y. Park, Development of vectors for high-throughput protein
expression in silkworms, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing
Boundaries within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
19) Tomomi Yasuda, Vipin Kumar Deo,Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Expression and purification of
hemagglutinin displayed virus-like particles using bacmid expression system in insect cells, Shizuoka
University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries within Science and
78
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
Technology–, 11/28-29, 2011.
20) Kanematsu Ayumi, Akiko Murakawa. Taiichi Usui, Enoch Y. Park, Evaluation of the Synthetic
Glycolipid Cluster, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p27, 2011.
21) Vipin Kumar Deo, Tomomi Yasuda, Tsuji Yoshitaka, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Virus like particles
(VLPs) a new display technology for vaccination and drug delivery, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and
Graduate Students Forum proceeding p19, 2011.
22) Wonseok Oh, Akiko Murakawa, Jaebeom Lee, Enoch Y. Park, Sugar immobilizated metal nanoparticles,
2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p41, 2011.
23) Nakagawa Haruyuki, Won Seok Oh, Taichi Usui, Enoch Y. Park, Evaluation of sLeX immobilized
nanoparticles binding behavior against E-selectin, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students
Forum proceeding p33, 2011.
24) Yui Megumi, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Construction of virus-like particles (VLPs)
tracking cancer cell, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p34, 2011.
25) Iida Takuya, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Expression of H-Wnt3a by using silkworms, and
purification, , 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p35, 2011.
26) Takahiro Oizumi, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Development of inhibitor for shigatoxin by
multivalant glycan, , 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p38, 2011.
27) Ryoken Nakazawa, Daichi Mori, Taiichi Usui, Enoch Y. Park, Expression of rat alpha2,3-sialyltransferase
ST3 in silkworm, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p39, 2011.
28) In-Wook Hwang, Vipin Kumar Deo, Enoch Y. Park, Expression of KATP channel proteins using
silkworm, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students Forum proceeding p40, 2011.
(5) 受賞・表彰
最優秀ポスター発表賞
1) Megumi Yui, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Preparation of virus-like particles tracking
cancer cells using bacmid expression system in silkworm, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student
Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
2) Takahiro Oizumi, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression of Shigatoxin B subunit, 2nd Zhejiang
Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and Technology", 3/14-15, 2012.
3) Muthukutty Palaniyandi, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, Expression and Purification of Human
Pappilomavirus 6b L1 virus-like particles (VLP) and display of chimeric EGFP whole protein incorporated in
VLP epitopes, Shizuoka University International Symposium 2011–Initiatives for Crossing Boundaries
within Science and Technology–, 11/28-29, 2011.
4) Nakagawa Haruyuki, Won Seok Oh, Taichi Usui, Enoch Y. Park, Evaluation of sLeX immobilized
nanoparticles binding behavior against E-selectin, 2nd Korea-Japan Joint Symposium and Graduate Students
Forum proceeding p33, 2011.
加藤竜也
(1) 学術論文・著書等
1) Deo VK, Tsuji Y, Yasuda T, Kato T, Sakamoto N, Suzuki H, Park EY. “Expression of an RSV-gag virus-like
particle in insect cell lines and silkworm larvae.” J. Virol. Methods. 177(2) 147-152 (2011).
2) Tsuji Y, Deo VK, Kato T, Park EY. “Production of Rous sarcoma virus-like particles displaying human
transmembrane protein in silkworm larvae and its application to ligand-receptor binding assay.” J Biotechnol.
155(2) 185-192 (2011)
3) Kato T, Suzuki F, Park EY. “Purification of functional baculovirus particles from silkworm larval
hemolymph and their use as nanoparticles for the detection of human prorenin receptor (hPRR) binding” BMC
Biotechnol 11(1) 60 (2011)
79
Ⅲ
Ⅲ 機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
Vipin Kumar Deo
(1) 学術論文・著書等
1) Vipin Kumar Deo, Yoshitaka Tsuji, Tatsuya Kato, and Enoch Y Park (2011) Production of
Rous sarcoma virus-like particles displaying human transmembrane protein in silkworm and
larvae and its application to ligand-receptor binding assay. J. Biotechnology,155,185-192
2) Vipin Kumar Deo, Yoshitaka Tsuji, Tomomi Yasuda, Tatsuya Kato, Naonori Sakamoto, Hisao
Suzuki and Enoch Y Park (2011).Expression of RSV-gag virus like particle in insect cell lines and
silkworm larvae. Journal of Virological Methods,177, 147-152
山崎昌一
(1) 学術論文・著書等
1) M. M. Alam, T. Oka, N. Ohta, and M. Yamazaki, “Kinetics of Low pH-Induced Lamellar to Bicontinuous
Cubic Phase Transition in Dioleoylphosphatidylserine/Monoolein”, J. Chem. Phys. 134, 145102-1~145102-10,
2011
2) Y. Tamba, H. Terashima, and M. Yamazaki, “A membrane filtering method for the purification of giant
unilamellar vesicles”, Chem. Phys. Lipids, 164, 351-358, 2011.
(2) 解説・特集等
1) 山崎昌一、
「膜で測る:生体膜の機能やダイナミクスを解明する単一 GUV 法」、実験医学、Vol. 29、
No. 7、48-54, 2011
(4) 国際会議発表
1) International Symposium on Synthesizing Life & Biological Systems, Invited Talk
Senri Life Science Center (Toyonaka), 25 Oct. 2011
"The Single GUV Method Reveals the Peptide/Protein-Induced Pore Formation in Lipid Membranes"
2) International ERATO Symposium on Lipid Structures in and around Proteins (IESLSP), Invited Talk
Hotel Hankyu Expo Park (Suita), 13 Nov. 2011
"The Single GUV Method for Probing Dynamics and Functions of Biomembranes"
3) 1st Annual Symposium of Antimicrobial Research (SAR-2011) , Invited Talk
Beijing International Convention Center (Beijing, China), 1 Dec. 2011
"The Single GUV Method for Probing the Antimicrobial Peptide-Induced Pore Formation in Lipid Membranes"
4) 17th International Biophysics Congress (IUPAB)において 4 件ポスター発表
China National Convention Center (CNCC), Beijing, China, Oct. 30− Nov. 3, 2011
徳元俊伸
(1) 学術論文・著書等
1) T. Tokumoto, T. Yamaguchi, S. Ii, M. Tokumoto (2011) In vivo induction of oocyte maturation and
ovulation in zebrafish. PLoS ONE 6 (9).
2) T. Ito, N. Yoshizaki, T. Tokumoto, H. Ono, T. Yoshimura, A. Tsukada, N. Kansaku, T. Sasanami (2011)
Progesterone is a sperm releasing factor from the sperm storage tubules in birds. Endocrinology 152,
3952-3962.
3) T. Tokumoto, M. Tokumoto, T. Oshima, K. Shimizuguchi, T. Fukuda, E. Sugita, M. Suzuki, Y. Sakae,
Y. Akiyama, R. Nakayama, S. R. Roy, Md. S. Rahman, Y. Pang, J. Dong, P. Thomas (2012)
Characterization of multiple membrane progestin receptor (mPR) subtypes from the goldfish ovary and
their roles in the induction of oocyte maturation. General and Comparative Endocrinology in press.
4) T. Tokumoto (2012) Identification of membrane progestin receptors (mPR) in goldfish oocytes as a
key mediator of steroid non-genomic action. Steroids in press.
80
機能性ナノ粒子を用いたワクチン開発の基盤研究
(4) 国際会議発表
1) Toshinobu Tokumoto 「Identification of membrane progestin receptors (mPR) in goldfish oocytes as a
key mediator of steroid non-genomic action」
Rapid Responses to Steroid Hormones 7th International Meeting, 2011, 14-17 Sep, Crete GREECE
(6) 新聞報道等
「魚の排卵過程明らかに ヒトの不妊研究期待」静岡新聞 23年9月22日
尾形慎
(1) 学術論文・著書等
1) Endo, T., Matsuda, S., Obara, T., Chuma, Y., Ogata, M., Yanagida, Y., Hatsuzawa, T., Usui, T.
Label-free detection of oligosaccharide-lectin interaction using plasmonic optical device for glycomics
application. Sensor. Mater., 2011, 23, 135-146.
2) Ogata, M., Misawa, Y., Usui, T. Molecular design of multivalent glycosides bearing GlcNAc,
(GlcNAc)2 and LacNAc: Analysis of cross-linking activities with WGA and ECA lectins. Biosensors –
Emerging Materials and Applications, 2011, ISBN 978-953-307-328-6, 17-34.
3) Ogata, M., Yano, M., Umemura, S., Murata, T., Park, E. Y., Kobayashi, Y., Asai, T., Oku, N.,
Nakamura, N., Matsuo, I., Usui, T. Design and synthesis of high-avidity tetravalent glycoclusters as probes
for Sambucus sieboldiana agglutinin and characterization of their binding properties. Bioconjugate
Chem., 2012, 23, 97-105.
4) Hattori, T., Sakabe, Y., Ogata, M., Michishita, K., Dohra, H., Kawagishi, H., Totani, K., Nikaido, M.,
Nakamura, T., Koshino, H., Usui, T. Enzymatic synthesis of α-chitin-like substance via lysozyme-mediated
transglycosylation. Carbohydr. Res., 2012, 347, 16-22.
5) Kato, T., Manohar, S. L., Kanamasa, S., Ogata, M., Park, E. Y. Improvement of the transcriptional
strength of baculovirus very late polyhedrin promoter by repeating its untranslated leader sequences and
coexpression with the primary transactivator. J. Biosci. Bioeng., 2012 in press.
(3) 特許等
碓氷泰市, 朴龍洙, 尾形慎, 宮崎忠昭:ウイルス阻害剤, PCT/JP2011/054384
坂本尚紀
(1) 学術論文・著書等
1) “Expression of an RSV-gag virus-like particle in insect cell lines
and silkworm larvae”, Vipin Kumar Deo, Yoshitaka Tsujib, Tomomi Yasuda, Tatsuya Kato, Naonori Sakamoto,
Hisao Suzuki, Enoch Y. Park, Journal of Virological Methods 177 (2011) 147-152
81
Ⅲ
Ⅳ 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
Ⅳ.
代表者
分担者
分子集合ナノマテリアルの創製と機能
小林 健二
創造科学技術大学院・教授
山中 正道
小堀 康博
三井 正明
理学部化学科・准教授
理学部化学科・准教授
理学部化学科・准教授
1. 研究目的
超分子科学とは、ユニット分子に分子設計プログラミングを施し、分子間相互作用によりユニット
分子を自在に自己組織化させた分子集合体の構築と機能化を目指す学問分野である。本プロジェクト
では、分子自己集合とナノ計測をキーワードに、超分子科学に立脚した我々の研究を基盤にして、
「分
子集合ナノマテリアルの創製と機能化」を行い、よりよく暮らせる社会を支えるボトムアップ型ナノ
テクノロジーの基盤技術を開拓することを目的とする。具体的には、以下の研究に焦点を当てる。
(1)分子自己集合に基づく超分子カプセルの構築と機能創発(小林)
(2)機能性超分子ヒドロゲルの開発(山中)
(3)時間分解電子スピン共鳴法によるタンパク質・光活性有機固体膜の電子伝達機能(小堀)
(4)蛍光色素包接超分子錯体 1 分子の光物性と反応ダイナミクスの解明(三井)
2. 研究計画・方法
本プロジェクトチームは、有機化学・超分子化学を基盤とする機能性分子集合ナノマテリアル創製
グループ(小林・山中)と、物理化学・分光学を基盤とするナノ計測・光物性・電子物性評価グループ(小
堀・三井)から構成される。各人が以下に示す個々の研究課題を遂行しつつ互いに連携し、
「分子集合
ナノマテリアルの創製と機能化」に関する基礎的知見を蓄積して、超分子科学に立脚したボトムアッ
プ型ナノテクノロジーの基盤技術を開拓する。
82
分子集合ナノマテリアルの創製と機能
(1)分子自己集合に基づく超分子カプセルの構築と機能創発(小林)
申請者等が見出した分子集合キャビタンドカプセルを基盤に、3つの研究を展開する。
(1-1)ナノ保護容器:アントラセンならびにその誘導体は、優れた蛍光発光材料であるが、長時間光
に曝されると光二量化や光酸化して発光特性を失う。小林はこの問題の解決法として、昨年度、オリ
ジナルの動的ホウ酸エステル結合カプセルが、アントラセン誘導体を非常に高い会合定数で包接し、
本カプセルがアントラセン誘導体のナノ保護容器として働くことを見出した。本年度は、パイ共役拡
張によってさらに高い発光特性を示すがより不安定になるビス(アリールエチニル)アントラセン誘導
体ならびにそのオリゴマーを本カプセルに包接させて、光安定性を評価する。なお、光物性・電子物
性の評価は、三井と連携する。
(1-2)光応答性分子集合カプセル:カリックス[4]レゾルシンアレーンは、水素結合に基づくサイコ
ロ状の分子集合6量体カプセルを形成し、種々のゲストを包接することが知られている。昨年度、小
林と山中は、カリックス[4]レゾルシンアレーンの側鎖に光応答部位としてアゾベンゼン-デンドロン
を導入した光応答性ホスト分子を設計し、アゾベンゼン-デンドロン側鎖の合成まで達成した。本年度
は、この光応答性ホスト分子の合成を達成し、分子集合6量体カプセルの構築と光応答性、それに連
動するゲスト包接-解離を精査する。NMR による構造評価は山中と連携する。
(1-3)超分子カプセルポリマー:外部因子によって(ゲスト分子の性質に応じて)ポリマーの重合度や
熱力学的安定性を制御できる水素結合性超分子カプセルポリマーの開発を目指す。
(2)機能性超分子ヒドロゲルの開発(山中)
低分子化合物の水中における自己集合で形成される超分子ヒドロゲルは柔軟性に富む材料であり、
その柔軟性を活用することで革新的な新材料の開発が可能となる。超分子ヒドロゲルの特性が存分に
発揮される研究領域として、生命科学の研究領域に着目した。生命科学の研究において、水と高分子
材料から成るヒドロゲルは、広く用いられる材料である。これら高分子ヒドロゲルを超分子ヒドロゲ
ル、特に刺激に応答しゲル-ゾル相転移する機能性超分子ヒドロゲルに代替することにより、生命科
学の研究手法に革新をもたらすことができる。独自の分子設計に基づき開発した低分子オルガノゲル
化剤を基本骨格とし、その外郭に親水性官能基の導入により水をゲル化する低分子ヒドロゲル化剤が
得られることを見出している。本研究では、目的とする水系環境で機能する低分子ヒドロゲル化剤を
有機合成化学の手法により合成し、分子の自己集合により得られる超分子ヒドロゲルを用いたタンパ
ク質試料の電気泳動を開発する。超分子ヒドロゲルを用いたタンパク質の電気泳動では、既存の高分
子ゲルでは達成し得ないタンパク質試料の効率的な回収と特異的分離パターンの解析を重点に研究
を実施する。
(3)時間分解電子スピン共鳴法によるタンパク質・光活性有機固体膜の電子伝達機能(小堀)
光合成タンパク質などの電子伝達系における初期過程では、光の吸収で高い軌道エネルギーに遷移
した生体分子がその近傍の分子に電子か正孔を与える(光電荷分離)。この時、各軌道上で電子対の
電子が不足した不安定な分子対となり磁性を持つようになる。この電荷分離状態の磁気モーメントが
外部磁場との相互作用や、中間体どうしの磁気作用エネルギーなどを生じることにより、入射する電
磁波との共鳴現象が観測され、中間体分子の電子軌道に関する様々な知見を得ることができる。この
ような磁気共鳴分光とレーザー光を基盤とする時間分解磁気共鳴測定を行い、様々な短寿命中間体を
直接観測する。小堀は近年、量子論を駆使し、励起状態や電荷分離状態のスピン量子効果を解析する
手法を独自に確立させており、電荷分離状態の立体構造解析と電子伝達機能を特徴づけることが可能
となった。この解析法を用いて分担者である小堀は、時間分解電子スピン共鳴法による電子物性およ
び電子伝達機能の評価を以下のように計画し研究を行った。
(a)薬物を分子認識した超分子型タンパク質であるヒト血清アルブミン-アントラキノンスルフォン
酸イオン複合体のナノ秒レーザー光照射によって薬物-アミノ酸残基間における電荷分離状態を生成
させ、時間分解電子スピン共鳴法でこの光電荷分離状態を観測する。得られた信号を小堀が最近確立
させたスピン分極移動モデルによって解析し、短寿命光電荷分離状態における薬物およびアミノ酸残
基における立体配置と電子的相互作用を決定する。
(b)ホウレン草から抽出した光合成光化学系 II 反応中心において、ナノ秒レーザー光照射により生
83
Ⅳ
Ⅳ 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
成する過渡種の時間分解電子スピン共鳴測定を行う。キノン分子を除去し後続の電荷分離過程を抑制
した反応中心では、初期光電荷分離状態の三重項電荷再結合過程で生成する励起三重項状態が観測さ
れることが知られている。この励起三重項種信号の立ち上がりを示す経時変化について、電荷分離ス
ピン状態の量子力学的な運動と電荷再結合過程を考慮したモデルによる解析によって電荷再結合ダ
イナミクスを特徴づける。
(c)有機薄膜太陽電池の基板の光活性層を形成する伝導性ポリマー(ポリチオフェン)およびフラ
ーレン誘導体を用いたヘテロジャンクション型ブレンド膜試料を作成し、光照射による過渡種の時間
分解電子スピン共鳴測定を行い、ナノ秒からマイクロ秒領域において、光誘起電子移動で生成した電
荷分離状態を観測する。側鎖ヘキシル基の置換位置によって電気伝導性が大きく異なる regioregular
型ポリチオフェンおよび regiorandom 型ポリチオフェンそれぞれとフラーレン誘導体とのブレンド膜
において、スピン相関ラジカル対機構による解析を行い、立体配置および、電子的相互作用を決定す
る。
(4)蛍光色素包接超分子錯体 1 分子の光物性と反応ダイナミクスの解明(三井)
シクロデキストリン(CD)などの分子内に空洞を持つ分子は,その中に他の分子を取り込む包接現
象を示す。包接によりゲスト分子の安定性が増大するため,例えば蛍光性色素が包接された超分子錯
体は,バイオイメージングにおける蛍光プローブ材料や色素増感太陽電池における増感材,分子発光
デバイスなどへの応用が期待される。本研究ではそのような分子集合ナノマテリアルとして有望な蛍
光色素包接超分子錯体1分子の動的挙動の解明に取り組む。具体的には,優れた発光特性や光安定性
を有するペリレンジイミド誘導体などを蛍光色素として用い,それらが CD によって包接された錯体
を作製する。昨年度の本研究プロジェクト期間に開発したマルチタスク単一分子蛍光分光装置を用い
て,低分子・高分子固体薄膜中や導電性ガラス表面上における包接錯体1分子の蛍光寿命,蛍光スペ
クトル,蛍光強度の時間変化の並列計測ならびに光子相関分光,光子コインシデンス測定を行う。こ
れにより包接錯体1分子の光物性とサブナノ秒から数十秒に至る広範な時間スケールで起こる分子
ダイナミクスを明らかにし,分子集合ナノマテリアルとしての可能性について分子レベルでの検討を
行う。
3. 主な研究成果
(1) 分子自己集合に基づく超分子カプセルの構築と機能創発(小林)
(1-1)ナノ保護容器:ビス(アリールエチニル)アントラセン誘導体 4 は、パイ共役拡張によって高い
発光特性を示す F = 0.95)が光照射を受け続けると光酸化して発光特性を失う。我々は、動的ホウ酸
エステル結合カプセル 3 が、非常に大きな会合定数で 4 を包接することを見出した(図 1)。そして、
このゲスト包接カプセル 4@3 は、4 と比較し、1)光に対する安定性が大幅に向上する、2)溶液中
での蛍光量子収率は殆ど変化しない、3)固体中での濃度消光による蛍光量子収率の低下を抑制する
ことを見出した。また、カプセル 3 は、ゲスト 4 をさらにパイ共役拡張した 5, 6 に対しても同様の効
果を示し、ビス(アリールエチニル)アントラセン誘導体のナノ保護容器として機能することがわかっ
た。
(1-2)光応答性分子集合カプセル:カリックス[4]レゾルシンアレーン1は、水飽和のCDCl3中で水8分
子を介して水素結合に基づく分子集合6量体カプセル(キュービックカプセル)を形成することが知ら
れている。今回、アゾデンドロン側鎖Rを有するカリックス[4]レゾルシンアレーンtrans-2, 3, 4を合成
し、ゲスト包接分子集合キュービックカプセルGuest@[(trans-Host)6•(H2O)8]の形成を確認し、光応答に
基づくカプセル解離-再形成とゲストの放出-再包接を検討したところ、カプセルの光異性化能とゲス
ト包接能の相関は、アゾデンドロン側鎖Rの性質に大きく依存することを見出した(図2)。
trans-2 は紫外光照射によって cis-2 に異性化しても、ゲスト包接率は殆ど変化せずカプセルは維持
されており、cis-2 の側鎖の立体障害は不十分であった。それに対し、trans-3 と trans-4 は、紫外光照
射によって cis-3 と cis-4 に異性化すると、カプセルは完全に解離してゲストを放出することがわかっ
た。そして、cis-3 と cis-4 を可視光照射や加熱すると trans-3 と trans-4 に再異性化し、ゲスト包接カ
プセル Guest@[(trans-Host)6•(H2O)8]を再形成することがわかった。
84
分子集合ナノマテリアルの創製と機能
(1-3)超分子カプセルポリマー:今年度は、スペーサーに結合させるために必要なキャビタンド側鎖
を官能基化した水素結合性テトラピリジルキャビタンドとテトラフェノールキャビタンドの合成を
達成した。
図1.動的ホウ酸エステル結合カプセル 3 の蛍光発光材料 4~6 の包接とナノ保護容器としての利用
図2.分子集合6量体カプセルの光応答に基づく解離-再形成とそれに連動するゲスト分子の放出-再包接
(2) 機能性超分子ヒドロゲルの開発(山中)
市販のペンタアセチルグルコースを出発原料に7段階の反応により両親媒性トリスウレア化合物
の合成を達成した。この化合物は、一般的なタンパク質電気泳動法である SDS-PAGE において用いら
れるトリス-グリシン-SDS 緩衝液を効率的にゲル化できることが明らかとなった。そこで、この両親
媒性トリスウレア化合物のトリス-グリシン-SDS 緩衝液ゲル(超分子ヒドロゲル)を担体として用い
たタンパク質電気泳動を行った。まず、超分子ヒドロゲルからのタンパク質試料の回収方法を検討し
た。種々の検討結果より、電気泳動後のゲルを遠心分離するという極めて単純な操作において、タン
パク質試料が約50%回収できることを明らかとした。同様の方法を用い、ポリアクリルアミドゲル
からのタンパク質試料の回収を試みたが、2%程度の回収率に留まった。このように、超分子ヒドロ
ゲルを電気泳動の担体として用いることで、タンパク質試料が簡便且つ効率的に回収できることを見
出した。さらに、種々のタンパク質試料の分離について検討した。その結果、分子量が 45 kDa 以上
のタンパク質では、既存の SDS-PAGE と同様の分離が見られたが、分子量が 45 kDa 未満のタンパク
質では、既存の SDS-PAGE とは異なり、分離量の小さなタンパク質の移動距離が短くなるという特異
的な分離が進行することを明らかとした。以上のように、超分子ヒドロゲルがタンパク質電気泳動の
担体として有用であることを見出すことができた。
85
Ⅳ
Ⅳ 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
(3) 時間分解電子スピン共鳴法によるタンパク質・光活性有機固体膜の電子伝達機能(小堀)
(a)芳香族分子をヒトタンパク質に認識させた複
合体(図 1)において、長寿命な近距離および長距離
光電荷分離状態を人工的に効率よく生成させるこ
とに世界で初めて成功した。近接している中間体分
子対においては、直交した立体配置が電子雲の重な
りを大きく抑制し、
もとの安定な分子に戻らないよ
うにすることによって効率よく光エネルギー変換
を起こす様子が明瞭に捉えられた(図 1)。さらに、
タンパク質表面領域の水和分子を介した軌道の重
なりが長距離電子移動過程に重要な役割を果たす
ことも示された。
図 1. 人工的な光エネルギー変換を起こすヒトタンパク
(b)光合成光化学系 II 反応中心においては、 質-薬物複合体における短寿命中間体の立体配置
初期電荷分離状態からの三重項電荷再
結合速度を決定することができた。得ら
れた非常に大きな再結合速度定数から、
アクセサリークロロフィル励起三重項
状態への電荷再結合過程は、初期に生成
したフェオフェチン−クロロフィル長
距離電荷分離状態から直接的に電子と
正孔がアクセサリークロロフィルへと
同時に移動することによって起こるこ
とが示唆された。
(c)有機薄膜太陽電池のヘテロジャン
クション型ブレンド膜試料における光
電変換初期過程においては、得られた立
体配置から、効率よく光電変換を行うポ
リマーとフラーレンの相対配置および
反応距離を得ることができた。
(図 2)
図2. 有機薄膜太陽電池のバルクへテロジャンクション型光活性
さらに不対電子軌道の相対的な配置•
層を形成する a) regioregular P3HT-PCBM と b) regiorandom
配向から、ポリチオフェン励起子から P3HT-PCBM ブレンド膜個体試料の光電変換初期過程で生成し
の電子注入後に起こる電荷解離(光電 た電荷分離状態の不対電子軌道
流生成)の初期段階であることが明ら
86
分子集合ナノマテリアルの創製と機能
かとなった。このデータから反応初期段階において有機ポリマーの電気伝導性が重要な役割を果
たすこと、さらに有機半導体分子のヘキシル基側鎖の運動性によって生まれる乱雑さが電荷解離
を促進するためのエントロピー増大効果を生み出していることが示唆された。
(4) 蛍光色素包接超分子錯体 1 分子の光物性と反応ダイナミクスの解明(三井)
① 温度可変単一分子蛍光分光装置の開発:単一分子蛍光分光(SMFS)法は,分子1個1個の蛍光マ
ルチパラメータ(蛍光強度,蛍光寿命,蛍光スペクトル,偏光度など)を並列計測することができ,
それらの時間変化を通じて分子構造や分子周辺環境の揺らぎが反応キネティクスに及ぼす影響を直
接的に捉えることができる。このような構造揺らぎの効果は系の温度に依存すると考えられるが,
SMFS 法を用いた研究において温度依存性測定は未だほとんど行われていないのが現状である。本研
究では,大排気量のポンプ系と冷却ガスフロー制御を組み合わせることにより,試料温度を-40~80℃
の範囲で簡便に制御ができ,かつ1分子の蛍光マルチパラメータを計測することが可能な温度可変
SMFS 装置の開発に成功した。
② シクロデキストリン包接錯体内反応の単一分子分光:これまでに我々の研究室では,分子包接現
象を示す代表的化合物であるシクロデキストリン(CD)の固体薄膜中において,ペリレンジイミド
(PDI)誘導体(図 1a)が顕著な蛍光ブリンキングを示すことを見出してきた。本研究ではそのブリン
キング挙動についての更なる詳細な実験および解析を行い,ブリンキングの原因となっている反応過
程について考察を行った。CD 薄膜中における PDI の蛍光強度の時間変化から,蛍光ブリンキング挙
動の解析を行い,蛍光が観測されない持続時間(off-time, toff)の確率密度分布 P(toff)を多数の単一分子
に対して求めた(図 1b)。それらすべてのデータは不均一系における非指数関数的振る舞いを記述する
のにしばしば用いられる拡張型指数関数(P(toff) 
toff / KWW) ])でよく再現され,各 KWW と から各単
一分子の off 状態の寿命 off を求められた(図 1c)。このことから,この反応では PDI と反応相手との距
離が非常に狭い範囲に制限され非常に近距離で反応が起こっていること,すなわち包接錯体内反応が
起こっていることが分かった。PDI の S0-S1 吸収と T1-Tn 吸収は同じエネルギー領域にあるため,高い
光子密度による光励起の条件では項間交差が起こると高い確率で T1-Tn 吸収が起こって高励起三重項
状態が形成し得る。PDI の励起状態に対する分子軌道計算から,T1-Tn 吸収のエネルギー領域に n状態が存在しているこ
とが分かり,この高励
起 3(n状態の PDI
が
から水素引き
抜き(
から PDI
誘導体への水素原子移
動)反応を起こしてい
ることが強く示唆され
た(図 1d)。これまでに
水素原子移動反応を単
一分子レベルで捉えら
れた研究例はなく,本
研究で初めてそれを捉
えることに成功したも
のと考えられる。
87
Ⅳ
Ⅳ 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
4. 今後の展開
(1)分子自己集合に基づく超分子カプセルの構築と機能創発(小林)
(1-1)ナノ保護容器:パイ共役拡張によって高い発光特性を示すがより不安定になるビス(アリール
エチニル)アントラセン誘導体 4 ならびにそのオリゴマー5, 6 を動的ホウ酸エステル結合カプセル 3 に
包接させることで、高発光特性を維持しつつ光劣化しない安定発光材料の開発に成功した(論文投稿準
備中)。今後、さらに精査することで不朽蛍光材料へ展開したい。また、4, 5, 6 のアセトキシ基のない
化合物は二光子吸収材料として機能することが知られている。そこで、4~6 およびゲスト包接カプセ
ル 4~6@3 の二光子吸収特性を評価して、将来、細胞等の3次元画像が得られる顕微蛍光像イメージ
ング材料へ展開したい。
(1-2)光応答性分子集合カプセル:分子集合カプセルの究極の機能化の1つは、薬物徐放システムと
薬物送達システムへの展開であり、
「望みのタイミングで薬物(包接ゲスト分子)を放出させる」ことで
ある。これまでクリーンな光刺激によって分子集合カプセルの解離-形成(及びゲストの放出-包接)を制
御した系は、殆どなかった。今回、アゾデンドロン側鎖 R を有するカリックス[4]レゾルシンアレーン
trans-3, 4 を合成し、ゲスト包接分子集合キュービックカプセルの形成と、光応答に基づくカプセル解
離-再形成とそれに連動するゲスト分子の放出-再包接に成功した(論文投稿準備中)。今後、アゾデンド
ロン側鎖 R を精査してさらに迅速に光応答する分子集合キュービックカプセルを構築すると共に、将
来薬物送達システム・薬物徐放システムへ展開するための基盤を確立したい。
(1-3)超分子カプセルポリマー:外部因子によって(ゲスト分子の性質に応じて)ポリマーの重合度や
熱力学的安定性を制御できる水素結合性超分子カプセルポリマーは、アルコール添加でモノマーに解
離し、アルコール除去によってポリマーに自己再生可能な環境にやさしいインテリジェントポリマー
である。また、薬物徐放システムへの応用も期待される。今年度は、スペーサーに結合させるために
必要なキャビタンド側鎖を官能基化した水素結合性テトラピリジルキャビタンドとテトラフェノー
ルキャビタンドの合成を達成した。来年度は、スペーサーの両端にキャビタンドを結合させたダンベ
ル型ホスト(モノマー)を完成させ、水素結合に基づく超分子カプセルポリマーを構築する実験に取り
組む。
(2)機能性超分子ヒドロゲルの開発(山中)
本研究により、超分子ヒドロゲルがタンパク質電気泳動の担体として有用であることを明らかとし
た。今後は、この技術をさらに汎用性の高いものにすべく、超分子ヒドロゲルの改良を実施する。具
体的には、物理的強度に優れた超分子ヒドロゲル開発、より短工程低コストで合成することができる
低分子ヒドロゲル化剤の開発を行う。さらには、超分子ヒドロゲルを用いたタンパク質電気泳動をさ
らに発展させることを目的とし、未変性のタンパク質試料の電気泳動法の開発、およびタンパク質試
料の高効率的な回収を実現する。
(3)時間分解電子スピン共鳴法によるタンパク質・光活性有機固体膜の電子伝達機能(小堀)
(a)薬物を分子認識した超分子型タンパク質においては、時間分解電子スピン共鳴法により、薬物
-アミノ酸残基における立体構造を決定することができた(図1)。このことから本手法を用いてタ
ンパク質-薬物相互作用の詳細を調べることができることが示されたといえる。疾患原因のタンパク
質をターゲットとした薬物開発にとっても重要な成果である。さらに、タンパク質における光電荷分
離過程は、タンパク質複合体用いた新しい光エネルギー変換として注目されており、可視光励起で効
率よくエネルギー変換を起こす薬物など分子探索を行う予定である。
(b)ホウレン草から抽出した光合成光化学系 II 反応中心においては、三重項電荷再結合の経路及び
電子的相互作用が明らかになった。これらのデータを踏まえ、初期電荷分離状態からアクセサリーク
ロロフィル励起三重項状態へと至る電子伝達機能が明らかになった。今後は初期電荷分離状態の観測
•解析により、電荷分離状態の立体構造解析を行うことによって、植物光合成系における電子伝達機
構をより具体的に明らかにしていく予定である。
(c)有機薄膜太陽電池のヘテロジャンクション型ブレンド膜においては、効率よく光電変換を行う
仕組みがまだ解明されていない。今後も温度変化など様々な測定を行い初期電荷分離・電気伝導機構
の詳細を明らかにしていく予定である。さらに、作成された薄膜太陽電池を用いてデバイス動作時の
88
分子集合ナノマテリアルの創製と機能
過渡種の観測を行い、太陽電池の分子機能について性能評価を行う予定である。
(4)蛍光色素包接超分子錯体 1 分子の光物性と反応ダイナミクスの解明(三井)
水素原子移動反応では構造ゆらぎによる反応距離のわずかな変化が反応速度に大きな変動を生み
出すことが予想され,今後,これを初めて単一分子レベルで実験的に検証する。また,これまでの単
一分子分光研究において蛍光ブリンキングの原因は分子内緩和過程の場合を除き,直接的な実験的検
証のないまま電荷移動反応とされることがほとんどであった。しかし本研究では,水素原子移動反応
も反応速度に大きな不均一性を生み出す反応素過程として考慮すべきであることを示しており,これ
までの蛍光ブリンキングの原因に対する解釈の常識に対して一石を投じたいと考えている。さらに水
溶液試料の凍結による SMFS 計測の実現は,水溶液中でのみ生成・機能する超分子や生体分子に対す
る SMFS の適用を可能とし,新たな研究展開を切り拓く可能性を秘めている。
5.研究業績
小林健二
(1) 学術論文・著書等
1) Bis(methylthio)tetracenes: Synthesis, Crystal Packing Structures, and OFET Properties. T. Kimoto, K.
Tanaka, M. Kawahata, K. Yamaguchi, S. Otsubo, Y. Sakai, Y. Ono, A. Ohno, K. Kobayashi J. Org. Chem.
2011, 76, 5018-5025.
2) 2,7-Conjugated Aromatics. R. Ozawa, K.
Yoza, K. Kobayashi Chem. Lett. 2011, 40, 941-943.
(4) 国際会議発表
1) Self-Assembled Cavitand-Based Capsules.
(Invited)
Kenji Kobayashi
The 11th International Conference on Calixarenes.
The Institute of Chemical Research of Catalonia, Tarragona, Catalonia, Spain, 2011, June 26-29.
2) Heteroatom-Functionalized Acenes.
(Invited)
Kenji Kobayashi
1st International Symposium on Creation of Functional Materials.
University of Tsukuba, Tsukuba, Japan, 2011, December 17-18.
山中正道
(1) 学術論文・著書等
1) Structural alteration of hybrid supramolecular capsule induced by guest encapsulation
Masamichi Yamanaka, Masashi Kawaharada, Yuki Nito, Hikaru Takaya, Kenji Kobayashi
Journal of the American Chemical Society, 2011, 133 (41), 16650-16656.
2) Separation of proteins using supramolecular gel electrophoresis
Sachiyo Yamamichi, Yuki Jinno, Nana Haraya, Takanori Oyoshi, Hideyuki Tomitori, Keiko Kashiwagi,
Masamichi Yamanaka
Chemical Communications, 2011, 47 (37), 10344-10346.
(2) 解説・特集等
1) 「精密分子設計にもとづく機能性超分子ゲルの開発」
山中 正道
未来材料、2011, 11 (9), 16-21.
89
Ⅳ
Ⅳ 分子集合ナノマテリアルの創製と機能
小堀康博
(1) 学術論文・著書等
1) Y. Kobori, M. Fuki: Protein-Ligand Structure and Electronic Coupling of Photoinduced Charge-Separated
State: 9,10-Anthraquione-1-Sulfonate Bound to Human Serum Albumin J. Am. Chem. Soc. 133 (42),
16770-16773 (2011).
2) K. Yamanishi, M. Miyazawa, T, Yairi, S. Sakai, N. Nishina, Y. Kobori, M. Kondo, F. Uchida : Conversion of
Cobalt(II) Porphyrin into a Helical Cobalt(III) Complex of Acyclic Pentapyrrole Angew. Chem.-Int. Edit., 50
(29), 6583-6586 (2011).
(2) 解説・特集等
1) 小堀康博, 婦木正明: 最新のトピックス「タンパク質によるエネルギー変換のしくみ—人工光合成
に向けて」 月刊化学, 化学同人, 京都, Vol .67, No. 2, 70-71, (2012) 2 月.
(4) 国際会議発表
1) Yasuhiro Kobori, Masaaki Fuki and Ryohei Noji: “Orientational Structures and Electronic Couplings of
Photoinduced Charge-Separated States in Proteins and Organic Films” Spin Chemistry Meeting 2011,
Noordwijk (Netherlands) 2011 年 5 月 16 日
2) Yasuhiro Kobori and Masaaki Fuki: “Orientational Structures and Electronic Couplings of Photoinduced
Charge-Separated States in Human Proteins” International conference “Spin physics, spin chemistry, and spin
technology” on November 1-6, 2011 in Kazan (Russia) (招待講演) 2011 年 11 月 2 日
3)Yasuhiro Kobori: “Orientational Structure and Electronic Coupling of Photoinduced Charge-separated states
in Proteins” International Workshop “Advanced ESR Studies for New Frontiers in. Biofunctional Spin Science
and Technology” (AEBST 2011) November 13-14, 2011, Takigawa Memorial Hall, Kobe University(招待講
演)2011 年 11 月 13 日
(6) 新聞報道等
1) 2011年10月6日付け 日経産業新聞「光エネ変換 たんぱく質使い解明」
2) 2011年10月6日付け 静岡新聞「タンパク質応用新エネ創出へ」
3)2011年10月13日付け 化学工業日報「たんぱくの光エネルギー変換の仕組み解明」
4) 2011年10月6日 日経バイオテクオンライン「静岡大の小堀康博准教授が人工光エネルギー
変換の仕組み解明、アルブミン複合体の変換効率は光合成に匹敵」
5) 2011年10月7日 ヤフー•ニュース「静岡大、たんぱく質のエネルギー変換機構を解明-新エ
ネルギー源として期待」
6) 2011年10月5日 科学技術振興機構•静岡大学共同プレスリリース「たんぱく質の光エネル
ギー変換の仕組みを解明(新エネルギー源の創出に期待)」
三井正明
(1) 学術論文・著書等
1)「光化学の事典 -だれでもわかる光化学の初歩-」(朝倉書店) 分担執筆 刊行予定 2012 年 8 月
(2) 解説・特集等
1)「温度可変単一分子蛍光分光測定のための簡易試料基板ホルダーの開発」 三井正明,福井洋樹,
河野祐也,高橋良弥 分光研究 vol.60(4), 133 (2011)
(4) 国際会議発表
1) Masaaki Mitsui “Single molecule studies of heterogeneous dynamics of organic dyes in solid thin films”
Shizuoka University International Symposium 2011, Shizuoka, Japan, Nov. 29, 2011
90
5.
H23 年 度 ナ ノ バ イ オ 研 究 に 関 わ る 新 聞 報 道 等
新聞記事等
1) 健 康 産 業 流 通 新 聞
「 機 能 性 素 材 で 認 知 症 予 防 」 ( 河 岸 ) 2011/5/26
2) 日 本 農 芸 化 学 会 誌 「 化 学 と 生 物 」 ( 河 岸 ) 5月 号 表 紙
3) 静 岡 新 聞 「 キ ノ コ 化 合 物 の 応 用 」 ( 河 岸 ) 2011/10/15
4) 静 岡 新 聞
「 医 薬 食 の 融 合 、 発 展 を 」 (河 岸 ) 2011/10/22
5) 日 刊 工 業 新 聞「 樹 脂 フ ィ ル ム 上 で の カ ー ボ ン ナ ノ チ ュ ー ブ の 低 温 成 長 技 術 に 関 す
る 研 究 成 果 」 (永 津 )2011/12/21
6) 日 刊 工 業 新 聞
「 静 岡 大 学 イ ノ ベ ー シ ョ ン 共 同 研 究 セ ン タ ー 創 立 20周 年
事業化に
向 け た 代 表 的 な 産 学 連 携 の 取 り 組 み 」 (川 人 ) 2011/11/25
7) 電 波 タ イ ム ズ NHKと 静 岡 大 学「 SHVカ メ ラ 用 イ メ ー ジ セ ン サ ー 開 発 」(川 人 ) 2012/ 2/29
8) 日 本 経 済 新 聞
「電気抵抗
極 小 範 囲 で 測 定 」 (岩 田 ) 2011/12/10
9) 日 経 産 業 新 聞 「 薄 膜 の 電 気 抵 抗
10) 静 岡 新 聞
1000分 の 1ミ リ 範 囲 で 測 定 」 (岩 田 ) 2011/12/13
「魚の排卵過程明らかに
ヒ ト の 不 妊 研 究 期 待 」 ( 徳 元 ) 2011/9/22
11) 科 学 技 術 振 興 機 構 •静 岡 大 学 共 同 プ レ ス リ リ ー ス「 た ん ぱ く 質 の 光 エ ネ ル ギ ー 変
換 の 仕 組 み を 解 明 ( 新 エ ネ ル ギ ー 源 の 創 出 に 期 待 )」 (小 堀 )2011/10/5
12) 日 経 産 業 新 聞 「 光 エ ネ 変 換
た ん ぱ く 質 使 い 解 明 」 (小 堀 )2011/10/6
13) 静 岡 新 聞 「 タ ン パ ク 質 応 用 新 エ ネ 創 出 へ 」 (小 堀 )2011/10/6
14) 日 経 バ イ オ テ ク オ ン ラ イ ン 「 静 岡 大 の 小 堀 康 博 准 教 授 が 人 工 光 エ ネ ル ギ ー 変 換
の 仕 組 み 解 明 、 ア ル ブ ミ ン 複 合 体 の 変 換 効 率 は 光 合 成 に 匹 敵 」 (小 堀 )2011/10/6
15) ヤ フ ー • ニ ュ ー ス 「 静 岡 大 、 た ん ぱ く 質 の エ ネ ル ギ ー 変 換 機 構 を 解 明 -新 エ ネ ル
ギ ー 源 と し て 期 待 」 (小 堀 )2011/10/7
16) 化 学 工 業 日 報 「 た ん ぱ く の 光 エ ネ ル ギ ー 変 換 の 仕 組 み 解 明 」 (小 堀 )2011/10/13
テレビ放送
1) SBSイ ブ ニ ン グ eye
6時 台 特 集
(原 )
91
H23年 9月 28日 放 送
受賞・表彰
1) 河 岸 洋 和
(1) 平 成 23( 2011) 年 農 芸 化 学 企 画 賞 ( 日 本 農 芸 化 学 会 )
フェアリーリング惹起物質からの植物成長促進剤の開発
(2) 伏 見 圭 司 ( 博 士 3 年 ) (河 岸 )
第 10 回 新 規 素 材 探 索 研 究 会 奨 励 賞 ( 2011.6)
「 フ ミ ヅ キ タ ケ (Agrocybe praecox) の 産 生 す る 植 物 成 長 調 節 物 質 の 探 索 」
2) 間 瀬 暢 之
(1) 第 2 回 IJRC 奨 励 賞
(2) 第 42 回 中 部 化 学 関 係 学 協 会 支 部 連 合 秋 季 大 会 優 秀 賞
「マイクロ・ナノバブル手法による新規効率的水素不可反応」
○磯村省吾、水森智也、永野利久、間瀬暢之
3) 朴 龍 洙
最優秀ポスター発表賞
(1) Megumi Yui, Vipin Kumar Deo, Hiroshi Ueda, Enoch Y. Park, Preparation of virus -like
particles tracking cancer cells using bacmid expression system in silkworm, 2nd
Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green Science and
Technology", 3/14-15, 2012.
(2) Takahiro Oizumi, Akiko Murakawa, Enoch Y. Park, Expression of Shigatoxin B
subunit, 2nd Zhejiang Univ.-Shizuoka Univ. Student Workshop "Seedling for Green
Science and Technology", 3/14 -15, 2012.
(3) Muthukutty Palaniyandi, Tatsuya Kato, Enoch Y. Park, E xpression and Purification of
Human Pappilomavirus 6b L1 virus -like particles (VLP) and display of chimeric EGFP
whole protein incorporated in VLP epitopes , Shizuoka University International
Symposium
2011 –Ini tiatives
for
Crossing
Boundaries
within
Science
and
Technology–, 11/28-29, 2011.
(4) Nakagawa Haruyuki, Won Seok Oh, Taichi Usui, Enoch Y. Park, Evaluation of sLeX
immobilized nanoparticles binding behavior against E -selectin, 2nd Korea-Japan Joint
Symposium and Graduate Students Forum proceeding p33, 2011 .
92
4) 永 津 雅 章
(1) 応 用 物 理 学 会 プ ラ ズ マ エ レ ク ト ロ ニ ク ス 分 科 会 第 10 回 プ ラ ズ マ エ レ ク ト ロ ニ
ク ス 賞 (2012.3.15) .
(2) 財 団 法 人 浜 松 電 子 工 学 奨 励 会 第 25 回 (平 成 23 年 度 )高 柳 記 念 賞 「 プ ラ ズ マ
科 学 技 術 の 医 療 ・ バ イ オ 分 野 応 用 に 関 す る 先 駆 的 研 究 」 (2011.12.18).
(3) 平 成 23 年 度 プ ラ ズ マ ・ 核 融 合 学 会 賞 第 16 回 技 術 進 歩 賞 (2011.11.22).
5) 川 田 善 正
(1) 日 本 科 学 研 究 会 平 成 22 年 度 笹 川 科 学 研 究 奨 励 賞 ( 居 波 渉 助 教 授 )
(2) 静 岡 大 学 卓 越 研 究 者 の 称 号 を 授 与 ( 川 田 善 正 教 授 )
(3) 静 岡 大 学 若 手 重 点 研 究 者 の 称 号 を 授 与 ( 居 波 渉 助 教 授 )
(4) 静 岡 大 学 学 長 表 彰 を 受 賞 ( 辻 真 俊 D3)
(5) 静 岡 大 学 イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル シ ン ン ポ ジ ウ ム 2011 Best Poster Award を 受 賞
( 名 和 靖 矩 D1)
特許(取得)
1) 永 津 雅 章
マイクロ波プラズマ滅菌装置およびそれを用いた滅菌方法
永津雅章
特 許 第 4716457 号 ( P4716457) 2011/4/8 登 録 2011/7/6 発 行
2) 川 人 祥 二
(1) CMOSイ メ ー ジ セ ン サ , 川 人 祥 二
特 願 2006-287005(2006/10/20), 特 許 第 4710017号 (2011/4/1)
(2) A / D 変 換 器 お よ び 読 み 出 し 回 路 , 川 人 祥 二
特 願 2008-527759(2008/12/22), 特 許 第 4793602号 (2011/8/5)
(3) 共 焦 点 顕 微 鏡 装 置 , 川 人 祥 二 , 寺 川
進 (浜 松 医 科 大 学 )
特 願 2005-024687(2005/2/1), 特 許 第 4802320 号 (2011/8/19)
(4) ア ナ ロ グ デ ィ ジ タ ル 変 換 器 、 A / D 変 換 ス テ ー ジ 、 ア ナ ロ グ 信 号 に 対 応 し た デ
ィジタル信号を生成する方法、およびA/D変換ステージにおける変換誤差を
示す信号を生成する方法, 川人祥二
特 願 2008-520636(2008/11/4), 特 許 第 4893896 号 (2012/1/6)
(5) イ メ ー ジ セ ン サ , 川 人 祥 二
特 願 2007-315048(2007/12/5) 特 許 第 4941989 号 (2012/3/9)
(6) 半 導 体 測 距 素 子 及 び 固 体 撮 像 装 置 , S.Kawahito
国 際 出 願 10-2009-7013136(2007/11/30) , Patent no. 10-1030263, 2011/4/13.
(7) 高 速 撮 像 装 置 , S.Kawahito
93
国 際 出 願 4250088/4, (2004/1/9), Patent no.1509038, 2011/4/20.
(8) A/Dconversion array and image sensor, S.Kawahito
国 際 出 願 4793319.7 (2004/10/27), Patent no. 1679798, 2011/6/29
(9) 光 飛 行 時 間 型 距 離 セ ン サ , S.Kawahito
国 際 出 願 10-2006-7019161 (2005/2/14), Patent no.10 -1098216, 2011/12/26.
(10) 巡 回 型 ア ナ ロ グ ・ デ ィ ジ タ ル 変 換 器 , S.Kawahito
国 際 出 願 12/812204 (2009/1/8), Patent no.US8118156, 2012/2/21.
特許(公開)
1) 間 瀬 暢 之
(1) ポ リ マ ー 粒 子 と そ の 製 造 方 法 2011-208116
(2) ポ リ マ ー の 製 造 方 法 2011-208115
(3) ポ リ マ ー 粒 子 及 び そ の 製 造 方 法 2011-184531
特許(出願)
1) 河 岸 洋 和
(1) Fucoseα 1-6 specific lectin ,小 林 夕 香 ,平 林 淳 ,舘 野 浩 章 ,河 岸 洋 和 ,道 羅 英 夫
PCT 出 願 番 号 :PCT/JP2009/00346 EC 出 願 番 号 : 09800190.2 出 願 国:E P( 英 ・
独 ・ 仏 ) 公 開 日 : 2011/4/6 公 開 番 号 : 230574 出 願 人 株 式 会 社 J-オ イ ル ミ ル
ズ,独立行政法人産業技術総合研究所,国立大学法人静岡大学
(2) イ ミ ダ ゾ ー ル 誘 導 体 河 岸 洋 和 , 崔 宰 熏
出 願 番 号 特 願 2011 -099456 出 願 日 2011/04/27 出 願 人 国 立 大 学 法 人 静 岡 大
学
(3) ア ミ ド 化 合 物 河 岸 洋 和
出 願 番 号 特 願 2011-180829 出 願 日 2011/08/22 出 願 人 国 立 大 学 法 人 静 岡
大学
2) 原 正 和
(1) 植 物 耐 熱 性 誘 導 剤 原 正 和
出 願 番 号 特 願 2011 -282111 出 願 人
国立大学法人静岡大学、静岡商工会議所
3) 原 正 和 、 尾 形 慎
(1) 植 物 生 長 促 進 剤 原 正 和 、 碓 氷 泰 市 、 尾 形 慎 、 ア デ ィ ッ テ ィ ヤ
出 願 番 号 特 願 2012 -012202 出 願 人 : 国 立 大 学 法 人 静 岡 大 学
4) 朴 龍 洙 、 尾 形 慎
(1) ウ イ ル ス 阻 害 剤 碓 氷 泰 市 , 朴 龍 洙 , 尾 形 慎 , 宮 崎 忠 昭
PCT/JP2011/054384
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クルカルニ
5) 岩 田 太
(1) 微 小 付 着 物 剥 離 シ ス テ ム お よ び 微 小 付 着 物 剥 離 方 法 、 岩 田 太
出 願 番 号 特 願 2011 -18980 出 願 日 2011/8/31 出 願 人 国 立 大 学 法 人 静 岡 大 学
(2) 基 板 上 に 微 小 物 質 を 再 現 性 良 く 推 積 さ せ る 方 法 、 岩 田 太 他
出 願 番 号 特 願 2011 -227227 出 願 人 株 式 会 社 デ サ イ ン テ ッ ク 、 国 立 大 学 法 人 静
岡大学
(3) 接 触 状 態 検 出 装 置 ,接 触 状 態 検 出 方 法 ,接 触 状 態 検 出 用 コ ン ピ ュ ー タ ー プ ロ グ ラ
ム ,接 触 状 態 検 出 装 置 を 備 る 電 気 伝 導 度 測 定 シ ス テ ム 及 接 触 状 態 検 出 方 法 を 含 む
電 気 伝 導 度 測 定 方 法 、 岩 田 太 出 願 番 号 特 願 2011-65959 出 願 人 国 立 大 学
法人静岡大学
高インパクトファクターの雑誌への論文掲載
1) Wakimoto, T., Asakawa, T., Akahoshi, S., Suzuki, T., Nagai, K., Kawagishi, H.,
and Kan, T., “Proof of the existence of an unstable amino acid,
pleurocybellaziridine, in Pleurocybella porrigens (angel’s wing mushroom)”,
Angew. Chem., Int. Ed. Engl., 50(5), 1168 -1170 (2011).(IF2010- 12.730)
2) Masamichi Yamanaka*, Masashi Kawaharada, Yuki Nito, Hikaru Takaya, Kenji
Kobayashi, “Structural alteration of hybrid supramolecular capsule induced by
guest encapsulation”, Journal of the American Chemical Societ y, 2011, 133 (41),
16650-16656. (IF2010 = 9.023)
3) Sachi yo Yamamichi, Yuki Jinno, Nana Haraya, Takanori Oyoshi, Hideyuki
Tomitori, Keiko Kashiwagi, Masamichi Yamanaka*, “Separation of proteins usin g
supramolecular gel electrophoresis”, Chemical Communications, 2011, 47 (37),
10344-10346.
(IF2010=5.787)
4) Ogata, M., Yano, M., Umemura, S., Murata, T., Park, E. Y., Kobayashi, Y., Asai,
T., Oku, N., Nakamura, N., Matsuo, I., Usui, T. “Design and synt hesis of
high-avidit y tetravalent gl ycoclusters as probes for Sambucus sieboldiana
agglutinin and characterization of their binding properties”, Bioconjugate Chem.,
2012, 23, 97 -105. (IF=5.002)
5) T. E. Saraswati, A. Ogino, M. Nagatsu, "Plasma -activated immobilization of
biomolecules onto graphite -encapsulated magnetic nanoparticles", Carbon 50
(2012) pp.1253 -1261.
IF(2010)=4.893 , IF(5 -year)=5.724
95
6) Iuliana Motrescu, Akihisa Ogino, Shigeyuki Tanaka, Taketomo Fujiwara, Shinya
Kodani, HirokazuKawagishi, Gheorghe Popa, and Masaaki Nagatsu, "Mechanism of
peptide modification by low -temperature microwave plasma", Soft Matter, 7 (2011)
pp. 4845-4850.
IF(2010)=4.457 , IF(5 -year)=5.080
7) Tomomi Ito, Norio Yoshizaki, Toshinobu Tokumoto, Hiroko Ono, Takashi
Yoshimura, Akira Tsukada, Norio Kansaku, and Tomohiro Sasanami, “Progesterone
Is a Sperm-Releasing Factor from the Sperm -Storage Tubules in Birds”,
Endocrinology, 2011, 152 (10), 3952 -3962. IF=4.993 (2010)
8) Toshinobu Tokumoto, Toshi ya Yamaguchi, Sanae Li, and Mika Tokumoto, “In
Vivo Induction of Oocyte Maturation and Ovulation in Zebrafish”, PLoS ONE, 2011,
6(9) e25206. IF= 4.411 (2010)
9) Y. Kobori, M. Fuki, "Protein -Ligand Structure and Electronic Coupling of
Photoinduced Charge -Separated State: 9,10 -Anthraquinone-1-sulfonate Bound to
Human Serum Albumin", Journal of the American Chemical Societ y, 2011, 133,
16770-16773.
96
1)
2)
3)
4)
97
5)
6)
7)
98
8)
9)
10)
99
12)
13)
16)
100
6.
終わりに
本プロジェクトの2年目として、多くの先生方が参画された。1 年目から進めてきた東西
の融合領域(光・電子とバイオ)の形が徐々に姿を現している。また、超領域研究会が全
学組織として設立され、研究担当理事の指揮下で更に横の連携を取りやすくなり、本学の
第 2 中期計画の重点研究「ナノバイオ科学」の基盤が出来ている。
「高齢化・福祉社会を支えるナノバイオテクノロジー(静岡大学独自機能性ナノマテリア
ルや医療用補助計測装置でよりよく食べる・よりよく暮らす)」のプロジェクト研究推進
にあたり、「高齢化対応新規高機能性食科学」、「糖鎖チップ開発」、「機能性ナノ粒子
を用いたワクチン開発の基盤研究」、「分子集合ナノマテリアルの創製と機能」の 4 分野
の研究を32名の研究者が連携を取りながら推進した。
平成23年度本プロジェクトの具体的な成果は下記の通りである。
学術論文(IF5以上):9編、特許関係:23件(取得11件、公開3件、出願:9件)、
受賞:16件(学生の発表賞含む)、・新聞報道等:16件
学術論文の中で、Impact Factor 5 以上の国際誌に9件掲載されたことは、本プロジェク
トで得られた成果は世界舞台でも通用していることの現れである。こういった成果はこれ
から間違いなく襲ってくる「高齢化・福祉社会」を切り拓く新しい科学技術の礎となると
確信している。また、本プロジェクトを推進しながら、東西研究の融合の芽が出ており、
3年目に引き継がれるという大きな成果があった。
最後に、本研究の推進に当たり、関わっておられる先生方、また本学の執行部の先生方、
また実験を行っている大学院生諸君に厚く御礼申し上げ、本報告書の結びとしたい。
101
ナノバイオプロジェクト推進室
朴
龍洙
創造科学技術大学院
教授
[email protected]
054-238-4887
董
金華
創造科学技術大学院
尾形
特任助教
慎
創造科学技術大学院
[email protected]
特任助教
[email protected]
千切麻里衣
プロジェクト担当事務
[email protected]
054-238-4846,4887
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