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ブラザー工業 ラベルライター P−touch(ピータッチ)18R プロトビルダー
ブラザー工業 ラベルライター P−t ouch( ピータッチ)18R プロトビルダーによるHMI 設計 ユーザー事例紹介します ∼ 静かだった企画会議を一変 ・機能仕様書の標準化を実現 ∼ 大きなポイントとなっています。 す。海外モデルの場合には、言語をロー ブラザー工業では、より使いやすいイン カライズしたモデルをプロトビルダーで作成 今回は、 ブラザー工業 ( 株)パーソナ タフェースを設計することと、 開発のため し、海外販社への仕様の確認、合意を得 ル ・アンド・ホームカンパニー 開発製造 の分かりやすい仕様書を作成することの2 はじめに 部( 敬称略、以下同様)のご協力を頂き、 つを狙いとして、 プロトビルダーを利用し ラベルライター 「 P-touch 18R」の製品仕 たHMI 設計を行っています。 るために使用しています。 3. 機能仕様書出力を考慮した 詳細モデル設計 様設計の方法を取材させて頂きました。 本特集では、 HMI 設計ツール 「 プロト ビルダー」を使用した実際の設計フロー と、製品HMI 設計工程の改善点などをま P−t ouch18Rの 仕様設計フロー 次の図は、 商品企画からソフト設計へ 今回取り上げさせ て頂いた対象の製 品は、 ラベルプリン タです。 オフィスの 書類、棚などのラベ ルとして、 広く用い られており、使ったことのある方も多いと思 います。 ポータブルの小型機器ですが、 程を示しています。商品企画の担当者か 了した時点で、 再度確認レビューが行わ れ、 調整後に最終的な機能仕様として、 がHMI 設計のグループに提示されてか 各部署に発行されます。 ただし、 一部の ら、大きく3つのフェーズで、機能仕様が 開発のために、仕様書を正式発行する前 設計されています。 に、プログラマに情報を公開する場合もあ ります。 1. HMI 基本仕様の設計 商品企画部 4 A A4 数枚 数枚 商品企画書 ( 製品スペック等) 最初のフェーズは、 基本仕様の設計で す。仕様設計グループでは、商品企画部 基 本 仕 様 設 計 : 仕 様 設 計 グ ル ー プ プロトビルダーで基本仕様モデ ル作成 (「紙芝居」ベースの簡単な状態遷移 モデル) からの要求スペックを元に、 機能の構造 メージ画を作成します。次に、プロトビル 最近では、 オリジナルのイラスト画を入れ ダーを使用して、「 紙芝居」ベースの単純 た め の 表 示 インタ 能を利用した仕様書を作成しています。 ら、 A4の数枚にまとめられたスペック表 化を行い、 各機能モードの表示画面イ このラベル作成の ると共に、プロトビルダーの仕様書作成機 詳細機能モデルと仕様書出力がほぼ完 の選択や行数などを細かく指定できたり、 は非常に多く、 複雑になっています。 提出する機能仕様書を作成します。プロト 機能仕様書が渡るまでのHMI 設計の工 テープへ印字するフォントのサイズ、種類 たテープを作成できたりと、内蔵する機能 を受けて、ソフト開発部隊やその他部署へ ビルダーで実際の詳細機能をモデリングす とめさせて頂きます。 ラベルライター P−t ouch18R 最後のフェーズでは、決定した基本仕様 仕 様 設 計 ・表 示 画 面 作 成 ユーザビリティ評価→ 基本仕様への盛 り込 み 基本仕様案作成 な基本仕様モデルを作成します。 この基 本仕様モデルを使用して、ユーザビリティ 基 本 仕 様 レビュー・決 定 : 関 係 各 部 署 全 体 テストが行われます。 基本仕様レビュー 会議 プロトモデルを見ながら基本仕様の確認 関 係 者 全 体 でのレビュー 2. 仕様レビュー会議と基本仕様決定 フェースには、 ブラ ザー工業製の 「P - 次のフェーズでは、 基本仕様の決定が touch 18R」の場合、 行われます。仕様設計グループで作成し 128x48 ( ドット)のモ たHMI 基本仕様モデルを使用して、 営 ノクロフルドット液晶が使用されています 業、開発、品質保証など、開発に関わる が、表示できる文字の行数は、せいぜい 3行程度であり、複雑な機能をより使いや すく表現するためには、 HMI を如何に設 計するかが、商品の価値や差別化を図る 2 GAIO CLUB 2005.1 各部署を招集した仕様レビュー会議が開 詳 細 仕 様 ・機 能 仕 様 書 作 成 : 仕 様 設 計 グ ル ー プ 詳細仕様設計 プロトビルダーで仕様書 を出力 仕 様 設 計 ・表 示 画 面 作 成 最 終 確 認 ・詳 細 仕 様 決 定 : 関 係 各 部 署 全 体 詳 細 仕 様のレビュー 、改善点の 調整 最終詳細仕様決定 作モデルを元に、 具体的な機能内容や どを行い、 基本仕様の決定が行われま 海外 製品 海外販社 との 仕様確認 基 本 仕 様の 決定 かれます。ここでは、プロトビルダーの試 操作性の確認、他部署からの意見収集な 国内 製品 各 部 署からの 改善要求 関 係 者 全 体 でのレビュー ソフト開発部 へ機能仕様書を発行 P-touch 18R のHMI設計フロー アイデアを直ぐに絵にできる 仕様作成メンバーのスキル ユーザビリティ評価を取り入れた 基本設計 静かだったレビュー会議が一変 最初のフェーズでの基本仕様設計では、 使 用 す る前 は 、 使いやすさ、 分かり易さに対する評価も MS-WORD で作成 の、 プロトビルダーを使用したHMI 設計 行われています。 最大3行の小さな表示 した画面の遷移や 成功のポイントは、 表示画面のデザイン 画面の中で、 機能設定や印字文字作成 仕様の内容をワープロ書きした書類を元 画を仕様設計グループのメンバー自身が などをどのように表現するかがポイントとな に、 基本仕様レビューが行われていまし 作成していることです。 プロトビルダー ります。 メニュー階層の深さ、印字フォン た。 は、 仕様設計者が考えた仕様を具現化 トなどパラメータの設定方法などについ この方法では、 製品イメージがつかみ するツールではありますが、 モデルの構 て、プロトビルダーのモデルを動作させな 難く、 これを元に関係者に意見を求めて 成には、製品のイメージ画ビットマップが がら、実際のインタフェースが検討されま も、 「 よく分からない」「 意見の出しようが 必要です。 す。 ない」が大半の反応で、改善要求などの 筐体自体のデザイン このフェーズは、 「 ユーザビリティテスト」 意見は数少ないものでした。 担当者は、 画や最終的な実装ビット も盛り込まれています。 特に、 操作の分 「 とても静かな企画会議でした」と過去の マップは、 他部署の専 かり易さのポイントとなるメニュー構造につ 企画会議を振り返っています。 任デザイナーが作成し いて、いくつかのHMI 案をプロトビルダー プロトビルダー の ますが、 HMI 仕様を案 でモデル化し、社内の被験者や、社外か 動 作 モ デ ル をレ として作成していく段階 ら募集したモニターを対象に体験テストを ビュー 会議 に持ち で必要なLCD 表示のビットマップは、 そ 行うことで、 インタフェース採用の決定を 込んでからは、 実 の都度、仕様設計グループのメンバー自 行っています。 際に動く製品イメー 身が作成しています。 例えば、 「 印字フォントの種類」を選択 ジが目の前に提示 「アイデアを直ぐに絵にできる」グルー する操作画面では、「 書体」のメニューに されるため、他部署の反応や要求、意見 プのスキルが、 短時間でプロトモデルを カーソルを合わせて 「 確定」キーを押し が活発に出てくるようになり、最終的な仕 作成し、短い開発工程の中でレビューを て、次の書体候補切り替え画面に移る階 様の合意を得るための時間が非常に短 繰り返す作業を、 より円滑に進める原動 層型の案と、 1 つの画面の中で、 上下 く、 効率化されています。 力となっているのではないでしょうか。 プロトビルダーを ?? この取材を通じて感じたブラザー工業で ビットマップ素材 キーで 「 書体」などのメニュー選択、 左 右キーで書体候補の切り替えとする1階層 型の2つの案が作られています。 被験者 テストの結果、「 上下左右」キーの使い分 けに若干の慣れが必要だが、1階層型の 方が直感的で分かりやすいという結論に なったようです。 案1:【 機能設定を2階層に分けた案】 書体メニューを選択して確定キーを押して 次の画面で候補を選択 案2:【 1画面で機能設定を行う案】 1画面内で、上下キーで設定項目の選択 左右キーで選択されている項目の内容を変更 美しくデザインされた P-touch 18R のプロトモデル画面 GAIO CLUB 2005.1 3 プロトビルダーの出力仕様書で 書式を標準化 ブラザー工業がプロト ビルダーを採用した大 きな理由の1つが、プロ トモデルから仕様書を 拡大 出力する機能を利用し て、仕様書作成を効率 化し、 書式を標準化し たいということでした。 P-touch 18R の仕様 設計グループでは、機 能仕様書の書式を標準 化する目的で、プロトビ ルダーが出力する仕様 書を詳細仕様書として 使用しています。。 プロトビルダーは、 プロトモデルに製品 状態として定義した画面を使用して、 最 小限の工数で状態遷移図、画面リスト( ス 拡大 テートリスト)、 テキストページなどを仕様 書として出力する機能を備えていますが、 ワープロ書きの仕様書作成と比較すると、 仕様書フォーマットの自由度は低く、プロ トビルダーに予め用意されているテンプ レートに当てはめながら、 仕様書を作成 する仕組みとなっています。 機能別に状態遷移図を使用して 操作仕様書を作成 しかしながら、この自由度の低さが、逆 の効果として仕様書フォーマットを統一し、 標準化を図る効果を生んでいます。 従来ワープロ書きで仕様書作成をされて いた担当の方にとっては、プロトビルダー での仕様書作成は思い通りにならない部 分もあり、 最初は不便に感じることが多く あった様ですが、 現在では、 プロトビル ダーの機能不足をカバーする独自の工夫 で、 使いこなして頂いています。 さいごに 今回紹介させて頂いたラベルライターの HMI設計は、ガイオがプロトビルダーの製 品コンセプトとして掲げる内容を、実務で 運用し効果を上げて頂いた、非常に良い 【 取材協力 ・記事監修】 事例の1つです。今後も、貴重なご意見 ブラザー工業株式会社 を頂きながら、 HMI 仕様設計のデファクト パーソナル ・アンド・ホームカンパニー 開発製造部 ツールとして、改善を重ねて行きたいと考 石田美菜子氏、 山本直美氏 ( 後列左より) えております。 ( 終) 吉村奈子氏、 坪田慶子氏、 吉村彩子氏 ( 前列左より) 4 GAIO CLUB 2005.1