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平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集

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平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
国立国会図書館収集書誌部
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
平成 20 年度書誌調整連絡会議
日時
平成 20 年 11 月 28 日(金) 14 時から 17 時 30 分まで
場所
国立国会図書館 東京本館 総務課第一会議室
次
1
参加者一覧
2
目
開会あいさつ
田屋 裕之(国立国会図書館収集書誌部長)
3
「報告:館外、館内の動向の報告」
(1) 国立国会図書館からの報告
-書誌データの作成および提供-平成 20 年度の主な動き
4
本橋
修(国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐)
(2) 国内の動向
・日本図書館協会(JLA)の委員会からの報告
中井万知子(JLA 目録委員長)
15
金中 利和(JLA 分類委員長)
20
柴田 正美(JLA 件名標目委員長)
22
・図書館からの報告
大串 純子(東京都立中央図書館)
23
多田 智子(早稲田大学図書館)
25
(3) 海外の動向
-IFLA ケベック大会参加報告、IFLA 書誌分科会ワーキンググループ
による「電子時代の全国書誌のためのガイドライン」について
28
中井万知子(収集書誌部司書監)
(4) 質疑
30
「書誌データの作成・提供の方針:次のステップへ」
(1) 国立国会図書館の新方針の進め方
吉本
紀(収集書誌部副部長)
(2) 次世代目録所在情報サービスをめぐって
細川 聖二(国立情報学研究所)
コメント
上田 修一(慶應義塾大学教授)
北
克一(大阪市立大学大学院教授)
根本
彰(東京大学大学院教授)
宮澤
彰(国立情報学研究所教授)
渡邊 隆弘(帝塚山学院大学准教授)
32
39
46
49
51
53
55
質疑および意見交換
57
閉会あいさつ
60
田屋 裕之(国立国会図書館収集書誌部長)
1
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
参加者一覧(五十音順、敬称略)
う え だ
しゅういち
上田
修一
お お ぐ し
じゅんこ
大串
純子
か な か
としかず
金中
利和
き た
かついち
北
克一
し ば た
ま さ み
柴田
正美
し ら が み
ま さ よ
白髪
た
正代
だ
さ と こ
多田
智子
ね も と
あきら
根本
彰
ほ そ か わ
せ い じ
細川
聖二
みやざわ
あきら
宮澤
彰
わ た な べ
たかひろ
渡邊
隆弘
慶應義塾大学文学部教授
東京都立中央図書館サービス部資料管理課整理係目録管理担当係長
日本図書館協会分類委員長
大阪市立大学大学院創造都市研究科教授
日本図書館協会件名標目委員長
帝塚山大学心理福祉学部長・教授
横浜市中央図書館調査資料課資料係
早稲田大学図書館資料管理課長
東京大学大学院教育学研究科教授
国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課図書館連携チー
ム専門員
国立情報学研究所情報社会相関研究系教授
帝塚山学院大学人間文化学部文化学科准教授
国立国会図書館
た
や
ひろゆき
田屋
裕之
よしもと
おさむ
吉本
紀
こ だ ま
ふ み こ
児玉
な か い
史子
ま
ち
こ
中井万知子
あ い は ら
の ぶ や
相原
信也
もとはし
おさむ
本橋
修
収集書誌部長
収集書誌部副部長
収集書誌部司書監
収集書誌部司書監
日本図書館協会目録委員長
収集書誌部主任司書
収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐
オブザーバー
こ ば や し
小林
に
し
お
お
り
た
西 尾
折 田
わ た な べ
渡 辺
かずはる
一春
は つ き
初 紀
ひ ろ は る
洋 晴
か ずし げ
和 重
収集書誌部国内資料課長
収集書誌部逐次刊行物・特別資料課長
収集書誌部外国資料課長
関西館図書館協力課協力ネットワーク係長
※本記録集中の所属および肩書きは、すべて会議開催当時のものである。
2
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■開会あいさつ■
田屋 裕之(国立国会図書館収集書誌部長)
本日はお忙しいところ、書誌調整連絡会議へお越しいただき、まことにありがとうござい
ます。この会議は国内の書誌調整と書誌データの標準化を図ることを目的として、平成 12
年度から毎年開催しており、今年で 9 回目になります。当館の活動の進捗をご報告するとと
もに、
お越しいただいた皆様方からいろいろとご意見をいただき、書誌に関する理解を深め、
当館の業務改善にも生かしたいと考えています。
今年度は「書誌データの作成・提供の方針:次のステップへ」と題して開催いたします。
詳しくは本日の議事の中で展開されると思いますが、Googleに代表されるような検索エンジ
ンなど、
膨大な電子情報の生産と流通の中で書誌はいかにあるべきなのでしょうか。数年来、
このような課題が非常に問題になっていますが、今日の環境の中で、書誌の意義や役割を問
い 直 し て 、 ま た 再 定 義 す る こ と が 必 要 で は な い か と 考 え て い ま す 。 国 外 で は FRBR
(Functional Requirements for Bibliographic Records: 書誌レコードの機能要件)1、RDA
(Resource Description and Access) 2といった新しい動きも耳にします。
また、当館の組織的なことですが、2008年4月に収集部と書誌部を統合して、新しく巨大
な収集書誌部という部ができました。私はその最初の部長になったわけですが、この組織統
合と並行して、民間のMARCデータの活用などによって業務統合を行い、業務の再編も行う
ことを今進めているところです。
この後、
当館の活動についてご報告をさせていただき、
ご意見を伺いたいと思っています。
また、ご参加の皆様方の活動のご報告と、専門的なコメントを頂戴することによって、今後、
我々の活動の糧とするとともに、皆様方にとっても有意義な会議となることを望みます。始
まりにあたり、一言のごあいさつとさせていただきます。
本日はよろしくお願いいたします。
書誌レコードの機能要件 : IFLA 書誌レコード機能要件研究グループ最終報告 : IFLA 目
録部会常任委員会承認 / 和中幹雄 [ほか] 訳. 日本図書館協会, 2004, 121p. http://www.jla.or.jp/mokuroku/frbr_japanese.pdf, (参照 2009-03-31).
2 “RDA”. http://www.rdaonline.org/, (accessed 2009-03-31).
1
3
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(1) 国立国会図書館からの報告
-書誌データの作成および提供-平成 20 年度の主な動き
本橋
修(国立国会図書館収集書誌部収集・書誌調整課課長補佐)
0. 報告の趣旨
標題は「平成20年度の主な動き」となっていますが、平成19年度書誌調整連絡会議以降の
主な動きをご紹介いたします。
1. 『国立国会図書館の書誌データの作成・提供の方針(2008)
』
『国立国会図書館の書誌データの作成・提供の方針(2008)
』3の策定については、平成19
年度のこの会議でも議論し、その後、2008年3月に方針として取りまとめました。詳しくは
この後に当館の吉本が行う報告「国立国会図書館の新方針の進め方」で取り上げますので、
ここでは割愛します。
方針の策定に関連して、2008年2月に米国議会図書館(LC)の収集・書誌アクセス部長ビ
ーチャー・ウィギンズ(Beacher Wiggins)氏を招へいし、講演会を開催しました。LCの『書
誌コントロールの将来に関するワーキンググループの報告書』(以下、On the Record) 4や
組織再編についてご講演いただき、意見交換を行いました。
2. 収集書誌部の発足
2008年4月に、収集業務と書誌業務の一体的遂行による事務の合理化、効率化を目指して、
これまでの収集部、書誌部を統合しました。具体的な組織の編成については、関連資料1-1
「国立国会図書館収集書誌部組織図」をご覧ください。国内図書、逐次刊行物、外国資料は
受け入れから整理まで同一の課で処理できるような組織に改めました。
3. 国内刊行図書業務の再編
業務フローの見直し、民間MARCの活用、外注範囲の拡大などにより、2009年1月から新
しい業務体制で国内刊行図書の書誌データを作成します。民間MARCの導入については2008
年 7月 に入 札を 行い、 株式 会社 日販 図書館 サービ スが 落札 しまし た。 2009年 1月 から
NS-MARCを使用します。
その一方でオリジナルカタロギングする資料もあり、データを作成する方法は、オリジナ
ルに作成するものと、民間MARCを修正して作成するものとの2通りの方法があります。民
国立国会図書館. “国立国会図書館の書誌データの作成・提供の方針(2008)”.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/housin2008.pdf, (参照 2009-03-31).
4 Working Group on the Future of Bibliographic Control, Library of Congress. On the Record:Report of The Library of Congress Working Group on the Future of
Bibliographic Control. 2008, 44p.
http://www.loc.gov/bibliographic-future/news/lcwg-ontherecord-jan08-final.pdf, (accessed
2009-03-31).
3
4
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
間MARCの基準と当館の基準を包含するよう、記述やタイトルの読み等については、従来よ
りも緩やかな基準を適用します。新しい読みの基準はすでに当館のホームページで公開して
います 5。目録規則の適用細則は改訂を準備しており、2009年に公開する予定です。
国内刊行図書の書誌データに生じる変更としては、例えば基礎書誌レベルの書誌階層が従
来よりも上位のレベルになることが生じます。また、国内刊行洋図書の書誌データも、和図
書と同じ適用細則を使用して作成します。著者標目、分類標目、件名標目については今まで
と変更ありません。これに関連して、JAPAN/MARCの改訂 6を行います。民間MARCの書誌
IDを収めるフィールドを追加するほか、「その他のタイトル標目」のフィールドの収録を和
図書でも開始します。
4. 遡及入力の進展
現在、2005年に策定した通称「遡及計画2005」に基づき、平成18年度から各種資料群の
遡及入力を実施しています。平成20年度の主な実施資料群は、テクニカルリポート、博士論
文などです。また、雑誌記事索引の自然科学編の遡及入力も進めており、平成20年度で1950
年以降採録部分の遡及入力が終了する予定です。これまでの実施状況は、関連資料の1-6「
「遡
及計画2005」の実施状況」をご参照ください。なお、
「遡及計画2005」は平成20年度が最終
年度ですが、今後の計画策定は、これまでの実施内容、未入力の資料群などを整理した上で、
改めて検討を行う予定です。
5.
NDL-OPACの改修状況
2008年3月に書誌詳細表示画面に固有のURLを付与しました。また、2008年10月には普通
件名の「をも見よ」参照形に上位語・下位語等の見出し語を表示するようにし、国内博士論
文を授与大学コードから検索できるようにするなど、NDL-OPACの改修を行いました。
また、2009年2月にNDL-OPACから書誌データをダウンロードする機能 7をリリースしま
す。NDL-OPACの検索結果の集合(一覧表示に表示した書誌)をTSV形式でダウンロードす
ることが可能になります。一覧表示に表示できるのは通常200件までなので、1回にダウンロ
ードできる書誌データも200件までです。それ以上ダウンロードしたい場合は、一覧表示の
ページをめくるごとに200件ずつダウンロードするイメージです。
書誌データの形式はTSV形式であり、MARC形式ではありません。一般の方にも利用しや
すい形式でありますが、内容的には、例えば、内容細目もダウンロード項目に含む予定です
ので、図書館でもご利用いただけるものと思います。
その他、プランゲ文庫、日本占領関係資料は、これまでNDL-OPACでの書誌データの提供
は館内に限っていましたが、権利関係の調整等を行いましたので、2009年4月以降、館外か
らもNDL-OPACで書誌データを検索いただけるようになります。
国立国会図書館. “書誌データ作成ツール:読みについて”.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/yomi.html, (参照 2009-03-31).
6 国立国会図書館. “JAPAN/MARC フォーマットの改訂について”.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/jm2009revision.pdf, (参照 2009-03-31).
7 国立国会図書館. “書誌データ Q&A 「5.国立国会図書館で作成したデータをダウンロード
して使うことはできますか?」
”.
http://www.ndl.go.jp/jp/data/opac_syoshiqa_teikyo.html#a5, (参照 2009-03-31).
5
5
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
6.
雑誌記事索引新着情報のRSS配信
2008年12月から、雑誌記事索引新着情報のRSS配信 8を新たなサービスとして開始します。
これは、雑誌記事索引の新着更新情報を指定した雑誌ごとにRSS配信するものです。
まず、利用者は当館ホームページ上の雑誌記事索引の採録誌一覧を参照して、配信を希望
する採録誌を探します。雑誌記事索引採録誌一覧のタイトルごとにRSSボタンが用意されて
います。ただし、休廃刊等している雑誌もあり、RSSボタンが表示されるものは、現在雑誌
記事索引を採録しているタイトルのみです。登録した採録誌に新しい記事が追加更新される
と、RSSリーダーに雑誌名、論題、著者、巻号、ページといった情報が自動配信されます。
配信データ内のリンクからNDL-OPACの詳細表示画面を表示することも可能なので、配信デ
ータを元にさまざまな利用ができるのではないかと期待しています。
7. 公開講演会「目録の現在とこれから」
2009年2月に「目録の現在とこれから-“目録の危機”の時代からの展望-」9と題する公
開講演会を開催します。講師は本日おいでいただいている上田先生、渡邊先生にお願いし、
当館からも報告を行います。関連資料1-7に詳細があります。ご参加をお待ちしております。
また、関連資料にNDL-OPACの収録件数、整理統計なども載せました。ご参照ください。
国立国会図書館. “雑誌記事索引の RSS 配信について”.
http://www.ndl.go.jp/jp/data/sakuin/about_rss.html, (参照 2009-03-31).
9 国立国会図書館. “公開講演会「目録の現在とこれから-"目録の危機"の時代からの展望
-」
”. http://www.ndl.go.jp/jp/service/event/bib_lecture.html, (参照 2009-03-31).
8
6
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
【関連資料 1-1】
国立国会図書館収集書誌部組織図 (統合前後の関係を示す)
(統合前 8 課 27 係)
収集部
→(統合後 5 課 23 係)
収集書誌部
収集企画課
国内資料課
収集・書誌調整課(6 係)
○ 旧収集部収集企画課、旧書誌部書誌調整課の事務
外国資料課
資料保存課
書誌部
国内資料課(6 係)
○ 旧収集部国内資料課の事務(逐次刊行物受理事務を除
く)、旧書誌部国内図書課の事務
○ 外部データ等も活用し、国内図書の受入れから整理まで
を同一課で処理
書誌調整課
国内図書課
外国図書・特別資料課
逐次刊行物課
逐次刊行物・特別資料課(4 係)
○ 旧収集部国内資料課の逐次刊行物受理事務、旧書誌
部逐次刊行物課の事務、同外国図書・特別資料課の特別
資料整理の事務
○ 逐次刊行物の受理から整理、索引付与までを同一課で
処理
外国資料課(4 係)
○ 旧収集部外国資料課及び旧書誌部外国図書・特別資料
課の外国資料整理の事務
○ 外国資料の受入れから整理までを同一課で処理
資料保存課(3 係)
○ 旧収集部資料保存課の事務
7
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
【関連資料 1-2】
NDL-OPAC書誌データ件数 平成20年11月24日現在
書誌データ(資料群別)
件数
備考
和図書
3,708,136 明治以降出版分
洋図書
1,140,033
和雑誌新聞
137,669
洋雑誌新聞
57,422
電子資料
34,108
和古書・漢籍
66,757 江戸時代以前の日本語資料、清朝以前漢籍
博士論文
510,031 国内は1968年以降受入分
地図
187,980 明治以降出版分
音楽録音・映像資料
548,475
蘆原コレクション
規格・テクニカルリポート類
67,719
2,228,739
点字図書・録音図書全国総合目録
408,912
日本占領関係資料 *1
290,137
プランゲ文庫 *1
小計
雑誌記事索引
32,227
9,418,345 うちインターネット提供合計9,095,981件
8,850,183 1948年以降入力分
合計
18,268,528 うちインターネット提供合計17,946,164件
*1 データの公開範囲は館内用に限り、インターネット用では公開していない
典拠データ
著者名
件名
件数
個人名
690,053
団体名
159,561
個人名
35,736
団体名・地名
43,987
家族名
2,006
統一タイトル
3,294
普通件名
合計
備考
89,000 細目付きを含む
1,023,637
8
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
【関連資料1-3】
9
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
【関連資料1-4】
書誌データ作成統計
(平成19年度)
新規
本年度末
現在
計(件)
図書
雑誌
新聞
非図書
資料
索引
計(件)
日本語
中国語・朝鮮語
アジア諸言語
以外の外国語
アジア諸言語
計(件)
日本語
中国語・朝鮮語
アジア諸言語
以外の外国語
アジア諸言語
計(件)
日本語
中国語・朝鮮語
アジア諸言語
以外の外国語
アジア諸言語
計(件)
マイクロ資料
映像資料
録音資料
機械可読資料
地図資料
楽譜資料
カード式資料
静止画像資料
博士論文
文書類
点字資料
その他
雑誌記事索引
(件)
更新
東京本館
関西館
国際
子ども
図書館
計
17,442,792 1,457,596 1,362,918
計
東京本館 関西館
国際
子ども
図書館
93,611
1,067
60,252
58,840
1,412
5,135,790
3,623,803
200,864
170,381
138,200
3,642
152,348
134,828
30
16,966
3,372
2,545
1,067
―
1,067
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
1,300,359
28,032
17,490
10,542
―
―
―
―
―
10,764
204,206
141,134
6,963
507
4,439
3,636
232
―
3,906
3,636
―
507
533
―
232
―
14,971
12,439
196
―
13,575
12,439
―
―
1,396
―
196
―
55,345
535
270
265
2,319
1,136
1,183
764
28,809
27,077
467
36
188
164
13
―
171
164
―
36
17
―
13
17
769
703
4
―
753
703
―
17
16
―
4
1,176
8
7
1
―
60
50
10
89
3,477,573
2,237,201
65,642
525,735
31,528
183,165
392
185
4,478
402,904
21,878
4,465
0
3
561,457
20,086
33,186
417,673
5,684
27,118
23
13
1,011
56,535
0
128
0
―
485,362
685
33,184
417,673
5,527
27,118
23
13
1,011
―
0
128
―
3
76,095
19,401
2
0
157
0
0
0
0
56,535
0
0
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
―
8,596,414
721,131
721,131
―
―
44,512
44,512
―
―
0
0
―
0
―
0
0
―
0
0
2
0
0
―
0
―
0
0
―
0
―
2
0
備考1: 第1種資料の書誌データ作成を対象。
備考2:「図書」は冊子体の地図、楽譜および大活字資料を含む。
備考3:「雑誌」の「本年度末現在」は、非図書形態のもの18,176件を含む。
備考4:「新聞」の「本年度末現在」は、非図書形態のもの20,369件を含む。
『国立国会図書館年報 平成19年度』 統計 第10より
10
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
【関連資料1-5】
『日本全国書誌』収録データ件数推移 単位:件
発行年
総件数
1号平均
1982年
56,940
1,139
1987年
58,666
1,173
1992年
69,339
1,387
1997年
77,609
1,552
2002年
134,477
2,690
2007年
161,737
3,235
※タイトルは1981年に『納本週報』から解題。
※2001年以前は『日本全国書誌』本編に収録されたデータ数(JP番号付与数)。
※2002年以降は逐次刊行物も統計に含める。
※2003年から音楽録音・映像資料、地図、楽譜、教科書、電話帳の収録開始。
万件
18
千件
10
『日本全国書誌』収録データ件数
9
16
8
14
収録データ数
7
1号平均
12
6
10
5
8
4
6
3
4
2
2
1
0
0
1982年
1987年
1992年
1997年
11
2002年
2007年
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
【関連資料1-6】
「遡及計画 2005」の実施状況(平成 20 年 10 月末現在)
(1) 遡及入力実施資料群
年
資
度
平成18年度
平成19年度
料
群
実
施
学習参考書(NDC分類及び
NDLC分類)
5,891件
40,000件
日系移民関係資料(和図書)
1,623件
45,366件
中国語図書
10,106件
7,440件
23,195件
415,055件
14,541件
録音資料
1,337件
機械可読資料
1,202件
643件
静止画資料
ヒンディー語・サンスクリッ
ト語図書
テクニカルリポート
国内博士論文
NDC分類 昭和23-39年受入分
NDLC分類 昭和44-61年受入分
いずれも小・中学用
都市地図・観光地図、外邦図、海図など。
「遡及計画2002」から継続、平成19年度
も継続。
1979年以降受入れ分まで入力。
2,153件
ペルシア語図書・アラビア語
図書
戦前期和図書
国内博士論文
考
2,759件
国内博士論文
音楽資料・映像資料
(音楽映像DBからのデータ
移行分)
映像資料
備
466件
原子炉設置(変更)許可申請
書
加藤まこと展覧会図録コレク
ション
地図資料
地図資料
平成20年度
数
(件数・タイトル数等)
41,237件
未入力分
主題図(地質図など)、外国海図
平成18年度より継続。
LP・EPなどのアナログレコード約24万
件、音楽CD約16万件、映像資料約1万件
レーザーディスク等
録音カセット等
紙芝居等
平成18年度より継続。1971年以降受入れ
分まで入力。
574件
約40万件 実施中
約16,000件 平成18年度より継続。10月末段階では、
(10月末現在、 1968年以降受入れ分まで入力済。遡及計
入力進行中) 画全体(約175,000件)の65%完了、残数
は約62,000件。
12
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
(2) 雑誌記事索引データ遡及入力
年
度
資
料
群
実施数(件数)
平成18年度
雑誌記事索引
(科学技術編)
415,766件
平成19年度
雑誌記事索引
(自然科学編)
263,169件
平成20年度
雑誌記事索引
(自然科学編)
備
考
「遡及計画2002」から継続。
調整中 今年度で雑誌記事索引の遡及入力は終了
の予定。
(3) 遡及入力準備中資料群
実施年度未
定
地図資料
約10,000件
音楽・映像資料
約11,000件
国際機関資料
約33,000件
民間小冊子(1986年以前刊行
分)
暫置資料(洋図書)
約6,000件
トルコ語資料
約1,000件
インドネシア語・マレーシア
語・タガログ語資料
約2,500件
約5,000件
13
外国地形図・地勢図等。
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
【関連資料 1-7】
公開講演会「目録の現在とこれから―“目録の危機”の時代からの展望―」
ウェブ上でさまざまな情報が自由に使えるようになってきた近年、情報検索のいわば老舗であ
る図書館の“目録の危機”が問われるようになっています。
目録は、これまで何を目指し、どのような位置づけにあり、将来に向けてどのようなアプロー
チをしていくのでしょうか。また、FRBR(書誌レコードの機能要件 Functional Requirements
for Bibliographic Records)、新目録規則 RDA(資源の記述およびアクセス Resource Description
and Access)など、目録の新しい仕組みの考えかたはどうなっているのでしょうか。さらに、ウ
ェブやメタデータの世界との関係は?
この講演会は、そうした目録の現在とこれからを、なるべく分かりやすくとらえ直そうとの意
図により、図書館員および図書館の情報検索に関心をもつ方々をおもな対象として企画したもの
です。みなさまのご参加をお待ちしております。
○日時 平成 21 年 2 月 5 日(木)13:30~17:00
○会場 国立国会図書館東京本館 新館講堂
○内容・講師(演題はいずれも仮題)
・総論 目録の動向、位置づけおよび展望
上田 修一氏(慶應義塾大学文学部教授)
・各論1 新しい目録の考えかた――FRBR、RDA を中心に
渡邊 隆弘氏(帝塚山学院大学人間文化学部准教授)
・各論2 これからの目録へのアプローチ――国立国会図書館の事例を中心に
中井 万知子(国立国会図書館収集書誌部)
○お申込方法
国立国会図書館ホームページの以下のページから、平成 21 年 1 月 29 日(木)までにお申
し込みください。
http://www.ndl.go.jp/jp/service/event/index.html
当館ホームページ(http://www.ndl.go.jp)
トップ−「クイックリンク」-「イベント情報」
※平成 20 年 12 月 20 日頃当該ページを開設予定です。
14
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(2) 国内の動向
・日本図書館協会の委員会からの報告 [1]
中井万知子(日本図書館協会目録委員長)
1.
日本図書館協会(JLA)目録委員会について
2007年5月から、永田治樹委員長のあとを引き継いで、第31期JLA目録委員会の委員長を
務めています。現在の目録委員会の委員は7名、内訳は研究者が2名、大学図書館の方が1名、
国立情報学研究所(NII)の方が1名、国立国会図書館(NDL)から3名です。本日出席され
ている渡邊先生も委員の一人です。現在、公共図書館からの委員がいないので、目録委員会
としては公共図書館の方にも是非委員に加わっていただきたいと思っています。
前期委員会で『日本目録規則1987年版改訂3版』を2006年6月に刊行し、1987年版につい
ての作業を完了しました。今期委員会のタスクは、次の『日本目録規則』
(NCR)20XX年版
に向けての検討であり、国際的な目録規則の改訂の動向を調査して、方向性と課題を議論し
ているところです。2008年は、二つの基準の改訂作業が最終段階に入っており、その動向を
注視するのが一番大きな仕事になっています。ここではその状況と、目録委員会とのかかわ
りについて簡単にご紹介したいと思います。
2.
国際目録原則覚書
一つは『国際目録原則覚書』
(Statement of International Cataloguing Principles)です。
これは、各国が目録規則を作る際の基礎となる原則という位置付けをもっています。1961年
に制定された、通称「パリ原則」を一新するものです。『国際目録原則覚書』は、1998年の
IFLAのグループによって策定されたFRBRの概念モデルに基づいて定められています。
経緯としては、「国際目録規則に関する国際図書館連盟専門家会議」(IME ICC)が2003
年7月に検討を開始しました。今まで、国際図書館連盟(IFLA)の大会の開催にあわせて世
界の5か所でこの会議を開催し、それぞれの地域の目録専門家が草案を巡って議論し、その
たびに投票を行ってきました。IFLAソウル大会にあわせて2006年8月に開催された第4回会
議には、日本から11名の方が参加しました。そして、2008年4月10日に最終草案10が公開さ
れ、2008年6月末を期限に、IME ICCへの出席者だけではなく、世界的にレビューおよび投
票が行われました。目録委員会でも、最終草案について議論し、コメント付きの賛成票を送
付しました。微細な語句の修正等も含め、全部で9項目の指摘を行いました。
その世界的レビュー結果は賛成が多く、2008年8月のIFLAケベック大会の目録分科会にお
いて、レビュー結果を反映した最終版を2008年9月に公表するとの報告がありました。実際
には、この最終版は、2008年10月31日付けでIME ICC議長のバーバラ・ティレット(Barbara
Tillett)氏から、これまでのIME ICC参加者にメールで送付されました。最終版には、章立
ても含めて、4月の最終草案から大幅な変更があり、驚きました。
国立国会図書館. “国際目録原則覚書(2008 年 4 月 10 日版)”.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/kokusaimokuroku20080410.html, (参照 2009-03-31).
10
15
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
最終版への投票は2008年11月17日に締め切られ、現在の目録委員会から渡邊委員と横山委
員がIME ICC参加者として投票しました。最終版は、2008年中の最終決定を目指しています。
『国際目録原則覚書』の最終版にいたる各草案の翻訳は、IME ICCからの要請により、
NDLが日本語訳を行い、IFLAのサイトやNDLのホームページに掲載してきました。今後、
最終版が確定し次第、日本語訳も確定する予定です 11。参考資料1に、10月31日に送付され
た最終版の序論部分の仮訳を付けたのでご参照下さい。
3.
RDA
もう一つはRDAです。これも『国際目録原則覚書』と同様に、FRBRの概念モデルに基づ
いています。RDAは、『英米目録規則第2版』(AACR2)の改訂版として、最初はAACR3と
呼ばれ、2004年から改訂作業が行われてきました。そのドラフトが章ごとに順次公表されて
いき、目録委員会ではドラフトが公表されるごとにレビューを実施しています。その過程で
名称がAACR3からRDAへ変わり、構成の変更も何度もありました。構成は2007年12月に公
開されたドラフトにおいて最終的に固まった模様です。
このRDAについては、2008年1月にLCの『On the Record』にて「改訂を休止すべし」と
いう勧告が出るなどし、2008年8月に最終草案を公開する予定でしたが、ようやく2008年11
月17日に全ドラフトのPDF版が公表されました。本来はオンライン版も公表の予定でしたが、
PDF版のみが公開されました。目録委員会としては、今後レビューを継続する予定です。
参考資料2としてRDAの構成を付けました。今までのAACR2の構成とは全く違い、FRBR
とFRAD(Functional Requirements for Authority Data:典拠データの機能要件)に基づ
いた章立てをしている点が大きな特徴です。また、RDAは記録すべき要素を定めることを目
的としていて、データの構成方法については定めていません。他に特徴として、2007年に
DCMI(Dublin Core Metadata Initiative)が公表したDCMI抽象モデル(DCMI Abstract
Model) 12などのメタデータのデータモデルを採用することにより、セマンティック・ウェ
ブの新しい環境に対応しようという意図を持つことが挙げられます。
4.
NCRの今後
NCR は、もともと MARC レコードを前提として、書誌階層という構造的な考え方を導入
しています。一方、
『国際目録原則覚書』や RDA が基づく FRBR の考え方は、書誌的な実
体を特定して関連付けるという実体関連モデルの考え方であり、書誌階層の概念とはなじみ
にくいため、両者にはかなりの違いがあると思います。今後 NCR がどのような方向へ進む
べきか、RDA のレビューと並行して議論していかなくてはならないと考えています。
その後、2009 年 2 月に『国際目録原則覚書』が最終的に制定されたため、日本語訳を確
定し、2009 年 3 月 17 日付けで NDL のホームページに掲載した。
国立国会図書館. “国際目録原則覚書 日本語訳”
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/ICP-2009_ja.pdf, (参照 2009-03-18).
12 Dublin Core Metadata Initiative. “DCMI Abstract Model”. 11
http://dublincore.org/documents/abstract-model/, (accessed 2009-03-31).
16
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
<参考資料1>
国際目録原則覚書(最終草案 2008 年 10 月 31 日付)より 序論の仮訳
広く「パリ原則」として知られている「原則覚書」は、1961 年に国際目録原則会議で採択さ
れた 13。目録法の国際的標準化の基礎を担おうとするその目的は、確実に達成されている。
すなわち、その後に世界中で発展した目録規則のほとんどは、厳密に、または少なくとも相
当程度に、この原則に従ったものである。
その後 40 年以上が経過し、目録作成者とそのサービス対象者が世界中で OPAC(オンライ
ン閲覧目録)を利用するにつれ、共通の国際的な目録原則をもつことは一層望ましいことと
なっている。21 世紀初頭の現在において、オンラインによる図書館目録やその先にあるもの
にふさわしい原則にパリ原則を適合させようという努力が IFLA によって行われた。その原
則の第一は、目録利用者の利便性に資することである。
この覚書は、パリ原則に取って代わり、パリ原則の適用範囲を単にテキストから成る著作か
らあらゆる種類の資料にまで、また、単に記入の選定と形から図書館目録に用いられる書誌
データおよび典拠データのあらゆる面にまで拡張するものである。この覚書は、原則および
目標(すなわち、目録の機能)のみでなく、国際的に目録規則が備えるべき指針となる規定、
また探索および検索の能力に関する指針をも備えている。
この覚書が範囲とするのは、次のものである。
1.
2.
3.
4.
5.
6.
7.
適用範囲
一般原則
実体、属性、および関連
目標-目録の機能
書誌記述
アクセスポイント
探索能力の基盤
この覚書は、世界の偉大な目録法の伝統 14と、パリ原則を主題目録法の範囲にまで拡大する
IFLAによる「書誌レコードの機能要件」
(FRBR)の概念モデル上に構築されている 15。
この原則が、書誌データおよび典拠データの国際的な共有を増大させること、そして国際的
な目録規則を発展させるため力を尽くす目録規則の作成者の導きとなることを願うものであ
る。
International Conference on Cataloguing Principles (Paris : 1961). Report. – London :
International Federation of Library Associations, 1963, p. 91-96. このほか Library Resources
and Technical Services, v.6 (1962), p. 162-167 および Statement of principles adopted at the
International Conference on Cataloguing Principles, Paris, October, 1961. – Annotated
edition / with commentary and examples by Eva Verona . – London : IFLA Committee on
Cataloguing, 1971.にも掲載。
14
Cutter, Charles A.: Rules for a dictionary catalog. 4th ed., rewritten. Washington, D.C.:
Government Printing office. 1904,
Ranganathan, S.R.: Heading and canons. Madras [India]: S. Viswanathan, 1955, および
Lubetzky, Seymour. Principles of Cataloging. Final Report. Phase I: Descriptive
Cataloging. Los Angeles, Calif.: University of California, Institute of Library Research,
1969.
15 このモデルは、典拠データの機能要件(Functional Requirements for Authority Data
(FRAD))および件名典拠レコードの機能要件(Functional Requirements or Subject Authority
Records (FRSAR))によって早晩拡張されることになっている。
13
17
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
<参考資料2>
RDA(2008 年 11 月 17 日公開ドラフト)の構成(訳は仮訳)
Introduction (序論)
[Attributes(属性)]
Section 1
Recording attributes of manifestation and item
(体現形および個別資料の属性の記録)
Chapter 1. General guidelines on recording attributes of manifestations
and items
Chapter 2. Identifying manifestations and items(体現形および個別資料の
識別)
Chapter 3. Describing carriers(キャリアの記述)
Chapter 4. Providing acquisition and access information(収集およびアク
セス情報の提供)
Section 2
Recording attributes of work and expression
(著作および表現形の属性の記録)
Chapter 5. General guidelines on recording attributes of works and
expressions
Chapter 6. Identifying works and expressions(著作および表現形の識別)
Chapter 7. Describing content(内容の記述)
Section 3
Recording attributes of person, family, and corporate body
(個人、家族および団体の属性の記録)
Chapter 8. General guidelines on recording attributes of persons,
families, and corporate bodies
Chapter 9. Identifying persons(個人の識別)
Chapter 10. Identifying families(家族の識別)
Chapter 11. Identifying corporate bodies(団体の識別)
Section 4
Recording attributes of concept, object, event, and place
(概念、物、出来事および場所の属性の記録)
*2009 年時点では Chapter16 のみを制定
Chapter 12. General guidelines on recording attributes of concepts,
objects, events, and places
Chapter 13. Identifying concepts(概念の識別)
Chapter 14. Identifying objects(物の識別)
Chapter 15. Identifying events(出来事の識別)
Chapter 16. Identifying places(場所の識別)
[Relationships(関連)]
Section 5
Recording
primary
relationships
between
work,
expression,
manifestation, and item
(著作、表現形、体現形および個別資料の間の主要な関連の記録)
Chapter 17. General guidelines on recording primary relationships
between a work, expression, manifestation, and item
Section 6
Recording relationships to person, families, and corporate bodies
associated with a resource
(リソースと結びつく個人、家族および団体の関連の記録)
Chapter 18. General guidelines on recording relationships to persons,
families, and corporate bodies associated with a resource
Chapter 19. Persons, families, and corporate bodies associated with a
work(著作と結びつく個人、家族および団体)
Chapter 20. Persons, families, and corporate bodies associated with an
expression(表現形と結びつく個人、家族および団体)
Chapter 21. Persons, families, and corporate bodies associated with a
manifestation(体現形と結びつく個人、家族および団体)
Chapter 22. Persons, families, and corporate bodies associated with an
18
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
item(個別資料と結びつく個人、家族および団体)
Recording subject relationships
(主題の関連の記録) *2009 年時点では制定しない
Chapter 23. General guidelines on recording the subject of a work
Section 8
Recording relationships between works, expressions, manifestations, and
items(著作、表現形、体現形および個別資料の間の関連の記録)
Chapter 24. General guidelines on recording relationships between
works, expressions, manifestations, and items
Chapter 25. Related works(関連する著作)
Chapter 26. Related expressions(関連する表現形)
Chapter 27. Related manifestations(関連する体現形)
Chapter 28. Related items(関連する個別資料)
Section 9
Recording relationships between persons, families, and corporate bodies
(個人、家族および団体の間の関連の記録)
Chapter 29. General guidelines on recording relationships between
persons, families, and corporate bodies
Chapter 30. Related persons(関連する個人)
Chapter 31. Related families(関連する家族)
Chapter 32. Related corporate bodies(関連する団体)
Section 10
Recording relationships between concepts, objects, events, and places
(概念、物、出来事および場所の関連の記録)
*2009 年時点では制定しない
Chapter 33. General guidelines on recording relationships between
concepts, objects, events, and places
Chapter 34. Related concepts
Chapter 35. Related objects
Chapter 36. Related events
Chapter 37. Related places
Appendix(付録)
A. Capitalization. B. Abbreviations. C. Initial articles.
A~M
D. Record syntaxes for descriptive data E. Record syntaxes for access
point control data F. Additional instructions on names of persons.
G. Titles of nobility, terms of rank, etc. H. Dates in the Christian
calendar. I. Relationship designators: Relationships between a resource
and persons, families, and corporate bodies associated with the resource.
J. Relationship designators: Relationships between works, expressions,
manifestations, and items. K. Relationship designators: Relationships
between persons, families, and corporate bodies. L. Relationship
designators: Relationships between concepts, objects, events, and places.
M. Complete examples.
Section 7
19
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(2) 国内の動向
・日本図書館協会の委員会からの報告 [2]
金中 利和(日本図書館協会分類委員長)
1. 分類委員会の体制
毎月第2火曜日に3時間ほど開いており、会議の記録は2006年4月からホームページ上で公
開 16していますので、委員会の動きについてはそちらをご覧ください。
分類委員会の構成は、当初、委員6名、事務局1名で発足しましたが、日本十進分類法(NDC)
の改訂作業のために現在は9名に増えました。私の他に大学教員2名、NDLから2名、公共図
書館、大学図書館の現職の整理経験者が2名、民間MARC作成機関から現役の方1名とOBの
方1名という体制で活動しています。
2.
『日本十進分類法 新訂10版』の基本方針
2004年4月の『図書館雑誌』の誌上で、NDC10版作成の基本方針を3項目掲げました。そ
の3項目は以下のとおりで、9版を作成したときの改訂方針と大きな違いはありません。
(1) 9版の改訂方針を踏襲する。
(2) 新主題の追加を行う。
(3) 解説、分類項目、注記、参照、例、補助表、相関索引など、全般にわたって必要な修正・
追加を行う。
(1)の9版の改訂方針は『NDC本表編』の解説2.9に載っています。今回の改訂でもNDCの
根幹にかかわる体系の変更は行わないことを基本に据えています。ただし、情報科学(007)
と情報工学(548)については、出版されている冊数が膨大であること、その振り分けに各
図書館が苦労していることを考慮し、より詳細に細分しつつ、両者の統合が可能であるかを
検討しています。純粋に機械的なハードの面を全部0類へ持っていくことはできませんが、
ある程度統合する方向で考えています。また、10版でも、9版に引き続き、書誌分類表を目
指します。しかし、NDCは書架分類としての使用も多いので、その点は配慮して進めます。
他の二つの方針は当然のことです。(3)の相関索引については、言葉を増やしていく考えで
す。NDCの分類記号を使った主題検索は一般の方には難しいでしょう。基本件名標目表
(BSH)や国立国会図書館件名標目表(NDLSH) 17が充実してきているので、これらの言
葉をNDCの相関索引と統合して、件名標目の言葉から対応するNDCの分類記号へ導き、関
連する情報を検索できる仕組みを考えています。二つの件名標目表の言葉や代表分類記号の
日本図書館協会. “分類委員会”. http://www.jla.or.jp/bunrui/index.html, (参照
2009-03-31).
17 国立国会図書館. “国立国会図書館件名標目表 2007 年度版”.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/ndl_ndlsh.html, (参照 2009-03-31).
16
20
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
調整が必要ですし、件名標目表の言葉をすべて相関索引に統合するのは不可能ですが、検討
していきたいと思います。冊子体ではこのような形の相関索引は載せられませんが、ウェブ
上では実現できるのではないでしょうか。
3.
『日本十進分類法 新訂10版』の検討・試案の作成
基本方針を出した翌月の2004年5月から各類の検討を始めています。当初は3、2、7、0、
5、4、1、8、9、6類の順で、2008年までに改訂試案を公表することを想定していましたが、
想定より時間がかかり、
『図書館雑誌』の2008年10月号でようやく最初の3類の試案を公表し
ました。
『図書館雑誌』ではページ数に制約がありますが、分類委員会のホームページ上では
PDF版とテキスト版の両方でより詳細な改訂の試案を掲載しています。
今後は、2類の試案を『図書館雑誌』2008年12月号に発表します。7類の試案は2009年2月
号を予定しており、以後2か月ごとに試案を公表していきたいと思います。その他の類も、2
か月ごとに公表できない場合でも、3~4か月ごとには公表したいと思います。
「解説」の内容も9版よりも充実させ、2010年末までに全体の試案を公表することを目標
としています。
4.
NDCの維持・管理
利用者等から、NDCに関する不適切な表現や誤植が指摘をされた場合は、次の版に反映す
ることを原則としています。その他、実務上の問い合わせにも回答しています。
5. 「図書の分類に関する調査」の実施
毎年JLAの図書館調査事業委員会が担当している「日本の図書館」調査の付帯調査として、
「図書の分類に関する調査」
を実施しました。
全国の全公共図書館3,126館および大学図書館、
短大、高等専門学校図書館1,660館を対象としました。2008年4月1日現在で実施し、5月末に
回収しました。公共図書館は約3,000館程度、大学図書館等は1,300館程度の回収があったよ
うです。結果が出ましたら『図書館雑誌』と分類委員会のホームページ等でお知らせしたい
と思います。
21
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(2) 国内の動向
・日本図書館協会の委員会からの報告 [3]
柴田 正美(日本図書館協会件名標目委員長)
1. 件名標目委員会の概要
件名標目委員会は、本日出席している北先生、渡邊先生、私の3名と公共図書館のOBの方
1名で、関西で活動しています。
2. 件名標目委員会の近況
全国図書館大会で、整理技術に関係する方々の考えを集めるということを2007年から2回
続けて行いました。その過程で件名標目を中心とした検索についての論議が相当進んできた
と思っています。Googleのような検索エンジンが普及してきて、それをどのようにBSH、あ
るいは件名検索に反映すべきかを、今後検討していかなければならないと考えています。
3.
BSHを取り巻く課題
BSHについては、件名標目委員会で、「図書館―歴史」という形で言葉をつないでいく事
前結合方式の件名標目表として作成してきました。
しかし、JLAがJAPAN/MARCをベースにして作成しているJ-BISCの件名検索は、事前結
合ではなく事後結合方式をとっています。J-BISCでは「図書館」と「歴史」を別々に入力し
て検索します。このように、JLAの中でBSHと異なる動きが出てきており、BSHのような事
前結合方式の件名標目表の作成の意味を考える課題が出てくると思っています。
22
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(2) 国内の動向
・図書館からの報告[1]
大串 純子(東京都立中央図書館)
1.
東京都立図書館の現在
『都立図書館改革の具体的方策』18を2006年8月に発表して、平成19年度~21年度の改革3
か年計画の2年目を迎えています。数々の重点事業を展開していますが、整理関係では、
「蔵
書の充実」があります。
現在、中央図書館は利便性の高いワンストップサービス等の導入のための施設改装工事中
で、2009年の1月4日の13時にリニューアルオープンします。資料費はこの3年ほど増えてお
り、和図書の整理対象冊数も伸びています。平成21年度の整理計画冊数は4万9530冊の予定
で、ほとんどが1冊1書誌です。
2.
業務の一元化
従来は、収集と整理とサービスを一緒に行っていた部門がありました。例えば、
「東京資料」
は、以前は「東京室」という部屋で収集、整理から提供まで担当していました。しかし、現
在この「東京資料」は整理係で整理をしています。同様に、児童書や児童研究書、また紙芝
居などの資料も整理係で整理をしています。このように、整理業務を一本化することで効率
化を図っています。
また、パンフレットのように、データ化されない資料があることも、ワンストップサービ
スを展開するうえではわかりにくいということで、一枚ものの資料でも他の資料と同様に整
理することにしました。平成20年度はこうした資料の整理も増えています。
3.
都立図書館における書誌データの作成
目録規則はNCR1987年版の改訂2版に準拠しています。分類表はNDC9版を使っています。
全資料同一レベルで整理する点が特徴です。典拠データは個人名、団体名、地名の三つを作
成しています。また、書誌には件名標目を付与しています。重点サービスの一つとして「闘
病記文庫」をこの3年ほど展開していて、
「闘病記」という件名とともに病名の件名を付けて
います。こうした具体的な病名の件名を付けるときにはBSHだけでは足りず、JAPAN/MARC
やNDL-OPACを参照してNDLSHを採用することもしています。
請求記号は1書誌1記号とし、文学と伝記には著者記号、被伝者記号を付けています。また、
シリーズ管理も継続して維持しています。
4.
OPAC
都立図書館のOPACは資料の受入処理が終了した時点から検索できるため、整理が完了し
東京都教育委員会. “都立図書館改革の具体的方策について”.
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr060824a.htm, (参照 2009-03-31).
18
23
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
ていないデータも検索できます。平成19年度のアクセス数は4,129,570件でした。
5.
有効性の検証
書誌データについての客観的評価として、有効性の検証が必要だと考えています。2009年
1月に、サービス部門の協力のもとにサービス窓口の検索端末でログを採集し、どのような
ものがデータとして有効なのかを解析することを試みています。
6.
課題
(1) 整理冊数増への対応と業務体制の見直し
整理冊数が増加していますが、職員数が増えることは期待できません。業務体制を見直し
ていく必要があると考えています。システムも2000年に現在のシステムになってから8年経
ちますが、更新の計画は具体化していません。データ作成の環境が大きく変化している中で
の業務体制の見直しについては、狭義には次のシステム更新のこととなりますが、広義には
サービス全体のこととして検討しなくてはなりません。
(2) データの入力マニュアルの平準化
現在、都立図書館ではJAPAN/MARCとTRC MARCを使って整理をしています。独自入力
も1割程度ですが行っています。MARCの構成の違いやタグの違い等に対応するために、今
はマニュアルが非常に細かく分けられています。しかし、利用者にとってはMARCの違いは
関係ありませんし、データ入力を外部へ委託するときは平準化されたマニュアルでなければ
効率化を図れません。これまでの考え方を変えて、マニュアルを平準化していかなければな
らないと思っています。
(3) ウェブ情報へのメタデータ付与
ウェブ情報については、東京都のホームページにいろいろなコンテンツがあり、それらは
採取しておかなくてはならないと思っています。現在は、採取したコンテンツにメタデータ
を付与するための実験を行っています。
24
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(2) 国内の動向
・図書館からの報告[2]
多田 智子(早稲田大学図書館)
1.
早稲田大学図書館システム「WINE」
(1) WINE書誌・所蔵レコード数
WINE に 登 載さ れ てい る レ コ ー ド 数は 、 2008 年 4 月 1 日 現 在 書 誌2,535,775 件 、 所蔵
4,073,132件です。書誌の増加数は前年比153,536件、所蔵の増加数は前年比109,477件。
通常、書誌の増加数よりも所蔵の増加数のほうが多くなると思いますが、WINEでは電子
ジャーナルや電子ブックといった電子情報資源の書誌を所蔵なしで取り込むため、所蔵を超
える書誌数が登載される結果になっています。
(2) WINE収録対象図書館・図書室
早稲田大学には中央図書館をはじめ、各キャンパスに「キャンパス図書館」があります。
他に、
早稲田キャンパスには、各学部に教員と大学院生以上を対象とした学部
「教員図書室」、
学部学生を対象とした「学生読書室」があります。WINEでは、これらあわせて20か所以上
の図書館、図書室を収録対象としています。
(3) WINE収録対象資料
図書をはじめ、新聞、雑誌、マイクロ資料、AV資料、電子ジャーナル・電子ブック・CD-ROM
などの電子資料、学位論文、古典籍を収録対象としています。AV資料は音声・映像ともにあ
ります。学位論文は目録情報のほかに、許諾のあるものには概要書と全文のPDFを付けてい
ます。古典籍については、古典籍総合データベース 19を展開しており、書誌とあわせて画像
も提供しています。
マイクロ資料、洋書、古典籍、AV資料には遡及入力の完了していない資料があります。契
約データベースと早稲田大学リポジトリは、WINEの収録対象外としています。
(4) WINEにおける書誌データの作成方法・参照MARC
欧文、中国語、ハングル、キリル等、日本語以外の図書・雑誌はOCLCデータを利用し、
OCLCコネクションを通じてオンラインで書誌を作成しています。
和図書、和の映像資料はNS-MARCを参照、MARCを取り込むのではなく、参照してデー
タを作成しています。
和雑誌はNACSIS-CATの書誌データに準拠します。ただし、先に述べましたように、洋雑
誌はOCLCデータを利用して書誌を作成しますので、雑誌タイトルの変遷扱いに差異が生じ
ます。
早稲田大学図書館.“古典籍総合データベース”. http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/,
(参照 2009-03-31).
19
25
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
電子ジャーナル書誌は、Serials Solution社の製品を利用した取り込みを行っています。電
子ブックのうちSpringer社から提供されるものは、出版社サイトから直接、定期的にMARC
を取り込みます。音楽資料はNHK-MARCを参照しています。
(5) OCLCへの和書データの提供
1993年、1998年とOCLCへ和書データを送付しました。その後、2004年からは定期的に
和書データを提供しています。これまでに約92万件のデータを提供し、現在は毎月和書デー
タを送付しています。
2.
早稲田大学図書館における目録業務の現状
(1) 組織改編と業務委託
これまでは各図書館、図書室でそれぞれ資料の選択、発注、受入、整理等をしてきました
が、2003年に中央図書館に資料管理課という課を設け業務委託を導入し、業務の集中、効率
化を図りました。その後現在では、目録業務、発注、受入、雑誌業務等に業務委託を順次拡
大してきています。
(2) 古典籍総合データベース
2005年に古典籍総合データベースプロジェクトを発足し、現在4年目に入っています。書
誌の作成は終わりましたが、画像撮影が追いつかず、公開が若干遅れている部分があります。
第10回図書館総合展で早稲田大学のブースを設け、古典籍総合データベースをご案内しま
した。
担当者から非常に好評だという報告がありました。
今
後 はプロジェクト形式ではなく、
経常業務の中で維持していけるよう再検討の時期に入っています。
(3)出版社サイト等からのMARCの取得の一例
契約しているSpringer社のサイトのリンクから提供される電子ブックの書誌を、何か月か
に一度、直接取得しています。
(4) 業務委託にともなう職員の業務内容の変化
委託業務との切り分けを行い、現在の職員の業務は目録の点検業務あるいは典拠管理業務
へとシフトしています。職員は一から目録を作成する業務には携わっていない状況です。
3.
目録業務における問題点と今後の課題
(1) 遡及入力と未整理資料への対応
学内の遡及入力を急ぎ完了させるべく取り組んでいます。また、かなり以前に購入した洋
資料を未整理のまま中央図書館に収蔵しており、こちらも至急整理する必要があります。
(2) 電子情報資源の管理
電子ジャーナルや電子ブックはWINEで書誌情報を提供していますが、契約データベース
等は他のポータル画面等を用意して利用者に案内しています。しかし、こうした契約データ
ベースに収録されている各種コンテンツは、現在目録の対象から外しているので、これらの
26
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
目録情報のあり方について検討していく必要があると考えています。
(3) 書誌・目録データの活用
利用者サービスに結び付けるためのデータという観点から、図書館の目録・書誌のより一
層の活用を図りたいと思っています。例えば、古典籍総合データベースはアクセスログも非
常に伸びていますが、先生方とコミュニケーションをとって授業での利用をさらに促進する
など、図書館としてもより一層の広報活動を展開していくことが必要と考えています。
(4) 多種のMARC利用によるデータ調整、典拠管理
WINEはアメリカのINNOPACという図書館システムを利用していますが、早稲田大学図
書館は、INNOPACの日本で唯一の利用館です。このシステムでは、毎日夜間に自動的な典
拠コントロールを行いますが、システムの機能もデータ内容も理解した上でコントロールが
できる力量が求められます。
このような状況で、現在、最小限の典拠管理やアクセスポイント割れの修正を行うに留ま
らざるをえません。データの種類が増えることによりさらにアクセスポイント割れが生じて
しまい、その対処が問題となっています。
(5) 業務委託化の中での職員のあり方
図書館をめぐる資料媒体・サービスのあり方の変容の中にあって、図書館現場は、さらに業
務委託化により職員の知識やスキルの向上、継承が難しくなっています。今後の図書館サー
ビスの新たな展開に向けて、目録現場でもこれまでとは違った新たな業務展開が必要となっ
ていることを日々実感しているところです。
27
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(3) 海外の動向
-IFLA ケベック大会参加報告、IFLA 書誌分科会ワーキンググループによ
る「電子時代の全国書誌のためのガイドライン」について
中井万知子(国立国会図書館収集書誌部司書監)
0.
はじめに
2008年のIFLAケベック大会の報告は、
『NDL書誌情報ニュースレター』2008年3号(通号
6号)に掲載済みです 20ので、本日は個人的に興味を持った点を中心にご紹介します。
1.
RDAに関するサテライトミーティング
大会前日に、RDAのサテライトミーティングがケベックで行われました。RDAとメタデー
タの関係について取り上げられ、特にダブリン・コアとの仲介役をしているゴードン・ダン
シャー(Gordon Dunsire)氏から、RDAとメタデータの語彙間の相互乗り入れについて報
告がありました。具体的には、RDAで使われる語彙を定義して、それにURIを与えて語彙の
体系としてウェブ上あるいはレジストリに登録し、セマンティック・ウェブ環境で使用する
という考え方です。そのために、現在セマンティック・ウェブのシソーラス用のデータモデ
ルとして用いられているSKOS(Simple Knowledge Organization System)21を用いてRDA
の語彙を表現する方向で進んでいます。この SKOSについてはIFLAのセッションでも何回も
言及されました。今、図書館界で注目されているデータの表現形式だと思います。
また、RDAのオンライン版を紹介するプレゼンテーションも行われました。実際に目録作
成作業を行うときには、オンライン版のナビゲーションを利用することになります。
デモの中で、オンライン版は有料で提供するという話があった際、
「有料での使用は、先ほ
どセマンティック・ウェブ環境で語彙を登録して自由に使えるようにすると言ったことと矛
盾するのではないか」という質問が出ました。それに対して、RDAにはコストがかかってい
る、RDAのオンラインサービスとウェブでのオープンな利用を混同すべきではないという趣
旨の回答がありました。
2. 図書館とWeb2.0ディスカッショングループ
書誌データに関するツールの作成や維持にコストがかかる一方で、そういったツールをウ
ェブ上でオープンにして、リンクしたり取り出したりして利用するというWeb2.0のような考
え方があります。そこで、図書館とWeb2.0ディスカッショングループが、今回新しくセッシ
ョンを持ちました。このセッションには、 OCLCの副社長カレン・カルホーン( Karen
Calhoun)氏、LCのMARC標準局のサリー・マッカルム(Sally McCallum)氏等がパネラ
中井万知子. 2008 年 IFLA 大会(カナダ・ケベック)――書誌データ関連のセッションに
参加して:書誌データは境界を越えるか?. NDL 書誌情報ニュースレター. 2008, 2008.3.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2008_3/index.html, (参照 2009-03-31).
21 W3C. “SKOS Simple Knowledge Organization System Reference”.
http://www.w3.org/TR/skos-reference/, (accessed 2009-03-31).
20
28
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
ーを務めていました。OCLCもLCも、自分たちの書誌データをオープン化しようといろいろ
な努力をしており、サスティナビリティ(持続可能性)を保証するビジネスモデルが重要で
あると述べていました。
3. IFLAの専門組織の再編成、書誌調整部会の吸収
専門組織が再編成され、書誌調整部会がなくなります。書誌調整部会の中にあった書誌分
科会、目録分科会、分類索引分科会、ナレッジ・マネジメント分科会は、新しく編成される
第3部会の「図書館サービス部会」に所属します。一昨年までは、書誌調整部会長はLCのバ
ーバラ・ティレット氏で、IME ICCを5大陸で開催するなど非常に発言力が強かったのです
が、今回はIFLAにおいても目録分野には逆風が吹いているように感じました。
4. 『電子時代の全国書誌のためのガイドライン』2008年6月草案の世界的レビュー
書誌分科会には、当館収集書誌部の横山が常任委員として参加しています。書誌分科会の
主なテーマは全国書誌です。目録分科会がFRBRやISBDの基準を作成するなど活発に活動し
ているのに比べるとやや地味な印象も受けますが、2002年からワーキンググループを設置し
て『電子時代の全国書誌のためのガイドライン』の作成に取り組んできました。その後、2008
年6月に草案を公開し、世界レビューを行いました。草案の概要については『NDL書誌情報
ニュースレター』2008年3号(通号6号)に掲載しています22。
草案の序文に「ワールドワイドウェブ(www)と電子媒体の激増によってもたらされた変
化は、全国書誌が基礎を置いていた多くの仮説への疑問を呼び起こすことになった。私たち
は、地図のない領域を行くために自分たちを導くルートマップをまさに必要としているので
ある」とあります。1980年代までは全国書誌という理念のもとで、それを構築することが目
標でした。しかし、現在はさまざまな全国書誌の提供形態が存在し、発達の状況も異なる中
で、ガイドラインとして何を打ち出すべきかという点が曖昧になっています。
結局、その世界レビューも、3機関からしかコメントが来ず、
「ガイドラインとして使いに
くいため指針をもっとしっかり示すべきではないか」という指摘を受けたそうです。NDLか
らも2008年9月にコメントを送付しました。全体にもう少し統一性を持たせたほうがいいと
いうこと、通常の目録データベースの機能と全国書誌のデータベースの機能に求められる違
いを明確にすべきであることを指摘しました。
ワーキンググループは、2009年にこのガイドラインを完成させる意向ですが、楽観はでき
ないと思います。確定後は、全国書誌作成機関であるNDLが日本語訳を作成します。
横山幸雄. 電子時代の全国書誌のためのガイドライン(草案)について. NDL 書誌情報ニ
ュースレター. 2008, 2008.3.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/bib_newsletter/2008_3/index.html, (参照 2009-03-31).
22
29
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■報告:館外、館内の動向の報告■
(4) 質疑
1. NDLの国内刊行図書業務の再編について
上田(慶應義塾大学) NDLの国内刊行図書業務の再編について、収集部と書誌部の統合
により全体として目指しているのは、質の向上とスピードの向上のどちらでしょうか。
また、今回、民間MARCを導入するにあたり、民間MARCの評価をどのように行った
のかについても、お聞きしたいと思います。
相原(NDL)
1点目の再編で目指したものは何かということですが、本橋から報告しま
したとおり、今回の業務再編の一番大きな目的は合理化です。つまり、目録作成の要員
が少なくなる中で、できるだけ大きなアウトプットを得ようということです。それと並
行して、今回民間MARCを導入することで、できれば納本から書誌データ提供までのタ
イムラグを縮小できればよいと考えています。ただし、現時点でどこまで短縮できるの
かということについては、まだ見極めが付いていません。
2点目のMARCの選定方法についてですが、ある一定の要件を満たしているものから、
入札で選定しています。今回、調達の仕様の中で提示した要件は、例えばデータの詳細
度、年間の作成レコード数、迅速性、準拠する目録規則等です。こうした要件を満たす
ところに応札していただき、最低価格のものに決まるという選び方をしました。結果と
して株式会社日販図書館サービスのNS-MARCに決まったということです。
民間MARCとJAPAN/MARCの標目部分のデータの違いについてですが、民間MARC
を活用するのは、記述の部分です。標目部分は民間MARCのデータを使わず、これまで
NDLが適用してきたルールでの付与を継続しますので、以前と変わりはありません。
上田(慶應義塾大学) その納本と書誌データ提供のタイムラグを縮小するというのは大
きなことだろうと思いますが、民間MARCはおそらく出版社が資料を持ってきた時点で
データを作成しているので早いのだと思います。NDLの場合、納本されるのは資料が出
版されてから1、2か月後くらいではないのでしょうか。目録作成業務は、民間 MARCの
書誌データさえあればいいという話ではなくて、資料がない限りはできないと思います。
こうした状況におけるタイムラグの縮小、スピードアップは可能なのでしょうか。
相原(NDL) 現在、納本のタイムラグについて調査はしていないのですが、かなり改善
されています。ただし、当館に資料が納本されてからNDL-OPACやJAPAN/MARCで目
録を提供するまでに、現在およそ50日かかっていますので、NDLの作業プロセスの中で
もまだ改善する余地があると思っています。
田屋(NDL) 私からも補足します。具体的には、館全体でこの5年間に50人の人員削減
が求められています。その中で、国内刊行図書業務の効率化を図ることにしました。
30
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
上田先生からご指摘があったように、目録の記述の部分については、どれをとっても
大きな違いはありません。当館で受け入れている和図書のうち、民間MARCにデータが
搭載されているものは約半分です。この半分について、記述が共通して使えるものは民
間MARCのデータを活用し、アクセスポイントに関しては今までの水準を維持する。こ
の方針で合理化を目指しています。
2.
NCRの改訂とRDAについて
上田(慶應義塾大学) JLA目録委員長としての中井さんにお伺いしたいのですが、NCR
は改訂する予定であると考えてよろしいのでしょうか。もしRDAが優れたものであれば、
それを使うという選択肢もあると思います。その点はどのようにお考えでしょうか。
RDAが大変な批判にさらされていると聞いていますので、本当に使えるものになるのか
はわかりませんが、NCRを改訂せずに、RDAというグローバルスタンダードを適用する
ということはあり得ないのでしょうか。
中井(NDL)
目録委員会としては、NCRを改訂する方向で進めています。RDAが使え
るものかについてはこれから確認していきたいと思いますが、いずれにせよ、この段階
でNCRは見直すつもりです。NCR1987年版はカード目録からMARCの変わり目の時代
のものであり、目録が次にどのような形態になるのかという現在の段階で、NCR全体を
見直す作業は行う必要があると思っています。RDAの確認作業の段階で、RDAを使うと
いう結論もあるかもしれません。目録委員でもある渡邊先生、何か補足があればお願い
します。
渡邊(帝塚山学院大学) RDAを日本語訳してそれで済めば楽なのかもしれませんが、こ
れまでのNCRを捨て去ってしまっていいのかという懸念もあります。AACRもNCRも
ISBDを元にしてできていますが、NCR独自のものとして、基本記入方式ではないとい
うことがあります。今回、RDAも基本記入という言葉自体はなくなりましたが、基本記
入の考え方は生きています。
もう一つは、書誌階層という、NCR1987年版で導入した概念についてです。これは
FRBRとの相性があまりよくなく、FRBRで全体と部分の関係をどう扱うかについては、
IFLAのワーキングでも検討されていますが、なかなか結論が出ない鬼門のようなところ
です。今のNCR1987年版の考え方を引き継ぐとすると、書誌階層という概念をどう扱う
かということを、RDAに頼ることなく考えなければならず、目録委員会としては大変な
問題だと思っています。現時点ではまだ方向性を述べられる状況にはありません。
31
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■書誌データの作成・提供の方針:次のステップへ■
(1) 国立国会図書館の新方針の進め方
吉本
紀(国立国会図書館収集書誌部副部長)
1. 本報告の趣旨
「国立国会図書館の書誌データの作成・提供の方針(2008)」
(以下、新方針)を2008年3
月に策定し、2008年5月にホームページに公開しました。新方針は、六つの基本方針、七つ
のカテゴリー、28の方策からなります。まず方針をスローガンのように掲げ、次にそれを実
現するための具体案を列挙しました。期間としては2008年から5年間程度でこれらをより詳
細化して実現する予定です。この場では、新方針の進め方と進捗状況についてご報告すると
ともに、それに対するご意見やアドバイスをいただければと思います。
2. 新方針の概要
先ほど申しました六つの方針をスライドに掲げました。書誌データの開放性、使いやすい
検索システム、多様な対象をシームレスにアクセス可能にするという三つがあり、その後の
三つは手段的なものです。
具体策としては七つのカテゴリーがあり、このカテゴリーの中で、策定の段階では28の方
策を設けました。
32
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
3. 平成20年度現在の新方針の進捗状況
(1) 方策の整理
次に、新方針の進捗状況について報告します。平成20年度の最初の作業は、具体策につい
て5年間でどのように実現できるかという見通しを付けて、ロードマップを作ることです。
これらの方策には相互関係があり、マトリックスにして進めていけば道筋や順番がはっきり
してくると考えていますが、今のところできているのは、ごく大づかみな見取り図です。ス
ライドをご覧ください。この略図の詳細は別紙にあります。
方策をグルーピングすると三つの円ができます。書誌サービスの全体枠でとらえるべき方
策、次期システムで実現すべき方策、書誌調整全体として実現すべき方策の三つです。これ
らは互いに重なり合っています。
33
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
(2) 平成20年度に実施している方策
まず、平成20年度に実施している方策をご報告します。
一つは、
「外部資源の導入」に当たる民間MARCの導入です。2009年1月から導入するため
現在準備を進めています。
次に、NDL-OPACの改修を何件か行いました。また、2008年12月から開始する雑誌記事
索引のRSS配信機能の公開があります。
三つ目に、あまり外部からは見えないのですが、重要なこととして、平成12年度に策定し
た『国立国会図書館データベース提供方針』の改正があります。平成 12年度は、NDLにとっ
て電子図書館元年といえる年で、Web-OPAC 23や貴重書画像データベース 24をインターネッ
トで公開した年でした。
ただし、
その時点でのインターネットにおけるデータベース提供は、
検索と検索結果の閲覧のみに限定して、ダウンロードなどは許容していませんでした。そこ
で、2008年8月に方針を改正し、検索結果の複製やデータベースとの機械的な連携を可能に
しました。これは、内部的には大きな変化です。原則的に非営利の場合に限るという限定は
付いていますが、営利的な利用の場合でも、申請を受けて問題がなければ許可します。
この改正によって、PORTAというポータルシステムにおける検索結果のハーベスティング
機能や、NDL-OPACのダウンロード機能の改修も可能になりました。
4. 新方針の今後の進め方と課題
(1) 書誌サービスの全体枠でとらえるべき方策
書誌サービスの全体枠でとらえるべき方策とは、全国書誌、総合目録、NDL-OPACなどの
蔵書目録といった書誌サービスの枠組みを体系化することです。
総合目録は国立国会図書館法に規定されている基本的な役割で、都道府県立図書館や政令
NDL-OPAC の前身である当館の蔵書検索システム。2000 年 3 月から 2003 年 3 月まで稼
働。約 220 万件の和図書、約 20 万件の洋図書の書誌データをウェブ上で検索を可能とした。
24 国立国会図書館. “貴重書画像データベース”.
http://rarebook.ndl.go.jp/pre/servlet/pre_com_menu.jsp, (参照 2009-03-31).
23
34
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
指定都市立図書館からデータ提供を受けて、そのデータの同定を行って集中型データベース
を構築する方式をとり、
「総合目録ネットワーク」と称しています。関西館の図書館協力課が
所管して運営しており、現在、61の図書館から目録データの提供を受け、基本書誌数は約970
万件です。約半数は、JAPAN/MARCが基本書誌です。各図書館が作成する目録データを標
準化するのではなく、各図書館が所蔵を確認することを主な目的とし、ある程度データが違
えば別の書誌として扱うという緩やかな同定方式を採用しています。書誌サービスというよ
りも、ILL等に役立てる図書館協力のツールとしての位置付けです。
平成19年度のこの会議でも、蔵書目録とJAPAN/MARC、日本全国書誌の関係について質
問をいただきました 25が、館内でも新方針を策定するにあたって、この総合目録と、全国書
誌、蔵書目録の位置付けに関する議論がありました。
ただ、新方針の策定段階では、このような全体的な構想を打ち立てるまでは至りませんで
した。
「
『日本全国書誌』の収録基準の見直し」に対しては「総合目録ネットワークとの連携
等によって未所蔵資料を収録する方策を追求する」ことを、
「総合目録ネットワークの拡充」
に対しては「総合目録ネットワークとNDL-OPACとの統合可能性、分散型の手法の取入れ等
を検討することによって、次世代の総合目録ネットワークを具体化していく」ことを具体策
に掲げるなどの方向性を示すに留まっています。
そして、平成20年度に入り、総合目録ネットワークの次期の構想を立てる中で、書誌サー
ビスの将来像として議論した結果、
・総合目録、蔵書目録、全国書誌を一体的に利用できるようにすること
・各図書館との協力によること
・書誌情報等のデータ、インターフェース、システム基盤を可能な限り共有できるように
すること
の3点に全体的な視点を置き、包含関係を図のように考えました。
国立国会図書館. “平成 19 年度書誌調整連絡会議記録集”.
http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/h19_conference_kiroku.pdf, (参照 2009-03-31).
25
35
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
この図は、分散型総合目録(統合検索による総合目録)
、集中型総合目録、蔵書目録の包含
関係を示しています。全国書誌は、図の水色の部分にあたると考えます。全国書誌は、今の
リスト形式出力するのではなくデータベースの一部分としてとらえます。また、全国書誌の
対象データを総合目録まで拡大するということが観念的に思考されました。全国書誌番号を
持つことにより、共有可能な全国書誌レコードの集合として抽出できる書誌データという考
え方です。
このように、基本的にはデータベースやサービスを統合していく方向で進めようとしてい
ます。今後は、実現方法や、データ提供館との協議、スケジュールの明確化が必要になって
きますが、それは「次期システムで実現すべき方策」と重なり合うものです。
(2) 次期システムで実現すべき方策
NDLの現在の基幹システムは、関西館の開館にあわせて開発した「基盤システム」という
システムで、書誌データの作成・提供はほとんどすべてこのシステムで行っています。この
システムのリプレースにあわせて、多言語化、情報検索機能の向上、電子情報資源との連携
等の実現を考えています。また、総合目録ネットワークの統合も視野に入れます。
次期システムはこれまでのような独自開発ではなく、既存の統合図書館システムパッケー
ジの導入を検討しています。そのパッケージのもつ標準的な機能を使い、書誌関係のサービ
スをどのように維持し向上するかという検討を始めています。
た
だ 、
現在の基盤システムは、
収集から館内利用サービスや遠隔サービスまでを含む巨大なシステムであるため、移行が非
常に困難であり、昨今の国の財政状況を考えると、時間を要するでしょう。平成19年度のこ
の会議でも「システム開発に時間がかかり過ぎる」という指摘を受けましたが、その批判は
今回も避けられないかもしれません。
(3) 書誌調整として実現すべき方策
収集書誌部の発足前、旧書誌部に書誌調整課という課がありました。2008年4月の統合の
際も、課名として書誌調整という名称が残ることになり、
「収集・書誌調整課」が誕生しまし
た。NDLとして、これからも、書誌データを普及することによる書誌調整、標準化という点
では、達成すべきことがたくさんあります。
まず一つが、世界的な図書館の目録やメタデータの動向を把握することです。国際目録原
則やRDAがFRBRを基本にする中で、NDLの書誌データ、また日本の書誌データがどのよう
な対応を取るのか、本腰を入れて検討する必要があります。また、それをいかに国内の各関
係機関と協力して行うかというのも、大きな課題です。
次に、書誌データや典拠データなどを新しい形式で提供することがあります。2006年に
NDLSHを改訂しシソーラス化した際に、NDLSHをセマンティック・ウェブの技術である
SKOSで表現する実験を研究者の方にしていただきました。このように、既存のデータを改
善してオープンに提供することで、新しい需要が生まれるのではないかと考えています。
NDLSHのSKOS化については、2008年11月17日に、筑波大学の杉本先生、セマンティック・
ウェブの実践をしている神崎先生、NIIの宮澤先生等に加わっていただいて、ミーティング
を開く等、検討を進めています。
MARCについては、MARC21がデファクトスタンダードとなっており、例えばVIAF(ヴ
36
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
ァーチャル国際典拠ファイル) 26
27への参加にしても、MARC21やMARCXMLによるデー
タ提供を求められます。このような状況から、MARC21への対応、OCLCへのデータ提供の
方法など、さまざまな可能性を探っているところです。
5. 収集書誌部のあり方、職員のスキルの向上
現時点では、まだ収集部と書誌部の統合のメリットが明確になる段階ではありません。統
合に伴いシステムを改修しましたが、収集、書誌それぞれの要件がまったく異なるため苦労
をしました。書誌の観点から言えば、今まで直接関係のなかった出版流通の世界との関係を
持ち、
流通段階のデータをいかに使うか、
いかに迅速化するかを考える機運になっています。
問題点として挙げられるのは、図書館の根幹部分である収集書誌部門が扱う資料のほとん
どが紙媒体であり、電子出版物であってもパッケージ型という形があるものが対象であると
いう点です。ハイブリッド環境という現在、デジタルアーカイブやウェブ情報の収集の制度
化という将来戦略がNDLにはあり、ネットワーク情報のメタデータの管理や、シームレスな
サービスを実現していかなければなりません。そうした状況において収集書誌部はいかにあ
るべきかという課題があります。
また、人の面でも、書誌データの作成・提供を既存の枠組みにとらわれずに行う能力や、
、
新しい分野を開拓する力をどのように育成するかという課題があります。書誌データの作
成・提供はNDLの使命として非常に重要ですが、組織全体で見るとそのノウハウを引き継い
でいる職員は決して多いとは言えません。少数の専門家を大事に育てるよりは、職員全体に
標準装備される書誌に関するセンス、いわば「書誌力」というものが構築されるべきだと思
っています。このような「書誌力」を標準装備することにより全体の底上げを図りたいと考
えています。
OCLC. “VIAF: The Virtual International Authority File”.
http://www.oclc.org/research/projects/viaf/, (accessed 2009-03-31).
27 鈴木智之. バーチャル国際典拠ファイル―その試みと可能性―. カレントアウェアネス. 2004, No.280, CA1521. http://current.ndl.go.jp/ca1521, (参照 2009-03-31).
26
37
<別紙>
38
■書誌データの作成・提供の方針:次のステップへ■
(2) 次世代目録所在情報サービスをめぐって
細川
聖二(国立情報学研究所)
0.はじめに:NACSIS-CAT/ILLの統計
まず、NACSIS-CATの状況等をご報告します。このグラフはNACSIS-CAT/ILLのウェブ
サイト28
29にも公開しています。まず、2007年までのNACSIS-CATの統計をご覧ください。
毎年順調に右肩上がりに増えています。グラフは平成19年度までのものですが、2008年7月
には、登録件数が1億件を超えました。
一方、NACSIS-ILLについては、2005年あたりをピークに下がってきている状況がわかっ
ていただけると思います。
28
国立情報学研究所. “NACSIS-CAT 統計情報”.
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/archive/stats/cat/ , (参照 2009-03-31).
29 国立情報学研究所. “NACSIS-ILL 統計情報”.
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/archive/stats/ill/ , (参照 2009-03-31).
39
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
1. NACSIS-CAT/ILLが抱える課題
現在NIIでは、次世代の目録所在情報サービスに向けた検討をしていて、平成20年度末に
最終報告を公開する予定でいます。本日はその検討経過のご報告をします。
NACSIS-CAT/ILLが抱える課題は、大学図書館における目録現場での課題でもあります。
先ほど早稲田大学図書館からも、目録業務体制が変化し業務委託化が進んでいる、電子情報
資源が増えている等の報告がありましたが、これらへの対応を検討しています。
40
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
2. 平成19年度以降の経緯
平成19年度のこの会議でも、次世代の目録所在情報サービスに向けた検討状況についてご
報告しましたが、その後の経緯を簡単にご説明します。
まず、次世代のNACSIS-CAT/ILLを検討するためのワーキンググループを、2007年6月に
立ち上げました。学術コンテンツ運営・連携本部という、コンテンツサービスをどのように
企画・運用していくかを大学図書館と一緒になって検討する組織の下に、図書館連携作業部
会があります。さらにその下にこのワーキンググループを設置しました。本日ご出席の渡邊
先生にも委員としてご参加いただき、平成19年度から検討を進めています。また、平成19年
度末に、NACSIS-CATのハードウェアのシステム更新を予定していたため、各大学からも要
望が寄せられ、あわせて検討しました。
平成19年度末に、『次世代目録所在情報サービスの在り方について』という中間報告を公
開し、あわせてパブリックコメントの募集を行いました。その直後に、NIIオープンハウス 30
を開催し、次世代の目録所在情報サービスをどう考えるかというテーマでワークショップも
開催しました。
3. 次世代目録所在情報サービスの在り方について(中間報告)
『次世代目録所在情報サービスの在り方について』
(中間報告)
(以下、中間報告)は、目
録所在情報サービスのウェブサイトで、実際の報告書を見られます 31。
中間報告では、問題点を大きく三つに分けて論じています。1点目は資料、特に電子ジャ
ーナルや電子ブックといった電子情報資源についてどう対応していくのかという点です。2
点目はシステムについてで、大きく二つに分けて論じています。一つはデータ構造について
です。目録規則が今まさに変わりつつありますが、データ構造はその変化に対してどのよう
に対応するのかということです。もう一つはAPI(Application Programming Interface)に
ついてで、他のウェブサービスに対してデータやプログラムを渡して、新たなサービスに活
用していただくことをどのように考えるのかということです。3点目は、これが一番大きな
問題ですが、NACSIS-CATの共同分担方式が、この先も同じやり方でうまく運用できるのか
という点です。この三つのテーマについては、2008年度も引き続き検討していますので、詳
しく紹介します。
4. 中間報告に対するパブリックコメント
中間報告を公開した後2か月間、パブリックコメントを募集し、全体で8件の意見をいただ
きました。主な意見はスライドをご覧下さい。中間報告の方向性について、基本的にはその
方向で進めるべしという意見が多かったと思っています。
しかし、中間報告において挙げた、発生源入力、つまりMARC等のデータをそのまま生か
し書誌作成の効率化を図るという提案に対しては、安直に発生源入力を進めることで目録の
品質低下を招きかねないことへの危惧も示されました。また、運用に関して目録センター館
国立情報学研究所. “平成 20 年度 NII オープンハウス”.
http://www.nii.ac.jp/openhouse/h20/archive/event_info-j.shtml , (参照 2009-03-31).
31 国立情報学研究所. “次世代目録所在情報サービスの在り方について(中間報告)
”.
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/archive/pdf/next_cat_interim_report.pdf, (参照 2009-03-31).
30
41
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
構想を提示したのですが、センター館を作るのもいいが、図書館員のメタデータ運用スキル
を維持する方策も考えたほうがいいという意見が提出されました。
5. 最終報告に向けた検討の状況
(1) 電子情報資源への対応
電子ジャーナルや電子ブックをNACSIS-CATにどのように取り込むかについては、出版 社
や書誌作成機関等から提供されるデータを活用したいと考えています。また、各参加機関で
持っている電子ジャーナル等の契約データを、NACSIS-CATとは別のデータベースを作り格
納するということも考えています。ただし、検索時には、従来のNACSIS-CATのデータベー
スと同時に検索して、ILL等で利用できるようにしたいと考えています。
あわせて、次世代目録ワーキンググループの活動とは別の観点で行っているのですが、
ERMS(電子情報資源管理システム)の実証実験を10大学ほどの図書館と協力して行ってい
ます。電子ジャーナル等を管理するためのシステムは、特に海外のメーカーが中心に展開し
ています。そのシステムを日本の大学図書館に導入した場合、うまく運用できるかを実証す
る実験を行っています。電子情報資源への対応については、この実験の成果とすり合わせつ
つ、検討していきたいと考えています。
(2) データ構造
現時点で新しい目録規則の動向への対応方針を示すことは時期尚早であるため、当面はシ
ステム的な変更は行わないという結論になると考えています。
(3) API
APIは大学図書館側からの要望が大きかったものです。NACSIS-CATで作られた目録デー
タの提供は、CATPというプロトコルで図書館システムに渡す、Webcat、Webcat Plusとい
42
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
うインターフェースで一般に利用できるようにする等の方法で行っていますが、これ以外の
さまざまなAPIを利用し、各図書館でうまく活用して図書館内の検索システムでいろいろな
工夫をしたいという要望が出ています。参加機関、大学図書館と一緒になって、どのような
APIを用意するかを検討しながら、今後開発を進める予定です。
(4) 外部データの活用
発生源入力ということで、参照MARCから直接NACSIS-CATのデータベースに書誌データ
を入力することにより、参加館での書誌作成業務の効率化につながるかどうか、実験を行っ
ています。
(5) 共同分担方式の最適化
参加機関の登録状況を見ると、書誌作成を行っているグループと、書誌はまったく作成せ
ず所蔵をつけるだけというグループにきれいに分かれます。大学の規模等によってある程度
やむを得ない場合もありますが、NACSIS-CATの参加機関の役割として、規模の大小にかか
わらず、書誌レコードがなければ最初に登録をする機関が作成するというルールで長らく運
用してきました。しかし、今の状況を見ると、こうした理念が共有されていないようです。
この状況への対応として、例えば目録センター館を作り書誌作成はセンター館が中心にな
って行う、書誌作成に貢献した館に対して何らかのインセンティブを与える、参加機関のレ
ベル分けする等々、概念的にあり得る解決策を今さぐっています。しかし、具体的にどのよ
うな解決策が可能かというと、まだよい案が見つからないのが現状です。これはNIIだけで
決めて実行できることではないので、時間をかけて参加機関、大学図書館と一緒に考える必
要があると思っています。
6. 最終報告へ向けて
平成20年度末に最終報告を刊行する予定です。この最終報告は、あくまで方向性といつま
でにどんなことをするのかという目標を示すものです。目録作成のルールをどのように変え
るか、NACSIS-CATのシステムをどのように改造するか等の具体的な内容の検討は、次のフ
ェーズ(平成22年度~)で行う予定です。
7. 遡及入力事業の計画
遡及入力事業をNIIと大学図書館で一緒にやっているのですが、目標としては平成30年ま
でに入力を完了したいと考えています。現時点で大学図書館の目録のうち、電子化されてお
らず遡及入力が必要なものというのが4000万件ほどあるということなので、毎年計画的に進
めれば、平成30年度までに終わるだろうという計画を立てて進めています。
8. 今後の予定(暫定ロードマップ)
スライドは暫定的なロードマップです。電子情報資源への対応、発生源入力など、システ
ムを変更しなくても運用で対応できるものを優先して行います。データベース構造を変える、
共同分担目録作成方式を変える等の検討に時間がかかるものは長いスパンで行います。
43
44
9. NACSIS-CAT1億件突破記念講演会
奇しくもNDLの公開講演会が2009年2月5日で、NIIの講演会が翌2月6日ということで、目
録関係の講演会が続きますが、NACSIS-CATのこれまでとこれからをテーマにした講演会の
開催を予定しています32。
具体的なプログラムや講演者について未決定なため、ご紹介はできないのですが、大きく
3本に分けて、NACSIS-CATが立ち上がるまでの経緯、学術情報システム構想といった話か
ら始めて、本日ご紹介した次世代目録の在り方についてといった切り口で講演をしたいと思
っています。ぜひご参加いただければ幸いです。
国立情報学研究所. “NACSIS-CAT 登録 1 億件突破記念講演会”.
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/event/2008/ichioku/index.html, (参照 2009-03-31).
32
45
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■コメント■
上田 修一(慶應義塾大学教授)
1. NDLと書誌調整
国立国会図書館法 33第7条に「館長は,一年を超えない期間ごとに,前期間中に日本国内で
刊行された出版物の目録又は索引を作成し,国民が利用しやすい方法により提供するものと
する」という規定があり、これが NDLの書誌の作成や、雑誌記事索引の作成の根拠であると
されています。
国立図書館が標準的で信頼性の高い網羅的な目録を作成して、それを国内および海外で交
換して使うことによってユニバーサル・ビブリオグラフィック・コントロール(UBC: 国際
書誌コントロール)を実現するということを私は今まで言ってきたし、信じてもいます。NDL
は標準的な目録を作る、信頼性の高い目録を作るということをしっかりやっているので問題
はないと思っています。網羅的という観点からも納本制度があるので大丈夫だろうと思って
います。
しかし、図書館がNDLの作成した目録を使っているかというと、ほとんど使っていないと
いうのが実際のところだと思います。それはなぜかと言うと、新刊書が納本されてから
NDL-OPACやJAPAN/MARCで目録を提供するまで、50日ほどかかっているというお話があ
りましたが、この50日分遅いだけで、図書館の目録には使われません。この日数を早めるこ
とは多分もう不可能でしょう。さらにNDLの提供システムが十分でないところに、民間の
MARC作成機関が入って体制を作ったので、NDLの目録を使ってもらうことはもう難しいと
思います。また、各図書館の目録をNDL作成のJAPAN/MARCに置き換えるのが本来は筋か
もしれませんが、各図書館にとっては手間がかかるわりにはあまりメリットがないので、そ
れも難しいと考えています。
2.
NDL-OPACの知名度の低さ
もう一つは、一般の人たちにとってNDL-OPACの長所がわからないということがあります。
私はNDL-OPACの成り立ちから知っているので、いろいろな本を調べるときや、網羅的に調
べようというときにはNDL-OPACを使います。私が所属している大学の図書館のOPACを使
ったのでは網羅的ではないし、NACSIS-Webcatも網羅的ではないのでNDL-OPACを使いま
す。しかし、一般的にはこのメリットは理解されていないと思います。
これは、OPACへのアクセス数を比較してみると明白です。NDL-OPACのアクセス数は
NDLの年報に出ていますが、年間約412万件、1日あたりにすると約1万1295件です 34。一方
で、他の図書館のOPACのアクセス数を見てみると、東京都立中央図書館の平成19年度のア
国立国会図書館. “国立国会図書館法”. http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/a1102.pdf,
(参照 2009-03-31).
34 国立国会図書館. “一般公衆に対するサービス”. 平成 19 年度国立国会図書館年報. 国立
国会図書館, 2008, p. 35-36. http://www.ndl.go.jp/jp/publication/annual/h19/nen19.pdf, (参
照 2009-03-31).
33
46
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
クセス数は、NDLと同じ約412万件です。大阪市立図書館は1日約7700件、横浜市立図書館
は1日約1万3000件です。東京大学附属図書館は、平成15年度という古い数値ですが、年間 約
720万件で、1日約2万件になります。つまり、NDL-OPACは日本で一番使われているOPAC
ではないのです。網羅的な目録であるNDL-OPACがこうした状況であるのは不思議であり、
なんとかしなければいけないと考えます。
また、
「ある程度の情報リテラシーがある成人34名」に、本を調べるときにどの検索ツー
ルを使うかを聞いてみました。
結 果 を ご 覧 に な っ て わ か る と お り 、 Google や Amazon を 使 っ て い る の で す 。
NACSIS-Webcatを使う人も約3割いますが、NDL-OPACは5分の1にとどまっています。こ
れはやはり問題だと思います。
3. NDL自体の知名度の低さ
このように、図書館でNDLの目録を広く使ってもらうことは、困難な状況にあります。ま
た、一般の人たちに使ってもらうには、知名度が低いのです。
そして、ここにはNDL自体の知名度の低さという問題もあります。本日ご出席の根本先生
の科学研究費補助金による共同研究
「情報専門職養成をめざした図書館情報学教育の再編成」
(LIPER2)で、図書館情報学関係の学生に「図書館情報学検定」というものを試行して、5
枝選択で50題の問題を出しました。その中で2題NDLに関する問題があったのですが、その2
題の正解率がワーストの1番と2番だったと思います。つまり、できる人とできない人の知識
の差が全然ないのです。NDLのことを常識で答えているだけということです。司書課程や図
書館情報学の学生でもこのような状況であることは、やはり問題です。
そこで、なんとか知名度を上げる努力が必要だと思います。例えば、これはいいことかど
うかわかりませんが、全国書誌のデータをGoogleでハーベスティングさせてしまうとか、今
大手新聞の1面で公共図書館の連載をやっていますが、そのようにNDLを広報するとか、何
かしらの方法で知名度を上げることが必要です。
47
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
4.
NDL-OPACに対する要望
1点目は、NDL-OPACという名前はやめたほうがよいというのが私の個人的な意見です。
OPACという名前を一般の人に広めるのは、いいことではないと考えています。蔵書目録と
か目録とかと言ったほうがよく、OPACという図書館の専門用語をなぜ一般の人たち向けに
使うのかわかりません。
2点目は、NDL-OPACのトップページから雑誌記事索引が探せるという今のやり方をやめ
たほうがよいということです。OPACで雑誌記事まで探せるということは、どこもやってお
らず、NDLだけがやっています。雑誌記事索引は索引であり、蔵書目録ではありません。現
在のやり方では、蔵書目録の一部として扱われてしまっており、蔵書目録に対して誤解を与
えてしまいます。
3点目は、細かいことですが、検索結果表示の順番のデフォルトがタイトル順になってい
るのを、出版年順の降順にしてくださるようお願いします。
48
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■コメント■
北
克一(大阪市立大学大学院教授)
1. NDLホームページのユーザインターフェースについて
基本的に目録は、利用者の利便性を第一に据えています。しかし、今のNDLのホームペー
ジを見ると、トップページの中でまずタブがあって、その中の例えば「資料の検索」を選ぶ
と、まず「NDL-OPAC」
、
「アジア言語OPAC」、
「総合目録」と開き、その中で「総合目録」
を選ぶと、さらに「ゆにかねっと」
(総合目録ネットワークシステム)35や「児童書総合目録」
等が開きます。このようなユーザインターフェースはとてもわかりづらく、おそらく図書館
員であっても、どこにどんなデータベースが入っていて、何が検索できるのかということを
空で言える人はいないのではないでしょうか。
2. 書誌のサプライチェーン
書誌のサプライチェーンですが、JAPAN/MARCや民間MARCの導入の話と、
「ゆにかねっ
と」の基本書誌以外をどうするのかという問題に帰着します。
「ゆにかねっと」の中では、デ
ータ提供館のデータを基本書誌JAPAN/MARCのほうに統合しています。置き換えは参加館
側ではなく、NDL側でシステム的にデータの統合を行っているようです。
3. 「日本総合目録」の構築
「日本総合目録」と勝手に称しましたが、作り方としては、JAPAN/MARCとNACSIS-CAT
の将来的な連携や統合、レコードベースで言えば書誌レコード、典拠レコードの統合という
ことです。外に見せるデータベースとしては、現在の「ゆにかねっと」とWebcatの統合とな
るのか、それとも「ゆにかねっと」の範囲を広げてPORTAの方向へ流れていくのか、NDL
の外から見ているとよく分かりません。
PORTAは、コンテンツを一切作らない代わりに、情報技術、システムプログラムでできる
ことは貪欲に提供するというベクトルのシステムに見えます。一方の「ゆにかねっと」は、
従来型の図書館員が考えていた総合目録のバッチ方式によるものです。こうした両システム
の親和性、統合性をどう考えていくのか、教えていただきたいと思います。
4.
NCR20XX年版と、RDA・FRBRとの関係
NCRの記述の考え方は、FRBRの概念枠で言う体現形の世界に、書誌レベル、書誌階層の
概念を持ち込んだ機能論的な目録規則です。ですから、NCRは、FRBR、RDAの全体的枠組
みとはなじみが悪い。RDAを日本に導入することは、NCR1987年版の考え方を全部捨てる
ならともかく、おそらく実現可能性、過去のデータとの整合性でやはり無理があると思いま
す。
また、RDAの詳細なアクセスポイントの規定をNCRにそのまま持ち込んでも、すばらしい
国立国会図書館. “総合目録ネットワークシステム”. http://unicanet.ndl.go.jp/, (参照
2009-03-31).
35
49
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
規則が翻訳されたという話になるだけでしょう。
5. NDLの提供しているデータベースのあり方
NDLには、デジタルアーカイブ関係のデータベースや、憲政資料、レファレンス協同デー
タベース、人物目録、資料目録等、一生懸命作っているデータベースがいくつもありますが、
ユーザとしては一元的に調べたいものです。ユーザがGoogleの検索方式に慣れてきている中
で、現在のように作成過程ごとにデータベースを分けておくのは得策ではありません。内部
にしか見せないシステムのあり方と、外部へ公開するシステムのあり方を、切り分けたほう
がよいでしょう。
6. トライアル、ベータ版という発想の重要性
NDLにはトライアルとかベータ版という発想があまりないように見えます。そういったプ
ラットホームをもっと作って、例えばWeb2.0のAPIを試す等、失敗も含めていろいろ試せる
ような仕掛けや体制を作れたらよいと思います。
旧NACSISの研究開発部はそうした部署でしたし、いくつかの規模の大きい大学図書館で
は、研究開発的なセクションを小規模ながら設け、失敗もしつつ開発を行っています。その
ような体制でこそ、Web2.0やLibrary2.0のさまざまなことを試すことができると思います。
50
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■コメント■
根本
彰(東京大学大学院教授)
1. 「図書館情報学検定」について補足
先ほど上田先生がおっしゃった検定試験の話について補足させていただきます。受験者の
出来が悪かった問題の中でNDLのツールに関する問題があるのですが、出来が悪かった理由
として考えられるのは、その問題の正解が『日本法令索引』だったということです。他の選
択肢は書誌的なツールやデータベースだったので、図書館のことを学んだ人は、NDLは当然、
書誌的なツールを作っていて、法令そのものをやっているとは思っていないのではないかと
思います。法学部の学生に受験させると、また違った結果になるかと思います。問題として
あまり適切ではなかったと反省しています。
2.
LCの『On the Record』と書誌調整の概念
LCの『On the Record』や新しい目録規則のアイデアの話が先ほど出ましたし、その前提
となっているFRBRのような議論があるわけですが、私は『On the Record』の中で、
「書誌
コントロール」という言葉が多く使われているのが非常に不思議な感じがしました。
bibliographic controlという概念は、近代図書館学のスタートである19世紀後半の思想を踏
まえていると思うのです。この概念がだんだん機能的になって行ったはずなのですが、もう
一度そこへ戻そうとしているというのが、マクロに見たときの感想です。
このことは、今のインターネットやフルテクストデータベースの限界を見切って、それら
ではどうにもならない部分を図書館情報学の領域できちんと作っていこうという積極的な問
題提起なのか、それともライブラリアンシップという職というものを前提にしたある種のポ
リティカルな意思表示なのか、私自身もよくわからないところです。
3. ボーンデジタルなものの中の「文献」の範囲
書誌コントロールというとき、NDLで扱っている文献や資料の概念ははっきりしていると
思います。それは、納本制度があって、そこで対象になるものが厳密に定義されているから
です。しかし、一方で、デジタルなものにおける文献や資料の概念についていろいろ議論が
出てきています。電子ジャーナル、電子ブックがそうですし、ブログやインターネット掲示
板、PDFファイル等の、文献なのか情報なのかよくわからないものについて、どこまでが図
書館あるいはNDLで対象にするものなのかの切り分けがよくわかりません。
従来「出版物」という言葉を使っていますが、これは「出版」という概念が前提になって
います。では「出版」とは何かというと、非常にあいまいな概念になってしまいます。ウェ
ブ上にあるデータやファイル、テキスト等は、誰でもアクセスできるという意味では複製物
であり、そういう意味では出版物でもあります。図書館としてどこまでを対象にするのかと
いうことは考えておく必要があると思います。
51
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
4. 構造化された書誌データの今後
LCが提唱しているような非常に構造化されたデータが、どこでどのように求められている
のかという点が気になります。研究的な視点からすれば非常におもしろい話ですが、コスト
の問題も含め、今後どうするのか気になります。
また、ネット上のリソースやMLA連携のような、図書館界だけではない領域を考えるとき
に、データの構造のどこに共通性があるのかという点は、私もまだよくわかりません。
5. 日本における書誌コントロール政策とその費用負担
書誌コントロールにかかわるさまざまなツールの費用負担、開発費用の負担を、誰がどの
ように負担するのかが気になっています。
先ほど、上田先生から国立国会図書館法の紹介があって、NDLが書誌を作成し提供するこ
との法的な根拠は示されたとは思いますが、日本の書誌コントロールの基本的な部分のイン
フラをNDLに依存していいのかということも考えておく必要があると思います。
また、NII、JLA、INFOSTA(情報科学技術協会)や、その他の図書館関係団体というも
のが、相互にどのような関係になって、どこがどのように書誌コントロール政策を作ってい
くのか。本日のJLAからの報告を聞いて、なかなか大変そうだと思ったのですが、もっと大
きなベースでこういうものを作っていかなければならないと思います。
6. 日本における書誌コントロール教育
書誌コントロール教育の問題については、今、文部科学省の中で、大学での司書の科目表
を作っていて、一部原案が公開されているのですが、全体としては資料組織論の部分は縮小
の方向にあります。今回、単位数としては以前の資料組織演習と同じなのですが、それをど
のぐらいの時間をかけてやるかという点については、現在議論しているそうです。従来は大
学設置基準で規定された演習の通常の時間の倍の時間をかけるという指導を文科省がしてい
たのですが、今回はまだ確定していない段階です。しかし、司書の養成の中で、資料組織論
については初歩的な部分だけやればいいという考え方がかなりはっきりとあります。
ではこういった資料組織的な部分をどこでだれがどのように学ぶのか。専門課程というの
はいくつかあるので、そこで学んだ人がいろいろなところへ行って、書誌コントロールの基
礎を作ればいいのかもしれません。しかし、全体としては、先ほども話にあったように、図
書館の現場で徐々にアウトソーシングが進んでいくと、ノウハウを持っているのはむしろア
ウトソーシングを請け負った企業のほうになると思います。そこでの研修体制やリクルート
はどうなっているのか。つまり、書誌コントロールにかかわる全体のノウハウがどこにどの
ようにあって、今後どうしていくのかというような大きなプランというのがないと、人材を
育てるうえで非常に不安です。NDLでさえ、記述の部分については外部にアウトソーシング
するという話を伺って、なおさらそう思いました。
52
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■コメント■
宮澤
彰(国立情報学研究所教授)
1. 書誌調整に対する私見
書誌調整に関しての私の認識ですが、細かく見ればいろいろ問題はあるものの、大筋にお
いて書誌調整の体制というのは完成したと思います。そのため、目録を作成することは昔よ
りはるかに人手も時間もかからなくなりました。ただし、
効率化という面では成功した反面、
目録に対する意識が希薄になりつつあると考えています。
また、書誌調整は、個別の図書館のサービスではありません。書誌調整は、資料提供やレ
ファレンスといったパブリック(一般)に対するサービスではなくて、個別の図書館のサー
ビスを支える裏方仕事ですが、一つの図書館の仕事ではなく、全国的、国際的なインフラス
トラクチャーであると考えています。パブリックサービスの方がおもしろく、書誌調整とい
う裏方に日が当たらないのは仕方がありませんが、おろそかにしてはいけないとも思ってい
ます。
2. ウェブの影響下での、書誌調整の二つの方向性
ウェブは図書館全体へ影響を与えるもので、書籍の出版流通自体にも影響します。そもそ
も知的資源の生産、発表、流通と全体的に影響しますし、情報サービスへも影響します。当
然「書誌調整」という概念にも影響してきています。このような状況に対して、どのように
考えればよいのでしょうか。
(1) 書籍におけるメタデータ作成の完璧化をめざす
一つは、紙媒体の本だけ100%カバーし、品質がいいというよりは等質なものを保証しよ
うという方向です。
等質なものというのは平準化とも言います。品質が良くなるとは限らず、
あるところは悪くなるかもしれないのですが、質がそろっていることを目指すものです。
その場合に忘れてはならないのは、新しいサービスを前提にした流通方法です。つまり
MARCを作るのをやめればいいということです。例えば、ウェブ世界でのウェブサービスや、
RDF 36を用いたセマンティック・ウェブといった公開の仕方に移っていくという方向です。
また、新しいサービスを前提にしたデータの内容についても重要です。データの内容とい
うのは目録規則のことで、RDAや国際目録原則を当てにするのはもうやめたほうがいいと考
えています。その理由は、これらの基準が、昔のカタロガーを守りたいという部分を非常に
強く出しているところに新しい衣をかぶせようとした結果、わかりづらいものになっている
からです。これらは、決して簡単になる方向には進んでいないし、利用者サービスにとって
も良いものとなるとは思えません。
ではどうするのが良いのかと言われると困ってしまいます。新しいNCRでまったく新しい
ものを考えるという方向に行くのも一つの手とは思いますが、険しい道ではあります。
W3C. “Resource Description Framework (RDF)”. http://www.w3.org/RDF/, (accessed
2009-03-31).
36
53
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
私自身は、FRBRをかなり評価しています。利用者にとって、情報要求の少なくとも90%
ぐらいはワーク(著作)であり、マニフェステーション(体現形)はそれほど重要視されて
いないと思います。
(2) ウェブ上の資源を含むすべての知的資源の組織化をめざす
もう一つは、ウェブ上の資源を含め、知的発表物すべてのメタデータを作るという方向で
す。ただし、この方向では解決すべき問題がとても多く、範囲を考えただけで、日本の国立
図書館としてやれるものではないと思います。ウェブ上のすべての資源を扱って、それらを
どうやって捕捉し、どういうメタデータの内容にするかということも含めて、現段階では実
験的なことしかできないだろうと思います。
また、これまで紙媒体の資料を整理して積み上げてきた書誌データや典拠データと、ウェ
ブ上の資源のメタデータを同時に利用するためには何をどうしたらいいかということを考え
る必要があります。これらをどうサービスするかというのを考えるのはサービス側ですが、
同時に利用することを考えた場合に、どのようなデータ内容を記録していけばいいのかとい
う点を考えなければいけないと思います。
方向その1、その2と挙げましたけれども、どちらの方向へ進むべきか、今のところ私もわ
かりません。我々の役割は本の世界だけだという方向その1も徹底していていいという気も
する一方で、ウェブについて全然考えないことはできないだろうとも考えています。今後の
方向をNDLで策定していくと、結局紙媒体の資料だけではなく、ウェブ上の資源の組織化も
少しはやるという方向しかないのではないかと思っています。
54
平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■コメント■
渡邊 隆弘(帝塚山学院大学准教授)
1. 目録作成作業の分散協調と一定集中化について
先ほどLCの『On the Record』についてお話がありましたが、その中での一つの大きな方
向性は、
目録作成作業の集中から分散協調ということだと思います。
「分散」の一つの側面は、
出版流通に代表されるような、図書館の外にあるデータをどう使っていくかということで、
これはわが国でも問題意識が共有できると思います。
一方で『On the Record』の「分散」にはもう一つの側面があって、LCに非常に責任と負
担が集中しているという点が述べられています。その責任と負担を図書館の世界の中で分散
していかなければならないということなのですが、この点は、わが国の状況に置き換えてみ
ると、むしろ一定集中の方向に向かったほうがいいのではないかと考えています。日本とア
メリカにおける図書館界の体力の違いだと思いますが、日本では分散してやっていくという
体力はないだろうと思います。先ほど、次世代のNACSIS-CATについて共同分担方式の最適
化が必要だというお話がありましたが、これは共同分担方式という原則は続けながらも、あ
る程度の集中化を図る方向と言えると思います。
2.
NDLの書誌データと他の図書館の書誌データとの関係
目録作成の集中化を志向するとなると、NDLの書誌データを今後どのように考えていけば
よいのでしょうか。先ほど上田先生からは、各図書館の書誌データがNDLの書誌データに置
き換わっていくことにはインセンティブがないのではないかというお話もありましたが、せ
っかく民間MARCのデータを使って、そこに手を加えてさらに品質のいいデータを作ろうと
いうわけだから、やはりNDL-OPACだけではなく、他の図書館に使ってもらえる方向を目指
すべきだと思います。
ただし、新刊本の発行と書誌データ作成のタイムラグの大幅な縮減は、CIP(Cataloging In
Publication)を導入しなければあり得ないことで、それは現時点では無理ではないかと思い
ます。それでは、どういう条件が必要なのかと言うと、一つは民間MARCからできている各
図書館のデータとNDLのデータが、なんらかのアイデンティファイアー(識別子)によって
置き換えできるという体制がなければいけません。
これを実現することはなかなか難しいことです。しかし、本日のお話を伺っていると、民
間MARCを導入してNDLの書誌データを作成することによって、当該民間MARCの番号が
JAPAN/MARCに入るわけです。そうすると、民間MARCを使っている図書館のデータを、
MARC番号を元にNDLのデータへ後日置き換えることが可能なのではないか、あるいは総合
目録を作る際の書誌同定がより確実に行えるのではないか、と思いました。ただし、逆にた
くさんある民間MARCの中で、たまたま契約された一つだけがそのような恩恵を受けるとい
うことには問題があるかもしれません。
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平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
3.
典拠レコードの提供のあり方
もう一つは、やはり記述についてはどのMARCも大差がなく、異なってくるのは標目とい
うことなので、何らかの形でNDLの典拠レコードの部分も、各図書館に提供できるような形
を考えるべきではないかと思います。
例を挙げますと、岩波書店から出ている『漱石全集』の一番新しい版では、奥付が「夏目
金之助著」となっています。したがって、記述の責任表示は「夏目金之助著」となります。
いくつかの図書館の目録を調べたのですが、公共図書館の目録では、この本を「夏目漱石」
で著者から引けないところがあるのです。大学図書館ではこういうことはまず考えられませ
ん。これは、別に大学図書館と公共図書館の目録作成に対する意識の違いではなく、大学図
書館ではNACSIS-CATから典拠情報も自由にダウンロードできるのに対して、公共図書館と
民間MARCとの契約では、典拠情報まで取り込もうとすると一定の料金がかかるので、そこ
まで契約ができていない場合があるからだと思われます。こうした問題を解決するために、
NDLの典拠レコードを各図書館へ無償で提供できるような形が望ましい。
NDL-OPACなりPORTAなり、NDLから一般に向けて典拠データを提供していくというこ
とももちろん必要ですが、対図書館という関係においても、やはり全国書誌という観点から
提供を考えていくべきだと思います。
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平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■質疑および意見交換■
1.
NDLとNIIの講演会に対する要望
北(大阪市立大学大学院)
2月5日、6日と、NDLとNIIの講演会の模様をインターネッ
トストリームで流していただけないでしょうか。NDLには関西館にテレビ会議システム
がありますが、関西在住の人でも関西館に行くのに約2時間かかるのが普通です。最近は
回線の帯域幅が相当広がっているので、ストリームで流していただけたらユーザにとっ
てありがたく、2日連続で行われるため、両方のスキルもよくわかると思います。
中井(NDL) 今回の講演会は東京本館の新館講堂でやるので、テレビ会議システムが使
えません。会場には300人ほど入るので、会場になるべくたくさんの参加者に来ていた
だきたいと思っています。
2.
OPACのアクセス数と検索数
中井(NDL)
コメントの中で、上田先生からはNDL-OPACが本来はもっと使われるべ
きなのになぜ使われていないのかという点、また北先生から、NDLのいろいろなシステ
ムの使いづらさという点についてご指摘をいただきました。これらについては、常々考
えており、NDL-OPACも見た目を変えれば少しは親しみやすくなるかとも思いますが、
なかなかうまくいっていません。
トップページアクセスと検索数についてですが、NDL-OPACの検索数は月に100万件
程度です。
相原(NDL)
NDL-OPACトップページへのアクセス数は、平成19年度で年間約412万
件、検索数は年間約1700万件です。
上田(慶應義塾大学)
トップページのアクセス数を調べれば、どこのOPACも同じよう
に利用状況を把握できると思いました。NDL-OPACの場合、トップページ以外から入る
ことはできなかったと思いますが。
相原(NDL) 2008年3月から、トップページを経由せずに、URLでレコード番号を直接
指定して検索できるようになっています。しかし、統計ではその数についてはカウント
していません。
中井(NDL) このように、より使ってもらえるよう努力はしています。1700万件という
検索数については、本来であればもっと検索数が多くてもいいという気はします。
3. 民間MARCの導入について
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平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
柴田(帝塚山大学) 今回、NDLでNS-MARCを導入することに決まったということです
が、今後、それが変わる可能性はあるのでしょうか。
相原(NDL) 今回の民間MARCの導入は、民間MARC各社とのパートナーシップのよう
な枠組みの中ではなく、通常の契約の枠組みの中で行っています。ですから、将来行う
入札の結果によっては、導入MARCが変わるということはあり得ます。
4.
NDLSHとBSHの統合について
北(大阪市立大学大学院) 主題索引ツールとして、NDLSHとBSHを統合してNSH(日
本件名標目表)を作る気はあるでしょうか。
中井(NDL) 作りたいとは思っていますが、具体的にどのようにして統合するかという
ところまでは行っていません。今後、進めていかなければいけません。
北(大阪市立大学大学院) それは新方針の中には含まれていますか。
中井(NDL) 含まれています。5年の間にもっと具体化していきたいと思います。
5. 全国書誌と総合目録の関係に対する期待
根本(東京大学大学院) 今回、収集書誌部が発足した意義というのは、全国書誌と総合
目録の関係が整理されるかもしれないということだと思っています。先ほど吉本さんが
包含図で示された、全国書誌と総合目録の関係というものが、NDLが開館してから60
年、ずっと議論の一つの的であったのではないかと思います。直接そういう議論はなか
ったにしても、NDLが全国の書誌コントロールの中でどういう位置付けにあるかという
ことは、ずっと議論があったわけです。そういう意味で今回、収集部門と書誌部門が一
つの組織になって、それが整理されることを私は期待しています。
6.
NDL-OPACの書誌データダウンロード機能について
白髪(横浜市中央図書館) NDL-OPACからダウンロードできる書誌データの対象はどの
部分でしょうか。書誌データを作成する際、MARCにないデータをNDLのデータから取
り込めるかということを知りたいのですが、いかがでしょうか。
本橋(NDL) 基本的には資料群による制限はありません。テクニカルリポートのように、
ダウンロード項目に違いがあるものもありますが、一般資料群や雑誌記事索引をはじめ、
基本的にはすべての資料にダウンロード機能を付け、ダウンロードした書誌データは自
由にご利用いただける予定です。
白髪(横浜市中央図書館)
横浜市立中央図書館の図書館システムに取り込むことは可能
ですか。
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平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
本橋(NDL) ご利用の形態として、そのようなことも可能だと思っています。データの
形式はTSV形式ですが、図書館システムのパッケージ調査結果等を拝見した結果、TSV
形式でも取り込めるものが多かったと思います。
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平成 20 年度書誌調整連絡会議記録集
■閉会あいさつ■
田屋 裕之(国立国会図書館収集書誌部長)
本日は長時間にわたりまして、ご報告・ご意見を賜りありがとうございました。ご指摘い
ただいたことに関しては、ご説明すればご理解いただけること、あるいはもう少し積極的に
我々自身の中で変革していかなければいけないこと、あるいは世の中全体の中で共通した認
識を持っていかなければいけないこと、いろいろなレベルのものがあると受け止めました。
NDLでは、「業務・システム最適化計画」 37を2008年3月に固め、今後5年間で館全体の業
務を最適化していこうと取り組んでいます。先ほど当館のデータベースのわかりにくさにつ
いてご指摘をいただきましたが、この計画の取り組みの中で、これらをより使いやすくする
ことを考えています。現在NDLには40近いシステムが個別にあり、それぞれが固有にインタ
ーフェース、データベース、ハードウェア、検索などを持っているので、そうしたシステム
をなんとか統合していって、より使いやすい形にしていくのです。少なくともプラットホー
ムについてはいくつかの基本的なものに統合していき、検索についてはより横断的かつ統合
的な検索ができるようなシステムの構築を目指して検討しています。
こういった大きなイメージは持っているのですが、実際にどう具体化していくかとなると、
NDL内にもいろいろな議論がありますし、予算上の制約をはじめ、いろいろと詰めていく必
要もあります。したがって、すぐには実現できない部分も多くあるのですが、今後ともご意
見を伺いながら、より使われる、より使いやすいシステム、そのシステムの構築を含めた書
誌コントロールの実現というものを考えていきたいと思います。
また、上田先生から、NDLの認知度が低い、あるいはNDL-OPACが国立図書館のOPAC
のわりにはあまり使われていないというご指摘があったことについては、もっともだと思い
ます。多少アクセス数を増やしてそれでいいかというレベルではなく、本来あるべき姿の10
分の1程度しか使われていないかもしれないというくらいの認識を持って、我々は取り組ん
でいかなければいけないと思っています。
大変示唆に富む貴重なご発言をいただきましたコメンテーターの先生方、それから各機関
からお越しいただいてご報告いただいた皆様、本日はまことにありがとうございました。
国立国会図書館. “国立国会図書館業務・システム最適化計画”.
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/pdf/optimization.pdf, (参照 2009-03-31).
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