...

第8回 NutriRhythm 検討会 「睡眠障害研究の最新事情と動物モデルの

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

第8回 NutriRhythm 検討会 「睡眠障害研究の最新事情と動物モデルの
<産総研からの話題提供>
「新規な不眠症モデルマウス:多様な利用法を目指して」
第8回 NutriRhythm 検討会
宮崎歴
「睡眠障害研究の最新事情と動物モデルの可能性」
(独)産業技術総合研究所
バイオメディカル研究部門
生物時計研究グループ
日時:平成 24 年 12 月 20 日(木)13:30-16:50
不眠症や気分障害は深刻な社会現象となっているが、診断法やその治療法の研究では適切な動
場所:東京国際フォーラム G510
物モデルがない事が一つの大きな障壁になっている。私たちは、一般的な不眠症に外挿できる不
眠症モデル動物の開発を行ってきた。そして、新規なストレス法 PAWW(Perpetual Avoidance from
検討会次第
Water on a Wheel)を見いだし、睡眠リズムの乱れや睡眠の質の低下を示す新規な不眠症モデル
マウスを開発する事に成功した。継続的かつ馴化しないストレスにより慢性的な不眠症を引き起
こしていることが大きな特徴となっている。また、ヒトの睡眠障害に似た入眠障害や中途覚醒、
13:30-13:40
開会の辞
大石
(独)産業技術総合研究所
勝隆
バイオメディカル研究部門
グループリーダー
生物時計研究グループ
昼間の眠気の出現なども認められる。我々はこのモデルマウスを作成するためのツール開発およ
びモデルマウスを使用した不眠症改善効果を示す物質のスクリーニングならびに不眠症のバイオ
マーカー探索などに挑戦している。さらに、このモデルマウスが気分障害研究への利用可能性に
13:40-14:55
招待講演(1)
三島 和夫 先生
ついて検討をおこなっていることにもふれたい。
(国立精神・神経医療研究センター)
「ヒトの睡眠・体内時計機能を計り、医療と生活習慣の改善に生かす」
MEMO
14:55-15:10
コーヒーブレイク
15:10-16:00
招待講演(2)
安尾
しのぶ
先生
(九州大学
大学院
農学研究院)
「冬季うつ病の動物モデルを用いた病態解析:神経行動から代謝特性まで」
16:00-16:40
宮崎
産総研からの話題提供
歴
主任研究員 (バイオメディカル研究部門
生物時計研究グループ)
「新規な不眠症モデルマウス:多様な利用法を目指して」
連絡先:(独)産業技術総合研究所
バイオメディカル研究部門
生物時計研究グループ内
ニュートリズム検討会事務局
宮崎 歴
TEL:029-861-6053
E-mail: [email protected]
16:40-16:50
閉会の辞
近江谷
(独)産業技術総合研究所
克裕
部門長
バイオメディカル研究部門
<招待講演1>
「ヒトの睡眠・体内時計機能を計り、医療と生活習慣の改善に生かす」
三島
和夫 先生
国立精神・神経医療研究センター
精神保健研究所
精神生理研究部
<招待講演2>
「冬季うつ病の動物モデルを用いた病態解析:神経行動から代謝特性まで」
安尾
九州大学
資源生物科学部門
しのぶ
大学院
先生
農学研究院
動物・海洋生物資源学講座
脳病態統合イメージングセンター・画像診断治療研究部
動物の冬眠や渡りなどに見られるように、地球上の生物は冬季の厳しい環境を乗り越えるため
生活習慣病の発症には不適切な栄養・食事、運動、喫煙、飲酒等が深く関与している。「21 世
に、季節の変化を日長から読み取って自らの生理機能や活動性を調節するメカニズムを身につけ
紀における国民健康づくり運動(健康日本 21)」ではこれらと並び、睡眠もまた重要な生活習慣
てきた。一方、ヒトは文明の発達以来自然から遠ざかり、野生生物のような生存戦略としての季
の一つとして取り上げられ、健康寿命の延伸のため睡眠により十分な休養が得られている国民を
節性は不必要となった。しかし、ヒトでも情動や睡眠、エネルギー代謝、また摂食行動などに季
増やすことを目標としている。しかしながら未だ多くの人々は、不眠症や睡眠時無呼吸症候群な
節性が見られ、極度の場合は季節性感情障害(SAD)に繋がる。SAD は特定の季節に抑うつや過眠、
どの睡眠障害、通勤や長時間労働による短時間睡眠、夜型生活や交代勤務等等による不規則な生
過食、炭水化物欲求増大などの特徴的な症状を示す気分障害であり、その多くが冬季に発症する
活リズムなどさまざまな睡眠問題を抱えている。
ことから「冬季うつ病」とも呼ばれる。これまで、SAD に関する臨床学的な知見が蓄積されてき
慢性的な睡眠障害、不適切な睡眠習慣、不規則な生活リズムは、食事摂取時間の乱れやアルコ
たが、発症機序の解析や新規治療法の開発に欠かせない病態モデル動物が未確立であったため、
ール過飲等の原因になるのみならず、糖代謝、脂質代謝、血圧調節に関わるさまざまな神経内分
基礎研究は停滞している。特に、実験用マウス系統が人工飼育下で季節繁殖性を失ったことが大
泌や自律神経機能の障害を直接的に引き起こすことが知られている。例えば、過度の長短時間睡
きな障壁であった。我々の研究室では最近、これらのマウスでも視床下部−下垂体−副腎軸や情動
眠や慢性不眠症、睡眠時無呼吸症候群は、それぞれに異なったメカニズムで糖代謝や摂食に関わ
関連行動、また SAD に関連が深い脳内セロトニン神経系が日長に調節されることを見出した。こ
る糖質コルチコイドやグレリン・レプチン等の分泌異常、夜間高血圧の原因となる交感神経緊張
のことは、従来 SAD のモデルに不適切と考えられてきたマウスが、基礎解析の強力なツールとな
をもたらす。また生物時計調節に関わる一部の時計蛋白は脂質代謝や血圧調節に密接に関わって
り得ることを示唆する。本講演では、このマウスモデルを用いて得られた代謝特性や概日リズム
いる。回復感を伴わない夜間睡眠は日中の精神身体の機能障害(QOL 低下)を生じ、そのことが
特性などの様々な解析結果を SAD の病態と比較し、モデル動物としての可能性を探るとともに、
更に不活発な生活スタイルを招き生活習慣病を悪化させる。
季節リズムを考慮した治療や予防への展開についても議論したい。
このように、健やかな夜間睡眠による十分な休養、翌朝の快適な目覚めと身体活動、それらを
支えるさまざまな生理機能が相互に調和することで心身の健康は保たれる。最適な睡眠習慣を決
定するには、個人の体内時計の特徴と必要睡眠時間を知る必要があるが、特殊な測定環境と時間
的・身体的な負担が大きく容易ではない。我々はヒトの体内時計と必要睡眠量を簡便に計測する
ための取り組みを進めており、本セミナーではその一端をご紹介する。
MEMO
MEMO
Fly UP