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労災保険 Ⅲ 労働保険・社会保険

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労災保険 Ⅲ 労働保険・社会保険
働く人の基礎知識
Ⅲ 労働保険・社会保険
1
労災保険
❶ 労災保険は、労働者を 1 人でも雇用していれば、すべての事業所に適用
ポイント
されます。
❷ 加入対象者は、雇用形態や名称にかかわりなく、すべての労働者です。
また、労働者でなくても加入できる場合もあります。
❸ 保険料は、全額、事業主が負担します。
❹ 労災保険のお問い合せ先は、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署です。
労災保険
●労災保険とは、労働者が「業務上」または「通勤途上」で災害などにあって
ケガをしたり病気にかかった場合に、労働者自身や遺族の生活を保護するた
めに必要な給付を行う制度です。
●「業務上」の災害といえるためには
㋐労働者が、事業主の指揮命令下に置かれている状態でケガをしたり、病
気にかかったりしたこと(業務遂行性)
㋑労働者が従事している業務とケガなどとの間に客観的な関係があること
(業務起因性)
の 2 つの要件を満たさなければなりません。
●「通勤途上」の災害にあたるかどうかは、労働者が合理的な方法および経路
によって通勤していたかどうかなどを、総合的に判断して認定します。
適用事業所
●原則として、労働者を一人でも雇用していると、業種や規模に関係なく労災
保険の適用事業所となり、事業主は保険加入手続をしなければなりません。
なお、事業主が加入手続をしていなくても、保険給付が受けられる場合があ
ります。
適用労働者
●雇用関係がある労働者であれば、全員が対象となります。また、中小企業事
業主とその家族従業者、海外派遣者などは、特別加入できる場合があります。
(参照 43 ページ)
30
1 労災保険
保険料
●事業主が全額を負担し、労働者の負担はありません。
給付の種類
●労災保険には、次のような 7 種類の保険給付があります。
●本来の給付のほか、労働福祉事業の一環として、保険給付金に加算される特
別支給金の制度もあります。
㋐療養(補償)給付:治療や診察を受けられます。
㋑休業(補償)給付:賃金が受けられない場合に、休業の 4 日目から「給
付基礎日額」(平均賃金)の 6 割が支給されます。
なお、特別支給金として 2 割が上乗せ支給されます。
㋒傷病(補償)年金:ケガや病気による療養を開始してから、1 年 6 か月
を経過しても治らない場合に、年金が支給されます。
㋓障害(補償)給付:障害が残っている場合に、障害の程度に応じて年金
または一時金が支給されます。
㋔介護(補償)給付:傷病(補償)年金や障害(補償)給付を受給し、現
に介護を受けている場合に、その介護に要した費用が支給されます。
㋕遺族(補償)給付:死亡した場合に、遺族に対して年金や一時金が支給
されます。
㋖葬祭料(葬祭給付):葬祭を行った者に対して支給されます。
●「給付基礎日額」とは、原則として、給付日額を算定すべき事由の発生した
日(例えば、ケガをした日)以前 3 か月間に、その労働者に対して支払われ
た賃金の総額を、その期間の総日数で割った金額をいいます。
請求の手続き
●労災保険の給付を受けるには、労働者またはその遺族が、所定の保険給付請
求書に必要事項を記載して、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に提
出しなければなりません。
●事業主には、労働者の請求手続きに協力する義務があります。
●保険給付の請求権は、2 年(障害給付と遺族給付については 5 年)で時効に
より消滅します。時効の起算日は、給付の種類ごとに定められています。なお、
傷病(補償)年金は政府が職権で支給決定するので時効の問題は生じません。
31
働く人の基礎知識
Ⅲ 労働保険・社会保険
2
ポイント
2 雇用保険
雇用保険
❶ 雇用保険は、労災保険同様、労働者を 1 人でも雇用していれば、すべての
事業所に適用されます。
❷ パートタイム労働者も一定の要件を満たせば加入することができます。
(参照 58 ページ)
❸ 保険料は、労働者・使用者が負担割合に応じて負担します。
❹雇用保険を受給する手続きは、自分の住所地を管轄する公共職業安定所です。
雇用保険
●雇用保険とは、労働者が失業した場合などに、労働者の生活の安定を図ると
ともに、再就職を促進するために必要な給付などを行う制度です。
●雇用保険には、失業者の生活安定のために支給する失業等給付のほか、雇用
保険二事業が含まれます。
適用事業所
●原則として、労働者を一人でも雇用していると、業種や規模に関係なく雇用
保険の適用事業所となり、事業主は保険加入手続をしなければなりません。
なお、事業主が加入手続をしていなくても、過去 2 年間をさかのぼって加入
し、保険の給付を受けられる場合があります。
失業等給付の種類
●失業等給付には、次のような 4 種類の給付があります。
㋐求職者給付:被保険者が失業した場合に生活の安定を図り求職活動を容
易にするために支給されます。雇用形態により給付内容は異なります。
㋑就職促進給付:再就職を促進するために支給されます。
㋒教育訓練給付:主体的な能力開発を支援するために支給されます。
㋓雇用継続給付:高年齢者や育児・介護休業取得者の職業生活の円滑な継
続を援助、促進するために支給されます。
基本手当
●求職者給付の大半を占めるのは「基本手当」です。基本手当とは、被保険者
が失業したとき支給される給付です。
●基本手当は、原則として離職した日の翌日から 1 年間に限って支給されます。
したがって、たとえ所定の給付日数が残っていても、1 年間の受給期間を経
過してしまえば受給資格を失います。
(例:所定給付日数 150 日(一般離職者)の場合)
受給期間 (1 年)
ニ
適用労働者
●雇用関係がある労働者であれば、全員が対象となります。ただし、①パート
タイム労働者(短時間労働者)は一定の要件が必要(参照 58 ページ)となり、
② 65 歳以降に新たに雇用された人などは適用除外となります。
なお、適用労働者は、雇用形態と年齢によって一般被保険者、高年齢継続被
保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の 4 種類に区分されます。
保険料
●賃金総額に雇用保険料率を乗じた額を事業主と労働者がそれぞれ負担割合に
応じて負担します。たとえば、一般の事業所の場合、事業主の負担は賃金総
額の 1000 分の 9.5 で、労働者の負担は 1000 分の 6 となります。
32
離職の日
の翌日
待期
(7 日)
給付制限
(3 カ月)
支給されない
支給されない
受給者資格
決定日
10 日
打ち切る
認定支給
(140 日)
受給期間
満了日
●基本手当の受給資格者となるには、次の 3 つの要件を満たす必要があります。
㋐離職によって、被保険者資格の喪失が確認されていること
㋑労働の意思・能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない状
態にあること
㋒離職の日以前 2 年間に、賃金支払の基礎となった日数が 11 日以上ある
雇用保険に加入していた月が通算して 12 か月以上(倒産・解雇・雇止
め等会社都合により離職された場合は離職の日以前 1 年間に 6 か月以
上)あること 33
働く人の基礎知識
Ⅲ 労働保険・社会保険
●基本手当を請求するには、自分の住所地を管轄する公共職業安定所に、次の
書類を提出し、求職の申し込みをしなければなりません。
㋐雇用保険被保険者離職票
㋑雇用保険被保険者証
㋒印鑑
㋓本人の住所及び年齢を確認できる官公署が発行した写真つきのもの
(運転免許証、住民基本台帳カード(写真付き)など)
㋔写真 2 枚(縦 3cm ×横 2.5cm 程度の正面上半身のもの)
㋕本人名義の普通預金通帳(郵便局を除く)
●基本手当は、受給資格者が公共職業安定所に来所し、求職の申し込みを行っ
た日(受給資格決定日)から失業状態の日があっても、通算して 7 日間は支
給されません。この期間を「待期」といいます。
● 基本手当の支給を受けるには、受給資格決定日から 4 週間に 1 回ずつ設定
された「失業認定日」に求職の申し込みを行った公共職業安定所に出頭し、
直前 28 日間の各日について「失業の認定」を受けなければなりません。
失業の認定
時間
4 週 4 週 4 週
●基本手当の所定給付日数は、受給資格者の離職時の年齢、被保険者期間、離
職理由などに応じて、次の表のように定められています。
●所定給付日数
①倒産・解雇・雇止め及びやむを得ない理由で離職を余儀なくされた者 ( 特定受
給資格者及び特定理由離職者 ) の場合(③を除く)
被保険者であった
期間
5 年以上
10 年未満
10 年以上
20 年未満
90 日
120 日
180 日
ー
90 日
180 日
210 日
240 日
240 日
270 日
45 歳以上 60 歳未満
180 日
240 日
270 日
330 日
60 歳以上 65 歳未満
150 日
180 日
210 日
240 日
区 分
1 年未満
30 歳未満
30 歳以上 35 歳未満
35 歳以上 45 歳未満
90 日
1 年以上
5 年未満
20 年以上
*「特定受給資格者」とは、‥‥離職理由が、倒産・解雇等により再就職の準備をする時間的余裕がなく
離職を余儀なくされた者
*「特定理由離職者」とは……特定受給資格者外であって、期間の定めのある労働契約が更新されなかっ たこと、 その他やむを得ない理由により自己都合退職した者
*「特定受給資格者」「特定理由離職者」に該当した場合、失業給付(基本手当)の所定給付日数が手厚 くなる場合があります。
②自己都合・定年退職」
などにより離職した者 ( 一般離職者 ) の場合 ( ③を除く)
離職 受給資格 失業の認定 失業の認定 失業の認定
決定日
● 基本手当は、原則として 4 週間に 1 回、失業の認定を受けた日数分が支給
されます。
●基本手当の日額は、受給資格者の賃金日額(離職前の 6 か月の賃金の合計額
を 180 で割った額)のおよそ 50 ~ 80%(60 歳以上 65 歳未満の方は
45 ~ 80%)に相当する額です。また、賃金日額には、離職時の年齢に応
じて上限額が定められており、下限額も一律に定められています。
なお、基本手当の日額は、毎年 8 月に見直しされ、変更される場合があります。
34
2 雇用保険
被保険者であった
期間
区 分
1 年未満
全 年 齢
1 年以上
5 年未満
5 年以上
10 年未満
10 年以上
20 年未満
20 年以上
90 日 120 日 150 日
③就職困難者の場合
被保険者であった
期間
区 分
45 歳未満
45 歳以上 65 歳未満
1 年未満
150 日
1 年以上
5 年未満
5 年以上
10 年未満
10 年以上
20 年未満
20 年以上
300 日
360 日
*「就職困難者」とは、‥‥ⓐ身体障害者 ⓑ知的障害者 ⓒ刑法等の規定により保護観察に付された者
ⓓ社会的事情により就職が著しく阻害されている者 35
働く人の基礎知識
Ⅲ 労働保険・社会保険
3
教育訓練給付制度
●教育訓練給付制度は、一定の要件を満たす一般被保険者(在職者)または一
般被保険者であった者(離職者)が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受
けて、修了した場合に費用の一部が被保険者期間 3 年以上 20%(上限 10
万円)
(初回に限り、被保険者期間 1 年以上で受給可能)支給されるものです。
●給付金を請求するには、教育訓練の受講終了日の翌日から起算して 1 か月以
内に、必要書類を添付して住所地を管轄する公共職業安定所に申請します。
ポイント
3 健康保険
健康保険
❶ 健康保険は、事業主や労働者に加入の自由があるのではなく、加入要
件さえ満たしていればすべて加入しなければなりません。
❷ 保険料は事業主・労働者が折半して負担します。
❸ パートタイム労働者も一定の要件を満たせば、被保険者になります。
(参照 60 ページ)
❹ 健康保険のお問い合せ先は、協会けんぽの場合は事業所の所在地を管
轄する全国健康保険協会、組合健保の場合はその組合です。
健康保険
●健康保険とは、事業所で働く労働者とその家族が加入する公的医療保険をい
会社を辞めた理由によっては、手当がもらえる時期が遅くなると聞
いたのですが…
失業給付の手続きに必要な離職票の離職理由によっては、給付制限
を受けて受給が遅れることがあります。離職理由が、解雇、倒産に
よる退職、契約期間満了、事業主勧奨による退職、定年であれば、
給付制限を受けません。手続きをしてから 7 日間の待期期間を経て、
8 日目からが支給の対象となり、求職の申し込みの日から約 1 か月
後に最初の手当が支給されます。ところが、「自己都合」の退職や懲
戒解雇の場合は、待期期間に加え給付制限(3 か月)を過ぎないと
手当が支給されません。つまり、4 か月たってやっと手当が支給さ
れることになります。(なお、「自己都合」の退職の場合でも、やむ
をえない事情によるものと職業安定所が判断した場合は、給付制限
にかからない場合があります。)離職票を受け取るときには、賃金額
や離職理由などの内容に間違いがないかどうかを必ず確認してくだ
さい。
います。健康保険には、全国健康保険協会(協会けんぽ)が保険者である健
康保険と健康保険組合が保険者である健康保険(組合健保)の 2 種類があり
ます。
㋐すべての法人事業所および労働者 5 人以上の個人事業所は、強制的に保
険に加入をしなければなりません(強制適用事業所)。
㋑ 健康保険では、働いている労働者(被保険者)だけではなく、その
人の家族なども「被扶養者」として保険給付を受けることができます。
「被扶養者」となれる人は以下の条件を組み合わせて判断されます。
①被保険者との一定の親族関係があること
②被保険者の収入によって「生計が維持」されていること
③被保険者と一緒に生活(同居)していること
★①と②が条件 配偶者、被保険者の父母、祖父母、子供、孫など
★①と②と③が条件 被保険者の兄姉、配偶者の父母・祖父母など
「生計が維持」とは、被扶養者となる人の年収が 130 万円(60 歳以上
の人または障害者は 180 万円)未満で被保険者の年収の 2 分の 1 未満
であることをいいます。
保険料
●保険料は、事業主と労働者(被保険者)が半分ずつ負担します。
●保険料の納付は事業主が行い、労働者(被保険者)が負担する保険料は、翌
月に支払われる給料から差し引かれます。
36
37
働く人の基礎知識
Ⅲ 労働保険・社会保険
●保険料は、労働者(被保険者)の「標準報酬月額」と「標準賞与額」に「保
険料率」を掛けて算出します。
㋐「標準報酬月額」は、毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅(第
1 級から第 47 等級まで)で区分されたもので、基本給、残業手当、通
勤手当、家族手当など労務の対償として支払われるすべてのものが含まれ
ます。
㋑「標準賞与額」は、3 か月を超える期間に支払われる賞与、期末手当な
どで、年間賞与の累計額 540 万円が上限額とされています。
㋒「保険料率」は次のとおりです。
★協会けんぽ(神奈川県)の場合、1000 分の 93.3(被保険者負担分は、
1000 分の 46.65)(なお、介護保険に該当する被保険者は 1000 分
の 108.3)
★組合健保の場合、1000 分の 30 ~ 100 の範囲
主な給付の種類
●健康保険では、業務外の事由により病気になったりケガをしたときに、必要
な医療の給付や手当金の支給が受けられます。
●健康保険には、次のような種類の保険給付があります。
㋐療養の給付
労働者(被保険者)が健康保険を扱っている病院・診療所に「被保険者
証」を提示すると、診察、治療、薬の支給、入院などの必要な医療を治
るまで受けられます。通院・入院とも医療費の 7 割が療養の給付とし
て支給され、残りの 3 割が自己負担となります。
㋑家族療養費
被扶養者についても、通院・入院とも医療費の 7 割が家族療養費とし
て支給され、残りの 3 割が自己負担となります。なお、3 歳未満の被
扶養者の自己負担は 2 割です。
㋒高額療養費
労働者(被保険者)
・被扶養者が同一月に支払った医療費の自己負担額が、
1 つの病院・診療所ごとに計算して一定額を超えたときは、本人の申請
により高額療養費として超えた金額が後から払い戻されます。
㋓傷病手当金
労働者(被保険者)が病気やケガのために仕事につけない日が 4 日以
上続き、その間給料が支給されないときに、4 日目から 1 年 6 か月
38
3 健康保険
の範囲内で、休んだ日 1 日につき、原則として標準報酬日額(標準報酬
月額を 30 で割った額)の 3 分の 2 が傷病手当金として支給されます。
㋔出産育児一時金・出産手当金
労働者(被保険者)あるいは被扶養者である妻が出産をしたとき、一児
につき 42 万円が出産育児一時金として支給されます。
労働者(被保険者)が、出産で仕事を休み、その間給料が支給されない
ときは、分娩日以前 42 日(多胎妊娠の場合は 98 日)から実際の分娩
日後 56 日までの期間、1 日につき標準報酬日額の 3 分の 2 が出産手
当金として支給されます。
㋕埋葬料・家族埋葬料
労働者(被保険者)が死亡したときは、埋葬を行った家族に 5 万円が埋
葬料として支給されます。被扶養者が死亡したときは、被保険者に家族
埋葬料として 5 万円が支給されます。
任意継続
●事業所を退職すると健康保険の被保険者の資格を失うことになります。しか
し、被保険者期間が継続して 2 か月以上あって、20 日以内に被保険者とな
るための届出をした場合には、退職後も引き続き 2 年間を限度として、個人
で被保険者となることができます。これを「任意継続被保険者」といい、そ
の家族も在職中と同じ給付(傷病手当金、出産手当金の支給は除く)が受け
られます。ただし、保険料は、任意継続の場合は全額自己負担となります。
8 月 15 日に中途退社しました。保険料は日割りで計算されるのでしょうか。
保険料は月単位で計算され、日割りで計算することはありません。ま
た、保険料の計算の対象となるのは、入社した月から退職した月の前
月分までです。このため、8 月に退職した場合は、それが何日であろ
うと、保険料の計算は 7 月分で打ち切られます。ただし、8 月 31 日
退職の場合のみ、8 月分も一緒に徴収されます。逆に、入社した日が
たとえ月末の日であっても、その月は 1 か月分の保険料として計算さ
れます。
39
働く人の基礎知識
Ⅲ 労働保険・社会保険
4
4 厚生年金保険
厚生年金保険
❶ 厚生年金保険は、健康保険同様、事業主や労働者に加入の自由があるので
ポイント
はなく、加入要件さえ満たしていればすべて加入しなければなりません。
❷ 厚生年金保険は、基礎年金(国民年金)の上乗せ給付をする年金制度です。
❸ パートタイム労働者も一定の要件を満たしていれば、被保険者になります。
(参照 60 ページ)
❹ 厚生年金保険のお問い合わせは、事業所の所在地を管轄する年金事務所です。
厚生年金保険
●厚生年金保険とは、事業所で働く人のための年金制度で、老齢になったり、
障害者となって働けなくなったり、死亡したときのために労働者や家族の生
活資金を準備する制度です。
㋐事業所で働く労働者の年金は、2 階建ての建物をイメージするとわかり
やすく、1 階部分に当たるのが、年金制度の基礎になる基礎年金(国民
年金)。2 階部分が独自の厚生年金保険です。したがって、老齢になっ
て年金を受け取るときは、国民年金から老齢基礎年金が、厚生年金保険
からは老齢厚生年金が支給されることになります。
㋑すべての法人事業所および労働者 5 人以上の個人事業所は、強制的に保
険に加入しなければなりません(強制適用事業所)。
国民年金基金
厚生年金基金
職域担当部分
厚生年金保険
共済年金
国民年金(基礎年金)
サラリーマンの妻
〈第 3 号被保険者(第 2 号被保険者の被扶養配偶者 )〉
自営業者世帯
〈第 1 号被保険者〉
40
サラリーマン世帯
〈第 2 号被保険者〉
公務員等
〈第 2 号被保険者〉
保険料
●保険料は、健康保険と同じように、事業主と労働者(被保険者)が半分ずつ
負担します。
●保険料の納付は事業主が行い、労働者(被保険者)が負担する保険料は、翌
月に支払われる給料から差し引かれます。
●保険料は、労働者(被保険者)の「標準報酬月額」と「標準賞与額」に「保
険料率」を掛けて算出します。
㋐「標準報酬月額」は、毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅(第
1 級から第 30 級まで)で区分されたもので、基本給、残業手当、通勤手当、
家族手当など労務の対償として支払われるすべてのものが含まれます。
㋑「標準賞与額」は、3 か月を超える期間に支払われる賞与、期末手当な
どで、150 万円が上限額とされています。
㋒ 保険料率は、1000 分の 160.58(平成 23 年 9 月分から 164.12)
ですから、被保険者の負担は、半分の 1000 分の 80.29(平成 23 年
9 月分から 82.06)となります。
主な給付の種類
●老齢厚生年金
㋐ 65 歳から国民年金の老齢基礎年金に上乗せする形で、老齢厚生年金が
支給されます。
㋑老齢厚生年金の受給要件は、次のとおりです
①老齢基礎年金を受ける資格期間(公的年金の保険料納付済期間、保険
料免除期間及び合算対象期間を合算した期間が 25 年以上)を満たし
ていること。
②厚生年金保険に加入した期間が 1 か月以上あること。
③ 65 歳に達していること。
㋒ 60 歳代前半の老齢厚生年金
現在、経過措置として厚生年金保険の被保険者期間が 1 年以上あり、老
齢基礎年金の受給資格期間を満たしていれば、60 歳から「部分年金(報
酬比例部分相当の老齢厚生年金)」が支給されます。また、性別及び生
年月日に応じて 61 歳~ 64 歳の間で「特別支給の老齢厚生年金」の支
給が開始されます。
なお、支給開始年齢は段階的に引き上げられ、支給は平成 41(2029)
年度(男性は平成 36(2024)年度)までとなっています。
41
働く人の基礎知識
Ⅲ 労働保険・社会保険
㋓ 65 歳以上 70 歳未満の人が老齢厚生年金を受給しながら厚生年金保険
の被保険者となるような働き方をすると、老齢基礎年金は全額支給され
ますが、老齢厚生年金は賃金の額に応じて全部又は一部が支給停止され
る場合があります。ただし、厚生年金保険に加入せずに働く場合(パー
トタイム労働者など)は、老齢厚生年金も全額支給されます。
●障害厚生年金
㋐労働者(被保険者)が、在職中の病気やケガにより一定の障害(障害等
級 1 級から 3 級)が残った場合、障害厚生年金が支給されます。
㋑障害等級 1 級・2 級に認定された場合は、障害基礎年金に上乗せする
形で障害厚生年金が支給されます。さらに程度の軽い障害等級 3 級の
場合は、障害厚生年金だけが支給されます。
㋒障害等級 3 級に認定されないような軽い障害であっても、一時金とし
て「障害手当金」が支給されることがあります。
●遺族厚生年金
㋐①労働者(被保険者)が死亡した場合、②被保険者であった期間に初診
日のある傷病によって初診日から 5 年以内に死亡した場合、③ 1 級ま
たは 2 級の障害厚生年金の受給権者が死亡した場合、④老齢厚生年金
の受給者または老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている人が死亡し
た場合に、遺族に遺族厚生年金が支給されます。
㋑遺族厚生年金が受けられる遺族は、死亡した人に生計を維持されていた
配偶者、子、父母、孫、祖父母です。この場合、妻以外の遺族は一定の
要件を満たす必要があります。
㋒子のある妻や子は、遺族厚生年金の他に遺族基礎年金もあわせて支給さ
れます。この場合、子は一定の要件を満たす必要があります。
4 厚生年金保険
離婚時の厚生年金の分割制度
●厚生年金の分割制度とは、離婚時に財産分与として、離婚当事者による厚生
年金分割請求に基づいて、厚生年金の標準報酬を当事者間で分割できる制度
で、①合意分割制度(平成 19 年 4 月実施)と② 3 号分割制度(平成 20
年 4 月実施)があります。
①合意分割制度
合意分割制度とは、平成 19 年 4 月 1 日以後の離婚において、3 号分割制
度施行後の第 3 号以外の婚姻期間につき、当事者間の合意や裁判手続きに
より定められた分割割合(按分割合の上限は 50%)に基づいて行なわれる
年金分割です。分割される期間は制度施行前の婚姻期間も対象となります。
② 3 号分割制度
3 号分割制度とは、平成 20 年 4 月 1 日以後の離婚において、婚姻期
間のうち平成 20 年 4 月 1 日以後離婚するまでの第 3 号被保険者期間
のみが対象となり、当事者間の合意や裁判手続きは必要とされず、当事
者(第 3 号被保険者であった方)からの請求により 2 分の 1 の割合で
年金分割が行なわれます。
●平成 20 年 4 月 1 日以後は合意分割制度と 3 号分割制度が同時並行するこ
とになります。
●年金分割は厚生年金の報酬比例部分に限られ、基礎年金や厚生年金基金の上
乗せ部分は対象になりません。
●分割された年金は受給者本人の受給開始年齢に到達してからもらえます。
●合意分割、3 号分割どちらも分割の請求期限は原則として離婚したときから
2 年です。(問い合せ先 年金事務所 参照 76 ページ)
国民年金の第 3 号被保険者
● 原則 65 歳未満で事業所で働く人や公務員(ともに「第 2 号被保険者」と
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いいます)に扶養されている 20 歳以上 60 歳未満の配偶者(年収が 130
万円未満の人)は国民年金の第 3 号被保険者となります。保険料は、配偶
者が加入している厚生年金や共済組合が一括して負担しますので、個別に納
める必要はありません。
●「扶養されている配偶者」は、夫と妻のどちらであってもよく、生計を 1
つにしていれば別居していてもさしつかえありません。実際には健康保険の
被扶養者であれば、第 3 号被保険者と認定されます。
● 第 3 号被保険者の届出は、配偶者の勤務する事業所を通じて、事業所を管
轄する年金事務所に提出されます。
脱サラをして、商売を始めよう思っています。労働者でなくなってしまう
ので、労災保険の適用は受けられなくなってしまうのでしょうか。
「労災保険特別加入制度」という制度がありますので、労働者でなくて
も、労災保険に入ることができます。ただし、この制度は任意のもの
ですから、労働基準監督署に特別加入申請書を提出して、承認を得な
ければなりません。なお、労災保険に特別加入できる者は、
①中小企業事業主とその家族従事者
②自動車の運転手や大工さんなどの一人親方とその家族従事者
③転勤により海外に派遣されている人などです。
※①、②は労働保険事務組合または認定団体を通して手続をすることができます。
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