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ギガビット・イーサネット対応 無しゃへいツイストペアケーブルの開発

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ギガビット・イーサネット対応 無しゃへいツイストペアケーブルの開発
ギガビット・イーサネット対応無しゃへいツイストペアケーブルの開発
ギガビット・イーサネット対応
無しゃへいツイストペアケーブルの開発
The Development of Unshielded Twisted Pair Cables
for Giga-bit Ethernet System
田 中 雄 一
*
Y. Tanaka
要 約
次世代の高速ネットワーク規格としてギガビット・イーサネットが注目されている。この規格では1秒間に 10 億
ビットのデジタル信号を伝送することができ,現在のファスト・イーサネットの 1 0 倍の能力がある。
ここではギガビット・イーサネットシステムの伝送媒体として開発した無しゃへいツイストペアケーブルの評価
結果を紹介する。
キーワード: ギガビット・イーサネット,高速ネットワーク,カテゴリー 5
Summary
The Giga-bit Ethernet system has held public attention as a high-speed network standard for the next generation.
This standard allows that the system to transmit digital signals of a billion bits per second, that is, it has 10 times
ability of fast-Ethernet system.
This paper introduces estimation results of unshielded twisted pair cables which has been developed as a transmissive
equipment used for the giga-bit Ethernet system.
Key words: Giga-bit Ethernet, High-speed network, Category 5
1.まえがき
2.ギガビット・イーサネット(1000BASE-T)
情報産業の発展に伴い,LAN システムでは高速化が図ら
ギガビット・イーサネット用のツイストペアケーブル規
れている。現在のシステムである 10BASE-T や 100BASE-
格(1000BASE-T)は,現在,IEEE 802.3ab 委員会で検討
T, 100VG-AnyLAN などには,TIA/EIA 568A によるカテゴ
中である。1000BASE-T の標準化を待たずに対応ケーブル
リー 5 ケーブルが推奨されており =,>,当社では SGLPEV
を開発・製品化するのは,大体の基本技術が確定している
?
として製品化し対応している 。
こと,およびユーザーからの先行配線の要求があることに
近年,さらに伝送速度を上げた次世代高速 LAN となるギ
よる。
ガビット・イーサネット(1000BASE-T)の規格化検討が
1000BASE-T 対応ケーブルは従来のカテゴリー 5 ケーブ
行われ,注目を集めている。カテゴリー 6 ケーブルの規格
ル同様,4 対の無しゃへいツイストペアに RJ45 コネクタを
がまだ決定していない中で「ギガビット」対応が市場の現
使用する。しかし,従来の 10BASE-T と異なる点は,1 対
実的なテーマとなっており,従来のカテゴリー 5 ケーブル
で双方向通信し,4対全てを使って1ギガビット/秒の通信
以上の特性を持つケーブルの開発が必須となった。
を実現する新しい並列伝送方式にある。1000BASE-T に従
このような動きに対応し,従来品 SGLPEV に対して性能
来のカテゴリー5ケーブルを用いても,通信が不可能なわ
を上げ,350MHzまで仕様設定された UGLPEV ケーブルの
けではないが,規格に対する性能マージン・接続機器に
開発を行なった。
よって不具合が発生することも考えられる。何よりカテゴ
リー5規格には,並列送信による漏話の影響,つまりパ
ワーサム NEXT(Near End Cross Talk:電力和近端漏話減
* 情報通信事業部 通信技術部
衰量)を考慮していないこと,並列送信で重要な意味を持
− 7 −
第94号
平成10年11月
三 菱 電 線 工 業 時 報
Table 1
つケーブルとしてのSkew(対間遅延差)特性が設定されて
いないこと,1000BASE-T が 125MHz までの高周波信号を
ケーブル構造
使用することに対し,カテゴリー 5 では 100MHz までの設
定しかないことなどにより,性能保証が不十分である。
項
導
よって 1000BASE-T に 対応するためには,以上の特 性
お よび システムの実質のマージンとなる パワーサム ACR
Cable construction
目
体
絶縁体
(Attenuation to Cross-talk Ratio:減衰対漏話比)を最低
対撚り
125MHz 以上の帯域まで性能保証することが必要となって
集 合
くる。
シース
仕
様
材 質
電気用軟銅線
サイズ
24AWG (0.53mm)
材 質
充実ポリエチレン
厚 さ
約0.23mm
左撚り
4対,右撚り
材 質
ビニル
厚 さ
約0.5mm
ケーブル外径
約6mm
3.開発目標
従来のカテゴリー 5 に規定されている特性インピーダン
ス・SRL(Structural Return Loss:不均等反射減衰量)
・減
導体
衰量・NEXT に加えて,パワーサムNEXT・パワーサム
ACR・Skew を設定する。周波数帯域は現在規格化が進めら
ポリエチレン絶縁体
れているカテゴリー6の250MHz(審議中)を含む 350MHz
とした。
各目標値(実力値)は以下のとおりである。
ビニルシース
= 特性インピーダンス,S R L ,減衰量は従来のカテゴ
リー 5 規格を 350MHz まで延長して満足させること。
> NEXT,パワーサム NEXT については 350MHz まで
Fig. 1
の帯域で従来のカテゴリー 5 規格に対して 10dB 以上
Cross section of the cable
ケーブル断面図
のマージンを確保すること。
? パワーサム ACR は,従来のカテゴリー 5 ケーブルに
対してより良い特性を確保すると共に,100MHz で
6.評価結果
25dB 以上,200MHzで 15dB以上,300MHz で0dB以
電気特性評価には D C M 社製 C M S - 2 X L D を使用し,
上を満足すること。
@ Skew は,25ns(ナノ秒)/ 100 mまでに抑えること。
350MHz までの伝送特性を評価した。
各特性項目の測定例を Fig. 2 ∼ Fig. 7 に示す。
4.設 計
6.1 特性インピーダンス
ギガビット対応 UGLPEVケーブル開発のために,設計で
101.5 Ω∼ 111.1 Ωの範囲に収まり,350MHz までの帯域
考慮したのは以下の点である。
で従来のカテゴリー5規格を満足している。
140.0
= 従来のカテゴリー 5ケーブルに比べて,
(パワーサム)
NEXT 性能をさらに向上させること,および 350MHz
まで安定した品質を持つことを目標に対撚ピッチを
> 撚込率の増加により実際のケーブル長が長くなるた
め,減衰量特性の維持・向上のために導体径を上げ
る。
? 特性インピーダンスを規格中心に合わせるため,導
体径増大分に伴い,絶縁厚も厚肉化する。
特性インピーダンス(Ω)
100.0
120.0
従来品よりもさらに短くする。
カテゴリー5規格(上限)
5.ケーブル構造
80.0
カテゴリー5規格(下限)
以上の改良点を考慮したケーブル構造を Table 1 および
100
2
101
2
102
周波数(MHz)
Fig. 1 に示す。
Fig. 2
Characteristic impedance
特性インピーダンス
− 8 −
2
80.0
カテゴ
リー5
規格
40.0
40.0
SRL(dB)
70.0
パワーサムNEXT(dB)
100.0
120.0
ギガビット・イーサネット対応無しゃへいツイストペアケーブルの開発
0.0
10.0
カテゴリー5規格
100
101
2
102
2
100
2
101
2
Fig. 3
2
102
2
周波数(MHz)
周波数(MHz)
Fig. 6
Structural return loss
Power-sum NEXT
パワーサム NEXT(電力和近端漏話減衰量)
80.0
カテ
ゴリ
ー5規
格
0.0
0.0
40.0
パワーサムACR(dB/100m)
カ
テ
ゴ
リ
ー
5規
格
減衰量(dB/100m)
16.0
32.0
48.0
120.0
SRL(不均等反射減衰量)
100
101
2
2
102
100
2
101
2
周波数(MHz)
Fig. 4
2
102
2
周波数(MHz)
Fig. 7
Attenuation
Power-sum ACR
パワーサム ACR(電力和減衰対漏話比)
減衰量
最小 5.5dB のマージンを確保し,350MHz までの帯域で
従来のカテゴリー5規格を満足している。
70.0
6.3 減衰量
ゴリ
100 mあたり最小 0.05dB のマージンを確保し,350MHz
ー5規
までの帯域で従来のカテゴリー 5 規格を満足している。
格
40.0
カテ
6.4 NEXT,パワーサム NEXT
3 5 0 M H z までの帯域で従来のカテゴリー 5 規格に対し
て,それぞれ最小 11.4dB, 10.4dB のマージンを確保してい
10.0
NEXT(dB)
100.0
6.2 SRL
る。
100
101
2
2
102
周波数(MHz)
Fig. 5
Near end cross-talk
NEXT(近端漏話減衰量)
2
6.5 パワーサム ACR
100MHz での従来品の ACR 値が 100 mあたり 18.8dB に
対して,開発品は 30.1dB であり,10dB 以上の特性向上と
− 9 −
第94号
平成10年11月
三 菱 電 線 工 業 時 報
参考文献
なった。
また,200MHz で 17.9dB,300MHz で 8.3dB,350MHz
= TIA/EIA-568-A Standard: Commercial Building
Telecommunications Wiring Standard. (1995)
でも 2.6dB > 0dB を確保しており,目標を満足している。
> TIA/EIA TSB-67: Telecommunications System Bulletin
67. (1995)
6.6 Skew
100 mあたりの最悪値が 24.5ns であり,ほぼ狙いどおり
? 中岡 旦,田中 雄一,伊藤 晃.
“カテゴリー 5 ケー
ブルの VHF 帯の電気特性”.三菱電線工業時報.(92),
となっている。
p.50 (1997)
7.む す び
以上の評価結果により,当初の目標値を達成するギガ
田中雄一(たなか ゆういち)
ビット・イーサネット対応ケーブルを完成することができ
情報通信事業部 通信技術部 通信技術課
通信ケーブルの設計・開発に従事
た。
IEC委員会(SC46A, SC46C)委員
以下に本ケーブルの特徴を示す。
= 従来のカテゴリー 5 規格に規定されている3倍以上
の周波数となる 350MHz までの性能を仕様設定し保
証する。
> 従来のカテゴリー5ケーブルに比べて,パワーサム
NEXT・パワーサム ACR特性が大幅に向上している。
? 350MHz でパワーサム ACR > 0dB を達成している。
従来のカテゴリー 5 ケーブルに対して,今回新たに開発
した UGLPEV は,今後,ギガビット・イーサネットシステ
注):イーサネット/ETHERNETは富士ゼロックス社の登
ムに対応可能な伝送媒体として大いに期待される。
録商標です。
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