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2010年1月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所

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2010年1月号 - 信金中金 地域・中小企業研究所
ISSN1346-9479
Shinkin Central Bank Monthly Review
第9巻 第1号(通巻445号)
2010. 1
新春対 談
インドの国際化、日本の国際化
日本経済の深刻な不況と緩慢な回復
経済見通し
実質成長率は 09 年度△2.7%、10 年度 1.7%と予測
−景気は一時的な踊り場を迎える可能性もあるが、10 年度には民需主導の自律回復へ−
林業の動向と課題
−農林水産業の活性化に向けて⑤−
第 1 回地 域 活 性 化 セ ミ ナ ー の 開 催 に つ い て
統計
「信金中金月報掲載論文」募集のお知らせ
○対象分野は、当研究所の研究分野でもある「地域」「中小企業」「協同組織」に関連する金融・
経済分野とし、これら分野の研究の奨励を通じて、研究者の育成を図り、もって我が国におけ
る当該分野の学術研究振興に寄与することを目的としています。
○かかる目的を効果的に実現するため、本論文募集は、①懸賞論文と異なり、募集期限を設けな
い随時募集として息の長い取り組みを目指していること、②要改善点を指摘し、加筆修正後の
再応募を認める場合があること、を特徴としています。
○信金中金月報への応募論文の掲載可否は、編集委員会が委嘱する審査員の審査結果に基づき、
編集委員会が決定するという、いわゆるレフェリー制を採用しており、本月報に掲載された論
文は当研究所ホームページにも掲載することで、広く一般に公表する機会を設けております。
詳しくは、当研究所ホームページ(http://www.scbri.jp/)に掲載されている募集要項等をご
参照ください。
編集委員会 (敬称略、順不同)
委 員 長 清水啓典 一橋大学大学院 商学研究科教授
副委員長 藤野次雄 横浜市立大学 国際総合科学部教授
委 員 川波洋一 九州大学大学院 経済学研究院教授
委 員 鹿野嘉昭 同志社大学 経済学部教授
委 員 首藤 惠 早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授
問い合わせ先
信金中央金庫総合研究所「信金中金月報掲載論文」募集事務局(担当:寺尾、照沼)
Tel : 03(5202)7671/Fax : 03(3278)7048
Shinkin
Central
B a n k
Monthly
Review
新春対談
2010年 1月号 目次
インドの国際化、日本の国際化
2
ニヤンタ・デシュパンデ
信金中央金庫 総合研究所顧問
藤野次雄
カクタス・ジャパン株式会社 顧問
(横浜市立大学 国際総合科学部教授)
特別寄稿論文
日本経済の深刻な不況と緩慢な回復
コロンビア大学ビジネス・スクール 日本経済経営研究センター所長
25
ヒュー・パトリック
訳 信金中央金庫 総合研究所長
調 査
平尾光司
経済見通し
実質成長率は09年度△2.7%、10年度1.7%と予測
角田 匠
43
髙田 眞
59
総合研究所
75
−景気は一時的な踊り場を迎える可能性もあるが、10年度には民需主導の自律回復へ−
林業の動向と課題
−農林水産業の活性化に向けて⑤−
信金中金だより
統 計
第1回地域活性化セミナーの開催について
信金中央金庫総合研究所活動状況(11月)
76
2009年信金中金月報(第8巻)総索引
77
信用金庫統計、金融機関業態別統計
81
2010
1
個人名による掲載文のうち意見にわたる部分は執筆者個人の見解です。
投資・施策実施等についてはご自身の判断によってください。
新春 対談
インドの国際化、日本の国際化
カクタス・ジャパン株式会社 顧問
ニヤンタ・デシュパンデ
信金中央金庫 総合研究所顧問
(横浜市立大学 国際総合科学部教授)
藤野 次雄
(敬称略)
■はじめに
ニヤンタさんには、私が勤める横浜市立大
学で、
「グローバリゼーションと経済」とい
藤野:本日は、カクタス・ジャパン株式会社
う講義を実施していただきました。その中
顧問ニヤンタ・デシュパンデ氏をお招きして、
で、日本におけるグローバリゼーションの必
2010年の新春対談を行いたいと思います。
要性や、日本人にとってどのようなことが重
ニヤンタさんは、インド・ムンバイのご
要なのかということを問題提起していただき
出身で、ムンバイ大学でMBA(経営学修士)
ました。
を取得後、1998年から日本に在住し、IT企
日本はさらなる国際化が必要だと言われる
業の技術指導や在日インド人の子弟教育に努
ようになって久しいですが、本日は、「イン
められ、インド式九九などのインド式計算法
ドの国際化、日本の国際化」をテーマに、イ
の著述でも有名です。
ンドの方から見て、日本と日本人にどのよう
な点が必要なのかということを中心にお話を
伺いたいと思います。
はじめに、ニヤンタさんも著書に書いてお
られる、
「ナショナルとインターナショナル」
「グローバルとローカル」について、話をお
聞かせ下さい。
私といたしましても、まず、自分の立ち位
2
信金中金月報 2010.1
置をしっかりと定め、そこからどのように世
しも、国、すなわちナショナルや国境を前提
界に展開するかを決めること、あるいは、逆
としていません。「グローバル」は、ボーダ
に、世界の中で自分の立ち位置をどのように
レスな概念です。そして、インターナショナ
して作っていくのかということが重要である
ルに対してナショナルをセットで語るのであ
と思います。国際化について、ニヤンタさん
れば、グローバルに対しては、ローカルをセ
はどのように考えていますか。
ットで考える必要があります。
■2つの「国際化」
̶インターナショナルとグローバル
藤野:そうです。
ニヤンタ:グローバルに対して自分の所属す
る地域・ローカルといった自分の立ち位置、
ニヤンタ:「国際化」は、グローバリゼーシ
位置付けが非常に大切です。セットで考える
ョン、インターナショナリゼーションといっ
と、インターナショナルとグローバルの違い
た言葉に代表されますが、最近、流行語とし
が非常にわかりやすくなります。インターナ
て、また、ファッションとして頻繁に使われ
ショナルはボーダー(国境)ありきで、グロ
ています。しかし、言葉がきちんと定義され
ーバルはボーダレスです。
て使われているのか、よくわからないのでは
また、今回、インドと日本を比較して「国
ありませんか。非常に定義しにくい、整理し
際化」を語るに当たっては、国際化にはいろ
にくい言葉だと思います。一見、非常に簡単
いろな段階があるということを念頭に置いて
な言葉ですが、定義の仕方によってどこまで
おく必要があります。両者は、全然違う状況
も拡げられる、もしくは、変えられるのが「国
に置かれてきて、違う歴史を歩いてきていま
際化」という言葉です。
すから、その比較には興味深いものがありま
以前、大学の講義で話したように、国際化
す。歴史条件や立地条件などの前提があった
を考えるときは、まず、国際化とは何か、グ
上で、国際化の段階は自ずと決まります。
ローバリゼーションとは何かを整理・定義し
国際化は、服装だとか言葉だとか、非常に
て、位置付ける必要があります。先ほど藤野
表層的なところで捉えることもできますが、
先生が言われたように、立ち位置を考えなく
私は、国際化とは完全にマインドの問題であ
てはいけません。
ると思っています。心の持ち方がグローバル
「インターナショナル」という言葉を考え
マインドなのかどうかということ、どういう
ると、そこには、ナショナルとインターナシ
マインドがグローバルであるのかという定義
ョナルという違いがはっきりと表れていま
がきちんとしていて、それに則っていること
す。インターナショナルという「国際化」は、
が、
「国際化」であると考えます。
ボーダー(国境)ありきの話です。
藤野:今、ニヤンタさんが言われたように、
一方、「グローバル」という言葉は、必ず
グローバルとローカルの双方を理解している
新春対談
3
ことが重要です。ここに、本日、なぜニヤン
ニヤンタ:インドの経済成長について、特に
タさんにお越しいただいたのかということの
光の部分にスポットライトを当てて、新聞、
鍵が隠されています。インドは、ひとつの国
テレビなどのマスコミがよく取り上げていま
の中にたくさんの人種や民族があり、言語が
す。普通は表面的な分析にとどまり、マスコ
あり、国自体がインターナショナルでありか
ミにはなかなか登場しないのですが、本当は
つ、グローバルでもあります。だからこそ、
その背景こそが面白い。その背景とは、イン
こういう話をしていただくのに非常に相応し
ドの国際化とモダニゼーション(近代化)で
い方であると、私としては考えました。
す。モダンな考え方と国際的な考え方の両方
■インドの急成長と教育維新
がセットになって、今のインドの経済成長を
支えています。
藤野:次に、インドの現状について見てみた
100年前までのインド人のイメージは、タ
いと思います。インド経済は、1991年に本
ーバンを巻いて、象遣い、蛇遣いといったス
格的な自由化政策を導入して以降、目覚しい
テレオタイプのものでした。いまだにそうか
発展を遂げています。特に、IT(Information
もしれません。それから、バラモン主義、カ
Technology)産業やBPO(Business Process
ースト制度といった宗教の影響が強い社会と
Outsourcing)産業(注)1で、世界において重
いうイメージです。100年前までは、全くそ
要な地位を占めています。
のとおりでした。それがなぜ変わったかとい
2006年の名目国民総生産を上位20か国の
うことに注目する必要があります。
中で比較すると、インドはここ15年間で7%
変化の理由は「教育」です。教育の変化と
程度の成長を果たしています。中国の10%
その背景を見れば、なぜインドは、今、経済
に次いで第2位です。ゴールドマンサックス
成長しているのかということが分かると思い
がBRICsと命名し、世界の注目を集めている
ます。歴史を100年前に遡り、その頃のイン
国でもあります。インドの経済成長が世界の
ド人がどのような教育を受けていたのかを見
中でのインドの位置付けを引き上げていま
てみると、バラモン主義の宗教指導者層が社
す。また、インド人は、国際語である英語が
会の中で一番影響力を持っており、その人た
得意だということも、「国際化」について語
ちが教育を全て支配していました。カースト
っていただくのに相応しい条件であると思い
制度の階級意識を悪用して、カーストの低い
ます。
人たちは学校に行けない、女性も学校に行け
インドが高い経済成長をしてきた背景につ
ないなど、非常に差別のある不平等な社会が
いて、少し話をお聞かせ下さい。
存在していました。
(注)1.バックオフィス的な業務のアウトソーシングの受託産業。代表的なBPO産業はコールセンター業務など。
4
信金中金月報 2010.1
モダニゼーションを考える上でも、教育の
藤野:それが大きなきっかけになったのです
変化が最も社会の底上げにつながりました。
か。
それまでは、教育の底上げ、経済の底上げと
ニヤンタ:はい。それがなければ、私もこう
いうチャンスすら与えられない時代であった
して、スーツ姿ではここに来てないと思いま
と言えます。
す。それこそ、バラモン主義の古い勉強ばか
インドの識字率を見てみますと、6割強の
りで、インドの聖典を暗記することのみが求
水準でここしばらく停滞しており、いまだ3
められる社会が存在していたかもしれません。
割の子供たちが学校に通えていません。しか
公教育を変えようという大きな運動があり
し、今後、識字率はもっと上がり、進学率も
ました。カーストの低い人たちも学校に行け
上がってくるはずです。
るようにしましょう、女性も平等に学校行け
突破口を開いたのは、当時の先人たちです。
るようにしましょうと。教育内容も宗教に依
先人たちが何百年もかけて行った運動の成果
存した古い教育をやめ、無宗教でモダンな、
がようやく実ったのが、ちょうど100年前で
理科、算数、そういった西洋的なグローバル
す。日本には鎖国をしていた長い年月があり
スタンダードの教育に変えましょうと。その
ましたが、同じような状態がインドにもあり、
ような大きな動きがあったからこそ、なんと
日本で明治維新が起きたのと同じような段階
か100年の間に、インド人は古いイメージの
で、インドで教育維新が起きました。
世界を少しずつ変えることができました。
新春対談
5
今のインドの新しいイメージは、タタ自動
ニヤンタ:そういう社会では、非常に高度な
車であるとか、IT企業とか、ミタルスチール
文明が育ちます。世界には、残念ながら文明
などです。その変化は、教育のモダニゼーシ
を育てるだけの歴史の積み重ねがない地域も
ョンと国際化から始まりました。そしてそれ
あります。
は、インド人のマインド自体がグローバルマ
インド社会では、学習が一番の美徳です。
インドへと変わるきっかけともなりました。
それゆえ完全な学歴社会です。昔から、どれ
■国民のプライドと歴史が
教育を左右する
だけ学んだかによって尊敬されるか否かが判
断されました。お金を持っている人よりも、
学習し学歴のある人の方が偉いのです。
藤野:インドの教育についてよく言われるの
バラモン主義によるカースト制度の中に
は、特に数学など理数系が強く、IT産業に
も、日本の士農工商と同様な身分制度があり
たくさんの人材を輩出しているということで
ました。もともとは平等でしたが、次第に学
すが、何か秘訣があるのでしょうか。
習している学者たちは偉いという扱われ方が
ニヤンタ:国民的なプライドがポイントです。
され、学者たちは誰もが自分は高等だと思っ
インドの長い伝統・歴史の中において、ご存
てしまったのです。また、そういうように誘
知のとおり数学界における画期的な発明があ
導するのが上手だったのです。そうしたこと
りました。例えば、ゼロの発見です。天文学
が行き着いた果てがカースト制度です。
も非常に発達していました。天文学と数学、
インドの正統な社会の流れからみれば、イ
そして理科、他にも医学も発達していました。
ンド人の憧れは、最先端のエンジニアリング
アーユルヴェーダ(注)2はインドの医学です。
やITなど、理数系的な学問・産業に向けら
ゼロの発見など、歴史に対するプライドもあ
れるのです。
り、インドはもともと、理数系の学問に対す
一方、日本人は、技術を大事にしてきたの
る憧れを持っている国なのです。
ではありませんか。
そして、もう一つ大事なのは、国民が教育
藤野:そうです。
に非常に熱心であるということです。教育の
ニヤンタ:職人の技ということが前向きに評
内容は変える必要があったのですが、教育に
価されますよね。国民性として手先が器用で
ついては、昔も今も非常に熱心です。これは
あるともよく言われるでしょう。それは、教
インド人と日本人の共通点です。
育の影響だと私は思っています。例えば、日
藤野:そうですね。
本の小中学校に必ず設けられている図画工作
(注)2.アーユルヴェーダとはサンスクリット語のアーユス(生命・寿命・生存)とヴェーダ(真理・正しい知識)の複合語で、
医学のみならず、生命科学、哲学の概念も含んだインドの伝統的な学問である。日本では、アーユルヴェーダの理論に基
づいた「予防医学」の施術の一つのエステ「シロダラ(眉間にオイルをたらす)」が有名である。
6
信金中金月報 2010.1
室は、インドの小中学校にありません。
国民が何に憧れを持つかによって、何の学
習にウエイトが置かれるのかが決まるので
す。インド人は、理数系にとても憧れている
国民なので、それこそ2桁の九九をまるごと
暗記するなど、数学的な学問に非常にウエイ
トを置いています。その反面、美術や音楽、
図工は必要ないという感じもありますね。で
すから、インド人はあまり手先が器用ではあ
りません。日本の場合は、長い伝統の中で大
事にされてきたスキルだということもあり、
また、小さい頃からその方面の教育をしてい
ますから、比較してみると手先が器用です。
この違いは、環境、訓練、教育の違いであっ
て、
遺伝的に何か違いがあるとは思いません。
ニヤンタ・デシュパンデ
カクタス・ジャパン株式会社 顧問
1973年 インド・ムンバイ(旧ボンベイ)生まれ
ムンバイ大学心理学科卒業。同大学でMBA取得
1993年 初来日 横浜にて短期ホームステイ
1998年 再来日 IT企業の技術指導・営業・経営に従事
2006年 在日インド人学校GIS(グローバル・インター
ナショナル・スクール)東京校設立
著書:
『インド式すごい勉強法』三笠書房(2008)
監修書『実況解説!インド式算術』PHP研究所(2008)
監修書『脳をきたえるインド数学パズル』日東書院本社
(2007)
藤野:どういうことをきちんと学習させるか
ということが、重要ということですか。
いかがですか。
ニヤンタ:そうです。教育の役割は非常に大
ニヤンタ:そのイメージは、逆に覆したいと
きいと思います。
思います。少しおかしな話になりますが、皆
さんに、
「インド人の発想力がよい」とか、
「イ
■インド人の独創力は?
ンド人は頭がよい」と評価していただいた方
藤野:戦後、日本は、世界経済のトップ集団
が、我々にとって有利に働くのです。嬉しい
の一国となりました。そうなると日本は、国
し、ありがたい話です。
際的な視野で総合的にものごとを捉え、課題
しかし、現実をみると、現段階は決してそ
を自分で解決していかなければならなくなり
うではないことが分かります。もちろん、そ
ます。ところが日本人は、そういうことがあ
のような才能を持っているインド人もいます
まり得意ではない。どちらかといえば、過去
が、今のインド人の多くは、残念ながらイノ
を勉強して経験を活かしていくことが得意で
ベーションを起こすスキルを持っていませ
すが、課題解決ということについては、不得
ん。インド人の活躍が目立っているのは、英
手なところがあると思います。
語力のお陰です。例えば、ITスキルについ
私には、インドの方々は、発想力や独創力
て見ても、正直なところ付加価値のある仕事
が非常に優れているイメージがありますが、
を行なっているとは言えません。発想力によ
新春対談
7
とした米国企業が新しいテクノロジーを生み
出し、新しい価値を生み出す。今までは、付
加価値のある仕事をするのは米国だったので
す。日本もかなり行なっています。日本の
IT企業はあまり海外に出て行かないので目
立たちませんが、付加価値のある仕事を行な
藤野次雄 信金中央金庫 総合研究所顧問
っていると思います。
(横浜市立大学 国際総合科学部教授)
非常に残念なのは、インドにはたくさんの
2005年 金融庁金融審議会リレーションシップバン
キングのあり方に関するワーキンググルー
プ委員(1月∼3月)
同 年 横浜市立大学国際総合科学部学部長
人がいますが、新しいオペレーティングシス
テムを作ったかというと、作っていないとい
うことです。新しい価値を持ったパソコンを
主 著:『金融ビッグバン・IT革命と郵貯・簡保』
日本評論社(2000)
『アクティブシニアの消費行動』
中央経済社(2003)
現在の研究課題:地域経済・金融、中小企業金融
開発したかというと、そのようなことはし
てないのです。インドのIT企業が行ってい
ることは、日本やアメリカの仕事をインドで
しているだけです。大量の人数で力任せでこ
って何か新しい価値を生み出しているかと
なします、だから任せて下さいというのが、
いうと、残念ながら今までは行なっていま
今までのインドIT企業の経営スタイルです。
せん。インドの大学からIT業界へは、毎年、
Y2K問題(2000年問題)の際がまさにそう
何百万人の単位で新しいエンジニアが輩出さ
でした。
れています。そこでどういう仕事しているか
なぜインドにおいてIT産業が伸びたかの
というと、主にプログラミングの仕事であり、
と言うと、米国でITスキルのある人材が不
大手企業からの受託の仕事です。しかし、こ
足した時、英語ができる理数系のエンジニア
れからは、期待できると思います。
が求められたからです。インドのIT系スキ
インドの経済成長は不思議です。インドは
ル、
エンジニアリング系スキルのある人材は、
第3次産業から成長が始まりました。それは、
高い水準の英語能力がある、それが評価され
非常に不思議な現象です。本来は、1次産業
たのです。
から伸びるべきものが、サービス業界から伸
しかし、一番の理由は安かったからです。
びた。しかし、サービス産業も、英語圏の欧
ニーズとシーズがあって、それがマッチした
米諸国に対して、安い労働力で優秀なプログ
のです。インドのIT技術者がY2K問題で大
ラミングスキルを提供するという、下請け的
活躍して、日本においてもインドのIT技術
な発想で成長したのです。IT業界のゼネコ
者が使われ始めました。
ンではありません。マイクロソフト社を初め
8
信金中金月報 2010.1
■How toではなくWhyが大切
ニヤンタ:この問題の根本は、インドの教育
■国際的に認められる「中身」が
大切
方法にあります。従来のインドの教育は、か
藤野:次は、在日10年の経歴を持つニヤン
なりの詰込み教育でした。新しい発想をする
タさんから見た「日本の国際化」について、
ために必要な「疑問を持つ」という考え方は
話を伺いたいと思います。日本人は、「国際
あまり教育されて来なかったのです。How to
化する」ことがなかなか難しいと言われてい
にこだわりインプットして、How toばかりた
ます。
今日の対談も日本語で行っていますが、
くさん覚えています。How toだけではなく、
テーマから見ると、本来は英語でやらなけれ
Whyが必要です。
「なぜそうなるのか?」とい
ばいけない(笑)
。
う疑問を小さい頃から持つという習慣が大切
ビジネスの視点も入れて、話をお聞かせ下
です。発想力や独創性が鋭い人たちは、Why
さい。
の才能を持っています。Whyが習慣化するよ
ニヤンタ:先ほど「国際的なマインドのあり
う努めることで、新しい価値を生み出すこと
方」について話をしました。そのことは少し
ができるようになるのではないかと思います。
脇に置き、ビジネス中心に「国際化」を捉え
藤野:インドでは、基礎的な教育を、初等教
て国際的なスタンダードについて話をします
育から中等・高等教育までしっかりと教える
と、国際化においては、国際的に認めてもら
仕組みとなっている。そこに家庭教育が合わ
えるような「中身」が大事です。中身とは、
さって、うまく機能してきたと見ればよいの
誰が見ても本当に「一人前である」と言われ
でしょうか。
るかどうかです。そこが一番大事な点です。
ニヤンタ:そうです。
世界中の誰が見ても、「日本製品は世界ナン
藤野:労働の質として捉えたときはどうです
バーワンである」と思われないといけないの
か。
です。日本は、そのレベルをかなりの程度ク
ニヤンタ:人材としては、学力がとても高
リアしていると思います。
い。なぜかというと勉強熱心だからです。カ
藤野:私も1985 ∼ 90年頃、米国に滞在して
リキュラムも詰込み型でかなり凝縮されてい
いましたが、80年代後半は皆、日本的な経
ます。学力をつけるという意味では、かなり
営に関心を持っていて、小さなセミナーでも
学習体力がつきます。しかし、オリジナルな
米国人を含めてたくさんの人が来場しまし
研究をしているかというと、できていません。
た。しかし、その後、日本でバブルがはじけ
作業的な仕事は非常に優れているという意味
ると、誰も聞きに来なくなりました(笑)
。
で、よい人材がたくさん揃っています。それ
先ほどのローカルの話ではないですが、自
が今までのインドの状況でした。
分の立ち位置をしっかりと確立するであると
新春対談
9
か、自分の持っている資源を認識し磨き上げ
いう言葉より、
「エクスプレッション(表現)
」
るであるとか、まず自分自身が確かなものを
と言った方が適切だと思います。そして、最
持たなければいけない。それから世界へ出て
後にもう一つ重要なものが「戦略」です。
行くという順番になりますね。
私は、今の日本に
ニヤンタ:「中身」のクオリティにおいては、
はエクセレンスとコ
エクセレンス(excellence)がポイントだと
ンピテンスは十分に
思っています。世界スタンダードで考えて、
あると思います。日
本当にエクセレント(excellent)かどうかと
本が持っているいろ
いうことです。
いろなもの、日本の
例えば、私が日本に憧れたきっかけは、黒
文化、製造技術、日
澤映画を大好きになったことです。黒澤映画
本人のこだわり、細
は、日本人だけでなく誰が見ても感動する作
かさ、
それらによって生み出される付加価値、
品です。そういったレベルのエクセレントで
そういった全てにエクセレンスとコンピテン
ないと、世界には通用しません。世界スタン
スが感じられます。日本には、高度な文化、
ダードで考えた時、エクセレントであるか、
高度な社会、高度な経済が存在しているとい
コンピテント(competent)
、つまり世界と競
うことについて、来日後10年経っても、と
合できるレベルにあるかどうかが一番大事で
きに感動してしまうことがあります。
す。それは全てに言えると思います。学力に
日本に憧れて、日本とインドの間のいろい
ついても、語学力についても、製品の品質に
ろな交流を進めたいと思っている外国人、日
しても。やはり、エクセレンスとコンピテン
本を応援している外国人にとって、「もった
ス(competence)が大切です。
いないなぁ」と思ってしまうのは、エクセレ
繰り返しになりますが、パッケージではな
ンスとコンピテンス以外の2つのことです。
く、自分の中身が一番大事です。しかし、中
つまり、
「表現」と「戦略」です。
身をきちんと持っていても、それを外に向か
ビジネスを中心に「戦略」を捉えたとき、
って表現できるかどうかは別の問題です。
最初に考えるべきは「差別化」です。差別化
藤野:それはまた難しい問題です。特に日本
は既にできています。品質はエクセレントの
人にとっては…。
域に達しており、完全に差がついています。
そして、エクセレンスだからこそコンピテン
■日本人に欠けている
「表現」と「戦略」
スを持つことができ、競争に勝つことができ
るのです。まずは差別化が必要です。
ニヤンタ:エクスプレッション(expression)
次は「位置付け」です。グローバルの中に
の領域だと思います。コミュニケーションと
おける自分の位置付けを考える必要がありま
10
信金中金月報 2010.1
す。そのためには、自分のアイデンティティ
る意味、スズキ自動車はとてもよい事例だと
を考えることが非常に大事になります。なぜ
思います。インドが社会主義的な体制であっ
なら、アイデンティティは、自分の位置付け
た時から、あれだけ人口の大きな国で、いち
や自分の軸足がどこにあるかを見定めるため
早く国民車を作ろうということを大胆に行っ
の基準点となるからです。まずは位置付けを
たからこそ、今、スズキが一人勝ちの状態に
確かめる。その上で今後それをどのように世
あると私は思っています(注)5。他の日本企業
界戦略において活用していけばよいのかとい
は完全に遅れをとっています。インドへの進
うことが問われます。「差別化」と「位置付
出戦略が非常に遅れています。今、スズキの
け」、そして、それらを競争優位となるため
後に続き、スズキのインド進出の余慶を受け
の「戦略」にどのように活用するのかというこ
ているのは、残念ながら日本の企業ではあり
とが大切です。
ません。韓国企業です。現在、韓国の企業が
しかし、残念ながら、日本はずっと米国を
インドや他国で非常に頑張っています。
追いかけて、
「追いつけ、追い越せ」で経済
藤野:聞いた話では、携帯電話ではサムスン
発展を遂げてきました。製品市場としても、
やLGなどが頑張っているそうですね。
安全保障においても、過剰に米国依存の状態
ニヤンタ:AV製品や家電製品において、ソ
となっています。世界から「日本には独自の
ニーやパナソニックが素晴らしいということ
戦略がない」と思われてしまう訳です。
は知られています。しかし、市場に溢れてい
例えば、今インドでは、タタ自動車の小型
るのは韓国の製品です。韓国企業は、非常に
車ナノ(注)3が話題となっていますが、それは、
大胆にインドへ進出して市場を開拓していま
単に安いだけで話題になっているのではあり
す。日本は、ずっと米国相手に商売をしてき
ません。安価な自動車を投入し、新たに台頭
て、今もそのやり方は変わっていません。そ
してきた億単位の人口ボリュームを持つ新中
れを考えると妥当な結果だと思います。
間層を取り込もうという戦略に世界が注目し
たのです。
■一般化できない巨大市場「インド」
藤野:スズキの乗用車の2分の1(注)4の価格と
藤野:日本の企業がインド進出を考えるにあ
か。
たり、
何がボトルネックになるのでしょうか。
ニヤンタ:そうです。日本の企業も大胆にそ
ニヤンタ:日本の皆さんがインドを理解する
ういう戦略を打ち立て、同じような難しい市
上で一番難しいのは、インドという国は、広
場に先駆けて挑戦すれば、勝てるのです。あ
過ぎて一般化できないということです。一概
(注)3.タタ自動車が開発した小型乗用車。2008 年に 10 万ルピー自動車として発表され、世界的な関心を集めた。
4.ナノ以前は、マルチ・スズキ・インディアの「マルチ・800」(20 万ルピー)が最安価の乗用車であった。
5.スズキは、1981 年にインドに合弁会社を設立。インドが自由経済体制へ大きく進路を変更したのは 1991 年であり、現
在のインド乗用車市場におけるスズキのシェアは約 50%を占める。
新春対談
11
に言えないことばかりです。同じ国の中に、
ーズがあります。スズキ自動車もインドで最
教育水準、経済力の違いによる様々なレベル
初に発売したのは、普通乗用車のエコノミー
の顧客層があります。同じ国の中に先進国と
モデルです。普通のミドルクラスの家庭が購
途上国があるようなものです。
入できる車を出して、圧倒的なシェアを確保
ニヤンタ:層によってニーズが違います。憧
しました。そして最近、高級車も販売するよ
れも違います。同じ国の中に、
「家族4人が1
うになりました。そういう成功例がスズキ自
台のバイクに乗っていたが、今度はタタ自動
動車だけとは、
少しもったいないと思います。
車の安い車に乗りたい」、そういうニーズを
持っている層もあれば、世界中の高級車がど
んどん売れる層もあります。インドの富裕層
■視点を変えれば
チャンスは無限にある
は、日本の人口を少し超えるくらいの人数で、
藤野:今後、日本の
1億3,000万人程度と言われています。
企業がインドへ進出
1つの例を申し上げれば、日本の電機メー
しようとするとき、
カーが、インドの富裕層だけを対象に日本の
どのようにターゲッ
スタンダードで作られた家電製品を販売しよ
トを絞ればよいでし
うという戦略を打ち出しました。しかし、富
ょうか。また、企業
裕層だけをターゲットとした戦略は、結局失
活動を行なう際に注
敗しました。その理由は、国土が広く富裕層
意すべきポイントは
が散らばって存在しているため、まとまった
何でしょうか。
市場として押さえることができなかったから
ニヤンタ:日本人は、日本人が日本の中で作
です。交通インフラがまだ十分に整っていま
っているいろいろな製品、サービスの水準の
せんので、富裕層への販売量だけを前提とし
高さに気が付いていないという気がします。
ていては、流通網の構築が難しいのです。イ
日本人が日本人のために作り、運営して、そ
ンドの富裕層だけを相手にした進出を考えた
れで終わりという認識なのです。1つの産業
企業は、失敗し撤退しています。
として、海外に拡げるという試みが見られま
韓国の企業が賢かったのは、富裕層だけを
せん。例えば、新幹線です。最近ようやく、
狙わずに、一般のミドルクラスが買いやすい
世界への展開が見られるようになってきまし
製品、高機能一辺倒ではないいろいろなクラ
たが、1つの産業としての海外進出は、まだ
スの製品を販売したことです。日本製品のよ
まだ十分とは言い難いです。米国人は、何と
うな高性能だけではなく、インドの一般の消
言うことはないハンバーガーからコーヒーま
費者目線でいろいろな製品を出しました。イ
で、何から何まで世界中でフランチャイズビ
ンドには様々なクラスの人がいて、様々なニ
ジネスを展開しています。世界中にフランチ
12
信金中金月報 2010.1
ャイズを作り、新しい産業を作ることが非常
では住宅不足問題が
に上手い。日本にも、そういう製品、そうい
起きています。その
うビジネスチャンスはたくさんあります。
た め、300万 人 単 位
例えば、先日、インドの大臣が来日した際、
の都市を新たに全国
私が通訳の手配を行ないました。帰国前、大
の50か所で開発する
臣はいろいろとお土産を買いましたが、一番
計画があります。大
喜んだのは、使い捨ての携帯カイロでした。
変に速いペースで道
藤野:ドラッグストアで10個300円とかで販
路、住宅等、いろい
売している使い捨てのカイロですか。
ろな建設が行われています。まさに建設ブー
ニヤンタ:彼が住んでいるニューデリーは寒
ムです。
暖の差が激しく、夜は大変に冷え込む地域で
しかし、私が見る限り、インドの建築物に
す。そして、彼の奥様は大変な冷え性らしい
は、日本の家屋やマンション、オフィスの中
のです。
「これがあれば、非常に暮らしが楽
に当たり前のようにあるいろいろな設備が欠
になる。私達の暮らしが…」と言っていまし
けています。品質も全く違います。ですから、
た(笑)。
そういう設備・製品をインドへ持ち込んだな
藤野:なかなか発想できませんね(笑)。
らば、大きな市場を作り出すチャンスとなる
ニヤンタ:そういう愛妻家の大臣を見て、私
かもしれません。
もとても驚きました(笑)。
藤野:信用金庫の取引先においても、製造業
日本人が当たり前と思っている製品やサー
は多いです。
ビス、アイデアなどの中に、マーケットとし
ニヤンタ:インドの製造業には、日本の製造
ての大きな可能性が隠れているのではないか
業が持っている高い技術力はありません。技
と思います。日本人が当たり前のように思っ
術力を非常に求めています。インドが日本の
ている製品にしても、そういう製品を地道に
ような先進国に何を求めているかと言えば、
作っている中小企業にしても、本当によいモ
ノウハウです。先ほど、インドは第3次産業
ノであり、素晴らしい技術を持っているなら
から成長を始めたと話しましたが、第1次産
ば、何でも当たってみるべきだと思います。
業や製造業(第2次産業)は、あまり発達し
インドには大変な勢いで成長するチャンスが
ませんでした。技術力やノウハウは、それほ
たくさんあります。
ど高くありません。
先ほど申し上げたように、インドは交通イ
日本の企業家の方々に申し上げたいのは、
ンフラが脆弱なため、現在、猛烈な勢いで整
インドでモノを作るだけではなく、インドで
備を進めています。また、インドは人口が増
売ることも、日本の企業にとって、大きなチ
え続けており、特に若年層が多いので、都会
ャンスとなり得るということです。つまり、
新春対談
13
安価な労働力による工場としてのみインドを
は、一種のビジネスモデルを輸出していると
捉えるのではなく、大きな市場がそこにある
捉えることもできるのではないでしょうか。
という認識を持っていただきたいです。
ここで言うビジネスモデルとは、現地で調達
例えば、インドの話ではないのですが、上
して現地で販売するモデルのことです。その
海にスイーツの店がないと気付いた東京の
やり方自体を日本から輸出したとも言えます。
OLが上海で初めてシュークリームを販売し
ました。その店は大きく成長し、今は自前の
■心のバリアーの克服が必要
工場を持ってコンビニ等の様々な先に商品を
ニヤンタ:仕事柄、貿易やインド進出に関し
卸しています。スイーツなど日本で当たり前
ていろいろな相談に預かることが多いのです
のように思っているものが、他の国々では大
が、日本人には特に慎重な方が多いです。中
きな価値をもっていることがあります。イン
小企業の場合は、慎重過ぎるというところが
ドも同じような状況です。日本では当たり前
あり、調査の実施や進出を検討してみようと
だけれどもそこにはないものを、どんどんと
いう段階まで、なかなか行き着きません。
自分から持っていくことを考えてもよいので
他にも問題点があります。市場の理解が足
はないでしょうか。
りません。特に価格に対する理解が不足して
インドが欲しているのは投資です。より多
います。インドで成功した外資企業は、スズ
くの日本企業に進出してもらい、そこに工場
キ自動車も含めて、富裕層ではなく、まずは
を作って欲しい。そして、インドで売って欲
安価な商品を投入し、ボリュームゾーンから
しい。そのためにインドは、自由貿易協定を
押さえました。インドで製品を作り、価格を
結ぶ用意もあります。しかし、残念ながら、
抑えて、安価な商品を求めるインドの消費者
現在、インドに物凄いスピードで進出してい
をターゲットとしたのです。
るのは、日本の中小企業ではなく、韓国の中
藤野:インドで作って、インドで売ることが
小企業です。
大切だということですね。
藤野:製造業が中国やインドに進出するとい
ニヤンタ:はい、そのとおりです。インドで
うパターンもありますが、先ほどの上海の話
売ることを考えないといけません。日本で作
った製品をインドで売ろうという発想の方が
多いでしょうが、それはなかなか上手くいき
ません。なぜかと言えば、日本の当たり前の
物価がインド人には高過ぎるからです。初め
て日本に来るインド人は、なかなか買い物が
できません。日本の物価は、インドと比較す
ると10倍ぐらいですからね。
14
信金中金月報 2010.1
藤野:高いですね。
ニヤンタ:高いからなかなか財布の紐も緩み
ません。一旦、日本の物価水準に慣れてしま
えば、それほど違和感を覚えなくなりますが、
しかし、私もしばらくインドに戻って、また
日本に来るとそういう感覚に襲われます。経
験済みの筈なのに、再度カルチャーショック
を受けてしまいます。私が相談を受けている
上手くいかない訳ですね。
日本企業や日本人は、「インドは、なぜそん
ニヤンタ:コストも大幅に抑えられるという
なに物価が安いのか?」という、逆のカル
ことに気が付けば、逆にチャンスだと思うか
チャーショックがあるのです。なぜこんなに
もしれません。
安く売らなくてはならないのか、それでは全
く旨味がないという考えになってしまうので
■低コストというメリット
す。多くの中小企業経営者にとって、価格や
藤野:例えば、過剰に高い品質や機能は削ぎ
利幅ではなく、量やシェアの確保で勝負しよ
落とすなど、現地のニーズに合った製品を作
うという考え方は難しいのです。心のバリア
ればよいということですか。
ーと言ってもよいでしょう。
ニヤンタ:そうです。また、
機能が同じでも、
価格が安いことには一長一短があります。
現地で作ることでコストも抑えられます。期
大きなメリットはコストを抑えることができ
待していたよりも利幅が確保できるかもしれ
ることです。日本への進出に躊躇するインド
ません。そして、インドには大変大きな市場
の企業に対して、私はよくこういう話をしま
があります。
す。
「日本は物価が高いが、それはインドより
最近、インドで勢いがあるのは、インフラ
も高く売れるということです。
」と。そうい
整備等の建設業です。他にも高度な技術が求
うメリットに気が付くと、インドの企業も先
められているのは、水処理技術です。水があ
行投資をしたくなります。同様に、売れる価
まり綺麗ではありませんから、飲み水のため
格は安くとも、コストも抑えられることが日
の浄水技術が求められています。下水や排水
本の経営者にも理解していただければ、イン
の処理技術も全国的にニーズが高い。
さらに、
ドに大きな魅力を感じるのではないでしょう
クリーンエネルギーなどの環境技術、そうい
か。最初に持ってしまう心のバリアーをどう
う分野での技術に対するニーズが高い。日本
やって乗り越えるかということが重要です。
の工場にしかない技術もきっとたくさんある
藤野:従来の日本の高コスト構造をそのまま
と思います。まずは、インドのメーカーや企
インドへ持ち込んで商売をしようとするから
業にアクセスすることです。セールスはその
新春対談
15
後の話です。アクセスすることに大きなリス
は4年連続1位です。利点として、マーケッ
クはありません。誤解のないように言えば、
トの今後の成長性、安価かつ豊富な労働力が
リスクはもちろんありますが、物価が安いの
挙げられています。輸出基地としての可能性
で、初期段階の調査などは本当に安いコスト
は、いかがですか。
で可能です。
ニヤンタ:その可能性もあります。すでに、
藤野:ニヤンタさんのコンサルティング料金
いくつかの優良企業でも行なわれています。
は、高いのではありませんか(笑)。
ニヤンタ:それは、日本で行なっていますか
■インドにおける金融機関事情
ら、日本の物価基準で…(笑)。
藤野:話題を少し変えて、インドの金融機関
藤野:インドでは安い…(笑)。
の話をお願いします。インドには、日本の都
ニヤンタ:インドで
市銀行、いわゆるメガバンクや、地方銀行の
コンサルティングす
ような銀行はあるのでしょうか。
るときはインド価格
ニヤンタ:インドのメガバンクの歴史はとて
で行います(笑)。
も浅いです。社会主義的な体制の下、銀行は全
インドで進出調査
て国有化されていましたので。インド最大の銀
をするための現地
行であるインドステイト銀行も、もともとは国
への1回の飛行機代
有銀行でした。他にも新しく設立されて伸び
で、インド人2人分
ている銀行もありますが、しかしまだ、メガ
の給料が出ます。日本人1人を雇う金額で、
バンクとは言えません。規模が小さいです。
インドでは4 ∼ 5人を雇うことができます。
藤野:インドの大手銀行は、ローカルな存在
このことは、インド進出に慎重な方々にとっ
なのですか。
ても非常に有利な条件です。
ニヤンタ:全国展開しています。地方でしか
藤野:初期コストが安く済む。
活動していない銀行は小規模です。ローカル
ニヤンタ:先行投資が少額で済みます。イン
な金融機関はたくさんありますが、破綻する
ドは、市場がどんどんと拡大しており、成功
こともあります。しかし、地域ではとても力
の機会も増えています。また、市場のニーズ
を持っている銀行もあります。
も多様化し膨らんでいます。日本の中小企業
インドの金融政策をリードしている機関
にもインドへの進出を是非考えていただきた
は、 イ ン ド 準 備 銀 行(RBI:Reserve Bank
いですね。他国に遅れをとるのではなく、機
of India)です。米国のFRBのような存在で、
会を積極的に利用して欲しいです。
金融関係のレギュレーション、金融政策、銀
藤野:国際協力銀行の調査で、中期的に有望
行経営に対して大変な力を持っています。非
な事業展開国のランキングにおいて、インド
常にしっかりとした機関で、国民からの信頼
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信金中金月報 2010.1
も厚く、RBIの人材は、非常に優秀でレベル
上がっていますが、
一般の中間層の方たちは、
が高いと言われています。規制を緩和し、社
どのような金融機関に貯蓄をしていますか。
会主義的な政策を大きく変更したにもかかわ
ニヤンタ:普通の銀行です。日本のような郵
らず、上手くいっています。
便貯金は、インドではないに等しいです。私
現インド首相のモンマハン・シン氏は、も
の出身地はムンバイですが、ムンバイはイン
ともとRBIのトップを務めていた人です。で
ド経済の中心地でもあり、インドの全大手銀
すから、政府は金融関係のいろいろなニーズ、
行がそろっています。さらに、ムンバイは、
仕組みに対して非常に敏感で、また、力も入
マハラシュトラ州の州都でもあります。マハ
れています。インドの証券取引所が2008年
ラシュトラ州だけで、人口は8,000万人を数
の金融危機、リーマンショックから大きな被
え、その各地方にそれぞれの地名がついた銀
害を受けなかったのは、無差別な規制緩和を
行がありますから、マハラシュトラ州だけで
行わなかったことがその理由の1つに挙げら
も100行以上、数え切れないほど銀行があり
れます。インドの金融規制は、緩和すべきと
ます。そして、皆ムンバイに拠点を構えてい
ころは緩和する、規制すべきところは規制す
ます。しかし、マハラシュトラ州の外で何か
るというものです。
活動しているかというと、全く活動していま
藤野:相互扶助を基本理念とした金融機関、
せん。なぜかと言うと、銀行業務をマハラシ
日本で言うところの信用金庫に相当する金融
ュトラ州の言葉で、つまり地方の言葉で行っ
機関はありませんか。
ているからです。地方の言葉を使うことで、
ニヤンタ:それはあまり聞きません。地方の
利用者に安心感を与えているのです。
金融機関は、地方の有力者が自前で行なって
インドの100ルピー札の中には、100ルピ
いる小さな銀行か、大きな銀行グループの一
ーという言葉が英語やヒンディー語といった
部かであり、位置付けもあまり差別化されて
公用語のほか、15の言語で書かれています。
いません。そのため、インド人から見れば、
州によって言葉が全く異なり、あたかもヨー
日本の信用金庫という業種は非常に珍しい存
ロッパのようです。そのため、州内でのみ活
在です。
動する銀行が多いです。
地域が非常に断片化されていますから、消
藤野:確か、公用語以外に22の準公用語(州
費者金融も含めて、本当にたくさんの金融機関
の公用語など)がある。
があります。きちんとした銀行として全国的に
ニヤンタ:私の出身の小学校の授業は、州の
認知されているのは、ごく限られています。
公用語で行われていました。マハラシュトラ
州の場合はマラティー語ですが、それは私の
■多言語国家「インド」
藤野:インドが経済成長するなか、貯蓄率が
母国語でもあります。学校の授業の第二外国
語は、国の公用語であるヒンディー語です。
新春対談
17
藤野:小学校の時に身に付けるのですか。
はあまりありません。
ニヤンタ:小学校ではヒンディー語は身に付
逆に、日本のように資源に乏しい国が、技
きません。もっぱら、マラティー語でした。
術力で勝負をして経済成長を成し遂げるとい
藤野:中学校からですか。
うことは、凄いことであると思います。
ニヤンタ:中学校からです。ただし、日本の
藤野:インドは資源を持っていますから。
小・中学校とは、少し分け方が違います。日
ニヤンタ:それゆえか、あまり頑張らないと
本で言えば小学校の高学年から、第二外国語
いう問題があります(笑)
。
としてヒンディー語を学びます。次に、第三
日本は、同じ言葉
外国語として英語を学びます。これはインド
を 用 い、 同 じ 文 化
国民にとって、ごく普通のプロセスです。我々
を共有し、非常に似
も英語を勉強するときは、大変な苦労をして
たような人種ばかり
います。英語は第三外国語であり、2つの言
です。そういう中で
語を覚えた上で、さらに英語を覚えなくては
文明を作って、独特
いけないのですから。
な文化や技術力を育
藤野:インドにおいては、第三外国語まで習
て、教育を武器に人
うことが普通ですか。日本人にとって第三外
材を育成し、読み書きソロバンを教える寺子
国語は、大学で少々かじって、ほとんど覚え
屋のような歴史があり、今日の日本の経済成
ていないというレベルですね。
長を成し遂げ、
高度な文化を発達させました。
1つの言葉、1つの文化を生んだ島国という
■日本とインドの「知恵比べ」
自然国家が、日本にとって有利に働いたので
ニヤンタ:インドと日本を比較して、国際化
す。島国という条件は、まとまりやすい社会
を考えるととても面白いと思います。
を作るために非常に有効です。インドの場合
インドには、いろいろな民族や人種がおり、
は、インド人が2人いたら3つの意見がある
いろいろな文化が混在しています。他国と陸
と言われます(笑)
。
続きで、侵略もあり、栄華もありました。そ
藤野:第3の意見…(笑)
。
ういう中でインドの歴史、環境、教育、経済
ニヤンタ:それぐらい、インド人はまとまり
が作られました。資源が豊富で、教育もしっ
にくい(笑)
。
かりしていたため、経済水準も高かった。だ
ニヤンタ:日本とインドを比較する際に、大
からこそ侵略されたという歴史もあります。
切なのは「知恵比べ」だと思っています。日
世界銀行の統計によれば、中国とインドで
本で私は、毎日、インド人が求めている知恵
世界の富の4割を占めていた時期もありまし
を発見します。私の主たるミッションは、そ
た。資源も人も豊富ですから、経済面の心配
のような知恵をいかにインドに持ち帰って、
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信金中金月報 2010.1
そういう考え方、文化を導入し、インドに必
しい国である日本が、いまだに世界第2位の
要な改革をどう考えればよいかという勉強だ
経済大国として存在感を示すことができるの
と思っています。1人のインド人として、日
は、地道な努力で技術力を磨き、高度な人材
本に対して偉そうに言えることはありませ
を育成するための高等教育を熱心に行なって
ん。本当にそう思います。あくまでも知恵比
きたからです。やっと出来上がった国なので
べなのです。全く違う状況や歴史があり、2
す。資源もないなかで努力を怠れば、きっと
つの全く違う文化・社会があり、互いに交換
日本人はひもじい思いをするでしょう。ひょ
し交流させる知恵がたくさん蓄積されていま
っとしたら若い人たちは、そのことに気が付
す。互いに古い文明があり、その重みは半端
いていないのではないかという、大きな危機
なものではないと思っています。米国は500
感があります。
年の歴史しかないので神話もない。そのため、
藤野:ずっと昔から今のような状態だったと
新しく神話を作らなければならないのです。
思っているということですね。
スパイダーマンにしても、スーパーマンにし
ニヤンタ:そうです。もう1つは、日本が国
ても(笑)。
際的な競争の中で、いつまでもナンバーツー
日本とインドは、ともに協力していくなか
でいられるわけがないということです。イン
で、国際化や自分の立ち位置、アイデンティ
ドや中国が台頭してくると、米国にとって日
ティ、ポジショニングなど、互いに刺激をし
本はワンオブゼム(その他の一国)になりま
つつ、非常にナチュラルなパートナーとなり
す。G7の中でもワンオブゼムとなる可能性
得るのではないかと思っています。これから
もあるのです。日本は、これからの日本の国
が楽しみです。
際戦略を考える人材をきちんと育てる必要が
あります。しかし、グローバルマインドを持
■日本の若者へのエール
ち、国際戦略を考え、グローバルな競争がで
ニヤンタ:先般、横浜市立大学で講義を行っ
きる人材が本当に育っているのか、非常に心
た理由の1つに、日本の若い人たちの将来へ
配になります。
の不安があります。
藤野:我々も頭を悩ませています。
ニヤンタ:日本は、今まで、米国に追いつけ
■人類は家族である、
どこでも自分の国である
追い越せと非常に努力をして、豊かさを手に
ニヤンタ:インドは、もともと国があっても
入れましたが、若い人たちはそのような経験
ないようなもので、インド人ももともと大変
もなく、生まれた時には、既にモノに不自由
に自由な考え方をします。インド人の思想の
しない日本が出来上がっていたのではありま
根底にあるのは、
「人類は家族である」です。
せんか。何の資源もない、本来なら非常に貧
インド人は人種差別をしません。日本で初め
新春対談
19
て東京裁判の話を聞いて、インドのパール判
どこへ行ってもその場所に溶け込み、そこ
事だけが、なぜ日本に対して分け隔てのない
に貢献することです。自分の国であるために
発言ができたのか、すぐに理解できました。
は、人に貢献すること、その場所に貢献する
それは、日本人も同じ人だと思っているから
ことが欠かせないという考え方です。だから
です。人種・民族に対する偏見がなく、1つ
こそ、グローバルマインドというものを考え
の人類、1つの世界として考えているからで
るとき、このインドの思想は大きな意義を持
す。ここは自分の国、ここは外の国と区別し、
つのではないかと思います。
侵略して何かを奪い取ろうという考えがそも
私がインド数学の書籍を書いた時、「これ
そもありません。長い歴史の中で外国を侵略
はインドの国家機密です。」と言って紹介し
したこともありません。インド国内では戦国
ていました(笑)。インドの国家機密とは何
時代もありましたが、国外に侵略したことは
かというと、インドの思想です。思想という
ありません。経済力が豊かで、軍事力が強大
言葉が分かりにくければ、哲学や知恵です。
であった時も同じです。
「人類は1つの家族で
具体的には、ヨガであったり、数学であった
ある」ということが、思想としてインド人に
り。ハードウエアではなく、インドのソフト
あります。一度家族であると思えば、兄弟と
ウエアです。そのような思想を持ったインド
なりますから、差別ができなくなってしまう
人が、日本人と一緒に平和な将来の実現に向
のです。体格や顔立ちや肌の色が違っても兄
けて、有意義な考え方の発信ができるのでは
弟です。そのことを私は、思想だけではなく、
ないでしょうか。経済活動の協力ばかりでは
日本において肌で体験しました。
なく、世界に向けた新しいメッセージの発信
東京の下町でインド人学校を作った時に、
ということも視野に入れてこれからの教育を
初めて日本の社会に立ち入り、日本人の考え
考えないと、もったいないし物足りないと思
方に深く触れました。インド人学校の近くに
います。
我々とは全く関係のないお寺がありました。
ある日、そこの住職が来られて「お前の学校
■世界と勝負する気概が必要
は狭そうだから、子供たちがうちのお寺のグ
藤野:先ほどの若者の例で、特に問題がある
ラウンドを使ってよい」と仰って、非常に感
と考えるのは、どの辺りでしょうか。
動しました。一回、言葉と心が通じれば、同
ニヤンタ:エクスプレッションと戦略、その
じ人間であり何も違わないということが分か
他にも、競争力という点で負けてしまうので
りました。そういうたくさんの貴重な経験を
はないかと危惧しています。私の認識が間違
しました。
っているかもしれませんが、他国と比べて少
もう1つ、インド人の思想には、美徳があ
しひ弱な感じがして仕方がありません。外国
ります。世界中どこでも自分の国だと思い、
に出なくても、日本で全て間に合ってしまう
20
信金中金月報 2010.1
から、敢えて世界に泳ぎ出て、いろいろな人々
貿易など、英語が必要な分野には英語が使え
と関わりあっていこうという意志が感じられ
る人材を投入していたので、国際戦略もある
ません。日本において一人前であることで満
程度実現してきました。今までの日本社会に
足し、自分が世界レベルで一人前なのかどう
おいては、英語を使う必要が「ある場面、な
かということを確認したいという気持ちが見
い場面」
との使い分けが行われて来たのです。
えません。そのチャレンジは、大きな自信に
しかし、これからは、いろいろな問題が、
結び付くのですが。
経済問題にしても、新型インフルエンザにし
日本人にとって、世界に対してチャレンジ
ても、環境問題にしても、ボーダレスになっ
する際、大きなハンディキャップとなるのが
ていきます。困ったことに問題だけがボーダ
英語力です。インド人は、特別なスキルを持
レスになっているのです。
そのようななかで、
っている訳ではありませんが、英語力が認め
英語を使い分けていて、世界において日本が
られて、それをバネとして世界で活躍してい
生き残っていけるのか、心配になってしまい
ます。個人的な経験で言えば、私にとって、
ます。
第三外国語として学んだ英語も、第四外国語
として覚えた日本語も武器となっています。
日本人の英語力のレベルが低いのは、日常
的に使う必要性がなかったからです。外交や
■グローバルマインドと
アイデンティティ
ニヤンタ:グローバルマインドとは何かとい
新春対談
21
うと、私は、
「オープン&フェアマインド」
(Open & Fair Mind)という言い方をしてい
的にいろいろなことを意識しなければなりま
せん。
ます。オープンで差別をせず、非常に自由に
ニヤンタ:そうです。
いろいろな考え方を取り入れて、さらにフェ
藤野:日本人は何の
アに評価し多様性を受け入れるということで
意識もしないで、誰
す。そうあるためには、自己のアイデンティ
とでも日本語でコミ
ティが非常に大切です。また、自分のルーツ
ュニケーションをと
も大切です。インド人としてのアイデンティ
ることができます。
ティ、日本人としてのアイデンティティは、
しかし、それは裏を
自分のルーツであるということもあります。
返せば、自分のこと
アイデンティティをしっかりとした軸足とし
もしっかりと言わな
て、グローバルな中におけるポジショニング
くてもよいし、
相手のことも聞かなくてもよい。
を考えないと、世界の中で思い切った冒険は
ニヤンタ:そうです。本来、コミュニケーシ
できません。アイデンティティが確立してい
ョンをとるためには、自覚が必要です。自分
るからこそ、グローバルに対して働きかけや
が持っている素晴らしいものに対する自覚。
刺激を与えることができるのです。
自覚は、アイデンティティに不可欠であり、
言葉は、アイデンティティの一番のコアに
自信の源泉ともなります。
なる部分です。日本人が日本語という1つの
もちろん、インド人にも悪い点がたくさん
言葉を非常に大事にしてきたということは、
あります。歴史の中においても、非常に悲し
非常に羨ましいことでもあります。1つの言
い、恥ずかしい歴史も数多くあります。カー
語で間に合ってしまうということは、イン
スト制度の問題もあります。それらを乗り越
ドから見ると夢のような話です。インドの社
えて、今のインドはまた頑張ろうとしていま
会は、家から出ると3つの言語を使わなくて
す。欠点や過去をきちんと整理し、意識して
はいけないのですから。しかし、インドでは
自覚しないと、困難を乗り越え、それを自信
逆に語学に対する才能が少しずつ磨かれるの
にして、バネにして、発展していくことは難
で、今度は中国語を覚えよう、日本語を覚え
しいのではありませんか。
ようとか、語学勉強に対するアレルギーがな
くなります。
■ツールとしての英語教育法
藤野:一国の中にいくつもの言葉が併存して
ニヤンタ:さらに、いろいろな人とコミュニ
いると、コミュニケーションをとることも簡
ケーションとるための道具も必要です。もし
単ではないですね。しかし、だからこそ、誰
私が日本語ができず、通訳を必要としていた
かとコミュニケーションするときには、必然
ならば、この対談もお粗末な内容になってし
22
信金中金月報 2010.1
まうと思います。非常にコンテンツがロスし
わっていません。私は、日本語も日本人に教
てしまいますから。
わったことがありません。インド人に日本語
日本に対して私が一番不安に思っているの
を教わりました。
は、国際戦略の組立てとそのための人材育成
藤野:その方が却ってよいのでしょうか。
に不可欠な英語教育の考え方です。インドで
ニヤンタ:ネイティブとそうでない人とで
も英語教育をしていますが、インド人にとっ
は、英語に対する環境が違います。
ても、英語を覚えるのは非常に大変なことな
藤野:我々は覚えるときに苦労があります。
のです。1つだけインド人にとって有利なこ
ニヤンタ:その苦労
とは、インドの言葉は発音のバリエーション
は、ネイティブには
が豊富だということです。日本語も英語も、
分かりません。面白
インドの言葉より母音と子音が少ないから発
い例として、フラン
音しやすいのです。そういうアドバンテージ
ス人は、英語に何の
はあるものの、インド人も英語を覚えること
こだわりも持ってい
に非常に苦労しています。英語教育の導入に
ませんし、むしろ大
も大変に苦労をしました。それが成功したの
嫌いであると言える
は、植民地政策であったからです。
かもしれません。しかし、研究機関の論文発
藤野:やらざるを得ないということですね。
表は英語での執筆を義務付けています。英語
ニヤンタ:植民地エリートとなるためには英
で論文を発表しなければ、世界に対するエク
語が不可欠でした。上昇志向を持っている人
スプレッションができないからです。文献な
たちは、皆必要に迫られ、努力して英語を身
どに引用された数によって、大学教授への報
に付けたのです。日本でも、そういう必要が
酬が決まるのです。公的な評価基準を模索す
あると理解し考えが変われば、5年10年後の
ると、英語が不可欠となります。すると、英
若い人たちは変わってくるはずです。先ほど
語が苦手なフランス人やドイツ人も、必要に
申し上げた世界に対するエクスプレッション
迫られて覚えてしまうのです。
が強くなるでしょう。
日本の大学にしても、研究機関にしても、
藤野:今、日本の小学校でも英語教育が始ま
日本で素晴らしい研究をしているにも関わら
っていますが、具体的な効果があまりあらわ
ず、英語での発表が少ないのではありません
れていません。英語で授業を行う訳でもあり
か。本来はノーベル賞をもっとたくさん受賞
ませんし、ネイティブが指導している訳でも
できるはずなのに…。そこは大胆に進めない
ありません。
と変わりません。私は、少なくとも大学の卒
ニヤンタ:ネイティブの先生は必須条件では
業論文は英語での執筆も義務付けるべきと思
ありません。私たちもネイティブに英語を教
います。そうすると皆努力し、英語を身に付
新春対談
23
けるための知恵も生まれ、上達もします。
ということです。勉強している時間は同じで
インドには、日本語をどのように勉強する
しょう。どこに問題があるかというと、指導
のか、上達するのかという知恵は全くありま
方法と学習方法しか考えられません。指導方
せん。しかし、日本語を習得したいと思って
法が完全に間違っています。受験のための英
努力をすれば、習得の知恵が生まれます。一
語教育となっています。
指導方法が変われば、
方、英語の学習についての知恵はあります。
学習方法も変わります。
英語は日本語と比べれば非常に簡単です。漢
字を覚える努力をしなくて済む訳ですから。
■おわりに
英語はもっとこう、肩の力を抜いて覚えて欲
ニヤンタ:最後にもう1つだけ、日本の若者
しいですね。日本人は英語の話になると肩に
について申し上げたいと思います。日本は、
力が入り過ぎです。
何でもそろっていますから、後は、自己のエ
私は英語で教育・授業をすることには反対
クスプレッションと国際戦略が必要だと先ほ
です。インドの教育においても、英語で授業
ど話しました。しかし、間違えてはならない
することに関しては反対です。その理由は、
のは、そのために必須なコミュニケーション
アイデンティティが薄れてしまうからです。
能力とは、英会話ではないということです。
しかし、世界で自分たちの競争優位を築くた
むしろ、説得する力、演説力、交渉力です。
め、存在を主張するためには、1つの武器と
下世話な話ですが、女性を口説く力なども全
して英語は必要です。残念ながら、英語が世
部ひっくるめてのコミュニケーションの力で
界の公用語になってしまったことは、動かし
す。もちろん、英語を話す力を身に付けたと
難い事実ですから。
いう前提での話ですが。
藤野:日本は英語で遅れをとっています。
藤野:最後に日本の若者に対する、幾つかの
ニヤンタ:信じられないのは、識字率が6割
提言をいただきました。今日は、ニヤンタさ
強の水準でしかないインド人が英語を話すこ
んに、いろいろと面白く、そして真実の話を
とができて、これだけ進学率が高い、教育水
たくさんしていただいたような気がします。
準が高い日本人が英語を話すことができない
今日はどうもありがとうございました。
24
信金中金月報 2010.1
特別寄稿論文
日本経済の深刻な不況と緩慢な回復
コロンビア大学ビジネス・スクール 日本経済経営研究センター所長
ヒュー・パトリック
訳 信金中央金庫 総合研究所長 平尾光司
【プロフィール】
コ ロ ン ビ ア 大 学 名 誉 教 授。 同 日 本 経 済 経 営 研 究 所 所 長。 同
APEC研究センター共同ディレクター。
1951年イェール大学卒、1960年ミシガン大学Ph.D.。イェール大
学教授兼Economic Growth Center所長を経て、1984年からコロ
ンビア大学ビジネススクール教授。1994年、長年にわたる日本
経済研究の業績に対して日本政府より勲一等瑞宝章を授与される。
著書:
『日本金融システムの危機と変貌』日本経済新聞社(2001)
『ポスト平成不況の日本経済』日本経済新聞社(2005)
専攻:金融論、日本経済論、アジア環太平洋諸国の経済関係
(要 旨)
2002年から2007年にかけての景気回復は、完全雇用を達成できず、国内のデフレ圧力も断
つことができず、十分ではなかった。効率化した労働市場は企業に恩恵をもたらしたが、
総需要の増加は鈍い状態にある。完全雇用を達成できなかった不十分な景気回復が所得格
差の主因となったのである。
日本の短中期的な景気動向は楽観できない。GDPが2%あるいはそれ以上に成長し、産出
ギャップの解消と完全雇用が達成されるまで、日本の完全な景気回復は達成されないだろ
う。経済の回復は、民主党の政策主導と輸出の拡大にかかっている。国債発行に対する問
題は、国内需要の不足の問題ほど重要ではない。
短中期的な日本のマクロ経済上の主要な問題は、不十分な総需要の問題であろう。現在の
日本は、GDPに占める民間設備投資の割合が高過ぎ、家計消費の割合が低過ぎる。政府部
門による需要も重要であり、過剰債務の懸念はあるものの、現行の政府債務額は耐え得る
水準である。日本の景気回復には、輸出の増加と国際収支の経常黒字が必要である。日本
の製造業はもっと競争力を強めて輸出志向になる必要があり、サービス業は海外市場で効
率的な業務を展開しなければならない。
長期的には供給サイドが日本の潜在成長率を決めることになる。移民による人口増加を見
込まないなど、いくつかの大胆な仮定を置いた上で、労働生産性向上と労働人口減少の予
測を踏まえると、日本のGDP潜在成長率は約1.3%から1.8%と見込まれる。
私は、日本の長期的な将来に関してはより楽観視している。日本は、優れた人的、社会的
資源を有しており、長い時間をかけて大きな柔軟性と順応性を示してきた。日本は、最終
的には自身の問題を解決する。私が見定めることができないのは、日本人が自分自身に、
また自国に対してどのような未来を望んでいるのか、ということである。
特別寄稿論文
25
2008年はまさに激動と変化の1年であった。
第1に、日本は高所得、高技術、高度かつ
世界経済は金融危機の大波に巻き込まれ、
成熟した経済社会であるということである。
日本、米国、そして世界の経済は戦後最悪の
つまり、他の先進国の経済と同様に、いった
不況に襲われた。日本の政治における民主党
ん循環的回復を取り戻せば、およそ年率2%
の勝利は、新しい時代の到来を強く示唆して
という一人当たりの長期的な潜在GDP成長
いる。
率を見込めるのである。
日本経済は世界金融危機の直撃を免れたも
第2に、日本の人口構造の転換は他国より
のの、2008年秋には世界の需要収縮による
早く進行しているということである。65歳
急激な輸出の減少によって厳しい打撃を受け
以上の高齢人口が増える中、10年以上にわ
た。2008年第2∼3四半期に緩やかに低下し
たって労働人口が減っており、総人口までも
始めた日本のGDPは、2008年第4四半期には
がゆっくりと減り始めている。
急落し、2009年第1四半期も回復せず、その
第3に、過去15年にわたって、また今後数
6か月間は年率マイナス12%となり、米国や
年においても、日本にとって最も重要なマク
ヨーロッパの成長率を大きく下回っている。
ロ経済の課題は、国内需要、とりわけ消費の
しかし、日本経済は米国やヨーロッパより先
低迷であるということである。不十分な国内
に2009年春には底を打った。政府が当初3.7%
需要は、循環的な問題である以上に、構造上
と推定していた2009年4∼6月のGDP成長率
の問題である。ほぼ20年間、日本の労働力
は、年率で2.7%のプラス成長となった。
は過剰だった。持続的な完全雇用成長を達成
さらに11月16日に発表された7∼9月期の
できなかったからである。
GDP成長率は4.8%と一般の見通しであった
現在の不況がはっきり示していることは、
2.9%を大きく上回る高い成長を示した。し
日本のマクロ経済における最大の課題は、総
かし、残念ながらこの成長率の持ち直しが景
需要の低下とアンバランスな経済構造という
気の完全な回復につながると見ることはでき
組み合わせによるものだということである。
ない。つまり、完全雇用水準での持続的成長
日本経済は輸出と国内の設備投資の伸びに大
の達成にはほど遠いといえる。原油・商品価
きく依存していた。関連して、緩やかではあ
格の上昇によって2008年には一時的に安定
るが持続的なデフレの問題が重大な懸念材料
していた物価は、現在緩やかではあるが持続
になってきている。非常に重要な点は、真の
的なデフレ傾向へと戻っている。
景気回復と持続的な成長をもたらす十分な総
日本は、1950年代に構築された戦後体制
需要を、いったいどこから見込めるのかとい
からの抜本的変革を進める必要がある。その
うことである。
場合に経済政策を構想するには、3つの基本
経済に関する日本の一般的な議論には、間
的な現実を前提にすべきである。
違いや誤解を招くような月並みな表現があふ
26
信金中金月報 2010.1
れている。1980年代の経済成長は奇跡では
も、自民党のお粗末な業績に対する国民の大
なく、一般的な経済的要因で説明できる現象
きな不満と、変化への強い期待が反映された
である。1990年代は「失われた10年」では
ものだった。この勝利は民主党に勢力の急増
ない。目覚しい景気回復こそ達成されなかっ
と切迫感をもたらしているが、この新政権は
たが、多くの制度的、政治的、社会的改革が
経験が浅く、まだ真価を問われていない。ま
実行された。所得格差の拡大の主要因は小泉
た、初めての民主党政権というだけでなく、
純一郎元首相の経済構造改革ではなく、完全
民主党の衆院議員のほぼ半数(308人中143
雇用が達成できなかったことにある。1990
人)が初当選議員である。
年代の財政政策は失敗ではなかった。有効に
経済、国政、政権運営、外交などの政策変
生かされていたときには成功していたのだ。
更は検討中である。しかし、具体的に何が、
問題だったのは、財政面の景気刺激があまり
どのくらい、どの程度まで変わるのか、確実
にも少なく、またあまりにも遅く、その場し
とは程遠い状況にある。民主党はやや左寄
のぎで一貫性がなく、しかも成功したところ
り、自民党はやや右寄りと位置付けられてい
で時期尚早にも1997年に打ち切ってしまっ
るが、両党とも幅広い政治勢力を内包してい
たことである。
る。民主党議員には、穏健な保守派から社会
私は、ここ数年とは異なり、短中期的には
主義者までおり、また一部にはかつて自民党
日本経済は楽観しがたいと感じている。以
員だった議員もいる。
下、日本のマクロ経済の課題と政策選択に焦
多くの議論がなされているにもかかわらず、
点を当てて述べていく。2009年8月の衆議院
大きな変化はすぐには起こらないだろう。
選挙の評価、2002∼2007年にわたる不完全
差し迫った問題と長期的な問題双方に取り
な景気回復、最近の景気動向、経済の短期的
組 む に あ た り、 今 後 数 か 月、 政 策 論 争 は
見込み、総需要の拡大という難問、日本と国
2010年7月に迫っている参議院選挙の影響を
際経済の関係、そして長期的経済成長につい
受けるだろう。民主党は、現在2つの少数他
て検討する。
党との連立によって参議院の多数を維持して
新しい政治情勢
いる。この連立が新政権における政策コンセ
ンサスの形成を非常に難しくしている。政権
2009年8月30日に行われた衆議院選挙で民
についてからの最初の10か月間の実績が評
主党が圧勝し、9月16日民主党党首の鳩山由
価されれば、民主党は完全な主導権を握るこ
紀夫氏が首相に就任した。1955年以来、自
とができるだろう。しかし、民主党政権を弱
由民主党が政権から外れるのは、1993年の
体化させるような逆風に遭う可能性もあり、
11か月間を除き、初めてのことである。し
また、ほとんど起こり得ないだろうが、自民
かし、この選挙は民主党への支持というより
党に参議院の過半数を明け渡すことにすらな
特別寄稿論文
27
るかもしれない。いずれにせよ、民主党政権
年間は実施しないと公約している。
は長期化する。何故ならば、2013年まで衆
第3の目標は、新しく強力な政治家主導の
議院選挙を行う必要はないからである。
政策決定システムを作ることである。その目
民主党の経済哲学は、効率性向上のための
的は、官僚の権限を大幅に減らし、官僚と自
経済構造改革を目指していない。反市場主義
民党との長期にわたる馴れ合い的な関係を弱
ということではないが、行き過ぎた市場の自
めることにある。この新しい「国家戦略局」
由化は認めないという立場である。とくに労
は首相直轄であり、民間、国会議員、官僚か
働市場についてはその主張がはっきりしてい
らの有識な政策アドバイザー約30名から成
る。新政権は総合的な経済成長戦略を策定し
る。その担当大臣は、元民主党党首で現在副
なければならないが、現在はまだ検討の過程
総理を兼任する菅直人氏が務めることになっ
である。
ている。民主党は、官僚に対し政治的なコン
民主党は、3つの主要な経済政策目標を推
トロールをもっと強めることを決定した。そ
進するとマニフェストで述べている。
れが成功すれば、これまでの日本政治の行わ
第1は、政府支出を公共インフラ投資から
れ方が根本的に変わることになるだろう。し
家計消費へと切り替えることである。最も重
かし、民主党も官僚の協力なしに統治するこ
要な施策は、中学卒業(15歳)まで、子供
とは不可能であるため、現実的には官僚制度
一人当たり年額31万2,000円を支給すること、
との何らかの調整が必要となるだろう。
高校の授業料や諸費といった教育費の削減、
差し迫った政策の戦場は、2010年度予算
そして農家への戸別所得補償である。これら
と、自民党が決定した2009年度補正予算の
新 規 の 支 出 はGDPの 約3% に な る と 予 想 さ
見直しに関する、10月下旬に始まる国会審
れ、他の支出を削減することで賄われるとし
議である。政治的スローガンは華やかである
ている。
が、民主党政権は発足したばかりで、具体的
第2は、財政の適正化である。民主党は赤
な政策の策定の過程は始まったばかりである
字財政への依存を、自民党による2009年度
という事実が国会審議で明らかになった。最
政府予算での赤字財政依存以下に抑えたいと
初の重大なテストは2009年末に決定される
しており、新たな福祉予算の財源に関して
2010年度予算編成であろう。子ども手当も
も、赤字財政つまり国債発行には頼らないと
取り上げられる予定で、おそらく2010年4月
している。2010年度予算では「埋蔵金」の
から実施されるが、初年度はおそらく2年目
活用やインフラ事業の見直しを行い、長期的
以降の半額となるだろう。
には、所得税の配偶者控除・扶養控除の廃止
第1に重要な政治的課題は、民主党が財政
など、様々な支出の削減や歳入の調整を図る
支出総額を増やさず、さらに言えば、財政赤
としている。また、消費税の引上げを今後4
字を増やさずに社会福祉への支出を増やせる
28
信金中金月報 2010.1
かどうかということである。2010年度は財源
資のGDPに占める割合は、2002年には実質
を見出すことが可能かもしれないが、2011
ベースで13.7%(名目値13.5%)とすでに高
年度以降は難しいだろう。
い水準だったが、さらに30%の伸びを示し、
第2の 課 題 は、 現 在 の 景 気 が 再 び 後 退 し
2007年には16%(名目値でも16%) に拡大
て、2010年上期において、新年度予算成立
した。消費支出は5%の増加にとどまり、GDP
後に景気対策の補正予算が必要になるかどう
に占める割合も、すでに低い水準にあった
かである。第3の問題は、国家戦略局が体制
2002年の57.5%(56.5%)から、2007年には
を整備して本当に機能するかどうかである。
54.8%(56.3%)へと落ち込んだ。公共投資
基本的な問題は、自民党政権から引き継いだ
は下落を続け、6.3%から3.4%(名目値では
マクロ経済、ミクロ経済、構造的問題など多
6.3%から4.0%)へと縮小した。
様な日本経済の難題に対して、民主党政権が
日本は、中国の急速な経済発展や、米国と
どのように効果的に取組むのか全く明らかに
その他のアジア諸国における順調な成長の恩
なっていない現実があるということである。
恵を受けた。輸出もまた、日本の低金利から
不十分だった2002∼2007年の景気回復
来る円安や、円キャリー・トレード、その他
日本からの資本の流出により恩恵を受けた。
2002∼2007年において、厳しかった1990
日本の比較優位は、過去も現在も、自動車、
年代からの景気回復が不十分であったことを
電気製品、機械にあり、いずれも海外での需
考慮して、日本の現在の経済情勢を位置付け
要の増加に、あるいは2008年のような減少
ることが重要である。2002年から2007年に
に対しても、強く反応する。この期間におけ
かけて日本のGDPは11%増、この間人口は
る生産能力と工業生産高の増加の大部分は、
横ばいだったので、総額で一人当たりGDP
輸出に対応するためのものだった。
は年率2%の増加だった。一人当たりでみる
2007年にピークに達した2002年からのい
と、景気回復初期の産出ギャップは日本の方
ざなぎ景気を超えた成長は良かったが、十分
が大きかったため、米国より若干速い成長と
ではなかった。完全雇用は達成できず、国内
なっている。
のデフレ圧力も断つことができず、つまりは
企業は3つの過剰、つまり債務、設備、雇
完全に景気を回復させることはできなかった
用を削減することができた。2002∼2007年
のである。同様に重要なのは、総需要の構成
の成長の主たる要因は、輸出と民間設備投資
が不均衡だったことである。成長は主とし
だった。輸出は58%という驚異的な増加を
て、輸出と設備投資の異常な高成長に依存し
示し、GDPに占める割合も、2002年の実質
ていたのだ。家計所得の増加が低かったた
ベース10.9%(名目値11.3%)から、2007年
め、総需要の不均衡を消費の伸びで克服する
には17.4%(17.6%)となった。民間設備投
ことができなかった。そして財政再建(赤字
特別寄稿論文
29
財政支出の削減)という政府方針が、より速
よって、失業は減ったが、この間、経済にお
い成長を妨げてしまったのである。
ける賃金総額は減少し、GDPに占める各世
2002∼2007年 の コ ア 消 費 者 物 価 指 数 は、
帯可処分所得の割合は低下した。
若 干 の 低 下 も し く は 横 ば い だ っ た。 た だ
労働市場の発展はミクロ的な意味では効率
2007年後半だけは、世界的な原油高と商品
性を高め、企業に恩恵をもたらしたが、総需
価格の高騰により、物価が上昇し始め、消費
要の増加は鈍っている。このことが世論に影
者物価指数は高騰して、2008年7月には月間
響し、所得の不平等が大きな社会問題とな
2.4%とピークをつけた。その後急速に低下
り、日本人の90%以上が自分たちをミドル・
し、2009年初めまでにはゼロとなった。日
クラス(社会階級の概念を避ける日本人の言
本銀行は金利を(ゼロから)0.5%以上には
い方をすれば、中流層)であると考えていた
引き上げることができなかった。
1980年代と比べて劇的な変化が生じた。確
つまり、より正常な市場金利水準を回復す
かに、1980年代に比べると所得の不平等は
ることはできなかったということになる。
や や 増 加 し た。 し か し、 分 配 の 公 平 性 は
失業率は、2003年初めの月間ピーク5.5%
OECDの平均よりはやや低いものの、それで
から、2007年末までには3.8%へと下落した。
も米国と比べればまだかなり平等性は高い状
労働市場はより効率的になったが、GDPの
態にある。完全雇用を達成できなかった不十
成長や労働需要は弱く、多くの労働者に悪影
分な景気回復が、所得格差の主因となってい
響を及ぼした。労働市場における非正規労働
るのである。
者 の 割 合 は、1990年 に は5分 の1だ っ た が、
2009年には3分の1へと劇的に上昇を続けて
最近の景気動向と財政金融政策
いる。パート労働者、契約社員、派遣社員、
2008年の夏に世界金融危機が発生した段
アルバイトなどの非正規労働者は、不安定な
階では、その危機が日本経済の景気回復の中
雇用契約、低賃金、貧弱な福利厚生を甘受す
断をもたらすが、深刻な景気後退をもたらす
る層を形成している。ライフスタイルとして
ことになろうとは予想されていなかった。こ
非正規の就業を選ぶ者もいるが、多くの非正
のような予想に反して、日本では、戦後最長
規労働者、特に若年層は、通常の正規労働者
の深刻なGDPの減少が続いている。2009年
としての雇用を求めながら、それが得られな
第2四半期に景気は底打ち転換したが、2009
かった人たちである。
年夏のGDPは依然としてピークを6.4%も下
非正規労働者の急増により、企業は二重の
回っていた。
恩恵を受けている。定年退職する正規労働者
しかしながら、概して不況による経済への
を低コストの非正規労働者に置き換え、景気
悪影響は、これまでのところ比較的軽いと言
の下降時には容易に解雇できるからである。
える。2009年の一人当たりGDPは、購買力
30
信金中金月報 2010.1
平価でみると約3万2,300ドルで、減少したと
は、成長率は年率4.8%となった。だが、こ
はいえ2006年の水準を若干上回る状況にあ
の 第2四 半 期 の 成 長 が も っ ぱ ら 輸 出 依 存 で
る。消費は少し減少した。他方、失業は急増
あったのに対して、第3四半期の成長は内需
し、2008年10月 の3.8% か ら、2009年7月 に
も回復してバランスが取れた姿になっている。
はかつてなく高い5.7%になったが、欧米と
4.8%の成長の寄与をみると、純輸出1.4%、
比べるとまだかなり低い水準にとどまってい
個人消費1.7%、在庫投資1.6%である。もっ
る。持家の状況は安定しており、住宅ローン
とも在庫投資は下方修正の可能性もあるとす
の延滞などによる担保物件の差押えは米国の
る推計もある。5四半期連続でマイナスを記
ように問題になっていない。1973∼74年の
録した民間設備投資は0.9%のプラスの寄与
石油危機時とは異なり、インフレもなく、パ
を示した。
ニックが広がることもなく、原油などの輸出
禁止や物不足の恐れもない。しかし不況は、
金融システムと金融政策
パートやアルバイト等の非正規労働者や、就
日本の金融システムは、これまでのとこ
職活動中の学生といったすでに経済的に弱い
ろ、世界金融危機と不況を乗り切っている。
立場にある人々に損害を与えている。そして
その主な理由は、1990年代後半に日本は金
日本の失業保険制度はまだ十分に整備されて
融危機にさらされ、金融機関の整理統合、金
いない。
融制度改革を経験したからである。規制、制
2008年度のGDPは3.2%も急減した。これ
度が見直され、金融庁が設立された。金融庁
は輸出の10.2%減と民間設備投資の9.6%減
の問題は規制権限がないことではなく、人
により引き起こされ、その合計はGDP全体
材、予算、そして市場監視のための情報技術
の減少よりも大きいものだった。年間比較の
の不足である。2008年秋、日銀は積極的に
データは四半期ごとの驚くほどの急低下をな
コマーシャル・ペーパーや社債を買い取り、
だらかに見せている。前年同期の比較では、
ほかにも信用収縮防止のために臨時処置を実
輸出は2008年第4四半期に12.6%、2009年第
施することで、国内金融市場の機能が停止し
1四半期に36.4%落ち込み、民間設備投資は
ないよう効果的に介入した。
そ れ ぞ れ11.8%、20.5% 落 ち 込 ん だ。 消 費
この介入は連邦準備制度やイングランド銀
は、この一年かなり良く持ちこたえ、1.5%
行のようにバランスシートを大幅に拡大する
の減少にとどまった。
ことなく実施された。これらの緊急措置の必
2009年第2四半期に、GDPの低下が止まっ
要性が薄まったので、日銀は2009年末に終
て上昇し始めたことは良いニュースである。
結を発表した。
GDP成長は改定値で年率2.7%となった。11
2009年3月10日、東京株式市場で日経平均
月16日に発表された第3四半期の暫定推計で
株価が7,055円に下落し、1990年のバブル崩
特別寄稿論文
31
壊以来の最安値を付けた。外国人投資家の保
低いレベルからではあるが、小企業のMBO
有 比 率 は、2009年3月30日 の 時 点 で23.6%
の件数も上昇している。日本の主要企業が外
と、4.0%減少した。
国企業を買収するという戦略が決定されると
日本の主要銀行は、顧客との関係維持を目
いうことは、重要な傾向である。
的 と し た 大 量 の 企 業 株 式 を 保 有 し て い る。
人口減少により、規模の利益が重要なポイ
2008年度には、銀行は保有株式や他の証券
ントである産業に属する企業は、国内市場の
類の時価評価額の減少により多額の評価損失
飽和という問題に直面している。経営者は、
を計上し、大量増資による新規の資本調達に
企業の規模を縮小することや、収益を株主や
追われた。しかし、米国のサブプライムロー
従業員へ分配することに消極的である。国内
ンや派生するデリバティブ商品の投資・保有
の競合企業間との合併も徐々に起こっている
が大きくなかったので、欧米のようなグロー
が、これは容易なことではない。1980年代、
バルな金融危機、不況の直接的な打撃はな
1990年代の経験から明らかなように、新分
か っ た。 不 良 債 権 比 率 は 増 加 し て い な い。
野、新業種への多角化を成功させることも、
2009年3月末時点では、一部の小さな地方金
やはり容易なことではない。急増する日本企
融機関はまだ問題を抱えているが、不良債権
業の海外展開は、通常は買収によるものだ
比率は主要銀行ではわずか1.6%、全銀行で
が、それはこれからも続くだろう。これらの
みても2.4%である。
企業、特に非製造業の企業は、不慣れな外国
株式市場は立ち直り、9月11日の日経平均
市場への参入で、現地企業での難しい人事管
は1万444円になった。しかし、その後はほ
理と組織的な課題を解決しなければならない
ぼ大きな回復は無く、むしろ再び低下してお
ことになる。
り、11月16日現在では9,791円である。株式
不況により、特に中小企業は厳しい打撃を
市場の乱高下が銀行の脆弱性の原因だが、ど
受けた。中小企業は、日本の生産と、さらに
この銀行も競争上特定企業の保有株を減らす
重要なことには雇用の大きなウエイトを占め
ことはできない。Tier 2キャピタルに関連し、
ている。自民党政権は、中小企業を貸し渋り
銀行の株式保有を現行の自己資本の100%か
の被害から守るため、様々な手を打ってき
ら半分あるいはそれ以下に制限しようとする
た。債務者である中小企業の再建が実行可能
政府の方針は適切な措置と評価できる。
な場合は、貸出条件緩和債権を不良債権、あ
M&Aのペースは、他の地域同様日本でも
るいは要管理先として分類しなくてもよいよ
やや緩やかになっているが、国内外ともに日
うに、貸出金融機関に対する規制が緩和され
本企業の参入は増え続けている。日立のよう
た。 さらに重要なことは、2008年10月、 政
に、親会社が上場している黒字の子会社を簿
府が、貸し倒れが発生した際に各地の信用保
価よりも安く買収しているのである。非常に
証協会が100%保証する融資枠を20兆円設定
32
信金中金月報 2010.1
したことである。この保証制度は、2009年2
たらすことはない』とコメントしている。筆
月までに約8.8兆円利用されている。新政権
者はこの日銀の政策判断にはショックに近い
は中小企業の経営危機に対応するため、中小
驚きを感じた。
企業金融円滑化の新規策を打ち出している。
デフレーションは広範囲に悪影響を及ぼ
日銀の政策は適切であるが、不況対策で日
す。デフレは、投資、借入、耐久消費財の購
銀が伝統的金融政策手段でできることは非常
入を控えさせ、伝統的な金融政策の効果をな
に制約されている。2002∼07年の景気回復
くしてしまう。また、日本にとって重要なこ
の間、無担保コール翌日物金利を0.5%(2006
とだが、財政政策にも悪影響を及ぼす。低下
年に実施)以上には引き上げられなかった。
し た 実 質GDP成 長 の 下 で 収 入 が 減 る ほ か、
日 銀 は、 こ の 金 利 を2008年10月31日 に は
デフレーションは税収も減少させる。日本の
0.3% に、12月19日 に は0.1% に 引 き 下 げ た
GDP価格デフレーターは、控えめに言っても
が、当然その効果は小さなものだった。
1998年から常にマイナス傾向であり、名目
金融政策の大きな失敗は、デフレを防止で
GDPの成長は実質GDPの成長を下回ってい
きず、コア消費者物価指数の年率上昇を0か
る。2008年度に、GDPデフレーターは0.3%
ら1%という日銀自身の暗黙の目標の範囲す
低下した。
ら達成できないということである(私は明示
景気が急に悪化したため、2009年春、自
であれ暗黙であれ、ヨーロッパ中央銀行や米
民党政権は、過去数年続けてきた財政再建路
国連邦準備制度と同じように、この範囲は1
線を大きく変更した。自民党は、2009年度
から2%であるべきだと考えている。)。世界
予算を修正なしのまま成立させたが、それが
および日本が輸入する原油などの商品価格の
成立すると、政府は即座に名目GDPの約3%
高騰により、コア消費者物価指数は2008年
にあたる13.9兆円の大幅な補正予算景気刺激
夏のピークで2.4%に上昇したが、商品価格
策を発表し、それを5月29日に可決させた。
の急落に伴い、2009年1月にはCPI(消費者
この補正予算の約半分は、直接支出に向けら
物価指数)は0に、8月にはマイナス2.4%に
れた。この単発的な景気刺激は、現在、消費
下落した。
や公共投資に好影響を与えており、減速しな
2009年10月30日の日銀政策審議委員会の
がらも2010年前半までその効果は続くと考
半期見通しでは、CPIの予想の中位値は2009
えられる。
年 度 マ イ ナ ス1.5%、2010年 度 マ イ ナ ス
しかし、新政権で誕生した重要な役割を持
0.8%、2011年度マイナス0.4%と民間エコノ
つ 行 政 刷 新 会 議 を 通 じ て、 民 主 党 政 権 は
ミストの見通しとほぼ一致している。日銀は
2010年度から開始する子ども手当ての財源
物 価 下 落 の ス ピ ー ド は 改 善 し て い る の で、
確保のために3兆円の予算執行を凍結した。
『物価下落が経済活動に景気後退の圧力をも
特別寄稿論文
33
日本の雇用問題
ルバイトや派遣労働者、契約期間が満了した
契約労働者などである。
失業は、経済実績を測る指標の中で遅れて
日本の賃金支払制度は、米国やヨーロッパ
現 れ てくるものである。2008年10月に3.8%
に比べ、下方硬直的でなく非常に柔軟性があ
だ っ た 失 業 率 は、2009年7月 に は、 過 去 の
る。定年退職する正規労働者の代わりに非正
ピークだった2003年4月の5.4%を超え、5.7%
規労働者を採用するということも重要ではあ
にまで上昇した。9月には生産活動の回復に
るが、問題はそれだけではない。賃金削減の
よって一時的な失業率の改善がみられた。現
主たるものは、実質的に全従業員が受け取る
在の生産回復にもかかわらず失業率は上昇を
半年ごとの賞与の減額である。業種や企業規
続けて、2010年後半に低下に転じるまでに
模にもよるが、夏、冬の賞与は月給の約4か
約6.0%に達すると予測される。
月分が標準額である。賞与の水準は、収益が
日本の失業は、諸外国に比べそれほどひど
重要な決定要素であるため、年毎に、またそ
くはない。理由として、企業が労働時間を短
れぞれの企業により大きく異なる。調査では、
縮したり、一人当たりの仕事量をワークシェ
2009年夏の大企業の賞与は、前年比17%減
アリングなどによって減らし、正規従業員の
と予測された。2002年以来の絶対額の減少
雇用を維持していることが挙げられる。一般
となるだろう。輸出製造業の企業では、賞与
に認識されていない重要な事実は、政府が、
はさらに大きく減少した。非製造業ではわず
売上げが急速に落ち込んだ8万3千社以上の
か2% の 減 少 と な り、 過 去5年 間 で 初 め て、
企業で働いている余剰の正規従業員240万人
製造業の平均を上回る賞与支給となる。
に対し、雇用調整給付金によって給与の3分
不安をもたらすのは大企業の冬のボーナス
の2もしくはそれ以上を支払っていることで
が前年比15.9%減少すると新聞が報道してい
あ る。 彼 ら は 全 労 働 力 の3.6% に 相 当 す る。
ることである。
その結果、四半期の労働者一人当たり生産
非正規労働者の増加、残業の減少や賞与の
高、生産性は、一時的に急落している。日本
減少といった要素が組み合わさったことによ
は、政府による直接的な失業手当の措置より
り、 日 本 全 体 の 被 雇 用 者 の 給 与 総 額 は、
も、依然として企業による福利厚生システム
2007年 度 で は0.7%、2008年 度 で は1.1%、
に依存し続けているのである。
2009年第2四半期ではかつてない4.7%の減少
非正規労働者の増加により、労働市場の二
と な っ た。 そ し て 第 三 四 半 期 に は さ ら に
分化がさらに重要な問題となってきている。
3.3%の減少が予想されている。GDPに占め
フルタイムの正規従業員は企業との終身雇用
る家計所得の割合が頭打ちで、家計貯蓄率が
契約と法律によって守られており、彼らを解
今では3∼4%と低く、消費のGDPに占める
雇することは難しい。失業しているのは、ア
割 合 が2008年 度 で 名 目GDP比57.8%(実 質
34
信金中金月報 2010.1
では55.5%)と、依然として低い。これらの
る。輸出が増加するかどうかは、中国、アジ
ことは、驚くに値しない。
ア諸国や米国がいかに早く景気回復し、成長
完全雇用経済においては、労働市場の柔軟
するかに加えて、新興国が需要をどれだけ多
性はより大きな効率を生むが、所得分配、失
く国内消費と投資に振り向け、どれだけ輸出
業や不完全雇用といった不平等な格差拡大は
依存を減らすかの程度による。
政治的反発をもたらす。こういった労働市場
2009年 第4四 半 期 の 成 長 は、 予 想 外 に 高
の変化に対する不満が、選挙での民主党の勝
かった第3四半期改定値より低下するであろ
因の一つだと思われる。そして民主党政権に
う。輸出は、海外の在庫調整が済み、飛躍的
とって労働市場政策は大きな課題である。
ではないが増加するだろう。消費と公共投資
日本経済の短期見通し
は2009年度補正予算のお陰で引き続き適度
に順調で、日本の在庫積み増しは続くであろ
日本の短中期的な景気動向は楽観できな
う。全体としてみると、GDPは前年比では
い。GDPが2%あるいはそれ以上に成長し、
2009年暦年で5∼6%の下落、極端に後退し
産出ギャップの解消と完全雇用が達成される
た2009年1∼3月期を含めない2009年度では
まで、日本の完全な景気回復は達成されない
マイナス2.5%程度の見込みである。
だろう。私にはすぐにそのようなことが起こ
2010年の見通しはあまり良くはない。1%
るとは思えない。日本経済は2009年秋まで
程度という低いGDP成長、いまだ大きな産
回復軌道をたどっているが、前回のピークを
出ギャップ、そして比較的高い失業率のため
依然として下回っている。そして自民党政権
だ。実質成長率の見通しのコンセンサスは
時の景気対策が終わると、2010年上期には、
1.2%である。
大きく減速する可能性が強い。景気回復は遅
消費者物価指数の下落は2009年第4四半期
く弱いと予想され、重要なことには、その実
に底を打つたものの、新たに世界的な原油・
現は民主党の政策主導と輸出の拡大にかかっ
商品価格の急騰がなければ、また日銀が劇的
ているのである。
に大胆なデフレ対策を打ち出さなければ、ま
私は、民主党が2010年度予算編成で財政
だ数年ほど続くと考えられる。2010年の消
危機に警戒信号を発することを期待してい
費者物価指数は、日銀の予想に従えばマイナ
る。新たな福祉支出の財源は、他の支出の削
ス0.8%になると思われる。
減と埋蔵金の利用によるものとなるだろう。
景気は2011年にかけてゆっくりと回復を
これに関連して、民主党は、優先度が低いと
続け、おそらく1.5%の成長率になるであろ
認定された事業を凍結または中止することで
う。これは日銀政策審議委員会の成長率予想
すでにおよそ3兆円を削減し、早急に2009年
の中位値の2.1%よりかなり低い。日銀の予
度第二次補正予算を成立させると表明してい
想は、輸出の増加によって国内需要が増加す
特別寄稿論文
35
ることを期待しているからである。注目すべ
うに、民主党が2010年春に大規模な景気刺
きは日銀が日本の潜在的成長率を控えめで
激のための補正予算を編成・執行することと
あった1%からさらに慎重な0.5%に引き下げ
なる可能性は強いと考える。事実、菅直人副
たことである。これは産出ギャップが早く解
総理をはじめ民主党政権においてこのような
消されることを含意している。しかしなが
対策実行を示唆する発言が行われており、参
ら、完全雇用の達成には、少なくともまだ数
議院選挙が近づくとその動きは現実化しよう。
年かかりそうだ。コアCPI(消費者物価指数)
の変化は小さなマイナス値のまま2011年以降
日本の総需要拡大への難問
∼積極財政政策の必要性∼
も続き、緩やかなデフレが続くだろう。
3∼5年先の日本の景気動向を予測するの
長い目で見れば、基本的に日本の一人当た
はもっと難しい。私は慎重すぎるかも知れな
りGDP の伸びは、新機軸、技術革新、教育
い。私の尊敬するエコノミスト達には、もっ
や組織の改善というような、労働生産性の改
と 楽 観 的 な 人 も い る。2009年 春 のIMFの 楽
善にかかっている。こういった要素はすべて
観的な予測では、主に、世界のGDPと貿易
経済をより効率的にし、総供給能力を増加さ
における新たな成長の結果として、日本の成
せる。しかし短中期的には、日本のマクロ経
長は加速し2012年にはピークとなる3.2%に、
済上の主要な問題は、引き続き不十分な総需
2014年でもまだ非常に良い水準である2.5%
要の問題であろう。民主党政権にとって大き
になるとしている。この予測が正しいことが
な経済政策上の課題は、いかに国内需要を喚
明 ら か と な れ ば、 素 晴 ら し い こ と で あ る。
起し根強いデフレ心理と低成長予想からのシ
20年以上を経て、完全雇用成長がようやく
フトを進めて、膨大な増大し続ける公的債務
達成される可能性もある。
問題を処理するかである。
2009年の終わり頃は控えめな回復、2010
国内需要の構成は構造的問題であり、循環
年 に1% ほ ど の 成 長 と い う の は、 民 主 党 に
的 な 問 題 で は な い。 さ ら に 詳 し く 言 え ば、
とってはあまり良いニュースではないが、ひ
GDPに占める民間設備投資の割合が高過ぎ、
どいニュースというわけでもない。世界経済
家計消費の割合が低過ぎるということであ
と貿易が急速に回復し、日本の投資家と消費
る。日本の民間設備投資のGDPに占める割
者がもっと楽観的になれば、景気はもっと良
合である15%という数字は、米国のそれよ
くなり得る。しかし、日本が成長を止めて2010
りも高いが、米国経済はより速く成長してい
年の早い時期に二番底を迎えることになる
る。日本の民間限界資本係数は、これは資本
と、厄介なことになるだろう。もしそうなっ
効率とは逆の関係になるが、米国の3倍であ
て、そして回復の見通しがはっきりしないよ
る。労働力の減少という日本の人口統計上の
うな場合には、2009年春に自民党が行ったよ
現実を考慮すれば、経済の均衡を保つのに必
36
信金中金月報 2010.1
要 な 企 業 投 資 は 多 く て もGDPの11% か ら
る労働需要によって決定される。消費が飛躍
12%で、これは現状と比べて3∼4%ポイン
的に伸びるためには、賃金も飛躍的に伸びな
ト低い水準である。
ければならない。しかしこれは、完全雇用が
日本における民間の投資利益率および総資
すでに達成されている経済の成長過程でのみ
産利益率は、欧米企業・業界と比べ、20年
起こり得ることだ。
以上も非常に低いままである。これは単に金
第三に重要な国内需要項目は政府部門であ
利が極端に低かったことや、輸出が急増した
る。1990年代は、税収の落込みと、社会保
ということだけが理由ではない。上場企業の
障費の支払いによるところが特に大きく、非
多くは経営陣が、小企業ではオーナーが経営
常に財政赤字が膨張した。その結果、GDP
をコントロールしている。彼らの基本的な目
に 対 す る 政 府 債 務 比 率 は 急 上 昇 し、 現 在
標は企業の存続であり、可能であれば繁栄す
172%となっている。政府は2002年から2009
ることである。経営陣は、キャッシュフロー
年初めにかけ、2011年までにプライマリー
と利益を投資に振り向けようとするため、配
バランス達成という失敗に終わった非現実的
当性向は低くなる。新規投資は、生産性を高
な試みを、財政再建のため進めてきた。不況
め、生産能力を拡大し、管理職を含めた従業
に直面し、2009年6月に自民党政権はプライ
員の雇用を確保する(日本には、米国のよう
マリーバランスの達成目標を10年ほど延長
な上級管理職のための労働市場はない)。市
し た が、 こ れ は 消 費 税 率 を 現 在 の5% か ら
場 圧 力 が 強 ま り、 人 口 も 減 少 す る こ と で、
徐々に引き上げ、10%あるいは12%まで増
GDPに占める国内投資の割合は徐々に低下
税するという条件によるものである。さらに、
するだろう。代わって、企業は市場を求め
結 果 と し て 税 収 が 見 込 め る よ う な、 名 目
て、海外に投資するようになると思われる。
GDPの3%成長を達成できるに足りる物価上
国内需要の望ましい構成としては、消費は
昇が条件とされた。
GDPの55%という水準ではなく、60∼65%
驚くことではないが、民主党政権が長期的
あたりであるべきだ。どのようにこれを達成
な財政調整問題について具体的に取組むのは
するかは難問である。消費は主に家計所得に
これからである。この問題が新政権のマクロ
依存しており、家計資産への依存はそれより
経済政策の最重要課題になることは、疑う余
も低い。概して、現在の家計貯蓄率は低く、
地がない。
富の偏在により高齢者は資産を使うことに
効果的なマクロ経済政策は景気回復に必要
よって貯蓄を取り崩さざるを得なくなってい
であるだけでなく、完全雇用成長にも必要で
る。定年退職後は賃金よりも低い年金しか支
ある。
給されない。家計所得は雇用と賃金に依存し
日本の現状をみれば、マクロ経済政策にお
ており、そのいずれもGDPの成長に依存す
いては相互補完的な財政政策と金融政策の展
特別寄稿論文
37
開が必須である。金利水準が極めて低いの
金利は異常に低く、政府が債務のために支
で、日銀は大胆に国債と金融資産(株式イン
払う利息はGDPのわずか2%だ。長期市場金
デックスなど)を買い入れることが可能であ
利は、当面はインフレ期待が極めて低いこと
ろう。これによって需要を刺激し、期待心理
を示している。短中期でみた場合、政府債務
を転換することができるだろう。
の大きさの問題は、景気回復と成長に欠かせ
しかし、日銀にこのような果断な政策を実
ない国内需要の不足の問題ほど重要ではな
行する意思があるとは思えない。
い。1990年 代 の 日 本 の 財 政 上 の 経 験 か ら、
私はここ数年、労働力や他の資源が十分に
正しく実施されるならば財政刺激策が有効で
活用されていない中での見当違いの財政再建
あることがわかる。
策よりも、経済を活性化するために、むしろ
残念なことに、ほとんどの日本人はこう
日本は短期的に強力な財政刺激策が必要であ
いった考え方をしない。政府債務が非常に大
ると主張してきた。しかし、現実的な政治情
きく、それは一時的にすらさらに増大すべき
勢から、財政刺激策は景気後退を防ぐという
ではないという社会的懸念が強いのである。
消極的な規模に止まりそうである。
不十分な総需要による高いコストに関して、
日本の多くの政策立案者やメディア、一般
正しく認識されていない。従って、民主党の
の人々も、どうやら基礎的なマクロ経済の原
財政における保守主義の考えは、自民党と同
理や分析を十分には理解していないようだ。
様のようである。財政政策は、民主党の経済
確かに、GDPに対する政府債務比率は非常
に対する考え方の重要な指標となるだろう。
に高く、これは減らさなければならないが、
設備投資、消費や政府純支出の増加だけで
それは産出ギャップが解消され、経済が継続
は、日本の景気回復を推進するにはおそらく
的な完全雇用の達成とGDP成長という軌道
不十分なので、輸出の増加と国際収支の大き
に戻った時にのみ正しい政策である。
な経常黒字が、依然として、唯一の需要の成
GDPに対する高い総債務比率のリスクが
長要因になるだろう。景気の回復と成長のた
誇張され、過剰に恐れられているが、このリ
めには、今まで以上に中国、アジア諸国およ
スクは最悪というほどのものではない。債務
び米国の経済成長に依存することになる。日
の約半分は、様々な政府機関および日銀が保
本の製造業はもっと競争力を強めて輸出志向
有 し て い る。 政 府 の 負 債 総 額 はGDPの 約
になる必要があり、サービス業は海外市場で
120%であり、高いけれども耐え得る水準で
効率的な業務を展開しなければならない。
ある。ほとんどの債務は国内のもので、海外
完全雇用への景気回復が遅いこととデフレ
のものも為替相場や国際収支に与える問題は
の持続を考えると、日銀は超低金利政策をか
ほとんどなく、日本の外貨準備高は2009年
なり長期にわたって続けざるを得ない。これ
10月末現在、1兆570億ドル超である。
は、米国やその他の地域で金利が正常な水準
38
信金中金月報 2010.1
に戻り、また日本企業の海外投資戦略がさら
る。他のアジア諸国との貿易も重要性を増し
に進んで、日本の資本流出が増加することを
てきている。東アジアは、今世界の中で最も
示唆する。つまり、一時的な変動は別にし
活力があり、急成長している地域で、この傾
て、米国やEUよりも引き続きインフレ率が
向は今後も継続するだろう。技術、経済実
低いにもかかわらず、円が著しく強くなるこ
績、生活水準そして労働の質において、日本
とはないということだ。弱い円が輸出を支援
は東アジアのリーダーである。しかし、GDP
するとしても、ドル買いによる政府の介入は
と成長率の点では、中国が群を抜いている。
国際的に受け入れらない政策である。
東アジアの経済は、域内のサプライチェーン
マクロ経済の刺激策から適切な出口戦略を
生産システムによって支えられた、高度な貿
取ることは、確かに日本にとって鍵となる課
易統合体制を確立した。通商、金融関係に関
題だが、米国やヨーロッパとは若干事情が異
しては、まだ有効な地域体制が存在しない上、
なっている。ここしばらくは、日本がインフ
しばらくその確立は期待できない。これは、
レの高まりに直面することはないだろう。日
経済規模、発展段階、政治体制、言語、歴史
銀は、信用収縮防止のために取っていた暫定
の違いを考慮すると驚くべきことではない。
的処置を間もなく終了させることができるだ
鳩山首相はアジア政策の柱として東アジア
ろうが、状況に応じて必要である限り、低金
共同体を提案した。11月15日のシンガポー
利、金融緩和策を続けると思われる。私が恐
ルにおけるAPEC総会で鳩山首相は、アジア
れているのは、日本が時期尚早に財政刺激策
の自由貿易協定、経済連携協定など広汎な分
を終わらせてしまうことだ。おそらく民主党
野で日本が積極的な役割を果たすことを表明
は、年を追って一連の補正予算刺激策を成立
した。アジア諸国だけでなくアメリカの参加
させていくだろう。もしそうなるなら、混乱
も歓迎した。しかし、首相は自由貿易協定に
に陥ることなく、1990年代よりも効率的か
突き刺さる棘である保護主義的な農業政策に
つ効果的に財政刺激策が運営管理されること
触れなかった。このようなスローガンによる
を望む。
議論の盛り上がりは、地域内の貿易、金融協
日本の国際経済関係の展望
力の推進への具体的な成果・前進をもたらす
ことと期待できる。
日本は長い間、ヨーロッパ、米国、アジア
しかしながら、グローバル世界や地域にお
など、事実上すべての地域において、世界貿
ける経済制度、政策形成は、地域全体の合意
易と資本移動に大きな役割を果たしてきた。
や支援体制によってではなく、各国の力に依
日本は、ドイツ、中国そして米国に次ぐ第4
存するという状況に変わりはない。将来への
の輸出国である。中国は、今や日本の最大の
鍵は、日本と中国の二国間および他のアジア
貿易相手国であり、今後もその割合は増加す
諸国の経済に対する熱意、およびこれからの
特別寄稿論文
39
役割にかかっている。
模である上、ブラジル、インドネシア、ロシ
中国の発展は日本に経済的恩恵をもたらし
アなど他の人口の多い国を著しく上回り続け
たが、同時に日本のアジアおよび世界での役
るであろう。
割について問題も提起している。中国は世界
日本はすでに高い生活水準にあり、国民一
金融危機と世界貿易の収縮に対し、強力な国
人当たりGDPの伸びがわずか1.5%であった
内景気対策を実施し迅速に高い経済成長率を
としても、48年間ごとに倍増することとな
復活させることで、積極的に対応した。しかし
る。もし先進国経済の長期的成長率の平均で
中国は世界の主要メンバーであるが、まだリー
あ る 一 人 当 た り2% の 成 長 率 が 実 現 で き る
ダーとしての役割を担うには到っていない。
と、生活水準は36年で倍になり、日本人の
歴史上初めて、日本と中国が地域内の大国
平均寿命を考えると、一生で4倍以上になる
として、同時に存在している。国民一人当た
ことになる。
り所得は非常に低いにもかかわらず、中国の
国の経済力を測る場合には、人口と労働生
経済力、軍事力は東アジア最大である。中国
産性を反映するGDP総額をよく利用するが、
の人口は日本の10.5倍であり、中国経済は今
経済的生活水準レベルを考える場合には一人
後何年も急速なキャッチアップ型成長を続け
当たりGDPを代用する。購買力平価からみ
るであろう。
た、一人当たりGDP上位20か国のうち、米
国内の人口減少と市場の低成長率を考慮す
国 と オ ラ ン ダ の2国 を 除 く 他18か 国 の 人 口
ると、多くの日本企業にとっての戦略展開
は、ニューヨーク市の人口840万人を下回っ
は、海外、特にアジア、オーストラリアへの
て い る(訳 者 注 日 本 は29位(2007年) で
企業買収や直接海外投資によって、積極的に
ある。)。
拡大することになるだろう。しかし、日本政
府は、世界・地域レベルのいずれにおいて
長期的にみた日本の経済成長
も、その経済力に見合ったリーダー的役割を
第二次世界大戦以降1990年頃までは、日
果たしてきていない。鳩山首相の東アジア共
本の成長課題は供給サイドにあった。すなわ
同体構想が日本の新しい積極的な役割を生み
ち、生産能力、生産量を可能な限り迅速に拡
出すのかどうか注目したい。
大する必要があったのである。輸出は需要の
米国、EUの多くは、活力、安定成長、成
主たる源泉ではなく、必要な輸入の支払いの
熟度という観点から、日本ではなく中国に焦
ためのものであった。しかし、過去20年間、
点を当てている。だが、これは非常に狭く近
日本のマクロ経済上の主たる課題は、いかに
視眼的な見方といえる。平均以下の成長率を
十分な総需要を達成するかという点であり、
もってすら、20年後においても日本は米国、
この課題はまだ少なくとも数年は続くであろ
EU、中国、インドに次いで5番目のGDP規
う。とはいえ、長期的には供給サイドが日本
40
信金中金月報 2010.1
の潜在成長率を決めることになる。
約1.3%から1.8%が見込まれる。この予想は
成長率は雇用と労働生産性の変化に依存す
いくつかの大胆な仮定の上に成り立ってい
る。長期的な時間当たり労働生産性の成長
る。一つは、日本が期限付きの雇用契約で外
は、イノベーション、技術進歩、教育、新規
国人労働者を受け入れるが、移民による人口
投資により決定される。米国やヨーロッパと
増加はほとんどないとしていること。この
同様、日本の労働者一人当たりの一時間当た
先、移民を奨励するか否か、どれだけ受け入
り 潜 在 的 労 働 生 産 性 の 成 長 率 は 約2% か ら
れるかどうかという点は、日本がいずれは直
2.5%である。日本の経済全体の平均生産性
面する最も重要かつ難しい決断の一つに違い
は、 米 国 の わ ず か4分 の3程 度 で あ る た め、
ない。もう一つは、総人口と労働人口が減少
潜在成長率は日本の方が米国よりは若干高い
する経済において、若年の労働人口および総
かもしれない。日本の製造業の生産性は高い
人口が増加する場合と同様の速度で、労働生
が、サービス部門での生産性は非常に低いま
産性が増加するとしていることである。この
まである。もっともこの推計は過少に計算さ
可能性はまだ誰にもわからない。
れている可能性があることも否定できない。
これから先20年、日本の労働人口は必然
結論
的に減少するだろう。2009年2月時点で、総
日本はその近代の歴史において、経済的、
人口1億2,760万人のうち、労働年齢の15歳か
政治的、社会的、そして人口的にも、すべて
ら64歳 の 人 口 は64.2% の8,200万 人、65歳 以
の局面で、いくつもの長期にわたる大きな変
上 は22.3% の2,850万 人、 そ し て13.4% の
革を経験してきた。そして、日本はまた新た
1,710万人が15歳未満である。移民による人
な変革を迎えようとしている。1990年代初
口 増 加 が な い と 仮 定 す る と、 予 測 で は、
頭から、強い国内需要の欠如が経済成長の最
2030年に日本の人口は1億1,760万人となり、
大の妨げとなり、持続的な完全雇用成長とい
労働人口は6,960万人(59.2%)、65歳以上は
う新たな局面はまだ成し遂げられていない。
3,480万 人(29.6%)、15歳 未 満 は1,320万 人
民主党政権の誕生は政治的変革の大きなス
(11.2%)となる。これは労働人口が1,240万
テップである。しかし、民主党がどれだけ政
人、年平均で0.8%減少することである。こ
権を維持できるのか、政治情勢はどうなのか
れを埋め合わせるものとして、女性の就業率
という点は非常に不透明である。さらに、世
が上昇し、65歳以上の高齢者層の一部が継
代によって価値観や行動が大きく異なってい
続して就業することで、労働力は年間平均約
る。現在の世帯当たりの子供の数は20年前
0.7%の減少に止まる可能性もある。
と変わらないにもかかわらず、結婚する若者
既述の労働生産性向上と労働人口減少の予
は減っており、晩婚化も進んで世帯形成が減
測を踏まえると、日本のGDP潜在成長率は
少している。
特別寄稿論文
41
私は、短期的な日本経済の見通しについて
がよく機能している国家である。日本人は知
は慎重であり、実のところ懸念もしており、
的で、教養もあり、現実的で、勤勉かつ志を
また持続的な完全雇用水準での景気回復は弱
持っている。長い時間をかけて、日本は大き
いと予測しているが、日本の長期的な将来に
な柔軟性と順応性を示してきた。日本は、最
関してはより楽観視している。日本は、優れ
終的には自身の問題を解決する。
た人的、社会的資源を有しており、安定した
私が見定めることができないのは、日本人
社会であり、平和でほとんど犯罪がないと
が自分自身に、また国に対し、どのような未
いってもよく、多くの国々と同様に民主主義
来を望んでいるのか、ということである。
42
信金中金月報 2010.1
調
査
経済見通し
実質成長率は09年度△2.7%、10年度1.7%と予測
−景気は一時的な踊り場を迎える可能性もあるが、10年度には民需主導の自律回復へ−
信金中央金庫 総合研究所上席主任研究員
角田 匠
(要 旨)
1.09年7∼9月の実質GDPは前期比1.2%増 ― 2四半期連続のプラス成長
エコカー減税などの政策効果を支えに、個人消費は前期比0.7%増と2期連続で増加した。
輸出や生産の回復を受けて、設備投資は6四半期ぶりに増加に転じた。輸出はアジア向けが増
勢を維持し、輸出から輸入を差し引いた純輸出は実質成長率を0.4%押し上げた。
2.景気は回復基調を維持しようが、一時的な踊り場を迎える可能性も
足元の景気回復は、アジア向け輸出の回復と景気対策による下支え効果が大きく、民間需
要は力強さを欠いている。政策効果が薄れる09年度末にかけて、景気は一時的な踊り場局面
を迎える可能性がある。ただ、10年度からは子ども手当ての支給など家計に対する支援策が
個人消費を下支えするほか、回復が遅れていた米景気の持直しで輸出は増勢を維持しよう。
10年度には民需が持直しに転じ、景気は自律回復軌道に復帰すると予想される。
3.実質成長率は09年度△2.7%、10年度1.7%と予測
09年度は補正予算の一部執行停止などがマイナス要因だが、輸出・生産は順調に回復し、エ
コカー減税などの政策効果も続いているため、前回予測の微修正にとどめた。10年度について
は公共投資を中心とする公的支出の抑制を主因に前回予測を下方修正したが、雇用と設備の調
整一巡などから、景気は自律回復軌道に復帰するとのシナリオは維持している。
4.景気の回復力は弱く、超低金利からの政策転換は早くとも10年秋以降
景気は回復方向に転じたとはいえ、民需の回復力は依然として弱く、日銀は今後も積極的な資
金供給の継続で超低金利の維持を余儀なくされよう。10年度には、民需主導で景気の回復テン
ポが高まろうが、コア消費者物価は下落傾向が続くとみられる。量的緩和・超低金利からの政策
転換は、早くとも10年秋以降にずれ込むと予想される。
(注)本稿は2009年11月17日時点のデータに基づき記述されている。
調 査
43
図表1 GDP成長率の推移と予測
(単位:%)
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
前回(09年8月)
〈実績〉
〈実績〉
〈実績〉
〈予測〉 〈予測〉 09年度(予) 10年度(予)
実 質 G D P
2.3
1.8
△
3.2
△
2.7
1.7
△
2.8
2.0
個 人 消 費
1.1
0.9
△
0.5
0.3
1.0
△
0.2
0.8
住 宅 投 資
△
0.2
△ 13.5
△
3.0
△ 18.2
3.2
△ 13.7
4.7
設 備 投 資
5.5
2.1
△
9.6
△ 13.2
5.2
△ 15.6
4.7
公 共 投 資
△
8.8
△
6.3
△
4.4
10.1
△ 11.0
16.4
△
2.3
純輸出(寄与度)(
0.8)(
1.3)(△
1.2)(△
0.3) (
0.7)(△
0.4)(
0.6)
名 目 G D P
1.5
1.0
△
3.5
△
3.4
1.4
△
3.0
2.0
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成。予測は信金中金総合研究所
設備投資の減少にも歯止めがかかってきた。
1.09年7∼9月 の 実 質GDPは 前 期 比
1.2%増―2四半期連続のプラス成長
輸出は6.4%増と2四半期連続で増加した。
中国を中心としたアジア向け輸出が回復基調
09年7 ∼ 9月 の 実 質GDPは、 前 期 比1.2%
を維持していることに加え、欧米向け輸出も
増、年率に換算して4.8%増と2四半期連続で
緩やかながら上向いている。生産の持直しを
増加した(図表2)。ただ、景気の実感に近
受けて輸入が3.4%増と3期ぶりのプラスと
い名目GDPは、前期比0.1%減(年率0.3%減)
なったため、輸出から輸入を差し引いた純輸
と6四半期連続のマイナスとなった。
出の寄与度は、プラス0.4%と4∼6月(プラ
実質GDPの6割弱を占める個人消費は、前
ス1.5%)に比べて縮小した。
期比0.7%増と2四半期連続で増加した。ボー
GDPデフレーターは前年比0.2%の上昇と
ナスや残業代の減少が続くなど所得環境は引
プラスを維持したが、これは控除項目である
き続き厳しかったが、エコカー、省エネ家電
輸入デフレーターが前年に高騰した反動で大
の購入に対する優遇措置などの政策効果によ
幅に下落した影響が大きい。7∼9月の国内
り、乗用車や薄型テレビ、冷蔵庫といった耐
需要デフレーターは、前年比2.6%の下落と4
久財消費が堅調に推移した(図表3)。
住宅投資は7.7%減と3期連続で減少した。
図表2 実質GDP前期比と寄与度
(%)
2.0
マンション販売の不振と融資基準の厳格化に
1.0
よる資金繰り難から、デベロッパー各社がマ
ンション建設を手控えている影響が大きい。
0.0
公共投資は景気対策に伴う積増しが押上げ要
-1.0
因となっているが、本予算の前倒し執行によ
-2.0
る効果が薄れてきたことで1.2%減とマイナ
純輸出
公的需要
民間需要
実質GDP
名目GDP
-3.0
スに転じた。
-4.0
一方、設備投資は1.6%増と6四半期ぶりに
プラスに転じた。輸出や生産の回復を受けて、
44
信金中金月報 2010.1
03
04
05
06
07
08
(備考)内閣府『四半期別GDP速報』より作成
09
(年)
図表3 個人消費関連指標(前年比増減率)
08年
09年
10∼12月 1∼3月 4∼6月 7∼9月
全 世 帯 実 質 消 費 △ 3.2 △ 3.2 △ 0.2
1月
2月
3月
4月
7月
9月
1.0
74.0
売 △14.2 △23.4 △17.2
1.4 △20.0 △24.4 △24.5 △22.8 △17.4 △12.2 △ 2.8
3.2
4.2
(普通+小型乗用車) △21.5 △30.6 △17.1
5.2 △28.0 △32.2 △30.9 △27.2 △16.3 △ 9.5 △ 0.6
8.2
9.2
用
車
販
(軽乗用車)
75.2
75.0
70.6
75.5
75.5
75.8
72.8
0.2 △ 2.0
8月
73.5
74.1
0.3
6月
74.9
71.4
0.6 △ 5.9 △ 3.5 △ 0.4 △ 1.3
5月
2.6
平均消費性向(勤労者)
乗
(単位:%)
09年
76.4
2.6 △ 8.6 △17.2 △ 6.8 △ 3.9 △ 8.7 △11.0 △14.4 △19.4 △17.8 △ 8.0 △ 6.0 △ 6.3
百 貨 店 販 売 額 △ 7.8 △11.1 △10.8 △ 9.8 △ 9.2 △11.4 △12.9 △11.3 △12.1 △ 9.1 △11.8 △ 8.9 △ 7.8
ス ー パ ー 販 売 額 △ 2.4 △ 4.7 △ 4.1 △ 5.4 △ 3.1 △ 6.1 △ 4.9 △ 4.0 △ 3.0 △ 5.4 △ 6.1 △ 5.7 △ 4.3
商 業 販 売・ 小 売 業 △ 1.5 △ 3.9 △ 2.8 △ 1.9 △ 2.4 △ 5.7 △ 3.8 △ 2.8 △ 2.7 △ 2.9 △ 2.4 △ 1.8 △ 1.3
(衣類・身の回り品) △ 2.8 △ 5.5 △ 2.6
(飲料・食料品)
3.8
0.4 △ 4.0 △ 7.3 △ 5.5 △ 1.7 △ 0.1 △ 6.1 △ 0.6
0.7 △ 0.4 △ 0.1
(自動車) △ 4.3 △ 4.6
0.0
(家庭用機械) △ 2.6 △ 0.5 △ 1.1
2.4 △ 0.6
0.3 △ 0.1
6.2 △ 1.9 △ 5.6 △ 5.8
0.2
0.1 △ 1.3
0.5 △ 1.8
1.5 △ 1.6 △ 1.5 △ 1.9 △ 1.4
0.3
1.6
0.1
0.0 △ 0.3
6.3
8.4
4.2
0.0 △ 0.9 △ 0.4
2.2
1.3
(燃料) △ 8.5 △18.5 △11.8 △ 8.7 △15.8 △23.3 △16.3 △17.1 △12.7 △ 5.2 △ 7.3 △ 8.7 △10.1
(その他) △ 2.6 △ 2.9 △ 3.5 △ 4.8 △ 2.2 △ 4.2 △ 2.5 △ 2.2 △ 3.5 △ 4.9 △ 6.6 △ 4.9 △ 2.8
外 食 産 業 売 上 高
−
−
−
−
0.4 △ 2.0 △ 1.4
0.8
2.1 △ 2.6 △ 1.8 △ 3.6 △ 1.5
(備考)1.平均消費性向は季節調整済みの実数。百貨店、スーパーは既存店、外食産業売上高は全店ベース
2.総務省『家計調査報告』
、経済産業省『商業販売統計』などより作成
∼6月(1.8%下落)に比べてマイナス幅は拡
アジア向けが4∼6月(18.1%増)に続いて7
大した。
∼9月も12.9%増と高い伸びを維持したほか、
米国向けは4∼6月の6.5%増から7∼9月には
2.景気は回復基調を維持しようが、
一時的な踊り場を迎える可能性も
12.7%増へ伸びを高めた。
輸出の回復と在庫調整の進展から生産活動
(1)輸出・生産は引き続き回復基調
も増勢を維持している。鉱工業生産は、4∼
09年7∼9月の実質成長率は2四半期連続の
6月に前期比8.3%増と5四半期ぶりの増加に
プラス成長となり、景気が回復局面に転じた
転じ、7∼9月も7.4%増加した。電子部品・
ことを改めて確認する結果となった。4∼6
デバイスや輸送用機械の在庫調整が進展した
月と同様に中国経済の回復を主因とする輸出
ことで、川上分野の鉄鋼や非鉄、金属製品な
の増加と、景気対策による個人消費や公共投
ど素材産業にも生産回復の動きが広がってお
資の下支え効果が大きかったとはいえ、製造
り、製造工業生産予測指数は、10月(前月
業を中心に回復の動きは着実に広がっている。
比3.1%増)に続いて、11月(1.9%増)も増
輸出数量指数(季節調整済み)の動きをみ
加が見込まれている。
ると、リーマン・ショック後の08年10∼12
輸出や生産の回復で、設備投資にも下げ止
月が前期比16.8%減、09年1∼3月が26.6%減
まりの兆しが出てきた。設備投資の先行指標
と大幅な減少を記録したが、4∼6月は10.8%
で あ る 機 械 受 注(船 舶・ 電 力 を 除 く 民 需 )
増、7∼9月は10.5%増と2四半期連続でプラ
は、7∼9月も前期比0.9%減と6期連続で減少
スとなった(図表4)。地域別では(図表5)、
したが、減少率は期初の受注見通し(8.6%
調 査
45
図表4 鉱工業生産指数と輸出数量指数の推移
(05年=100)
(05年=100)
125
120
図表5 地域別輸出数量指数の推移
130
アジア
輸出数量指数
120
115
110
110
105
100
100
予測
95
生産指数
90
85
90
80
EU
70
80
60
75
70
50
65
98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 (年)
40
米国
(備考)1.シャドー部分は景気後退期。直近の景気の谷は
3月と仮定
2.財務省、経済産業省、内閣府資料より作成
03
04
05
06
07
08
09 (年)
(備考)内閣府資料より作成
エネ家電の購入に対する優遇措置も引き続き
減)に比べて小幅にとどまった。また、10
個人消費を下支えしている。輸出や生産を中
∼12月の受注見通しは前期比1.0%増と08年1
心とした景気回復が家計に波及するまでに
∼3月 以 来 の 増 加 に 転 じ る 見 込 み で あ る。
は、なお時間を要するとみられるが、先行き
もっとも、機械受注の持直しは大幅に落ち込
に対する家計の期待は着実に改善している。
んだ反動といった側面も強い。設備投資の減
個人消費は今後も緩やかながら回復基調を維
少には歯止めがかかりつつあるが、多くの業
持しよう。
種で設備過剰感は根強く、本格的な回復まで
にはなお時間を要すると考えられる。
一方、家計の所得・雇用環境は厳しい状態
(2)政策効果の一巡から09年度末にかけて
景気の回復テンポは鈍化へ
が続いている。生産が上向いた影響で、製造
足元の景気回復は、アジア向け輸出の回復
業を中心に残業代の前年比減少率は縮小傾向
と景気対策による個人消費や公共投資の下支
にあるが、企業収益に遅れて変動するボーナ
え効果が大きい。製造業を中心に企業活動は
スは、この冬も大幅な減少が見込まれてい
上向いているものの、民需全体の回復力は弱
る。定額給付金(総額2兆円)の支給で下支
く、今後政策効果が薄れるにつれて、景気回
えされた年度上期とは異なり、下期の所得環
復 の 勢 い が 鈍 化 す る 可 能 性 が あ る。 特 に、
境はより厳しさを増す可能性がある。ただ、
09年度末にかけて、政策効果の一巡による
7月に5.7%まで上昇した失業率は、9月には
公共投資の減少や個人消費の足踏みなどが予
5.3%へ低下し、雇用者数は7月から3か月連
想されるうえ、世界的な在庫復元の動きも一
続で前月比増加となるなど、雇用情勢の悪化
服する可能性があり、景気が一時的な踊り場
には歯止めがかかりつつある。エコカー、省
局面を迎える可能性は否定できない。
46
信金中金月報 2010.1
ただ、アジアの景気をけん引する中国経済
の見直しに伴う一部事業の執行停止などがマ
が内需主導で回復テンポを高めているうえ、
イナス要因だが、足元の輸出・生産が順調に
回復が遅れていた米景気もようやく上向いて
回復しているほか、エコカー減税など家計向
きた。10年度にかけて欧米向け輸出の回復
けの政策効果が続いているため、前回見通し
テンポが高まることで輸出は増勢を維持し、
(△2.8%、8月予測値)の微修正にとどめた。
企業部門の回復に伴って家計の雇用・所得環
10年度については、公共投資を中心とする
境も徐々に改善しよう。新政権による政策の
公的支出の抑制を主因に前回予測(2.0%増)
行方には不透明感が残るが、子ども手当ての
を下方修正したが、設備と雇用の調整一巡な
支給や暫定税率の撤廃が個人消費の下支えと
どから民間需要が持直しに転じ、景気は自律
なり、公共投資の削減などのマイナス要因を
回復軌道に復帰するとのシナリオは維持して
相殺すると考えられる。
いる。
09年度下期の日本経済は、政策効果が薄
中国を中心としたアジア経済は順調に回復
れ る に つ れ て 回 復 の 勢 い は 鈍 化 し よ う が、
しており、これが日本の輸出回復の原動力と
10年度には設備と雇用の調整一巡もあって、
なっている。一方、欧米景気の回復力は弱
民間需要が持直しに転じ、景気は自律回復軌
く、09年度下期も輸出の本格回復は期待で
道に復帰すると予想される。
きない。GDPベースの実質輸出は、今後も
前期比ベースで増加傾向を維持すると予想さ
3.実質成長率は09年度△2.7%、10
年度1.7%と予測
れるが、昨年の金融危機後の落込みが激し
かった影響で、09年度全体では前年比13.4%
実質成長率は09年度△2.7%、10年度1.7%
減と2年連続で減少すると予測した。輸出か
と予測した(図表6)。09年度は、補正予算
ら輸入を差し引いた純輸出の寄与度はマイナ
図表6 実質GDP成長率の推移と予測
(%)
<実質成長率と需要項目別寄与度
(年度)
>
3.0
予測
2.0
(兆円)
580
570
予測
1.0
560
0.0
550
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
<四半期ベースの実質GDPの推移>
08年度
(△3.2%)
540
純輸出
公的需要
民間需要
実質GDP
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10(年度)
10年度
(1.7%)
530
09年度
(△2.7%)
520
510
07年度
08年度
09年度
10年度
(備考)内閣府資料より作成。予測は信金中金総合研究所
調 査
47
ス0.3%と、前年度(マイナス1.2%)に続いて
の実質輸出は11.2%増と3年ぶりのプラスに
成長率の押下げ要因となるが、マイナス幅は
転じると予測した。企業の投資マインドも上
縮小しよう。
向き、実質設備投資は5.2%増と回復しよう。
輸出や生産を中心とした企業活動の持直し
家計部門にも景気の回復が徐々に波及し、雇
で、投資マインドの悪化に歯止めがかかりつ
用・所得環境も改善すると予想される。新政
つある。アジア向け輸出が好調な電子部品な
権による政策の行方には不透明感が残るが、
ど一部の企業では投資を上積みする動きも出
子ども手当ての支給や暫定税率の撤廃が個人
てきた。もっとも、全体としての設備過剰感
消費の下支えとなり、公共投資の削減などの
は根強く、本格的な回復までにはなお時間を
マイナス要因を相殺すると考えられる。前年
要すると考えられる。09年度の実質設備投
度の定額給付金効果の反動がマイナス要因と
資は前年比13.2%減と予測した。一方、景気
な る が、10年 度 の 実 質 個 人 消 費 は 前 年 比
対策に伴う公共事業の積増しがプラス要因と
1.0%増と伸びを高めよう。
なる。09年度補正予算の一部事業の執行停
止などで、年度下期の公共投資は前期比でマ
イナスとなろうが、年度全体では前年比10.1%
増、実質GDPを0.4%押し上げると予測した。
(1)前提条件 ― 為替相場、原油価格、財政
政策、海外経済
(為替相場)
雇用・所得環境には引き続き下押し圧力が
円ドル相場は、米景気に対する回復期待か
かかる。企業部門の回復が家計に波及するま
ら09年8月前半にかけて1ドル97円台後半ま
でにはタイムラグがあり、家計の所得環境の
でドルが買い進まれた。しかし、その後は米
持 直 し は 遅 れ よ う。 定 額 給 付 金(総 額2兆
景気の早期回復期待が後退したことや、米国
円)の支給で下支えされた年度上期とは異な
の金利低下を主因とする日米金利差の縮小な
り、下期の所得環境はより厳しさを増す可能
どから円高ドル安方向に転じた。9月28日に
性がある。ただ、企業活動が最悪期を脱した
は、新政権の円高容認発言をきっかけに投機
ことで家計の先行き不安は薄らいでいる。エ
的なドル売り・円買いが膨らみ、一時88円
コカー、省エネ家電の購入に対する優遇措置
台まで円高ドル安が進んだ。10月半ば頃か
は引き続き個人消費を下支えしている。物価
らはドルを買い戻す動きもみられたが、ドル
下落による実質購買力の押上げ効果もあっ
の上値は重く、11月前半の円ドル相場は1ド
て、09年度の実質個人消費は、前年比0.3%
ル90円 前 後 で も み 合 う 展 開 が 続 い て い る。
増とプラスに転じよう。
当面もドル売り優勢の相場展開が続くと予想
10年度には、世界の金融システムが本来
される。米国経済は底打ちしたとみられる
の機能を取り戻し始めると想定しており、世
が、厳しい雇用情勢が続くなど景気の下振れ
界景気は回復のテンポを高めよう。10年度
懸念が根強いためである。日本の金融システ
48
信金中金月報 2010.1
ムが米欧に比べて安定していることも、円が
前提となる原油価格(通関ベース)は、09
消去法的に買われやすい理由になっている。
年度68ドル、10年度75ドルと想定した。
もっとも、日本の民需回復力の弱さや物価の
(財政政策)
下落を考慮すると、日本の利上げは米欧より
新政権は、09年度補正予算(公共投資の
遅れる可能性が高く、円の上値は限られよ
積増しなど14.7兆円)を見直し、3兆円程度
う。10年度には米景気の回復テンポが徐々
を凍結・執行停止することを決定した。凍結
に高まり、ドル買戻しの動きが広がるとみら
分を財源に雇用や環境対策を軸とする2次補
れる。金融システムも本来の機能を取り戻し
正予算が編成される見込みであるが、09年
始め、市場におけるリスク回避姿勢は修正さ
度下期の公的部門の支出はこれまでの見通し
れよう。年度平均の為替レートは、09年度
をやや下回ると想定した。また、10年度予算
93円、10年度101円と想定した。
の概算要求では、公共事業関係費が大幅に削
(原油価格)
減されており、10年度の景気を下押しする要
原油価格(WTI)は、世界的な景気回復
因となろう。ただ、子ども手当ての半額実施
期待などから09年8月にかけて1バレル70ド
(子ども1人当たり月額1.3万円)や公立高校授
ル台へ上昇した。その後、10月上旬までは
業料の無償化、ガソリン税など暫定税率の撤
70ド ル を 挟 ん で も み 合 う 展 開 が 続 い た が、
廃や高速道路料金の一部無料化など家計に対
10月中旬以降は、再び騰勢が強まった。中
する手厚い支援策が予定されている。公共投
国やインドなど新興国の堅調な需要に加え
資の抑制などのマイナス要因は、個人消費の
て、株価の上昇でリスク許容度が増したファ
押上げ効果でほぼ相殺され、景気への下押し
ンド勢からの資金流入が原油相場を押し上げ
圧力は軽微にとどまると想定した。
る要因となった。また、ドルの下落で、ドル
(海外経済)
建てで取引される原油の割安感が広がったこ
〈米国〉…09年7∼9月の実質成長率は前期
とも原油買いを促した。10月21日には1バレ
比年率3.5%(事前推定値)と5四半期ぶり
ル82ドル台まで上昇した。ただ、その後は
にプラス成長に転じた。日本経済と同様
高値警戒感から利益確定の売りに押されたほ
に、景気対策による政府支出の増加や自動
か、世界景気に対する楽観論が後退し、11
車買替え支援策による個人消費の押上げ効
月前半の相場は1バレル75∼78ドル程度で推
果などが寄与しているが、輸出や生産を中
移している。世界的な金融緩和状態が続くな
心とした企業活動も上向いている。実質輸
か、ファンド勢からの資金流入で再び相場が
出は4月を底に増加基調に転じ、鉱工業生
押し上げられる可能性も否定できないが、最
産は7月から3か月連続で前月の水準を上
大消費地である米国の実需は弱く、原油価格
回っている。もっとも、雇用情勢の回復に
の上昇は限定的と考えられる。経済見通しの
はなお時間を要するとみられるうえ、家計
調 査
49
のバランスシート調整も引き続き下押し要
う。実質成長率は、09年8.4%、10年9.3%
因となるため、景気の回復テンポは今後も
と予測した。
緩やかにとどまるとみられる。雇用の悪化
に歯止めがかかり、民需主導による安定成
長軌道に復帰するのは10年以降と予想さ
(2)10年度は子ども手当ての支給などが家
計部門を下支え
れ る。 実 質 成 長 率 は09年 △2.5%、10年
家計の所得減少が続いている。09年7∼9
2.2%と予測した。
月の現金給与総額(1人当たり平均、速報値)
〈欧州〉…ドイツ経済は生産活動や企業マイ
は、前年比3.6%減と4∼6月(4.7%減)に比
ンドが回復に転じるなど最悪期を脱した
べてマイナス幅は縮小したが、依然として大
が、依然として雇用情勢は厳しく、個人消
幅に減少している(図表7)
。また、夏に続い
費への悪影響が懸念される。ただ、米国経
て冬のボーナスも大幅な減少が見込まれてお
済が回復方向に転じたことに加え、主要な
り、10∼12月の現金給与総額も減少は避け
輸出先であるEU加盟国の景気も最悪期を
られない。定額給付金(総額2兆円)の支給
脱しつつあり、ドイツ経済の要である輸出
で下支えされた年度上期とは異なり、下期の
は今後も回復傾向で推移しよう。また、政
所得環境はより厳しさを増す可能性がある。
府の雇用対策が引き続き雇用情勢を下支え
ただ、生産活動の持直しで、製造業の所定
することに加え、10年からは減税も実施
外労働時間(残業時間、季節調整値)は4月
される。ドイツ経済は今後も緩やかな回復
か ら9月 ま で6か 月 連 続 で 前 月 の 水 準 を 上
基調を維持し、ユーロ圏経済も持直しの動
回っている。また、7月に5.7%まで上昇した
きが続くと予想される。ドイツの実質成長
失業率は、9月には5.3%へ低下し、雇用者数
率は、09年△5.2%、10年1.2%、ユーロ圏
は7月から3か月連続で前月比増加となるな
の実質成長率は09年△4.0%、10年0.9%と
ど、雇用情勢の悪化には歯止めがかかりつつ
予測した。
ある(図表8)。
〈中国〉…09年7∼9月の中国の実質成長率
所得環境は依然として厳しいものの、企業
は前年比8.9%と4∼6月の7.9%から加速し
活動が最悪期を脱したことで家計の先行き不
た。欧米経済の回復力が弱く、輸出の回復
安は薄らぎ、消費マインドは改善方向にあ
テンポは緩慢ながら、政府による大規模な
る。エコカー、省エネ家電の購入に対する優
景気刺激策が奏功し、公共投資など固定資
遇措置も引き続き個人消費を下支えしてい
産投資が大幅に増加した。個人消費も自動
る。物価下落による実質購買力の押上げ効果
車をけん引役に堅調に推移している。今後
もあって、09年度の実質個人消費は前年比
は、米国向け輸出も上向いてくるとみら
0.3%増とプラスに転じよう。
れ、中国経済は再び高成長軌道へ復帰しよ
10年度には、家計部門にも景気の回復が
50
信金中金月報 2010.1
図表7 現金給与総額の前年比と寄与度
(%)
ボーナスの寄与
3.0
残業代の寄与
図表8 雇用者数の推移(季節調整値)
(万人)
5,600
所定内給与の寄与
2.0
5,500
1.0
0.0
5,400
-1.0
-2.0
5,300
-3.0
-4.0
現金給与総額の前年比
(1人当たり)
5,200
-5.0
97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
(年)
(年)
(備考)厚生労働省『毎月勤労統計』より作成
(備考)1.シャドー部分は景気後退期
2.厚生労働省『毎月勤労統計』より作成
徐々に波及し、雇用・所得環境も改善すると
けており、分譲住宅の着工は大幅に減少して
予想される。09年度に支給された定額給付
いる。金融危機前に年率30万戸程度だった
金の反動がマイナス要因となろうが、子ども
分譲住宅の着工戸数は、09年4月以降年率14
手当ての半額実施(子ども1人当たり月額1.3
∼16万戸と大幅に落ち込んでいる。
万円)や公立高校授業料の無償化、ガソリン
企業活動の持直しなどで家計の先行き不安
税など暫定税率の撤廃や高速道路料金の一部
が後退しているため、持家の建設や分譲住宅
無料化など家計に対する手厚い支援策が予定
の購入は、この先緩やかに上向くと予想され
されている。扶養控除の廃止に伴う増税など
るが、デベロッパー各社は引き続き在庫圧縮
を差し引いても家計部門へのプラス効果は大
に注力するとみられ、住宅着工戸数は底ばい
きく、10年度の実質個人消費は前年比1.0%
圏の動きが続くと予想される。09年度の住
増と伸びを高めると予測した。
宅着工戸数は76万戸、実質住宅投資は、前
年比18.2%減と予測した。
(3)マンション建設の抑制を主因に住宅投
資は引き続き低調
10年 度 は 住 宅 投 資 に も 回 復 の 動 き が 広
がってこよう。景気の回復で家計の住宅取得
住宅着工戸数の減少が続いている。09年8
意欲が上向くことに加え、マンションの在庫
月の着工戸数は年率換算で67.6万戸、9月は
調整一巡で分譲住宅の着工も増加に転じよ
69.9万戸と低迷している(図表9)。特に、マ
う。ただ、人口の減少など構造的な需要伸び
ンション販売の不振と信用収縮による資金繰
悩みの影響で、着工戸数は88万戸程度の緩や
りの悪化で、デベロッパー各社は新規の着工
かな回復にとどまると予想される。10年度の
を手控え、在庫販売を優先するスタンスを続
実質住宅投資は、前年比3.2%増と予測した。
調 査
51
図表9 利用関係別住宅着工戸数の推移(年率)
(万戸)
分譲住宅
給与住宅
貸家
持家
140
120
100
80
60
40
20
0
07.1
4
7
10
08.1
4
7
10
09.1
4
7(年.月)
(備考)国土交通省『住宅着工統計』より作成
(4)景気の持直しを背景に、設備投資にも
下げ止まりの兆し
備投資は前年比13.2%減と予測した。
一方、資金面からの設備投資抑制圧力は弱
輸出や生産の回復で、設備投資にも下げ止
まっている。金融危機後は、資本市場の混乱
まりの兆しが出てきた。設備投資の先行指標
や金融機関の貸し渋りなどによる資金調達環
で あ る 機 械 受 注(船 舶・ 電 力 を 除 く 民 需 )
境の悪化が設備投資の減少を増幅したが、各
は、7∼9月も前期比0.9%減と6期連続で減少
種の金融支援策の効果で資金調達環境は徐々
したが、減少率は期初の受注見通し(8.6%
に改善している。10年度には、世界経済の
減)に比べて小幅にとどまった。月次ベース
回復テンポが高まると想定しており、企業収
でみると、09年9月は前月比10.5%増と高い
益が回復するにつれて投資マインドは上向こ
伸びとなり、リーマン・ショック以降初めて
2か 月 連 続 で 前 月 比 プ ラ ス と な っ た。 さ ら
に、10∼12月の受注見通しは、前期比1.0%
増と08年1∼3月以来の増加に転じる見込み
である(図表10)。
もっとも、機械受注の持直しは、リーマ
ン・ショック後に大きく落ち込んだ反動と
いった側面も強い。アジア向け輸出が好調な
電子部品など一部の企業では投資を上積みす
る動きもみられるが、全体としての設備過剰
感は根強く、設備投資の本格回復にはなお時
間を要すると考えられる。09年度の実質設
52
信金中金月報 2010.1
図表10 名目設備投資と機械受注
(年率換算)
(兆円)
86
84
82
80
78
76
74
72
70
68
66
64
62
60
(兆円)
機械受注
(船舶・電力を除く民需)
右目盛
機械受注
10∼12月見通し
14
13
12
11
10
9
設備投資
(名目GDPベース)
左目盛
8
96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
(年)
(備考)内閣府『機械受注統計』より作成
う。10年度の実質設備投資は5.2%増と3年ぶ
機能を取り戻し始めると想定しており、世界
りのプラスに転じると予測した。
景気の回復テンポは高まろう。アジア向け輸
出に欧米向け輸出の回復が加わることで輸出
の増勢は維持され、貿易黒字は拡大傾向が続
(5)貿易黒字の回復を主因に09年度の経常
くと予想される。所得収支の黒字も世界経済
黒字は増加に転じる見込み
足元の欧米向け輸出の回復テンポは緩慢な
の回復とともに増加に転じるとみられ、10
がら、中国を中心としたアジア向け輸出がけ
年度の経常収支の黒字は、前年比28.1%増の
ん引役となり、日本の輸出は回復基調で推移
16.9兆円に回復すると予測した。
している。原油価格下落で輸入金額が大幅に
4.景気の回復力は弱く、超低金利か
らの政策転換は早くとも10年秋以降
減少したため、08年度下期に赤字に転じた
貿易収支は、09年度上期には再び黒字に転
換した。ただ、米景気の回復力は弱く、年度
(1)家計の節約志向を映し、10年度もコア
下期も輸出の本格回復は期待できない。09
消費者物価の下落が続く
年度の貿易黒字は前年に比べると大幅な増加
コア消費者物価(生鮮食品を除く総合)は
が見込まれるが、07年度の4割程度の水準に
09年3月に前年比マイナスに転じ、8月には
とどまろう(図表11)。所得収支の黒字が、
2.4%下落と過去最大の下落率を記録した。9
円高や世界的な金利低下などから2年連続で
月も7か月連続で前年水準を下回ったが、原
減少すると予想されるが、貿易黒字の拡大で
油価格反落の影響が弱まったため下落率は
09年度の経常収支の黒字は13.2兆円、前年比
2.3%に縮小した(図表12)。
7.0%増と持ち直そう。
ただ、食料・エネルギーを除く米国式コア
10年度には世界の金融システムが本来の
でみると、09年1月から前年比マイナスに転
図表11 経常収支の推移と予測
(兆円)
所得収支
貿易収支
サービス収支
移転収支
30
25
予測
経常収支
20
15
10
5
0
-5
-10
90
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10 (年度)
(備考)日本銀行資料より作成。予測は信金中金総合研究所
調 査
53
図表12 コア消費者物価の前年比と寄与度
(%)
3.0
生鮮食品を除く総合
(コアCPI)
その他
電力・ガス
ガソリン・灯油
食料
(生鮮食品を除く)
2.5
2.0
1.5
耐久財
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
-1.5
食料・エネルギーを除く総合
-2.0
-2.5
07
08
09
(年)
(備考)総務省資料より作成
じ、9月には1.0%の下落と8月(△0.9%)よ
因となろう。10年度のコア消費者物価は前
りもマイナス幅が拡大している。個人消費は
年比0.5%の下落と予測した。
回復基調にあるが、家計の節約志向は根強
09年度は、円高と原油価格の下落で控除
く、食品や日用品、衣料品などの分野で値下
項目である輸入デフレーターが下落し、これ
げの動きが広がっている。原油価格が08年
がGDPデフレーターを押し上げる要因とな
度下期にかけて急落したため、09年度下期
る。ただ、内需の弱さに起因した物価押下げ
には、ガソリンなどエネルギー関連物価の前
圧力が強く、国内需要デフレーターは大幅に
年 比 下 落 率 が 縮 小 し よ う が、 大 幅 な 需 給
下落しよう。09年度のGDPデフレーターは
ギャップ(供給超過)に起因した物価押下げ
前年比0.8%の低下と予測した。10年度も物
圧力が続くとみられる。09年度のコア消費
価下落圧力が根強いうえ、原油価格の上昇と
者物価は、前年比1.5%の下落と予測した。
円 安 で 輸 入 物 価 が 反 発 す る と 予 想 さ れ る。
10年度には家計部門にも景気の回復が波
GDPデフレーターは前年比0.3%の低下と引
及しよう。GDPベースでみた需給ギャップ
き続き下落すると予測した。
はなお残存するものの、経済活動が通常のレ
ベルに近づくにつれて、物価全般は下落圧力
が低下すると予想される。また、世界景気の
(2)量的緩和・超低金利からの政策転換は、
早くとも10年秋以降
回復で原油価格は緩やかに上昇し、円安が輸
無担保コールレートの誘導目標は、08年
入物価を押し上げると想定しているが、一方
12月以降0.10%に据え置かれている。一方、
で10年度税制改正ではガソリン税などの暫
金融危機後に導入した金融安定化のための臨
定税率が撤廃される可能性が高まっており、
時措置の一部解除が始まった。金融市場が落
これがエネルギー関連の物価を下押しする要
着きを取り戻し、市場の機能が回復したこと
54
信金中金月報 2010.1
などを理由に、日銀は10月30日の金融政策
速すると見込まれている。物価動向について
決定会合で、12月末に期限の到来するCP・
は、「10年度以降はマクロ的な需給バランス
社債の買切りオペを予定どおり12月末で打ち
が徐々に改善するため下落幅は縮小してい
切ることを決定した。ただ、年度末の企業金
く」との見方が示されたが、コア消費者物価
融の安定化に配慮して、利用残高の多い企業
は、11年度も下落が続くと予測されている。
金融支援特別オペは10年3月まで延長された。
当研究所でも、需給ギャップの大幅なマイ
白川総裁は会合後の記者会見で、「金融政
ナスが残存することで、物価下落圧力が続く
策は先行きの経済が本格的に成長軌道に復帰
と予測している。また、想定に比べて為替
していくのに時間がかかることを踏まえ、極
レートが円高に振れていることもデフレ圧力
めて緩和的な金融環境を維持していく」と超
を高める要因となっている。景気について
低金利政策を当面維持する考えを示し、今回
も、回復方向に転じたとはいえ、民需の回復
の臨時措置の解除は「出口戦略」とは別の位
力は弱く、政策効果が薄れるにつれて景気回
置付けにある点を強調した。
復の勢いが鈍化する可能性がある。日銀は今
一方、景気動向に関しては、「経済は持ち
後も積極的な資金供給の継続で超低金利の維
直しを続け、物価下落幅も徐々に縮小してい
持を余儀なくされよう。10年度には、日本
くと見込まれる」と述べた。30日の会合後
経済も民需主導の自律回復軌道へ移行してい
に発表された「展望レポート」によると、実
くと予測しているが、量的緩和・超低金利か
質成長率の中央値は09年度△3.2%から10年
らの政策転換は、早くとも10年秋以降にず
度には1.2%に回復し、11年度には2.1%に加
れ込むと予想される。
調 査
55
〈09年度、10年度の日本経済予測(前年度比)
〉
06年度
(単位:%、十億円)
07年度
〈実績〉
08年度
〈実績〉
09年度
〈実績〉
10年度
〈予測〉
〈予測〉
名目GDP
1.5
1.0 △
3.5 △
3.4
1.4
実質GDP
2.3
1.8 △
3.2 △
2.7
1.7
1.5
0.6 △
2.0 △
2.3
1.1
2.2
0.6 △
2.5 △
3.7
2.0
1.1
0.9 △
0.5
0.3
1.0
国内需要
民間部門
民間最終消費支出
民間住宅投資
△
0.2 △
民間企業設備
2,619
△
政府最終消費支出
公的固定資本形成
3.0 △
18.2
3.2
2.1 △
9.6 △
13.2
5.2
795
1,375
5.5
民間在庫品増加
政府部門
13.5 △
△
財・サービスの純輸出
3,187
3,449
0.9
0.5 △
0.5
1.1
2.1
0.3
8.8 △
6.3 △
4.4
21,555
28,155
21,267
2.4 △
1.8
0.9
0.1
10.1 △
11.0
17,135
22,078
財・サービスの輸出
8.3
9.3 △
10.2 △
13.4
11.2
財・サービスの輸入
3.1
1.7 △
3.6 △
11.3
5.4
(備考)内閣府資料より作成。在庫投資、財貨・サービスの純輸出は実額。予測は信金中金総合研究所
〈実質成長率の需要項目別寄与度〉
(単位:%)
06年度
07年度
〈実績〉
実質GDP
〈実績〉
09年度
〈実績〉
10年度
〈予測〉
〈予測〉
2.3
1.8 △
3.2 △
2.7
1.7
1.4
0.6 △
2.0 △
2.4
1.0
1.6
0.4 △
1.9 △
2.9
1.5
0.6
0.5 △
0.3
0.2
0.6
0.0 △
0.5 △
0.1 △
0.6
0.1
民間企業設備
0.8
0.3 △
1.5 △
2.0
0.7
民間在庫品増加
0.2
0.1
0.1 △
0.5
0.1
0.2
0.1 △
0.1
0.5 △
0.5
0.2
0.4
0.1
0.2
0.0
国内需要
民間部門
民間最終消費支出
民間住宅投資
政府部門
△
△
政府最終消費支出
公的固定資本形成
△
財・サービスの純輸出
財・サービスの輸出
財・サービスの輸入
△
0.4 △
0.3 △
0.2
0.4 △
0.5
0.8
1.3 △
1.2 △
0.3
0.7
1.2
1.5 △
1.8 △
2.1
1.4
0.4 △
0.3
0.6
1.8 △
0.6
(備考)内閣府資料より作成。予測は信金中金総合研究所
56
08年度
信金中金月報 2010.1
〈前提条件〉
06年度
07年度
08年度
09年度
10年度
〈実績〉
〈実績〉
〈実績〉
〈予測〉
〈予測〉
為 替 レ ー ト (円/ドル)
116.9
114.4
100.6
93.0
101.0
原 油 価 格 (CIF、ドル/バレル)
63.4
78.0
92.6
68.0
75.0
(前年比、%)
13.3
22.9
18.8
26.6
10.3
△
公 定 歩 合 (%)
0.10∼0.75
0.75
0.30∼0.75
0.30
0.30∼0.75
無担保コール翌日物 (%)
0.00∼0.50
0.50
0.10∼0.50
0.10
0.10∼0.50
春 闘 賃 上 げ (%)
1.79
1.87
1.99
1.83
1.70
(備考)日本銀行資料などより作成。予測は信金中金総合研究所
〈主要経済指標の推移と予測〉
06年度
〈実績〉
07年度
〈実績〉
鉱工業生産指数
(前年比、%)
105.3
第3次産業活動指数
(前年比、%)
102.0
08年度
〈実績〉
108.1
4.6
2.7 △
103.0
09年度
〈予測〉
10年度
〈予測〉
94.4
84.7
94.5
12.7 △
10.3
10.4
96.5
97.6
100.1
1.4
1.0 △
2.8 △
3.6
1.1
完全失業率
(季調済、 %)
4.1
3.8
4.1
5.4
5.0
企業物価指数
(国内)
(前年比、%)
102.5
104.9
108.3
102.3
101.6
2.0
2.3
消費者物価指数
(生鮮食品を除く前年比、 %)
100.1
100.4
0.1
0.3
99.5
99.3
(食料・エネルギーを除く)
(前年比、%) △
0.4 △
3.2 △
5.5 △
101.6
100.1
1.2 △
99.6
1.5 △
99.3
0.2
0.7
0.5
98.4
0.0 △
98.2
0.9 △
0.2
(備考)経済産業省、総務省資料などより作成。予測は信金中金総合研究所
〈経常収支〉
(単位:億円、%)
05年度
06年度
07年度
08年度
09年度
10年度
〈実績〉
〈実績〉
〈実績〉
〈実績〉
〈予測〉
〈予測〉
経常収支
前年差
名目GDP比(%)
貿易・サービス収支
前年差 △
貿易収支
前年差 △
サービス収支
△
前年差
所得収支
前年差
経常移転収支
△
前年差
191,233
211,538
9,136
20,305
3.8
4.1
74,072
81,860
21,553
7,787
95,633
104,839
35,938
245,444
22,979 △
14,387 △
1,418 △
132,025
169,136
122,080
8,662
37,110
2.5
2.7
3.5
90,902 △
8,878
23,323
56,983
9,042 △
99,780
32,201
33,660
11,591
43,895
78,195
105,270
33,906 △
4.8
116,861
9,206
21,560 △
123,363
12,022 △
25,960 △
2,981
126,094
142,484
167,544
29,653
16,390
25,060 △
8,934 △
12,806 △
13,002 △
1,035 △
3,873 △
196 △
32,304
34,300
20,469 △
20,571 △
21,212
5,491 △
102 △
640
145,531
121,481
124,613
22,013 △
24,050
3,132
13,290 △
12,779 △
288
511
12,461
318
(備考)日本銀行『国際収支統計』より作成。予測は信金中金総合研究所
調 査
57
〈主要国の実質成長率の推移と予測〉
国名
05年
(単位:前年比、%)
06年
07年
08年
09年
(予)
10年
(予)
米国
3.1
2.7
2.1
0.4
△
2.5
2.2
ユーロ圏
1.7
3.0
2.8
0.7
△
4.0
0.9
ドイツ
0.8
3.2
2.5
1.3
△
5.2
1.2
フランス
1.9
2.2
2.3
0.4
△
2.4
1.0
イギリス
2.2
2.9
2.6
0.6
△
4.8
0.7
韓国
4.0
5.2
5.1
2.2
△
0.7
5.1
台湾
4.2
4.8
5.7
0.1
△
3.9
4.0
香港
7.1
7.0
6.4
2.4
△
3.5
4.3
シンガポール
7.3
8.4
7.8
1.1
△
3.0
5.9
タイ
4.6
5.2
4.9
2.6
△
3.7
2.8
マレーシア
5.3
5.8
6.2
4.6
△
3.6
6.2
インドネシア
5.7
5.5
6.3
6.1
4.1
5.8
フィリピン
中国
5.0
5.4
7.1
3.8
1.2
3.9
10.4
11.6
13.0
9.0
8.4
9.3
(注)各国資料より作成。予測は信金中金総合研究所
58
信金中金月報 2010.1
調
査
林業の動向と課題
−農林水産業の活性化に向けて⑤−
信金中央金庫 総合研究所主任研究員
髙田 眞
(キーワード)天然林、人工林、間伐、路網整備、施業集約、森林区分、森林情報、国有
林・公有林
(視 点)
林業は、再生産可能な循環型資源である木材を生産するという重要な役割を果たすととも
に、森林の持つ公益的機能(国土保全、水源涵養、洪水・渇水・土砂災害の防止、二酸化炭
素の吸収など)の発揮を支える重要な役割を担っている。
現在、わが国の森林資源は成熟期(伐期)を迎えていることから、森林を経営基盤とする
林業の重要性がこれまでになく増しており、今後国内森林資源をどう活かしていくのかが喫
緊の課題となっている。
しかしながら、木材価格の下落等により林業の採算性が悪化しているため、森林所有者の
所有意欲の低下や不在村化が進行しており、また、林業就業者の減少と高齢化に歯止めが掛
かっておらず、わが国の林業を取り巻く環境は非常に厳しい状況にある。
そこで、本稿では、わが国と世界の林業の動向を紹介するとともに、わが国の林業の課題
を明らかにし、林業改革の必要性を考察することとしたい。
(要 旨)
海外の林業国においては、わが国のように過度な公的補助(補助金)はなされておらず、
補助金に依存しない林業経営が可能となっている。
わが国の森林蓄積量は戦後の拡大造林により現在成熟期(伐期)を迎えているが、林業の
生産性が低いため、外材に圧倒されており国産材の優位性は乏しい。
わが国の林業と海外の林業では、森林や林業に対する捉え方が異なっており、それゆえ、
林業経営の生産性や効率性に大きな違いが生じている。
海外の林業国においては、森林を生産林と非生産林に区分し、路網整備と施業(間伐等)
の集約により林業の生産性の向上、経営の効率化を図っているが、わが国おいては、海外
林業国とは異なる森林区分が行われており、路網整備や施業集約も進んでいない。
わが国の林業の再生に向けては、森林区分を見直すとともに、路網整備と施業集約を容易
に実施できる環境整備が不可欠である。
調 査
59
題を明らかにし、林業改革の必要性を考察す
はじめに
ることとしたい。
林業は、再生産可能な循環型資源である木
材を生産するという重要な役割を果たすとと
もに、森林の持つ公益的機能(国土保全、水
1.海外林業の動向
(1)木材生産状況の国際比較
源涵養、洪水・渇水・土砂災害の防止、二酸
図表1は、わが国の木材生産の状況を欧州
化炭素の吸収など)の発揮を支える重要な役
の林業国と比較したものである。これによる
割を担っている。
と、わが国の木材蓄積量
現在、わが国の森林資源は成熟期(伐期)
劣らないにもかかわらず、木材生産量は著し
を迎えていることから、森林を経営基盤とす
く少なく、木材資源が有効に活用されていな
る林業の重要性がこれまでになく増してお
い状況にあり、木材生産量の増加が課題と
り、今後、国内森林資源をどう活かしていく
なっていることが分かる。
(注)1
は欧州林業国に
のかが喫緊の課題となっている。
しかしながら、木材価格の下落等により林
(2)林業先進国の動向
業の採算性が悪化しているため、森林所有者
海外の林業国においては、わが国のように過
の所有意欲の低下や不在村化が進行してお
度な公的補助
(補助金)
はなされておらず
り、また、林業就業者の減少と高齢化に歯止
補助金に依存しない林業経営が行われてい
めが掛かっておらず、わが国の林業を取り巻
る。具体例として、林業が成立・自立した産
く環境は非常に厳しい状況にある。
業となっている代表的な欧州林業国等の動向
そこで、本稿では、わが国と世界の林業の
を簡単に紹介したい。
(注)2
、
動向を紹介するとともに、わが国の林業の課
図表1 木材生産状況の国際比較
面積
蓄積
木材生産量
(万ha)
生産林
その他
(非生産林)
(万m3)
(m3/ha)
(万m3)
(m3/ha)
ドイツ
1,048
60
338,000
323
5,391
5.1
フィンランド
スウェーデン
オーストリア
2,016
2,303
337
612
567
59
215,800
315,500
109,473
107
137
325
5,868
6,874
1,647
2.9
3
4.9
日本
2,487
424,900
171
1,830
0.7
うち人工林
1,036
233,804
226
1,325
1.3
(備考)規制改革会議「中間とりまとめ(08年7月2日)」をもとに信金中金総合研究所作成
(注)1.樹木の幹の体積の総量
2.例えば、わが国とフィンランドを比較すると、わが国の08年度の林野公共予算(森林整備事業事業と治山事業の合計)は
2,678億円(森林整備事業1,626億円、治山事業1,052億円)となっている。一方、フィンランドの森林整備事業の予算
(補助金)
は約266億円(06年度)である。フィンランドとわが国は、森林総面積に大差がないにもかかわらず、補助額に大きな差がある。
60
信金中金月報 2010.1
イ.ドイツ
図表2 世界の林産物輸出量
ドイツにおける木材関連産業の売上は
(注)3
GDP比5%
を占める一 大 産 業となってい
る。また、木材関連産業の就業者数は、ドイ
ツ国内の自動車関連産業の就業者数よりも多
く、林業は重要な雇用の受け皿となっている。
世界計
カナダ
ドイツ
アメリカ
スウェーデン
フィンランド
ロシア
中国
林産物輸出額計
(百万ドル)
203,772
28,472
19,048
18,481
14,376
14,343
8,634
8,294
人口1人当たり
(ドル/人)
30
848
232
58
1,554
2,693
61
6
⋮
⋮
⋮
国名
1
2
3
4
5
6
7
ロ.フィンランド
フィンランドの国土に占める森林面積の比
日本
2,581
20
(備考)農林水産統計をもとに信金中金総合研究所作成
率(73.9%)は世界第一位であり(日本は世
界第二位であり68.2%)、フィンランドの輸
ハ.ニュージーランド
出のうち木材産業の比率は4分の1を占めて
木材産業は、農業、観光に次ぐ第3の産業
(注)4
いる
となっており、輸出も旺盛に行われている
。
また、フィンランドにおいては、森林は木材
を育てる「畑」と捉えており、適切な森林管
(注)5
理を行い、必要な施業
の実施を促すこと
(図表3)。ニュージーランドの人工林は約80
万haで あ り、 わ が 国 の 人 工 林(1,000万ha)
の12分の1にも満たないが、生産力は非常に
によって、木材生産量の増加に成功している。
高く、造林面積も年々急速に増加しているた
森林面積はわが国とほぼ同じだが、人口1人当
め、増加分を輸出に振り向けることが可能と
たりの木材輸出量は世界一であり(図表2)
、
なっている。
反対にわが国は木材の輸入国となっている。
図表3 ニュージーランドの輸出実績
05年
06年
07年
金額(百万NZドル) 金額(百万NZドル) 金額(百万NZドル)
06→07
構成比(%)
伸び率(%)
酪農製品等
5,198
6,255
7,558
20.7
20.8
肉類
4,655
4,668
4,346
11.9
△6.9
木材・同製品
1,913
2,136
2,089
5.7
△2.2
機械・機器
1,683
1,886
1,893
5.2
0.4
アルミニウム
1,085
1,484
1,517
4.1
2.2
474
568
1,461
4.0
157.3
果物・ナッツ類
1,168
1,202
1,286
3.5
6.9
魚介類
1,132
1,195
1,103
3.0
△7.7
その他
1,851
2,037
2,105
5.8
3.3
30,817
34,634
36,562
100.0
5.6
鉱物燃料
合計
(備考)日本貿易振興機構(JETRO)「輸出統計(品目別)
」をもとに信金中金総合研究所作成
(注)3.木材関連産業の売上(98∼00年平均)は880億ユーロ(約1兆2,000億円)
4.日本貿易振興機構(JETRO)輸出統計(品目別)より。
5.間伐、除伐、枝打ちなどの木材生産活動
調 査
61
2.国内林業の動向
(1)森林資源の歴史的変還
図表4 森林蓄積量の推移
(百万m3)
5,000
わが国においては、かつて、戦中の必要物
4,000
資や戦後の復興用資材などを確保するために
3,000
大量の木材が必要とされたことから大規模な
2,000
森林伐採が行われ、これにより荒廃した国土
4,027
1,772
1,000
を緑化するために伐採跡地への植林等が行わ
れ た。50年 か ら75年 に か け て 毎 年30万ha以
上の植林が実施された。
また、55年代以降には、高度経済成長の
(注)6
下で薪炭
0
52
07
(年)
(備考)日本林業経営者協会作成資料をもとに信金中金総
合研究所作成
図表5 国土面積と森林面積の割合
(07年)
需要が低下する一方、建築用材
(単位:万ha)
の需要が急増するとともに紙、パルプ、合板
などの新たな木材需要が増加するなか、主に
薪炭用の天然林を人工林に転換する拡大造林
非森林
1,266
(34%)
その他
1,266
(34%)
が進められた。これらの人工林の造成は、①
できるだけ早期に森林を造成することにより
私有林
1,449
(38%)
国土面積
3,779万ha
森林
2,512
(66%)
国土の保全や水源の涵養を図る、②建築用途
等に適し経済的価値も見込める、という観点
公有林
280
(7%)
から、成長が早いスギ・ヒノキ等の針葉樹を
中心として行われた。
こうして積極的に造成された人工林は
1,000万haを超えており、わが国の森林面積
の約4割を占めている。現在の森林蓄積は50
年代と比較して2倍以上の44億m3となってお
(注)7
り
、毎年8,500万m3の成長量があるなど量
的には充実しつつある(図表4)。
その他
20
(1%)
林野庁所管
国有林
764
(20%)
(備考)日本林業経営者協会作成資料をもとに信金中金総合
研究所作成
(2)森林・林業の現状
イ.国土面積と森林面積
わが国の国土面積3,779万haのうち森林面
積はその66%を占めている。
森林を所有者別に区分すると、私有林(民有
林)が約6割、国有林が約3割、公有林(県有
林、市有林等)が約1割となっている(図表5)
。
(注)6.たきぎと炭
7.わが国の平均的な木造家屋約1億8千万戸分に相当
62
信金中金月報 2010.1
一般的に、林業とは民有林を基盤として木
業経営形態を示している。所有山林規模を見
材生産(植林、間伐等の育林、伐採等)を行
ると、1∼5haの小規模所有者が73%と圧倒的
う経営形態のことを指す。国有林および公有
に多い。一方、20ha以上の大規模所有者はわ
林についても、公益的機能の発揮のために
ずか6%程度であるにもかかわらず、面積シェ
は、間伐等の育林や伐採および植林が不可欠
アでは47%を占めている。つまり、わが国は小
となるが、これらは主に国民負担(税金)に
規模分散型の森林所有構造にあると言えよう。
よる公共事業として、民間委託形式により行
農業同様、林業においても生産コストの削
われている。しかし、これらの公共事業は、
減のためには規模拡大が不可欠となるが、小
植林から伐採までの一貫した木材生産を行う
規模分散型の所有構造にあるわが国において
民間部門の林業経営と異なり、必要な施業ご
は、いかに多くの森林所有者から施業を受託
とに民間委託するため、非効率かつ高コスト
できるかが、林業経営を左右することとな
となっており、効率化が求められている状況
る。また、林業経営形態を見ると、森林所有
にある。
者の過半数が農家林家であり、非農家林家を
大きく上回っている。昨今、農業分野におい
ロ.所有山林の規模等
ては、中山間地における耕作放棄地の増加が
図表6は民有林所有者の所有山林規模と林
問題視されているが、農業者による森林所有
図表6 所有山林規模別、林業経営形態別事業体数の割合
5%
1∼5ha
森林所有者数
73%
21%
5∼20ha
所有山林規模
別の面積シェア
19%
1%
100ha以上
24%
13%
34%
20∼100ha
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90 100(%)
会社 共同
6%
2%
農家林家
56%
森林所有者数
慣行共有
3%
非農家林家
31%
社寺
1% 各種団体組合
1%
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100(%)
(備考)日本林業経営者協会作成資料をもとに信金中金総合研究所作成
調 査
63
が過半を占める状況を踏まえれば、耕作放棄
干の向上が見られるが、これは、諸外国にお
地を林業経営の基盤として活用することも検
いて木材需要が増加したこと、北洋材
討すべきであろう。農地には戦後、森林を無
おいて丸太の輸出材価格の引き上げが行われ
理やり開墾したものも相当存在しており、現
たこと、原油高により輸送コストが高騰した
状の農地のすべてが農業経営に適している訳
ことなどが主な要因であり、純粋に国産材の
ではない。そのような農地は得てして傾斜が
需要が高まった訳ではない。そもそも、丸太
急であり、農業機械の稼働率が低くコスト増
や製材などは大きく重いものであり、必然的
加要因となるため、農業経営に適していると
に単位当たりの輸送コストが高くなるため、
は言い難い。その反面、林業に適している可
需要地に近ければ近いほど競争優位性は高ま
能性は高いと言える。農業にとっては急な傾
ることとなる。よって、わが国においても本
斜であっても、林業にとっては緩やかな傾斜
来であれば、外材に比して国産材の需要が高
である場合もあり、林業経営の基盤に充分に
くなるはずであるが、実際は、木材供給の約
なり得るだろう。
8割を海外に依存している状況にある。わが
(注)9
に
国の林業がいかに高コスト体質にあるかを如
ハ.木材供給量
実に示していると言えよう。
国産材は、外材輸入の増加等により需要量
(注)8
が減少し、06年の用材自給率
は約20%に
止まっている(図表7)。近年、自給率に若
ニ.立木価格
図表8は、立木価格の推移である。70年以
図表7 木材供給量(国産材・外材)
、用材自給率の推移
国産材
外材
用材自給率
(%)
(百万m3)
120
100
90
100
80
70
80
60
60
50
40
40
30
20
20
10
0
55
60
65
70
75
80
85
90
95
00 01 02 03 04 05 06
0
(年)
(備考)林野庁「木材需要量」をもとに信金中金総合研究所作成
(注)8.国産材用材供給量÷総用材供給量×100
9.ロシア極東地域からの輸入木材の総称
64
信金中金月報 2010.1
図表8 山元立木価格の推移
(円/m3)
45,000
山元立木価格=利用材1m3当たりの価格
ヒノキ
40,000
35,000
30,000
スギ
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
マツ
0
55
60
65
70
75
80
85
90
95
00
02
04
06
(年)
(備考)林野庁統計「山元立木価格、丸太価格、製材品価格の推移」をもとに信
金中金総合研究所作成
降の外材輸入量の増加と円高の影響が相まっ
続して増加した(図表9)。しかし、長期的
て、国産立木価格は長期低落しており、スギ
には減少傾向で推移してきており、ピーク時
山元立木価格は、80年のピーク時(22,707円
である80年の1兆1,582億円と比較すると、約
/m3) か ら、08年(3,164円/m3) ま で の28年
6割減少したこととなる。
間で、9割弱低下している。
また、75年頃には林業産出額の9割近くを
また、立木価格の低下により、造林投資は
占めていた木材生産額は、07年には林業産
補助金の有無にかかわらず、マイナス利回り
出額の5割程度となっている。
(注)10
が恒常化している
。
ヘ.林業就業者数の減少と高齢化
ホ.林業産出額
林業就業者数は65年には28万人を超えて
07年の林業産出額は4,414億円であり、10
いた。その後、木材価格の下落により林業の
年ぶりに前年比で増加した06年に続き2年連
採算性が悪化したこと、また、森林所有者の
図表9 林業産出額
(単位:億円、%)
06年
07年
構成比
林業産出額
対前年
増減率
構成比
4,322
100.0
4,414
100.0
2.1
木材生産
2,171
50.2
2,256
51.1
3.9
薪炭生産
56
1.3
55
1.2
△2.1
2,071
47.9
2,083
47.2
0.6
24
0.6
21
0.5
△14.4
栽培きのこ類
林野副産物採取
(備考)農林水産省「2007年林業産出額」をもとに信金中金総合研究所作成
(注)10.林業経営者協会資料より。
調 査
65
示したい。
所有意欲の低下がもたらす林業生産活動の停
滞や森林資源の成熟化のなかで、植栽等の造
(1)天然林と人工林
林事業量が減少したことなどにより、林業就
業者数は減少の一途を辿り、05年には4万7
森林は天然林と人工林に区分される。天然
千人にまで減少している(図表10)。
更新
(注)11
(注)12
により成立している森林のことを天
は90年以降急
然林と言う(自然林とも言う)。森林の成熟
激に上昇し、全産業と比較して非常に高い水
段階が長く続くと、立木の中には衰退し枯死
準にある。05年時点では全林業就業者の4分
するものが徐々に出現する。その箇所に、周
の1超を65歳以上の高齢者が占めており、高齢
囲の樹木から運ばれてきた種子が発芽・成長
化に歯止めが掛からない状況となっている。
する。樹木の高さが不揃いであるため、下草
さらに、林業の高齢化率
にまで陽光が当たる。また、衰退木、立ち枯
3.林業の基本的知識の把握―海外林
業国とわが国の違い―
れ木、倒木などが存在していて、さまざまな
生物に棲家(営巣の場、活動の場)を提供す
わが国の林業と海外の林業では、森林や林
る。すなわち、天然林では、人手を要さず、
業に対する捉え方が異なっており、それゆ
多様な種類や年齢の樹木が入り交じった森林
え、林業経営の生産性や効率性に大きな違い
が形成・維持される。天然林は、そのまま
が生じている。そこで、林業に関する基本的
で、人手を介さずに治山治水に役立ち、森林
知識の把握を促すとともに、それらの違いを
の外部経済効果発揮のためにコストをかける
図表10 林業就業者数、高齢化率(全産業・林業)の推移
(%)
(千人)
300
30
林業就業者数
(左軸)
262
250
25
全産業高齢化率
(右軸)
林業高齢化率
(右軸)
206
200
179
20
165
140
150
15
108
100
10
86
67
47
50
5
0
0
65
70
75
80
85
90
95
00
05
(年)
(備考)林野庁『森林・林業白書(2008年)
』をもとに信金中金総合研究所作成
(注)11.65歳以上の就業者の割合
12.植栽を行わず、自然に落下した種子から樹木を育成させることにより再生を図る方法
66
信金中金月報 2010.1
必要がないという利点を持っている。それに
が発達して硬い土壌に隙間を作ることで、人
対して、植林によって形成された森林のこと
工林は雨水を蓄える緑のダムとなる。人工林
を人工林という。
に対する間伐は、森林に水源の涵養や土砂の
図表11
流出防止などの公益的機能を充分に発揮させ
森林
天然林
人工林
(備考)信金中金総合研究所作成
るために不可欠なのである。
図表12
天然林(天然更新)
(2)人工林と間伐
森林
人工林(要植林、要間伐)
(備考)信金中金総合研究所作成
植林された人工林は一斉に成長するが、や
がて枝葉が繁茂すると、空を覆ってその下へ
(3)人工林に対する公的関与の必要性
の光を遮り、下草がほとんど生えないまま土
人工林に対して間伐を行わずに放置する
が剥き出しの状態となる。これは土砂崩れを
と、土砂災害や水害などを起こしやすくなる
起こしやすくする。さらに繁茂した枝葉がそ
という外部不経済効果を及ぼす。したがっ
の下への陽光を遮る状況では、根の発達が遅
て、人工林に関しては、次のような対応が必
れ、このことも土砂崩れを起こしやすくする。
要になる。①人工林を、木材生産をすること
この立木の間での競争を緩和するため、混
が経済的に採算に乗る生産林と、採算に乗ら
みあった森林から曲がったり弱ったりしてい
ない非生産林とに区別する。②その上で、非
る立木を抜き切りすることが必要となる。こ
生産林に関しては、もともとその地域に生息
のことを間伐という。こうして林の密度を調
した樹種やそれに近いものに植え替えたり、
節すると残った木に陽光を与えることがで
あるいは天然更新を促すなどして、公益的機
き、その成長を回復させることができる。
能が高く人による手入れの必要性が少ない自
林業経営の観点から人工林における間伐は
然林へと変えていく。③一方、生産林に関し
不可欠である。適正な間伐を実施すること
ては、間伐の実施を公的にサポートする。
で、根茎の発達により水分や養分の吸収が増
①∼③を行うことによって、効率的な林業
加し、直径成長に優れて年輪幅が均一な良材
経営が行われると同時に、森林の外部不経済
が生産でき、また、曲がり木等が除去される
を排除できることとなる。そして、①∼③の
ため、まっすぐな材の収穫量が増加する。
実施を担保するためには、公的な関与が必須
人工林は適正な間伐が行われる場合にの
である。
み、森林として外部経済効果を発揮する。す
図表13
なわち、間伐によって根の発達が促進され、
土石を包み込んで土壌の流出を防止する。こ
人工林(要植林、要間伐)
生産林(要植林、要間伐) 非生産林(天然更新)
(備考)信金中金総合研究所作成
れは風害や雪害の防止にもなる。さらに、根
調 査
67
イ.森林区分の違い
る適切性・妥当性のチェックおよび更新(植
海外林業国では、過去に林業経営の基盤と
林)が義務付けられている。伐採後の放置は
なる森林を区分し、経営に資さない森林につ
森 林 破 壊と位 置 付けられており、これらの
いては天然林化を促しており、現在では、図
ルール違反には厳しい罰則が設けられている。
表1(前掲)のとおり生産林と非生産林が明
一方、わが国においては、林業現場から森
確となっている。
林管理の専門家が不足しているとの指摘がな
一方、わが国では、水土保全林、森林と人
されて久しい状況にある。また、適切性・妥
との共生林、資源の循環利用林といった区分
当性を問わず、実施した施業には一律補助金
(注)13
がなされている
が、生産林と非生産林の
区分はなされていない。
が給付されている。つまり、天然林・人工林
問わず、また、林業経営に資するかどうかの
観点もなく、実施した間伐等の施業について
ロ.人工林に対する公的関与の違い
は一律に公的補助がなされているのである。
公的関与についても、海外林業国ではフォ
海外林業国では当たり前となっている森林破
レスター(森林管理官)資格を有した行政職
壊の防止も、わが国の法制度では実態として
員等が適切な森林管理に関するアドバイスや
野放しにされている
(注)14
。
指導を行い、必要な施業の実施を促すといっ
た公的サポートがなされている。
(4)路網整備と施業集約
また、森林管理のための法制度が確立して
わが国の戦前の林業は、天然林による天然
おり、基本的に伐採時には、届出や行政によ
更新を基本とし必要に応じて木材を切り出す
【路網の例】
(備考)信金中金総合研究所により撮影
(注)13.水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林の3区分については、林業事業体より「実態を反映した区分となっ
ていない」「区分する必要性が乏しい」といった指摘がなされている。詳細は後述
14.保安林制度において行為規制(伐採制限、植栽義務等)を課している森林もあるが、罰則がないため、機能しているとは
言い難い。
68
信金中金月報 2010.1
ものであったため、植林や間伐の必要性がな
る。実際、林業の生産性の高い海外林業国で
かった。しかしながら、戦後、拡大造林を行
は、森林内に路網を張り巡らせている。ドイ
い天然更新の起こらない人工林を増大させた
ツでは平均120m/ha、オーストリアでは平均
にもかかわらず、適切な間伐等の施業は行わ
86m/haの路網が整備されている
れず、ほとんどの森林が放置されてきた。こ
一方、わが国においては、一部の林業事業
のことが、現在のわが国の森林にかかる様々
体が独自に路網整備に取り組む動きはあるも
な問題を生じさせた主因である。
のの、全体としては未整備であるといった状
本来、間伐を行うためには、森林内に公
況である。路網を整備すれば、これまで植林
道、林道、作業道を張り巡らす必要がある。
ができなかった場所に植林が可能となる上、
これらの道、あるいはそれらを適切に組み合
間伐材を搬出・販売して安定的な収益を確保
わせたものを総称して「路網」という。森林
することができ、持続的な林業経営が可能と
施業を効率的に行うためには、高性能林業機
なる
械を活用した効率的な間伐システムを導入す
であるために、収益化できる間伐材を切り捨
る必要があり、そのためには、機械を森に入
てている。図表1(前掲)において、わが国
れることを可能にする路網の整備が必要不可
の木材蓄積量が海外林業国と比較して見劣り
欠となる。路網が整備されていれば、木材の
しないにもかかわらず木材生産量が低位にあ
搬出が容易となり、必要な時期に適切に施業
るのも、路網の未整備が原因になっている。
を行うためのモニタリングも可能となる。
なお、大量に切り捨てられた木材が同時期
ただし、路網は広域の森林を対象に計画的
に腐食することにより害虫が発生し、その害
に整備しなければならない。小規模の所有者
虫が立木に侵入して立ち枯れを起こすことも
が数多くいる広域の土地全体に対して路網整
ある。現在、わが国において当たり前のよう
備をするためには、土地を集約化してスケー
に行われている切捨て間伐は、間伐の効果そ
ルメリットが働くようにする必要がある。す
のものを喪失させるだけでなく、森林に大き
なわち、林業経営の効率化は、森林所有者か
なダメージを与えていると言えよう。
(注)15
(注)16
。
。しかし、わが国では路網が未整備
ら森林の整備・保全に必要な施業を取りまと
めて受託し、効率的に施業を行うことによっ
ロ.施業集約の違い
て可能となる。これを施業集約と言う。
施業集約についても、海外林業国ではフォ
レスター等が地域の森林経営・施業計画を策
イ.路網整備の違い
定するなど、集約化をサポートしている。例え
路網は林業において不可欠な経営基盤であ
ばドイツでは、フォレスター1人当たり1,200か
(注)15.富士通総研調査より。
16.現在、バイオマス(再生可能)資源として、間伐材を利用した木くずや木質ペレットが注目されている。詳細は、澤山
[2009]を参照願いたい。
調 査
69
ら1,500haを担当し、森林の監視・監督を行
しかしながら、区分の実態としては、木材生
うとともに集約化した施業を指導している。
産に適した森林が水土保全林に区分されてい
一方、わが国では所有者の不在村化が進行
たり、逆に木材生産に資さない森林が資源の
しているため、所有者が不明な森林が多いだけ
循環利用林に区分されている場合がある
(注)17
でなく、境界線が明確でない森林も多く
、
(注)18
。
また、林野庁は区分別に木材供給量の目標
値を掲げているが、水土保全林からの供給が
施業集約は困難な状況にある。
4.わが国の林業の課題―路網整備と
施業集約に関する課題―
最も多く、木材生産・経営効率の最適化を目
指す資源の循環利用林からの供給を上回って
いることから、林業事業体から分かりづらい
との指摘が多くあり、区分による効果や区分
(1)森林区分の見直し
前述のとおり、わが国では、森林の有する
の必要性そのものが理解されていない状況に
公益的機能を発揮させることを目的に、①水
ある。
土保全林、②森林と人との共生林、③資源の
さらに、路網整備によって従来搬出不可能
循環利用林の3つに森林を機能区分している
であった森林から木材の搬出が可能となり、
(図表14)。05年度における区分別の面積は、
今後さらなる供給量の増加が見込まれること
水土保全林が1,690万ha、森林と人との共生
や、林業事業体によって経営方針や木材循環
林が320万ha、 資源の循環利用林が500万ha
サイクルは異なり
となっている。
林業事業体ごとに様々であることから、機能
(注)19
、それゆえ、供給量も
図表14 わが国の森林区分
面積
目標とする
森林の姿
水土保全林
1,690万ha
森林と人との共生林
320万ha
資源の循環利用林
500万ha
樹木間の空間が確保され適度な
光が射し込むことにより下層植生
が生育し、落葉等の有機物が土
壌に豊富に供給されており、ま
た、下層植生とともに樹木の根
が 深く広く発達することにより土
壌を保持する能力に優れ、さら
に、水を浸透させる土壌中のす
き間が十分に形成されることに
より保水する能力に優れた森林
であり、必要に応じて土砂の流
出及び崩壊を防止する施設等の
治山施設が整備されている森林。
原生的な自然環境を構成し、
貴重な動植物の生息・生育に
適している森林、街並み、史
跡、名勝等と一体となって潤
いのある自然景観や歴史的風
致を構成している森林、騒音
や風等を防ぎ生活に潤いと安
心を与える森林、身近な自然
とのふれあいの場として適切
に管理され、住民等に憩いと
学びの場を提供している森林
であり、必要に応じて保健・
文化・教育的活動に適した施
設が整備されている森林。
樹木の生育に適した土壌を有
し、木材として利用する上で
良好な樹木により構成され、
成長量が高く二酸化炭素の固
定能力が高い森林であって、
一定のまとまりがあり、林道
等の基盤施設が適切に整備さ
れている森林。
(備考)規制改革会議「中間とりまとめ(08年7月2日)」をもとに信金中金総合研究所作成
(注)17.所有者や境界線は、国土交通省で行われている地籍調査で確定されるが、いまだ進捗率は46%にとどまっている。詳細は後述
18.森林の機能については、市町村が地域住民の意見を反映しながら区分することとなっているが、これらの運用が地域現場に
おいて浸透しておらず、森林所有者や林業事業体の意見が反映されていないとの指摘が実務者からなされている。具体的に
は、ある林業事業体の経営基盤としている森林は、一部は資源の循環利用林として区分されているものの、それ以外は水土保
全林として区分されている。このように、施業集約や路網整備のやり方、さらには育林している樹種に何ら違いがないにもか
かわらず、異なる区分がなされている事例もある。
19.木材の用途(建築用材、合板、チップなど)によって、育林方法・期間や販売価格が異なる。
70
信金中金月報 2010.1
区分の観点から供給量の目標を掲げることの
(2)森林情報(所有者・境界線)の明確化
意味は乏しい。
林業事業体が効率的かつ安定的な林業経営
森林の機能区分については、海外の林業国
を展開するためには、施業集約による経営規
と同様に、生産林と非生産林に区分すること
模の拡大が重要な経営課題となる。しかし、
が合理的である。あまりにも急峻な森林にお
施業集約に必要な所有者や境界線などの森林
いては路網の建設が困難であったり、岩石を
情報は、地域によって整備状況が異なってお
多く含む土質では需要に応じた樹種の育林が
り、施業集約が実態として困難な地域も多数
困難であったりするなど、林業経営に適さな
存在する。
い森林もある。そのような森林については、
所有者や境界線は、国土交通省で行われて
非生産林と位置付け、人手を要さず森林機能
い る 地 籍 調 査 で 確 定 さ れ る。 地 籍 調 査 は、
を発揮する天然林化を促していく必要がある。
1951年以降、国土調査法に基づき営々と実
また、林業経営が可能な森林は生産林として
施されているにもかかわらず、いまだ進捗率
位置付け、適切な施業を行うことを前提に、
は46%にとどまっている。また、明治期に
その経営を林業事業体に委ねるべきである。
地租改正により整備された公図が今なお相当
適切な施業を行えば、水土保全機能や自然
数現存しており、すべての森林境界を明らか
環境は自ずと維持される。言い換えると、水
にするためには、膨大な費用と時間を要す
土保全機能や自然環境が維持されない森林に
る。所有者・境界線などの情報は集約化に不
おいては、木が育たないため生産・再生産と
可欠であり、早急に地籍調査を行い、これら
いった資源の循環が困難となる。目指すべき
を確定させる必要がある。
は適切な施業を行うことであり、水土保全
しかしながら、調査終了の目処は立ってい
林、森林と人との共生林、資源の循環利用林
ない。それゆえ、所有者が把握できる森林に
として区分する必要はない。木材供給量の目
ついては、地籍調査の代替措置として、所有
標などは、林業事業体が目指している経営に
者同士の合意を前提に境界の確認等を行い、
沿って自ら決めるべきものであり、今後、規
森林のおおむねの境界の明確化を図る取組み
制を緩和・撤廃し、経営の自由度を広げるこ
を推進すべきであろう。
とが求められよう。
一方、所有者が不明な森林については、行
現在の森林の機能区分については、林業経
政命令の執行および代執行により、路網整備
営の実態と乖離しているだけでなく、林業現
や間伐などの森林整備・保全に必要な施業を
場から区分の必要性そのものが乏しいとの指
行えるよう、新たな法制度を創設することも
摘が数多くある。これらの指摘だけでも機能
検討すべきであろう。
区分を廃止する理由に充分なり得るであろう。
調 査
71
(3)国有林・公有林の経営委託の促進
る。③については、委託時に、受託内容(森
現在、国は国有林として全国に760万haとい
林整備方針、還元収益)などを受託希望者の
う広大な面積を有している。基本的に国有林
プレゼンテーションにより確認すれば、各々の
(注)20
は、脊梁山脈
や奥山水源地域等に分布し
長期に亘る経営ビジョンが明確化するため、
(注)21
ているが、民有林と接している場合や、民有林
競争原理を確保することは可能である
内に公有林とともに入り組んでいる場合もある
したがって、国有林の管理・経営を国が独
ため、林業事業体の施業集約を阻んでいるこ
占する理由について、疑問点も多く存在して
とも多い。そのため、国有林についても施業集
いる。民間の創意工夫を活かすためにも、施
約
(林業経営の受託)
を可能とする必要がある。
業集約の一環として国有林の経営受託を求め
ただし、国有林については、希望があれば
る者に対しては、それを可能とすべきである。
民間への売却も可能であるが、経営そのもの
これらは国有林だけでなく、県有林や市有
を民間委託することは、現状においては認め
林などの公有林においても同様である。ある
られていない。林野庁は、①国が管理・経営
地方公共団体において、林業事業体等へ公有
するからこそスケールメリットを活かせる、
林の経営委託を検討した事例があるが、前例
②公益的機能を重視する観点からも国が管
がないとの理由から実現には至らなかった。
理・経営を行うことが適切である、③国有林
国有林や公有林はそれぞれ、国や都道府県
を長期的に特定の林業事業体に委託すること
がその管理主体となっているが、わが国の林
とすれば、競争原理が働かなくなり効率性が
業においては、森林管理の専門家が不足して
損なわれる、といったことを国が国有林の管
いると言われて久しい状況にあることを踏ま
理・経営を独占すべき理由に挙げている。
えれば、国有林や公有林においても、必ずし
しかし、①については、スケールメリット
も適切かつ効率的な森林管理・経営が行われ
を活かせる能力は主体によって異なり、国が
ているとは言えない状況にある。
最もその能力があるかどうかは、国以外の主
国有財産、公有財産といえども、その管
体が管理・経営を行った結果を比較しないと
理・経営においては、効率化の視点を欠かす
判定できない。②については、国が行うこと
べきではない。他の民間開放の事例に見られ
によって公益的機能が最も発揮されるとは言
るとおり、民間の創意工夫を活かすことで、
い難い。仮にそうであれば、民有林に対する
効率化を図ることも充分可能であろう。
。
公的補助の目的を「外部経済の発揮」として
いる以上、効率化の観点からすべての森林を
国が管理経営しなければならないこととな
(4)路網整備の積極化
前述のとおり、林業経営の効率化に向けて
(注)20.ある地域の背骨に相当するような大山脈で、分水界(雨水が二つ以上の水系へ分かれる境界)となるもの。
21.そもそも、国が森林の管理・経営を独占すれば競争原理は働かない。
72
信金中金月報 2010.1
は植林や間伐を容易にする路網の建設が必要
地質を考慮せず、合理性や安全性も充分に検
不可欠であり、かつ、大きくまとまった土地
討せず、目先の施業を行うことを目的に建設
の全体に対して路網を整備した方が効率的と
された路網(重機で均した程度の道)に対し
なる。林野庁は、路網整備を促進するため、
ても補助がなされている。恒常的に利用でき
近時、路網整備に対する補助制度を設けると
る路網にも、1回限りの利用にしか耐えず雨
ともに、路網建設技術に関する研修を実施す
が降れば崩れてしまうような路網にも、同様
るなどの施策を講じ始めたが、課題も多い。
の金額の補助がなされているのが実情である。
まず、路網というインフラに対して公的補
また、林野庁が実施した研修・指導を経
助を行う以上、それは公共財と捉えるべきで
て、かつ、公的補助を受けて整備された路網
(注)22
に基づいて補助制度
が全国至る所で損壊しているとの指摘があ
を運用する必要がある。しかし、現状では補
る。この要因は、指導能力や現場経験の不足
助制度は費用便益分析もなされておらず、整
など多々あると考えられるが、路網整備を公
備されるすべての路網が補助対象となってい
共財として行う限りは、損壊理由の解明とそ
る。本来、路網整備は、一定規模の施業集約
の解消が不可欠である
された森林を対象に地形や地質を考慮して、
繰り返しとなるが、路網は林業経営に必要
合理的かつ安全性を担保して建設・拡大して
不可欠なものであり、当然、恒常的な利用に
いくものである。そうすることで路網は、施
耐え得るものでなければならない。海外林業
業やモニタリングに恒常的に利用できる経営
国ではすでに路網整備は完了しているといっ
基盤となる。しかしながら、現在は、地形や
た状況であり(図表15)、わが国においても
あり、費用便益分析
(注)23
。
図表15 フィンランドの路網整備状況
(km)
4,500
国
4,000
企業
3,500
3,000
2,500
2,000
私設
1,500
1,000
500
0
55∼90(5年ごとの平均値)
92 94 96 98 00 02 04
(年)
(備考)フィンランド「MELTA Finish Statistical Yearbook of Forestry 2008」
をもとに信金中金総合研究所作成
(注)22.事業投資によって整備される施設等がもたらす便益(貨幣換算した効果)と事業に投入される費用とを比較する分析
23.林野庁では研修受講者による路網建設の実態調査を行っており、その結果を公表することとしている。
調 査
73
早期に路網整備を図る必要があろう。
る。このため、立木は種の保存のために花粉
少数ではあるがわが国にも路網建設技術を
をより多く飛散させるのである。
確立している林業事業体がある。林野庁は、
現在、日本の人工林の8割が未整備状態で
そういった林業事業体の意見やノウハウを早
あるとされており
急に政策に取り入れ、路網に対する補助方式
が増大するだけでなく、公益的機能の低下に
を見直すとともに、研修体制を充実させた上
伴う土砂災害や森林の荒廃の危険性も年々高
で、改めて路網整備への積極化な支援を図る
まることとなる。
べきである。
森林の未整備は、わが国の森林法制度にお
おわりに (注)24
、このままでは花粉量
いて整備・保全のルールが整備されていない
ことに起因しており、今後、法制度の見直し
現在、国民の10人に1人が花粉症と言われ
なども必要となろう。わが国の林業は、本稿
ているが、この要因はわが国の森林において
で述べた課題のほかにも多くの課題を有して
適切な施業が実施されていないことも大きな
おり、海外林業国の有効事例を参考に、法制
要因となっている。間伐が行われていない森
度改革や規制改革のスピーディーな実施が求
林は、陽光が遮られて立木の成長が困難とな
められる状況にある。
〈 参考文献 〉
澤山弘「全国に広がる『バイオマスタウン』構築への取組み−林地残材などの木質バイオマスと食品廃棄物の利活用が
当面の焦点に−」『信金中金月報』(2009年3月号)
内閣府「規制改革推進のための第3次答申および規制改革推進のための3か年計画(再改定)」
農林水産省『森林・林業白書 2007年版』
(注)24.富士通総研資料より。
74
信金中金月報 2010.1
信金中金だより
第1回地域活性化セミナーの開催について
信金中央金庫
総合研究所
2009年11月16日(月)から11月20日(金)の日程で、全国信用金庫研修所にて「第1回地域活性化セミ
ナー」を開催した。本セミナーには、15金庫、19名が参加し、本中金総合研究所の研究員が講師となって5日
間の研修を進めた。本セミナーは、全国信用金庫研修所と信金中央金庫総合研究所が初めて全面的にタイアッ
プして実施したもので、従来、本中金総合研究所が信用金庫役職員を対象に2日間程度で実施していた研修を
発展・充実させたものである。
カリキュラムの内容は、1日目に地域活性化の意義や実施手順等についての講義を行い、2日目以降は、08年
度に伊勢崎商工会議所、アイオー信用金庫および本中金総合研究所が共同で実施した「群馬県伊勢崎市の中心
市街地」をモデルに、活性化にかかるケーススタディを行った。講師から伊勢崎市および中心市街地の概要や
各種アンケート調査結果についての情報を提供した後、受講者が3∼4名のグループに分かれ、グループ毎に
SWOT分析、課題抽出、方向性の設定および具体的施策の検討を行い、最終的に活性化へ向けた提言書を作
成、受講者全員の前でプレゼンテーションするというものである。
セミナー3日目には、伊勢崎商工会議所およびアイオー信用金庫の全面的な協力を得て、伊勢崎市にて「伊
勢崎市中心市街地活性化にかかる事業調査について」の講演会と視察を行った。これにより、受講者が現地の
具体的イメージを持ちながら検討を進めることができ、最終提言でのユニークかつ具体的な施策につながった。
現地視察の様子(伊勢崎駅前)
最終プレゼンテーションの様子
信金中金だより
75
信金中央金庫総合研究所活動状況(11月)
1.レポート等の発行
発行日
レポート分類
通巻
タ イ ト ル
執筆者
21-8
国内金利環境:年度末にかけて景気は一時的な踊り 斎藤大紀
場を迎える可能性も
09.11.11 NEW YORK駐在員事務所情報
21-1
金融危機後の米国レバレッジド・ローン
09.11.18 産業企業情報
21-15 「環境問題」と中小企業 動き出した120兆円市場 鉢嶺実
は中小企業にとっても ビジネスチャンス ―
09.11.18 内外経済・金融動向
21-9
09.11.18 内外経済・金融動向
21-10 中国の環境・エネルギー問題と日中協力の行方 ― 対中環 黒岩達也
境・エネルギービジネス促進には官民一体の対応が必要―
09.11.18 経済見通し
21-3
実質成長率は09年度△2.7%、10年度1.7%と予測
角田匠
09.11.25 貿易投資相談ニュース
175
−
−
09.11.25 金融調査情報
21-5
信用金庫の環境対応への取組み 環境対応に向けて本業 間下聡、高橋宏彰、
での商品・サービスで取引先を導き、自らも取り組む― 品田雄志
09.11.27 金融調査情報
21-6
2009年度上半期 全国信用金庫主要勘定増減状況 ― 預
品田雄志
金は堅調に増加、貸出金は中小企業向け中心に伸び続く
09.11.2
内外金利・為替見通し
−
―
地球環境問題のリスクとビジネスチャンス―終わり 黒岩達也
のない地球環境対策と尽きるこのとのない環境・エ
ネルギービジネス―
―
2.講座・講演・放送等の実施
実施日
09.11.6
09.11.7
09.11.9
∼10
09.11.10
09.11.11
種類
講演
講演
講演
タ イ ト ル
講座・講演会・番組名称
為替と株と今後の景気動向について 為替動向等にかかる勉強会
これからの中小企業経営について
呉信用金庫業務連絡会議
温泉街活性化について
温泉街活性化にかかる勉強会
主催
但馬信用金庫
呉信用金庫
但馬信用金庫
講演
講演
飯能信用金庫
斎藤大紀
栃 木 県 信 用 金 庫 斎藤大紀
協会
09.11.12
講演
今後の日本経済の行方
日本経済の現状と金利・為替見通し
について
経済金融・経済指標の見方
09.11.13
講演
日本経済の現状と金利・為替見通し 資金運用担当部門向け勉強会
新 潟 県 信 用 金 庫 斎藤大紀
協会
09.11.13
09.11.14
講演
講演
これからの中小企業経営について
遠軽信用金庫
鉢嶺実
09.11.14
講演
磐田信用金庫
苫小牧信用金庫
斎藤大紀
鉢嶺実
09.11.17
09.11.18
講演
講演
斎藤大紀
篠崎幸弘
09.11.18
講演
09.11.18
講演
09.11.19
09.11.20
講演
講演
川口信用金庫
信金中央金庫
アジア業務室
大田原信用金庫
黒磯支店
信金中央金庫
静岡支店
中兵庫信用金庫
09.11.26
講演
09.11.26
09.11.26
09.11.27
76
第36回地域金融懇談会専門部会
日本経済の現状と金利・為替見
通しに係る説明会
TERRE小屋 第1回勉強会
(東京三協信用金庫)
若手経営者塾
最近の金融市場・当面の経済動向について いわしん金融塾
信用金庫における注目分野
支店長・上席調査役向け土曜セ
ミナー
日本経済の現状と展望
かわしん経営塾セミナー
失敗事例に学ぶ国際ビジネス
海外投資セミナー
(信金中金大阪支店)
地域活性化のキーワードとして脚光 だいしん会講演会
を浴びる「農商工連携」
日本経済の現状と今後の見通し
平成21年度融資担当役員会議
日本経済の現状と展望
四金庫資金運用会議
講師等
加藤純
平尾光司
笠原博
東京三協信用金庫 斎藤大紀
角田匠
斎藤大紀
斎藤大紀
篠崎幸弘
講演
今後の経済情勢と中小企業への影響について 山梨しんきん本店経営者・講演会
失敗事例に学ぶ国際ビジネス
海外投資セミナー
(信金中金名古屋支店)
日本の農業と農業金融について
静岡県信用金庫経営者研修会
講演
講演
経済・金利見通しについて
日本経済の現状と展望
斎藤大紀
斎藤大紀
信金中金月報 2010.1
山梨信用金庫
信金中央金庫
アジア業務室
静岡県信用金庫
協会
経済・金利見通しにかかる勉強会 平塚信用金庫
西京経営塾・講演会
西京信用金庫
鉢嶺実
寺尾由久
2009年信金中金月報(第8巻)総索引
新春対談
1月号(通巻433号)
多様性が明日の日本を拓く
昭和女子大学学長 坂東眞理子
信金中央金庫 総合研究所長(専修大学経済学部教授) 平尾光司
座談会
10月号(通巻442号)
信用金庫による中小企業海外進出支援への取組み
京都信用金庫 証券国際部長 伴 龍太
広島信用金庫 市場営業部長 桂 一彦
司会
信金中央金庫 総合研究所副所長 松崎英一
特集「環境」
12月号(通巻444号)
環境特集号発行に当たって
座談会 地域の持続的発展と環境問題
信金中央金庫 総合研究所長 平尾光司
川崎市長 阿部孝夫
川崎信用金庫 理事長 八木晉郎
司会
地球環境問題
ビジ
ャ
−終
地球環境対策 尽
信金中央金庫 総合研究所長 平尾光司
㲯
環境・
ギービジ
−
黒岩達也
中国 環境・
ギー問題 日中協力 行方−対中環境・
ギービジ
促進
官民㾝体 対応が必要−
「環境問題」と中小企業−動き出した120兆円市場は中小企業にとっても ビジネスチャンス −
商品・ ービ で取引先 導 、自
取 組 −
信用金庫 環境対応
取組 −環境対応 向
黒岩達也
鉢嶺 実
間下 聡
高橋宏彰
品田雄志
所長の目
2月号(通巻434号)
フィンランドの成功から学ぶ
信金中央金庫 総合研究所長 平尾光司
6月号(通巻438号)
低炭素社会へのイノベーション
信金中央金庫 総合研究所長 平尾光司
3月号(通巻435号)
バーナンキFRB議長の政策対応
信金中金月報掲載論文 編集委員長(一橋大学大学院 商学研究科教授) 清水啓典
4月号(通巻436号)
大学に眠る知的資産の活用と地域金融
信金中金月報掲載論文 編集委員(九州大学大学院 経済学研究院教授) 川波洋一
総索引
77
5月号(通巻437号)
グローバル化のなかの地域経済と大学の役割
信金中金月報掲載論文 編集委員(九州大学大学院 経済学研究院教授) 川波洋一
7月号(通巻439号)
金融危機と監督規制
信金中金月報掲載論文 編集委員(同志社大学 経済学部教授)
鹿野嘉昭
8月号(通巻440号)
金融取引から強欲を排除することは可能か
信金中金月報掲載論文 編集委員(同志社大学 経済学部教授)
鹿野嘉昭
9月号(通巻441号)
金融プロフェッションと金融教育
信金中金月報掲載論文 編集委員(早稲田大学大学院 ファイナンス研究科教授)
首藤 惠
11月号(通巻443号)
あらためて、先生とは?
信金中央金庫 総合研究所顧問(横浜市立大学 国際総合科学部教授)
藤野次雄
特別寄稿論文
1月号(通巻433号)
中小企業の産学連携の実態:バイオ、ME、ソフトウェア分野の比較調査結果
一橋大学大学院 経済学研究科准教授 岡室博之
8月号(通巻440号)
地方公共団体の財政分析とその課題−総務省方式改訂モデルに基づく財政分析−
関東学院大学 経済学部長 望月正光
11月号(通巻443号)
中小規模企業のIR・財務報告に関する実態調査−新興市場を中心に−
横浜市立大学 国際総合科学部教授 中條祐介
4月号(通巻436号)
中小企業景気動向調査担当者情報交換会の実施について
総合研究所
研 究
2月号(通巻434号)
都道府県別にみた就業構造の特徴と課題−労働力人口の減少が懸念される地域ほど、高齢者・女性の就労状況は高水準−
峯岸直輝
最近の金融市場の混乱と今後規制強化が予想される米金融監督のポイント
財団法人国際金融情報センター 調査部審議役(信金中央金庫 総合研究所付出向) 高橋宏彰
3月号(通巻435号)
ポ 緩慢−
米国経済 中期展望−家計 過剰債務調整 長期化で、景気底入 後 回復
角田 匠
恒久化後 取組 進 信用金庫 地域密着型金融−経営改善支援には事業への助言を、一部個別取組項目は制度の改善を−
間下 聡
全国 広が 「バ
」構築
取組 −林地残材などの木質バイオマスと食品廃棄物の利活用が当面の焦点に−
澤山 弘
5月号(通巻437号)
地域活性化
ー
ード
脚光
浴び 「農商工連携」−成長・注目分野シリーズ⑧−
鉢嶺 実
6月号(通巻438号)
地方公共団体 財政健全性 現状 課題−全都道府県・市区町村の財政状態を健全化判断指標から考察− 峯岸直輝
78
信金中金月報 2010.1
9月号(通巻441号)
日本の物価動向−デフレ警戒感は根強いが、2000年代前半に比べて構造的デフレ圧力は小さい−
角田 匠
11月号(通巻443号)
雇用情勢
現状
展望−景気の持直しを背景に、10年度には調整が一巡し雇用は回復へ−
角田 匠
調 査
1月号(通巻433号)
経済見通し 実質成長率は08年度△0.2%、09年度0.7%、10年度2.1%と予測−年度下期も景気後退が続くが、構造的な下押し圧力は弱く、09年度には緩やかな回復へ−
角田 匠
畠山智成
LRTの活用による車依存型社会からの脱却−中心市街地活性化などのまちづくりにも効果が−
2月号(通巻434号)
中小企業 成長 株式公開−身近
ーズ 応
新興企業 上場 グ ー
ー で 株式公開 中心 −
澤山 弘
ァ
ービジ
重要性 健全 発展 必要 視点−ファミリービジネスの事業承継事例を通じた考察− 谷地向ゆかり
新時代の金型産業に求められる マーケティング力 −日本にモノ作りの現場を残すために マーケティング力 で難局を乗り切れ−
矢澤謙一
第134回全国中小企業景気動向調査 10∼12月期業況は急速に悪化 特別調査−平成21年の経営見通しについて
総合研究所
3月号(通巻435号)
中国山東省
投資環境
つ
篠崎幸弘
−青島市の現況−
4月号(通巻436号)
地域別にみた日本経済の景況判断−世界同時不況の影響で、輸出産業の集積地で景気は急速に悪化−
斎藤大紀
成田浩之
中国の西部大開発と中西部の投資環境−開発戦略は成果を上げたが、生産移転先としては長江流域の中部が有力−
黒岩達也
−中小企業と大学をつなぐコーディネーターが重要な役割を果たす−
中小企業 産学官連携 成功 導
ポ
谷地向ゆかり
5月号(通巻437号)
経済見通し 日本経済の中期展望−09∼13年度の年平均成長率は名目1.5%、実質1.2%と予測−
角田 匠
中国中部地域の投資環境−安徽省合肥市の現況−
丹羽弘之
「質的充足」の流れの中で拡大期待が高まる住宅リフォーム業界−住宅リフォーム事業に取り組む地場中小企業は地域密着の強みを活かせ−
神原俊公
第135回全国中小企業景気動向調査 1∼3月期業況はバブル崩壊後最悪 特別調査−平成20年度の決算状況等について
総合研究所
6月号(通巻438号)
変貌する生保販売チャネルと生保窓販の行方
藁品和寿
−中小企業の課題解決を図る地域力連携拠点事業− 宮 崇
信用金庫
地域力連携拠点事業
取組
つ
中小企業の景況感の変遷と現在の危機的局面の分析−信金中金総合研究所「全国中小企業景気動向調査」より−
綾藤健一
7月号(通巻439号)
経済見通し 実質成長率は09年度△3.8%、10年度2.0%と予測−米景気の底入れと経済対策の効果で、09年度下期にかけて景気は緩やかな回復へ−
角田 匠
ジ 経済 現状 展望−中国を中心とした内需拡大もあり、09年夏場以降、回復へ向かう公算−
黒岩達也
金融機関の攻めの営業スタイルとしての課題解決型営業−景況感が再び悪化するなか、優良法人顧客囲込みや顧客の経営悪化の予防策として−
間下 聡
わが国のバイオ燃料政策の動向−2015年を目途にセルロース系バイオエタノールの国産開始目指す− 澤山 弘
総索引
79
8月号(通巻440号)
中小企業の景気・財務動向−売上高の急減で雇用・設備・債務の「3つの過剰」が再び重荷に−
峯岸直輝
農業者向け融資を巡る最近の動向−重要性を増す 地域貢献 の視点−
鉢嶺 実
改善が進む台湾と中国の関係について−政権交代前後の両岸情勢−
高橋宏彰
−農林水産業の活性化に向けて①−
農業・農政の現状と課題
髙田 眞
第136回全国中小企業景気動向調査 4∼6月期業況はわずかな改善にとどまる 特別調査−世界同時不況下における中小企業の雇用戦略
総合研究所
9月号(通巻441号)
2009年版中小企業白書の概要とその読みどころ−地域金融の視点で読み解く白書−
綾藤健一
近年注目される企業再生支援のための財務手法−信用金庫が利用しやすい「中小企業再生支援協議会版『資本的借入金』」の概要等について−
山田隆広
改正農地法等 概要
び今後 課題−農林水産業の活性化に向けて②−
髙田 眞
10月号(通巻442号)
経済見通し 実質成長率は09年度△2.8%、10年度2.0%と予測−当面は輸出と景気対策に支えられた回復にとどまろうが、10年度には民需主導の景気回復へ−
地域別にみた日本経済の景況判断−輸出の底入れで景気は持ち直しつつあるが、一部地域は停滞続く−
角田 匠
斎藤大紀
栄 朝雄
高橋宏彰
動 出
米金融改革案、
内容 予想
影響
信用金庫の最近の業種別貸出金残高動向−地方銀行等との比較から−地方銀行に比べ、製造業と個人の伸び率寄与度が低く、地公体のウエイト高まる−
間下 聡
水産業の動向と資源管理の重要性−農林水産業の活性化に向けて③−
髙田 眞
11月号(通巻443号)
2008年度の地域経済の回顧−リーマン・ショック後に大幅悪化も、年度末にかけては下げ止まり−
峯岸直輝
農業金融への取組みに関する注意点−農林水産業の活性化に向けて④−
髙田 眞
中国華東地域の投資環境−浙江省湖州市の現況−
丹羽弘之
第137回全国中小企業景気動向調査 7∼9月期業況は引き続き小幅改善 特別調査−中小企業における災害等への取組状況(事業継続計画(BCP))について
総合研究所
信金中金だより
1月号(通巻433号)
焼津鰹節水産加工業活性化支援事業調印式の開催について
総合研究所
3月号(通巻435号)
平尾光司総合研究所長が専修大学で最終講義を行う
日本中小企業学会全国大会国際交流セッション講演抄録
東京都北区商業活性化支援事業調印式の開催について
和倉温泉活性化への提言 キックオフミーティング開催について
総合研究所
総合研究所
総合研究所
総合研究所
4月号(通巻436号)
東海財務局主催「地域金融シンポジウム in あいち」開催
−地域密着型金融推進
「神奈川地域金融 ォー
ポジ
−」開催
総合研究所
総合研究所
8月号(通巻440号)
地域密着型金融
ー
開催
総合研究所
9月号(通巻441号)
和倉温泉活性化への提言 最終報告会開催について
総合研究所
10月号(通巻442号)
地域活性化にかかる共同調査報告書の公表について−焼津信用金庫およびアイオー信用金庫の取組み−
総合研究所
12月号(通巻444号)
萩市観光活性化検討事業 キックオフミーティングの開催について
80
信金中金月報 2010.1
総合研究所
統
計
1.信用金庫統計
(1)信用金庫の主要勘定概況 ………… 81
(2)信用金庫の店舗数、合併等 ……… 83
(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金 …… 84
(4)信用金庫の預金者別預金 ………… 85
(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金 …… 86
(6)信用金庫の貸出先別貸出金 ……… 87
(7)信用金庫の余裕資金運用状況 …… 88
2.金融機関業態別統計
(1)業態別預貯金等 …………………… 89
(2)業態別貸出金 ……………………… 90
統計資料の照会先:信金中央金庫 総合研究所
Tel 03-5202-7671 Fax 03-3278-7048
(凡 例)
1.金額は、単位未満切捨てとした。
2.比率は、原則として小数点以下第1位までとし第2位以下切捨てとした。
3.記号・符号表示は次のとおり。
〔 0 〕ゼロまたは単位未満の計数 〔 ̶ 〕該当計数なし
〔△〕減少または負
〔…〕不詳または算出不能
〔*〕1,000%以上の増加率
〔p〕速報数字
〔r〕訂正数字
〔b〕b印までの数字と次期以降との数字は不連続
4.地区別統計における地区のうち、関東には山梨、長野、新潟を含む。東海は静岡、愛知、岐阜、三重の
4県、九州北部は福岡、佐賀、長崎の3県、南九州は熊本、大分、宮崎、鹿児島の4県である。
※ 信金中金総合研究所のホームページ(http://www.scbri.jp/)よりExcel形式の統計資料をダウンロードすることができます。
1.(1)信用金庫の主要勘定概況
○預 金
10月の全国信用金庫の預金は、月中1,325億円、0.1%増と、前年同月(5,247億円、0.4%減)の減少から増
加となった。
① 要求払預金は、各種自振口資金の流出等がみられたものの、年金振込金の滞留や月末休日による残高高ど
まり等から、月中3,243億円、0.8%増と、前年同月(2,003億円、0.5%減)の減少から増加となった。
② 定期性預金は、公金預金の流出や満期到来の増加等から、月中1,725億円、0.2%減と、前年同月(2,695億
円、0.3%減)と同様に減少した。
③ 外貨預金等は、月中192億円、5.8%減少した。
なお、2009年10月末の預金の前年同月比増減率は、2.3%増となった。
○貸出金
貸出金は、月中1,610億円、0.2%減と、前年同月(2,669億円、0.4%減)と同様に減少した。
① 割引手形は、期日落込みの増加等がみられたものの、月末休日による商手決済の翌月へのズレ込み等か
ら、月中1,071億円、10.6%増と、前年同月(143億円、0.9%減)の減少から増加となった。
② 貸付金は、月末休日による回収分の翌月へのズレ込み等がみられたものの、売上代金・工事代金による
返済や企業の約定返済等が進んだこと等から、月中2,682億円、0.4%減と、前年同月(2,525億円、0.4%減)
と同様に減少した。
なお、2009年10月末の貸出金の前年同月比増減率は、1.1%増となった。
○余資運用資産
余資運用資産は、月中3,639億円、0.6%増と、前年同月(2,624億円、0.4%減)の減少から増加となった。
主な内訳をみると、預け金は、月中1,692億円、0.7%増となった。
コールローンは、月中1,366億円、33.3%増となった。
有価証券は、外国証券(314億円減)
、投資信託(24億円減)等が減少したものの、社債(1,551億円増)
、地
方債(1,146億円増)
、国債(259億円増)が増加したことから、月中2,724億円、0.8%増となった。
統 計
81
信用金庫の主要勘定増減状況(2009年10月末 )
前月比増減
区 分
現
負
債
項
目
純
資
産
項
目
純
資
産
出
資
金
普 通 出 資 金
優 先 出 資 金
優先出資申込証拠金
資
本
剰
余
金
資 本 準 備 金
その他資本剰余金
利
益
剰
余
金
利 益 準 備 金
その他利益剰余金
特 別 積 立 金
前 期 繰 越 金
未 処 分 剰 余 金
処 分 未 済 持 分
自 己 優 先 出 資
自己優先出資申込証拠金
その他有価証券評価差額金
繰 延 ヘ ッ ジ 損 益
土 地 再 評 価 差 額 金
増 減 額
1,377,901
△
154,454 )
(
23,270,501
20,814,874 )
(
106,000 )
0
545,952
0
△
0
△
338,568
207,961
5,190
33,843,216
9,704,373
4,327,294
49,115
13,754,711
760,215
3
729,360
△
4,387,193
△
130,949
59,589,292
64,298,486
△
64,076,397 )
(
686,597
1,108,970
63,189,515
△
4,911,039
△
55,448,823
△
2,829,653
△
117,530,598
116,804,393 )
(
39,366,613
2,448,144
△
35,285,139
1,090,524
110,125
△
397,952
△
34,727
77,851,846
△
72,126,386
△
5,725,459
△
312,138
△
117,376,144
63,718
△
△
301,767
54.6
(
(
(
資
産
項
目
金
(小 切 手 ・ 手 形)
預
け
金
(信 金 中 金 預 け 金)
(譲 渡 性 預 け 金)
買
入
手
形
コ ー ル ロ ー ン
買
現
先
勘
定
債券貸借取引 支 払 保 証 金
買 入 金 銭 債 権
金
銭
の
信
託
商 品 有 価 証 券
有
価
証
券
国
債
地
方
債
短
期
社
債
社
債
株
式
貸
付
信
託
投
資
信
託
外
国
証
券
そ の 他 の 証 券
小 計
貸
出
金
(月 中 平 残)
(うち金融機関貸付金)
割
引
手
形
貸
付
金
手
形
貸
付
証
書
貸
付
当
座
貸
越
預
金
・
積
金
(月 中 平 残)
要
求
払
預
金
当
座
預
金
普
通
預
金
貯
蓄
預
金
通
知
預
金
別
段
預
金
納 税 準 備 預 金
定
期
性
預
金
定
期
預
金
定
期
積
金
外
貨
預
金
等
実
質
預
金
譲
渡
性
預
金
借
用
金
預
貸
率
残 高
(
(
△
△
△
6,237,989
740,542
624,877
115,665
0
56,373
56,373
0
5,293,118
421,646
4,871,471
4,726,626
144,439
405
1,157
0
0
3,567
2,509
155,187
△
△
△
△
増
143,101
16,378 )
(
169,279
590,437 )
(
19,500 )
(
0
136,692
299
△
79,957
△
272
7,347
1,298
272,436
25,991
114,610
9,686
155,181
388
0
2,423
△
31,481
△
485
363,966
161,066
△
26,283 )
(
3,991
107,176
268,243
△
80,052
△
20,772
△
167,417
△
132,544
(
6,834 )
324,301
14,596
△
821,379
4,993
71,090
△
418,703
△
2,319
172,528
△
171,683
△
845
△
19,229
△
116,167
1,040
△
10,097
△
528
661
661
0
0
0
0
0
203
21
225
341
566
0
116
0
0
0
0
47
△
△
△
△
(単位:百万円、% )
前 年 同 月
前年同月比
減 率 増 減 率
月中増減額
月中増減率
増 減 率
△ 9.4
1.5
△
143,313
△
9.5
△
5.2
11.8 )
(
23.8 )
(△
39,263 )
(△ 23.9 )
(
3.9 )
0.7
7.1
△
26,032
△
0.1
△
0.1
2.9 )
(
8.8 )
(
319,911 )
(
1.7 )
(△
1.7 )
22.5 )
(△ 32.8 )
(
24,500 )
(
18.3 )
(
113.2 )
̶
̶
△
30,000
△ 100.0
̶
33.3
△ 36.1
56,829
7.1
△ 12.6
100.0
̶
0
̶
̶
100.0
△ 100.0
△
64,288
△ 84.8
△ 72.3
0.0
20.3
21,037
8.0
1.4
3.6
△ 19.2
361
0.1
△ 17.4
33.3
7.3
△
185
△
3.6
1.2
0.8
1.3
△
76,895
△
0.2
4.5
0.2
△
0.4
△
246,202
△
2.4
4.3
2.7
15.7
32,532
0.8
5.7
24.5
△ 21.2
27,144
77.0
32.1
1.1
7.1
126,599
0.9
6.7
0.0
△ 12.1
△
3,304
△
0.3
1.8
0.0
0.0
0
0.0
0.0
0.3
△ 27.2
△
19,046
△
1.8
△
3.3
0.7
△ 12.0
6,601
0.1
0.3
0.3
△
7.1
△
1,219
△
0.8
9.1
0.6
2.9
△
262,487
△
0.4
2.0
0.2
1.1
△
266,963
△
0.4
1.0
0.0 )
(
0.9 )
(
373,474 )
(
0.5 )
(
1.0 )
0.5
△
0.4
△
226
△
0.0
52.7
10.6
△ 26.7
△
14,396
△
0.9
△
6.9
0.4
1.8
△
252,567
△
0.4
1.2
1.6
△ 12.5
△
67,138
△
1.1
△
5.0
0.0
3.7
△
67,472
△
0.1
1.9
5.5
△
5.8
△
117,957
△
3.7
0.9
0.1
2.3
△
524,763
△
0.4
1.6
0.0 )
(
2.0 )
(△
244,808 )
(△
0.2 )
(
1.8 )
0.8
3.0
△
200,327
△
0.5
△
0.6
0.5
7.1
△
185,553
△
7.5
△
5.1
2.3
4.1
345,782
1.0
0.0
0.4
△
3.8
△
9,534
△
0.8
△
4.2
39.2
△ 38.7
△
34,882
△ 16.2
41.5
51.2
△ 40.6
△
317,351
△ 32.1
△ 15.8
7.1
△
3.7
1,211
3.4
△
4.2
0.2
2.0
△
269,577
△
0.3
2.8
0.2
2.3
△
263,237
△
0.3
3.2
0.0
△
0.8
△
6,340
△
0.1
△
1.0
5.8
△ 24.5
△
54,858
△ 11.7
△ 15.5
0.0
2.2
△
485,500
△
0.4
1.5
1.6
△ 36.2
△
2,769
△
2.6
△
4.5
3.2
5.9
15,554
5.7
34.4
前年同月比
0.0
0.0
0.1
0.0
̶
0.0
0.0
̶
0.0
0.0
0.0
0.0
0.3
0.0
̶
̶
̶
̶
̶
0.0
(備考 )預貸率=貸出金/預金・積金×100(預金には譲渡性預金を含む。 )
82
信金中金月報 2010.1
△
△
△
△
△
△
△
2.8
4.1
0.9
25.2
̶
14.2
14.2
̶
3.8
0.6
4.2
3.9
15.8
36.1
̶
̶
̶
̶
̶
1.7
△
566
525
525
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
43
0
0
0
0
2
△
0.0
0.0
0.0
0.0
̶
0.0
0.0
̶
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
̶
̶
̶
̶
̶
0.0
1.1
2.8
1.4
13.6
̶
19.8
19.8
̶
1.0
2.5
0.8
0.7
2.3
̶
̶
̶
̶
̶
△ 351.6
△
2.5
1.(2)信用金庫の店舗数、合併等
信用金庫の店舗数、会員数、常勤役職員数の推移
(単位:店、人)
店 舗 数
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
本 店
支 店
(信用金庫数)
298
7,312
292
7,195
287
7,172
281
7,128
280
7,130
279
7,126
279
7,123
279
7,121
279
7,125
279
7,124
279
7,130
279
7,126
279
7,127
279
7,126
279
7,132
278
7,135
278
7,135
278
7,126
277
7,115
出張所
合 計
269
290
275
278
273
274
273
274
274
273
272
266
266
266
266
264
263
263
261
7,879
7,777
7,734
7,687
7,683
7,679
7,675
7,674
7,678
7,676
7,681
7,671
7,672
7,671
7,677
7,677
7,676
7,667
7,653
会 員 数
9,134,192
9,191,407
9,256,033
9,278,994
9,290,161
9,295,402
9,297,746
9,299,347
9,301,992
9,302,291
9,320,067
9,311,661
9,316,737
9,321,191
9,324,875
9,322,406
9,322,236
9,325,159
9,329,158
常勤役員
2,342
2,272
2,292
2,298
2,307
2,303
2,303
2,300
2,297
2,301
2,302
2,290
2,281
2,282
2,292
2,297
2,297
2,301
2,295
常 勤 役 職 員 数
職 員
男 子
女 子
計
81,431
33,342
114,773
79,286
32,080
111,366
77,908
32,165
110,073
77,110
33,065
110,175
79,405
36,589
115,994
78,680
35,931
114,611
78,531
35,863
114,394
78,416
35,835
114,251
78,198
35,565
113,763
77,942
35,404
113,346
77,817
35,327
113,144
76,956
34,766
111,722
79,849
38,640
118,489
79,684
38,556
118,240
79,240
38,351
117,591
79,026
38,204
117,230
78,847
38,046
116,893
78,513
37,873
116,386
78,373
37,776
116,149
合 計
117,115
113,638
112,365
112,473
118,301
116,914
116,697
116,551
116,060
115,647
115,446
114,012
120,770
120,522
119,883
119,527
119,190
118,687
118,444
信用金庫の合併等
年 月 日
異 動 金 庫 名
新金庫名
金庫数
異動の種類
2004年10月12日
大阪
南大阪
大阪
303
合併
2004年11月15日
大牟田
柳川
大牟田柳川
302
合併
2004年11月22日
足利
小山
足利小山
301
合併
2005年1月4日
伊勢崎太田
アイオー
301
名称変更
2005年2月14日
北海
古平
北海
300
合併
2005年2月14日
阪奈
八光
大阪東
2005年3月14日 (大分県信組) 杵築
(大分県信組)
299
合併
298
合併・解散
合併
2005年7月19日
仙台
塩竈
杜の都
297
2005年10月17日
高鍋
西諸
高鍋
296
合併
2005年11月21日
新川水橋
滑川
にいかわ
295
合併
2005年11月21日
広島
大竹
2006年1月10日
多摩中央
八王子
広島
294
合併
多摩
292
合併
2006年10月16日
三島
2006年10月16日
愛媛
伊豆
三島
291
合併
三津浜
愛媛
290
2006年11月6日
島根中央
合併
島根中央
290
合併
太平
(出雲信組)
2007年1月9日
下関
津和野
2007年10月9日
名寄
士別
宇部
吉南
多野
西中国
287
合併
北星
286
合併
合併
2007年11月26日
かんら
ぐんま
しののめ
284
2008年1月15日
沼津
駿河
沼津
283
合併
2008年1月15日
きのくに
湯浅
きのくに
282
合併
2008年1月21日
伊達
伊達
282
合併
2008年3月17日
鶴岡
酒田
鶴岡
281
合併
2008年5月19日
八戸
十和田
八戸
280
合併
2008年7月7日
盛岡
二戸
盛岡
279
合併
2009年2月16日
山形
山形
279
合併
羽後
278
合併
西中国
277
合併
青い森
275
合併
北見
274
合併
(室蘭商工信組)
(山形庶民信組)
2009年7月13日
羽後
秋田ふれあい
2009年10月13日
西中国
岩国
2009年11月9日
八戸
あおもり
2009年11月24日
北見
紋別
(下関市職員信組)
下北
統 計
83
1.(3)信用金庫の預金種類別預金、地区別預金
預金種類別預金
預金計
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
1,074,324
1,092,212
1,113,772
1,137,275
1,155,357
1,154,026
1,148,778
1,150,106
1,164,845
1,154,008
1,161,888
1,154,531
1,167,755
1,165,219
1,175,838
1,169,018
1,175,028
1,173,980
1,175,305
(単位:億円、%)
前年同月比
増 減 率
1.8
1.6
1.9
2.1
2.0
1.7
1.6
1.8
1.4
1.5
1.9
1.5
1.6
1.7
1.7
1.7
1.6
1.7
2.3
要求払
350,807
377,476
386,576
382,240
389,905
383,904
381,901
383,686
393,943
382,465
390,739
385,019
396,549
392,020
396,876
385,377
390,361
390,423
393,666
前年同月比
増 減 率
6.7
7.6
2.4
△ 1.1
△ 0.7
△ 1.1
△ 0.6
0.6
0.2
1.2
2.1
0.7
1.3
1.9
1.7
1.5
1.2
1.6
3.0
定期性
717,300
709,409
721,712
749,326
760,497
765,437
762,741
762,765
767,221
767,928
767,834
764,590
767,717
769,710
775,550
780,390
781,586
780,243
778,518
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 0.4
6,216
10.7
△ 1.1
5,326 △ 14.3
1.7
5,483
2.9
3.8
5,707
4.0
3.5
4,954
1.9
3.3
4,684 △ 9.9
2.8
4,136 △ 15.5
2.6
3,654 △ 30.0
2.1
3,680 △ 23.1
1.9
3,613 △ 23.2
1.9
3,314 △ 22.7
2.0
4,921 △ 13.7
2.0
3,488 △ 25.4
1.9
3,488 △ 32.1
1.9
3,411 △ 31.1
2.0
3,250 △ 31.2
2.0
3,080 △ 32.0
1.9
3,313 △ 29.2
2.0
3,121 △ 24.5
実質預金
1,072,219
1,089,623
1,110,316
1,134,949
1,154,100
1,152,387
1,147,532
1,147,987
1,162,631
1,151,988
1,159,844
1,152,438
1,166,708
1,163,452
1,174,809
1,167,973
1,174,044
1,172,599
1,173,761
前年同月比
増 減 率
1.8
1.6
1.8
2.2
2.1
1.8
1.5
1.7
1.4
1.4
1.8
1.5
1.7
1.8
1.7
1.7
1.7
1.7
2.2
譲渡性預金
999
1,181
998
911
1,054
1,027
1,000
1,059
953
935
918
517
618
616
674
699
701
647
637
前年同月比
増 減 率
26.6
18.1
△ 15.4
△ 8.7
△ 4.3
△ 11.9
△ 4.5
5.1
1.5
14.5
7.8
△ 43.1
△ 42.2
△ 42.2
△ 36.0
△ 29.7
△ 33.9
△ 36.9
△ 36.2
(備考)1.預金計には譲渡性預金を含まない。
2.実質預金は預金計から小切手・手形を差引いたもの。
3.2005年3月から2006年2月までの増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別預金
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
(単位:億円、%)
北海道
57,186
57,985
59,138
59,718
61,509
61,043
60,804
61,458
62,558
61,167
61,489
60,762
62,257
62,045
63,119
62,244
62,677
62,538
62,592
近 畿
209,461
214,393
220,845
226,819
230,609
230,832
229,777
229,573
232,514
230,779
231,797
230,428
233,656
233,360
235,110
234,808
235,797
235,930
236,110
前年同月比
増 減 率
1.7
1.3
1.9
0.9
2.6
1.8
2.0
2.4
1.8
1.4
1.9
1.7
1.7
2.3
2.6
2.3
2.2
2.4
2.9
前年同月比
増 減 率
2.0
2.3
3.0
2.7
2.1
1.7
1.7
1.6
1.2
1.4
1.6
1.5
2.0
2.1
1.9
2.1
2.0
2.2
2.7
東 北
40,036
40,213
40,258
40,772
41,571
41,437
41,570
41,583
41,996
41,537
42,397
41,643
42,628
42,435
42,896
42,603
42,820
42,708
42,831
中 国
51,044
51,229
52,842
53,292
54,130
53,927
53,577
53,679
54,294
53,536
54,024
53,589
53,930
53,802
54,393
53,809
54,229
54,089
54,059
前年同月比
増 減 率
0.3
0.4
0.1
1.2
1.0
1.0
1.2
1.5
1.2
1.1
2.9
2.1
2.6
3.2
3.1
3.0
2.8
3.0
3.0
前年同月比
増 減 率
1.1
0.3
3.1
0.8
0.5
0.7
0.5
1.1
0.5
0.4
0.6
0.5
0.0
0.5
0.4
0.3
0.2
0.3
0.8
東 京
200,759
205,069
207,952
211,882
214,157
213,266
212,401
212,829
215,009
213,443
214,853
213,414
214,978
214,919
215,799
215,468
216,471
216,296
216,784
四 国
19,286
19,914
20,731
21,775
22,152
22,179
22,186
22,265
22,515
22,335
22,450
22,362
22,594
22,722
23,135
23,043
23,148
23,146
23,279
前年同月比
増 減 率
1.9
2.1
1.4
1.8
1.5
0.9
0.6
0.8
0.6
0.9
1.3
0.7
0.8
0.7
0.7
1.2
1.2
1.4
2.0
前年同月比
増 減 率
3.5
3.2
4.1
5.0
5.0
4.3
4.3
4.7
3.6
3.1
3.2
2.6
3.1
3.8
4.4
4.4
4.2
4.3
4.9
関 東
205,375
208,477
211,889
216,685
220,259
220,044
219,167
219,272
222,430
220,130
221,489
219,830
222,515
221,605
223,752
221,912
223,202
222,820
223,293
九州北部
18,597
18,916
19,220
19,492
20,067
19,939
19,849
19,871
20,204
19,991
20,187
19,858
20,453
20,361
20,547
20,346
20,482
20,434
20,496
前年同月比
増 減 率
1.7
1.5
1.6
2.2
2.2
2.0
1.7
2.0
1.6
1.8
1.9
1.4
1.7
1.6
1.5
1.2
1.1
1.2
1.8
前年同月比
増 減 率
1.6
1.7
1.6
1.4
2.0
1.2
1.3
1.7
1.4
1.7
2.0
1.8
2.3
2.4
2.3
2.1
1.9
2.4
3.2
北 陸
33,050
33,344
33,765
34,270
34,796
34,910
34,718
34,710
35,145
34,919
35,122
34,931
35,272
35,326
35,827
35,450
35,746
35,626
35,668
南九州
24,085
24,078
24,173
24,313
24,729
24,550
24,403
24,429
24,820
24,531
24,666
24,447
24,817
24,829
25,040
24,756
24,881
24,896
24,911
前年同月比
増 減 率
1.0
0.8
1.2
1.4
1.3
2.0
2.0
2.2
1.9
2.4
2.6
1.9
2.1
2.4
2.9
2.3
1.9
2.0
2.7
前年同月比
増 減 率
1.0
△ 0.0
0.3
0.5
0.4
0.1
△ 0.0
0.3
△ 0.2
0.4
0.8
0.5
0.3
0.9
1.2
0.9
0.7
1.4
2.0
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.南九州地区・全国の2005年3月から2006年2月までの増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
84
信金中金月報 2010.1
東 海
213,983
217,087
221,464
226,859
229,875
230,484
228,935
229,053
231,986
230,277
232,040
231,857
233,264
232,431
234,702
233,204
234,212
234,112
233,908
全国計
1,074,324
1,092,212
1,113,772
1,137,275
1,155,357
1,154,026
1,148,778
1,150,106
1,164,845
1,154,008
1,161,888
1,154,531
1,167,755
1,165,219
1,175,838
1,169,018
1,175,028
1,173,980
1,175,305
前年同月比
増 減 率
2.1
1.4
2.0
2.4
2.6
2.5
2.3
2.5
1.9
2.2
2.6
2.2
2.1
2.1
2.0
1.7
1.7
1.5
2.1
前年同月比
増 減 率
1.8
1.6
1.9
2.1
2.0
1.7
1.6
1.8
1.4
1.5
1.9
1.5
1.6
1.7
1.7
1.7
1.6
1.7
2.3
1.(4)信用金庫の預金者別預金
(単位:億円、%)
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
年 月 末
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
預金計
1,074,223
1,092,110
1,113,482
1,136,973
1,155,355
1,154,025
1,148,777
1,150,104
1,164,844
1,154,006
1,161,886
1,154,529
1,167,754
1,165,218
1,175,835
1,169,016
1,175,027
r1,173,978
1,175,304
一般法人預金
2005.
06.
07.
08.
178,067
181,849
186,590
180,120
178,644
179,495
174,714
179,699
184,107
179,506
179,355
178,052
182,454
183,907
180,195
177,479
177,780
r183,060
183,390
年 月 末
要求払
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
10,292
11,146
10,088
9,087
11,641
10,798
10,261
9,538
9,253
8,937
9,542
9,366
12,174
10,820
12,675
12,320
12,223
11,406
9,434
前年同月比
増 減 率
1.8
1.6
1.9
2.1
2.0
1.7
1.6
1.8
1.4
1.5
1.9
1.5
1.6
1.7
1.7
1.7
1.6
1.7
2.3
個人預金
861,039
873,926
893,616
923,693
936,139
935,618
938,376
935,763
946,838
941,780
949,255
944,286
950,049
946,239
954,384
949,695
955,837
r950,996
956,578
前年同月比
増 減 率
1.4
2.1
2.6
△ 3.4
△ 3.8
△ 4.9
△ 3.2
0.0
△ 1.6
1.2
2.2
△ 1.1
△ 0.1
0.6
0.8
0.8
△ 0.6
1.9
4.9
要求払
前年同月比
増 減 率
3.7
8.3
△ 9.4
△ 9.9
7.7
7.5
△ 6.8
△ 24.0
△ 6.7
△ 23.2
△ 19.2
3.0
7.8
7.5
8.8
6.5
32.2
5.6
△ 8.0
定期性
93,657
99,317
102,909
96,086
95,012
95,944
91,771
98,234
103,301
98,192
98,002
96,105
100,051
101,430
97,857
94,828
94,774
r99,573
99,813
9,410
9,939
10,864
11,620
16,813
15,991
15,229
15,601
15,062
15,030
14,383
11,958
13,645
15,404
19,056
19,202
18,889
17,457
16,622
前年同月比
増 減 率
2.2
1.4
2.2
3.3
3.2
3.2
2.9
3.0
2.4
2.3
2.4
2.2
2.1
2.1
1.9
1.7
1.6
1.6
1.9
要求払
前年同月比
増 減 率
5.9
6.0
3.6
△ 6.6
△ 6.8
△ 8.1
△ 4.3
2.4
△ 0.0
5.9
7.3
0.0
1.6
2.8
2.9
2.9
△ 0.9
3.7
8.7
定期性
243,198
263,269
270,825
273,708
280,480
274,030
277,498
273,835
279,208
273,923
280,895
276,390
281,898
278,006
283,823
276,047
281,018
276,525
283,083
84,078
82,264
83,430
83,703
83,309
83,232
82,704
81,228
80,561
81,065
81,114
81,701
82,166
82,235
82,096
82,409
82,750
83,208
83,306
前年同月比
増 減 率
7.5
8.2
2.8
1.0
0.8
1.0
0.8
1.5
0.7
1.0
1.4
0.9
1.2
1.4
1.1
0.9
0.7
0.9
2.0
定期性
616,915
610,130
622,333
649,352
654,992
660,905
660,126
661,201
666,857
667,100
667,629
667,109
667,372
667,441
669,783
672,858
674,032
673,669
672,699
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
0.1
915
58.7
△ 1.0
515 △ 43.6
2.0
446 △ 13.3
4.3
623
39.4
4.2
657
63.6
4.1
672
40.3
3.8
741
56.6
3.6
717
36.4
3.1
762
53.4
2.9
746
36.7
2.8
720
36.1
2.7
778
24.8
2.5
769
21.2
2.4
782
19.0
2.2
768
16.7
2.1
780
18.0
2.0
777
18.9
1.9
791
r17.6
1.9
786
5.9
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 3.1
323 △ 7.4
△ 2.1
259 △ 19.8
1.4
242 △ 6.4
0.3
323
33.3
△ 0.1
314
34.8
△ 0.9
311
17.6
△ 2.0
230 △ 13.0
△ 2.6
229 △ 24.2
△ 3.5
236 △ 15.5
△ 3.7
241 △ 22.7
△ 3.2
231 △ 25.1
△ 2.3
237 △ 26.3
△ 2.2
229 △ 27.3
△ 1.8
234 △ 24.9
△ 1.4
233 △ 25.5
△ 1.2
233 △ 23.3
△ 0.2
247 △ 15.4
△ 0.0
270 △ 13.0
0.7
263
14.1
前年同月比 外貨預金等 前年同月比
増 減 率
増 減 率
△ 10.8
349
17.2
5.6
444
27.0
9.3
562
26.4
6.9
752
33.8
△ 1.2
190
108.6
△ 1.3
199 △ 51.2
△ 1.5
101
157.8
△ 0.6
402
196.9
△ 0.7
61 △ 70.6
△ 2.6
85
80.3
0.2
118
348.7
2.9
857
14.0
9.6
64
70.8
9.1
68 △ 52.9
13.3
99 △ 48.0
12.0
105 △ 56.1
10.3
115 △ 52.8
9.1
46 △ 76.7
9.1
61 △ 39.4
金融機関預金
15,055
14,797
11,753
11,692
11,918
11,913
10,086
9,092
9,514
8,658
9,224
10,001
9,357
8,770
9,417
10,206
10,173
11,005
9,210
前年同月比
増 減 率
△ 3.3
△ 1.7
△ 20.5
△ 0.5
△ 0.4
△ 4.3
△ 17.7
△ 30.0
△ 20.9
△ 28.2
△ 21.4
△ 14.4
△ 20.5
△ 22.2
△ 20.9
△ 11.1
△ 1.6
△ 7.6
△ 8.6
公的預金
20,055
21,534
21,517
21,462
28,649
26,992
25,595
25,544
24,379
24,057
24,047
22,184
25,887
26,296
31,834
31,631
31,231
r28,913
26,121
政府関係
預 り 金
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
前年同月比
増 減 率
△ 3.4
7.3
△ 0.0
△ 0.2
2.5
1.2
△ 3.4
△ 10.0
△ 3.6
△ 11.3
△ 8.1
3.3
8.8
8.0
11.1
9.2
17.3
7.1
2.0
譲渡性預金
999
1,181
968
911
1,054
1,027
1,000
1,059
953
935
918
517
618
616
674
699
701
647
637
(備考)1.日本銀行 「預金現金貸出金調査表」より作成。このため、
「日計表」による(3)預金種類別・地区別預金の預金計とは
一致しない。
2.2005年3月から2006年2月までの増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
統 計
85
1.(5)信用金庫の科目別貸出金、地区別貸出金
科目別貸出金
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
(単位:億円、%)
貸出金計
620,948
626,702
634,953
635,433
630,412
638,492
635,822
638,758
649,018
646,016
646,615
648,786
643,667
644,816
642,434
642,593
641,254
644,595
642,984
前年同月比
増 減 率
△ 0.1
0.9
1.3
0.0
0.2
0.4
1.0
1.4
1.6
2.4
2.6
2.1
2.2
2.0
1.9
1.7
1.1
0.9
1.1
割引手形
20,555
18,931
20,168
16,753
15,746
15,285
15,141
16,782
17,322
16,426
15,449
13,003
11,769
12,552
10,645
10,307
9,838
10,017
11,089
前年同月比
増 減 率
△ 8.1
△ 7.8
6.5
△ 16.9
△ 17.2
△ 17.3
△ 6.9
2.0
△ 10.7
△ 3.1
△ 6.8
△ 22.3
△ 26.2
△ 28.9
△ 32.3
△ 33.7
△ 42.0
△ 34.4
△ 26.7
貸付金
600,393
607,770
614,784
618,680
614,666
623,207
620,681
621,975
631,695
629,590
631,165
635,782
631,898
632,264
631,788
632,286
631,416
634,577
631,895
前年同月比
増 減 率
0.1
1.2
1.1
0.6
0.7
1.0
1.2
1.4
2.0
2.5
2.9
2.7
3.0
2.9
2.7
2.6
2.3
1.8
1.8
手形貸付
71,918
67,172
62,626
60,234
55,184
56,819
56,148
56,016
57,096
55,420
54,699
54,019
50,954
49,360
49,022
49,064
48,910
49,910
49,110
前年同月比
増 減 率
△ 7.4
△ 6.5
△ 6.7
△ 3.8
△ 5.0
△ 5.4
△ 5.0
△ 5.4
△ 6.4
△ 7.0
△ 8.2
△ 10.3
△ 10.5
△ 10.6
△ 11.1
△ 11.5
△ 12.3
△ 12.1
△ 12.5
証書貸付
498,000
510,693
522,186
527,985
530,132
535,160
534,485
535,867
544,330
544,665
547,145
551,706
552,211
554,474
554,359
554,710
554,012
554,695
554,488
前年同月比
増 減 率
1.5
2.5
2.2
1.1
1.3
1.7
1.9
2.3
3.1
3.9
4.4
4.4
4.8
4.6
4.5
4.4
4.2
3.6
3.7
当座貸越
30,473
29,904
29,971
30,459
29,349
31,226
30,047
30,091
30,269
29,503
29,320
30,057
28,732
28,429
28,407
28,510
28,492
29,970
28,296
前年同月比
増 減 率
△ 3.8
△ 1.8
0.2
1.6
1.6
1.8
0.9
0.2
0.3
△ 1.1
△ 1.7
△ 1.3
△ 2.2
△ 2.3
△ 3.2
△ 3.3
△ 3.0
△ 4.0
△ 5.8
(備考)2005年3月から2006年2月までの増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
地区別貸出金
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
(単位:億円、%)
北海道
29,999
30,652
31,012
31,109
29,723
30,540
30,629
30,636
31,384
30,907
30,834
31,786
30,834
30,636
30,463
30,422
30,360
30,778
30,870
近 畿
121,978
124,456
127,784
128,502
127,855
128,996
128,459
129,203
131,111
130,755
130,918
131,004
130,510
130,951
130,275
130,340
130,010
130,484
130,501
前年同月比
増 減 率
0.4
2.1
1.1
0.3
0.6
2.2
3.2
3.9
3.8
4.1
3.5
2.1
1.9
2.3
2.4
2.0
1.2
0.7
0.7
前年同月比
増 減 率
△ 0.5
2.0
2.6
0.5
0.4
0.3
1.0
1.5
1.5
2.4
2.6
1.9
2.3
1.9
1.8
1.7
1.1
1.1
1.5
東 北
23,463
23,277
22,849
22,672
22,273
22,470
22,478
22,528
22,715
22,606
23,105
23,392
23,067
23,137
23,030
23,013
22,971
22,982
22,924
中 国
29,537
29,238
30,232
30,194
29,993
30,493
30,298
30,447
30,900
30,715
30,785
30,793
30,354
30,429
30,294
30,360
30,357
30,472
30,284
前年同月比
増 減 率
△ 1.6
△ 0.7
△ 1.8
△ 0.7
△ 1.2
△ 0.7
△ 0.0
0.2
0.3
1.0
3.4
3.1
3.6
4.0
3.3
3.2
2.9
2.2
1.9
前年同月比
増 減 率
△ 0.9
△ 1.0
3.3
△ 0.1
△ 0.0
0.8
1.3
1.5
1.8
2.2
2.3
1.9
1.8
1.3
1.0
0.8
0.2
△ 0.0
△ 0.0
東 京
123,026
123,508
124,506
123,881
122,963
123,303
122,879
123,453
125,809
125,620
125,485
125,048
124,542
124,596
124,161
124,198
123,766
124,235
124,070
四 国
10,753
10,631
10,608
10,684
10,665
10,862
10,848
10,887
10,976
10,907
10,917
11,023
10,927
11,004
10,981
10,976
10,952
11,008
10,978
前年同月比
増 減 率
△ 0.4
0.3
0.8
△ 0.5
△ 0.5
△ 1.2
△ 0.7
△ 0.3
0.2
1.3
1.4
0.9
1.2
0.9
0.9
0.8
0.4
0.7
0.9
前年同月比
増 減 率
△ 0.4
△ 1.1
△ 0.2
0.7
1.1
1.7
2.3
2.3
2.6
2.7
2.8
3.1
2.9
2.9
2.9
2.7
2.2
1.3
1.2
関 東
117,256
118,550
119,227
119,536
118,659
120,300
119,670
120,061
121,719
120,999
121,001
121,363
120,466
120,402
120,037
120,022
119,811
120,476
120,176
九州北部
11,364
11,523
11,566
11,709
11,751
11,903
11,865
11,949
12,245
12,215
12,289
12,258
12,180
12,193
12,174
12,165
12,157
12,188
12,173
前年同月比
増 減 率
0.6
1.1
0.5
0.2
0.3
0.6
1.1
1.5
1.6
2.0
2.1
1.5
1.7
1.4
1.1
0.9
0.5
0.1
0.4
前年同月比
増 減 率
△ 0.3
1.3
0.3
1.2
2.1
2.0
2.7
3.2
4.1
5.1
5.9
4.6
4.8
4.2
3.6
3.3
2.5
2.3
2.5
北 陸
18,633
18,546
18,384
18,316
18,208
18,510
18,358
18,434
18,652
18,559
18,549
18,647
18,378
18,522
18,472
18,487
18,475
18,567
18,483
南九州
15,362
15,260
14,963
14,652
14,554
14,759
14,768
14,817
15,070
14,985
14,939
14,810
14,680
14,703
14,631
14,622
14,613
14,694
14,653
前年同月比
増 減 率
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.8
△ 0.3
△ 0.2
0.8
0.9
1.4
1.2
2.0
2.3
1.8
1.4
1.6
1.4
1.2
0.5
0.3
0.6
前年同月比
増 減 率
0.6
△ 0.6
△ 1.9
△ 2.0
△ 1.8
△ 1.0
△ 0.7
△ 0.4
△ 0.0
0.5
0.5
1.0
0.6
0.5
0.5
0.3
△ 0.0
△ 0.4
△ 0.7
(備考)1.沖縄地区は全国に含めた。
2.南九州地区・全国の2005年3月から2006年2月までの増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
86
信金中金月報 2010.1
東 海
118,485
119,924
122,722
123,155
122,752
125,327
124,547
125,318
127,407
126,721
126,754
127,618
126,701
127,196
126,871
126,947
126,744
127,663
126,837
全国計
620,948
626,702
634,953
635,433
630,412
638,492
635,822
638,758
649,018
646,016
646,615
648,786
643,667
644,816
642,434
642,593
641,254
644,595
642,984
前年同月比
増 減 率
△ 0.1
1.2
2.3
0.3
0.9
1.7
2.3
2.8
2.9
3.7
4.1
3.6
3.8
3.6
3.3
3.1
2.5
1.8
1.8
前年同月比
増 減 率
△ 0.1
0.9
1.3
0.0
0.2
0.4
1.0
1.4
1.6
2.4
2.6
2.1
2.2
2.0
1.9
1.7
1.1
0.9
1.1
1.(6)信用金庫の貸出先別貸出金
(単位:億円、%)
貸出金計
2005. 3
06. 3
07. 3
07. 12
08. 3
6
9
12
09. 3
6
9
年 月 末
2005. 3
06. 3
07. 3
07. 12
08. 3
6
9
12
09. 3
6
9
年 月 末
2005. 3
06. 3
07. 3
07. 12
08. 3
6
9
12
09. 3
6
9
企業向け計
製造業
年 月 末
620,947
626,700
634,953
638,372
635,431
630,411
638,490
649,017
648,783
642,433
644,594
前年同月比
増 減 率
構成比
△ 0.1
0.9
1.3
0.1
0.0
0.2
0.4
1.6
2.1
1.9
0.9
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
卸売業
32,326
32,103
32,828
33,599
32,332
31,819
32,376
33,911
32,996
32,703
33,088
構成比
△ 0.1
0.8
2.2
0.4
△ 0.1
0.0
0.1
1.7
2.5
2.4
1.4
65.1
65.0
65.6
66.2
65.5
65.4
65.7
66.2
65.8
65.8
66.0
小売業
前年同月比
増 減 率
構成比
△ 2.1
△ 0.6
2.2
△ 0.5
△ 1.5
△ 1.7
△ 2.5
0.9
2.0
2.7
2.1
5.2
5.1
5.1
5.2
5.0
5.0
5.0
5.2
5.0
5.0
5.1
サービス業
(各種サービス) 前年同月比
構成比
増 減 率
80,908
80,075
79,987
80,261
78,660
78,590
79,080
80,493
80,166
̶
̶
404,453
407,728
416,942
422,707
416,464
412,785
419,868
430,274
427,171
r423,022
425,819
前年同月比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
3.6
1.0
0.1
1.4
1.6
1.3
1.3
0.2
1.9
̶
̶
13.0
12.7
12.5
12.5
12.3
12.4
12.3
12.4
12.3
̶
̶
飲食業
11,812
11,116
10,780
10,524
10,304
10,244
10,209
10,377
10,284
10,479
10,551
△
△
△
△
△
△
△
△
7.4
3.4
1.9
2.7
3.3
3.1
3.5
1.4
0.7
△ 0.5
△ 0.8
構成比
5.5
5.3
5.1
5.0
4.9
4.9
4.9
4.9
4.9
4.8
4.8
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
6.8
5.8
3.0
5.1
4.4
3.6
3.8
1.3
0.1
2.2
3.3
1.9
1.7
1.6
1.6
1.6
1.6
1.5
1.5
1.5
1.6
1.6
地方公共団体
年 月 末
2005. 3
06. 3
07. 3
07. 12
08. 3
6
9
12
09. 3
6
9
物品賃貸業 前年同月比
構成比
増 減 率
3,398
3,399
3,379
3,284
3,145
3,105
3,131
3,128
3,159
3,207
3,218
△ 1.2
0.0
△ 0.5
△ 4.7
△ 6.9
△ 6.7
△ 5.7
△ 4.7
0.4
3.2
2.7
0.5
0.5
0.5
0.5
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
△ 3.2
△ 1.5
1.2
△ 1.3
△ 3.2
△ 3.4
△ 3.5
△ 0.5
1.3
0.8
△ 0.1
12.7
12.4
12.4
12.4
12.0
11.9
11.9
12.1
11.9
11.8
11.8
前年同月比
増 減 率
構成比
12.9
7.9
7.8
5.6
5.4
5.4
4.8
4.4
3.1
4.2
3.6
14.9
16.0
17.0
17.5
17.9
18.1
18.1
17.9
18.1
18.6
18.6
92,948
100,316
108,200
111,794
114,045
114,717
115,802
116,811
117,600
r119,545
120,076
宿泊業
8,488
8,165
7,887
7,643
7,427
7,457
7,449
7,451
7,311
7,416
7,414
前年同月比
構成比
増 減 率
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
2.7
3.8
3.4
5.3
5.8
4.9
4.3
2.5
1.5
0.5
0.4
1.3
1.3
1.2
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
1.1
個 人
前年同月比
構成比
増 減 率
18,529
21,043
23,294
23,125
27,845
27,760
28,171
29,068
32,878
r33,391
33,063
構成比
前年同月比
構成比
増 減 率
59,463
58,229
57,780
57,807
56,640
54,351
55,597
57,818
57,509
54,530
55,628
△
△
△
△
△
△
△
3.7
2.0
0.7
1.5
1.9
1.7
2.5
0.0
1.5
0.3
0.0
9.5
9.2
9.0
9.0
8.9
8.6
8.7
8.9
8.8
8.4
8.6
不動産業
前年同月比
増 減 率
34,509
33,303
32,640
32,469
31,544
31,191
31,367
32,002
31,793
31,014
31,097
79,376
78,118
79,103
79,589
76,511
75,317
76,210
79,149
77,564
75,969
76,099
建設業
前年同月比
増 減 率
9.4
13.5
10.6
13.0
19.5
21.3
22.8
25.6
18.0
r20.2
17.3
2.9
3.3
3.6
3.6
4.3
4.4
4.4
4.4
5.0
5.1
5.1
個人による貸家業 前年同月比
構成比
増 減 率
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
r49,847
51,621
医療・福祉
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
7.7
8.0
前年同月比
構成比
増 減 率
13,434
14,053
14,758
15,244
15,228
r15,636
r15,835
r16,214
r16,406
16,900
17,025
3.3
4.6
5.0
3.0
3.1
r4.9
5.5
6.3
r7.7
r8.0
7.5
2.1
2.2
2.3
2.3
2.3
2.4
2.4
2.4
2.5
2.6
2.6
住宅ローン
前年同月比
構成比
増 減 率
197,965
197,929
194,717
192,540
191,122
189,866
190,451
189,675
188,734
186,020
185,712
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
△
1.0
0.0
1.6
2.0
1.8
1.8
1.4
1.4
1.2
2.0
2.4
31.8
31.5
30.6
30.1
30.0
30.1
29.8
29.2
29.0
28.9
28.8
前年同月比
構成比
増 減 率
143,781
147,901
149,058
149,830
148,973
149,203
149,835
150,346
149,717
148,724
148,984
△
△
△
0.4
2.8
0.7
0.1
0.0
0.2
0.5
0.3
0.4
0.3
0.5
23.1
23.5
23.4
23.4
23.4
23.6
23.4
23.1
23.0
23.1
23.1
(備考)1.日本銀行「業種別貸出金調査表」より作成。このため、「日計表」による(5)科目別・地区別貸出金の貸出金計とは一致しない。
2.企業向け計には、海外円借款、国内店名義現地貸を含む。
3.2005年3月から2005年12月までの増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
4.2009年6月から日本銀行「業種別貸出金調査表」の業種分類変更に伴い、不動産業の内訳として「個人による貸家業」を追加
サービス業(各種サービス)の更新停止に伴い、
「飲食業」、「宿泊業」、「医療・福祉」、「物品賃貸業」を追加
統 計
87
1.(7)信用金庫の余裕資金運用状況
(単位:億円、%)
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
年 月 末
2005.
06.
07.
08.
3
3
3
3
6
9
08. 10
11
12
09. 1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
現 金
19,162
16,963
17,490
16,670
16,023
14,998
13,565
15,855
17,680
14,812
14,115
16,741
15,522
15,548
16,495
14,325
14,441
15,210
13,779
商 品
有価証券
預け金
199,157
194,245
193,753
208,064
225,683
217,379
217,118
215,902
221,660
215,884
224,583
214,336
228,228
224,662
233,383
230,101
233,386
231,012
232,705
1.4)
2.4)
0.2)
7.3)
5.8)
2.7)
0.1)
0.7)
0.0)
1.5)
3.0)
3.0)
1.3)
4.2)
3.4)
4.0)
3.1)
6.2)
7.1)
有価証券
78
69
59
45
54
50
48
47
41
39
40
36
40
43
36
38
41
38
51
287,574
306,055
318,110
323,482
332,248
334,654
333,885
332,267
330,068
332,447
332,772
324,132
332,861
334,101
331,519
333,492
336,779
335,707
338,432
株 式
貸付信託
6,131
9,236
10,514
8,284
8,819
8,687
8,654
8,674
8,787
8,823
8,966
6,580
8,283
8,003
7,925
7,843
7,688
7,598
7,602
(
(△
(△
(
(
(
(△
(
(
(△
(
(
(
(
(
(
(
(
(
うち信金中金預け金
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(△
(
(
(
(
150,939
151,668
168,470
176,971
198,084
188,006
191,205
189,965
194,122
187,712
197,905
181,259
201,943
198,047
206,524
204,903
209,591
202,244
208,148
(△ 2.4)
(
0.4)
(
11.0)
(
5.0)
(
3.9)
(
1.1)
(△ 1.7)
(△ 0.6)
(△ 1.4)
(△ 2.9)
(
3.1)
(
2.4)
(
2.0)
(
4.5)
(
4.2)
(
5.5)
(
5.1)
(
7.5)
(
8.8)
国 債
7.0)
82,465 (
11.9)
6.4)
89,127 (
8.0)
3.9)
98,728 (
10.7)
1.6) 101,608 (
2.9)
3.1)
98,842 (△ 0.7)
4.0)
99,929 (
3.5)
4.5)
97,467 (
4.3)
3.4)
94,849 (
1.3)
2.5)
91,472 (△ 1.8)
3.3)
93,686 (△ 0.0)
1.3)
94,361 (△ 3.5)
0.2)
97,509 (△ 4.0)
1.1)
96,607 (△ 3.9)
0.1)
96,417 (△ 4.7)
0.2)
91,967 (△ 6.9)
0.1)
93,211 (△ 5.2)
1.1)
96,130 (△ 1.3)
0.3)
96,783 (△ 3.1)
1.3)
97,043 (△ 0.4)
投資信託
外国証券
6,745
8,911
9,518
9,129
10,332
10,222
10,032
10,039
9,960
10,000
10,028
6,602
8,170
8,018
7,850
7,734
7,552
7,317
7,293
47,983
47,338
47,161
47,488
49,488
49,830
49,896
49,916
49,753
49,348
48,287
44,613
46,642
46,474
46,074
45,111
44,548
44,186
43,871
その他の
証 券
1,102
1,466
1,404
1,616
1,451
1,422
1,410
1,406
1,408
1,429
1,422
1,150
1,293
1,318
1,310
1,322
1,317
1,304
1,309
金融機関
貸 付 等
2,472
1,949
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
地方債
31,460
34,696
33,976
34,602
36,664
37,067
37,393
37,397
37,297
37,894
38,054
37,995
39,110
39,355
40,330
40,972
41,869
42,126
43,272
余資運用
資 産 計
(A)
514,265
524,777
543,515
563,638
589,117
581,294
578,669
578,035
582,358
574,831
582,870
562,869
586,823
583,961
593,639
588,056
595,681
592,253
595,892
買入手形
907
0
0
500
0
300
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
短期社債
3
80
169
320
810
352
623
956
1,546
1,359
1,198
283
519
643
710
758
753
394
491
信金中金
利 用 額
(B)
150,939
151,668
168,470
176,971
198,084
188,006
191,205
189,965
194,122
187,712
197,905
181,259
201,943
198,047
206,524
204,903
209,591
202,244
208,148
コール
ローン
買現先勘定
1,555
1,949
7,517
8,918
9,649
7,979
8,547
8,445
7,148
6,200
6,048
2,439
4,937
4,006
5,854
4,374
5,408
4,092
5,459
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
0
社 債
111,680
115,196
116,636
120,431
125,838
127,142
128,408
129,026
129,840
129,904
130,452
129,396
132,235
133,870
135,348
136,537
136,918
135,995
137,547
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
1.1)
3.1)
1.2)
3.2)
4.2)
6.2)
6.7)
6.8)
7.2)
7.7)
6.8)
7.4)
7.4)
7.0)
7.5)
7.6)
7.9)
6.9)
7.1)
預貸率 (A)/預金
57.7
57.3
56.9
55.8
54.5
55.2
55.2
55.4
55.6
55.9
55.6
56.1
55.0
55.3
54.6
54.9
54.5
54.8
54.6
47.8
47.9
48.7
49.5
50.9
50.3
50.3
50.2
49.9
49.7
50.1
48.7
50.2
50.0
50.4
50.2
49.9
49.7
50.6
債券貸借取引 買入金銭
支 払 保 証 金 債 権
0
0
1,303
1,299
194
757
114
157
305
101
106
759
99
101
400
0
101
799
0
公社公団債
39,070
42,609
44,265
42,898
44,347
43,807
44,331
44,555
43,609
43,187
43,194
42,510
43,682
44,633
44,087
44,282
44,627
43,746
44,704
金銭の信託
3,142
2,825
2,641
2,452
2,792
2,603
2,813
2,858
3,036
3,034
2,897
2,653
3,195
3,395
3,811
3,657
3,491
3,382
3,385
2,678
2,668
2,637
2,205
2,471
2,572
2,576
2,501
2,415
2,310
2,305
1,768
1,937
2,102
2,137
2,067
2,030
2,006
2,079
金融債
32,452
33,464
33,925
35,774
36,797
37,178
37,524
37,727
38,064
37,955
37,787
37,492
37,622
37,256
36,822
36,114
35,798
35,189
34,985
その他
40,158
39,122
38,445
41,758
44,693
46,156
46,551
46,744
48,167
48,762
49,470
49,394
50,930
51,980
54,438
56,141
56,492
57,059
57,857
預証率 (B)/預金(B)/(A)
26.7
27.9
28.5
28.4
28.7
28.9
29.0
28.8
28.3
28.7
28.6
28.0
28.4
28.6
28.1
28.5
28.6
28.5
28.7
14.0
13.8
15.1
15.5
17.1
16.2
16.6
16.5
16.6
16.2
17.0
15.6
17.2
16.9
17.5
17.5
17.8
17.2
17.7
29.3
28.9
30.9
31.3
33.6
32.3
33.0
32.8
33.3
32.6
33.9
32.2
34.4
33.9
34.7
34.8
35.7
34.6
34.9
(備考)1.( )内は前年同月比増減率
2.預貸率=貸出金/預金×100(%)、預証率=有価証券/預金×100(%)(預金には譲渡性預金を含む。)
3.2005年3月から2006年2月までの増減率は、旧杵築信用金庫を調整して算出
4.2006年8月末までの余資運用資産計は、現金、預け金、金融機関貸付等、買入金銭債権、金銭の信託、商品有価証券、
有価証券の合計
5.2006年9月末以降の余資運用資産計は、現金、預け金、買入手形、コールローン、買現先勘定、債券貸借取引支払保証
金、買入金銭債権、金銭の信託、商品有価証券、有価証券の合計
88
信金中金月報 2010.1
2.(1)業態別預貯金等
(単位:億円、%)
年 月 末
2005. 3
国内銀行
信用金庫
前年同月比
増 減 率
1,074,324
1.8
大手銀行
(債券、信託
を含む。)
前年同月比
増 減 率
6,902,096
1.5
前年同月比
増 減 率
4,483,596
1.4
うち預金
(債券、信託
を含む。)
前年同月比 うち都市銀行 前年同月比
増 減 率
増 減 率
2,862,150
0.7
2,470,227
0.5
地方銀行
前年同月比
増 減 率
1,878,876
2.9
06. 3
1,092,212
1.6
7,428,778
7.6
4,998,602
11.4
2,911,320
1.7
2,507,624
1.5
1,888,910
0.5
07. 3
1,113,772
1.9
7,674,949
3.3
5,191,912
3.8
2,916,384
0.1
2,487,565
△ 0.7
1,936,818
2.5
08. 3
1,137,275
2.1
7,780,686
1.3
5,268,076
1.4
3,032,690
3.9
2,525,751
1.5
1,956,991
1.0
6
1,155,357
2.0
7,798,134
0.6
5,243,945
0.1
3,039,528
4.1
2,522,926
1.5
1,992,541
1.8
08. 9
1,154,026
1.7
7,529,496
△ 2.4
5,014,192
△ 4.1
3,026,582
3.3
2,492,534
2.0
1,959,024
1.3
08. 10
1,148,778
1.6
7,554,806
△ 2.2
5,061,978
△ 3.9
3,009,513
2.5
2,479,419
1.2
1,941,852
1.5
11
1,150,106
1.8
7,613,800
△ 1.3
5,096,231
△ 2.8
3,049,355
1.6
2,515,687
0.3
1,962,888
1.9
12
1,164,845
1.4
7,625,566
△ 1.2
5,076,807
△ 2.4
3,038,382
2.7
2,490,156
1.2
1,986,613
1.5
09. 1
1,154,008
1.5
7,597,556
△ 1.4
5,073,319
△ 3.0
3,042,394
1.9
2,495,172
0.6
1,967,493
1.9
2
1,161,888
1.9
7,628,529
△ 1.4
5,082,750
△ 3.2
3,063,337
2.2
2,509,446
0.7
1,985,512
2.6
3
1,154,531
1.5
7,694,609
△ 1.1
5,131,449
△ 2.5
3,133,105
3.3
2,575,584
1.9
2,002,165
2.3
4
1,167,755
1.6
7,661,316
△ 1.3
5,083,802
△ 3.0
3,116,433
2.8
2,557,908
1.6
2,013,275
2.3
5
1,165,219
1.7
7,645,278
△ 1.3
5,062,378
△ 3.2
3,095,452
2.3
2,543,925
1.2
2,018,537
2.7
6
1,175,838
1.7
7,684,306
△ 1.4
5,078,496
△ 3.1
3,121,625
2.7
2,571,576
1.9
2,036,327
2.1
7
1,169,018
1.7
7,624,734
△ 0.8
5,048,271
△ 2.4
3,092,055
2.3
2,538,504
1.7
2,011,138
2.3
8
1,175,028
1.6
7,609,090
0.1
5,025,391
△ 0.7
3,076,335
2.7
2,523,539
2.2
2,016,436
2.1
9
1,173,980
1.7
7,651,985
1.6
5,066,773
1.0
3,095,631
2.2
2,536,077
1.7
2,016,367
2.9
10
1,175,305
2.3
年 月 末
2005. 3
第二地銀
前年同月比
増 減 率
539,624 △ 2.3
信用組合
前年同月比
増 減 率
156,095
2.3
06. 3
541,266
0.3
159,430
07. 3
546,219
0.9
̶
2.1
̶
農業協同組合
労働金庫
郵便貯金
預貯金等合計
前年同月比
増 減 率
138,604
2.1
前年同月比
増 減 率
776,685
2.2
前年同月比
増 減 率
2,141,490 △ 5.8
前年同月比
増 減 率
11,189,294
0.1
141,803
788,653
2,000,023
△ 6.6
11,610,899
3.7
1,869,692
△ 6.5
10,658,413
1.3
̶
2.3
̶
̶
1.5
̶
08. 3
555,619
1.7
̶
̶
̶
̶
̶
̶
1,817,438
̶
10,735,399
̶
6
561,648
1.3
̶
̶
̶
̶
̶
̶
1,811,385
̶
10,764,876
̶
08. 9
556,280
0.7
̶
̶
̶
̶
̶
̶
1,785,613
̶
10,469,135
̶
08. 10
550,976
0.6
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
11
554,681
1.0
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
12
562,146
0.7
̶
̶
̶
̶
̶
̶
1,791,005
△ 3.5
10,581,416
△ 1.3
09. 1
556,744
1.2
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
2
560,267
1.5
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
3
560,995
0.9
̶
̶
̶
̶
̶
̶
1,774,798
△ 2.3
10,623,938
△ 1.0
4
564,239
1.3
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
5
564,363
1.6
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
6
569,483
1.3
̶
̶
̶
̶
̶
̶
1,782,331
△ 1.6
10,642,475
△ 1.1
7
565,325
1.7
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
8
567,263
1.6
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
9
568,845
2.2
̶
̶
̶
̶
̶
̶
1,764,443
△ 1.1
10,590,408
1.1
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
10
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』、ゆうちょ銀行ホームページ等より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.国内銀行・大手銀行には、全国内銀行の債券および信託勘定の金銭信託・貸付信託・年金信託・財産形成給付信託を含
めた。
4.信用組合、労働金庫、農業協同組合の計数については、日本銀行がデータの掲載を中止したことを受けて、更新を停止
した。
5.2007年10月以降の郵便貯金は、振替貯金を含む。また、郵便貯金は2008年4月より四半期ベースで公表
6.預貯金等合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の預貯金残高の合計により算出した。なお、2006年4月以降に
ついては、信用組合、労働金庫、農業協同組合を除いたベースで算出した。
統 計
89
2.(2)業態別貸出金
(単位:億円、%)
年 月 末
信用金庫
大手銀行
地方銀行
前年同月比
増 減 率
620,948 △ 0.2
前年同月比
増 減 率
2,243,788 △ 4.3
06. 3
626,702
0.9
2,291,469
2.1
1,896,885
1.4
1,403,556
07. 3
634,953
1.3
2,270,176
△ 0.9
1,860,370
△ 1.9
1,445,409
08. 3
635,433
0.0
2,281,304
0.4
1,854,662
△ 0.3
1,483,586
6
630,412
0.2
2,284,825
1.2
1,862,142
0.6
1,478,736
2005. 3
前年同月比
増 減 率
1,869,540 △ 4.5
都市銀行
第二地銀
前年同月比
増 減 率
1,372,381
1.5
信用組合
前年同月比
増 減 率
403,403 △ 4.0
前年同月比
増 減 率
91,836
0.6
2.2
412,564
2.2
93,078
2.9
419,377
1.6
̶
2.6
429,309
2.3
̶
̶
3.1
426,408
2.2
̶
̶
̶
1.3
̶
08. 9
638,492
0.4
2,280,702
1.3
1,849,717
0.8
1,495,911
2.9
430,585
1.9
̶
08. 10
635,822
1.0
2,310,735
3.7
1,886,720
3.6
1,498,556
3.7
428,806
2.3
̶
̶
11
638,758
1.4
2,341,065
4.6
1,916,932
4.7
1,512,185
4.4
430,860
2.5
̶
̶
̶
12
649,018
1.6
2,391,819
5.0
1,957,331
5.1
1,540,058
4.6
436,608
1.8
̶
09. 1
646,016
2.4
2,366,825
4.2
1,939,228
4.1
1,535,872
5.2
434,654
2.5
̶
̶
2
646,615
2.6
2,374,864
4.5
1,945,604
4.6
1,536,351
4.7
434,357
2.4
̶
̶
3
648,786
2.1
2,391,966
4.8
1,952,042
5.2
1,547,581
4.3
435,832
1.5
̶
̶
4
643,667
2.2
2,371,777
4.7
1,940,527
5.0
1,533,233
4.1
432,824
1.6
̶
̶
5
644,816
2.0
2,363,504
4.3
1,931,307
4.4
1,533,718
3.7
433,725
1.4
̶
̶
6
642,434
1.9
2,346,518
2.7
1,912,553
2.7
1,527,067
3.2
432,265
1.3
̶
̶
7
642,593
1.7
2,330,381
2.4
1,900,982
2.4
1,527,455
2.9
433,163
1.4
̶
̶
8
641,254
1.1
2,307,220
1.5
1,878,428
1.3
1,525,596
2.5
432,268
1.0
̶
̶
9
644,595
0.9
2,319,911
1.7
1,873,709
1.2
1,534,325
2.5
436,640
1.4
̶
̶
10
642,984
1.1
̶
̶
年 月 末
農業協同組合
労働金庫
公的金融機関
前年同月比
増 減 率
270,971 △ 1.3
合 計
うち住宅
金融公庫
前年同月比
増 減 率
212,986 △ 0.8
06. 3
97,095
2.3
213,185
0.0
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,734,291
2.0
07. 3
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,769,915
0.7
08. 3
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,829,632
1.2
6
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,820,381
1.7
08. 9
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,845,690
1.7
08. 10
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,873,919
3.2
11
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,922,868
3.9
12
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
5,017,503
4.2
09. 1
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,983,367
4.1
2
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,992,187
4.1
3
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
5,024,165
4.0
4
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,981,501
3.9
5
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,975,763
3.6
6
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,948,284
2.6
7
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,933,592
2.4
8
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,906,338
1.7
9
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
4,935,471
1.8
10
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
̶
2005. 3
前年同月比
増 減 率
1,457,114 △ 4.8
うち中小
企業向け
前年同月比
増 減 率
94,887
2.3
前年同月比
増 減 率
550,993 △ 9.0
前年同月比
増 減 率
6,497,343 △ 2.5
(備考)1.日本銀行『金融経済統計月報』より作成
2.大手銀行は、国内銀行−(地方銀行+第二地銀)の計数
3.公的金融機関は、日本政策投資銀行、国際協力銀行、国民生活金融公庫、住宅金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業
金融公庫、公営企業金融公庫、沖縄振興開発金融公庫、商工組合中央金庫の合計
4.公的金融機関のうち中小企業向けは、国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫の合計
5.信用組合、労働金庫、農業協同組合、公的金融機関の計数については、日本銀行がデータの掲載を中止したことを受
けて、更新を停止した。
6.合計は、単位(億円)未満を切り捨てた各業態の貸出金残高の合計により算出した。なお、2006年3月以降については、
信用組合、労働金庫、農業協同組合、公的金融機関を除いたベースで算出した。
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信金中金月報 2010.1
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I S S N 1 3 4 6 −9 4 7 9
2010年(平成22年)1月1日 発行
2010年1月号 第9巻 第1号(通巻445号)
発 行 信金中央金庫
編 集 信金中央金庫 総合研究所
〒103−0028 東京都中央区八重洲1−3−7
TEL 03(52 02)7 6 7 1 F A X 0 3(3278)7 0 4 8
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