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原子力安全監視室の取り組み
原子力安全監視室 2015 年 3 月 30 日 原子力安全監視室の取り組み ―原子力安全改革プラン進捗報告(2014 年度第 4 四半期)― 1. 最近の業務状況 1 月には当社のすべての原子力発電所で重大な人身災害が発生した。原子力安全監視 室は各災害現場に足を運び、関係者と対話をし、再発防止に向けた取り組みを監視し ている。当社の経営層は一連の災害を深刻に受け止め、原因究明、教訓の学習、およ び再発防止に相応の努力をしている。原子力安全監視室は今後も監視を続けていく。 ただ原子力安全監視室は、人的ミスを災害の原因とする見方が目立つことを憂慮し ている。どれほど優秀な作業員でもミスを犯すことはあり、人的ミスが重大な結果に つながらないような安全な作業環境を提供するのが当社の責務である。このため原子 力安全監視室は、災害のレビューにおいて以下の提言を行った。 ● 作業安全にも深層防護の考え方を適用すべきである 第 1 層の防護:機器は可能な限り危険が無いように設計する必要がある。 第 2 層の防護:保護。設計によって安全を確保しきれない場合もある。このため リスク評価を実施し、保護装置、防御装置、警告サインなどを設置すべ きである。 第 3 層の防護:リスクの管理。手順書を定め、訓練を受けた作業員のみが作業を 行う状況を確保するためのプロセスを整えるべきである。 第 4 層の防護:個人用安全装備。個人用安全装備は、必要に応じて指定し、常に 着用させる必要がある。 ● 根本的防護:安全文化とリスク意識。 原子力安全監視室は、改善の効果の長期的な持続性には懸念を抱いている。一連の 災害の前にも、重大な災害が発生していた。当社は過去の災害から迅速かつ効果的に 教訓を学ぶことができていない。原子力安全監視室はこれまでに以下の内容を推奨し てきている。 経営執行部が学習プロセスを見直し、十分な実効性を確保する。学習は優れた安 全の土台となる。 ラインの経営層は教訓がきちんと学習されたことを自ら監視し確認する仕組みを 構築し、強化すべきである。マネージャーは部下に指示を与え、信頼すべきだが、 そのうえで指示が実行されたことを確認する必要がある。ここには当社および協 力企業による実行状況の確認も含まれる。 1 ● 今回の災害につながった要因の多くは、以前から原子力安全監視室の指摘や推奨事 項の対象となってきたものである(例:工程のプレッシャー、作業管理、リスク評価、 学習の失敗) 。このため原子力安全監視室も自らなぜ一連の災害を防ぐことができなか ったかを分析し、対応策を設定あるいはフォローアップする際の強さ、明確さが不十 分であったとの結論に達した。 2. 原子力安全監視室に対する外部評価 原子力安全監視室は自らの業務水準をベンチマークし、またリソースを補う手段と して、常に社外の世界レベルの専門家の助言を求めている。 2.1 原子力安全タスクフォース1 (NSTF) は当社がこのほどまとめた戦略に関する小冊子 『原子力安全を高めていくために』を検討し、助言をした。 NSTF は、小冊子に書かれた内容は、実施されれば安全の向上につながるものであ り、良くできた戦略的冊子であると評価した。NSTF は、CFAM(The Corporate Functional Area Manager)の導入、KPI(Key Performance Indicator)の活用、WANO (世界原子力発電事業者協会)の「パフォーマンス目標と基準(PO&C)」と「健全な 原子力安全文化の特性」の活用は素晴らしい取り組みであると評価した。それに加え て、強力なリーダーシップとプロジェクト管理のルールのもとでこのプランを着実に 実施する必要があるとのアドバイスを行った。 2.2 NSTF は原子力安全監視室の活動と最近の自己評価に助言をした 原子力安全監視室の活動は 2 年目に入り、業務の水準を高めたいと考えている。そ こで NSTF を招き、改善に向けた助言を求めた。NSTF は原子力安全監視室がこれほ どの短期間に体制を整え、社内で受け入れられていることを高く評価した。主な助言 は以下のとおりである。 1. メンバーの研修を継続し、チーム全体のスキルの幅を拡げる必要がある。 2. 活動領域を広げすぎており、主な優先事項を再確認する必要がある。 3. 推奨事項により具体性を持たせる必要がある。また上申プロセスを強固にし、指摘 が迅速に効果を発揮するようにすべきである。 2.3 原子力安全監視室は、当社の物的(核物質)防護に関するレビューを受けるため、IAEA の核セキュリティ専門家の招聘をアレンジした 全体としては、当社は IAEA の核セキュリティ・シリーズ No.13(核物質と核施設 NSTF の委員長はバーバラ・ジャッジ女史が務め、他に国内外の原子力安全の専門家 6 人で構成されている。原子力安全監視室を通じて当社に原子力安全に関する助言を提供す る。2 月 7、8 日の 2 日間にわたり会合を開いた。 1 2 の物的防護)を概ね満たしているという評価だった。しかし、いくつかの脅威に言及 し強化を助言した。 2.4 原子力安全監視室の外部メンター 原子力安全監視室は外部メンターの活用を継続している。英国人のメンターはセラ フィールドやアルダーマストンといった原子力施設の規制に関する豊富な知識と経験 を有しており、最近の訪問では福島第一原子力発電所の作業安全と放射線防護につい て貴重な洞察を提供した。またこのほど新たなメンターとして、運転中の原子炉監視 の経験が豊富な米国人 1 名を迎え入れた。 英国人メンターを同行した 米国人メンターを同行した インスペクション 2.5 インスペクション 原子力安全監視室のベンチマーク 原子力安全監視室は原子力安全監視に関する欧米のワークショップに参加し、最近 の会合を通じて有益な知識やトレーニングを得てきた。4 月には INPO(米国原子力発 電運転協会)とハッチ原子力発電所を訪問し、原子力安全監視室自体のベンチマーク も実施する予定である。 3. 原子力安全監視室のパフォーマンス 3.1 KPI(Key Performance Indicator 重要評価指標) 原子力安全監視室の最も重要な KPI は、推奨事項の完了状況である。本報告の執筆 時点では、直近の評価結果はまとまっておらず、推奨事項の総数は 77 と前回と変わら ない。77 の推奨事項への現在の対応状況は以下のとおりである。 3 表 3-1 原子力安全監視室からの推奨事項の完了状況 第 3 四半期までの状況 推奨事項が受け入れら れ、対応が完了した 推奨事項が受け入れら れ、対応が進行中である 対応が進んでいない 第 4 四半期の状況 第 2 四半 第 3 四半期 第 2 四半 第 3 四半 期以前分 新規 期以前分 期分 14 - 16 7 23 22 26 48 2 4 6 40 37 77 22 37 4 総数 77 合計 さらに原子力安全監視室は 2014 年 4 月に当社取締役会が提示した、安全に関する 10 項目のアクションの進捗も監視している。KPI の導入およびベンチマークにおいて はめざましい改善が見られる。しかし、組織変更管理、安全保証、廃炉ロードマップ に関する長期的な安全リスクの評価といったいくつかの分野においてはまだ進捗が不 十分である。 原子力安全監視室は過去のすべての推奨事項とその対応状況の見直しを進めている。 最も重要度の高い項目に集中するとともに、期待事項を明確にするためである。今後 フォローアップを予定している重要な項目には、以下が含まれている。福島第一にお ける臨界管理、ラインによる監視あるいは確認作業を含む学習、作業管理、協力企業 の管理、組織の変更管理、安全に関する職位に異動・任命される人員の能力管理。 3.2 原子力安全監視室の今後の活動計画 原子力安全監視室は今後 1 年間の活動計画をまとめた。主な評価対象は以下のとお りである。 福島第一:安全文化、作業管理、ハザードへの対応策(新規制対応、緊急時対応)、 3 号機の使用済み燃料取り出し、凍土壁の建設、炉心冷却の改善を含むプ ロジェクトの安全管理 柏崎刈羽:安全強化対策 (6、7 号機、その後 1、5 号機)、保全、安全に関する運 転員の訓練、緊急時対応、安全文化、原子力安全改革プランの実施 福島第二:作業管理、緊急時対応、冷温停止中の安全 本店:原子力安全改革プランの実施、安全文化、WANO - Corporate Peer Review、 協力企業の管理、ガバナンス 4 3.3 原子力安全監視室の自己評価 原子力安全監視室は WANO PO&C に照らして自己評価を実施したほか、原子力安 全タスクフォースによる外部評価を仰いだ。発足から日の浅い部署として当然ながら、 現在のパフォーマンスと PO&C に示された世界トップレベルの監視機能にはギャップ がある(トレーニング、品質保証、原子炉主任技術者の役割、対応状況のフォローア ップ、上申プロセス等) 。アクションプランを策定し、改善に努めていく。 3.4 安全に関する監視結果の一覧表 原子力安全監視室はプラント、プロセス、文化ガバナンス等に関する監視結果を色 分けして示している。(青=世界トップクラス、緑=良好、黄色=要改善、赤=問題あ り)。一覧表は四半期に一度見直しており、本店各部門(原子力立地本部、廃炉推進カ ンパニー)とサイトごとに、安全に関するプロセスあるいは PO&C 等の基準に照らし て評価している。一覧表によって安全に関するパフォーマンスを視覚的にとらえるこ とが可能になり、マネージャーが対策の必要な分野を、原子力安全監視室が評価の必 要な分野をそれぞれ確認するのに役立つ。色分けは主観に基づいており、信頼性は評 価結果のデータベースが蓄積されるのにつれて高まっていく。原子力安全監視室は過 去 1 年にわたりデータの収集に取り組んできたことから、一覧表は有用な情報となり つつある。 5