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生体機能解析学

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生体機能解析学
薬学専攻
分
野
別
研
究
内
容
生体機能解析学
教 授:金子
周司 准教授:白川 久志
研究概要
現在使用されている「薬」は、受容体(45%)をター
ゲットとしているものが最も多く、続いて酵素(28%)
となっており、イオンチャネル・トランスポータなどの
膜輸送タンパク質に作用する薬は全体の5%と割合こそ
低いものの、作用が強力で切れが良く実際によく使われ
ている薬が多いことが特徴です。一方、ヒトゲノムの中
に薬の作用点となりうるタンパク質はある推計によると
6650種類、その内訳は受容体が3割、酵素が5割、そし
て膜輸送タンパク質は15%もあり(下図)、これは膜輸
送タンパク質が創薬標的として大いに開拓の余地が残さ
れている生体分子であることを示しています。そこで生
体機能解析学分野では「膜輸送タンパク質」をキーワー
ドに、特に中枢神経系に存在するイオンチャネル・トラ
ンスポータに焦点をあて、様々な研究を展開していま
す。
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Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kyoto University
1)脳血管疾患の病態に関与するTRPチャネルに関する
研究
脳梗塞や脳出血を含む脳血管疾患は、過剰な神経伝達
物質の遊離や活性酸素種の発生、過剰な炎症性応答によ
って神経細胞死や異常なグリア細胞の活性化が引き起こ
され、結果として重度の脳機能障害が起こる病気です。
TRP(transient receptor potential)チャネルは細胞内外
の様々な物理化学要因(熱、浸透圧、酸化還元状態、膜
脂質成分)によって開口が制御される非特異的カチオン
チャネルファミリーであり、感覚受容のシグナル伝達を
担うことが明らかになっていますが、近年ではグリア細
胞や免疫細胞などの非興奮性細胞においても細胞機能の
発現に重要な役割を果たしていると想定されています。
そこで本分野では、脳血管疾患の病態に関与するグリア
細胞の異常活性化に着目し、トロンビンによるアストロ
サイト活性化におけるTRPC3の病態生理的役割について
解析してきました(右図)。現在は、ミクログリアやオ
リゴデンロサイトも含めたグリア細胞機能におけるTRP
チャネルの役割について、遺伝子改変動物も用いながら
病態モデルを作製して研究を進めています。
2)慢性疼痛に関与するTRPチャネルおよびトランスポー
タに関する研究
感覚神経の傷害や周辺の炎症性病変によって惹起され
る慢性疼痛は、従来の鎮痛薬が奏功しない例も多く、そ
の成立や維持機構に関しては不明な点が多く残されてい
ます。本分野では、特にグリア細胞や免疫系細胞とニュ
ーロンとの間に起こる相互連関に着目して研究を進めて
おり、アストロサイトのグルタミン酸トランスポータ
GLT-1の役割や、単球/マクロファージおよびミクログ
リアに発現するTRPM2の役割(下図)について研究し
ています。また、オキサリプラチンなどの抗がん剤の重
大な副作用のひとつである末梢神経障害におけるTRPチ
ャネルの関与について解析を進めています。
3)抗うつ薬・依存性薬物の作用メカニズムに関する研
究
覚せい剤、麻薬性鎮痛薬、MDMAなどの新型麻薬な
どの依存性薬物、あるいはSSRI、SNRI、三環系抗うつ薬
といった抗うつ薬の慢性的作用機構に関して、中脳皮質
辺縁脳切片共培養系および縫線核含有中脳切片培養系を
用いて、それらの長期処置によりドパミン神経およびセ
ロトニン神経の活動亢進が生じることをin vitroで明ら
かにできるモデルを確立し、その詳細なメカニズムの解
明を進めています。
主要論文
●Munakata et al., Transient receptor potential canonical 3 inhibitor Pyr3 improves outcomes and attenuates
astrogliosis after intracerebral hemorrhage in mice. Stroke 44, 1981-1987 (2013)
●Nagayasu et al., Chronic effects of antidepressants on serotonin release in rat raphe slice cultures: high
potency of milnacipran in the augmentation of serotonin release. Int J Neuropsychopharmacol. 16, 2295-306
(2013)
●Zhao et al., Acute cold hypersensitivity characteristically induced by oxaliplatin is caused by the enhanced
responsiveness of TRPA1 in mice. Mol Pain. 8, 55 (2012)
●Haraguchi et al., TRPM2 contributes to inflammatory and neuropathic pain through the aggravation of
pronociceptive inflammatory responses in mice. J Neurosci. 32, 3931-3941 (2012)
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