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低層ウィンドシアとは? - TFOS.SG 航空運航システム研究会

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低層ウィンドシアとは? - TFOS.SG 航空運航システム研究会
TFOS平成22年度年次シンポジウム 平成22年11月27日
「ドップラーソーダの低層ウィンドシア監視の応用」
株式会社ソニック 伊藤芳樹
ー 目次 ー
1.低層ウィンドシアとは?
2.低層ウィンドシアが事故の主たる要因とされた事例
3.低層ウィンドシア測定用リモートセンシング装置 ドップラーソーダ、ドップラーライダ、ドップラーレーダ
4.ドップラーソーダシステムの概要
5.ドップラーソーダの低層ウィンドシア監視の応用
6.まとめ ドップラーソーダで何ができるか?
1.低層ウィンドシアとは?
ウインドシア :風速や風向きに急激な空間変化が起きる状態を指
す。シアとは「ずれ」を表す。
通常の大気の中でも起こりうるが、前線や低気圧、ジェット気流の
近くで多く見られる。
山岳、地表面の起伏、建造物などによって発生するシアもある。と
くに地表に近い低層(500m以下)大気で起きるものを低層ウインド
シアと呼ぶ。
離着陸時など高度数百メートル以下で遭遇した場合、事故やイン
シデントにつながる可能性がある。
2.低層ウィンドシアが事故の主たる要因とされた事例
事例1: キャセイ・パシフィック L1011
成田空港 ハードランディング
1990年3月24日 14時12分(日本時間)
成田空港 滑走路16へ着陸する際ハード・ランディング
第1燃料タンクから燃料が流出、緊急脱出時乗客2名が重傷
風向風速が大きく変動する横風の中を進入して、着陸のためのディクラブ操作を開始した
直後に、その直前に吹いていた強い真横の風が急減するとともに、一時的に追い風にな
るという変化に遭遇し、機長が適切な着陸操作を行うことができずハード・ランディングし
たことによるものと推定される。(航空事故調査報告書 92-2B)
事例1: キャセイ・パシフィック L1011
成田空港 ハードランディング
ミドル・マーカ(160ft)では横風20kt以下
120ftから50ftの間に、横風が約40ktに
増大
50ftから40ftの間に、風向が一時的に追
い風となり、風速が急減
風の縦方向成分が、1秒間に12kt減少
事例1: キャセイ・パシフィック L1011
成田空港 ハードランディング
風の上流側の窪地や複雑な地形の影響
急激な減少
滑走路端
インナーマーカ
ミドルマーカ
出典:AIRCRAFT ACCIDENT INVESTIGATION REPORT
事例2: 日本エアシステム DC-9
花巻空港 ハードランディング
1993年4月18日 12時44分(日本時間)
花巻空港に着陸する際ハードランディング、火災が発生し大破して停止
乗組員1名及び乗客2名、計3名が重傷
激しいウインド・シャーに遭遇したため、機体が急激に降下して、ハードランディングし、火
災が発生したことによるものと推定される。 (航空事故調査報告書 94-6 )
事例3: フェデックス MD-11
成田空港 ハードランディング
2009年3月23日 6時49分頃(日本時間)
成田空港に着陸する際ハードランディングし、爆発炎上
乗組員2名が死亡
調査中・・・
3.低層ウィンドシア測定用リモートセンシング装置
ウィンドシア検知装置
○機上装置
REACTIVE(反応型) 機体の速度、G等のパラメータ利用による検出
PREDICTIVE(予知型) 航空機搭載用ドップラーレーダ・ドップラーライダ
○地上装置
地上ベースのリモートセンシング装置 (ドップラーソーダ、ドップラーライダ、ドップラーレーダ)
3.低層ウィンドシア測定用リモートセンシング装置
ドップラーソーダ
ドップラーライダ
ドップラーレーダ
100m
50m
R
35°55°
50~100m
T-R
(Transmitter-Receiver)
特徴
数百メートルレンジスケールの鉛直シアや乱流を捉え 10kmレンジスケールのCAT、水平シアを捉えるのに適 100kmレンジスケールの降雨領域、水平シアを捉え
るのに適している
している
るのに適している
長所
(1)空間の一点狙いが可能
(1)測定距離レンジが広い(数km~10km)
(2)瞬時風速の測定が可能(バイスタ・・・数秒間隔 (2)水平空間分解能が良い(ビームがシャープ)
(3)気温構造(逆転層など)の監視ができる
(4)全天候型(強雨を除く)の観測ができる
(5)保守が容易
欠点
(1)測定レンジが短距離(約500m以内)
(2)上空を通過する航空機騒音の影響受ける
(3)音を出す
(4)強雨の場合は測定高度が低下する
(5)高層建物近傍では反射の影響有り
(1)エエロゾルが存在する晴天時のみの稼動
(1)降水粒子のある領域のみ観測可能
(2)雲・霧・背景光などの影響を受ける、雲補正要 (2)設備が大掛かりで高額である
(3)瞬時風速やその高度分布を測定対象とせず (3)瞬時風速やその高度分布を測定対象とせず
(4)光軸など光部品の調整・保守が微妙で難しい
(5)保守・耐久性、対候性がやや弱い
消費電力
200W以下
20~200m(低層用)
200~400m(上層用)
1kW以上
測定距離レンジ
空間分解能
レンジ
水平
価格
消費電力
設置の容易さ
可搬性
装置簡便性・保守性
測定可能レンジ
高度分解能
風速レンジ
5~10m(低層用)、10~20m(上層用)
20m at 100m
◎(1000~3000万円)
◎(200W 以下)
○
○
○(年1回の定期点検程度)
△(MAX500m)
○(10~20m)
△(0~40m/s)
(1)測定距離レンジ範囲が広い(~100km)
(2)気象擾乱がマクロに捉えられる
100kW以上
400m~10km
500m~100km
60m
1m以下 at 100m
△(2億円~)
○(1kW ~)
○
△
△
○〈400~10km)
△(60m)
○(0~60m/s)
100m
×(7~10億円)
×(100kW ~)
△
×
△
◎(500m~100km)
×(100m)
○(0~60m/s)
中部航空地方気象台 (ドップラーレーダ画像)
東京航空地方気象台 (ドップラーライダ画像)
過去の研究報告
空港周辺の
空港周辺の低層ウィンドシヤー
低層ウィンドシヤー予知方法
ウィンドシヤー予知方法に
予知方法に関する調査
する調査・
調査・研究報告書 (平成13年7月 (財)航空輸送技術研究センター)
(ドップラーソーダ観測事例)
過去の研究報告
空港周辺の
空港周辺の低層ウィンドシヤー
低層ウィンドシヤー予知方法
ウィンドシヤー予知方法に
予知方法に関する調査
する調査・
調査・研究報告書 (平成13年7月 (財)航空輸送技術研究センター)
概要
低層ウィンドシヤー観測に対するリモートセンシング器材として最も有効的と判断され
るドップラーソーダ(モノスタティック方式)の有用性の検証を行った(JAS・花巻空港⇒
大分空港)
結論
①低高度(数百ft以下)のデータは、かなりの確率で取得可能であった ②ドップラーソーダによる観測データと航空機の運動(揺れ)の相関は認められた
課題
(1)大気の状態や周辺環境によりデータ取得高度が低下する (2)設置直上の気流しか観測できない (3)観測する場の平均的な状態を表すことは出来るが、細かい気流の乱れは観測で
きない
⇒今回のバイスタティック方式の採用により、課題(3)は解決でき、(1)は軽減される
4.ドップラーソーダシステムの概要
空港用
一般気象観測用
移動調査用
長所
短所
測定高度レンジ
空間分解能
レンジ
水平
データ取得率 at 100m
タワー一致度(平坦)
データ平均化時間
地上の一点設置
設置が簡単
音が出る
30~500m
20m
20m at 100m
90%以上
R=0.95程度
1分以上
バイスタ
上空の一点狙いの測定ができる
(非均一な上空の風の場の瞬時値測定可)
強い散乱信号が得られる
(高いS/N比が得られる)
音が出る(モノスタより音漏れは低減する)
50~200m
10m
10m at 100m
95%以上
R=0.95以上
3秒以上
Echo intensity of bi-static sodar
14
12
r e la t iv e e c h o in t e n n s it y
( P r ( θ ) / P r (1 8 0 ))
モノスタ・フェーズドアレイ
10
8
Pr
mono-static
6
4
bi-static: scattering angle
2
0
80
100
120
140
160
scattering angle (θ)
180
200
sodar
[m/s]
20
無降水時
降水時(
降水時 ( 1mm未満
mm 未満)
未満 )
降水時(
降水時 ( 1mm以上
mm 以上)
以上 )
15
10
y = 1.05x
r = 0.96
N = 1929
5
tower
0
0
5
10
15
[m/s]
20
風速相関図(
)
風速相関図(高度100m)
高度
ドップラーソーダとタワー観測の
風速比較
時系列比較(
)→
時系列比較(高度25~
高度 ~200m)
5.ドップラーソーダの低層ウィンドシア監視の応用
東京都重点戦略プロジェクト支援事業(平成21年度) http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/shoko/sogyo/juutenPC.html
機器仕様
200m
風速レンジ 0~40m/s
風速精度 0.2m/s
風向精度 3deg
高度分解能 10m
50m
高度レンジ 50~200m
T-R
80~100m
R
R
滑走路
滑走路両端に低層ウィンドシア監視用
の音響リモートセンシング装置を設置
5.ドップラーソーダの低層ウィンドシア監視の応用
東京都重点戦略プロジェクト支援事業(平成21年度) http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/shoko/sogyo/juutenPC.html
目的
機器仕様
200m
風速レンジ 0~40m/s
風速精度 0.2m/s
風向精度 3deg
高度分解能 10m
50m
高度レンジ 50~200m
T-R
各空港の監視
領域に 対応
80~100m
R
R
滑走路
滑走路両端に低層ウィンドシア監視用
の音響リモートセンシング装置を設置
低層乱流による航空機運航のリス
クを低減し、着陸時の安全性向上
にとって重要な50m~200m高度レ
ンジの風速(乱流、シアの高度分
布を含む)を監視する装置を開発
する。時々刻々変化する気流の変
化を地上から音波を用いてリモー
トセンシングし、局所的ではある
が実時間で気流の3次元成分(進
行方向、横風、鉛直流)を精度良
く観測し、実観測に基づいたウィ
ンドシア情報を提供するシステム
の構築を目指す。
音響アレイアンテナ
気流分布監視
(バイスタ配置)
表示モニター
シア検出
サーバー
警報出力
TR
制御装置
R
LAN
管制参考
情報
R
滑走路
課題
滑走路周辺数ヶ所
のアンテナへ
ウィンドシア監視装置の全体イメージ図
警報の出し
方、情報の
流し方
空港用ドップラーソーダ
空港用ドップラーソーダ仕様
ドップラーソーダ仕様
項目
風速レンジ
風速演算精度
風向演算精度
表示分解能
〃
〃
測定対象高度
アンテナ間ベースライン距離(B)
測定高度分解能
測定高度数
アンテナ間高度補正(ΔH)
逆転層探知
周波数(F0)
パルス繰り返し
平均化時間
ビーム幅
アレイ素子数
アレイ構成
素子
消費電力
電源
伝送
空港用ドップラーソーダ
0~40m/s
0.2m/s または 風速の5%
3°
0.1m/s(水平風速)
0.01m/s(鉛直風速)
1°(風向)
50~200m →各空港の監視領域に対応
50~200m
10m
10高度以上
±5m
Bスコープ画像
2.1kHz±1KHz
3秒~
3秒以上
20°
16×16
行列切り替え
防滴型ピエゾ素子音響変換器
連続150W以下
DC(AC可)
有線
200m
ビームスキャンニング
F6=200m
ビームスキャンニング
F5=160m
アレイアンテナで鉛直ビームより送信。単一周波
数または周波数を変えることにより(図では
F1~F6の6周波)、受信ビーム傾斜角を変え
て50~200m高度を弁別して受信する。高度
分解能は5~10m。送受信は16×16アレイを
使用。高度角を持った狭角ビームは受波信
号のアレイ間の時間差サンプリングにて合成。 F4=130m
F3=100m
F2=70m
F1=50m
150 cm
50m
R
(フェーズドアレイ受波器)
R
34°53°
L1(100m)
L2(100m)
R16×16アレイ
T-R フェーズドアレイ送受波器
L2(100 m)
L1(100m)
T-R
F1 F2 F3 F4 F5 F6
送信信号
(立面)
進入路
T-R
滑走路
T-R
(1km)
A
R
(平面)
T-R
(1km)
R
B
80~100m
TR
80~100m
TR
滑走路
R
1500~3000m
ウィンドシア監視装置のアンテナ配置図
R
(滑走路両端と進入路への配置例)
低層ウィンドシア
低層ウィンドシアに
するマーケット調査結果
ウィンドシアに関するマーケット
マーケット調査結果
1.風情報としては滑走路上空よりも進入路(角度3°)の風情報(航路プロファイリング)が 欲しい。滑走路端から3~5kmに3~4ヶ所必要。1600フィート以下の高度の風情報が 対象となる。500フィート以下が特に重要である。
2.島嶼部の空港は海上と滑走路上と風が大きく食い違うことがあり、滑走路も短く要 注意度が高い。
3.空港によって発生しやすい場所“乱流の名所”が存在する
4.航空機の安全運航と経済性(運行効率向上)のためにウィンドシアの監視とともに 航空機の後方乱気流の監視が重要である。
5.情報伝達の仕方について検討を要する(生データ、パラメータ化されたデータ、アラー
ト)。
6.低層ウィンドシア(地形性、気象要因)を監視したいが、レーダ(雨雪用)とライダ (晴天用)合わせても取得率は高くない。分解能の改善余地あり。
7.次世代運航システムDREAMS(①後方乱気流の運航支援、②空港周辺のウィンドシ ア予測システム)に組み込めないか。
ドップラソーダの特長と課題事項
(1) 今回開発する装置(バイスタティック型フェーズドアレイドップラーソーダ)の優位性は何か?
・全天候型である
・低層(500フィート以下)の鉛直ウインドシア検出に有効
→ライダ、レーダは水平シアを大局視。本機は局所的だが精度の高い観測可能 ・ライダやレーダに比べて安価なため地方や島嶼空港への導入が可能
→ライダ(4ヶ所)、レーダ(9ヶ所)(数億円/ヶ所)に対し、本装置は3千万円以下で構築可能。
・大空港では補完的に利用してランウェイチェンジ等の精度向上に活用
(2) ウインドシアを検出した場合の警報の出し方、情報の提供方法について要検討
(3) 最終進入コース上、滑走路端から3~5km、高度1600フィートくらいまでの風情報が対象
→空港によって発生しやすい場所“乱流の名所”をピンポイントで監視
(4)地形性、地上構造物など気象要因以外の(小スケール)乱流を検出できる
(5)警報化のための予測情報提供の可能性(気象庁MSM 、ドップラーライダ・レーダとの併用)
今後の
年度)
今後の計画(
計画(H23年度
年度)
1.フィールド評価
(1)装置の測風性能について、気象観測タワーの風速計や低層ゾンデ、ドップラー
ライダー、航空機など既存の観測装置との比較評価を行う
(2)精度、性能限界(気象条件、測得率、設置環境、応答速度など)の把握
2.飛行場での実評価
(1)飛行場の航空機騒音の中での装置性能(データ測得率など)の評価
(2)飛行場の無線雑音などの影響評価
am
Be
200 m F6=200m
ng
ni
an
sc
F5=160m
F4=130m
ゾンデ
航空機観測
F3=100m
地上高50m
F2=70m
F1=50m
40m
50m
R
30m
R
35°55°
係留気球
L2(100m)
L1(100m)
T-R ドップラーソーダー
ドップラーライダー
地上観測塔
5.まとめ
ドップラーソーダで何ができるか?
局地前線
島嶼部空港
山岳波、おろし風
下層ジェッ
ト
ハンガーによる乱気流/乱流
構造物による乱気流/
乱流
地形性の乱気流/乱
流
検出できる
検出できる気象現象
できる気象現象
○
ドップラーソーダ
さらに・・・
さらに・・・
突風前線(
突風前線(ガストフロント)/
ガストフロント)/ダウンバースト
)/ダウンバースト
○低層の
低層の鉛直下降流
○
山岳波、
山岳波、おろし風
おろし風
○鉛直風速分布の
鉛直風速分布の特異点(
特異点(特異高度)
特異高度)の検出
○
下層ジェット
下層ジェット
○接地逆転層の
接地逆転層の検出、
検出、生成・
生成・崩壊過程の
崩壊過程の監視
○
局地前線
○ 地形性の
地形性の乱気流/
乱気流/乱流
○
構造物による
構造物による乱気流
による乱気流/
乱気流/乱流
→気象庁MSM、
、ドップ
気象庁
ップラーレーダ・
ラーレーダ・ライタ
゙・ライダ
ライダ等と組み合わせて
3D気流
気流モニタリンク
気流モニタリング
モニタリング表示、
表示、パラメータデ
ラメータデータ、
ータ、アラート出力
アラート出力
Fly UP