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福島第一原子力発電所事故後の線量率モニタリング

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福島第一原子力発電所事故後の線量率モニタリング
放地研特別寄稿シリーズ
SCS-0076
福島第一原子力発電所事故後の線量率モニタリング
(第3報)
Dose rate monitoring after the accident of
Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant – Part 3
鈴
木
敬
一
川崎地質株式会社
Keiichi SUZUKI, Kawasaki Geological Engineering, Co., LTD.
放射線地学研究所、名古屋
2011
福島第一原子力発電所事故後の線量率モニタリング(第3報)
Dose rate monitoring after the accident of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant – Part3
川崎地質株式会社
鈴木敬一
Keiichi SUZUKI, Kawasaki Geological Engineering, Co., LTD.
要旨
福島第一原子力発電所の放射能漏れ事故から 3 ヶ月以上が経過した。首都圏でも放射線
に対する様々な不安が広がっている。文部科学省や自治体でもモニタリングポストを設け,
測定値を公開している。しかし,設置場所によって測定値が異なることが問題とされてい
る。筆者は,原発の事故以来,放射線量率のモニタリングを行ってきた。それらは全て地
表より約 1m で測定した値であり,同列で比較することができる。一方,報道などでは様々
なデータが公開されているが,専門家によっても解釈が分かれ,混乱を生じている。
本稿では,今までのモニタリングデータに加え,広域の測定を行うことで,以下の知見
を得ることができた。
①
放射性物質が降下したのは事故発生直後がほとんどであり,現時点では降下物はほ
とんどないものと考えられる。
②
原発から離れるにつれて線量率が低くなるわけではなく,ホットスポットと呼ばれ
る局所的に線量率が高い場所が存在する。
③
狭い範囲においても線量率は場所によって大きく異なる。
これらのことから外部被曝量を正確に把握することは難しい。単純に一地点の線量率か
ら積算線量を計算するには注意を要する。
Abstract
Three months or more passed from a radiation leak accident of the Fukushima
Daiichi Nuclear Power Plant. Various anxieties for the radiation spread in the Tokyo
metropolitan area. The radiation data of the monitoring post is shown by Ministry of
Education, Culture, Sports, Science and Technology and the local government. However,
it is considered to be a problem that measurements vary according to a setting place. I
have monitored the emission dose rate since the accident of Fukushima Daiichi Nuclear
Power Plant. All of them are the values that I measured at approximately 1m from the
surface of the ground and can compare them similarly. On the other hand, various data
are shown by the news, but interpretation is divided by the expert and produces
confusion.
In this paper, I was able to get the following knowledge in addition to conventional
monitoring data by measuring the wide area.
-1-
① The radioactivity deposition was descended just after accident, but there
are few descent of the radioactivity deposition at present.
② Dose rate does not lower as leaving from the nuclear power plant, and the
high dose rate exists in locally called ‘hotspot’.
③ The dose rate varies according to a place greatly in the small area.
It is difficult to grasp an outside exposure dose from the mention above. We need
attention to calculate a multiplication dose of radioactivity from a dose rate of one spot
and once.
1.はじめに
福島第一原子力発電所(以下,単に「原発」と表記)の放射能漏れ事故から約 3 ヶ月が
経過した。未だ収束の目処は立っていない。首都圏においても放射能についての不安が広
がっている。専門家といわれる人が入れ替わり立ち代りテレビ画面に登場するが,わかり
にくい上に編集されているため,放映されたコメントだけでは,真意が伝わりにくいだけ
でなく,誤解を与えるような表現が散見される。例えば,雨が降ると放射線量が増える,
雨には放射性物質が含まれているので雨には当たらないほうが良い,風が吹くと原発から
放射性物質が飛来する,原発から遠ければ線量も低い,などである。
一方,モニタリングポストといわれる文部科学省や地方自治体の放射線量のモニタリン
グデータについては,高い建物の上にあるため,地表付近の値を代表していない,すなわ
ち実際に我々が被曝している放射線量を反映していないのではないかという指摘がある。
筆者はこれまで放射線地学ノートに 2 回の報告を行っている(SCS-0072 及び SCS-0074)。
その後,東京都墨田区内の同一地点でのモニタリングを継続して行っている。はじめにそ
れらのデータについて,天候(雨及び風)との関係を考察する。
次に,事故前と事故後の放射線量を比較する。事故前のデータとしては,筆者が既に河
川敷・橋梁中央部・公園で測定を行っていたため,比較することが可能である。
これまでの全てのデータは,直立したときの腰から胸の高さ,すなわち地表面から 1m 程
度におけるデータである。SCS-0072 及び SCS-0074 で参照した東京及び群馬のモニタリン
グポストの測定値は,東京は 18m,群馬では 21m の高さにある。モニタリングポストに設
置された線量計は,元来は過去に行われた核実験の人工放射性降下物をモニタリングする
ため(SCS-0074 の図8)に設置されたという。
地表からの距離があるため地表付近の測定値とは大きく乖離するのではないかという指
摘がある。地表付近が実際にどうなっているのか,気になるところである。それを検証す
るために鉄筋コンクリート造りのビル(マンションとオフィスビル)で非常階段の各階で
測定を行った。さらに線量率測定を広範囲において行い,原発からの距離や様々な条件に
よる局所的な線量率の相違,あるいは地形による効果などについて検討した。
-2-
2.線量率モニタリング結果
東京都墨田区の自宅前にて 3 月 15 日から 6 月 13 日までに測定した屋外と室内の線量率
を図1に示す。線量率の変化は雨や風によって変化するといわれている。気象庁のホーム
ページから最も近い観測点(東京)のデータを参照し,降水量 1mm/日超(青字・青矢印)
と最大瞬間風速が概ね 15m/s 以上(橙字・橙矢印)を示した(特に大雨は矢印を太く,雨
風が特に激しいところは赤矢印で表記)。
最初に水素爆発が発生してから,3 月 16 日と 17 日にはそれぞれ 21.9m/s,18.2m/s の強
風が観測されている。放出された放射性物質は,この強風により短時間で吹き飛ばされた
と考えられる。その後,3 月 21 日未明より開始した原子炉建屋への放水により,水蒸気に
乗って拡散した放射性物質は 22 日・23 日の雨(20mm と 13mm)により地表に降下した
と考えられる。その後放射性物質は徐々に減っている。
放射性物質が降下した後,3 月 25 日から 26 日にかけて強風が吹いた。その後も強風が
吹くと若干の線量率の低下が確認できる。
一方,雨による線量率の変化についてみてみると,例えば 4 月 23 日の 54mm/日,5 月
29 日の 69.5mm/日においても線量率の増加は確認できない。その他の降雨時においても同
様である。
以上のことから,次のことがわかる。
① 降雨により大量の放射性物質が地表に降下したのは 3 月 21 日が最も多い。
② その後,大量の放射性物質の降下はないものと考えられる。
③ 大量の降雨によって線量率が大きく増加することはない。従って,雨のたびに放
射性物質が降下することはないものと考えられる。
④ 雨よりも風による線量率の変化が大きく,強風時には線量率が低下する。
⑤ 強風がおさまると線量率は元の値に戻る。
強風による線量率の低下は図2に示すように風で放射性物質が拡散し,地表付近では相
対的に放射性物質の濃度が低下するためと考えられる。風が止むと再び放射性物質は地表
付近に降下し,元の線量率に戻る。
3 月 21 日の線量率の増加以降,線量は徐々に低下しており,放射性物質が新たに大量に
降下した可能性はないものと考えられる。5 月 9~10 日にかけて若干の線量率の増加が確認
できる。この日は南の風を最大 13.5m/s 観測している。原発からの放射能漏れなどの報道
はなされていない。原発方向からではなく,一度南方に沈降した放射性物質が再び飛来し
たのかもしれない。
-3-
20
21.9
屋外 Outdoor
室内 Indoor
15.4
12
16.1 17.4
19.9
18.2
0.3
19.6
15.9
13
0.4
17.9
15.8
0.2
0.1
4/14
4/12
4/10
4/8
4/6
4/4
4/2
3/31
3/29
3/27
3/25
3/23
3/21
3/19
3/17
0.0
3/15
線量率 Dose rate (μSv/h)
東京都墨田区 Sumida-ku, Tokyo
0.5
日付 Date
2
0.40
2
54
0.30
屋外 Outdoor
室内 Indoor
6
4
20.1
23
21
35
15.5
22.2
0.20
16.4
0.10
5/15
5/13
5/11
5/9
5/7
5/5
5/3
5/1
4/27
4/25
4/23
4/21
4/19
4/17
4/29
20.4
0.00
4/15
線量率 Dose rate (μSv/h)
東京都墨田区 Sumida-ku, Tokyo
0.50
日付 Date
0.40
0.30
0.20
7
3.5
14
24
13.5
屋外 Outdoor
室内 Indoor
5.5
69.5
20.5
14.5
35.5
3
10
29.5
0.10
6/14
6/12
6/10
6/8
6/6
6/4
6/2
5/29
5/27
5/25
5/23
5/21
5/19
5/17
5/31
17.7m
0.00
5/15
線量率 Dose rate (μSv/h)
東京都墨田区 Sumida-ku, Tokyo
0.50
日付 Date
図1
東京都墨田区における屋外と室内のモニタリング結果
(2011 年 3 月 15 日~6月 13 日)
Fig.1
Monitoring result of outdoor and indoor from 15 Mar. to 13 June at Sumida-ku,
Tokyo.
-4-
無風
強風
地表
図2
Fig.2
地表
無風時と強風時との放射性物質の拡散状況の違い
Difference in radiological diffusion with a calm and a strong wind.
東京都新宿区と群馬県前橋市のモニタリングポストのデータを図3に示す。東京都墨田
区の屋外の値も併記した。4 月中旬から線量率の変化はほとんどない。新宿区と前橋市のモ
ニタリングポストは地表から離れているため,地表付近の変化が小さく現れたものと考え
られる。雨や風による変化も墨田区における変化に比べて小さい。
図3の時間軸を圧縮し,放射性ヨウ素 131 の半減期(8.02 日)の曲線を追加したグラフ
を図4に示す。初期値は 3 月 23 日の値を用いている。図 1 に示したように,放射性物質の
供給が,3 月 23 日以降ほとんどないとすれば,図 4 から放射性ヨウ素 131 は,5 月末の時
点でほとんどなくなっていると考えられる。第 2 報 SCS-0074 で報告したとおり,放射性
セシウム 134 または 137 が残留していると考えられる。
-5-
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.5
群馬県前橋市 Maebashi-shi, Gumma
東京都新宿区 Shinjuku-ku, Tokyo
0.4
東京都墨田区 Sumida-ku, Tokyo
0.3
0.2
0.1
4/14
4/12
4/10
4/8
4/6
4/4
4/2
3/31
3/29
3/27
3/25
3/23
3/21
3/19
3/17
3/15
0
日付 Date
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.5
群馬県前橋市 Maebashi-shi, Gumma
東京都新宿区 Shinjuku-ku, Tokyo
0.4
東京都墨田区 Sumida-ku, Tokyo
0.3
0.2
0.1
5/15
5/13
5/11
5/9
5/7
5/5
5/3
5/1
4/29
4/27
4/25
4/23
4/21
4/19
4/17
4/15
0
日付 Date
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.5
群馬県前橋市 Maebashi-shi, Gumma
東京都新宿区 Shinjuku-ku, Tokyo
0.4
東京都墨田区 Sumida-ku, Tokyo
0.3
0.2
0.1
6/14
6/12
6/10
6/8
6/6
6/4
6/2
5/31
5/29
5/27
5/25
5/23
5/21
5/19
5/17
5/15
0
日付 Date
図3
Fig.3
東京と群馬のモニタリングと墨田区の屋外データの比較
Comparison with dose rate of Sumida-ku, Shinjuku-ku (Tokyo Metropolitan)
and Maebashi-shi (Gumma prefecture).
-6-
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.5
群馬県前橋市 Maebashi-shi, Gumma
東京都新宿区 Shinjuku-ku, Tokyo
東京都墨田区 Sumida-ku, Tokyo
群馬半減期 Half-life, Gumma
新宿半減期Half-life, Shinjuku
墨田半減期 Half-life, Sumida
0.4
0.3
0.2
0.1
5/24
5/19
5/14
5/9
5/4
4/29
4/24
4/19
4/14
4/9
4/4
3/30
3/25
3/20
3/15
0
日付 Date
図4
東京と群馬のモニタリングと墨田区の屋外データに放射線ヨウ素 131 の半減期曲線
を加筆
Fig.4
Comparison with dose rate of Sumida-ku, Shinjuku-ku (Tokyo Metropolitan)
and Maebashi-shi (Gumma prefecture) with the half-life curves of radioactive
iodine 131.
3.事故前後の測定結果
筆者は,湊(2006)を読んで,地表γ線の線量率分布が,地質構造を高い相関性があること
に驚愕し,自分でも測定してみたいと考えてきた。偶然にも湊氏からマイレートを譲り受
けることができ,2008 年から身の回りで測定を行ってきた。中でも荒川河川敷の右岸と隅
田川の橋梁中央部,近所の公園あるいは勤務しているビルのエレベータホールなどの比較
的そろったデータがあった。そこで,原発事故後に同じ場所で測ってみて,その差を調べ
ることにした。
(1)河川敷における測定結果
隅田川と荒川の分岐する岩淵水門から下流の,荒川右岸の河川敷のキロポスト(河口か
らの距離)がある場所で測定を行った。その結果を図5に示す。事故前の値は 2009 年のも
のである。キロポストにマイナスがあるのは本来の河口から埋立地が延伸したためである。
事故前は,0.05μSv/h 以下の線量率であるが,2011 年 5 月では高いところで 0.3μSv/h
近くまで増えていることがわかる。
河川敷で放射線量率にばらつきがあり,比較的高い値を示す理由は次のとおりと考えら
れる。
河川敷の利用方法は様々であり測定場所についても,自転車用道路のアスファルト舗装,
あるいは運動場の芝,放置されて背丈以上に雑草が伸びた場所もある。放射性物質は塵に
付着して飛来するといわれている。放射性物質が付着した塵は,地表面や草の繊毛などの
微細な凹部に留まる。植生のあるところは,アスファルトと比べると表面積も大きい。従
-7-
って,表面の状態により,放射性物質の沈着状況が異なり,その結果放射線量率が場所に
よって大きく異なると考えられる。
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.40
2009
2011
0.30
0.20
0.10
岩淵水門
20k
19k
18k
17k
16k
15k
14k
13k
12k
11k
10k
9k
8k
7k
6k
5k
4k
3k
2k
1k
0k
-0.6k
0.00
位置(キロポスト) Location(Mile stone)
図5
Fig.5
荒川右岸河川敷における事故前後の測定値の比較
Comparison of the dose rate before and after the accident in the Arakawa right
bank riverbed.
これをさらに検証するため,原発事故後に福島県いわき市小名浜地区の藤原川右岸河川
敷において,堤防を横断する測線で線量率の測定を行った。図6にその結果を示す。河川
敷の幅は 30m 程度,提体の高さは 3m 程度である。A-K の距離は正確には測定していない
が,50~60m 程度である。
A・B 地点は 20cm 程度の低い草が茂っている場所である。アスファルトよりは高い値を
示す。A 地点は水面が直近にあり,大地からの自然放射線が水によってさえぎられているた
め,B 地点に比べて低い値を示す。アスファルト上では草の茂ったところより低い線量率を
示し,水たまりの有無による差はほとんどない。E・F 地点は背丈以上の草が茂っている堤
防の法尻及び堤防斜面中央であり,高い線量率を示す。表面積が大きいために,草の表面
に付着した放射性物質の影響を受けていると考えられる。さらに,背丈以上の草であるた
め,上方からの放射線も測定していると考えられる。堤防の上はアスファルト舗装になっ
ているため線量率は低下する。再び川裏側の堤防斜面においては,高い線量率を示す。川
裏側の法尻から約 10m 離れた場所では,顔を出すくらいの高さの草が茂っているが,線量
率は高いままである。
-8-
以上の議論をまとめると,
① アスファルトと草の茂っている場所とでは前者の方が線量率は低い。
② その理由は表面積が小さく,凹凸も少ないためと考えられる。
数十 m の狭い範囲においても,地表面の状態によって線量率が大きく異なることがわか
線量率 Dose rate (μSv/h)
る。
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
位置 Loacation
草
Grass
河川敷
茂み
Riverbed
Bush
A
B
C
D
↓
↓
↓
↓
図6
Fig.6
E
F
G
H
↓
↓
J
↓
↓
堤防
Levee
水たまり
アスファルト
Puddle
Asphalt
地表の条件が異なる場合の線量率測定結果
Dose rate by difference of the surface condition.
-9-
I↓
↓
K
↓
(2)橋梁中央部における測定結果
事故前に収集していたデータとして隅田川に架かる橋梁の中央部で測定したものがあっ
た。事故後に再び測定を行った値と同時に示した結果が図7である。旧綾瀬川に架かり,
隅田川に合流する地点に近い綾瀬橋と,神田川が隅田川に合流する地点に近い柳橋のデー
タも同時に記載してある。
事故前の線量率は元々低い。その理由は,大地からの自然放射線が水によってさえぎら
れているためである。事故後の線量率と比較すると,橋梁によるばらつきが大きいが,下
流ほど差が小さいように見える。平地ではほとんど風がないと感じられるときでも,河川
の中央部では思ったより風が強いこともあり,放射性物質が風に流されやすいのかもしれ
ない。
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.40
2008
2011
0.30
上流 Upper
下流 Lower
0.20
0.10
柳橋
両国橋
蔵前橋
厩橋
駒形橋
吾妻橋
言問橋
桜橋
白鬚橋
水神大橋
綾瀬橋
千住汐入
千住大橋
0.00
橋梁 Bridge
図7
Fig.7
隅田川橋梁中央部における事故前後の測定値の比較
Comparison of the dose rate before and after the accident in the Sumidagawa
River bridge central part.
- 10 -
(3)公園における測定結果
墨田区内の公園・児童遊園で測定した事故前のデータも存在した。差し障りを危惧して
具体的な公園・児童遊園名はここでは伏せることにする。測定はいずれも表面が,砂ある
いは土の場所である。図8にその結果を示す。事故前の線量率は 0.05μSv/h 程度であるが,
2011 年 5 月の測定では,いずれも 0.1μSv/h を超え,事故前の 2~3 倍程度になっている。
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.40
2009
2011
0.30
0.20
0.10
H公園
G児童遊園
F公園
E児童遊園
D児童遊園
C児童遊園
B児童遊園
A公園
0.00
公園・児童遊園 Square
図8
Fig.8
墨田区内の公園・児童遊園における事故前後の測定値の比較
Comparison of the dose rate before and after the accident in the squares in
Sumida-ku
- 11 -
(4)室内における測定結果
事故前に,川崎地質株式会社の本社ビルのエレベータホールで測定した結果も存在した。
図9にその結果を示す。1階のエレベータホールは,カコウ岩のタイルが張られているた
め,元々線量率が高い。酸性のカコウ岩は,塩基性岩に比べて,ウランや放射性カリウム
などが多く含まれていることが知られている。事故後のデータと比較すると,ほとんど同
じ値を示している。事故直後の値が無いので,その時点で通常より高い値を示したかどう
かは不明であるが,現時点では事故前と変わらないことがわかる。
9
8
2008.2.4
2011.5.26
7
階 Floor
6
5
4
3
2
1
0.00
0.05
0.10
0.15
線量率 Dose rate (μSv/h)
図9
Fig.9
東京都港区のオフィスビル内エレベータホールにおける事故前後の測定値の比較
Comparison of the dose rate before and after the accident in the elevator hall in
the office building of Minato-ku, Tokyo
- 12 -
4.測定高度効果
冒頭で述べたように文部科学省や自治体のモニタリングポストの値は,高いところにあ
るため,地表付近の線量率を反映していない可能性がある。そこで,墨田区のマンション
と港区のオフィスビル(図9と同じ)の非常階段(いずれも屋外)の各階において測定を
行った。
墨田区の測定値は 1 階のみ大きな値を示す。2 階は若干高い値であるが,3 階以上はほぼ
同じ値である。地表近くと 2 階以上では大きく値が異なり,地表から放射されるガンマ線
の影響が高さによって大きく変わることが確認された。
港区の値は,1 階から 10 階までほぼ同じ値である。現時点では,降下した放射性物質は
かなり減少したものと考えられる。
11
墨田区 Sumida-ku
10
港区 Minato-ku
9
階 Floor
8
7
6
5
4
3
2
1
0
図10
Fig.10
0.05
0.1
0.15
0.2
線量率 Dose rate (μSv/h)
東京都内のマンションとオフィスビル非常階段における測定値
Dose rate in emergency staircases of an apartment and a office building in
Tokyo.
- 13 -
5.広域の測定結果
(1)Radi の校正
株式会社堀場製作所のポケット線量率計 Radi を,代理店である EMF ジャパンの谷口社
長からお借りすることができた。Radi の詳細については EMF ジャパンのホームページに
カタログがある。ポケット線量率計が 2 台に増えたので,広域の線量率を測定することに
した。図1または図3のモニタリング結果から,5 月に入ってから放射線量率にほとんど変
化がなくなったことがわかったので,5 月初旬から広域の測定を始めた。従来から測定に使
用しているマイレートと比較するために,屋外・室内を問わず様々な場所で 343 回測定し,
校正係数を求めた。測定は,写真1に示すように左手の手のひらに載せて同時に測定を行
った。校正結果を図11に示す。
今までマイレートで測定を行ってきたため,マイレートにあわせることにする。図10
の結果から,
Radi の読み取り値を 91%にすればマイレートと同列に比較することができる。
これ以降に示す値は,Radi の値に校正係数をかけたものであり,両者の区別は特にしない。
写真1
Photo.1
マイレート(左)と Radi(右)
Pocket survey meter Myrate(left) and Radi(right).
- 14 -
200
y = 0.9131x
R2 = 0.9102
Myrate (μSv/h)
150
100
50
0
0
50
100
150
200
Radi (μSv/h)
図11
Fig.11
Myrate-Radi 変換用校正係数
Calibration coefficient from Radi to Myrate.
(2)地形効果
原発から飛来した放射性物質は,風に飛ばされてくるといわれているので,谷地形のと
ころに集まってくるのではないかと考え,2 つの測線で測定を行った。地形の効果を検討す
るための測線図を図12に示す。測線 A は標高の異なる場合,測線 B は標高があまり変わ
らない場合である。
測線 A の経路は以下の通りである。墨田区の言問通りの基点(建設中の東京スカイツリ
ーの足元)から言問通りを西進し,隅田川を渡る。鶯谷の崖を上り,旧石神井川の河道(不
忍通り)と交差(千代田線根津駅)
,さらに西進した後,本郷通りに至る。本郷通りを南下
した後,本郷三丁目駅から春日通りを東進し,再び隅田川を渡り,横川で北進し,基点に
至る。標高差は約 20m である。
測線 B の経路は,南千住駅近くの,はなみずき通りの基点から,南東方向に進み,隅田
川を渡る。さらに旧中川を越え,国道 14 号線(京葉道路)に至る測線である。いわゆるゼ
ロメートル地帯であり,標高差はほとんどない。
図13に測線 A の結果を示す。赤丸で示した極端に低い値は,隅田川にかかる橋の上で
ある。地表からの放射線が河川の水で遮蔽されていること,平地よりは風が強いため放射
性物質の滞留が少ないこと,この 2 点から放射線量率が低くなっていると考えられる。そ
れ以外の値については,標高と線量率との間に負の相関関係があるように見えるが明瞭で
はない。
図14に測線 B の結果を示す。水平距離に対してプロットしている。標高差がほとんど
ないにもかかわらず線量率の変化が大きくなっている。この変化は測線 A より大きい。
- 15 -
Okm
測線 B
測線 A
Line B
Line A
6km
図12
Fig.12
地形効果検討のための測線配置
Configuration for the examination of the topographic effect.
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.20
0.15
0.10
y = -0.0006x + 0.1337
R2 = 0.1254
0.05
0.00
0
5
10
15
標高 Altitude (m)
図13
標高に対する線量率測定結果
Fig.13
Dose rate versus elevation.
- 16 -
20
25
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.25
0.20
0.15
覆工板
0.10
Covering steel plate
橋 Bridge
0.05
0.00
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
水平距離 Horizontal distance (km)
図14
Fig.14
標高がほとんど変化しない測線に対する線量率測定結果
Dose rate versus horizontal distance of the measurement line where altitude
hardly changes.
図14の測定値のうち,赤丸は隅田川に架かる橋の上,青丸はシールド工事の立坑の覆
工板(鋼板)の上である。それらの値が小さい理由は,地下からの自然放射線寄与が少な
いためである。
以上の結果から,明瞭な地形効果は確認できなかった。
- 17 -
(3)国道6号線沿いのプロファイル
台東区浅草から千葉県柏市にかけての国道 6 号線(水戸街道)沿いで測定を行った結果
を図15に示す。図の左が浅草,右が柏市である。矢印は川を示している。橋梁の中央部
は図7に示したのと同様に,いずれの川でも低くなっている。A-B 間,B-C 間,C-D 間で
川を挟んで,段階的に線量率が増加しているように見える。川が風の通り道になっている
0.5
0.4
D
C
B
A
0.3
0.2
0.1
呼塚交差点
旭町交番前
野田線跨線橋上
日本閣前横断歩道
旧日光街道入口交差
根木内交差点
北部市場交差点
上本郷交差点
馬橋駅入口交差点
七畝割交差点
新葛飾橋東詰
新葛飾橋中央
新葛飾橋南分岐
金町三丁目交差点
金町一丁目交差点
中川大橋中央
中川大橋東交差点
青戸八丁目
白鳥交差点
曳舟川分岐
立石五丁目交差点
四ツ木橋中央
四ツ木橋南詰
コモディイイダ前
東向島広小路交差点
言問橋東詰
言問通り交差点
言問橋中央
言問橋西詰
0.0
馬道交差点
線量率 Dose rate (μSv/h)
ため,一度降下した放射性物質が,川を越えて移動することは少ないと考えられる。
測定地点 Location
A:隅田川(Sumidagawa river),B:荒川(Arakawa river)
C:中川(Nakagawa river),D:江戸川(Edogawa river)
図15
国道6号線沿いの線量率プロファイル
Fig.15
Dose rate profile along Route 6.
(5)距離減衰効果
距離減衰効果を調べるために,原発からの距離に対する線量率を図16に示す。5月以
降は,原発からの距離とは関係なくなっている。A の福島市はいわき市より遠いが,線量率
が高い。原発からの距離が福島市とあまり違わない,いわき市内のデータは場所によるば
らつきが大きい。矢板市,水戸市,仙台市の 3 市を比べると原発から近い仙台が最も線量率が
低くなっている。300km 以上離れたところでは,現時点ではバックグラウンドに近い値と
考えられる。440km と 600km の 2 点は少し値が高い。この 2 点はカコウ岩地帯であるた
めと考えられる。
注目すべきは,距離 200km 付近のピークである。ここは千葉県柏市付近であり,報道な
どでも伝えられている,いわゆるホットスポットである。
図16には室内の値も同時に示した。線量率の高い地域でも,室内では半分程度まで線
量率が低下している。
- 18 -
線量率 Dose rate (μSv/h)
0.6
A
屋外 Outdoor
屋内 Indoor
0.5
B
0.4
C
0.3
D
0.2
0.1
E
0.0
0
100
200
300
400
500
600
700
距離 Distance (km)
A:福島市(Fukusima-shi),B:いわき市(Iwaki-shi),C:矢板市(Yaita-shi),
D:水戸市(Mito-shi),E:仙台市(Sendai-shi)
図16
Fig.16
福島第一原子力発電所からの距離に対する線量率
Dose rate versus distance from Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant.
検出されたホットスポットについて考察する。テレビなどの報道ではホットスポットの
原因は雨や風向きによって生じるとされている。しかし,風向きなどの説明に具体性がな
いように感じられる。大気汚染の関係の教科書を調べてみると図17が見つかった(近藤,
2001)。同図は,局所前線(Local front)により,大気汚染物質が関東地方の内陸部で濃くな
ることを示している。春先は北西の季節風と太平洋からの南西寄りの温かい風が衝突し,
局所的に前線を発生させる。この前線は東京湾岸から 10 数 km の位置に発生し,これによ
り大気汚染物質が濃集すると考えられている。
気象庁のホームページで過去の気象データを調べてみた。表1は東京と佐野の風向と風
速の旬ごとの平均値である。東京の風向は 1 月から 3 月までは北西が卓越している。四月
に入ると南寄りが卓越する。一方,佐野の観測点では 4 月に入ってから,ときおり南風が
吹くこともあるが,北寄りが優勢である。
放射性物質が,はじめは均等に拡散したが,その後の風向の変化で図17に示すような
ことが生じ,放射性物質の再配置が生じた可能性がある。もちろんこれを検証するには,
さらに多方面の検討が必要であるが,このような大気汚染のデータや考え方を利用するこ
とで,拡散した放射性物質の今後の予測が可能となるかもしれない。
- 19 -
図17
Fig.17
地形と風向きによって内陸部に停留する大気汚染物質
Air pollution material which stops in the inland by the topography and the
direction of the wind.
2011 年 1 月から5月の東京(左列)と佐野(栃木県,右列)の観測点における風向
表1
と風速
Table 1
Wind direction and velocity at Tokyo (left)and Sano (Tochigi Pref., right) from
Jan. 2011 to May 2011.
月
旬
上旬
1 中旬
下旬
上旬
2 中旬
下旬
上旬
3 中旬
下旬
上旬
4 中旬
下旬
上旬
5 中旬
下旬
平均風速
3.2
2.6
2.6
2.6
3
3.2
3
3.6
2.9
3.7
3.6
4
3
3.2
3
風向・風速(m/s)
最大風速
最大瞬間風速
風速
風向
風速
風向
9 北北西
18.3 北西
7.7 北北西
14.6 北西
7 北西
12.8 北西
7.6 北西
14 北北西
10.4 北西
21.2 北西
10.5 北北西
17.7 北北西
9.1 北西
18.5 北西
11.2 北北西
21.9 北西
9.6 北西
19.9 北西
10.9 南
19.6 南南西
10.3 北西
17.9 南南西
12.5 南南西
21 南南西
12.1 南南西
22.2 南
9南
16.4 南
9.7 北西
17.7 北東
平均風速
3
2.6
2.2
2.3
1.7 )
2.2
2.9 )
1.9
1.9
1.4
1.9
2.1
1.7
1.5
1.6
風向・風速(m/s)
最大風速
最大瞬間風速
風速
風向
風速
風向
8.6 北北西
16.1 北西
8 西北西
15.7 西南西
9.4 北西
16.5 北西
9.5 北西
15.4 北北西
8.8 )
西
16.4 )
西
9.4 北西
15.7 北西
9.5 )
北西
15.2 )
北北西
8 西北西
16.8 北北西
8.2 西北西
15.9 北西
4.9 南
8.9 南西
7.4 北北東
15.1 北北東
9.2 南
18.5 南
7.2 北西
14 北西
6.3 南
11.9 西北西
8.2 北北東
14.6 北北東
(北→N,南→S,東→E,西→W)
- 20 -
(6)放射線マップの作成
これまでに測定したデータは,Google の地図機能を利用して,放射線量率マップとして
以下の URL に掲載してある(図18)。データは取得でき次第,順次更新を行っている。
http://maps.google.co.jp/maps/ms?hl=ja&ie=UTF8&vps=2&jsv=341a&brcurrent=
h3,0x60188baf89335f5d:0x78b83958b7c60a47&oe=UTF8&msa=0&msid=201455
999854591241789.0004a3fb6e976f51e43b1
図18
Fig.18
作成した放射線マップの例
Example of the radiation map.
6.考察
図1と図16から,室内の線量率は屋外の値の半分程度になっていることがわかる。し
かし,報道や様々な団体の報告書では,屋外の値に 24 時間を乗じ,さらに 365 日を乗じて
年間の外部被曝量としている。例えば,江東こども守る会の報告書には以下のように記載
してある。「0.2μSv/h という空間線量は,然のバックグラウンドを引くと,0.15μSv/h 程
度になると考えてよい。一日では 3.6μSv の積算線量になり,一年では 1.3mSv である。
- 21 -
公衆の被曝限度を越えている」
(原文ママ)。しかし,この計算は 24 時間 365 日その場所に
連続して居た場合の積算線量であり,実際にはそのようなことはありえない。仮に 8 時間
を 0.15μSv/h の屋外で過ごし,残りの時間(16 時間)を室内で過ごすとすれば,室内の値
を屋外の値の半分として,1日の積算線量は,
0.15×8+0.15/2×16=2.4μSv
となる。江東区の報告による 3.6μSv の 2/3 となる。1年では 0.876mSv となり,公衆の
被曝限度 1mSv を超えない。屋外で過ごす時間がさらに短ければ。積算線量はより減少す
る。もし,屋外の線量率が高いと報道された場合でも,それは 24 時間 365 日その場所に留
まった場合のことであると認識すべきである。
屋外の値が室内の値の半分になると仮定すると,1 日の積算線量(日線量率) Dd は時式
であらわされる。
Dd  x  t 
x
24  t   12 
2

t
x
2
(1)
ただし,
x :屋外の線量率(μSv/h)
t :屋外で過ごした時間(h)
である。式(1)に対して,屋外の線量率が 0.05,0.1,0.2,0.5,1μSv/h のときの日線量率
をグラフ化したのが図19である。さらに,年線量率に換算したのが図20である。報道
や前述の江東区の事例では,図19または図20の 24 時間のときの値を用いている。単位
時間当たりの線量率が高ければ,日線量率や年線量率はより大きく見積もられることにな
る。このような報道や報告には十分な注意を払う必要がある。
日線量率 Dose rate(μSv/d)
30
1μSv/h
0.5μSv/h
0.2μSv/h
0.1μSv/h
0.05μSv/h
25
20
15
10
5
0
0
4
8
12
16
時間(時) Time (h)
20
図19 屋外で過ごした時間により異なる日線量率
Fig.19
Dose rate per day according to outdoor time.
- 22 -
24
年線量率 Dose rate(mSv/y)
10
1μSv/h
0.5μSv/h
0.2μSv/h
0.1μSv/h
0.05μSv/h
8
6
4
2
0
0
4
図20
Fig.20
8
12
16
時間(時) Time (h)
20
24
屋外で過ごした時間により異なる年線量率
Dose rate per year according to outdoor time.
梅雨に入ってから筆者の自宅の雨樋の排水口の線量率を測定したところ 0.65μSv/h であ
った。近所の民家では 0.8μSv/h を越える値も観測した。いずれも降雨中でないときに測定
した。恐らく屋根に降下した放射性物質が雨樋を伝わって。一箇所に集まり,コンクリー
トや土などの表面に滞留していると考えられる。
仮に,その場所に 24 時間 365 日居たとすれば,図19あるいは図20に示したとおり,
かなりの高い線量となる。しかし,実際にはそのようなことはありえない。また,多くの
データでも示したとおり,狭い範囲でも地表の状況によって線量率は大きく異なる。生活
をしている以上,様々な線量率の場所で過ごすことになり,正確な線量を求めることは難
しい。たった一度の,1 地点のみの測定値が,現実の被爆量ではないことに注意をする必要
がある。
7.まとめ
モニタリングデータに加え,広域の測定を行うことで,以下の知見を得ることができた。
① 放射性物質が降下したのは事故発生直後がほとんどであり,現時点では降下物は
ほとんどないものと考えられる。
② 原発から離れれば線量率が低くなるわけではなく,ホットスポットと呼ばれる局
所的に線量率が高い場所が存在する。
③ 狭い範囲においても線量率は場所によって大きく異なる。
これらのことから外部被曝量を正確に把握することは難しく,単純に 1 地点の線量率か
ら積算線量を計算するには注意を要する。
- 23 -
謝辞
ポケット線量率計 Radi は EMF ジャパンの谷口社長にお借りしました。放射線地学研究
所の湊進代表に計測に関する指導をいただきました。広域の測定データの収集には川崎地
質株式会社事業本部の方々にご協力いただきました。ここに記して謝意を表します。
引用資料
1) 気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/menu/report.html
2) EMF ジャパン http://www.emf-japan.com/emf/img/PDF/PA-1000.pdf
3) 湊進(2006):日本における地表γ線の線量率分布,地学雑誌,115,pp.87-95.
4) 近藤裕昭(2001):人間空間の気象学,朝倉書店,pp.60
5) 江東こども守る会 http://koutoumama.jimdo.com/
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