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2007年10月号 - ITIL - itSMF Japanオフィシャルサイト

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2007年10月号 - ITIL - itSMF Japanオフィシャルサイト
2007.10
2007.1
特集 1 it SMF Japan コンファレンス & EXPO 2007
特集 2 試験・教育機関の ITIL® V3 に対する最新対応状況
他:『第1回 寄稿 Award(仮称)』募集のお知らせ
目次
ニュースレター 2007.10 it SMF Japan 理事からのご挨拶
it SMF Japan 理事 明路 伸夫
特集 1 it SMF Japan コンファレンス & EXPO 2007
it SMF Japan
3
開催報告
4
講演者インタビュー
it SMF Korea Dr.K.T.Hwang 氏
ITIL® v.3 著者 Vernon Lloyd 氏
it SMF Japan コンファレンスへの参加を終えて
特集 2 試験・教育機関の ITIL® V3 に対する最新対応状況
it SMF Hong Kong Juliana Li
22
it SMF Japan
APM GROUP Richard Pharro 氏 (インタビュー)
23
ISEB Peter Leavy 氏 (インタビュー)
EXIN Michiel Voort 氏 (インタビュー)
IT プレナーズ ジャパン 柳沼克志氏 (寄稿) ITIL® バージョン 3 著者に聴く
From SERVICEtalk
寄稿: it SMF コンファレンスに参加して、
日本 IT ガバナンス協会(ITGI Japan)
そして ITGI Japan の最近の活動について
事務局長 梶本 政利
ITIL® 資格最新情報
EXIN Japan
46
関西支部活動ご案内
it SMF Japan 関西支部
48
it SMF US Fusion 07 参加報告
寄稿
49
it SMF Japan
52
『第1回 寄稿 Award(仮称)
』募集のお知らせ
37
45
it SMF Japan 理事からの
ご挨拶
この度、it SMF Japan 理事に就任いたしました
明路伸夫です。
私自身の ITIL® の関わりは、情報システム運用
部門の責任者となった 4 年ほど前からで、
「情報
システム開発・保守と運用の切り分け」
「情報シ
ステム運用に携わるメンバのモチベーション向
上」と言う大きな課題をどうやって解決してい
くかに、日夜頭を悩ましておりました。
当時を振り返りますと、
「システム運用に多
くの時間が割かれ、システム開発にかけられる
工数が少なくお客様要求になかなか応えられな
私たちの提供するシステム運用サービスも、
い」
、
「システム運用業務は、オペレーション作
お客様の要求変化に合わせて、変えていかなけ
業が中心で、受身型の仕事となっている」、「シ
ればなりません。ITIL® プロセスをベースに、IT
ステム運用障害も多発し、運用品質を向上させ
ライフサイクルを意識し、常に最善な IT サービ
ようにも特効薬が見つからない」など、ご他聞
スを提供できるよう取り組んでいく必要があり、
に漏れず問題山積の状態となっておりました。
今まで以上に経営戦略に密着したシステム運用
これらの問題・課題を解決するため、
「システ
サービスを高度化していくことが期待されてお
ム運用業務の改革」を旗印に掲げ、IT 運用管理
ります。
のベストプラクティスである ITIL® を適用するこ
とにしました。現場の担当者を巻き込んだ日々
最後に、微力ながらも、ユーザ企業として会員
の地道な改善活動を粘り強く継続してきた結果、
皆様方の視点に立った活動をしていきたいと考
運用業務のプロセスも徐々にではありますが整
えておりますので、今後ともご支援のほど、よ
理され、その結果、システム運用障害件数も確
ろしくお願いいたします。
実に減少してきました。
私はユーザ企業の理事として、この様な現場
明路 伸夫
の声を大事にし、少しでも会員の皆様のお役に
特定非営利活動法人 it SMF Japan 理事
立てればと考えております。
この 8 月に開催された第四回 it SMF Japan コ
ンファレンスのテーマは「IT サービスマネジメ
ント、新たなステージへ・・・」と題されました。
ITIL® 自身も、プロセス指向である ITIL® V2 か
ら IT 戦略策定から始まる IT のライフサイクルマ
ネジメントをコンセプトとした ITIL® V3 と新た
なステージへと高度化されております。
3
特集 1 it SMF Japan コンファレンス & EXPO 2007
∼ 開催報告 ∼
it SMF Japan
■はじめに
キスポ " と呼び、コンファレンスを有料の講演会、エキスポ
を無料の展示会という位置づけにしました。これに伴って
イベントの呼称は "it SMF Japan コンファレンス &EXPO" と
第四回 it SMF Japan コンファレンス &EXPO 2007 を、8
月 6 日(月)
・7 日(火)の両日にわたって東京国際フォー
しました。このように替えた意図は、展示会場への来場者が、
ラムで開催いたしました。真夏の暑い日ざし、お盆直前の
コンファレンスの講演の聴講者にほぼ限られていた状況を
あわただしい時期にも関わらず、非常に多くの方にご来場
変え、it SMF Japan 会員以外の方々の来場を期待してのこと
いただき、IT サービスマネジメントに関する最先端のマネ
です。
ジメントメソッド、技術情報、ユーザ事例などを it SMF 会
2. ITIL® 以外のサービステーマの取り込み
員および IT サービスマネージメントに関心の高い IT 関係者
の間で共有できたと考えております。
今回のコンファレンスのテーマは、「IT サービスマネジメ
ント、新たなステージへ・・・」。このテーマは、以下にあ
■新しい取り組み
げた四つの IT サービスマネジメント関連領域での新しい動
きが出てきていることを踏まえ、IT サービスマネジメント
今回は、これまでの it SMF Japan コンファレンスと大きく
がさらなる発展の段階に差しかかっていることを表現した
違う以下の 4 施策を試行いたしました。
ものです。
1. コンファレンスと展示会を明確に分けて開催
V3、IT サービス・ライフサイクルマネジメント
2. ITIL® 以外のサービスに関連したテーマの取り込み
1980 年代後半からまとめ上げられてきた ITIL® が今年 5
3. 後援団体との協調(展示・無料セミナ)・証明書発行
月に ITIL® V3 となり、IT サービス・ライフサイクルマネジ
4. 展示会場内でのスポンサによるオープンセミナ
メントという新しい考え方が取り入れられました。
1. コンファレンスと展示会を明確に分けて開催
JIS20000、ITSMS 適合性認定制度
IT サービスマネジメントの規格 ISO/IEC 20000 の JIS 規
従来 it SMF Japan コンファレンスは講演を主体とし、スポ
格が 2007 年 4 月に発行となり、日本における認証制度も
ンサの展示を併設した形をとってきました。これを講演と
同時期に本格スタートしました。
展示とに明確に分け、それぞれを " コンファレンス "、" エ
4
COBIT®、IT ガバナンス、内部統制
4. 展示会場内でのスポンサによるオープンセミナ
金融商品取引法(日本版 SOX 法)施行による内部統制へ
の関心の高まりから、IT ガバナンスの指針としての COBIT®、
®
さらには ITIL との関係の整理が進んでいます。
展示会場で行われたオープンセミナでは、各社の先進ソ
リューションや製品の紹介が行われました。事前登録が不
要な自由参加形式のセミナでしたが、どの企業のセミナも
サービスサイエンス
多くの方が着席されており、IT サービスマネジメントの広
学術の世界でサービス創出の手法や効率化など、サービ
がりを感じさせるものでした。
ス自身についての研究が始まっています。
ITIL® の話題を主軸に置くことはこれまで通りですが、
「サービス」というキーワードに寄せて、以上のような動向
を取り込み、視界を一段広げてみようという試みです。
今回の it SMF Japan コンファレンス &EXPO では、
22 社
(プ
ラチナ 2 社、ゴールドプラス 2 社、ゴールド 9 社、シルバー
6 社、ブロンズ 3 社)にスポンサとなっていただき、
コンファ
レンスでの講演と、展示会場での展示、展示会場内でのオー
®
2007 年 5 月に英国にて発表された ITIL V3 は、
本コンファ
プンセミナを 13 セッション実施いたしました。コンファレ
レンスでも大きなトピックスであり、今後の IT サービスマ
ンスでの講演は、基調講演(1)、特別講演(2)、パネルディ
ネジメントを推進する大きな原動力の一つです。コンファ
スカッション(1)、ユーザ事例講演(6)、it SMF 講演(4)
、
レンス講演でも、随所に取り上げられ、その関心と期待が
分科会講演(5)、スポンサ講演(19)、V3 ロードショウ(4)
非常に大きいことがわかります。it SMF Japan としても、そ
の計 42 セッションを開催いたしました。このほかに後援団
の期待に応えるべく、英国で出版された書籍をいち早く取
体セミナ 8 セッションを加えて、今イベント全体でのセミ
り寄せ、セミナ会場での販売を行いました。そして、ITIL
®
ナの総数は 63 セッションという規模に達しました。
®
V3 ロードショウでは英国での ITIL V3 のセミナを収録した
ビデオを、コンファレンスのプログラムとして、また、エ
キスポ会場の企画として上映しました。ITIL® V3 の著作者
自身による ITIL® V3 の講演は、ITIL® V3 の新しいコンセプ
トや ITIL® V2 から V3 への変更点を簡潔に紹介しているの
で、日本国内において ITIL® V3 の理解を深めることに役立
つと考えます。it SMF Japan は ITIL® V3 の本格的普及のた
めに ITIL® V3 の日本語版書籍を 2008 年春から順次発行す
る予定であります。
3. 後援団体との協調(展示・無料セミナ)・証明書発行
富田 修二 it SMF Japan 理事長
テーマに沿った講演や展示をそろえるため、日ごろから
it SMF Japan と交流のある団体に後援いただき、エキスポ
会場における展示と専用のセミナ室での無料セミナを開催
■コンファレンス紹介
していただきました。そして、各後援団体の会員様向けに、
各団体主催のセミナでのチラシの配布、メールマガジンに
1. 基調講演
よる通知、ホームページによる告知などを行っていただき、
会期初日の基調講演では、東京証券取引所 常務取締役、
集客にもご協力いただきました。
また、
(特非)IT コーディネーター協会(ITCA)および
CIO の鈴木義伯氏をお招きし、IT サービスマネジメントを
ISACA(情報システムコントロール協会)東京支部の会員様
適用した『東京証券取引所におけるシステム最適化計画に
には、コンファレンス受講の証明書を発行しました。これ
ついて』をご講演いただきました。2009 年までに国際的に
らの活動が、本コンファレンスにたくさんの方に来場頂い
最高水準の証券取引システムの構築を進めており、全体最
た一要因となったことは言うまでもありません。後援団体
適に向けた構造改革を実施しているとの報告がありました。
様には、この場を借りて改めて御礼申し上げます。
なかでも IT 運用については、IT サービス部として集中統合
した体制に再編し、投資者を初めとする株式市場利用者に
対し、IT を通して利便性と信頼性の高い安定したサービス
5
を継続的に提供するとのことでした。
各ご講演とも、参加者の関心は非常に高く、朝一番の講
また、同日の特別講演では、一橋大学大学院 准教授の藤
川佳則氏から、
『サービス・イノベーション:サービス・マ
演にも関わらず会場はほぼ満席状態。満足率は最高で 98%
(加重平均で 3.8)
という驚異的に高い評価をいただきました。
ネジメントの視点から』をテーマにご講演いただきました。
日本のサービス産業の生産性をイノベーションにより欧米
2. ユーザ講演
に追いつく必要があり、日本でのサービス・イノベーショ
ン事例としてブックオフなどの例が解説され、顧客を共創
ユーザ事例講演では、すでに IT サービスマネジメントを
パートナーと位置づけ、顧客接点に携わる人材のスキルアッ
導入なさっている通信業から金融業までの幅広い業種の企
プを図って、サービス・イノベーションの機会を創るべき
業 6 社様から、自社での取り組みや実践についてご講演い
との説明がありました。
ただきました。ご自身の体験に基づく熱の入った講演に、
二日目は通常 1 セッション 45 分枠を 2 つ使った特別講演
ご来場いただいた方々もご自分の企業の状況と比較し、次
をヴィジョナリー・ジャパン代表取締役 鎌田洋氏から、『価
に進むべき方向を見定めながら、ご聴講いただけたものと
値を高める CS(カスタマーサティスファクション)向上の
確信いたします。
ヒント』と題して講演を頂きました。お客様と共に最高の
喜びを作ることが大切で、そのためにはミッションが明確
でフロントラインまでもが理解していることを初めとする
6 つのヒントについて、巧みな比喩、実例を交えて説明し、
NTT コムウェア株式会社 青木 渉氏
『ISO/IEC20000 から始める ITIL® ∼ NTT コムウェアにお
ける取り組み』
最終的には従業員とお客様を元気にさせる本物の CS 文化を
造る必要があるとのことでした。
多くのネットワークやシステムを独自ノウハウで開発・
運 用 し て き た。 デ フ ァ ク ト で あ り 国 際 標 準 で あ る ITIL®
/ISO20000 について、自社の対応に対するアセスメント
を実施して導入の課題を把握し、その結果、約 9 ヶ月で
ISO20000 認証を取得した。有効性が見えるレベルの粒度で
目標を設定すること、成熟度はコストを照らし合わせなが
ら最適解を見出す必要があることを反省・課題として紹介。
新日石インフォテクノ株式会社 野村 克己氏
『ITIL®(インシデント・問題管理)実装時における実現場で
の課題・問題点と効果的な対策と取り組みについて』
企業合併に伴い、基幹システム再構築の検討を開始し、プ
東京証券取引所 常務取締役、CIO
ロセス改革への取り組みをして ITIL® の活用を決定。"STEP
鈴木 義伯 氏
BY STEP" と "PDCA 改善 " を基本姿勢として、
「インシデン
ヴィジョナリー・ジャパン代表取締役
一橋大学大学院 准教授
鎌田 洋 氏
藤川 佳則 氏
6
ト」と「問題」および「コントロール」と「マネジメント」
3. itSMF 講演
®
を明確に分離し ITIL を導入した。そして、継続的改善が可
能となるための組織・体制を確立し、実装後の簡易アセス
it SMF 講演では国内外からおいでいただいた 4 名の有識者
メントにより改善を確認した。
からご講演をいただきました。
九電ビジネスソリューションズ株式会社 只隈 政博氏
日経コンピュータ副編集長 中村建助氏
®
『ITIL を活用したシステム運用改善の取組み』
『運用現場から生まれる動かないコンピュータ』
運用品質の低下、コストの増大、顧客満足度の低下を危
®
惧し、世界的に普及している ITIL の活用を検討。アセスメ
®
ントにより、現状と ITIL のギャップを把握した。課題分析
®
利用部門や一般消費者にまで影響するシステム障害に、復
旧作業における不手際が加わって障害が深刻なものになっ
ているケースを題材に、システム障害をより深刻な問題に
によって改善の方向を得ることができ、ITIL の活用が諸課
してしまう運用の事例にどのようなものがあり、実際に体
題の解決手段として有効であることを確認した。ノウハウ
験した企業がどういった対策を実施しているかを紹介。
の水平展開とビジネスへの活用が今後の課題。
it SMF International クレイグ・パティソン氏
東京海上日動システムズ株式会社 島田 洋之氏
『ライフサイクルアプローチを採用したサービスマネジメン
『IT サービスマネジメントは会社に応じて・・
(東京海上日
トの重要性を解き明かす - ITIL® V3 および ISO/IEC 20000 -』
動システムズの IT サービスマネジメント)
』
ライフサイクルアプローチを採用したサービスマネジ
保険ビジネスにおいて、IT システムへの依存度は高く、
メントの重要性について解き明かし、ITIL® V3 や ISO/IEC
システムリスクは経営リスクに直接つながる。24 時間×
20000 を活用した継続性のあるサービスマネジメントプロ
365 日、お客様のビジネスが求める IT サービスを的確に提
グラムを組み立てる最善の方法を紹介
供し続ける必要がある。IT サービス提供状況の継続的モニ
タリングが重要であり、それにより実行性の高いマネジメ
ント・サイクルを実現する。
中央コンピューター株式会社 礒野 親男氏
『∼ ITIL® 導入(実装)への挑戦∼』
顧客の SLA 導入依頼、社内の IT 部門へのクレームをきっ
クレイグ・パティソン氏
かけに、ITIL® 導入を検討。ITIL® 技術者の育成にとりくみ、
社内 IT 部門への導入によりノウハウ蓄積、スキル習得を実
it SMF 韓国 カン・タエ・Hwang 氏
践した。SWOT 分析、PPM 分析などによる優先付けを行い、 『IT ガバナンスを対象にした国際標準化の状況』
Quick Wins となった対策を実施して行く事に決定した。
it SMF インターナショナルが ISO(国際標準化機構)、情
ベニックソリューション株式会社 竹安 功次氏
報システムコントロール協会(ISACA)およびその他の関連
『データセンターの ITIL® 実践論(計画編)
』
機関と協力し、推進している IT ガバナンスを対象にした国
ベストプラクティス・フレームワークの必要性から ITIL®
際標準化の状況、標準化に取り組む組織、標準草案の概要
および標準化のプロセスの問題点と今後の方向性等を紹介。
活用の検討をはじめ、タスク優先決め、範囲設定、体制作
り、プロセス管理規準制定、ツール活用について方針を策
定し適用を計画した。その結果、構成管理 DB を利用した変
ITIL® V3 著者 バーノン・ロイド氏
『ITIL® 最新情報』
更計画立案の精度とスピード向上と問合せ対応の均一化と
スピード向上の効果が得られた。
ITIL® のフレームワークの導入で、いかにビジネスが改善
されるかを考察し、新しいライフサイクルストラクチャの
説明と、旧バージョンとの主な違いを紹介。
7
理基準追補版の IT 統制目標に対して ITIL®/ISO20000 の有
4. 分科会講演
効性を評価した研究成果を発表。
分科会講演では、it SMF Japan での分科会活動の成果を
1 ∼ 4 で参加者アンケートの加重平均をとった満足度は
発表いただきました。
トラックごとの全体でみると、ユーザ事例:3.2 ポイント、
it SMF 講演:3.0 ポイント、分科会講演:3.4 ポイントと、
SLA 分科会
これも高い評価でした。
『ビジネスを成功に導く SLA ∼ビジネスへの最大の貢献を
目指して∼』
5. パネルディスカッション
「ビジネスへの最大貢献を目指す SLA とは ?」をテーマに
続けてきた過去 1 年間の検討の成果として、本格版 SLA の
テンプレート作成に取組み、検討の過程での議論や SLA 作
パネリストとして財団法人電気通信端末機器審査協会の
成における問題点や注力ポイントについて解説。
宮脇 均氏、第一生命情報システム株式会社足立伸男常務
(it SMFJapan 理事)、日本情報通信株式会社富田修二代表取
締役(it SMFJapan 理事長)および司会者として株式会社プ
アセスメント分科会
ロシード西野弘代表取締役(it SMFJapan 理事)の基で、
IT サー
『IT サービスマネジメントにおけるアセスメントの位置付け
と実践』
ビスマネジメントの新潮流についてディスカッションが行
なわれた。宮脇氏からは IT 運用のコスト削減・効率化・品
これまでに OGC のセルフアセスメントツールの日本語訳
質向上が十分図られていないとして ITSM の普及に向けた提
資料の公開を行ってきたアセスメント分科会は、IT サービ
言がなされ、足立氏からは IT 投資、開発、運用を横串にし
スマネジメントにおけるアセスメントの概要、位置付け、
て全体最適を目指す IT サービスマネジメントが重要との提
実践する上での課題、アプローチ等を日本国内として考察
言がなされ、富田氏からはビジネスの急速展開・グローバ
した内容を紹介。
ル化とビジネス継続性の観点から IT サービスマネジメント
が肝心であるとの提言がなされ、IT サービスマネージメン
CMDB 研究分科会
トの普及がさらに必要であるとの結論が出された。
『意味のある(役に立つ)CMDB であるために必要なこと』
CMDB 研究分科会は関西初の分科会として発足し、CMDB
の存在意義について討議。現在までの活動報告と、IT サー
ビスマネジメントの各管理プロセスからの CMDB に対する
要求事項などを紹介。
政府・地方公共団体における ITIL® 導入分科会
『政府・地方公共団体で先進的に取り組まれている ITSM、
ITIL® 事例の紹介』
総務省の ITSM 研究会の活動報告、神戸市における ITSM、
ITIL® の取り組みについてそのあるべき姿も含めて紹介。
IT ガバナンス研究分科会
パネルディスカッション
『IT 統制における ITIL®/ISO20000 の有効性について』
日本版 SOX 法、内部統制への取り組みの本格化を受けて、
ITIL®/ISO20000 が内部統制 /IT ガバナンスに対して有効な
フレームワークになり得るという観点で研究。システム管
8
6. EXPO 紹介
「日本の IT ガバナンスを世界のトップランナーに」をビ
ジョンし、ITGI の日本の拠点として、2006 年 ITGI Japan
東京国際フォーラム展示ホールで行われた it SMF Japan
を設立。世界の IT ガバナンスにおけるペストプラクティス、
EXPO では、国内外の IT ベンダや教育関連の企業、および
研究成果などを日本の企業社会に紹介、普及、定着させる
後援団体様(34 団体)が展示を行いました。各ブースにお
こと、逆に日本の調査研究活動成果などを世界に発信する
いてパネルの展示、資料配布やデモンストレーションの実
こと、グローバル環境における IT ガバナンスに関する活動
施など、IT サービスマネジメントに関する情報を詳細に来
支援を行うことをミッションとしている。
場者の方に直接提供していだだきました。IT サービスマネ
ジメントに対する各社の取り組みを存分にアピールしてい
ただけたものと考えます。
また、無料のセミナとして、後援団体様に各団体の IT サー
財団法人 日本情報処理開発協会(JIPDEC)
『第三者認証としての ITSMS 適合性評価制度の紹介』
JIPDEC 情報マネジメント推進センター 松本 嘉夫氏
ビスマネジメントに対する活動を中心にご講演いただきま
ITSM 活動を継続することにより、サービス品質の維持・
した。
向上などの効果が期待でき、また、ITSMS 認証取得により、
ITSM の品質を関係組織が信頼することができる。IT サービ
スマネジメントは、規格要件だけでなく、ビジネスと緊密
に関係する要求事項をインプットとすることで、ビジネス
上有効な仕組みとなり、既存の仕組みに規格を合わせるの
ではなく、標準化規格に既存の仕組みを変革するようにし
て、業務を改革する。
財団法人 日本科学技術連盟(JUSE)
『ISO20000 IT サービスマネジメント 次世代 IT 経営のフ
レームワーク』
JUSE ISMS 審査室長 村上 治氏
it SMF Japan EXPO
経 営 に お け る IT は、 技 術 と 方 法 論 の 2 つ が 支 え あ っ
て 成 り 立 つ も の で あ る。 方 法 論 と し て COBIT®、ITIL®、
7. 後援団体セミナ
ソフトウェア資産管理コンソーシアム(SAMCon)
『ソフトウェア資産管理コンソーシアムの取り組みと ISO/
IEC 19770-1』監査法人トーマツ 田村 仁一氏
組織におけるソフトウェアの重要性が増加し、ソフトウェ
ア資産管理への関心が高まっているにも関わらず、管理手
法が十分に確立されていないのが現状である。そのため、
ISO20000 などが出てきたことは、
「情報セキュリティ」
「内
部統制」などへの時代のニーズが高まっていることと無関
係ではないと思われる。本格的に企業が IT マネジメントの
活動を始めている本年 2007 年が、IT マネジメント元年と
呼ぶべき年になることを期待する。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)
『IT スキル標準における IT サービスマネジメントの明確化』
株式会社野村総合研究所 グループマネージャー 清水 健氏
ソフトウェア資産管理規準を策定した。アカウンタビリティ
(説明責任)の確保、
法的 / リスクの回避、
TCO の削減、セキュ
リティを考慮した管理の実現がソフトウェア資産管理の目
的である。
ITGI, Japan(日本 IT ガバナンス協会)
『ITGI Japan(日本 IT ガバナンス協会)ご紹介』
IPA で進めている IT スキル標準(ITSS)における IT サー
ビスマネージメント(職種)の報告があった。従来はオペレー
ション職種であったが、運用業務の高度化に伴い、IT サー
ビスマネジメントと改名したこと、専門分野は運用管理、
システム管理、オペレーション、サービスデスクの 4 つに
分かれるとの説明があった。
ITGI Japan 理事 中村 努氏
9
■来場者数
社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)
『IT 内部統制における SLA の活用』
株式会社 富士通総研 マネージングコンサルタント 斎藤
弘氏 /NEC グループマネージャー 川井 俊弥氏
コンファレンス及び展示会の来場者数は、あわせて 1,510
名となり、昨年に比べて 667 名の増加となりました。
コンファレンス参加者:964 名 [ 昨年 843 名 ]
斉藤弘志氏より、アウトソーシングサービスにおけるリ
展示会のみの参加者:546 名 [ 昨年 0 名 ]
スクを明確化し、サービス提供者と利用者の協調による統
制活動に対する SLA の活用方法を具体化する「ITIT サービ
スリスク /SLA マトリックス」を作成したので活用して欲し
いとの報告があった。また、川井俊弥氏より、
「IT 内部統制
のための統制項目表」を作成したのでその報告と独自に内
部統制に関する市場調査を行なったのでその報告があった。
社団法人 日本情報システム・ユーザ協会(JUAS)
『IT ユーザ系企業の IT サービスマネジメント強化への取組
∼ JUAS システム運用研究会 2007 年度の取組状況∼ 』
■来年度の予定
次回の it SMF Japan コンファレンスは、2008 年 7 月 8 日
(火)・9 日(水)の 2 日間、池袋サンシャインシティー文
化会館を予定しております。
■まとめ
今回のコンファレンスの盛況を見て、日本における IT
東京海上日動システムズ株式会社 島田 洋之氏
サービスマネジメントとその関連周辺領域に関して、it SMF
JUAS のシステム運用研究会での活動として 2006 年度は
「今こそ重要、
リスク管理ベースのシステム運用管理」のテー
マで組織、マネジメント、プロセス、スキルの 4 グループ
に分かれて研究したことおよび 2007 年度は
「身の丈にあう、
Japan としては、関連する団体とともに、研究・啓発・普及
促進などの活動をますます活発化していきたいと考えてお
ります。会員のみなさまの、より一層の積極的なご参加を
期待しております。
IT 統制を意識した、実践的システム運用管理」をテーマと
して研究を進めているとの報告があった。
『サービスに対する学問的取り組み「サービスサイエンス」
特定非営利活動法人 it SMF Japan
コンファレンス担当理事 山口 真人
の紹介』
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 亀岡研究
室 LA 鎌田 伸尚氏
後援団体様のほかに、本コンファレンスのテーマにもつな
がるサービスサイエンスを専門に研究を続けていらっしゃ
る鎌田伸尚氏にご講演いただいた。IT サービスマネジメン
トは通常、ビジネスを中心に捉えることが多いのだが、こ
のセミナでは、学問としてサービスを捉え、研究者として
の分析を海外の最新事情を交えてご紹介いただいた。
このようなサービスの学術的研究が進んでいくことは、IT
サービスマネジメントを普及・促進させ、サービスビジネ
ス全体の新たなステージの幕開けを予感させるものである
と言えるだろう。
これらの団体に出展ならびに講演をご協力に関して、参
加者アンケートでは、いずれも高評価をいただきました(講
演の評価全体の加重平均:3.3 ポイント[1 ∼ 4 の 4 段階評
価 ])
。
10
it SMF Japan EXPO 2007 講演団体および出展企業
11
特集 1 it SMF Japan コンファレンス & EXPO 2007
講演者インタビュー
∼ ITIL® v.3 著者 - Vernon Lloyd 氏 ∼
it SMF Japan
it SMF Japan コンファレンスに講演の為に来日された、
ITIL® V3 の著者でもある Vernon Lloyd 氏に、今回の執筆に
あたってのご感想をインタビューさせて頂きました。イン
タビュアは、it SMF Japan 会報誌 編集委員です。
取材日時:2007 年 8 月 7 日(火)
メインインタビュア 森田礼子
インタビュア:本日は、it SMF Japan のインタビューに参加
いただきありがとうございます。もう、コンファレンスを
ご覧になられましたか ?
人々でさえ、ITIL® を取り巻くフレームワークなどについて
Lloyd 氏:昨日と今日、両方とも参加しました。
認知できていませんでした。当時、日本では非常に認知度
インタビュア:では、EXPO の雰囲気はもうおわかりですね。
どうお感じになりましたか ? ご感想をお聞かせください。
が低かったのです。驚くべきことですが、実際そうでした
よね。先ほど EXIN の方とも話をしたのですが、現在では日
本でファンデーション試験を受けられた方が 30,000 人い
Lloyd 氏:ええ、すばらしいと思います。唯一の問題と言
えば、7 階から地下まで移動しなければならないことです。
EXPO 展示会場までは、まず外に出て下まで降りて、また上
がって少し歩いてと、実に手間がかかりますから。移動に
10 分はかかりますよね。それが、展示会場のネックになっ
ていると思います。その問題を置いても、EXPO の展示もコ
ンファレンスのセッションもすばらしいと思いますよ。セッ
ションは 2 つほどしか参加していないのですが、とても良
い印象を受けました。
らっしゃるそうです。5 年前はたったの 30 人程度だったの
ではないでしょうか。
インタビュア:今では、毎月 1,200 から 1,500 人がファンデー
ション試験を受験しています。
Lloyd 氏:人々の関心がこの分野によせられて、信じられな
いような成長を遂げたと思います。5、6 年前に西野氏(現
it SMF Japan 渉外担当理事)が英国の我々のオフィスにい
らっしゃいました。そこで、我々は、日本に it SMF を設立
インタビュア:あなたは日本での ITIL® の普及の状況を長い
間ご覧になってきたとお聞きしています。前回日本にいら
したときと今回の状況の違いについて、何かお気づきにな
りましたか ?
する必要があること、そして it SMF の成長には人々の関心
を集める必要があり、個人の会社として運営することはで
きないという話をしたのです。この分野の成長のためには、
it SMF の設立は最適な手段でした。そして、我々は it SMF
Japan を設立したわけですが、it SMF Japan はわずかな期間
Lloyd 氏:私は日本によく来ていますが、変化の速さには驚
かされます。私が最初に日本を訪れたのは 20 年前です。そ
して、最初に ITIL® について話をしに来たのは 5 年前です。
そのときは、ITIL® のことを知っている人はまだほとんどい
なくて、我々が話したトピックも ITIL® の基本的なことだけ
でした。それがほんの 5 年前です。
IBM、マイクロソフト、HP などの大企業はグローバルな
展開をしています。当時、IBM やマイクロソフトのスタッ
フと話したので覚えているのですが、こういった大企業の
12
で急速に成長し、1000 人以上の人々をコンファレンスに
集められるような人々の多大な関心を集める団体になりま
した。すばらしいことです。順調かつ迅速に大きく成長し、
そして周辺に認知されていったのです。
インタビュア:it SMF Japan の成長についてのあなたからご
意見をお聞きできて、うれしく思います。
Lloyd 氏:日本は世界で 2 番目に大きい市場ですが、認知の
広がりとその規模は、他の巨大市場をはるかに上回ってい
ます。追い越そうとしています。30,000 人と言えば、相当
つですか ?
な人数ですよ。
Lloyd 氏:バージョン 2 が完成してすぐですね。そのとき
インタビュア:本日のバーノンさんのコンファレンスのセッ
にもうすでに新しいバージョンについて何らかの構想は
ションでは、主に『サービスデザイン』書籍の内容につい
あったわけです。前回のバージョンは、1996 年から 2004
て話される予定ですか ?
年にかけて書かれたもので 8 年も経ているので、2004 年
ごろには、ITIL® のライブラリ全体を刷新するべきだという
Lloyd 氏:いいえ、バージョン 3 全般についてお話しします。
意見があがりました。なぜならば、ライブラリ中には、バー
バージョン 3 で推進していることについて、なぜバージョ
ジョン 2 の他の書籍と適切に対応付けられていない書籍も
ン 3 を作成したのか、またバージョン 2 と比較して、新バー
ありましたし、書籍間で異なる用語が使われていたり、誤
ジョンの全体的なテーマは何かといったことをお話する予
りがあったり、また必ずしも最新の概念が記載されていな
定です。例えば、バージョン 2 では、IT がビジネスを支援
かったりしたためです。
できるように、ビジネスと IT の整合について常に説明して
ですから、その頃から、我々は議論を重ね、OGC(Office
いました。バージョン 3 では、ビジネスと IT の統合という
of Government Commerce)とミーティングをするなどし
観点に移行しようとしています。ビジネスと IT の「整合」
て、取るべき方向性について話をしていました。その結果、
から「統合」への移行です。それら 2 つの用語の違いは重
OGC はバージョン 2 のライブラリを刷新することを決定し
要だと、我々は考えています。我々は、ビジネスから派生
たのです。また、このとき、OGC はすべてのライブラリの
したビジネスの結果に注目しています。そのことに関して
刷新を同時に行うことを決めました。そしてその内容は、
は今までも常に説明してきたことですが、今ではそれをよ
我々が今までやったことのない、新しい試みでした。具体
り強調しています。
的には、著者を 1 つのチームにして、核となる書籍をすべ
私はバージョン 3 全体を説明するにあたって、バージョ
て同時に作成し、すべての書籍を同日に出版したのですか
ン 2 との違いを説明する事とともに、なぜバージョン 3 を
ら、それは、今までのライブラリの制作方法とは全く異な
作成したのか、その背景にはどのような考えがあったのか、
るやり方でした。
また、どのようなことを反映したいのか、ビジネス側がな
すべきことは何かなどについて、説明したいと思います。
OGC は、世界中でライブラリの刷新内容の協議プログラ
ムを実施し、人々のニーズがどこにあるかを確認しました。
その結果、プロセス主導のアプローチよりもライフサイク
インタビュア:
「統合」ですね。昨日幾つかのコンファレン
ル・アプローチに関して、多くの人々の関心があることが
スのセッションに参加したのですが、どの講演者も鍵とな
わかりました。ここからが、本当の意味での出発点でした。
るのは統合だとおっしゃっていました。ですから、そのメッ
その後はご存知かもしれませんが、我々はさまざまな段階
セージは明確に伝わっていると思います。
を経ることになりました。OGC は約 40 名の ITIL® 諮問グルー
プを選考し、世界中でワークショップを開催して協議を行
Lloyd 氏:ええ、
「統合」という観点こそが今年、我々が指
い、そしてその結果をすべて検討した上で、このライフサ
し示そうとしていることなのです。
イクルのソリューションを設計しました。その後、OGC は
著者を指名し、また用語集の著者も指名しました。そして、
インタビュア:去年、幸運にもシャロン・テイラー(Sharon
我々が書籍を執筆することになったのです。
Taylor)さんのインタビューをさせていただきました。そ
の時にはシャロン・テイラーさんからは非常に面白いお話
インタビュア:あなたはそのワークショップに参加された
をお伺いすることができました。その頃、バーノンさんは、
のですか ?
バージョン 3 をまだ執筆中だったと思います。また、その
中で、
『サービスデザイン』書籍の著者として、さまざま
Lloyd 氏:はい、ワークショップに参加しましたし、ITIL®
な課題や困難に直面されたことと思います。そこで今回は、
諮問グループにもいました。当然ながら、著者に指名され
著者としてのバーノンさんに何点かお伺いしたいと思いま
たということは、ITIL® 諮問グループの仕事をたくさん行う
す。
ということを意味していました。
Lloyd 氏:どうぞ、おたずねになってください。
インタビュア:あなたが著者の 1 人になるということはご
存知だったのですか ?
インタビュア:執筆作業の、実際の出発点となったのはい
13
Lloyd 氏:いいえ、だた著者になるためには募集に応募する
インタビュア:チームとしては最適ですね。
必要があったことはわかっていました。みんな応募しまし
た。私が聞いたところによると、OGC は各書籍に 2 人の著
Lloyd 氏:彼は大変複雑なことを図に描いて、うまく説明で
者を求めていたので、パートナを見つけてペアで申し込む必
きるのです。もちろん簡単な図の中には、私が作成したもの
要がありました。OGC はまた、別々の会社からの著者のペ
もあります。
アを望んでいました。そこで、私はバージョン 2 の書籍で
いっしょに仕事をしたことのある友人といっしょに応募し、
『サービスデザイン』書籍の著者に選ばれたのです。
インタビュア:今日、コリンさんといっしょに来たかったの
ではないですか ?
はっきりとは知りませんが、シャロンが言うには、著者に
は約 150 人の応募があったらしいです。実際に選ばれた著
Lloyd 氏:私だけでも来れてよかったですよ。2 人とも忙し
者は 10 名だけだったので、それよりはるかに多くの人が応
いので、2 人で一緒に来ることはとても難しいですから。私
募していたんですね。シャロン・テイラーをはじめとして、
たちはいろいろなところに出張しますから。特に私は。私は
OGC、TSO(The Stationery Office;OGC's official publisher)、
バージョン 3 のプレゼンテーションで約 15 か国を回りまし
そして、it SMF International の CEO だったエイデン・ロー
た。バージョン 3 のロードショーだけで、というわけでは
ズ(Aidan Lawes)などで構成される委員会があり、彼らが
ありません。スロベニアなどにも行きました。先々週はコロ
各書籍の著者を選考しました。新しい概念である『サービス
ンビアに行きました。それからメキシコ、クロアチア、ブル
ストラテジ』の著者には、
新しい 2 人の著者が選ばれました。
ガリアなど、本当にたくさんの国を回っています。
私とコリン(Colin)には『サービスデザイン』書籍の執筆が
任せられ、そのようにして、各書籍に適した人材がそれぞれ
インタビュア:『サービスデザイン』のことはもう忘れたい
割り当てられました。こうして、我々は執筆を開始したので
とお思いかもしれませんが、あなたが執筆中に直面した困難
す。
や問題についてお聞かせください。
インタビュア:すると、その時点で、あなたとコリンさんは
Lloyd 氏:まず、『サービスデザイン』の大部分が新しい概
すでにお知り合いだったんですね。
念だったことです。バージョン 2 でのプロセスを使用した
部分は簡単でした。しかし、『サービスデザイン』の大部分
Lloyd 氏:ええ。我々はすぐに執筆を始めました。なぜなら、
が ITIL® では新しい概念だったので、その点が特に苦労した
まず始めに、1 章か 2 章分を書き上げる必要があったのです。
部分です。何度も考え方を変えたりしました。章によっては、
OGC は、我々にまず 1 章分を書かせて、それをチェックして、
コリンも私も何度も書き直しました。しかし、一番困難だっ
書籍の残りすべての執筆も任せられるかどうかを確認した
た点は、すべての書籍の関連を統一することでした。ほかの
かったんでしょう。そういうわけで、まず 1 章だけを書き
書籍の著者たちとは毎週電話会議を行い、時には会うことも
上げたのです。ちょっと変わったやり方ですよね。1 章分を
ありました。しかし、皆それぞれ世界中の異なる場所で仕事
仕上げるための時間は、6 週間くらいしか割り当てられてい
をしているため、定期的に会うことは難しかったのです。で
ませんでした。それですぐに 1 章分の執筆を開始したのです。
すから、例えば『サービスストラテジ』の何らかの概念につ
そしてその後、残りの章の執筆を続けました。
いて言及し、それが『サービストランジション』に移行する
ことを言及するとした場合、同じことが『サービストランジ
インタビュア:コリンさんが図を作成して、あなたが文章を
ション』できちんと言及されているのか、また同じ用語が使
書いたのですね。
われているのか、定かではありませんかでした。
最終的には、うまく運んだのですけどね。執筆中はそうい
Lloyd 氏:そうです。もちろん、すべてがそうだったわけで
う点で苦労しました。また、いつも言っていますが、
困難だっ
はありませんが。2 人で何かを話し合っているとき、コリン
た事は、書籍を最終的には完成することができなかった点で
はいつも図に描いて考えるんです。私が単語を幾つかメモ
す。著者たちはみんなあと 6 か月欲しいと要望したのです
していたら、コリンのメモには図が描かれていた、なんてこ
が、聞き入れられず、書くのを止めるようにと言われました。
とになるわけです。彼の場合は、四角形なんかを組み合わせ
もっとも、もしもそのような自由が与えられたら、6 か月後
て、図で考えるわけです。人それぞれですよね。私たちは良
にまたもう 6 か月延長して欲しいと要望するに決まってい
いチームでした。そんなわけで、ほとんどの図はコリンが作
ますよね。
成したものです。一方、
文章のほとんどは私が担当しました。
時間はいくらあっても足りないですから。もう 6 か月与え
コリンが図で考えてくれるので、私にはそれが非常に役立ち
られたら、書籍の品質はもっと良くなっていたでしょう。し
ました。
かし、出版者は簡単に、
「はいそこまで」、
「出版します」
、と
14
言うんですよね。出版の日程は決まっているので、あなた
います。
方もそれに従ってくれと。ですから、もっと時間があれば
もっと良いものが書けるのに、書くのを止めなければいけ
インタビュア:それはとても面白い試みですね。今はまだ
なかったことが最大の困難でした。
市場がバージョン 3 を採用しようとしている段階ですから、
これからどうなっていくのかを見極めてからということに
インタビュア:執筆中は、他からの情報を待っている時間
なりますね。英語版を出版してから、すでにフィードバッ
もあったことと思います。
クを受けていらっしゃいますね。
Lloyd 氏:ええ、待たなければいけないときもありました。
Lloyd 氏:ええ、かなりのフィードバックが集まっています。
®
我々がまず原稿を書き、それが ITIL 諮問グループに送ら
ほとんどが好意的なものです。私はバージョン 2 の著者で
れて、そこでレビューを受けました。そして、彼らからコ
はないですが、バージョン 2 のときは、世界的な関心は今
メントが送られてきて、我々がそれを参考にして原稿を更
ほどありませんでしたので、書籍の品質などに関してあま
新します。その更新された原稿は、今度は一般のレビュー
りコメントがなかったのです。今回は、コメントが寄せら
を受けます。ですから、コメントを待っている間、何もで
れています。読者のライフサイクル全体についての印象は
きない一定の期間がありました。そして、コメントが返っ
概して良いようですし、その統合の新しい形式も好評です。
てきたときに、すべてのコメントをすぐに反映できたわけ
中にはネガティブな意見もありますが、それでかまわない
ではありませんでした。そのようなコメントに関する変更
のです。一部の読者は個々の細部にこだわり、また保守的
が残っていたので、最後まで変更作業を続けていました。
です。バージョン 2 の内容が変更されていて不満を感じる
書籍が出版されたのは、5 月 30 日です。我々の書籍に最後
人もいます。しかし、それはそれでかまいません。全体的
の変更を加えたのは 5 月 16 日、いや 18 日だったかな。信
には、とても良いフィードバックを受けています。
じられないとは思いますが。印刷して出版するわずか 12
人々は細かい点にとても敏感です。以前と比べて変更さ
日前です。そして、5 月 30 日に 2 万部出版されたのです。
れていることに気づくと、「ここが違うじゃないか」と指摘
5 月 18 日に私はまだ変更を加えていたのです。
してきます。そういった話が時々耳に入ってきますが、問
題はそこです。私の会社においてさえ、一部のトレーナか
インタビュア:TSO の方と話をしていたのですが、普通書
らそのような細かな変更点に関する指摘を受けることがあ
籍を印刷するには 2 か月かかるとおっしゃっていましたよ。
ります。英国拠点には 30 名から 40 名のトレーナやコンサ
ルタントがいますが、彼らが「ここが変更されていますね。
Lloyd 氏:それを 12 日間でやってのけたわけですから、す
トレーニング・コースではこの変更について講義したいと
ごいでしょう。我々はただ必要な変更点を変更するだけよ
思います」などと言うと、私は「いや、それは大した変更
かったのです。TSO が印刷業者に依頼して、どんな変更で
ではないよ」と答えるのです。これは、自然なことだと思
も加えることができたのです。図も変更しました。矢印が
いますよ。
間違った場所を指している、ラベルが違う、この定義を変
更したい、誤りを修正して欲しいと、最後まで細かい変更
インタビュア:バージョン 3 は、どのような順序で読めば
を加えていました。書籍出版のわずか 10 日、12 日前まで
良いか、アドバイスはありますか ?
です。すごいですよね。
Lloyd 氏:良い質問ですね。まず『サービスストラテジ』
インタビュア:本当にそうですね。さて、次のバージョン
から開始すれば良いことだけはお答えできます。それが正
ですが、バーノンさんは次回も執筆されるんでしょうか ?
しい答えかどうか 100% の確信はありませんが、戦略とは
何かについてまず理解しておく必要があると思うんです。
Lloyd 氏:次のバージョンの話については、何も知りません。
最初から『サービスストラテジ』のすべての章に目を通す
®
今後は、皆さんが ITIL に関する補完的な手引書などをオ
必要があるかどうかは、わかりません。読者が何に関心を
ンラインでたくさん入手できるようにしていきます。その
寄せているか次第でしょう。もし運用や環境に興味がある
ため、今までと違ってライブラリはアクティブなものとな
なら、『サービスオペレーション』から読み始めると良いで
り、利用者がホワイトペーパーやテンプレートなどを作成
しょう。
することができるようになるのではと思います。作成した
ライフサイクルの中間層となる『サービスデザイン』
、
ものをライブラリに追加できるのです。コア書籍を何度も
『サービストランジション』、
『サービスオペレーション』は、
変更しなければならないということは、おそらくないと思
3 冊すべてを読んではじめて理解できるものです。
『継続的
15
サービス改善』では継続的サービス改善について説明して
るでしょう。新規用語についても既存用語についても、す
いますし、
『サービスストラテジ』もその名のとおり、戦略
べての用語の訳に関しては合意済みなわけですから。いず
について説明しています。ですから、ライフサイクルの中
れにしても、用語集の 80% はバージョン 2 から踏襲されて
間層にある 3 冊はまとめて読むといいでしょう。それらを
いる用語です。
私は「インナー・ライフサイクル」と呼んでいます。
インタビュア:お話で何か補足したいことはございますか ?
インタビュア:それでは、私は『サービスデザイン』から
このコンファレンスに来てから、多くの人に「ロイドさん
読み始めることにしましょう。
じゃありませんか」と声を掛けられたのではないですか ?
Lloyd 氏:ただし、
『サービスストラテジ』にも非常に面白
Lloyd 氏:そんなことないですよ。
い新しい概念があるんですよ。それらの概念はバージョン
3 で非常に重要です。最も重要なことが『サービスストラ
インタビュア:このニュースレターの後はそうなりますよ、
テジ』全体に記述されています。ですから、
『サービススト
きっと。
ラテジ』も読むべきではあるんです。ほとんどの人は、書
Lloyd 氏:もちろん、ここにはたくさんの知人がいます。4、
籍をセットで購入するでしょうから是非読むべきです。
5 年前に私のトレーニングに参加してくださったさまざま
インタビュア:我々は、書籍を日本語に翻訳して出版しな
な企業の方々やともに仕事をしたことのある方々などです。
ければなりません。個人的には、
『サービスストラテジ』か
ですから、お見かけしたことのあるお顔はたくさんありま
ら始めるべきだと思っているんです。それが最も自然でしょ
した。でも、誰もあまり声をかけてくれませんでした。英
う。しかし、
『サービスオペレーション』から開始すべきだ
国から来た変な外国人とでも思われていたのでしょう。
(笑)
と言う人もいます。
インタビュア:そんなことはないと思います。本日は、長
Lloyd 氏:私の提案としては、用語集から始めるべきだと
い間本当にありがとうございました。
思います。用語集は迅速に翻訳できるので重要です。
インタビュア:用語集の日本語版の作成はもう開始してい
ます。現在、レビューを行っている段階です。
Mr.Vernon.Lloyd 氏 紹介
Lloyd 氏:本当ですか ? いつ頃公開する予定ですか ?
35 年以上に渡り IT サービス業界で活躍し、世界中の多
くの企業、団体で業務管理に関連した様々な役割を担当。
イ ン タ ビ ュ ア:9 月 の 初 め に は 公 開 で き る と 思 い ま す。
Fox IT 社に 17 年間勤務、現在海外顧客担当重役。ISEB の
※1
戦略諮問委員と ITIL® v. 3 試験の枠組と要綱の策定を行う
(2007 年 10 月 1 日時点で公開済)
APMG 上級審査員を兼任。ISM の研究員を務め、ISM 次
Lloyd 氏:それはよかった。用語集から開始されたのですね。
期会長。数多くの官庁、民間企業でコンサルタント業務と
これから 5 冊の書籍を翻訳していかなければなりませんが、
研修を実施し、サービスマネジメント分野では世界的権
私なら日本語版を 1 冊ずつ出版することはしないでしょう
威として知られています。it SMF からは、名誉ある Paul
ね。5 冊まとめて出版します。セットですから。
Rappaport 生涯功労賞を授与され、ヨーロッパ、極東、オー
ストラレーシア、北米、南米で開催されるサービスマネ
インタビュア:それはそうですね。でも。
『サービスストラ
ジメントに関する多くの主要会議での講演を実施し、サー
テジ』と『サービスデザイン』を一度に出版して、1、2 か
ビスマネジメント分野に対する同氏の貢献は多大なもので
月後に次の書籍、としてはどうかと思います。読者は忙し
す。出版されて間もない ITIL® v. 3「サービスデザイン」や、
いですから、1 か月にせいぜい 1 冊程度しか読めないかも
「サービスデリバリ」、
「サービスマネジメント導入計画立案」
等の ITIL® 書籍を含め ITSM 関連の著書を多数執筆してお
しれませんし。
ります。
Lloyd 氏:いずれにしても、用語集が一番大切です。用語
集を入手し、合意し、承認が得られれば、その後の書籍の
※1 ITIL® V3 用語集
翻訳は簡単です。いや、簡単ではありませんが、楽にはな
16
特集 1 it SMF Japan コンファレンス & EXPO 2007
講演者インタビュー
∼ it SMF Korea - Dr.K.T.Hwang 氏 ∼
it SMF Japan
it SMF Japan コンファレンスに講演の為に来日された、
it SMF Korea の Dr.K.T.Hwang 氏に、韓国での ITSM の普及
動向についてインタビューをさせて頂きました。インタビュ
アは、it SMF Japan 会報誌 編集委員です。
取材日時:2007 年 8 月 7 日(火)
メインインタビュア 森田礼子
インタビュア:さて、it SMF Japan コンファレンスに参加さ
れるのは 2 回目だとおっしゃいましたが、日本にはよく来
られているのですか ?
Hwang 氏:はい、日本のことは大好きでして。たぶん、前
世は日本人だったのではないかと。妻と子供も日本が大好
きです。ですから日本にはよく来ます。
すね。他の地域については、2 年前にオーストラリアのコン
ファレンスに参加しましたし、英国のコンファレンスには 2
インタビュア:お子さんはおいくつですか ?
回参加したことがあります。
Hwang 氏:一人は、
、
、いや、ちょっと待ってください、韓
国の歳の数え方は日本と違うんですよ。赤ん坊が生まれる
と、その時に 1 歳になるんです。これには科学的な根拠が
ありましてね。赤ん坊は生まれた時にすでに 10 か月くらい
経過しているでしょう。それで、息子は 86 年生まれですか
ら 21 歳、娘は 17 歳になります。
インタビュア:前回と今回を比べられて、何か大きく変わっ
たこと感じらたことがありましたか ?
Hwang 氏:ええ、it SMF Japan は年を追うごとに成長して
いますね。日本がうらやましいです。日本の会員企業は、
200 社を超えるほどになりました。韓国では 20 社くらいし
インタビュア:2 人の大きなお子さんの父親でいらっしゃ
るわけですね。そんな風には見えませんね。でも両国のそ
れくらいの年頃の人たちは、お互いに双方の国を気に入っ
ていますよね。
かありません。10 倍の違いです。もっとも、経済規模もそ
のくらい違うでしょうが。日本は、経済規模で言うと韓国
の 10 倍になると思います。it SMF Korea と it SMF Japan と
は非常に良好な関係です。コンファレンスなど必要な時に
お互いを招待しあいとても良好な関係を築いています。
Hwang 氏:そうですね。ですからゴルフをやりにもよく来
ますね。九州に行ったことがあります。宮崎の青島などです。
九州へは韓国からほんの 1 時間程度です。
インタビュア:さて、前回ご参加いただいたのは、第 2 回
の日本のコンファレンスだとお聞きしています。
イ ン タ ビ ュ ア: す ば ら し こ と で す ね。it SMF UK の 方 も
it SMF Korea コンファレンスに招かれていますよね。
Hwang 氏:他国の方へはいつも招待状を出していますが、
その中でも it SMF Japan には、とても積極的に対応しても
らっています。it SMF Japan が他の地域の it SMF に招待状を
Hwang 氏:it SMF Japan の全日空ホテルで開かれた第 2 回
コンファレンスに参加しました。第 3 回コンファレンスの
時はアメリカに行っていましたので、参加することができ
ませんでした。日本のコンファレンスは、これで 2 回目で
17
出される場合も、同様でしょう。
インタビュア:いつか、アジア太平洋地域の国々が結集で
きますよ。
Hwang 氏:そう、それはまさにこの 2 年間 it SMF Japan 理
ご講演をいただきました。
事長の富田さんや渉外担当理事の西野さんと話し合ってき
たことです。議論は重ねてきていますが、まだあまり実行
Hwang 氏:大学とのつながりという点を考えると、it SMF
には移せていません。いずれはアジア・コンファレンスを
Korea は約 3 年前に設立企業 8 社で立ち上がりました。理
開くことにもなるでしょうし、そうしたいですね。
事長を選出するに当たり、独立した組織という印象を強め
るため、大学教授を理事長とすることにしました。3 人の候
インタビュア:IT 業界にかかわる it SMF Korea の人たちに
補の 1 人が私でして、it SMF は私が気に入ったのでしょう、
はどのような特徴がありますか ? 例えば、it SMF Korea はど
私が理事長に選出されました。
のような人たちで構成されていますか ?
インタビュア:理事長には大学教授が必要だということで
Hwang 氏:残念ながら、it SMF Korea にはユーザ企業があ
すか。
まり多く参加していません。これは本当に問題です。しかし、
ユーザ企業も幾つかはありますし、IBM、HP、CA、BMC、
Hwang 氏:理事長である必要はありません。まずは副理事
それにコンサルティング企業などのベンダも盛んに活動し
長になってもらい、it SMF の運用や活動について知ってもら
ているのは確かです。SI 企業、
つまりシステム・インテグレー
います。その後、理事長に昇格する形にするのです。その
タも参加しています。
ほうがうまくいくでしょう。先ほども言ったように、韓国
サ ム ソ ン SDS、LG CNS な ど、 大 手 SI 企 業 の す べ て は
の場合は会員企業が非常に積極的に大学教授を求めていま
it SMF Korea の会員です。韓国では、ベンダ会員企業の参加
す。これが 1 つの重要なポイントです。グループを作って
が非常に多いのです。
何人かの大学教授に接触し、説明を尽くして、活動に参加
しませんか、というように勧誘するわけです。
インタビュア:it SMF Japan でもそのような構成になってい
ます。韓国での活動はよく存じ上げませんが、フォーン教
インタビュア:サービス・サイエンスのような学問領域は
授が幾つもの主要な役職についていらっしゃることからも、
全く新しいものですから、これから活動していくべきでしょう。
it SMF Korea は学会ともつながりが深いのではないかと思い
ます。それについては少々うらやましいです。
Hwang 氏:そのとおりだと思います。ソフトウェア工学専
門の教授なら関心を持たれるかもしれません。韓国にはソフ
Hwang 氏:その意味ではそうですね。現在の理事長も大学
トウェア工学の教授がたくさんいます。彼らはプロセスに
教授でもあるので、その面では強みがあります。理事長は
関心があります。ITSM もプロセスです。少し異なる領域で
最近、非常に有名な学会に研究グループを設立しました。
すけどね。ですから、ソフトウェア工学の教授に接触すれば、
今後はより多くの教授たちが it SMF の研究と議論に参加し
関心を抱いてもらえるでしょう。
てくることになるでしょう。
インタビュア:ISACA の会長を 10 年以上続けていらっしゃ
インタビュア:大学にもっとネットワークを持つ必要があ
るそうですね。
りますか ?
Hwang 氏:ISACA との関係はかれこれ 10 年以上になりま
Hwang 氏:そうですね。ただ、IT サービスマネジメントは
すね。
最近の話題です。ですから、教授たちはそれについておそ
らくあまり認知していないでしょう。ここが問題です。韓
インタビュア:IT ガバナンスを手がけられたと。
国でも、私ともう一人、つまり 2 人だけが研究に少々関
心を持っているだけで、後は全くという状況です。しかし
Hwang 氏:実際にはガバナンスが最初ではありません。そ
IBM が今、サービス・サイエンスというものを強く推進し
の頃は IT ガバナンスという言葉がありませんでした。やは
ています。その意味では、
日本の大学教授の中にもサービス・
り、最初はプロセスでした。COBIT® というモデルをご存じ
サイエンスに関与し、そこで ITSM を知って関心を寄せる方
でしょう。34 の IT プロセスが挙げられています。その頃か
もいるかもしれません。
ら、IT プロセスに接していたわけです。そして、ITSM を知っ
て、おお、これは良いテーマだ、と。
インタビュア:it SMF Japan コンファレンスでも昨日のセッ
ションで、
大学教授の方に「サービスサイエンス」について、
18
インタビュア:さまざまに変遷するフレームワークを多数、
たくさんあるでしょう。
経験されることに、
、
、
インタビュア:今日はそのことをお話になるのですか ?
®
Hwang 氏:そのとおりです。実際、COBIT は自分で韓国
Hwang 氏:はい。AS 8015 の中味、規格化プロセスがどの
語に翻訳しました。公認情報システム監査人(CISA)の資
ように行われたのかなどについて話します。
格も持っています。よって、プロセスには非常に関心があ
りました。
インタビュア:国際規格についてお話になるということで
すが、日本人はそういう国際規格を好んで採用したがりま
®
インタビュア:では COBIT 4.1 の動向にも注目されていま
す。世界のベストプラクティスを採用する、これでうまく
すか ?
いっています。韓国でもそうですか ?
Hwang 氏:そうですね。4.0 の翻訳が終わりましたが、今
Hwang 氏:ええ、そうですね。私の知るかぎり、日本の場
後はおそらく自分ではやりません。骨の折れる仕事でして。
合は規格を非常に遵守していると思います。しかし韓国で
次回は、若い者がやることになるでしょう。
は、認証を取るだけで、実際にはあまり実践していません。
恥ずかしながら、この点は韓国が改善しなければならない
®
インタビュア:韓国の COBIT 界はどのような感じですか。
点ですね。
同じような市場でしょうか ?
インタビュア:規格をもっと遵守する、ということでしょ
®
Hwang 氏:COBIT は概念的には非常に良いフレームワー
うか。
クですが、現実に適用するのは困難です。この点がまさに
問題ですね。これは ISACA の課題ですが、ISACA Korea で
®
は韓国の状況に合わせて COBIT を修正する研究グループを
Hwang 氏:例えば、ISO 20000 ですが、日本では、何社が
認証を取得されていますか ?
設立しました。努力していますが、この仕事は非常に困難
を伴っています。
インタビュア:現在までに 50 社です。2007 年末までには
100 社を超える見込みです。
®
インタビュア:COBIT についての話題はとても興味深いで
す。時間があれば、それについてまたお話しできればと思
Hwang 氏:正確な数字は知りませんが、韓国ですでに取得
います。さて、今日のセッションでプレゼンテーションを
しているのは 60 社を超えているのではないでしょうか。市
されることになっていますね。本日は会場の方すべてが教
場規模が 10 分の 1 なのに認証を取得した企業の数は同じく
授のお話しに興味を持つと思いますが、今日コンファレン
らいです。つまり、韓国は何かを採り入れるのは非常に手
スに参加できないこのニュースレターの読者のために、プ
早いのですが、いったん採り入れるとそのことを忘れてし
レゼンテーションについて少しお話いただけますか。
まう傾向があります。これは本当に問題です。日本にはそ
ういう問題はないでしょう。比較的にね。
Hwang 氏:IT ガバナンスの世界では興味深い出来事が起
こっています。IT ガバナンスに国際規格を確立しようとい
インタビュア:ISO 27001 については、組織や人々は規格
う試みです。かなり大胆な試みですが、
結論から言いますと、
の遵守を心がけているように思います。私どもの組織にお
国際規格はオーストラリア規格を基礎にして確立されまし
いても、定期的な勉強会などさまざまなことを行っていま
た。AS 8015 と呼ばれる規格です。発行もされます ― い
す。
え、実際の発行はまだですが、7 月初めに迅速手続きの投票
結果が発表されました。投票を通過するとは思っていませ
Hwang 氏:どの国でもそうでしょうが、その中で日本は決
んでした。というのも、内容がとても薄く、アメリカが強
まり事を遵守する強い伝統があるように思います。
く反対していたりしましたから。会員企業の 75% が承認す
る必要がありますが、AS 8015 はその承認を得ることがで
インタビュア:組織への認証について言えば、韓国企業は
きました。それで投票を通過したわけですが、実践的な有
日本よりもトップダウンの文化が強いのではありませんか。
用性や手引きを提供するほどには内容が充実していないの
で、まだまだやるべきことはあります。おそらく私もその
Hwang 氏:そうかもしれません。韓国の人々は、規格に
ISO グループにかかわるので、やらなくてはならないことが
対して非常に適応性が高いと思います。認証を取得した後
19
に、物事にどう対処すれば良いのか我々はよく知っていま
インタビュア:個人の認証についてお伺いします。この点
す。規格の文言のみにとらわれたりはしないことです。私
についてはいかがですか ?
が ITSM について抱いている最大の懸念もそれです。ITSM
を採用している企業は多数ありますが、重要な事は ITSM を
Hwang 氏:それについても正確な数字は分かりませんが、
定着させて文化や習慣にするということで、それは、ただ
たくさんの試験が実施されています。ファンデーションの
単に ITSM を採用することではありません。ITSM を採用す
場合、正確な数字はわかりませんが多くの人が資格を有し
るのに必要なのはお金だけです。有能なコンサルタントが
ています。マネージャについては、有資格者の数は 200 人
いればプロセスを描いてくれるでしょうし、IBM や HP に
を超えるくらいだと思います。
頼めばソリューションを提供してくれます。ITSM を採用す
ることだけでなく、それを社員の文化や習慣にしていくこ
インタビュア:全部、英語ですね。言語の問題では、韓国
とが非常に重要です。我々が ITSM 向けのシックス・シグマ
のほうが有利なのかもしれません。おそらく日本人より克
という書籍を翻訳したのもその理由からです。本当に ITSM
服しやすいのではないでしょうか ?
を文化とするには、何らかの技法が必要ですが、シックス・
シグマはその有望株だと思います。
Hwang 氏:200 というのは大きな数字です。英語での結果
ですから。韓国語にしたら、200 どころの話ではありません。
インタビュア:シックス・シグマは、アメリカの組織も含
韓国人は資格や認証を取得するのが好きで、受験にも長け
めて、多くの組織が活用しようとしています。日本はそれ
ていると思いますよ。
ほどでもありません。まだ多くの組織がどのように導入す
るかを試行錯誤しているところです。
インタビュア:本当にそうだと思います。勉強熱心ですよね。
Hwang 氏:日本では、一旦規格が採用されれば、その後は、
Hwang 氏:そうです。ただ、1 つ残念なことは、200 人の
きちんとそれを遵守されるでしょう。韓国におけるような
ITIL® マネージャがいても、it SMF Korea へはあまり積極的
問題はあまりないでしょう。この点が、我々が韓国の会員
に参加されていないということです。彼らを引きつけるよ
企業と共に、どのように対応していくか話し合いたいと考
うに工夫しているところなのですが、難しいですね。会員
えている領域です。
企業も、他の企業に引き抜かれてはいけないからと、認定
日本では、
10 か 11 あるプロセスを一度に導入するのですか、
取得者の氏名を明かそうとしません。私はかつて会員企業
それとも 1 つ 1 つですか ? 主要な企業ではどのように導入
に it SMF の下にマネージャのコミュニティをつくりたいと
されていますか ?
申し出たことがありますが、大企業の幾つかから名簿の提
供を拒否されました。
インタビュア:1 つ 1 つですね。ただ、例えば ISO 20000
などであれば、品質の観点からすべてのプロセスを一度に
インタビュア:日本とは全く異なることが起こっているの
導入しているようです。
ですね。企業はトレーニングなどに投資をしていますから、
認定取得者の外部での活動に乗り気ではないのでしょう。
Hwang 氏:韓国では、半分以上の企業がすべてのプロセス
を一度に導入しています。これは韓国の文化です。一気 ! 一
Hwang 氏:そう。企業はそういう考え方をします。しかし、
気 ! といったようにです。これは冗談ですが、韓国ではそ
大学教授でもある現在の理事長は、こうした認定取得者を
ういうやり方をします。どちらのやり方が良いのかは現時
引きつけるべく努力しているところです。
点では分かりませんが、欧米のコンサルタントは 1 つ 1 つ、
まずは手早く成果が出せるプロセスを導入せよと助言しま
インタビュア:分かりました。少し話題を変えたいと思い
す。成果を得た後、
1 つ 1 つプロセスを追加せよと。しかし、
ます。教授は ISACA Korea の会長であり、it SMF Korea の国
韓国ではこのやり方はうまくいかないのです。
際代表であり、名刺も 3 種類お持ちです。会長であり、教
すべてのプロセスを一度に導入するやり方をすることで、
私は 2、3 年後には韓国企業が ITSM から多大の利益を得る
授でもあります。これだけの職務があって、それらをどの
ように管理されているのですか ?
だろうと思っています。これも 1 つのベストプラクティス
ですよ。韓国では、一斉導入が段階的アプローチよりうま
Hwang 氏:ここにいる皆さんのほうが私より忙しいと思い
くいきます。
ますよ。私が思うに、集中力の問題ですね。何時間仕事し
ているのかは重要ではありません。仕事している時はいつ
20
でも集中する、それだけです。it SMF と ISACA には最低 1、
Dr.K.T.Hwang 氏 紹介
2 時間は割いているでしょう。かなりのコミットメントで
す。it SMF の理事長だった時は、1 日に平均 1、2 時間を充
韓国の延世大学で経済学学士号、ジョージワシントン大学
てていたはずです。相当なコミットメントだったと思いま
で MBA、ニューヨーク州立大学で経営情報システム博士号
す。今は ISACA Korea に 1、2 時間を費やしています。たい
を取得。最近では ISO/IEC SC7 の韓国代表に推薦され、公
へんな仕事ですが、面白く、楽しいですし、韓国の IT 業界
認情報システム監査人の資格および、IT サービス管理の資
の発展にも貢献できます。
格認証では管理者資格を取得しました。現在、韓国ソウル
の東國大学にて経営情報システムの教授を務め、韓国情報
インタビュア:すばらしいですね。教授のネットワークは
システムコントロール協会(ISACA Korea)の会長と it SMF
ますます広がるものと思います。
韓国の国際代表、そして韓国情報化評価委員会の委員とし
て従事。Hwang 氏が研究対象とする主要分野には、IT ガバ
Hwang 氏:もともと、it SMF の設立メンバーが私に理事長
ナンス、情報システム制御と監査、IT サービスマネジメン
になってくれと打診してきた時、私はノーと言ったのです。
ト、情報戦略があり、韓国や米国の専門誌に多数の論文を
大いに関心はありましたが、組織の運営などより研究がし
発表し、コビット(CobiT®)、IT サービス管理辞典、ITIL®
たかったのです。しかし、断っても彼らは再びやって来ま
ポケットガイド、IT 管理のシックスシグマ(Six Sigma for
した。それで、嫌とは言えなくなり、引き受けたのです。
IT Management)、情報システム制御と監査の韓国版書籍を
ですが、今ではとても良い決断だったと思っています。韓
出版しております。
国の IBM や HP などの方たちとも知り合えましたし。
インタビュア:以前とは色々考え方が変わられましたか。
Hwang 氏:違いますね。私は大学教授で、専門は管理情報
システムです。これは理論的な分野では全くありません。
ですから、実践的なことがらも知る必要がありました。大
学教授になる前は、サムソン SDS でコンサルタントをやっ
ていました。それで、私はある程度の実践的経験もあった
のですが、それを維持したいとも思っていました。その意
味では、良い機会だったと思います。
インタビュア:本当に良いお話しが伺えてとても感謝して
おります。
21
特集 1 it SMF Japan コンファレンス & EXPO 2007
∼ it SMF Japan コンファレンスへの参加を終えて ∼
it SMF Hong Kong
it SMF Japan 会員の皆様、2007 年コンファレンスのご成
Juliana Li
it SMF Hong Kong 支部について
功おめでとうございます。また、it SMF Hong Kong を代表
してこの大きなイベントに参加出来、it SMF Japan の関係者
it SMF Hong Kong は 2005 年 に 設 立 さ れ ま し た。 現 在、
の皆様にお会いできたことを大変うれしく思います。今回
理事会は 11 名の理事で構成されています。2007 年 6 月末
の参加は本当に実りのある、忘れがたいものとなりました。
現在、会員数は 347 名です。it SMF Hong Kong は、it SMF
International が必要とする支援業務を積極的に提供し、ま
コンファレンスを拝見して、まず気づいたのは、コンファ
た、 ほ か の 国 の it SMF と 相 互 支 援 関 係 を 築 い て い ま す。
レンスを支えたスタッフの数の多さと、非常に綿密な計画
it SMF Hong Kong は it SMF Taiwan(台湾)の設立を支援し、
とその準備作業です。理事会関係者やスタッフのコンファ
現在は it SMF Chaina(中国)の設立を支援しています。また、
レンス準備および開催期間中のご苦労は相当なものだった
日本、韓国、および台湾での年次コンファレンスには代表
とお察しします。
者を参加させています。
2 日間のプログラムでは、IT サービスマネジメントのさ
まざまなニーズや課題に即したすばらしい基調講演や特別
2007 年 1 月 25 日に開催された it SMF Hong Kong のコン
講演が多数ありました。また、幾つもの注目すべきセミナ
ファレンスには、130 名以上が参加しました。昨年は、専
が同じ時間帯に開催されておりました。参加者は、どのセ
門的なセミナ / ワークショップを 4 回にわたって開催し、
ミナに参加するべきかずいぶん迷われたことと思います。
会員のための交流会も実施しました。今年はすでに 2 回の
コンファレンスの雰囲気から、日本における IT サービス
専門的なイベントを実施しています。
マネジメントのベストプラクティスの推進と適用は、かな
りの勢いで進んでいると確信しました。海外からの参加者
今後、it SMF Hong Kong では、IT サービスマネジメント
として提案させていただきたいことは、今後のコンファレ
および ITIL® バージョン 3 の認知向上を引き続き推進してい
ンスでは、プレゼンテーションの資料の一部(すべてはご
く予定です。また、他の専門団体との関係を強化し、知識
無理でしょうから)を英語に翻訳していただくことです。
と経験を共有して相乗効果を高めていく予定です。
そうすれば、国際的な視点を持った参加者の関心をもっと
引き寄せ、日本と世界中の他の国の it SMF 組織との間でベ
ストプラクティスの共有を推進していけるに違いありませ
ん。
コンファレンスへの参加とは別に、it SMF Japan の理事
の方々とお会いして意見や情報を交換する機会を得ること
ができました。it SMF Japan 理事長の富田氏と私は、ITIL®
およびその他のサービスマネジメントのベストプラクティ
スの推進のため、また会員のために、it SMF 香港と it SMF
Japan が将来、知識や経験をもっと共有し合うべきだという
点について合意しました。この合意のもとに、
富田理事長は、
一部の it SMF Japan の活動レポートを英語に翻訳してウェ
ブサイトに掲載することを提案してくださいました。
これにより it SMF Hong Kong の会員は、日本における
IT サービスマネジメントの展開をより深く理解し、また、
it SMF Japan での分科会活動のすばらしい成果を知ること
ができるでしょう。私は、香港でも同様の分科会が発足し、
将来、日本支部の分科会と交流ができるようになることを
楽しみにしています。
22
it SMF Hong Kong
Director of Professional Development
Juliana Li
特集 2 試験・教育機関の ITIL® V3 に対する最新対応状況
∼ APM GROUP - Richard Pharro 氏 インタビュー ∼
it SMF Japan
it SMF Japan コンファレンスへ出展展示の為に来日された
APM Group(APMG)の Richard Pharro 氏に、教育・試験
への APMG の今後の取り組みについてインタビューをさせ
て頂きました。インタビュアは、it SMF Japan 会報誌 編集
委員です。
取材日時:2007 年 8 月 7 日(火)
メインインタビュア 森田礼子
インタビュア:リチャード・ファロさん、まず APM グルー
プについて話していただけませんか ?
Pharro 氏:APM グ ル ー プ は 1993 年 に 設 立 さ れ ま し
た。OGC(Office of Government Commerce) に は じ め て
関わったのは 1995 年か 1996 年ごろで、プログラム管理
とプロジェクト管理の認定と資格認定の制度作りを任され
ま し た。1990 年 代 の 後 半 に は、UKAS(United Kingdom
Accreditation Service; UK での ISO 認定機関)から認証機関
として認定されることを目指し、2000 年ごろに認定を取得
しました。我々は、試験機関および資格認定組織として標
準を評価するために適格な認定を UKAS、つまり国内認定機
関から取得した初めての専門団体に対する推進組織だと思
います。
OGC とは 2000 年以降も提携を続けています。オランダ、
オーストラリア、中国、アメリカに拠点を開設しました。
ITIL® について OGC との契約が得られたため、日本とドイ
ツにも拠点を開設するつもりです。ですから、我々は組織
として、認定制度を運営し、内容はあるがそのための制度
が必要だという組織と協力します。我々は、プログラム管
理およびプロジェクト管理の制度を有しています。もちろ
ん IT サービスマネジメントについても制度を有しています。
財務サービスとその制度について英国の複数の組織と連携
しています。
もちろん、資格認定制度もカバーしています。我々は、ト
レーニングも、コンサルティングも、製品開発も行いませ
んし、専門家を直接雇うこともありません。そういう専門
家たちに直接接触するときには、ユーザ・グループを通し
て行います。我々の中核能力は、資格認定制度の翻訳のた
めのデータベースとオンライン管理システムの開発、それ
らの市場の提供、またこうした制度の全体運営管理などで
す。これらが、我々が注力しかつ一定の認知を得ている分
23
野です。
UKAS とは今も提携しており、ISO 20000 の登録認証機関
になりたいと考えています。そこには大きな市場機会があ
りますから。そのため、我々は業務について、国内認定機
関により独立した審査を受けています。これを他の分野や
他の国にも拡大し、さまざまな地域での認知を高めようと
しています。また、先ほども言ったように、我々は数々の
メソドロジーや標準規格に対するオーナの間に入りこれを
推進する役割であり、最終的な顧客にサービスを提供する
べく、認定教育事業者のネットワークを通じて活動する企
業であると自認しています。
APM グループの主要なポイントでもありますが、他の試
験機関に対する差異化要素の 1 つは、トレーナの評価に多
大な時間をかける点です。我々は、認定するトレーナを一
人一人実際に面接し、トレーニングの様子を観察します。
これは本当にコストと時間がかかる作業です。これだけの
ことをやった上で、トレーナに試験をも監督する実力があ
ると認定します。我々は、我々とは別の独立した試験機関
や監督者を用いません。つまり、コースのトレーニングと
その後の試験を担当するトレーナとは密接な関係を持つと
いうわけです。これにより APM グループの試験用紙を試験
センタやトレーナの元に届けるサプライ・チェーンがより
簡単に運営でき、たとえ試験用紙が届かないようなことが
あっても、トレーナとの密接な関係がありますから、つまり、
トレーナは誰かわかっていますから、緊急の試験用紙を提
供できます。このように、我々は他とは非常に異なるモデ
うことでしょう。
展示会も盛況でした。展示会では、ITIL® へ本格的に投資
ルを有しており、コストにもそれが反映されています。
している大企業が数多くあることが分かりました。全体的
インタビュア:ご自身は、APM グループ創立の 1993 年か
な印象は日本に来る前に耳にしていたことを裏付けてくれ
らかかわっておられるわけですね。
ました。つまり、日本は非常に大きな ITIL® の市場だとい
うことです。世界でも 3 番目に大きい市場だと思います。
Pharro 氏:そうです。CEO であり、創立者でもあります。
それを直に目にすることができたので、満足しています。
インタビュア:日本的には、それは何と言えばいいのでしょ
インタビュア:今回の訪問の主な目的は何ですか ?
うか。
Pharro 氏:今回の訪問の主な目的は、コンファレンスに
Pharro 氏:そこは、なかなか難しいところですね。英国で
参加すること、そして、ここ 4、5 年というもの、日本に
はそのような言い方はしませんからね。英国でそういう表
拠点を開設するためのマネージャ探しを手伝っていただい
現をすると尊大だと思われます。アメリカではそれが名誉
た日本の担当の方と話をすることでした。それが主な目的
なことなのでそれで通していますが、文化の違いでしょう
でした。その他にも、it SMF Japan の渉外担当の方を通じ
ね。日本の文化はまだよく知りませんから、代表取締役で
て it SMF Japan の理事の方々とお会いするのも目的でした。
通していました。しかし、日本の代表取締役は CEO より
試験の日本語翻訳のため、it SMF Japan の理事会を通して、
も下の地位になると最近聞きましたので、肩書の表現には
it SMF International と折り合いをつける必要がありますか
CEO を使うべきだったかもしれません。しかし、CEO で創
らね。こちらのほうが主な目的かもしれませんね。
立者だと言うと、自分の感覚からは重たすぎる嫌いがあり
ます。適切なバランスを見つけるのは本当に難しいです。
APM グループは OGC と契約して、特権的な地位にあり
インタビュア:今回の来日で、十分な成果を上げることが
できましたか ?
ます。我々には、公正に行動するよう努める役目がありま
すが、自分やその地位、組織などについてあまり尊大なこ
Pharro 氏:実際には期待以上でした。ここに来て、日
とを言うと、イメージに合わないと言うか、実像とは違っ
本プロジェクトマネジメント協会の理事長である田中弘
てくるのです。それは APM グループの文化ではありません。
氏とお会いし、日曜の夜には一緒に食事をしました。OGC
我々は肩書きにこだわるよりも、もっと相手に対して良好
ポートフォリオの一部に、プロジェクト管理があります。
な関係の構築に重きを置いています。そのあたりのバラン
PRINCE2 の方法論ですね。田中氏は日本で P2M というプ
スが非常に難しい。我々はむしろ、コミュニティをサポー
ロジェクト管理方法論の責任者をされています。そこで、
トし、人材を見つけ、最善のソリューションを見つけ出し
PRINCE2 と P2M との連携のようなことを模索していると
たいと考えています。我々が依頼する翻訳に対しては、相
ころです。
場の料金をお支払いしています。つまり我々の全般的な気
月曜日には、コンファレンスのセッションで東京証券取
風は、会話を重んじ、他者との協力であり、利益の共有です。
引所におけるサービスマネジメントの重要性について話を
また、同時に、市場に対し何か動きを起こすための投資に
お聞きすることができました。非常に興味ぶかいものです。
リスクを取ることにも積極的です。ですから、そんなすご
コンファレンスでは見識を持った方にも何人かとお会い
い肩書ではないのですよ。実際の姿を表したものではあり
し、EXIN の Michiel Voort 氏とも会いました。これも本当
ません。ただ、アメリカに行った時はその肩書を使わない
に良い収穫でしたし、今日も日本で ITIL® のトレーニング
といけないでしょう。でないと、軽く見られて話もしても
と認証に携わっている何人もの方たちとお会いしました。
らえなくなります。
このように、今回の訪問では思っていた以上の収穫があり
ました。良かったと思います。
インタビュア:日本に来られるのは今回が 2 度目だとお聞
きしました。日本についての印象はすでに少しお聞きしま
インタビュア:聞くところでは、素敵な和食もご賞味され
したが、今回のコンファレンスに対しては特にどのような
たとか。いいですね。本当に貴重なお話をありがとうござ
印象を持たれましたか ?
います。日本のニュースレターに載せる内容としてお聞き
したいのですが、日本の市場に対してはどのような計画を
Pharro 氏:今回のコンファレンスで印象に残ったのは、と
®
にかく人が多いということです。ITIL への関心が高いとい
24
お持ちですか ?
Pharro 氏:日本市場に対する計画で鍵となるのが、バージョ
クトはすでに始まっていましたが、書籍出版後のローカラ
ン 3 の重要用語の日本語での用語集ですね。it SMF Japan
イゼーションについて検討していたと聞いたことがありま
の方たちが用語集を作成されていると聞いています。用語
す。各国語版についても考慮されているということです。
集ができれば、ファンデーション試験の日本語版を作成で
英語を話さない人々にとっては本当に手助けになりますか
きます。単に翻訳するのではなく、ローカライズすること
ら、この点にはとても感謝しています。全世界いっせいに
も重要です。
ローカライゼーションが行われるようになると思っていま
他の言語ではうまく通じているようなことも、日本語に
すると少し変更する必要が出てくるかもしれません。用語
したが、実際にはそうなっていません。順序があるようで
す。
集は 9 月末までには完成すると聞いています(2007 年 10
月 1 日現在で完成済)
。 用語集完成後 1、2 か月でバー
Pharro 氏:市場規模に合わせているのだと思いますよ。
ジョン 3 のファンデーション試験を作成できるでしょう。
しかし、用語集ができるまでは、翻訳は困難かもしれませ
インタビュア:そうなのでしょうか。
ん。解釈に若干の違いがあり、用語集と試験が相矛盾する
ことにもなりかねません。ですから、品質保証の観点から
Pharro 氏:本を翻訳するのに必要な労力が理由でしょう。
も、用語集ができるのを待ってからファンデーション試験
実行の前に明確なビジネス・ケースが必要です。試験の翻
に取り組むのが重要です。その後は、資格認定制度の他の
訳は少し状況が異なります。数枚の試験を翻訳するのは実
レベルの試験も英語で次々に開発されるでしょうから、そ
に簡単で、別の言語で試験を実施するために問題を翻訳す
れらも日本語に翻訳され、日本語で利用できるようになる
るのには数日あれば足りるでしょう。試験のサンプルを他
でしょう。
言語にローカライズするほうが、コア書籍を翻訳するより
はずっと簡単ですよ。
インタビュア:日本だけの話ではなくて、他の国でも同様
ですか ?」
インタビュア:5 冊の本の出版には費用がかかりますから
ね。一定の市場規模がないと、難しいですね。外国の市場
Pharro 氏:全く同じモデルです。まず用語集、次に翻訳
です。現在、バージョン 2 は約 9 か国語に翻訳されていま
を幾つも見られているあなたにお伺いしたいのですが、日
本市場に何か特徴はありませんか。規模とかではなくて、
、
、
す。バージョン 3 では、各地域の it SMF からの要請に応じ
て翻訳するという考えにしています。となると、一部の国
Pharro 氏:日本市場については気が付くことと言えば、何
や地域がバージョン 3 を先に採用することになります。バー
かが有益だと判断されると、政府がそれを必須事項にする
ジョン 2 が正規版だと言う国や地域の it SMF もあるかもし
傾向が強いと思います。政府が一般の組織にこれを採用し
れません。このあたりは、代表となる it SMF International
なさい、と言うようなことはかなり特殊だと思います。英
と TSO(The Stationery Office; OGC's official publisher)と
国では OGC が ITIL® の所有権を持っていて、政府の産物な
の間での、各言語の重要性に関する合意によって左右され
のですが、一般の組織では必須ではありません。推奨事項
ます。これが、翻訳が行われる優先順序となりました。
であって、必須ではないのです。
日本では、大企業が ITIL® を採用しなければならないと
インタビュア:ありがとうございます。普通は他国の状況
言い出すと、そのサプライヤもすべてそれに追随するとい
は気にならないんですが、この件は記事にするうえでも有
うような企業構造なのではないでしょうか。ITIL® の場合は
益だと思います。
そうではないかもしれませんが、ISO 20000 の場合、ISO
20000 は政府が支持していますから、そのような上位レベ
Pharro 氏:多国籍企業の中には、バージョン 2 からバージョ
ルからの支持があるため、日本市場では広く受け入れられ
ン 3 への移行を世界規模でどのように行うかに注目し始め
る可能性が高いでしょう。また、日立、富士通といった国
ているところもありますから、それは実はとても重要なこ
内の大手企業の幾つかが採用したものが、急速に国内の標
とです。人々が共通の語彙を自然に共有できるような確か
準となるような国も珍しいと思います。日本以外ではこう
な用語集が各言語になければ、世界規模での移行は非常に
はいかないのではないでしょうか。トレンドを生み出すほ
困難でしょう。
どに大きな力を持つ企業がある国は、そうたくさんはあり
ませんから。確かに HP や IBM など世界的に活動している
インタビュア:そうですね。リフレッシュ・プロジェクト
企業はありますが、日本には国内に重点を置いた大企業が
の開始時、おそらく昨年のことでしたでしょうか、プロジェ
幾つかあります。例えば NTT には 30 万人もの社員がいま
25
すから、ここが標準として採用すれば、たちまち国内標準
に近いような物になるでしょう。他の国では、たぶん、こ
が前に進まれるようにしたいものです。
新しいフレームワークにより、大企業や中小企業が、継
れほどの影響力を持つ組織はないと思います。英国では、
続的な専門家育成やキャリア育成について、より真剣に考
日立、富士通、NTT と同程度の影響力を持ちうる組織を挙
えるようになると良いと思います。現在の資格認定体系の
げろと言われても、なかなか答えは出てきません。これは
ままでは、この新しいフレームワークはメリットにもデメ
興味深い特徴です。
リットにもなると思います。より高いレベルに到達するま
もちろん、逆もまた真なりで、これらの企業がバージョ
でには、いっそう多くのトレーニング日数が必要になりま
ン 3 を見てためにはならないと判断したら、
日本市場でバー
すよね。大企業の中には、これをメリットと考える企業が
ジョン 3 が受け入れられるのは困難になります。彼らが受
あるかもしれません。社員の教育に割り当てられている日
け入れれば、市場にも広く受け入れられます。彼らが受け
数が非常に多いためです。数年かけて、ファンデーション
入れなければ、市場でもわずかしか受け入れられないとい
からディプロマ・レベルに到達できるのだから、すばらし
うことです。このことにより、it SMF Japan が非常に重要
い、というわけです。逆に今まで以上に費用がかかるので、
な存在であることがわかります。なぜなら、it SMF Japan
デメリットと考える企業もあるでしょう。必須のコースに
が日本の各業界、各企業に推奨するわけですし、理事会に
費用がかかりますから。これらのバランスはまだ調整する
はこうした大企業からの代表者が参画しています。ですか
必要があります。必要とされていることについて、やるべ
らキーポイントは、it SMF Japan の組織全体がバージョン
きことはまだまだたくさんあると思いますが、前述のよう
3 を理解し、また理事を通じてバージョン 3 を支持するこ
なことがバージョン 2 と 3 の大きな違いの 1 つとなるで
とによって企業がバージョン 3 を支持するようになり、教
しょう。
育事業者がバージョン 3 のトレーニングや資格試験を提供
できるようになるのです。それが日本市場の特徴だと思う
インタビュア:その点で、教育機関の教育事業者には特に
のです。it SMF Japan を支援するために、大企業がどれだ
何を期待されますか ?
けの労力を注ぎ込むかです。日本が他の市場と異なると考
えるのも、そういう理由からです。
Pharro 氏:トレーナの質を向上したいですね。トレーナに
なるには、教育(研修)のファンデーションからさらに高
インタビュア:参考になる点がたくさんあります。言葉は
いレベルの認定を受ける必要があると考えています。どの
適切でないかもしれませんが、日本は良いことならすぐに
レベルをトレーニングするかに関係なく、ITIL® のやり方に
それについて行きますし、おっしゃるように控えめです。
精通しなければなりません。どんな質問が出てくるか分か
ご意見はたいへん参考になりました。ほかに、日本への期
りませんからね。ファンデーション・コースにもかなり上
待はありますか ?
級の経験ある受講者がいて、ファンデーション・レベルで
トレーニング受けただけの者では対応できないような非常
Pharro 氏:我々はバージョン 2 と比べて、バージョン 3
に難しい質問をしてくるかもしれません。ですから、
トレー
にとても大きな期待を寄せています。というのも、ケイパ
ナの全体的な教育レベルを是非とも上げたいと考えていま
ビリティ・ストリームとライフサイクル・ストリームで構
す。そのためには、多くのトレーナにプログラムをこなし
成される新しい認定のフレームワークによって、より多く
てもらうべく、他の試験機関にも働きかけ、協力していか
の人がファンデーション・レベルからより上級のレベルに
なければなりません。そうすることによって、バージョン
®
移行するよう後押しされると思うからです。我々が ITIL
3 ではバージョン 2 の場合よりもずっとパワフルで有能な
市場に参入して意外だったことは、ファンデーション試験
トレーナの一団ができるでしょう。
がたいへんな成果を上げた一方、プラクティショナ試験や
そうすれば、トレーナと認定教育事業者を通じてフィー
サービス・マネージャ試験はそれほどではなかったことで
ドバックを得て、資格や摘要を継続的に改善することがで
す。そこで、なぜなのかという疑問が出てきます。なぜ、
きるようになるでしょう。我々の中でのサプライ・チェー
それだけ多くの人がファンデーションの資格を取得するの
ンの概念は他の試験機関や教育事業者も認めるところだと
に、先に進まないのでしょうか ? おそらく、ファンデーショ
思いますが、実際に我々は摘要や試験問題、全体的なアプ
ンからプラクティショナ、またプラクティショナからマ
ローチの面で、継続的な改善を実現できています。教育事
ネージャへのステップをクリアするのが非常に難しいと思
業者の役割はそこだと思います。
われているからではないでしょうか。ファンデーションの
認定を受けた人が、ライフサイクル・ストリーム、または
ケイパビリティ・ストリームに進もうと思わせ、また、進
むことができるようにすることが重要です。より多くの人
26
インタビュア:お時間がきてしまったようです。本日は、
本当にありがとうございました。
特集 2 試験・教育機関の ITIL® V3 に対する最新対応状況
∼ ISEB - Peter Leavy 氏 インタビュー ∼
it SMF Japan
it SMF Japan コンファレンスへ出展展示の為に来日された
ISEB の Peter Leavy 氏に、ISEB の ITIL® V3 の試験機関とし
ての今後の日本での取り組みについてインタビューをさせ
て頂きました。インタビュアは、it SMF Japan 会報誌 編集
委員です。
取材日時:2007 年 8 月 7 日(火)
メインインタビュア 森田礼子
インタビュア:今回の来日をずいぶん楽しんでいらっしゃ
るとお聞きしましたが。
Leavy 氏:ええ、日本のサービスマネージメントを取り巻
く環境は、他の国々のそれとずいぶん違いますからね。私
ズムを鼓舞することです。ですから、it SMF と我々の親組
は主に it SMF のコンファレンスを訪問する目的で、世界中
織である BCS には共通点がたくさんあると言えるでしょう。
を旅してきました。昨年は米国でのコンファレンスのため
ISEB は、それらの最良の標準化規格の評価に役立つ資格を
にソルトレークシティーを訪れ、今年は書籍の出版記念会
提供します。
でシカゴ、去年は南アフリカ、サンパウロ、韓国、アルゼ
ンチンと、本当にさまざまなコンファレンスを見てきまし
インタビュア:通常、あなた方は英語圏の国々で市場を開
た。しかし、日本でのコンファレンスはとても印象的です。
拓されると思います。日本の市場というのは、異なる言語
それは、コンファレンス自体が著しい速さで成長している
を使うので、少し勝手が違うでしょうか ?
からです。it SMF のコンファレンスに参加し始めて 4 年に
なりますが、日本のようなペースで規模が拡大していくコ
Leavy 氏:そうですね。それはまさしく我々が学ぼうとして
ンファレンスはほかにはありませんでした。英国の場合は
いることで、この数日間でいろいろと話を伺っていること
1,000 名の参加者が集まるまでに 7 年かかりました。米国
です。ありがたいことに、たくさんの参加者の方が私のた
の場合は 6 年です。日本の場合、今回が 4 年目ですよね。4
めに時間を割いてくださいました。日本の人たちにとって
年で 1,000 名に達するのは、
本当に感嘆に値します。これは、
バージョン 3 は非常に新しいトピックだと思いますが、バー
日本がベストプラクティスをいかに急速に採用してきたか、
ジョン 3 になると何が起こるのかというのが、日本人の我々
また、it SMF Japan がその標準をいかに急速に広めてきたか
に対する疑問だと思います。日本で成長するために我々は
を示していると思います。我々は世界中の it SMF の支部と
何をするべきなのかという私の質問に、みなさんは親切に
連携を取りたいと思っています。その国のサービスマネジ
答えてくださいました。私がこの数日の間で見出したキー
メントへのベストプラクティスの展開の強さは、各地域の
ワードは、「完全性」です。ベストプラクティスは完全性と
®
it SMF の強さにかかっています。これは ITIL に限ったこと
誠実さに尽きると言えるでしょう。我々が日本でやらなけ
ではありません。ITIL は 1 つのプラットフォームにすぎま
ればならないことの 1 つは、日本でのパートナーとなる相
せん。メッセージを伝え、そのメッセージでコミュニケー
手を見つける方法を確立することです。なぜなら、我々は、
ションが図れる誰かが必要なのです。it SMF は非営利組織で
非常に品質を重視しているからです。我々が、より多くの
すから、自分たちの利益なしでそのメッセージを伝えなく
国へと拠点を拡大してこなかったことの理由の 1 つは、我々
てはならず、これはひとえにプロフェッショナリズムのな
の品質を重視した手順を、拡大によってコントロールでき
せる業です。我々の組織もまた非営利組織です。英国では、
なくなるのではないかと憂慮したためです。日本での数日
我々の組織は慈善団体として登録されています。ですから、
間の調査から、日本でのパートナーとなる相手側の組織は
我々がやっていることは、そういったプロフェッショナリ
すべて、最高の完全性と最良の商慣習を維持し続けてくだ
®
27
さることが期待できることがわかりました。今までさまざ
ころです。違いは壁でもありますが、同時にチャンスでも
まな国を訪れてきましたが、そのような国は少なく、また
あります。なぜなら、この最初の段階でうまくいけば、そ
残念なことに、それぞれの国が異なる方法で運用を行って
れ以降のすべてのものをよりうまく進めることができるよ
いました。しかし、日本のケースはよいお手本となります。
うになります。今までの翻訳作業ではいつもそうでした。
我々は、日本で多くの方々とともに仕事ができ、かつ、我々
我々はバージョン 2 に関する文書を、日本語、中南米スペ
®
が 8 年以上にわたって提供し確立した ITIL 認証の品質が
イン語、スペイン語、ハンガリー語などさまざまな言語に
維持される、と確信を持って言えます。
翻訳してきました。その際、我々は常に専門家の人材のネッ
トワークを活用して、翻訳した文書を彼らに読んでもらっ
インタビュア:しかし、日本人は大変細かいですよね。
て意味が分かるかどうかを確認していました。すると、
「こ
の部分が分からない」と質問されることもたびたびありま
Leavy 氏:確かにそうです。細かいことは良いことだと思
した。このようにして、分からないまま翻訳してしまう前
います。英国人は、他人とは距離を置き、ちょっと固く、
に、分からない部分については確認しておくことが、非常
ストレートで、おそらくフレンドリーではないと見られて
に大切なのです。
いるのではないでしょうか。しかし、多くの相違点もあれ
®
それは、翻訳先の国の専門家を活用することでなされる
ば、多くの相似点もあると思います。ITIL および it SMF
ものです。それについては我々のコントロール外ですが、
の役割は、そのような相違点を興味深くすばらしいものと
この点に関する我々と EXIN からの APM グループへの要
®
®
して受け入れ、ITIL が築いた ITIL という共通の言語を用
望は非常に重要で、必ず伝えておきたいと思います。我々
いて、皆とコミュニケーションを図り、国際的なベストプ
は人々に配る文書がありさえすれば満足というわけではな
ラクティス標準を真に確立することです。
く、文書は正しいものでなくてはならないことです。また、
私は、私の立場から参加者たちを観察しています。この
中で、ここで、重要な課題はバージョン 3 の日本語への翻
すべての書籍を参照した上での翻訳されたものでなければ
なりません。すみません、話が長くなりましたね。
®
訳です。日本市場は ITIL にとって現在 3 番目に大きい市
場です。今後もそれは変わりないと思いますが、私が知る
インタビュア:ありがたいことに、私どもが用意した質問
かぎりの他のどの国よりも急速に成長しており、2 番目に
のすべてに、すでにお答えをいただいたようですね。まる
大きな市場となる可能性も秘めていると言えるでしょう。
で質問が分かっていらっしゃったようです。
翻訳の方法は 1 つしかありません。書籍に書かれている
英語を取り出し、それを日本語に翻訳していきます。ただ
Leavy 氏:ええ、私は情熱を持っていますからね。我々の
し、この課程において、it SMF Japan のメンバが深く関与
組織も、すでにある程度、採算が取れています。私はサー
することなく、it SMF Japan からの情報を得ることに対し
ビスマネジメントの専門家ではなく、マーケティングの専
て全面的な協力が得られない場合は問題です。私は、この
門家です。ですから、世界中を回って展示会に参加し、資
2 日間、翻訳に関して強力な援助を得られる方々に、日本
料を作成し、新しい市場機会を探します。私は一瞬たりと
®
での ITIL バージョン 3 の出版を成功させるために、必ず
®
もサービスマネジメントの専門家のふりをしたことはあり
日本の ITIL の専門家たちを活用するようにとお願いして
ません。ファンデーション資格は持っていますが、そこが
きました。英語と日本語が話せる誰かに書籍を渡せば、確
私の到達できるレベルです。しかし、私にはサービスマネ
かに日本語には置き換わるでしょうが、さまざまな意味に
ジメントに対する情熱があり、ここ数年で非常に多くの友
解釈できる英文はたくさんあるのです。
人ができました。例えばアルゼンチンに行くときは、現地
ある女性に 15 ページの PowerPoint 文書の翻訳をお願い
の友人に事前に電子メールで連絡して、会う約束をします。
したことがありますが、全部翻訳するまでに、非常にたく
そして食事に行き、変化について語り合います。彼らは非
さんの質問を受けました。すべての書籍を翻訳するとなる
常に勉強熱心で、日本や米国での状況を質問されることも
と、どれほどの質問があがってくるか、想像してみてくだ
しばしばです。昨年、南アフリカでコンファレンスが行わ
さい。翻訳をできるだけ迅速に完了させるということも重
れたときは、参加者がたったの 50 人で、南アフリカの関
要ですが、翻訳作業だけが孤立した状態で行われないよう
係者は大変動揺していました。私は彼らに、50 人も集まっ
にすることも非常に重要です。英国のオフィスで、ロンド
たのだから動揺する必要はない、と言いました。そこから
ンに住む日本人を雇って翻訳をやらせるべきではありませ
が、始まりなのです。何にでも「始め」はあるのです。こ
ん。翻訳をするのは、その道の専門家でなければならない
のように、どこに行こうと人々が同じ話題、サービスマネ
からです。コンサルティングのプロセスも必要でしょう。
ジメントについて話しているのを見るのはすばらしいこと
この部分が、言語の違いを前提にした時、重要となると
28
です。たとえ私には彼らの話す言葉が理解できなくても、
それは大きな問題ではありません。でも、次に日本に来る
インタビュア:日本でのさまざまな意見ですね。日本人に
ときには、私も少し日本語を話せるようになっているかし
はあなたの日本への情熱はよく理解できます。あなたの情
れませんよ。
熱について翻訳し、ニュースレターに掲載しなければいけ
ませんね。
インタビュア:そうですね。日本での次のコンファレンス
では、
、
、
Leavy 氏:それはうれしいです。私は本当に情熱を持って
取り組んでいますから。日本のような美しい国に来られて
Leavy 氏:えぇ、実はすでに日本で何回かミーティングを
非常にうれしいですし、すばらしい人達と数日間をともに
行っています。有意義な議論が交わされました。ミーティ
過ごすのは、コンファレンスの内外を問わず大変すばらし
ングの結果、来年のコンファレンスの前にまた来日する
いことです。東京に来られただけでも、私にとってはすば
予定です。もちろん、来年のコンファレンスには必ず出
らしい経験でした。ガールフレンドも一緒に来ているので
席させていただこうと思っています。また、我々は it SMF
すが、彼女は買い物をしたりして、私より楽しんでいるみ
Japan を後援することも検討しています。例えば、it SMF
たいです。彼女は東京が初めてなんですが、もう次に来る
USA とは 1 年間のスポンサ契約を締結したところです。で
機会を待ちきれずにいます。彼女とも約束したのですが、
すから、日本に関しても是非検討したいと思っています。
今度は休暇で是非ゆっくりと訪れたいですね。
この件に関して、どうぞご遠慮なく私にご連絡いただけた
らと思います。
インタビュア:東京のほかにも、京都などいい場所がたく
さんありますからね。
インタビュア:次のコンファレンスについてはもうすぐ計
画を練り始める予定ですので、何か情報をご提供できるか
Leavy 氏:そうですね。私の通訳をしてくれた人が大阪近
もしれません。
くの出身だそうで、彼女が、大阪の人たちはとてもフレン
ドリーだから是非大阪を訪れるべきだと言うんです。次回
Leavy 氏:お願いします。日本ではすでに我々の認証(試験)
には行ってみようかなと思っています。
が実施されていますが、日本は成長市場であり、さまざま
な機会があるので、我々は日本での我々の規模拡大に大変
インタビュア:日本も地域ごとに色々な文化がありますか
関心を持っています。また、我々は it SMF を通して得られ
ら、是非またいらしてください。本日はどうもありがとう
るアドバイスを積極的に聞くようにしています。なぜなら、
ございました。
it SMF とはパートナシップのもとで協働しているからです。
ここ数年で我々が得られた最も役立つアドバイスやサポー
トは、いつも必ず各地域の it SMF からのものです。it SMF
Japan にもそれを期待しています。
インタビュア:it SMF は市場に近い位置にいますから、市
場で起こっていることをより理解していると言えるでしょ
う。
Leavy 氏:全くそのとおりです。我々には市場に密接に
関連した it SMF レベルの専門性がありません。そして、
it SMF にはさまざまな経験を持った人がいます。ファンデー
ションレベルの人もいれば、サービスマネジメントに 5 年
間従事している人、また、従業員がサービスマネジメント
が重要だと言っているので、それについて理解したいと考
えているマネージャもいます。ですから、日本でも it SMF
Japan に集まる参加者やメンバから、さまざまな視点の意
見を聞くことが必要です。
29
特集 2 試験・教育機関の ITIL® V3 に対する最新対応状況
∼ EXIN - Michiel Voort 氏 インタビュー ∼
it SMF Japan
it SMF Japan コンファレンスへ出展展示の為に来日された
EXIN の Michiel Voort 氏に、EXIN の ITIL® V3 の試験機関と
しての日本での今後の取り組みについてインタビューをさ
せて頂きました。インタビュアは、it SMF Japan 会報誌 編
集委員です。
取材日時:2007 年 8 月 7 日(火)
メインインタビュア 中川悦子
インタビュア:EXPO 展示会場にはもう足を運ばれたと思い
ます。コンファレンスに参加されたかどうかはわかりませ
んが、it SMF Japan コンファレンスについての感想をお聞か
せください。
Voort 氏:難しい質問ですね。言葉の壁がありますので、コ
ンファレンスのどのプレゼンテーションも聞いていないの
です。英語のプレゼンテーションもありましたが、過去に
聞いたことのあるものだったので参加しませんでした。た
だ、EXIN や it SMF International の国際的な活動に常に従事
している立場から言えば、it SMF Japan は総体的に成長して
おり、より重要なものとなっていると思います。各国、各
地域の it SMF の手本となるような it SMF 支部は現在のとこ
ろあまりありませんが、it SMF Japan はそのうちの貴重な 1
つだと言えるでしょう。
コンファレンスでのプレゼンテーションに対する人々の関
心の高さには目をみはりました。また、同時にすばらしい
と思ったのは、普通、展示会場と講演会場を分けると、ほ
とんどの場合、
人々は 2 会場をあまり行き来しないのですが、
日本では、今日の午後はどちらも盛況だったことです。昨
日の午後もそうでした。コンファレンスの参加者は展示会
にも関心を持っているのです。コンファレンスのプレゼン
テーションはまだ聞く必要がないけれども、展示会には興
味がある人々もいるようです。これも良いことだと思いま
す。人々が今どういうレベルにいるかということを把握す
るのは難しいですが、V3、ISO 20000、または COBIT® に
ついて話をするときは、現在人々がこの市場でどの位置に
いるか、市場で今どういうことが起こっているかを理解し
ておく必要があります。
を伴うことで、2 年間成長したかと思うと、それ以降は衰退
していくといった場合もあります。it SMF Japan の場合はそ
うではありません。ですから、それに関しては自信を持ち
続けてよいと思います。成長は早すぎてはいけません。着
実であるべきです。it SMF Japan は適切な関心を集めており、
また適切な活動を行っていると私は思います。これまでの
活動の成果について満足されてよいのではないでしょうか。
インタビュア:将来、日本において何か具体的な計画や新
しい計画をお持ちですか ?
Voort 氏:我々 EXIN は、ITIL® を含む IT サービスマネジメ
ントはますます国際的な市場を形成していくと考えていま
す。ご存知のように、我々は既に、ヨーロッパ内やその外
の地域に多くの拠点を持っています。それらをさらに成長
させるための具体的な計画はありません。なぜならば、ほ
かにも拠点を作りたい多くの重要な市場があるからです。
次のステップは当然、我々の活動をより地域に密着したも
のにすることです。例えば、現在 ITIL® または ISO 20000
について何らかの決定がなされると、、、いえ、これは良い
例ではありませんね。ほとんどの場合、重要な決定事項は
世界中で同様に適用されます。しかし国ごとの事情の違い
を考えると、我々は各国で必要とされている事柄について
もっと調査するべきだと感じています。これは関係する皆
様にとってもよいニュースになると思いますが、我々は、IT
普通、各地域の it SMF が継続的に成長していくことは困難
30
業界の実情や、どのような種類の学問的プログラムやサー
ビスの内容が試験で求められているかといった実態を、国
インタビュア:V3 試験に関して何かご意見をお聞かせく
ごとに調査するスタッフを手配する予定です。その調査結
ださい。
果は、日本と米国、またはオランダでは異なっている可能
性があります。IT サービスマネジメントは ITIL® よりもずっ
Voort 氏:V3 での試験プログラムは当然 V2 のそれとは総
と幅広いので、それが次のステップだと思います。
体的に異なります。これはよいことでもあり、また、改善
すべき点もあります。V3 での試験プログラムは現在まだ
新たな面白い展開もあります。EXIN とマイクロソフトは
提案の段階で、完成しておらず、パイロット運用している
現在、MOF プログラムに関して緊密に連携を取り合ってい
ところです。世界中で専門家と協力しながら数多くのパイ
ます。まもなく、2 組織間での公式合意の発表があるでしょ
ロット・セッションを立ち上げています。そして、専門家
う。ここでみなさんとそのプレスリリースについて分かち
のみなさんから、全ての試験、ファンデーション試験、お
合いたかったのですが、マイクロソフト側がまだ詳細の文
よび総体的な構造について各種意見を頂戴しています。ま
書化に手間取っているみたいですね。しかし、もうまもな
た、市場からのコメントや懸念事項について検討し、その
く発表されるはずです。
結果を認証委員会に提出し、パートナと協議しています。
MOF は非常に重要ですが、ISO 20000 も当然重要です。
V3 の試験プログラムにあるクレジット・ポイントを使っ
ISO 20000 の認証を得ようとしている企業のために、次に
たシステムについては、もうご存知のものと思います。次
続く論理的ステップが必要だと考えています。英国の場合、
のステップは、それが実際に機能するかどうか、また人々
先週 it SMF UK とミーティングを持ち、初期の条件を確認
がそれを認めるかどうかを確認することです。また、我々
し合い、審査員やコンサルタントのために何か役立つもの
が目標としているような価値を持つかどうかも見極めなく
を用意してはいけないかと話し合ったところです。それは、
てはなりません。少なくとも、新しいシステムなので、結
関係する人々が参加できる真に開かれた標準のもとで、な
果を評価することは良いことです。しかし、その結果や進
おかつ ISO のアプローチに沿ったものでなければなりませ
展状況を発表する必要があります。
ん。
この中で少し心配なことは、ファンデーション試験につい
このようなトピックに対して、例えば我々の母国であるオ
てです。ファンデーション試験は約 1800 ページにも及ぶ
ランダではあまり関心を持たれていませんが、日本では関
ITIL® V3 の 5 冊の本に基づくことになり、その膨大な資料
心を持たれている場合があります。ですから、我々はオラ
を既存の研修期間の 2 日間で詰め込むのは非常に困難です。
ンダで関心が持たれていないから日本ではやらない、とは
当然ながら、その点を指摘するコメントもすでに多く寄せ
言えないのです。我々はやります。だた、オランダではや
られています。そこで、我々は V3 全体についての概要を
らないかもしれません。我々はそのようにして成長するの
まとめた何かが必要だと考えています。短期的には、次に
です。ほかにもセキュリティに関して興味深い ISO 規格が
述べる 2 つの対策が考えられます。
導入される予定です。それは非常に重要で、現在、ISO 規
格および ITIL® 書籍でも対応が図られようとしているとこ
1 つ目は、ファンデーション試験をこれら 5 つの領域の一
ろです。それ自身が 1 つのトピックですし、注目に値する
部分に焦点を当てたものにすることで、もう 1 つは、ファ
でしょう。
ンデーション試験の内容の手引きとなる書籍を作成するこ
とです。現在は、ITIL® V3 の 5 冊の書籍と試験の内容との
我々のグループを拡張する一方で、我々は、多くの人々が
間にギャップがあり、専門家もそれを認めています。我々
なおもサービスデスクの実行や顧客サポートのやり方に手
は、数多くのプレゼンテーションを行ってきた経験から、
間取っていることを忘れるべきではありません。つまり、
1 度のプレゼンテーションで、複数のメッセージの中から
IT サービスマネジメントの基本への注力を怠るべきではあ
1 つや 2 つのメッセージに限って伝えることが非常に困難
りません。幅広いトピックに注意を寄せると同時に、将来
であることを知っています。
的なトピックにも関心を持ち続けるということですね。そ
して、企業を認証する組織との連携も考慮する必要があり
これは懸念事項の 1 つだと言えますが、我々はフィードバッ
ます。研修での個人の認証が、組織の認証にも関連するこ
クを得ています。ISO、そして APM グループが得るフィー
とを示すことができますからね。これはとても重要なポイ
ドバックと合わせて、ファンデーション用の新しい書籍の
ントでしょう。この点について、みなさんにも同意してい
作成を促すか、ファンデーション試験を少し変更するかを、
ただけることを期待します。
腰を据えて検討しなければなりません。これが、我々が得
31
ている試験プログラムに対しての最初のフィードバックで
インタビュア:特に日本では、まだ翻訳書籍すら出版され
す。
ていませんしね。
インタビュア:昨日、その件に関して話があったときに、
Voort 氏:昨日、APM グループのリチャード・ファロ
(Richard
Van Haren が、ファンデーション用の書籍を準備している
Farro)氏ともその件について議論したのですが、彼はまず
ことを聞きました。しかし、英国の TSO と、内容に関して
用語集が必要で、そこからスタートすると言っています。
まだ討議をしていると聞いています。
でも、もしまだ翻訳された ITIL® V3 の書籍がないからと
言って、用語集を基にして研修プログラムを改訂し始めた
®
Voort 氏: そ の と お り で す。ITIL V3 対 応 の 公 式 試 験
としたら、半年後に発行された翻訳書籍の内容が、用語集
は TSO の書籍を元に作成されることになっています。で
での用例と少し異なるかもしれないというリスクを抱える
®
す か ら、 た と え ITIL に 関 し て、Van Haren、Academic
ことになります。そのような事態は招きたくないですよね。
Service、あるいは Addison-Wesley が書籍を出版しても、
試験は TSO 書籍に基づくものとなります。だから私は TSO
インタビュア:1 つの例として、我々はこの会場で V3 書
に提案しました。相互活用できる書籍を作成するべきだと。
籍を販売していますが、昨日は 5 セットしか売れませんで
もちろんほとんどの人がそれに賛成しました。2 日間のコー
した。それがもしも日本語版だったとしたら、10 倍、いや
スに参加する人が 300 ポンドも出して 5 冊の書籍を購入す
100 倍は売れていたかもしれません。同じことが認証やト
るとは思えません。1800 ページも読まないですよね。
レーニングで起こるとしたら、、、
新しい書籍を作るにしろ、そうでないにしろ、各地域の
Voort 氏:時間はかかるでしょうね。もちろん最終的には
it SMF およびさまざまな人々より、もっと多くのフィード
全員が V2 から V3 に進みます。それは確かです。我々の
バックが必要です。ファンデーションで 5 冊の書籍すべて
オフィスには V1 がまだたくさんあります。たくさん買い
をカバーしたほうがよいのか、それとも例えば『サービス
すぎたんですね。それと同じことが V2 にも起こるでしょ
オペレーション』に主に重点を置き、それに『サービスス
う。これは、どれだけ早い時期にそれが起こるかというだ
トラテジ』と『継続的サービス改善』の要素を少し加えた
けの問題です。別の問題として、我々はすべてのコースを
ものにしたほうがよいのかなどについて、考えなければい
提供することができるでしょうか。例えば、ファンデーショ
けません。現在は何か新しいことが市場にもたらされてい
ンの形式は正しいでしょうか。すべてをカバーしているの
®
る段階です。ITIL V1 から V2 への移行の場合は簡単でした。
で内容はいいのですが、すべてをカバーするが故に膨大に
そのときの市場ははるかに小さく、対象とすべき人々の数
なる可能性があります。
も少なく、赤本と青本が最終的に出版されたときにそれら
を受け入れるのも容易でした。しかし、
現在では市場はずっ
また、別の懸念事項もあります。これについては、教育事
と大規模になり、さまざまな国と地域から関心が寄せられ
業者と今年の後半に協議する予定です。認証の構造には、
ています。
ディプロマ・レベルに達するまでに取得しなければならな
い認証が 9 つあります。教育事業者はこれら 9 つの認証の
たとえば、イタリアは欧州における我々の活動拠点の 1 つ
教育を全て実施できるよう、すべてに投資するつもりがあ
ですが、イタリアでは V2 を使い始めたところです。です
るでしょうか。一部にしか投資しないかもしれません。小
から、
『サービスストラテジ』や『継続的サービス改善』に
規模な教育事業者で、これらの試験トレーニングすべてを
関するトピックを論じるのは、まだまだ先のことでしょう。
提供できない場合はどうなるのでしょうか。これらのこと
国によってそのような違いがあるのです。そのような理由
に関しても検討の必要があります。
で、EXIN は、2008 年 1 月 1 日に V2 を終了するべきでは
ないと、認証委員会で強く主張しました。また、V3 が開
基本的には大丈夫に見えても、プログラムの実施の過程で
発され、受け入れられ、軌道に乗った場合に初めて、V2
見えてくることもいろいろとあります。it SMF Japan のみ
の終了または終了の準備ができるのです。我々はまだ V3
なさんや顧客が望むことを柔軟に受け入れていく必要があ
を始めたばかりで、V3 では 100 回ほどの試験を行っただ
ると思います。そのためにも、it SMF International は国際
けです。ごく初期段階です。ですから、今、V2 の終了に
的な調査を実施しています。これは先週、配信されたもの
ついて話をするのは時期尚早すぎると思います。
ですが、こういった調査の結果は、認証の仕組みを維持し
続けていくために大歓迎です。時として、我々はみな、英
国が認証の仕組みを構築しているという印象を持ちます
32
が、我々 EXIN は、英国の企業ではありませんし、みなさ
んも英国の企業ではありません。国際的な仕組みとして構
築しているのは、英国以外の企業だけなのです。ISO また
は APM グループの作業が悪いと言っているのではありま
せん。ただ、このことは非常に重要です。
ご存知のように、it SMF International は it SMF UK と密接
に関係しています。英国以外の支部および組織にとって、
オーナシップを築く大きなチャンスだと思います。もし、
みなさんが、プログラムに対するフィードバックがあれば、
EXIN Japan に、もしくは私に送ってください。我々はその
フィードバックを認証委員会に持ち込み、できるだけ反映
させたいと思っています。それが、我々やみなさんすべて
にとって利益になると思います。
インタビュア:最後の質問になりますが、試験機関として
日本市場、そして日本の教育コース提供事業者にどのよう
なことを期待されていますか。
Voort 氏:私の視点から言えば、V3 が、特に大きな組織に
受け入れられるようになると、我々は緊張をしいられる立
場に置かれることになるでしょう。ただし、その受け入れ
の度合いが、現在の V2 と同じような規模または重要度を
持つかどうかは定かではありません。人々は V2 の内容を
利用し続けたり、V3 対して有効性の確信を持てず、他の
ものを探し始めるかもしれません。それは MOF かもしれ
ませんし、
ISO またはその他のものかもしれません。しかし、
我々 EXIN はそのようなことには追従しません。なぜなら、
ITIL® V2 のたくさんの利点が V3 にも反映されていると信
じているからです。ですから、我々は V3 のプログラムの
進展を維持していきたいと思っています。
しかしながら、ITIL® V3 の利点や、V2 と V3 との関連性を
明確に市場に伝えることができなければ、利用者は市場で
他のものに乗り換える可能性があります。V2 に関して我々
が達成してきたすばらしい点の 1 つは、サービスマネジメ
ントの基本に関する共通の言語を確立してきたことです。
そのことが、ファンデーション試験全体における鍵と言え
るかもしれません。人々は IT がサービスを提供する方法に
ついて共通の言語で話すことができるのです。人々があれ
これやり始めて、MOF をかじってみたり、次に ISO を導入
したりなどするようになると、その共通の言語は失われて
しまいます。そうなると、元の木阿弥です。我々は、共通
言語の利用を推進し、市場でその存在を維持できるように
努力するつもりです。EXIN Japan のマネージャもそれに同
意してくれると思います。
インタビュア:本日はどうもありがとうございました。
33
特集 2 試験・教育機関の ITIL® V3 に対する最新対応状況
∼寄稿 ITIL® V3 認定教育・試験の動向について ∼
IT プレナーズ ジャパン / アジアパシフィック 代表取締役 柳沼克志
はじめに
2007 年 6 月 13 日に ITIL® V3 の新しい認定教育・試験
のひとつである「ITIL® V3 Foundation Certificate」が英
語で開始されました。私は ITIL® V3 Examiners パネル 16
人チームの 1 人として、2006 年 12 月からそれら認定教
育・試験の枠組み・Syllabus(教育摘要)
・試験問題及び解
答の策定をしています。
(http://www.itil-officialsite.com/
Qualifications/ITIL3Examiners.asp)
今後その他の認定教
育・試験が順次発表されていきますが、今までの ITIL® V3
認定教育・試験検討の背景や現状について伝えさせて頂き
ます。
1. スムーズな移行
ITIL® は今や世界で延べ約 50 万人以上の方々が既に学習
背景
をしてきており、多くの方々が携わっているフレームワー
クです。その既存の学習者または関係者の方々が V3 にス
ITIL® V3 は所謂 Refresh Project を経て 2007 年 5 月に
ムーズに移行できることが重要との認識を共有しました。
5 冊の書籍として発表がされました。新しい ITIL® である
そこで、V2 時代までの各教育を受講済みの方々が新しい
V3 を正しく普及させていくには、その新しい内容にあっ
V3 との差分を学習できるように、複数の Bridge コースを
た新しい認定教育及び試験の枠組みの構築が不可欠との
設計・開発しています。2007 年 9 月末時点では、世界的
認識に基づき、Official Accreditor(OGC が委託した公式
にニーズの高い Foundation と Manager レベルの Bridge
な認定機関)である APMG が 2006 年 12 月に書籍の発
コースについて、Syllabus が発表されており、今後随時各
表に先立ち V3 の Examiner Board チームを発足させまし
ATO が認定教育の開発・提供を開始しています。
(詳細後述)
た。Examiner Board はその他のステークホルダーである
EI(Examination Institute:APMG が認めた試験機関である
APMG(自身)、EXIN、ISEB、LCS)
、や ATO(Accredited
また教育の内容に加えて、バージョンアップに伴う資格
の有効性や移行についても確認・検討をしました。結果と
して V1/V2 で修了 / 取得されている所謂ファンデーション
Training Organization:認定を受けた教育機関)や普及団
体である it SMF 等とは独立した形で組織されています。最
終的な決定権限は持っていないですが、あるべき認定教育・
試験の提案をしていくチームの位置づけになっています。
/ プラクティショナ / マネージャレベルの各々の認定資格は
現在も将来も有効であることを確認しました。それでも V3
ベースの新しい認定資格取得を希望される方々には、取得
済み認定資格を V3 ベースの新しい認定資格に移行できる
ような設計をしています。移行される各々の認定資格に依
ITIL® V3 認定教育設計の方針
存した様々な条件がありますが、基本的には Bridge コース
を受講し、Bridge 試験に合格後 " 単位 "(Credit)を取得す
現在は認定教育・試験毎等のサブチームに分かれて主な
ることで、大学の単位制の様に資格取得が可能になります。
作業を行っていますが、
当初は 16 人が 1 つのチームとして、
以上のように、V3 という大きな変革にともなう変更イン
ITIL® V3 教育を考える上で、どのように進めていくべきか
パクトを可能な限り軽減したいというのが大方針です。従っ
メンバー内で様々な意見交換や話し合いを行いました。メ
て、繰り返しになりますが、V1/V2 時代の認定資格自体の
ンバーの中には V1 時代から関わっている方々もいて、V1
有効性は変わりませんし、内容・資格についても Bridge コー
から V2 へのバージョンアップの経験をふまえ、いつかの
スにより移行できるような意図で設計がされています。単
方針を確認しました。
位数については、新しい認定教育・試験の動向を見ながら、
34
3. グローバルスタンダードとしての ITIL® V3
今後確定していく予定ですので、現在発表されている単位
数については、あくまで暫定版として確認されることをお
薦めします。また、V2 認定教育・試験自体の提供が終了す
3 番目の方針は、グローバルに普及している ITIL® V3、と
るタイミングについても様々な情報が飛び交っていると思
いうことを強く意識することです。ITIL® はご存じの通りイ
いますが、まだ日付は確定していませんし、学習者、さら
ギリスが発祥で、ヨーロッパを皮切りに世界に徐々に広がっ
には教育に関わるステークホルダーの方々がスムーズに移
てきました。それが 2006 年の V2 の認定教育・試験の動向
行できることを考慮し、十分な移行期間が用意される予定
を見ると、日本を含んだアジアを初め、北米・南米と言っ
です。
た地域で急速に普及が進んでいます。そこでヨーロッパの
人間だけではなく、私のようなアジアの人間や他地域の人々
も ITIL® V3 Examiners パネルに選ばれ、各国・地域の特性
2. 段階的な学習の推進
や動向を可能な限り反映していく意図があります。
2 番目は段階的な学習、言い換えれば、各認定教育コース
またグローバルに多くの方々に提供していくためには、
間での要求水準や内容の飛躍がないような設計をすること
従来からのクラスルーム方式だとキャパシティーや地域の
を意識しました。V2 時代は、近年のプラクティショナコー
制約条件があります。そこで E ラーニング等、他の手段で
ス(特にクラスターコース)普及前までは、日本に限らず
の教育も推奨されます。また言語についても、英語で開発
世界でも多くの方が、ファンデーション受講後マネージャ
した認定試験問題・解答は順次各国語に翻訳がされ、グロー
レベル受講との流れでした。しかしながら、その間の要求
バルに展開されていく予定です。翻訳については、各国語
水準のギャップが大きかったとの認識があります。そこで、
の用語集(Glossary)が it SMF インターナショナルから正式
V3 では Foundation は共通語としての言葉の理解と全般概
に発表され次第着手していく段取りになっています。日本
要の理解というエントリーポイント(入り口、基礎コース)
語については用語集が発表されたばかりで、今後作業が本
として定義づけ、
「プロセス」や「ライフサイクル」という
格化すると思いますが、提供開始日等の具体的な日程はま
切り口での深い内容の理解は、
Intermediate レベル
(Lifecycle
だ計画中です。
Stream/Capability Stream)で学習する枠組みとしました。
ITIL® V3 Foundation について
(V3 Foundation については後述)
また、V3 の対象としている内容が IT サービスのライフサ
イクルの初めから終わりまでの範囲をより網羅的・体系的
現在、Syllabus が公開され認定教育も順次スタートして
(総体的)にカバーすることになり、結果としてそれらを正
いる ITIL® V3 Foundation についての少し検討の背景を説
しく漏れなく伝えるためには、Intermediate レベルコース
明します。前述のように、ITIL® V3 Foundation はエント
の細分化が必要となりました。これには立場によって様々
リーポイントとして位置づけられています。そこで、V3
なご意見があるかと思います。例えば人材開発部等として
Foundation では、
「サービスとは ?」
「付加価値とは ?」また「そ
認定教育・試験を社員に提供していく立場であれば、コー
の付加価値を生み出すメカニズムとは ?」と言った " そもそ
ス数が増えコストや教育日数が増えるように見えるかもし
も " プロセスを考える前に IT サービスとして認識しておく
れません。認定資格を目的にしている受講者の立場であれ
べきことを整理できるようにしています。また、ライフサ
ば、様々なコースに出ないと上位の資格が得られないよう
イクル上で各プロセスが相互にダイナミックに影響し合う
に見えるかもしれません。一方で、ライフサイクルの初め
点の理解を重視した内容になっています。(i.e. V2 の各プロ
から終わりまでの IT サービスマネージメント(ITSM)の学
セスはどちらかというと直列型・直線型に対し V3 はネット
習という、そもそも広範囲に渡る深い内容をきちっと学習
ワーク型・動的) V2 時代のファンデーションの " プロセス
するには時間や労力が掛かるがその代わりリターンも多く
" 単位での学習をされていた方から見ると、各プロセスの深
あるとの意見や、技術的な IT 教育では様々な分野またはベ
さや、V3 の全てのプロセスをカバーしていない点に、物足
ンダ毎に体系的な教育が存在し、ITSM 分野もそれに近づい
りなさを感じるかもしれません。ただ前述の通り、その各
たとの意見も聞かれます。教育に携わる方々には、このよ
プロセスについては、Intermediate レベルで学習するとい
うな意見や立場による目的の違いを考慮した上で、うまく
うことに Foundation の位置づけが再定義された形になって
Intermediate レベル教育を提案・提供していくことが求め
います。これは、V3 のスコープが V2 の所謂サポート / デ
られるかと思います。
(例えば、
複数の Lifecycle コースをミッ
リバリの範囲よりも広くなったため、従来のように全ての
クスして一括提供 等)
さらには、移行期間中には V2 既
プロセスについて Foundation レベルで確認することはでき
存教育と Bridge コースが加わるため、それらを考慮して提
ない制約条件を考慮した結果でもあります。仮に全てのプ
供していくことも求められるかと思います。
ロセスをスコープにすると、エントリーポイントのコース
35
終わりに
に期待されている学習時間要件(数日程度)では教育しき
れないジレンマを念頭に置きつつ、最低限必要と考えられ
るプロセスの取捨選択を行い、そもそも論とライフサイク
2007 年 9 月現在の状況を鑑みると、2008 年は V2 と V3
ルベースを強く意識したコースになっています。
の認定教育・試験が併存していく可能性が高いと思います。
従って、各学習者の方々、教育に関わっている方々は、そ
®
ITIL V3 認定教育の現在と今後
れぞれのニーズにマッチした認定教育・試験を取捨選択し
ていかなければならない難しい期間になるかと思います。
2007 年 9 月現在、上述の Foundation と Foundation の
人によっては、様々な V3 教育が展開されるまで待つアプ
Bridge コースについて、Syllabus が公開され認定教育・試
ローチもあるかと思いますし、V2 から V3 への Bridge コー
験が開始されています。また、Manager の Bridge コースに
スによる認定資格の移行を念頭に、今のうちに V2 認定教
ついては Syllabus が公開され、認定教育・試験の準備が進
育・試験をどんどん受けて、認定資格取得を進めておくと
んでいます。今後は以下のようなコースが順次展開されて
いうアプローチもあるかと思います。但し、いずれにせよ
いく予定です。ただ、詳細な日程等は未定なため、今後暫
認定教育・資格の継続性は保証される予定ですので、あわ
くは V2 認定教育・試験が平行して提供されていくことにな
てず本来の目的にあった認定教育・試験を受験されていく
ります。
冷静さが必要かと思います。その判断をして頂くためにも、
ITIL® V3 認定教育・試験の公式な認定機関である APMG や
EI/ATO/it SMF と言ったステークホルダーの方々からうまく
<2007 年 9 月現在発表済の V3 認定教育・試験 >
・Foundation
情報提供をし続ける必要があるかと思いますし、私自身も
・Foundation Bridge コース
微力ながらそのお役に立てるよう活動を進めていきたいと
・Manager Bridge コース(Syllabus のみ)
思いますので、ご支援の程よろしくお願いします。
< 今後の V3 認定教育・試験展開予定 >
Intermediate:Capability ストリーム
以下の 4 つのコースの展開を予定しており、V2 のプラク
ティショナコースに近い内容で、ITSM 実務者の方々を主な
対象者と想定しているコースです。
・Planning Protection & Optimization
・Service Offerings & Agreements
・Release, Control & Validation
・Operational Service & Analysis
Intermediate:Lifecycle ストリーム
以下の 5 つのコースの展開を予定しており、ライフサイ
クル全体ないしはその一部を管理する方々を主な対象者と
想定しているコースです。
・Service Strategy
・Service Design
・Service Transition
・Service Operation
・Continual Service Improvement
Advanced レベル
・Managing Across the Lifecycle (試験のみの予定)
36
ITIL ® バージョン 3 著者に聴く
®
From SERVICEtalk
ITIL® バージョン 3 の書籍は熱烈に待望されていたと言っ
た。よって、この書籍はある意味とても新しい書籍だとい
®
ても過言ではありません。この 5 冊の新しい ITIL 書籍は
えます。実に素朴な問いかけから始めているので、サービ
サービスマネジメントの未来を表していると言えるでしょ
スマネジメントの基礎についての書籍だと言うこともでき
う。ServiceTalk では独自にその著者たちに取材することで、
るでしょう。
新しい書籍では具体的に何が変わったのか、その変化はサー
公式には、『Service Strategy』とは、ビジネスと IT が両
ビスマネジメント業界にどのように影響するのか、この画
者にとって最良のものをもたらすように整合させることを
期的な作品を生み出すのにどれほど膨大な量の労力と献身
目的とした書籍です。ITIL® V3 は IT サービスのライフサイ
が投じられたのかを探ってみました。
クル全体をカバーするよう構成されていますが、
『Service
Strategy』はライフサイクルのどの側面でもビジネス・ケー
スに焦点を当てるようにしています。
『Service Strategy』に記載されている手引きは、公共部
門および民間部門のサービス・プロバイダに関係するもの
です。戦略的な見通しを立て、顧客の頭の中に明確な位置
付けを確立し、サービス・ライフサイクルを通して効果的
に実施していくうえで役に立つようになっています。また、
顧客が事業で成果を出すことをサービスマネジメントのあ
らゆる議論の中心に置いており、サービスをサービス・プ
ロバイダの能力とリソースを使用して顧客の事業活動を助
けるためのメカニズムだと見なしています。
■ Service Strategy
旧版と異なるのはどこで、それはなぜですか ?
■ Service Design
■ Service Transition
先ほども少し触れたように、この書籍の内容の多くは新
■ Service Operation
しいものです。ITIL® に期待するもののなかで恐らく最も大
■ Continual Service Improvement
きな変更点は、ITIL® が提供する投資機会を読者が理解しや
すいよう、マーケティングに多くのページ数を割いたこと
■ Service Strategy
でしょう。私たちはサービス製品マネージャという新たな
マ イ ケ ル・ ニ ー ブ ス(Michael
役割を導入しました。それぞれのサービスのライフサイク
Nieves)
マジッド・イクバル(Majid Iqbal)
共著
ルを管理することがその仕事です。この役割を導入したこ
とは極端に見えるかもしれませんが、会社が販売する製品
に対して顧客の視点から物事を見るアカウント・マネージャ
を設けるのと違いはありませんし、これによって誰のため
にサービスを提供するのかという認識をいろいろな点で変
えてくれます。顧客は一定の事業成果を望みますから、私
たちは IT の専門家として、どうすれば事業を助けてより多
『Service Strategy』の内容についてお話ください。
くの業績が達成できるかに常に焦点を置くべきです。請求
処理を期日までに行う手助けをするといった非常に簡単な
ITIL® V3 の内容の多くは V2 が元になっていますが、おそ
ものもあれば、非常に複雑なものもあるでしょうが、要す
らくこの書籍は V2 の内容から最も大きく離れている 1 冊で
るにすべてが成果を基準にして推進されるべきだというこ
しょう。この書籍では、ITIL® に全く新しい概念を導入しま
した。V2 では IT と事業について多くが語られていますが、
とです。
IT とは一体何なのかについてほとんど触れていませんでし
37
『Service Strategy』で最も論議を呼ぶ部分はどこだと思いま
すか ?
同じ考えを持つのは私たちだけではありません。ガート
ナー社などの市場調査会社もこうした概念の利点を提唱し
ています。
私たちは冒険をしました。この書籍が価値あるものとな
協議する中で、「まだ十分に掘り下げられていない。内容
るには、差し障りのない意見を採用して単純に事実を記述
が基本的すぎる」といった全く正反対の反応もありました。
するだけではなく、V2 とは異なるものにしなければならな
しかし、サービスマネジメントの専門家で学術面の経歴や
いと意識していたからです。こだわり過ぎていると思った
ビジネス・スクールで学んだ経験を持つ人はほんのわずか
こともありましたが、自分たちは応募者の中から選ばれた
ですから、私たちが ITIL® に持ち込もうとしている事業の概
のであるし、その成果には皆が期待をかけているのだとい
念は有益であるというのが、私たちの考えです。
うことを自分たちに言い聞かせる必要がありました。ITIL
®
の適用範囲を拡大する面で私たちがやってきたことに異論
執筆にあたってどのような困難がありましたか ?
を持つ方が出るのは確かですが、サービスが産業化されつ
つあるという事実は無視できません。概念の幾つかは一部
他の著者と比較すると私たちは門外漢でしたが、多大な
の方には馴染みのないものかもしれません。例えばサービ
サポートを得ることができました。特にシャロン・テイ
スの力学においては、最終的には配線図のようなプロセス
ラー(Sharon Taylor)、デイビッド・ウィールドン(David
図に行き着きます。しかし、私たち 2 人はこうした概念に
Wheeldon)、シャーリー・レイシー(Shirley Lacy)は、ア
®
ついて幅広い経験を有しているため、これらが ITIL へどの
イデアを膨らませて限界の枠を押し広げるうえで絶えず私
ように対応付けられるのかが明確に分かっています。いち
たちを激励してくれました。執筆は私たち 2 人のどちらに
早く返ってきたフィードバックの中には、サービスの力学
とっても大仕事でした。何度も週末をつぶして、家族との
のような要素を導入したことに満足しているという意見が
時間がなくなりました。
見られました。なぜなら、サービスマネジメントは単純な
執筆が終わってとてもよい気分ですし、二人とも出来上
因果関係の上に成り立つものではないし、人生は直線的で
がるまでを楽しめました。フレームワークに幾つか基本的
はなくて時には非線形的な思考が必要だということを認識
なアイデアを持ち込むという、またとない機会を得たのだ
することができるからです。
と自分に言い聞かせていました。私たちは ITIL® に異質なも
のを持ち込みましたが、それが普及してくれるよう期待し
どの部分が最も異論を巻き起こし、それをどのように克服
ています。ありがたいフィードバックもありまして、例え
しましたか ?
ばウォール街の某大企業からは私たちと同意見だと言って
もらえました。この書籍にはまだ欠点もあるので「もう一
フィードバックへどう対応するかが主な難題でした。批
度やり直せたらなあ」といつも思っていますが、そんなこ
判者が指摘するのは、やっていることが間違っているとき
とをすれば決して書き終わらなかったと思います。本当の
か、正しいときかのいずれかです。批判者が最も騒ぎ立て
評価は市場がやってくれると思いますが、時間がたてばわ
るときは、たいていは正しいことをやっているからなのだ
かるでしょう。
と気付きました。
「学術的すぎて、夢物語のようなものだ」
というような意見も聞きました。しかし、私たちはこれら
の理論が現実に機能しているのを目にしてきました。ベス
現実の世界で
『Service Strategy』は現実の世界でどう役立ちますか ?
トプラクティスが広くは採用されていない場合もあります
が、その説明にはこれらの概念の幾つかが当てはまると思
います。
事業戦略に関する書籍はすでにたくさんありますから、他
のどこかで述べられていることの繰り返しには絶対になら
製品マネージャの概念を例に取りましょう。この役割を
ないようにする必要がありました。導入した事業指向の概
導入している企業は非常に少数ですが、そういった企業が
念のどれもがサービスマネジメントと直接的な関連性を持
業界をリードしており、この点でベストプラクティスが形
つように努力しました。いろいろな意味で巨人の肩の上に
作られていると考える十分な根拠を私たちは持っています。
立っているかのような感覚にとらわれましたが、こうした
このことを提示したとき、中には非常に喜ばしい反応もあ
アイデアが ITIL® の中で役に立つようにさらに 1 歩踏み込み
りました。私たちのところまで来て、こうした概念を導入
ました。
してくれて非常に感謝している、おかげでサービスマネジ
メントをいかに前に進めるかについて考え出してきたアイ
この書籍の効果として期待しているのは、読者にサービ
デアについて経営陣から支持を得る方法が分かった、と話
スマネジメントについてこれまでになかったような角度か
してくれたのです。
ら考えてもらうことによって、その好奇心を刺激すること
38
です。この書籍は始まりでしかありません。1 冊の書籍では
ること」だと結論付けました。
決して満足することはないでしょう。一読すればじっとし
私たちの信念は進化であって革命ではなく、これは V3 の
ていられなくなるはずです。巻末には、こうした新しいア
重要なテーマでもあります。実装しても測定できなければ
イデアを育むためのさらなる読み物や提案に富んだ、5 冊の
サービスを設計する意味はありませんので、私たちは総体
書籍のいずれにも関係する非常に詳細な参照文献リストを
的な設計を作り出したのです。
掲載しています。
この書籍で最も論議を呼ぶ部分はどこだと思いますか ?
■ Service Design
バ ー ノ ン・ ロ イ ド(Vernon
Lloyd) コ リ ン・ ラ ッ ド(Colin
Rudd)
最も困難だったのは、5 冊の書籍それぞれの適用範囲を定
義することでした。『Service Design』はどこからどこまで
カバーするのか、記述されているプロセスのすべてが 1 つ
の統合されたプロセスのフローとして機能するようにする
共著
にはどうすればよいのか、また、現実の世界でこれらが役
に立つようにするにはどうすればよいか、といった疑問が
あったわけです。IT サービス・プロバイダには絶えず変化
する要件が与えられ、正しいやり方にでも異論を唱える人
は必ず出てくるものです。私たちが行ったことに反対する
人も出てくるでしょう。
『Service Design』の内容についてお話ください。
この書籍は IT の方針、アーキテクチャ、および文書の作
成と保守がテーマで、サービス・マネージャが適切で革新的
な IT サービス・ソリューションとプロセスを設計する手助
けとなることを目的としています。概念としては、Service
Design の達成目標と要素、Service Design・モデルの選択、
コスト・モデル、利益とリスクの分析、Service Design の実
施、測定とコントロールなどがあります。
このプロジェクトに参加された理由は何ですか、また執
筆のうえでどのような困難がありましたか ?
本業にも時間を割かなければならないことを考えると非
常に厳しいスケジュールでした。書籍を書く材料を揃える
ため、できるだけ多くの情報源からできるだけ多くの情報
を集めようと努力しました。ベストプラクティスは 1 人の
人間の意見ではなく、多数の人のアイデアですから。私た
ITIL® 書籍の旧版とはどこが異なり、変更が必要となった
理由は何ですか ?
ちは 2 人とも IT 業界に長くいるので、アイデアを確かめて
みる相手には恵まれています。そうすることで、何が誰に
とってなぜ役立つのかが分かります。その後は、その中か
主な違いは、V2 では内容が 3 つの書籍に分散していたこ
とです。V3 では ITIL® の構造全体がサービス・ライフサイ
クルを中心に記述されているため、全体的な設計の実施と
検討がより簡単になっています。私たちがこの書籍で論じ
たテーマは、事業要件を満たすために IT サービスを設計す
ることです。ITIL® の今回のバージョンでの主要な変更点は、
ソリューションの設計は機能要件を満たすためだけではな
く、事業の非機能的な部分、すなわちサービスのパフォー
マンスの管理を充足するためにも行うという点です。別の
言い方をすれば、能書きどおりのことをやるのは当たり前
で、これからはそれが実際に役立ったことを実証する必要
があるということです。IT は事業に整合していないと批判
されますが、私たちはこの書籍でそれが変わればと思って
います。
Service Design・チームの役割は「現在および将来の合意
された事業要件を満たすために、アーキテクチャ、プロセス、
方針、文書を含めて、適切で革新的な IT サービスを設計す
39
ら最善のものを拾い集めるわけです。
書籍を執筆しようと真剣に話し合い始めたのは 2006 年の
7 月でした。校正と印刷の段取りを考慮すると 2 月までに
書き上げなければなりませんでした。命のろうそくを両側
から燃やして縮めていくような思いでしたが、執筆に参加
できたことはとても光栄です。どのような反応があるかい
つも少し不安になるもので、面の皮を厚くしておく必要も
ありますが、フィードバックから参考になるものとそうで
ないものを聞き分けることができる優れた耳も持っておか
なければなりません。
最近プレッシャーとなっているのは、みんなが自分のやっ
ていることをベストプラクティスだと思っていることです。
ITIL® の最初のバージョンを手掛けた時には、ITIL® につい
ては誰も知らなかったため、プレッシャーも期待もあまり
ありませんでした。ITIL® V2 は完成までに何年もかかり短
期間で書かれたわけではないですが、書かれた内容を詳し
く調べる専門家の数が、初期の ITIL® を書いたときに比べて
増えていました。
Service Transition はより幅広く長期的な変更管理の役割
®
V3 では、
今や当然ながら皆が ITIL の専門家で、新バージョ
とリリースの慣例に焦点を当て、リスク、利点、提供の仕組み、
ンには何を書くべきかについて一家言を持っているという状
サービスの継続的な運用のしやすさなどが考慮されるように
況になりました。著者として抱える課題の 1 つは、こうし
します。この書籍はサービスの事業環境への移行のための手
た「専門家」の意見が互いに全く正反対なことがあるという
引きとプロセス活動を提供するものです。Service Transition
ことです。これに対応するには、一部の領域では異論を巻き
の最終目標は次のとおりです。
起こさざるを得ません。そうでないと、凡庸な内容になって
しまいます。外部から孤立して執筆するわけにはいきません
・事業上の変更を可能にするため、新規または変更されたサ
から、執筆プロセスの間にも他の書籍に関する情報を得るよ
ービスのパフォーマンスと効用がどのように利用できるか
うにもしなければなりませんでした。毎週電話会議を開いて
®
について、顧客の期待事項を設定する
進捗のまとめを行い、ITIL という大きなテーマの中にすべ
・顧客がリリースを事業運営に統合できるようにする
てがうまくまとまるように配慮しました。
・移行されたサービスの予想パフォーマンスと実際のパフォ
ーマンスの格差を縮小する
現実の世界で
・既知のエラーを減らし、新規または変更されたサービスを
本番に移行させることから生じるリスクを最小化する
『Service Design』は現実の世界でどう役立ちますか ?
・サービス要件に規定された要件と制約に従ってサービスを
利用できるようにする
®
今日の多くの組織を調べてみると、
ITIL 書籍の 2 冊、
『サー
ビスサポート』と『サービスデリバリ』を元にしてサービス
旧版と異なるのはどこで、それはなぜですか ?
マネジメントが育成されてきたことが分かります。
問題は、これらを別々に導入してきたことです。そのため
私たちは書籍のすべてに目を通しました。私たちの役目は、
に連携が不十分となり、全体プロセスの基盤はまだまだ未成
Service Design にあるものを採り上げ、サービスへの変更を
熟なのが現状です。Service Design は、自身の成果物が稼働
どのように管理するかを説明することでした。これは単な
環境に及ぼす影響を考えるきっかけとなります。また、計画
る運用上の変更ではなくて、サービス自体の変更です。この
立案段階からそれを確立することにより、非常に凝縮され効
点が大変重要です。これは、V2 では変更リリースと変更サ
果的なサービスデリバリが実現できるでしょう。
ポートにおける構成でカバーされていた部分です。Service
Transition はそこから「展開」に関する章の内容をすべて引
■ Service Transition
き継ぎ、より統合された視野を提供するものです。
アイバー・マクファーレン(Ivor
大規模な IT の変更は多くの場合プロジェクトやプログラ
Macfarlane)
ム主導で推進されます。今までこれは「変更管理」の範囲外
シ ャ ー リ ー・ レ イ シ ー(Shirley
にあると誤解され、導入されるまではサービスマネジメント
Lacy)共著
の関心事ではないと考えられてきたものです。しかし、経験
上このアプローチでは事業体に最善の利益を生むことがめっ
たにないことが分かってきました。
この書籍では、Service Transition・マネージャと実務者が
実践的なアイデアを選択して適用する手助けをすることを
狙いとしています。より幅広く長期的な変更管理の役割とリ
リースの慣例に焦点を当て、リスク、利点、提供の仕組み、サー
『Service Transition』の内容についてお話ください。
ビスの継続的な運用のしやすさなどが、迅速性、コスト、安
私たち 2 人は ITIL® の変更と構成に常に携わってきたため、
全性の適切なバランスを伴って考慮されるようにします。
変更を稼働中のサービスに折り込んでいくことには非常に興
味を持っていました。簡単に言えば、Service Transition は
膨大な変更が存在する環境に焦点を当てています。変更をよ
『Service Transition』で最も論議を呼ぶ部分はどこだと思い
ますか ?
り迅速に処理する必要性がでてきたため、より適切に管理す
る必要があります。プロジェクトを稼動状態に移す際に遅れ
協議の際には、変更管理について多くのフィードバックが
ありました。その結果、構成管理をサービス資産構成に変更
が生じるのはよくあることです。
40
し、それによって資産の顧客価値へより重点を置きました。
■ Service Operation
また、つじつまが合うよう、トレーナ対象の書籍に記載
デ イ ビ ッ ド・ キ ャ ノ ン(David
されている方法も精査しました。これまで組織上の変更の
Cannon) 管理は変更管理の対象ではありませんでした。また、V3 で
デイビッド・ウィールドン(David
は知識をより効果的に管理しなければならないとも痛感し
Wheeldon)共著
ました。V2 では CMDB(構成管理データベース)を使って
いましたが、その適用範囲は今のところ内部サプライヤを
含む程度しか拡大されておらず、さらに広い視野を持つに
は至っていません。V3 では、より広範なサプライ・チェー
ンと、組織内に保有する知識をどのように構成し管理する
書籍の内容についてお話ください。
必要があるのか、さらにはどのようにして役割と責任を体
系化するのかに目を向けています。
『Service Operation』は IT サービスの提供とサポートに
必要な日常的な活動のさまざまな側面を扱っています。こ
このプロジェクトに参加された理由は何ですか、また執
れには 5 つの中核的プロセス(イベント管理、インシデン
筆のうえでどのような困難がありましたか ?
ト管理、要求実現、問題管理、アクセス管理)と 4 つの機
能または組織的なグループ(サービスデスク、技術管理、
たいへんでした。結局、たっぷり 1 年かかりましたし、
アプリケーション管理、IT 運用管理)を含みます。
週末に仕事をしなければなりませんでした。私たちは V2
また、IT 運用環境の管理方法に関係する多くの運用活動
でも一緒に仕事をしましたから、お互いにどんな状況に巻
について考察しています。この書籍では、一般的な運用管
き込まれているか理解していましたが、それでもとにかく
理の原則と技法(モニタ・コントロール・ループなど)は
やり遂げました。私たちはできるだけ頻繁に会うようにし
状況に合わせて使用する必要があるという認識をしていま
ました。直接会って話ができないようなときでも、Skype(イ
す。この書籍の背景となるのは IT 運用ですから、管理しな
ンターネット電話)で連絡を取るようにしていました。書
ければならない技術とは情報技術です。この書籍では、IT
籍に関するフィードバックはここまでたいへん盛況で、正
の管理に関連する上位レベルの運用活動、例えばネットワー
式な刊行までの間に自分自身を鼓舞するのに役立ちました。
ク管理、ミドルウェア管理、インターネット / ウェブ管理
などの概要を説明しています。
現実の世界で
旧版と異なるのはどこで、それはなぜですか ?
『Service Transition』は現実の世界でどう役立ちますか ?
V3 の書籍ではすべてそうですが、『Service Operation』
これまでは、今後発生するかもしれない変更について十
は関連プロセスの集まりを定義することではなく、サービ
分に重点が置かれていませんでした。V2 でもこのことは
ス・ライフサイクルのある段階を説明することを基本とし
扱われず、皆さんが自分なりの方法で対処していたわけで
ています。また、「誰がこれをやるのか」という質問の幾つ
すが、今回の書籍ではその手引きを提供しました。Service
かに具体的に答えています。『Service Operation』に概説し
Transition によって、構想・計画していたものから何らか
た機能は、技術グループがどのようにしてサービスマネジ
の変更が生じた時には、主要な人々に知らされるようにな
メント・プロセスの管理と実施に関与していくかを定義し
ります。これによって私たちが過剰に反応しないようにな
たものです。既存のプロセスに対して幾つか主要な変更が
らないだけでなく、長期的にはリスクの低減にもつながり
行われています。V2 では、インシデント管理にイベントと
ます。また、これまで ITIL® ではテストが主なテーマとなっ
サービス要求が含まれていましたが、両者の関係は定義さ
ていませんでしたので、評価やサービスに対する変更にど
れていませんでした。『Service Operation』では、インシデ
のように重点を置くかについても章を設けました。
ント、イベント、およびサービス要求の違いを明確に定義し、
これらが全く異なるプロセスで管理されるという認識をし
ています。
イベント管理は、IT 環境における事象の検出、報告、お
よび対応を狙いとします。こうした事象の中には通常のサー
ビスに対する例外を示すもの(インシデント)もあるでしょ
うが、多くはサービスが正常に機能していることを表しま
41
す。イベントも、通常運用の一環として何らかの措置や対
まず、私たちは IT 運用の組織的な側面について議論しま
応が必要であることを示します(例えば、バックアップが
した。IT を運用する部門が互いにどのように関係するのか
完了したため、テープを取り出せるなど)
。
を表す 1 つの図式を見つけるまでに、実にたくさんの案と
要求実現は、顧客が標準サービスへのアクセス権を取得す
格闘しました。どうやって克服したかと言うと、3 日間も缶
るのに使用する各種のプロセスと手順を表します。『Service
詰めになって、この課題の認識の仕方で 2 人の間にある違
Operation』ではサービス要求と変更要求との関係を説明し
いを文書化したのです。幾つもの議論を経て物事が明らか
ています。
になり、ようやく機能するモデルにたどり着きました。出
インシデント管理、アクセス管理、および要求実現の一
来上がったモデルは、それまでに調査した組織やさらに幾
部としてセルフ・ヘルプ戦略の確立と利用に関する手引き
つかの組織に適用してテストしましたが、うまくいきまし
も記載しています。アクセス管理では、許可されたユーザ
た。著作者として私たちはどちらも、自分自身の意見を書
にサービスへの適切なレベルのアクセス権が付与されるよ
くのではなく、ベストプラクティスを記述するのだと自分
うにすることに重点を置いています。この、セキュリティ
たちに言い聞かせていました。それで、この信条を忠実に
および可用性の管理方針の実施は、ID 管理(ユーザがその
守るため、私たちは常にお互いの仕事を評価しあう必要が
自称する本人であることを確認すること)と権限管理(ユー
ありました。間違った前提や誤った重点の置き方が判明し、
ザが使用許可のあるサービスへのアクセス権だけを持つよ
それぞれが執筆を中断してやり直すようなこともありまし
うに特権とアクセス制限を定義すること)から成ります。
た。
『Service Operation』で最も論議を呼ぶ部分はどこだと思い
これらの変更が有益であることを業界の人々にはどのよう
ますか ?
に説明しますか ?
ベストプラクティスの書籍ですから、あまり物議をかも
『Service Operation』の利点には次のものがあります。
してはいけないでしょう。なぜならこれらの書籍には、業
界で達成された最良のものが反映されているのです。しか
し、サービスマネジメントを活用するのは人間で、人間と
いうものは何かが変わると必ずその変更の影響が非常に気
になります。一部には、書籍の新しい構造(プロセスのグ
ループ分けからライフサイクルへの変更)が自分たちの既
存のプロジェクトに関連付けにくいと考える人々もいるか
・運用活動を、組織における価値を創出する領域と関連付け
ることができる
・IT マネージャが IT 運用の価値を絶えず実証しようとする
必要がない
・IT 運用スタッフとサービスマネジメント・プロセスとの
統合が進む
もしれません。しかし、
新しい書籍を読み始めれば、プロジェ
クトで実際に役立つ改善事項と明確になった内容が幾つも
このプロジェクトに参加された理由は何ですか、また執筆
見つかるはずです。
のうえでどのような困難がありましたか ?
この書籍で論議を呼ぶ可能性のある部分は、アプリケー
ションのライフサイクルにおける開発と管理の役割にまつ
ITIL® のヘビー・ユーザとして、また批評家として、何か
わる議論でしょう。こうした内容はこれまでは政治的な問
貢献できるものがあるのではないかと感じていました。そ
題とされていましたが、この書籍では明確にするように試
こで書籍を見て、
「書籍の中の 1 領域を手直しするとしたら、
みました。どちらの役割も同様に重要ですが、ライフサイ
何が良いだろう ?」と自身に問いかけたのです。その答えは、
クルの段階ごとにその力関係は変わります。論議を呼ぶ側
技術グループと ITSM プロセスとの全体の関係、および問題
面としては、アプリケーション開発がライフサイクルの一
管理とインシデント管理とのインタフェースでした。この
部(展開やテストなど)のコントロールを手放す必要があ
機会を提供してくれそうなのが、『Service Operation』だっ
るという点が挙げられます。設計と構築の段階では運用チー
たわけです。
ムがより積極的な役割を担わなければならないでしょう。
執筆には、10 か月という当初予想していたよりもはるか
日々の仕事もやはりこなさなければなりませんから、これ
に長い時間がかかりました。困難さも予想をはるかに超え
はかなり難しいことです。
るものでした。ITIL® の誤っている個所を見つけるのは非常
に簡単ですが、あらゆる質問に答えることができ、かつ業
どの部分が異論を巻き起こし、それをどのように克服しま
界のベースラインを定義するような何かを考え出すのは不
したか ?
可能です。すべてを正しく行い、信頼できるものを作り出
す責任は途方もなく重いですから、最初は苦難の連続でし
42
た。この障害は、自分自身の ITIL® 活用経験を思い出すこと
組織が大規模な改善を行うのであれ、段階的な改善を行
で乗り越えました。完璧である必要はなく、正しい問いか
うのであれ、サービスと IT サービスマネジメント・プロセ
けをし、適切な方向性を与えればよいのです。答えを導き
スを改善する機会を見つけ出すのは IT 部門にいるすべての
出すことではなく、議論の適切なベースラインを提供する
要員の役割です。Continual Service Improvement はよく日
®
ことに ITIL の主要な価値がある場合もありました。私たち
常的な Service Operation と関連していると考えられていま
は、執筆そのものが重要なのではないことに早くから気付
すが、実際には Service Strategy、Service Design、および
いてもいました。重要なのは、世界中の実務者の努力と業
Service Transition の各活動の改善領域を明確化することに
績を忠実に記述することでした。書籍を執筆するための調
よってライフサイクル・アプローチを改善することができ
®
査には多大の労力を払いましたが、ITIL の本当のヒーロー
るのです。Continual Service Improvement はライフサイク
たち、つまりサービスマネジメントを実施してきた人々を
ルのそれぞれ(Service Strategy と Service Design、Service
十分に評価できたのではないかと思います。
Design と Service Transition、 お よ び Service Transition と
Service Operation)の間に継続的なフィードバック・ルー
現実の世界で
プを提供します。
改善の機会は新しい組織戦略や事業要件、または単に IT
『Service Operation』は現実の世界でどう役立ちますか ?
組織が約束したものを顧客に提供していないという事実に
より促されるものです。
V2 を読んだ方の中には、IT サービスの管理は技術の管理
図 1 に、事業のビジョン、最終目標、および達成目標に
とは別物であると考えられた方もおられるようです。今回
よ り 推 進 さ れ る Continual Service Improvement モ デ ル を
の書籍ではその見方が変わります。この 2 つは異なるスキ
示します。IT はこうした内容をサポートできなければなら
ルを必要とするかもしれませんが、密接に統合されている
ず、事業の最終目標と達成目標を推進できるかどうかに貢
ものです。例えば、キャパシティ管理の活動の多くはサー
献するうえで、Continual Service Improvement が主要な役
バ管理者がその標準的な運用手順の一環として行います。
割を果たします。Continual Service Improvement はまず現
在の状態をベースラインとして設定して文書化し、そのベー
他には開発プロジェクトの中での運用スタッフの役割に
関するものが挙げられます。運用スタッフが IT サービスの
スラインを基準にした傾向を継続的にモニタ、測定、分析、
識別して改善の機会がないかを判断します。
管理性要件とパフォーマンス標準の定義を支援することは
非常に重要です。これにより展開の成功率が高くなり、サー
旧版と異なるのはどこで、それはなぜですか ?
ビスが期待と設計のとおりに機能する確実性も高くなりま
す。長期的なコスト見積もりの精度も上昇します。さらに、
Continual Service Improvement は ITSM 導入時に見落と
インシデントとサービスデスクのツールの間、またインフ
されがちになることが多くあります。口先の評価は高いの
ラストラクチャのモニタリングと管理ツールの間の正式な
ですが、実際に熟考され、計画され、スケジュールされ、
統合という、さらなる変更も期待されます。
実行されることはあまりありません。時間、リソース、お
よび資金の多くがサービスとサービスマネジメント・プロ
セスの開発に費やされますが、展開後に Continual Service
Improvement について考える時間をかけることさえほとん
■ Continual Service Improvement
ゲイリー・ケース(Gary Case)
ジ ョ ー ジ・ ス ポ ル デ ィ ン グ
(George Spalding)共著
どありません。『Continual Service Improvement』書籍は慣
例の正式化と文書化がテーマです。この慣例は、図 2 に示
す改善プロセスのように、プロセスが整備されていること
を必要とします。『Continual Service Improvement』書籍で
は、Continual Service Improvement の慣例をサポートする
のに必要な Continual Service Improvement マネージャ、
サー
ビス・オーナ、サービスレベル・マネージャなどの主要な
役割と責任を説明しています。
また、サービスの測定と把握するべき測定基準の種類に
このプロジェクトに参加された理由は何ですか、また執筆
のうえでどのような困難がありましたか ?
ついても論じています。Continual Service Improvement の
ポイントは、測定基準には技術、サービス、プロセスの 3
種類があることを把握することです。ほとんどの IT 組織で
43
は、サーバやネットワークなどの技術には何らかの種類の
出しました。その後、ITIL® 諮問グループ(IAG)と一般の
モニタリングと測定を常に行っていますが、全体的なサー
方による品質レビューに基づいて、継続的な改訂と修正を
ビスの測定と報告、つまりサービスの測定基準については、
加えました。思っていたより長い道のりでした。夜や週末
実のところあまりうまくはいっていません。プロセスの測
をつぶすことも多かったのですが、それだけの価値はあり
定基準は多くの場合、重要業績評価指標(KPI)やプロセス
ました。
活動測定基準の形で明確化されています。
現実の世界で
今回の書籍で最も論議を呼ぶ部分はどこだと思いますか、
また著者同士の間で意見の不一致がありましたか ?
『Continual Service Improvement』は現実の世界でどう役立
ちますか ?
®
ITIL のほとんどがそうであるように、この書籍で述べて
いる内容のほとんどが常識ですから、論議を呼ぶようなこ
®
Continual Service Improvement が 文 書 化 さ れ た こ と
とはあまりありません。しかし、ITIL も Continual Service
に よ っ て、 そ の 慣 例 が い っ そ う 認 知 さ れ る よ う に な り、
Improvement も多くの組織で一般的に実践されているとは
Continual Service Improvement を実際に行う際に必要な役
言えません。
『Continual Service Improvement』書籍の著者
割が明確になります。また、技術コンポーネントのみのモ
同士で意見の不一致は実のところ全くなく、懸念事項があ
ニタリングと測定から、サービス全体のモニタリングと測
れば電話会議で対応しました。
定も行うように移行する必要性も明確になります。
継続的に改善していくために、その場その場で反応するの
このプロジェクトに参加された理由は何ですか、また執筆
ではなく事前に対応していくアプローチを取ることにより、
のうえでどのような困難がありましたか ?
IT がサービスと ITSM の改善に本気で取り組んでいること
を示すことができます。事業目的と IT の目的が常に適合し
私たちはどちらも業界の専門家と認められおり、ほかに
®
的確なリソース活用を図って IT コストを改善するためには、
も書籍を執筆したことがあります。Pink Elephant 社が ITIL
現行の継続的改善を正式なものとすることが ITIL® イニシア
V3 の執筆に積極的な役割を果たさせようとして私たちの名
チブと ITSM 全般にとって非常に重要です。
前を応募し、
『Continual Service Improvement』書籍の数百
人の応募者の中から選出されたのです。
2 人とも仕事場が離れていましたから、章ごとに分担し
ました。完成に近づくと同じ場所で作業をするようにしま
したが、これは有益でした。Pink Elephant 社に所属し、V3
の国際試験パネルのメンバーに選出された 14 人の ITIL® 専
門家の 1 人であるピエール・バーナード(Pierre Bernard)が、
調査や内容について大いに助けてくれました。
2006 年の 3 月に書き始めて、その年の 12 月に初稿を提
図 1 継続的サービス改善モデル
図 2 改善プロセス
ビジョンは何か?
事業のビジョン、ミッション、最
終目標、達成目標
我々はどこにいるのか?
ベースライン・アセスメント
識別
・ビジョンと戦略
・戦術的な最終目標
・運用上の最終目標
1 測定するべきものを定義
7 是正措置を実施
どのようにして推進力を維持
するか?
我々はどこを目指すのか?
最終目標
測定可能な目標
6 情報を掲示および利用
アセスメント概要 措置計
画など
どのようにして目標を達成するか?
サービスとプロセスの改善
達成をどのようにして確認するのか?
測定と測定基準
2 測定できるものを定義
5 データを分析 関係は?トレンドは?計画
どおりか?目的に沿ってい
るか?是正措置は?
44
3 データを収集 誰が?どのように?いつ?
データの完全性は?
4 データを処理
頻度は?形式は?システム
は?正確性は?
寄稿 it SMF コンファレンスに参加して、
そして ITGI Japan の最近の活動について
日本 IT ガバナンス協会(ITGI Japan)
事務局長 梶本政利
2006 年の 11 月に、ISACA の国内 3 支部を基盤として
ITGI Japan を設立しました。ITGI 本部は ISACA 及び ISACA
を支え、COBIT® をコアとした IT ガバナンスの普及につと
めている団体です。この ITGI の日本における活動拠点とし
て ITGI Japan を位置づけることが出来ます。
ITIL® と COBIT® は相互補完の関係にあるとよく言われ、
また、今回のコンファレンスのスピーカーの一人であった
Robert Stroud 氏は it SMF の米国のボードメンバーであると
もに、ISACA/ITGI 本部のボードメンバーも兼ねておられる
ことが示すように、it SMF 様の活動と ISACA/ITGI の関係は
密接かつ、今後も重要なものであると考えています。
今回のコンファレンスに後援団体として参加させていた
COBIT® 関連には実用的文献がまだ多くありますので、逐
だき、ITGI Japan の活動を報告させていただく機会を得た
ことは、日本において it SMF Japan 様と ITGI Japan との関
次翻訳と公開を進め、日本のビジネスコミュニティに貢献
係をいっそう強化する必要性があることを強く認識するも
したいと考えています。それと日本における固有の活動も
のとなりました。
徐々に立ち上げようと計画を練っています。
it SMF Japan 様とより良い相互連携を強化してまいりたい
ITGI Japan は、設立の際のカンファレンスにおいては、
「J-SOX に向けて COBIT® をどう使えばよいか、
SOX へのケー
と考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
ススタディから」と題して海外から 3 名の講師を招聘し、
今年 6 月には「CIO IT ガバナンスセミナー」として、日本
企業における SOX 対応等に関するセミナーを開催しました。
ITGI Japan 関連資料の入手、及びイベントの情報は下記
URL からどうぞ。
この 11 月には再び海外からの講師を招聘して「企業目標
達成のための必須道具としての IT ガバナンス」というテー
マでカンファレンスを予定しています。
http://www.itgi.jp/
このようなカンファレンス以外として、今年は ISACA/
ITGI 本部が電子的に発行している文献の中から、" IT
日本 IT ガバナンス協会(ITGI Japan)事務局長 梶本政利
Control Objectives for Sarbanes-Oxley Version 2"(一般
に "COBIT® for SOX Version 2" と呼ばれるもの)
、"COBIT ®
4.0"、"VAL IT シリーズ(IT 投資のガバナンスに関する文
献)"、"Board Briefing on IT Governance"、"Information
Security Governance:Guidance for Boards of Directors and
Executive Management" の日本語翻訳を行い、全て無償ダ
ウンロードという形で提供しています。
COBIT® も Version 4.1 がすでに英語版で出ておりますの
で、すでに翻訳に着手し、年内に無償ダウンロードを開始
できるようにと進めております。
これにあわせ、COBIT® の実務者向け解説本を来年の春に
出版することを目指して、プロジェクトを編成し、執筆作
業に入っています。
45
ITIL® 資格最新情報
EXIN Japan
ITIL® 3 万人突破
ているためです。10 月中旬現在で、80% の試験問題に関し
てパイロットが終了しておりますので、もうじきパイロッ
トが終了予定です。試験の品質を向上させるために、やむ
®
2007 年 7 月に、日本における ITIL Foundation の資格取
得者は 3 万人を突破し、8 月末現在累計で 32,700 人とな
を得ない処置であり、ご理解を頂きたいと、APMG より説
りました。2006 年、2007 年の同期間(1 月 ~8 月)を比
明がなされております。
パイロットが正式に終了しますと、結果並びに認定証は
較しますと、1.4 倍の伸びで、現在のところ、V3 の影響は
通常通りの期間で受験者に提供されます。
なく伸びています。
®
ITIL Manager の受験数は、去年と比較して、240 件から
日本で受験された方の状況を見ますと、6 月に受験され
510 件と 2 倍強の伸びです。ITIL® Manager は、逆に V3 の
影響で、需要が強くなっていると推察しています。現段階
た方の最終結果には、2 ヶ月かかりました。(最初の点数と
で、V3 の資格スキームの上位の資格を得たい方には、ITIL®
最終的な点数は違い、途中で調整が入っています。
)
認定
Manager+Bridge コース & 試験が一番早道と考えられるか
証は、まだ発行されていません。認定証のデザイン、色な
らです。
どで試験機関 3 社で協議し、時間を要しましたが、10 月下
国内における ITSM Foundation 資格取得者数 推移
旬頃 APMG より試験機関
に認定証のテンプレートが
提供される予定です。
V3 用の日本語、ドイツ
語、スペイン語の用語集が
10 月 1 日に公開されまし
た。また APMG が公式に
ローカライズに着手した旨
を発表しておりますので、
今後この 3 言語に関しては
試験、教育コースが順次整
うものと思われます。他言
語に関しては 2008 年 10
月下旬までに揃えるよう予
定しているとの事です。
出典:EXIN JAPAN
【ITIL® Foundation コース】
ITIL® Version3 に伴う資格スキーム アップデート
V2 との大きな違いは、教育に関して認定コース以外は試
ITIL® V3 の資格スキームが 6 月に発表された後、順々に
験付で提供出来なくなる事です。認定機関である EXIN と
教育のスキーム並びに試験概要が打診され、レビューがな
しましては、現在認定を取得していない教育事業者には、
されています。
認定取得の推進が必要です。
一方、試験機関での試験のみの受験は可能です。EXIN 経
【ITIL® Foundation 試験】
由の PROMETRIC 等の試験センター並びに EXIN にての受
験は可能です。
ITIL® Foundation のパイロットが 6 月より英語で始まり
既にコース概要(Syllabus)が告知されていますが、パイ
ました。現在まで、採点ならびに認定証発行に時間がかかっ
ておりますが、試験問題のレビューを合格率をみながら行っ
46
ロットでの教育事業者の意見を反映させ、認定コースの最
低時間は、16 時間から 24 時間に変更となりました。また、 ・試験のリリースは 2008 年 1 月を予定。
認定コースでの 1 クラスあたりの人数が 16 人から 25 人に
変更になりました。V3 での変更に伴い、混乱を避けるため
V2 の1クラスあたりの人数は V3 に準じ最大 25 人までと
・ITIL® Manager Bridge 試験リリース前に、認定コース教育
事業者の講師には、受験の機会が予定される。
・試験は、シナリオベース質問から構成され、選択式で、
なりました。
90 分を予定している。
【 ITIL® Capability コースと試験 】
コース内容に関して、" ストラテジ ""CSI" の内容や分量
が Foundation Level で妥当か等、課題が上がっております。
従って 2008 年の 1 月から 3 月に Foundation コースの概
9 月 5 日に試験機関より認定コース教育事業者に、以下
要(Syllubus)のレビューをし、改訂する事が決まりました。
の 4 つのコース概要とサンプル試験が配布され、9 月 14 日
既に V3 を実施している認定教育事業者の方には、この変
までに Feedback を依頼しました。Feedback の内容にもよ
更が最小限に抑えられるよう、Chief Examiner より改訂の
りますが、現時点ではコース概要と試験のリリースは英語
方向性やトピックなど事前に知らせると共に、今後の日程
で 2007 年末頃を予定しています。
に関しても決まり次第、連絡の予定です。
・Planning, protection and Optimization(PP&O)
- Capacity; availability; continuity; security; demand , risk
【V2 本 /Foundation 資格の継続と終了】
management
・Service Offerings & Agreements(SO&A)
it SMF インターナショナルが各チャプターへ、V2 本並び
- Portfolio; service level; catalogue; demand; supplier;
に V2Foundation 試験の終了の時期についてアンケートを実
financial mgmt
施しました。その結果の報告が 10 月の Qualification Board
・Operational Support & Analysis(OS&A)
でなされました。60% 強のチャプターが、V2Foundation の
- Event, Incident, Request, Problem, Access, Service Desk,
終了時期が 2008 年 1 月は早すぎるとし、2008 年 12 月を
Technical, IT Ops, application mgmt
選択しました。しかし、アンケート自体に 2009 年以降を
・Release, Control & Validation(RC&V)
選ぶ欄が無かった事、各言語の本や試験の導入がさまざま
- Change, Release and deployment, validation & testing,
である事、マーケットの成熟度が違う事など、コメントが
asset & configuration, knowledge, request fulfillment,
寄せられています。従って結論として、2008 年 12 月を越
service evaluation management
えても V2 本の発行と資格は続け、V2 の終了に関しては、
マーケット判断に委ねるという事になりました。
現時点のドラフトでは、各コースは 30 時間を要し、試験
尚、V2 本と試験が終了する場合は、その実施の 4 ヶ月か
ら 6 ヶ月前に周知する事となりました。従って、
国によって、
は 8 問で 90 分という案です。受験に際し、コース受講が必
須となります。
この終了の期間は異なることとなります。
【ITIL® Practitioner のための Bridge 試験】
【ITIL® Manager のための Bridge コースと試験】
ITIL® Practitioner 資格保持者のために、Bridge 試験が提
7 月 20 日に試験機関より認定コース教育事業者に、
案されています。Practitioner で 16 クレジットを有してい
コース概要とサンプル試験が配布され、7 月 25 日までに
る方が対象です。クレジットが 16 未満の場合は、Bridge 試
Feedback を依頼しました。9 月、10 月の Qualification 験で迂回することはできず、ITIL® Diploma に必要クレジッ
Board にて、次の事が決まりました。
トを取得すべく、コースの受講と試験の合格が必要です。
・試験の合格ラインは 80%(20 問のうち、16 問以上の正解
尚、Practitioner では、有資格者の方が様々なコースを受講
が必要)
していることから、一律のコース設定が難しいため、コー
®
・全ての ITIL Manager Bridge コース インストラクターは、
®
コースデリバリー前に、ITIL Manager の資格を有し尚且
つ ITIL® Manager Bridge コース受講し、その試験に合格し
ていなければならない。
・現在 ITIL® Manager 資格保有の講師に限って、一定の期間
までに、
試験のみの受験を認める。
(この限定期間のみ、コー
ス免除)
47
スの受講はありません。
【ITIL® Diploma】
今後も Qualification Board で討議された内容、認定教育
事業者に提供している情報など、順次資格に関する最新情
®
ITIL Diploma の名称変更を検討しています。理由は、グ
報を、微力ながら提供してまいります。
ローバルな視野でみた際に、妥当な言葉ではないという
Feedback が多かったためです。現在適切な言葉を調査し、
調整中です。
中川悦子 / EXIN JAPAN
既に、皆様の中にはお気づきの方もいらっしゃるかと思
いますが、一旦発表された事も、変更、調整がなされてき
ています。プロセスを動かしてみて、
改善点が必要であれば、
修正するという、実にフレキシブルな対応がなされていま
す。従って、情報を読んでいく中で、変更を前提に読んで
いく事が肝要です。また、正に移行期間である事を念頭に、
発言し、意見を取り入れてもらい、少しでも日本のユーザ
にとって価値が高いものに造っていく余地も十分にあるか
と思います。
関西支部活動ご案内
it SMF Japan 関西支部
秋の気配がなんとなく感じられる今日この頃です 。
であるために必要なこと」が抽象的であり、討議が発散し
たことから、今後は V3 を考慮しながら、「CMDB 導入の目
今年の夏は、非常に暑く大阪では猛暑日が平年より 6.1
的」、「導入にあたっての検討事項」等の研究を行なう 。 最
日多い 14 日でした。また、気象庁の 8 月 27 日までのま
終的には次回の会合でテーマの絞込みを行います 。
とめによると、8 月の平均気温が最も高いのは大阪市の
また、前号でお知らせ致しました「関西セミナ」につき
30.1 度となっておりました。その猛暑のなかで、8 月 25
ましては、2 月ごろの開催に向けて鋭意努力致しておりま
日∼ 9 月 2 日の 9 日間にわたり 、「IAAF 世界陸上大阪」
す 。 開催日時、テーマが決定次第、ホームページでご案内
が開催され盛大のうちに終了致しました 。
させて頂きます 。 今しばらくお待ちいただけますようよろ
しくお願い致します 。
it SMFJapan に お き ま し て も 同 8 月 に「 第 四 回 it SMF
Japan コンファレンス」と今回初めての試みとして、
「it SMF
今後とも関西支部をよろしくお願い致します 。
Japan EXPO 2007」を開催致しました 。
it SMF Japan コンファレンスには、関西支部からも分科
会活動の成果発表として CMDB 研究分科会が「意味のある
(役に立つ)CMDB であるために必要なこと」をテーマに
講演を致しました 。 当日は最後のセッションであるにも関
わらず 106 名の方に聴講して頂きまして真にありがとう御
座いました 。
その CMDB 研究会につきましては、9 月 6 日に会合を開
き 、 今後の活動につきまして討議を致しました 。 討議の結
果、
「もう 1 年活動を延長」することに致しました 。 また、
昨年 1 年研究したテーマ「意味のある(役に立つ)CMDB
48
三谷 浩一
特定非営利活動法人 it SMF Japan 関西支部
it SMF US Fusion 07 参加報告
このたび、社内業務にて it SMF US による「it SMF US
各トラックのタイトルは次のとおりです。
Fusion 07」に参加する機会がありましたので、この場を
トラック 1: はじめての ITSM 実装
お借りして内容のご報告をさせていただきます。
トラック 2: 成熟した ITSM プログラムの運営
トラック 3: ビジネスとの整合
1. 開催場所、期間
トラック 4: 適確な IT サービス提供
トラック 5: IT サービスの運営
期間 Sep 16-19, 2007
トラック 6: 公共分野における事例
場所 Charlotte Convention Center
トラック 7: ホットなトピックと新たなトレンド
Charlotte, NC in USA
トラック 8: V3 関連
米国の今年の開催地は North Carolina 州の Charlotte で
した。Charlotte というと米国特有の自動車レースであるス
トックカーレースの本場とか、南部の町といったイメージ
を持つ方が多いと思いますが、Bank of America(資産規模
で全米第 2 位の銀行)や Wachovia(同 4 位)の本社があり、
ニューヨークに次ぐ、全米屈指の金融中心地として有名な
街です。また、近年の人口増加が顕著で、最も先進的な都
市とも言われているようです。
3. 講演と展示
2. 催行結果
前年より参加者も大幅に伸び、また、基調講演にカール・
リプケン
(Cal Ripken; 野球選手)
など各界の著名人を登用し、
チームワーク等の統一テーマを掲げ、コンファレンス参加
者を大会期間中引きつける工夫がなされていました。
US を代表するベンダ企業のほぼすべてによる講演と展
示、そしてユーザ系企業や政府機関、地方公共団体、大学
による講演が 4 日間にわたり行われました。
講演したユーザ系企業、政府機関、地方公共団体、大学の例
コンファレンスの催行結果は次のとおりとなります。(主
-The Bank of New York, Morgan Stanley,
催者発表)
-American Family,
-GM, Unilever, Nissan North America,
コンファレンス参加者 総計 2,000 名 以上 -Toyota Motor Sales, Yahoo!,
(日本でのコンファレンス参加者は、約 1,500 名)
-US Cost Guard, US Air Force,
参加国:23 カ国 -City of Portland,
出展社:ダイヤモンドスポンサー 3 社
プラチナスポンサー
11 社
ゴールドスポンサー
10 社
ブース出展のみ
54 社 -Rhodes University, Carnegie Mellon University, 他
(日本でのコンファレンスへの出展社は、今年は 22 社)
Conference の構成は、8 トラックのセッションと 展示
からなりたっていました。また、今年で、it SMF US は設立
10 周年を迎えています。 49
4.4. その他の規格や標準と ITIL® との関連
4. 講演の概況および特徴
SOX 対応、ISO20000 対応 , Six-Sigma, CMMI for service,
4.1. ユーザ企業による具体的な事例紹介の講演
その他の ISO 規格と ITIL® との比較評価を論じる講演がみ
られました。
ユーザ企業の積極的な成果発表が目立ちました。
-GM 「So What is a Global Service Desk?」
-SSCI 「Understanding and Applying the CMMI for
-The Bank of New York
Services」 等
「Service Management Competency Center:
5.it SMF US と it SMF Japan の活動に対する意見交換
Guardian Angel or Necessary Evil?」
4.2.ITIL® 適用後の Monitoring および Reporting Phase に関
it SMF US の業務担当者と、意見交換を行いました。
する講演
・US および日本の it SMF の会員、会員企業の状況
・US での学術団体との協業状況
PDCA サイクル上での Check と Action に当たる部分の講
・その他担当業務での意見交換
演が目立っていました。
-American Financial 「Monitoring and Metrics」 等
全体を通じて、非常に会員に根付いた産官学共同の内容
のあるコンファレンスであると感じました。
4.3. 構成管理プロセスの導入と展開
構成管理に関するテーマの講演が目立ち、また聴講者の
関心が高かったようです。
株式会社 日立製作所
-Unilever 「Implementing the CMDB」
八木 隆
-Siemens 「Fast Track Your CMDB Build!」 等
日本アイ・ビー・エム株式会社
中井 秀有
プログラム
Sessions on Monday, September 17
Track 1
Track 2
Track 3
Start Your Engines: Design and develop an IT 100 Laps In: Managing a mature ITSM program Get in the Groove: Align your IT Services with t
Session
Session
Session
Time
Session
Session
Session
Number
Number
Number
10:00 AM - 10:50 AM
42 A Framework for the Implementation of
33 Ensuring Process Success
117 ITIL with SOX, HIPAA, CLIA, Compliance
Service Management
or Chaos?
11:10 AM - 12:00 PM
2:00 PM - 2:50 PM
3:10 PM - 4:00 PM
Robert Benyon (Rhodes University)
402 Practical Implementation of Service
Support: A Case Study
Randal Locke (CA)
Harry Butler III (EFW Inc )
301 Case Study: American Family Insurance
-- ITIL® as a Grass-roots Effort
Peggy Ranney (American Family
Insurance)
12 ITIL® on a Shoestring
Phyllis Drucker (AutoNation, Inc.)
Track 5
The Winning Combination: Managing IT servi
Session
Session
Number
10:00 AM - 10:50 AM
47 Actually Improving ITSM Metrics That
Matter
Gene Kim (Tripwire Inc.)
Time
11:10 AM - 12:00 PM
2:00 PM - 2:50 PM
3:10 PM - 4:00 PM
44 Organizing in Support of Your Service
Catalogue (portfolio) -- Practical
Examples of Roles and Lessons Learned
Jan Clausen (Microsoft)
James Hersey (Microsoft)
130 Operational Level Agreements: Can't
We All Just Get Along?
Christopher Edler (International
Monetary Fund)
397 Caveat Emptor -- The New Rules for
Acquiring Tools
Kenneth Gonzalez (Symantec)
Steven Romero (CA)
299 The Quality Masters
Andrew Galbus (Mayo Clinic)
138 Service Management Competency
Center: Guardian Angel or Necessary
Evil?
Oryst Kunka (The Bank of New York)
Reed Shell (SuperValu)
302 Automated Configuration Management
Drives Application Availability and IT
Management Efficiency
Joseph Kennedy (State Street
Corporation)
219 Understanding the Metrics Lifecycle
Donna Knapp (ITSM Academy, Inc. )
324 Executive Dashboards: Communicating
IT to the Business
Tom Bishop (BMC Software)
405 West Bend Mutual Insurance Case
Michael Walter (Compuware
Corporation)
Track 6
Track 7
The Tactic of Drafting: Practical experience fromThe Chase: Hot topics and emerging trends
Session
Session
Session
Session
Number
Number
31 ISO 19770: The New Software in
289 IT Service Management Improvement
for the Government of Canada
Software Asset Management
Jim King (Public Works and Government
Steven Russman (International Business
Services Canada)
Software Managers Assoc )
246 The UK Government's Approach to
149 Tap Dance or Tango - What Happens
After the Design Team Finishes?
Improving Service Management
Tina Certo (NC Office of Information
Technology Services)
58 Getting Started In The Federal
Government
David Farris (USDA, APHIS, ITD)
Frances Scarff (Office of Government
Commerce (OGC))
412 Panel Discussion: The Role of
Governance in an ITSM Transformation
410 IT Transformation and Duke Medicine
Operation Center
Rafael Rodriguez (Duke University
Health System)
114 Understanding and Applying the CMMI
for Services
Drew Allison (SSCI)
50
Track 4
Top the Power Rankings: Delivering successful I
Session
Session
Number
433 Achieving Calm in The Eye of the Storm
- A U.S. Air Force's Air Combat
Command Case Study
Steve Larson (Microsoft)
322 Battle of the Wills - SLM and
Interdependencies with Other ITIL®
Disciplines
Kevin Ritter (State Farm)
390 Race Past the Competition: Using CMMI
and ITIL® Together to Create a Winning
Team
Ted Hayes (EDS)
Bill Phifer (EDS)
309 Implementing ITIL® Based Security
Martin Rogers (BT Global Professional
Services)
Track 8
Wave the Green Flag: An introduction to ITIL® v
Session
Session
Number
420 ITIL® v3 -- Continual Improvement or
Rework?
David Cannon (Hewlett Packard)
Sharon Taylor (Aspect Group Inc )
421 ITIL®v3 -- Service Strategy: A MUST
DO for success
Majid Iqbal (Accenture)
431 ITIL®v3 - Service Design: Prepare to
Put Strategy Into Practice!
Vernon Lloyd (FoxIT)
Colin Rudd (Items Ltd )
423 ITIL® v3 -- Certification and Exams
Sharon Taylor (Aspect Group, Inc.)
Sessions on Tuesday, September 18
Track 1
Track 2
Start Your Engines: Design and develop an ITS100 Laps In: Managing a mature ITSM program
Session
Session
Session
Session
Time
Number
Number
404 Executive Panel: Into the Looking Glass 10:00 AM - 10:50 AM
278 Boost the Performance of ITIL® with
Strategies for Managing Knowledge
The Future of ITSM
Michael McGaughey (Dream Catchers,
Inc.)
11:10 AM - 12:00 PM
281 Fuelling Future Performance
9 The Power of Reporting - The Lifeblood
3:30 PM - 4:20 PM
4:40 PM - 5:30 PM
Time
10:00 AM - 10:50 AM
11:10 AM - 12:00 PM
Stu Miller (BP)
198 How Does Earning a Pink Cadillac Relate
to BSM/ITSM?
Paul Gadbois (TransUnion LLC)
386 How to Prepare Your Organization for
ISO/IEC 20000 Certification
Steve Moore (Mary Kay Inc.)
189 Improving The "Best" of Problem
Management: Launching Problem
Management and Adding More Value
Christopher Jones (MeadWestvaco)
Ian Clayton (VSM dba ITSMI)
249 Don't Look Now You've Just Been Fired
Don Page (Marval Group)
Rudy Wedenoja (General Motors)
398 Implementing the CMDB
4:40 PM - 5:30 PM
148 Implementing Service Level Management
Julia Wilkins (NC Office of Information
Technology Services)
John Scanlon (NC Information
Technology Services)
Brendon Serra (Unilever)
Tom Pierce (Third Sky, Inc.)
411 Evolution of Service Management as an
Enabler of Multi Supplier Integration
Gary Case (Pink Elephant)
168 ITSM Implementation - Grass Roots
Lessons at Yahoo
Stephen Carn (Yahoo!)
Time
Time AM - 11:40 AM
10:50
1:00 PM - 5:00 PM
2:00 PM - 5:00 PM
Time
8:30 AM - 10:30 AM
8:30 AM - 10:30 AM
8:30 AM - 10:30 AM
8:30 AM - 10:30 AM
8:30 AM - 10:30 AM
8:30 AM - 10:30 AM
8:30 AM - 10:30 AM
Linda King (G2G3)
413 Panel Discussion: How to Overcome
Challenges During ITSM Transformations
Bernie Mamon (EDS)
359 Organization Structural Change for
Dushmantha Fernando (Michigan State
University)
Sessions on Wednesday, September 19
Track 1
Track 2
Start Your Engines: Design and develop an ITS100 Laps In: Managing a mature ITSM program
Session
Session
Session
Session
Time
Number
Number
8:30 AM - 10:30 AM
307 ITIL® Process Implementation Strategy
69 ISO20000 - What, Why and How
8:30 AM - 10:30 AM
38 ITIL® is not SOX: ITIL®, CoBiT and SOX
Richard Berg (Toyota Motor Sales)
388 Cultural Change -- How a Metaphorical
Travel Theme Helped Drive Results and
Fun
Donna Conant (We Energies)
406 A Role for Leaders -- Using ITIL® to
Align Corporate Contractors with
Government Agency Cultures
Fred Duball (Virginia Information
Technologies Agency (VITA))
Track 5
Track 6
Track 7
The Winning Combination: Managing IT servic The Tactic of Drafting: Practical experience from The Chase: Hot topics and emerging trends
Session
Session
Session
Session
Session
Session
Number
Number
Number
409 Practicing ITIL®: Implementing
356 Real-World Experiences at the US Coast
142 A Procter & Gamble Case Study:
IM/PM/SLM in the Real World
Guard with SLAs, OLAs, and Practical
"Maturing Service Operations" aka
Scorecard Metrics
Successful Outsourcing (years 4-7)
Bob Balassi (Maryville Technologies)
Frank Hesson (U.S. Coast Guard)
Daryl Goetz (Procter & Gamble)
Shawn LaBelle (U.S. Coast Guard)
325 So What is a Global Service Desk?
211 Fact or Fiction: You can implement a
263 Experiential Learning -- Business Benefit
3:30 PM - 4:20 PM
10:50 AM - 11:40 AM
Track 3
Track 4
Get in the Groove: Align your IT Services with th Top the Power Rankings: Delivering successful IT
Session
Session
Session
Session
Number
Number
139 Financial Management: Making Sense
126 Release Management Maturation
Out Of The Dollars
Experiences
Jay Stuart (E.ON U.S. Services)
Peter Norris (Unilever)
Lynda Cooper (Fox IT)
218 ITIL® and Six Sigma -- What's the
Problem?!?
Nick Schneider (newScale)
25 ITIL® and Autonomic Computing
Jay Venenga (IBM)
Gregori Alpernas (City of Portland)
Workshops
Workshops
Sessions on Wednesday, September 19
Session
Session
Track
Number
69 ISO20000 - What, Why and How
Track 2: 100 Laps In: Managing a
Lynda Cooper (Fox IT)
Mature ITSM Program
172 Advancing IT Service Management
Track 3: Get in the Groove: Align your IT
through Enterprise Architecture
Services with the Business
Charles Betz (Wells Fargo)
220 Where IT Service Continuity Meets
Track 4: Top the Power Rankings:
Information Lifecycle Management (ILM) Delivering Successful IT Service
Christopher Willeman (Maryville
Technologies)
63 Change Management and Corporate
Track 5: The Winning Combination:
Culture
Managing IT Services
Jan Vromant (Hewlett-Packard
150 ITIL® on a Smaller Scale - Bite-sized
Track 6: The Tactic of Drafting: Practical
ITIL®
Experience from the Public Sector
J. Andrew Atencio (City of Greenwood
Village)
206 Create Your Own Crystal Ball to Master
Track 7: The Chase: Hot Topics and
Emerging Trends
your ITSM Adoption
Padma Nunna (TIAA-CREF)
428 ITIL v3 ® Panel Discussion
Track 8: Wave the Green Flag: An
David Cannon (Hewlett Packard)
Introduction to ITIL® v3
Sharon Taylor (Aspect Group, Inc.)
51
Patrick Saunier (Lubrizol)
113 Why Don't Developers Wear Pagers,
Too? A Session on Application Lifecycle
Management
Dan Boutin (Self)
235 Fast Track Your CMDB Build!
Margo Fullilove (Siemens)
Track 8
Wave the Green Flag: An introduction to ITIL® v
Session
Session
Number
422 ITIL®v3 - A Business Awareness
Attitude: Vital for Service Transition
Shirley Lacey (ConnectSphere)
Ivor MacFarlane (Guillemot Rock)
424 ITIL®v3 --Service Operations: Deliver on
David Cannon (Hewlett Packard)
David Wheeldon (Hewlett Packard)
426 ITIL®v3 -- When and How to Apply a
Continual Service Improvement
Discipline
Gary Case (Pink Elephant)
George Spalding (Pink Elephant)
427 ITIL®v3 -- ITILv3 Forum for Feedback
George Spalding (Pink Elephant)
Sharon Taylor (Aspect Group, Inc.)
Track 3
Track 4
Get in the Groove: Align your IT Services with th Top the Power Rankings: Delivering successful I
Session
Session
Session
Session
Number
Number
220 Where IT Service Continuity Meets
172 Advancing IT Service Management
through Enterprise Architecture
Information Lifecycle Management (ILM)
Charles Betz (Wells Fargo)
Christopher Willeman (Maryville
Technologies)
312 Implementing ITIL®-based Services in
32 Cultural Change in a Large Enterprise
Large-scale, Multi-vendor,
Organization Can Occur -- How a
Transformational Projects
Purposeful Approach and Tools Helped
Lockheed Martin Achieve Results
Candace Cole (Lockheed Martin
Loren Shumway (BT)
Enterprise Information Systems)
Track 5
Track 6
Track 7
The Winning Combination: Managing IT servic The Tactic of Drafting: Practical experience from The Chase: Hot topics and emerging trends
Session
Session
Session
Session
Session
Session
Number
Number
Number
63 Change Management and Corporate
206 Create Your Own Crystal Ball to Master
150 ITIL® on a Smaller Scale - Bite-sized
your ITSM Adoption
ITIL®
Culture
Jan Vromant Sessions
(Hewlett-Packard
Padma Nunna (TIAA-CREF)
on Sunday, September 16 J. Andrew Atencio (City of Greenwood
Session Company)
Village)
Session
Track 83 How Did It Happen That We Did
345
261 Is There Such a Thing as "ITIL®
Numbe
r Monitoring and Metrics
Smith
(Ameriprise
Financial)
183 Carey
Building
Effective
Problem
Management
Skills
Drew Hart (Unisys)
258 Effective Leadership for ITIL®
Implementations
Michael Kublin (PeopleTek)
408 Lubrizol -- Initiating an IT Service
Joanna Goldsmith (Morgan Stanley)
Greg Downer (Pepperweed Consulting)
Track 8
Wave the Green Flag: An introduction to ITIL® v
Session
Session
Number
428 ITIL v3 ® Panel Discussion
David Cannon (Hewlett Packard)
Sharon Taylor (Aspect Group, Inc.)
429 ITIL®v3 -- Certification and Exams
Sharon Taylor (Aspect Group, Inc.)
『第1回 寄稿 Award (仮称)』 募集のお知らせ
『第 1 回 寄稿 Award (仮称 )』 を創設しましたので奮ってご応募下さい。
最優秀寄稿者には海外開催の it SMF コンファレンスへの派遣等を検討中です。
■募集対象期間
2008/01 月号から 10 月号までの全 4 号に応募された寄稿。
【各号の〆切日】
2008 年 1 月号
2007/12/21 (金)
2008 年 4 月号
2008/03/21 (金)
2008 年 7 月号
2008/06/13 (金)
2008 年 10 月号 2008/09/19 (金)
■応募資格者
it SMF Japan 会員
■応募要綱
【募集テーマ】
ITIL®/ 内部統制 /IT サービスマネジメント 等に関する事例や研究発表
【原稿枚数】
図表 ・ 写真を含め A4 3 ~ 5 枚以内程度 (4000 字~ 8000 字程度)
【原稿の構成】
1. 見出し符号は次の順に用いて下さい。 又、 符号には句読点を打たず 1 字あけて下さい。
Ⅰ II III ・・・、 1 2 3 ・・・、 1) 2) 3) ・・・、 (1) (2) (3) ・・・、 ・・・
2. 大見出しの符号 (I II III ・・・) の前行は、 必ず 1 行あけて下さい。
3. 文章は 「である」 調に統一して下さい。
4. 文献から図 ・ 表や本文を引用する場合は、 著作権に配慮し出典を明記して下さい。
【ファイル形式】
MSWord もしくは テキスト形式
【その他】
1. 企業の製品やサービス等の宣伝に繋がる記述はご遠慮下さい。
2. 掲載された寄稿文の著作権は著者に帰属しますが、 著作権者は、 it SMF Japan による当該寄稿文の再配布
(出版物や Web への掲載、 CD-ROM への収録など) を許諾するものとします。
3. 顔写真を添付頂ければ、 会報誌掲載の際に写真も掲載させて頂きます。
4. レイアウトは it SMF Japan にて実施しますのでご了解下さい。
■賞品
【入賞】
各号毎に最大 2 編の寄稿を選定し、 it SMF Japan 会報誌 「ニュースレター」 に掲載。
掲載された寄稿者に対して it SMF Japan で販売している書籍よりご希望の書籍を 1 冊贈呈。
【最優秀寄稿者賞】
最優秀寄稿者賞・審査の方法等の詳細は現在検討中の為、 確定次第 it SMF Japan ホームページ、 ニュースレター
にて発表します。
■応募先 ・ お問合せ先
it SMF 事務局([email protected])までメールにて応募・お問い合わせ下さい。
52
広告募集のお知らせ
■ニュースレターでは、IT サービスマネジメントに関するビジネスにとりくむ会員組織様からの
広告を募集しています。価格は以下の通りです。
it SMF japan 会報誌「ニュースレター」(年 4 回発行)への広告掲載について
回数
1回
半年(2 回)
通年(4 回)
掲載場所
ページ
表紙の次のページ
1 ページ
上記以外(通常のページ) 半ページ 1 ページ
通常のページ
半ページ 1 ページ
通常のページ
半ページ 1 ページ
料金(税込)
105,000 円
42,000 円
84,000 円
68,250 円
136,500 円
105,000 円
210,000 円
■会員様向け会報誌への掲載となります。
■ it SMF Japan 公式サイト会員ページのお知らせ欄に掲載の内容をご確認のうえ、
事務局([email protected])までメールにてお申し込みください。
各種募集のお知らせ
■投稿の募集
it SMF Japan 会報誌「ニュースレター」では会員の皆様からの投稿を随時募集しております。是非、
会員の皆様の貴重なご意見ご経験をお伝えさせていただきたいと考えております。なお投稿を採用させ
ていただきました会員様には、it SMF Japan ウェブページで販売している書籍からご希望の書籍を 1 冊
贈呈させていただきます。
■インタビューをお受けいただける企業会員様の募集
it SMF Japan 会報誌「ニュースレター」では企業会員様およびコンファレンスでご講演いただきまし
た企業様を対象として 1 時間ほどのインタビューを行わせていただき、IT 組織の概要、運用システムの
概要とともに、自社における IT サービスマネジメントの取り組みをご紹介させていただいております。
こちらも随時募集しております。採用させていただいた会員様・企業様には、投稿と同様ご希望の書籍
を 1 冊贈呈させていただきます。
■会報誌「ニュースレター」編集メンバの募集
現在ニュースレターでは、編集活動にご協力いただける会員様を募集しております。編集会議へ参画
頂くことで、it SMF の活動に関する最新トピックなどワールドワイドな情報をいち早く入手可能な他、
ニュースレター最終ページにお名前を企業名とともに掲載いたします。また、編集メンバを介して編集
メンバ以外の会員様に翻訳記事レビューなどにご協力を仰ぐことがございますが、その場合も会員様の
お名前を企業名とともに最終ページに掲載させて頂きますので、会員様企業の it SMF Japan への貢献を
アピール可能となります。
< 編集メンバ活動内容 >
1. 月 1 回の編集会議への参加
2. 翻訳記事のレビュー
3. 年 4 回発行のニュースレターの編集活動(起稿、校正等)
お問合せ先:it SMF Japan 会報誌担当宛([email protected])までメールにてお問い合わせください。
53
編集後記
今号は、コンファレンスと新しい試験研修制度についての特集を組みました。海外の方のインタビューからは、日本の動
向への関心、日本への期待が強く感じられました。また、コンファレンスで御後援をいただいた協会、団体の皆様からのご
感想もいただいております。次号以降も、ITIL® V3 関係のニュースを継続して掲載していきたいと考えておりますのでご購
読のほどよろしくお願いいたします。
(中井)
■ご意見: 本ニュースレターへのご意見・ご要望は、it SMF Japan 会報誌担当宛てにメールに
てお送りください。
メールアドレス: [email protected]
■寄稿: IT サービスマネジメント導入、運営における経験を他の会員の皆様とシェアしてい
ただける方を募集しております。ご協力いただける方は、it SMF Japan 会報誌担当宛てに
メールにてご連絡ください。
メールアドレス: [email protected]
■広告: 本ニュースレターは皆様の広告料で制作されています。広告掲載に興味をお持ちの
方は it SMF Japan 事務局にご連絡ください。
メールアドレス: [email protected]
■ it SMF Japan ニュースレター
2007 年 10 月号 (1 月、4 月、7 月、10 月発行)
編集人: 江口昌幸 (特定非営利活動法人 it SMF Japan 会報誌担当理事) 編集取りまとめ: 中井 秀有(日本アイ・ビー・エム) 編集委員(アイウエオ順)
: 品田京子(日本アイ・ビー・エム)、中井秀有(日本アイ・ビー・エム)、中川悦子(EXIN
Japan)、中里広之(日本アイ・ビー・エム)
、三谷浩一(NTT コミュニケーションズ)
、森田礼子(ア
ビリティ・インタービジネス・ソリューションズ)、八木隆(日立製作所)
翻訳に協力いただいた方々(敬称略、アイウエオ順)
: 安田 忍(日本アイ・ビー・エム)
、渡邊恒文(日本アイ・ビー・エム)
■発行所:特定非営利活動法人 it SMF Japan
東京都港区六本木 6 丁目 10 番 1 号六本木ヒルズ森タワー 34 階私書箱 30 号
電話 (03)5786-7525 Fax (03)5786-7523
URL: www.itsmf-japan.org
■ ITIL® は英国政府機関の OGC(Office of Government Commerce)の英国およびその他の国にお
ける商標または登録商標です。
■その他記載の組織名(会社 / 団体 / 機関)
、製品名は、それぞれの会社 / 団体の商標または登録
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注 . 記事において記載の組織や製品に対し it SMF がなんらの推奨を行うものではありません。
■本誌掲載記事の無断転載を禁じます。
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